(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ごみピットにおいて仮想的に配置された格子の各マスに貯留されたごみをごみクレーンで撹拌し、焼却炉に接続したごみホッパへ投入するごみクレーン制御システムであって、
前記ごみクレーンの位置を検出し、位置情報を送信する位置センサと、
前記位置情報を受信し、前記位置情報に基づいて前記ごみクレーンの動作を制御する制御装置とを有し、
前記制御装置は、前記各マスごとに貯留されたごみの撹拌度及び高さを演算する演算部と、前記各マスの中から少なくとも2つの始点候補及び終点候補をそれぞれ選択する選択部とを備え、
前記選択部は、前記各マスのうち最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを前記始点候補として選択し、前記最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記始点候補として選択し、前記始点候補を除き、前記各マスのうち最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを前記始点候補とは別の始点候補として選択し、前記最も高さが高いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記別の始点候補として選択し、
前記ごみクレーンは、複数の前記始点候補のうち前記ごみクレーンの現在の位置に最も近い始点候補から複数の前記終点候補のいずれかに向かって移動され、移動撹拌または移動散乱撹拌が行われること
を特徴とするごみクレーン制御システム。
前記選択部は、前記各マスのうち最も高さが低いマスが唯一存在する場合はこれを前記終点候補として選択し、前記最も高さが低いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記終点候補として選択し、前記終点候補を除き、前記各マスのうち最も高さが低いマスが唯一存在する場合はこれを前記終点候補とは別の終点候補として選択し、前記最も高さが低いマスが複数存在する場合は、前記複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを前記別の終点候補として選択し、
前記演算部は、複数の前記終点候補の各々の高さとそれぞれの前記終点候補に隣接する前記各マスの高さに基づき、各々の前記終点候補近傍の高さの平均値をそれぞれ演算し、
前記ごみクレーンは、前記最も近い始点候補から、複数の前記平均値のうち最も低い平均値に対応する前記終点候補に向かって移動され、前記移動撹拌または前記移動散乱撹拌が行われること
を特徴とする請求項1に記載のごみクレーン制御システム。
前記ごみピットに配置され、音波、電波、またはレーザ光により前記ごみピットに貯留されたごみの高さを検出し、前記検出した高さの情報を前記制御装置へ送信するごみ高さ検出装置をさらに有し、
前記演算部は、前記高さの情報または前記位置情報に基づき、前記各マスの各々の高さを演算すること
を特徴とする請求項6に記載のごみクレーン制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態であるごみクレーン制御システム1につき、図を参照して説明する。なお、適宜、X軸、Y軸、Z軸からなる直交座標系を図示する。X軸とY軸を含む平面(XY平面)は水平面であり、Z軸の矢印方向は、鉛直方向且つ上方に向かう方向である。
まず、
図1、
図2、
図3を用いて、ごみクレーン制御システム1のシステム構成について説明する。
図1は、ごみクレーン制御システム1の機能ブロック図である。
図2は、ごみクレーン制御システム1を適用するごみピット100の平面図である。
図3は、ごみピット100の斜視図である。
【0010】
ごみクレーン制御システム1は、ごみピット100において仮想的に配置された格子の各マス(
図4等で後述する)に貯留されたごみをごみクレーン2で撹拌し、焼却炉に接続したごみホッパ200へ投入するシステムである。
ごみクレーン制御システム1は、ごみクレーン2の位置(具体的には、バケット23のX軸、Y軸、及びZ軸上の位置)を検出し、これら位置の情報(以下、「位置情報」という)を送信する位置センサ21と、当該位置情報を受信し、当該位置情報に基づいてごみクレーン2の動作を制御する制御装置10を少なくとも有する。そして、制御装置10は、各マスごとに貯留されたごみの撹拌度及び高さを演算する演算部12と、各マスの中から少なくとも2つの始点候補及び終点候補をそれぞれ選択する選択部13を、少なくとも備える。
なお、選択部13による始点候補及び終点候補の選択方法については後で詳述する。始点候補は、ごみクレーン2の移動元のマスの候補、すなわち、バケット23がごみを掴むマスの候補であり、終点候補は、ごみを掴んだごみクレーン2の移動先のマスの候補である。また、位置センサ21は、制御装置10へ所定の時間間隔(例えば、数マイクロ秒〜数秒間)で位置情報を送信する。
以下、ごみクレーン制御システム1が少なくとも有する構成に加え、本実施形態に示すその他の構成について、詳述する。
【0011】
まず、ごみピット100につき、説明する。
図2に示すように、ごみピット100の平面形状は、XY平面で見て、Y軸方向に長辺、X軸方向に短辺を備える長方形である。ここでは、一例として、ごみピット100は、XY平面で見て、当該長辺の1つを全て含み且つX軸方向へ当該短辺の約1/4の長さの辺を備えた長方形状のごみ受入エリア110と、ごみピット100のXY平面における面積のうち、ごみ受入エリア110を除く面積を均等に2分する長方形のごみ撹拌エリア120及びごみ投入エリア130を備える。
また、
図3に示すように、ごみピット100の立体形状は、XY平面で見て長方形の底面と、当該底面の四辺からZ軸上方に向かって延びる均等の高さの4つの壁(例えば、コンクリートによる壁)でなる枡型の容器形状である。ごみ受入エリア110、ごみ撹拌エリア120、及びごみ投入エリア130の各エリア間の境界には、オペレータが各エリアを認識し易いように、ごみピット100に投入されたごみを用いて堤防が形成されることがあるが、ごみ以外による物理的な障壁(例えば、コンクリートによる壁)は形成されない。
なお、ここでは、説明の簡便のため、これら3エリアを明確に区画して説明するが、明確に区画されていない場合、例えば、ごみ撹拌エリアのマスとごみ投入エリアのマスが混在するにも、ごみクレーン制御システム1は適用可能である。
【0012】
ごみピット100の上記4つの壁のうち、上記短辺に相当する2つの壁の上部であって、且つ、当該2つの壁のそれぞれの両端近傍には、ごみ高さ検出装置101(
図1〜
図3参照)が配置される。
図2、
図3では、ごみ高さ検出装置101は、合計4つ配置されているが、必要に応じて、ごみ高さ検出装置101の数は増減可能である。
ごみ高さ検出装置101は、例えば、レーザスキャナであり、ごみピット100に貯留されたごみの表面に上記壁上からレーザ光を照射して走査し、ごみ表面で反射したレーザ光を受光するまでの時間を計測し、計測した情報(以下、「計測情報」という)を制御装置10へ送信する。
なお、ごみ高さ検出装置101は、制御装置10により、定期的(例えば、1時間ごと)に起動される。
ごみ高さ検出装置101は、音波や電波を照射して、レーザスキャナと同様に計測する装置であってもよい。
【0013】
図2及び
図3には図示しないが、ごみピット100の上記4つの壁のうち、上記長辺に相当する壁であって、且つ、ごみ受入エリア110に接する壁の上方には、複数のごみ投入扉111(
図1参照)が設けられている。ごみ投入扉111は、原則として閉じられている。ごみ収集車が運搬したごみをごみ受入エリア110に投入する場合、例外として、ごみ収集車の停車位置に対応するごみ投入扉111が開かれる。そして、ごみ収集車は、収集し搬送してきたごみを、開いたごみ投入扉111から、ごみ受入エリア110へ投入する。
ごみ投入扉111には、扉の開閉を検知する開閉センサ112(
図1参照)が設けられている。開閉センサ112は、ごみ投入扉111の閉じた状態(「閉」の状態)から開いた状態(「開」の状態)への変化を検出した場合、制御装置10へ「投入扉開信号」を送信する。
【0014】
次に、ごみホッパ200につき、説明する。
図2に示すように、ごみホッパ200は、ごみクレーン2がごみピット100からごみホッパ200へ素早くごみを投入できるように、ごみ撹拌エリア120及びごみ投入エリア130の近傍に配置される。ここでは、1つのごみホッパ200のみ図示するが、複数のごみホッパ200が配置されてもよい。
ごみクレーン2がごみホッパ200に投入したごみは、ごみホッパに貯留され、ごみホッパ200の下部に配置されたフィーダ(図示せず)によって、順次、焼却炉へ投入される。
ごみホッパ200には、ごみホッパ200が貯留するごみの量を検出するレベル計201(
図1参照)が設けられている。レベル計201は、ごみホッパ200に貯留するごみが所定位置より低下した場合、制御装置10へ「投入要求信号」を送信する。
【0015】
次に、ごみクレーン2につき、説明する。
ごみピット100を内包する焼却炉設備の建屋は、ごみピット100の上方に、XY平面をごみクレーン2が自在に移動可能な移動機構(図示せず)を備えている。当該移動機構には巻上機(図示せず)が配置され、当該巻上機とバケット23に接続したケーブル24(
図3参照)の長さを、当該巻上機で適宜伸縮させることで、バケット23のZ軸方向の位置を調整することができる。
ごみクレーン2には、先述の位置センサ21に加え、バケット23が掴んだごみの重量を検出する重量センサ22(
図1参照)が設けられている。重量センサ22は、例えば、バケット23がごみを掴んだ時点から、当該ごみを全て落下させて重量が0kgとなる時点まで、制御装置10へ所定の時間間隔(例えば、数マイクロ秒〜数秒間)でごみの重量の情報(以下、「重量情報」という)を送信する。当該所定の時間間隔は、後述の「移動散乱撹拌」のように、ごみクレーン2が移動中に掴んだごみを徐々に落下させる場合があるため、バケット23内のごみ量の変化を制御装置10が詳細に検知できるよう、短時間、望ましくは数マイクロ秒間に設定される。
なお、バケット23は、複数の爪でごみを掴ため、グラップルと呼ばれる場合もある。バケット23が一度に掴むごみの体積は、ほぼ一定であり、所定体積だけ掴むことができる。
また、ごみクレーン2によるごみの撹拌方法は、大きく3つに分類される。すなわち、あるマスで掴んだごみを、そのまま別のマスに移動させ、当該別のマス上で全て落下させる「移動撹拌」、あるマスで掴んだごみを、別のマスへ移動させつつ経路上のマスに散乱して落下させる「移動散乱撹拌」、あるマスで掴んだごみを、当該マス上に持ち上げて、当該マス上に落下させる「垂直撹拌」である。
【0016】
次に、制御装置10、およびそれに付随する操作盤17、表示部16、及び記憶部15につき、概要を説明する(制御装置10の演算部12の処理と選択部13の処理については、後で詳述する)。
制御装置10は、上記の演算部12と選択部13のほか、ごみクレーン2の動作を制御するごみクレーン動作制御部11と、各マスに貯留されたごみの滞留時間を計測する滞留時間計測部14を備える。
制御装置10が備える演算部12は、ごみクレーン2から送信される上記位置情報、上記重量情報、及び、ごみクレーン2の撹拌方法(「移動撹拌」、「移動散乱撹拌」、「垂直撹拌」)に基づいて、各マスの「撹拌度」を演算する撹拌度演算部121と、上記重量情報に基づいてごみクレーン2が掴んだごみの「かさ比重」を演算するかさ比重演算部122を備える。上述のとおり、ごみクレーン2のバケット23が掴むごみの体積は、毎回ほぼ一定の所定体積となるので、当該重量情報を用いることで、ごみクレーン2がごみを掴んだ際のごみのかさ比重の演算が可能となる。
また、演算部12は、ごみクレーン2のバケット23がごみの表面に接触した際の上記位置情報に基づいて当該接触したマスに貯留されたごみの高さを演算し、且つ、ごみ高さ検出装置101の送信した計測情報に基づいてごみピット100内の全てのマスのそれぞれに貯留されたごみの高さを演算する高さ演算部123を備える。さらに、演算部12は、撹拌度演算部121で演算された各マスの撹拌度、及び、高さ演算部123で演算されたごみの高さに基づいて、後述する「撹拌パラメータ」を演算する撹拌パラメータ演算部124を備える。
演算された撹拌度、ごみの高さ、撹拌パラメータ、並びに計測されたごみの滞留時間は、各マスごとに、各マスの深さ方向(Z軸方向かつ下方)に階層化されて、記憶部15に記憶される。記憶部15は、例えば、ハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)などの書き換え可能な記憶媒体である。
演算された撹拌度、ごみの高さ、撹拌パラメータ等の情報は、各マスごとに、モニター等の表示部16に表示することができる。表示部16は、後述のように、ごみピット100およびごみクレーン2の2次元(
図4等参照)または3次元(
図11参照)の画像を表示することができる。
ごみクレーン制御システム1は、オペレータが操作盤17を操作することで起動する。ごみクレーン制御システム1は、一旦、オペレータが諸条件を操作盤17で設定した後は人の介在を要しない「自動運転」をすることもできるし、オペレータが操作盤17を適宜操作することで、制御装置10を介してごみクレーン2を制御する、すなわち「手動運転」をすることもできる。なお、「自動運転」の際には、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を備えた制御装置10により、運転が行われてもよい。
【0017】
では、制御装置10が備える演算部12の処理、並びに、表示部16における各マスの情報の表示につき、以下に詳述する。
図4に、ごみピット100のうち、XY平面におけるごみ撹拌エリア120の各マスの情報を表示部16に表示した例を示す。
ここでは、一例として、ごみ撹拌エリア120のX軸方向を所定の長さごとに5分割してそれぞれの範囲を「A」〜「E」とし、Y軸方向を所定の長さごとに5分割してそれぞれの範囲を「1」〜「5」としている。このように5行5列の行列で説明するが、適宜、行数、列数を増減させてもよい。
なお、ごみ撹拌エリア120が5行5列の場合には、ごみ投入エリア130も5行5列で設定される。上述のように、ごみ撹拌エリア120とごみ投入エリア130は所定時間ごとに名称を交換するので、互いに同数の行および同数の列の行列であって、各マスが同一面積となるよう設定される。ごみ受入エリア110は、ごみ撹拌エリア120およびごみ投入エリア130と異なる行列に設定されるが、これら3つのエリアの各マスの面積は、いずれも一致するよう設定される。
説明の簡便のため、以下、各マスの位置を特定するにあたり、X軸方向の範囲とY軸方向の範囲を順に並べ、「(X軸方向の範囲)(Y軸方向の範囲)」マスと呼ぶことにする。例えば、X軸方向「A」の範囲、且つ、Y軸方向「1」の範囲のマスを「A1」マスと呼ぶ。
図4の各マスには、後述の「撹拌パラメータ」と、括弧書きされた撹拌度と括弧書きされたごみの高さが記載されている。例えば、「A1」マスの「1H」は、撹拌パラメータ演算部124で演算されて記憶部15に記憶された撹拌パラメータであり、「1.2」は撹拌度演算部121で演算されて記憶部15に記憶された撹拌度であって後述の「平均的な撹拌度」、「10.0」は高さ演算部123で演算されて記憶部15に記憶されたごみの高さを示している。
表示部16は、各マスの撹拌パラメータを少なくとも表示するが、オペレータが操作盤17で設定することで、各マスの括弧書きの撹拌度(平均的な撹拌度)及び括弧書きのごみの高さについては、表示または非表示のいずれかを選択可能である。
表示部16は、制御装置10が受信する位置情報に基づいて、XY平面におけるごみクレーン2の現在の位置を表示することができる。
図4では、一例として、ごみクレーン2の現在の位置が、「A1」マス、「A2」マス、「B1」マス、及び「B2」マスの境界付近に円形で示されている。ここでは円形で表示される例を示すが、ごみクレーン2と認識可能であれば、いかような形状で表示してもよい。
【0018】
演算部12が備える撹拌度演算部121は、各マスの表面に堆積するごみの層の撹拌度を演算するのみならず、各マスの深さ方向(Z軸方向かつ下方向)に階層化されて記憶部15に記憶された各階層の撹拌度を用いて、ごみクレーン2のバケット23が掴むごみの「平均的な撹拌度」を演算する。この平均的な撹拌度は、上述のように、各マスの撹拌度として、表示部16の各マスに括弧書きで表示可能である。
図5に、
図4の「A1」マスの深さ方向の各階層の撹拌度を一例として示す。ここでは、説明の簡便のため、各階層はそれぞれZ軸方向に同一の高さ(所定高さであり、ここでは高さ「1.0」として、説明する)のブロックで形成され、各ブロックがZ軸方向に積層された構成であるとして説明する(
図8、
図10で後述するように、各ブロックの高さは、必ずしも「1.0」とは限らない)。
ここでは、説明の簡便のため、バケット23は、あるマスのごみを掴む場合、Z軸方向に高さ「3.0」の深さまでのごみを掴むとして、説明を進める。
例えば、ごみ撹拌エリア120の「A1」マスのごみをごみクレーン2が掴む場合、
図5においては、表面に露出している撹拌度「1.4」のブロックと、撹拌度「1.4」のブロックに接してその直下に存在する撹拌度「1.0」のブロックと、さらに、撹拌度「1.0」のブロックに接してその直下に存在する撹拌度「1.2」のブロックが、掴まれることになる。
従って、これら3ブロックの撹拌度の平均値は、(1.4+1.0+1.2)/3=1.2となる。このため、
図4の「A1」マスに括弧書きで表示される撹拌度、すなわち、平均的な撹拌度は、「1.2」となる。
【0019】
なお、ごみの撹拌度は、撹拌度演算部121が、例えば、「(K1×撹拌評価点)+(K2×かさ比重評価点)+(K3×滞留時間評価点)」の式を用いて演算する。この式で算出される値が、バケット23に掴まれたごみの撹拌度に加算されて、バケット23から落下するごみの撹拌度となる。なお、撹拌度の数値が大きいほど、撹拌が良好になされていることを示す。
撹拌評価点は、上記3種類の撹拌方法の各々に設定された評価点である。これら3種類のうちで最も撹拌に効果的な移動散乱撹拌を高い評価点とするよう、例えば、移動散乱撹拌の評価点は「1.0」、移動撹拌の評価点は「0.5」、垂直撹拌の評価点は「0.5」に設定される。
かさ比重評価点は、上記3種類の撹拌方法のいずれか一つが実行される際に、ごみクレーン2がごみを掴んだ際のごみのかさ比重に与えられる評価点である。また、滞留時間評価点は、ごみクレーン2がごみをごみ受入エリア110から最初に掴んだ時からごみホッパ200へ投入までの滞留時間に対して設定される評価点である。
これら各評価点は、テーブルとして記憶部15に記憶されており、かさ比重演算部122の演算結果、滞留時間計測部14の計測結果、さらにごみクレーン動作制御部11がごみクレーン2を制御して実行させる撹拌方法に基づき、撹拌度演算部121が当該テーブルを参照しつつ、上記式を用いて演算する。
ここで、K1、K2、K3は定数であり、K1>K2>K3、例えば、K1=0.6、K2=0.3、K3=0.1としてごみクレーン制御システム1を動作させると、焼却炉で焼却されるごみのLHVのばらつきを低減できることが実験段階で確認できている。
【0020】
一方、
図4の「A1」マスに貯留されたごみの高さは、
図5に示されたごみの高さとなる。
図5では、一例として、高さ「1.0」のブロックが10個積層されているので、
図4の「A1」マスに括弧書で表示されるごみの高さは、「10.0」となる。
ごみの高さは、先述のとおり、演算部12が備える高さ演算部123が演算する。ごみクレーン2のバケット23がごみの表面に接触した際の上記位置情報に基づいてごみの高さ(以下、「接触時のごみの高さ」という)を演算するのが最も正確である。従って、高さ演算部123は、ごみ高さ検出装置101の送信する上記計測情報に基づいて各マスの高さを演算して記憶部15に記憶させるとともに、その後、あるマスについて「接触時のごみの高さ」を演算した場合には、当該マスのごみの高さを、当該演算した「接触時のごみの高さ」に差し替えて記憶部15に記憶させる。なお、高さ演算部123は、バケット23がごみの表面に接触するたびに、「接触時のごみの高さ」を演算する。
表示部16は、記憶部15が記憶した各マスの情報を表示可能であるので、全てのマスにおいて「接触時のごみの高さ」が演算されていない場合においても、全てのマスにおいてごみの高さを表示することができる。
【0021】
演算部12が備える撹拌パラメータ演算部124は、撹拌度演算部121が演算した平均的な撹拌度の値と、高さ演算部123が演算したごみの高さの値を、それぞれ簡略化または記号化して「撹拌パラメータ」とし、各マスごとに記憶部15に記憶させる。ここでは、各マスで括弧書きされた平均的な撹拌度の値を整数化、例えば四捨五入して整数化した値と、各マスで括弧書きされたごみの高さを例えば3段階(L:高さ「0」以上「4.0」未満、M:高さ「4.0」以上「8.0」未満、H:高さ「8.0」以上)に分けて記号化し、これらを順次並べて「撹拌パラメータ」とする例を示す。
図4の「A1」マスでは、撹拌度は「1.2」であり、ごみの高さは「10.0」であるので、撹拌パラメータ演算部124が「1.2」を四捨五入して「1」に整数化し、また、「10.0」を対応する「H」に記号化することで、撹拌パラメータ「1H」が得られる。表示部16では、各マスごとに撹拌パラメータが表示されるので、オペレータは容易に各マスの平均的な撹拌度と高さの概要を認識することができ、結果として、ごみクレーン制御システム1の動作確認を容易に行うことができる。
【0022】
次に、制御装置10が備える選択部13の処理、並びに、選択部13で選択されたマスに対する表示部16の表示につき、以下に詳述する。
選択部13は、ごみ撹拌エリア120において、各マスの平均的な撹拌度及びごみ高さを用いた後述のルールに基づいて、ごみクレーン2がごみを掴む移動元のマスの候補である始点候補と、ごみを掴んだごみクレーン2の移動先のマスの候補である終点候補を、それぞれ少なくとも2つ選択する。当該ルールは、撹拌を効率よく行いながらも、ごみ撹拌エリア120の各マスの高さをできるだけ均し、凹凸の少ない表面とすることを目的としている。
また、選択部13は、ごみ投入エリア130において、各マスの撹拌パラメータを用いた後述のルールに基づいて、ごみホッパ200へ投入するためにごみクレーン2がごみを掴むマスの候補である投入候補を、少なくとも2つ選択する。
なお、ここでは、説明の簡便のため、始点候補、終点候補、投入候補のいずれも2つに限定して説明するが、適宜、2以上の数としてもよい。ただし、所定時間内にごみの撹拌度を効率的に均すためには、これら候補の数は、2以上であって最大でも4程度であることが望ましい。
【0023】
まず、ごみ撹拌エリア120における選択部13の処理につき、
図4に表示された各マスの平均的な撹拌度および高さの情報を用いて説明する。
選択部13は、ルールとして、ごみ撹拌エリア120の全てのマスの中で「最も高さが高いマス」を「第一始点候補」として選択する。仮に、同一の高さの「最も高さが高いマス」が複数存在する場合、選択部13は、当該複数のマスの中で、最も平均的な撹拌度の低いマスを「第一始点候補」として選択する。
図4の場合、高さが最も高いマスは、高さ「10.0」の「A1」マスであり、他に高さ「10.0」以上のマスは存在していない。従って、選択部13は、「A1」マスを第一始点候補として選択する。
第一始点候補を選択した後、選択部13は、「第一始点候補」を除き、「最も高さが高いマス」を「第二始点候補」として選択する。仮に、同一の高さの「最も高さが高いマス」が複数存在する場合、選択部13は、当該複数のマスの中で、最も平均的な撹拌度の低いマスを「第二始点候補」として選択する。
図4の場合、「A1」マスの次に高さが高いマスは、高さ「8.2」の「E1」マスであり、他に高さ「8.2」以上のマスは存在していない。従って、選択部13は、「E1」マスを第二始点候補として選択する。
また、選択部13は、ごみ撹拌エリア120の全てのマスの中で「最も高さが低いマス」を「第一終点候補」として選択する。仮に、同一の高さの「最も高さが低いマス」が複数存在する場合、選択部13は、当該複数のマスの中で、最も平均的な撹拌度の低いマスを「第一終点候補」として選択する。
図4の場合、最も高さが低いマスは、高さ「3.0」の「E5」マスであり、他に高さ「3.0」以下のマスは存在していない。従って、選択部13は、「E5」マスを第一終点候補として選択する。
第一終点候補を選択した後、選択部13は、ごみ撹拌エリア120の全てのマスの中で、「第一終点候補」のマスを除き、「最も高さが低いマス」を「第二終点候補」として選定する。仮に、同一の高さの「最も高さが低いマス」が複数存在する場合、選択部13は、当該複数のマスの中で、最も平均的な撹拌度の低いマスを「第二終点候補」として選択する。
図4の場合、「E5」マスの次に高さが低いマスは、高さ「3.2」の「A5」マス(平均的な撹拌度「4.3」)、「B3」マス(平均的な撹拌度「2.5」)、「B5」マス(平均的な撹拌度「5.0」)、及び「D4」マス(平均的な撹拌度「4.1」)の4つのマスが存在する。従って、選択部13はこれら4つのマスの平均的な撹拌度を比較し、この中で最も値の低い「B3」マスを第二終点候補として選択する。
【0024】
そして、選択部13は、ルールとして、全ての始点候補(第一、第二始点候補)及び全ての終点候補(第一、第二終点候補)が選択された時点で、現在のごみクレーン2の位置に最も近い始点候補を「最終始点候補」として選択する。
図4の場合、ごみクレーン2は、第二始点候補である「E1」マスよりも、第一始点候補である「A1」マスに近い位置に存在するので、「A1」マスが最終始点候補として選択される。
ごみクレーン制御システム1を「手動運転」する場合に加え、人がごみクレーン制御システム1の動作確認をする場合においては、選択部13が、これら始点候補および終点候補につき、他のマスとは異なる色(例えば、始点候補につき橙色、終点候補につき黄色)で表示部16に表示させることができる。始点候補と終点候補は互いに異なる色で表示するのが望ましい。これにより、人の目で容易に複数の始点候補と終点候補の位置を認識でき、手動運転や動作確認を容易に行うことができる。
ごみクレーン制御システム1を「自動運転」する場合には、選択部13が、これら始点候補及び終点候補につき、他のマスとは異なる色で表示部16に表示させる必要はない。言い換えれば、これら始点候補及び終点候補を他のマスと異なる色で表示してもよいし、他のマスと同じ色で表示してもよい。
以上のように、ごみクレーン制御システム1においては、撹拌に適した複数の始点候補のうち、ごみクレーン2の現在位置に最も近い始点候補のごみをごみクレーン2が掴むので、撹拌に最適なごみが貯留された唯一のマスのごみをごみクレーンが掴むシステムに比べ、ごみクレーン2の移動時間を減らすことができる。従って、所定時間内におけるごみの撹拌の回数を増加させて、ごみの撹拌度を効率的に均すことができるので、結果として、焼却炉に投入されるごみのLHVのばらつきを低減することができる。
【0025】
なお、全ての終点候補の中からいずれか1つの終点候補が「最終終点候補」として選択されるが、「最終終点候補」を選択するのは、選択部13であっても、オペレータであってもよい。
ごみクレーン制御システム1を「手動運転」する場合は、複数の終点候補が他のマスとは異なる色で表示部16に表示されているので、オペレータの経験に基づいて、いずれか一つの終点候補をオペレータが「最終終点候補」として選択すればよい。
【0026】
ごみクレーン制御システム1を「自動運転」する場合は、選択部13が「最終終点候補」を選択する。全ての終点候補の中からランダムに「最終終点候補」を選択する構成としてもよいが、ごみクレーン2の移動を容易、具体的にはバケット23の上下移動を少なくして、ごみクレーン2の移動時間を総合的に短縮する観点から、次のように選択する構成とするのが望ましい。
すなわち、選択部13は、各終点候補のそれぞれにつき、ある終点候補に隣接するごみ撹拌エリア120内の全てのマスのそれぞれのごみの高さと当該終点候補のごみの高さの平均値を演算し、各終点候補のそれぞれの当該平均値の中で、一番低い平均値の終点候補を「最終終点候補」として選択する。
このように選択される最終終点候補に貯留されたごみの表面は、最終終点候補の周囲のマスに貯留されたごみの表面となだらかに接続しており、凹凸が比較的小さいといえる。従って、最終始点候補で掴んだごみを最終終点候補に向かって移動撹拌または移動散乱撹拌する場合に、ごみクレーン2のバケット23の上下方向の移動時間を減らすことができる。このため、所定時間内におけるごみの撹拌の回数を増加させて、ごみの撹拌度を効率的に均すことができるので、結果として、焼却炉に投入されるごみのLHVのばらつきを低減することができる。
図4の場合、第二終点候補の「B3」マス(高さ「3.2」)およびそれに隣接するごみ撹拌エリア120内の全てのマス(高さ「7.8」の「A2」マス、高さ「7.2」の「B2」マス、高さ「7.0」の「C2」マス、高さ「6.0」の「C3」マス、高さ「3.3」の「C4」マス、高さ「4.0」の「B4」マス、高さ「4.3」の「A4」マス、高さ「7.3」の「A3」マス)の高さの平均値は、(3.2+7.8+7.2+7.0+6.0+3.3+4.0+4.3+7.3)÷9≒5.6である。
一方、第一終点候補の「E5」マス(高さ「3.0」)およびそれに隣接するごみ撹拌エリア120内の全てのマス(高さ「3.2」の「D4」マス、高さ「3.5」の「E4」マス、高さ「3.5」の「D5」マス)の高さの平均値は、(3.0+3.2+3.5+3.5)÷4=3.3である。
従って、選択部13は、第一終点候補と第二終点候補の各々の上記平均値を比較し、当該平均値が低い第一終点候補の「E5」マスを「最終終点候補」として選択する。
ここでは、ごみクレーン制御システム1を「自動運転」する場合について説明したが、「手動運転」する場合においても、選択部13が上記平均値に基づいて「最終終点候補」を選択し且つ最終終点候補を表示部16に表示することで、自動運転と同様の処理を行うことができ、また自動運転と同様の効果を得ることができる。
【0027】
選択部13が、複数の始点候補と複数の終点候補を選択した後、「自動運転」または「手動運転」することで、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2を制御して、「最終始点候補」のマスに貯留されたごみを掴み、「最終終点候補」に向かって移動撹拌または移動散乱撹拌を行う。
「自動運転」または「手動運転」のいずれの場合も、撹拌の効率を向上するため、「最終始点候補」と「最終終点候補」の距離が所定距離以内(例えば、2マス以内)であれば移動撹拌を行い、所定距離より大きければ移動散乱撹拌を行う。
【0028】
ところで、ごみクレーン2が「最終始点候補」のごみを掴む動作を実行中に、制御装置10が投入要求信号を受信した場合、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2に「最終始点候補」において「垂直撹拌」を1回実行させ、バケット23を空にする。また、ごみ撹拌エリア120における移動撹拌または移動散乱撹拌の実行中に、制御装置10が投入要求信号を受信した場合、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2が実行中の移動撹拌または移動散乱撹拌を完了させ、バケット23を空にする。
その後、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2を、ごみ投入エリア130の「最終投入候補」(後述)に向けて移動させ、最終投入候補に貯留されたごみを掴ませ、ごみホッパ200に投入させる。
【0029】
さらに、ごみクレーン2が「最終始点候補」のごみを掴む動作を実行中に、制御装置10が投入扉開信号を受信した場合、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2に「最終始点候補」において垂直撹拌を1回実行させ、バケット23を空にする。また、ごみ撹拌エリア120における移動撹拌または移動散乱撹拌の実行中に、制御装置10が投入扉開信号を受信した場合、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2が実行中の移動撹拌または移動散乱撹拌を完了させ、バケット23を空にする。
その後、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2を、開いた投入扉111に隣接するごみ受入エリア110のマスに向けて移動させ、投入扉111から投入されて当該マスに貯留されたごみを掴ませ、ごみ撹拌エリア120のいずれかの終点候補へ向けて移動撹拌または移動散乱撹拌させる。ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2がごみ受入エリア110でごみを掴んだマスから、最も近い終点候補に向けて、ごみクレーン2を制御するのが望ましい。当該最も近い終点候補の周囲の凹凸が大きい場合には、ごみクレーン動作制御部11は、選択部13がバケット23の上下移動を少なくなるように選択した先述の最終終点候補に向けてごみクレーン2を制御すると、ごみクレーン2の移動時間を総合的に短縮することができる。
【0030】
次に、ごみ投入エリア130における選択部13の処理につき説明する。
選択部13は、ルールとして、ごみ投入エリア130の全てのマスのそれぞれの撹拌パラメータに基づき、「最も高さが高いマス」を「第一投入候補」として選択する。撹拌パラメータに基づいて高さを判定するので、ここでは、撹拌パラメータのうち記号化された高さである「H」、「M」、「L」の3種の高さによって、「最も高さが高いマス」が選択される。仮に、撹拌パラメータのうち記号化された高さで比較した場合に、同一の高さの「最も高さが高いマス」が複数存在する場合、選択部13は、当該複数のマスの中で最も平均的な撹拌度の高いマスを「第一投入候補」として選択する。
例えば、ごみ投入エリア130に、撹拌パラメータのうち記号化された高さ「H」のマスが1つしか存在しない場合、選択部13は、当該マスを「第一投入候補」として選択する。また、例えば、ごみ投入エリア130に、撹拌パラメータのうち記号化された高さ「H」のマスが2つ存在し、いずれのマスも撹拌パラメータが「4H」であるが、一方のマスの平均的な撹拌度は「4.2」であり、他方のマスの平均的な撹拌度は「4.4」である場合、選択部13は、平均的な撹拌度が「4.4」のマスを「第一投入候補」として選択する。
第一投入候補を選択した後、選択部13は、「第一投入候補」を除き、ごみ投入エリア130の全てのマスのそれぞれの撹拌パラメータに基づき、「最も高さが高いマス」を「第二始点候補」として選択する。仮に、撹拌パラメータのうち記号化された高さで比較した場合に、同一の高さの「最も高さが高いマス」が複数存在する場合、選択部13は、当該複数のマスの中で最も平均的な撹拌度の高いマスを「第二投入候補」として選択する。
例えば、ごみ投入エリア130に、撹拌パラメータのうち記号化された高さ「H」のマスが多数存在した場合、そのうちの1つはすでに「第一投入候補」として選択されているので、これを除いて、選択部13は、他に存在する記号化された高さ「H」のマスの中の1つを「第二投入候補」として選択する。その際、選択部13は、各マスの平均的な撹拌度を比較して、高さ「H」のマスの中から最も平均的な撹拌度の高いマスを「第二投入候補」として選択する。
【0031】
ごみクレーン制御システム1を「手動運転」する場合に加え、人がごみクレーン制御システム1の動作確認をする場合においては、選択部13が、これら投入候補につき、他のマスとは異なる色(例えば、青色)で表示部16に表示させることができる。投入候補は、先述の始点候補及び終点候補と異なる色で表示するのが望ましい。これにより、人の目で容易に複数の投入候補の位置を認識でき、手動運転や動作確認を容易に行うことができる。
ごみクレーン制御システム1を「自動運転」する場合には、選択部13が、これら投入候補につき、他のマスとは異なる色で表示部16に表示させる必要はない。言い換えれば、これら投入候補を他のマスと異なる色で表示してもよいし、他のマスと同じ色で表示してもよい。
【0032】
選択部13により全ての投入候補(第一投入候補、第二投入候補)が選択された後、これらの中からいずれか1つの投入候補が「最終投入候補」として選択されるが、「最終投入候補」を選択するのは、選択部13であっても、オペレータであってもよい。
ごみクレーン制御システム1を「手動運転」する場合は、複数の投入候補が他のマスとは異なる色で表示部16に表示されているので、オペレータの経験に基づいて、いずれか一つの投入候補をオペレータが「最終終点候補」として選択すればよい。
【0033】
一方、ごみクレーン制御システム1を「自動運転」する場合は、選択部13が「最終終点候補」を選択する。選択部13は、ルールとして、全ての投入候補(第一、第二投入候補)が選択された時点で、これら投入候補のうち、平均的な撹拌度が最も高いマスを「最終投入候補」として選択する。
例えば、撹拌パラメータ「5H」(平均的な撹拌度が「5.2」)のマスが第一投入候補であり、撹拌パラメータ「5M」(平均的な撹拌度が「5.4」)のマスが第二投入候補の場合、選択部13は、撹拌パラメータ「5M」のマスを「最終投入候補」として選択する。
仮に、全ての投入候補において、平均的な撹拌度が同一である場合、選択部13は、全ての投入候補が選択された時点において、ごみクレーン2の現在の位置に最も近い投入候補を「最終投入候補」として選定する。
ごみクレーン2は、通常、ごみ撹拌エリア120でごみの撹拌を実行しているため、制御装置10が投入要求信号を受信した場合、ごみ撹拌エリア120からごみ投入エリア130にごみクレーン2を移動するには時間を要する。しかしながら、撹拌度が高く、焼却炉での焼却に適したごみを貯留する投入候補の中で、ごみ撹拌エリア120におけるごみクレーン2の現在の位置に最も近い投入候補を最終投入候補とするので、ごみクレーン制御システム1においては、ごみクレーン2を効率よく移動させ、且つ、撹拌度の高いごみをごみホッパ200に投入することができる。従って、所定時間内において、ごみ撹拌エリア120でのごみの撹拌の回数を増加させ、且つ、焼却炉に投入されるごみのLHVのばらつきを低減することができる。
これと異なり、選択部13は、ごみホッパ200に最も近い投入候補を「最終投入候補」として選定してもよい。この場合においても、ごみクレーン2が掴んだごみをごみホッパ200へ移送する時間を短縮することができるので、同様の効果を得ることができる。
ここでは、ごみクレーン制御システム1を「自動運転」する場合について説明したが、「手動運転」する場合においても、選択部13が上記ルールに従って「最終投入候補」を選択し且つ最終投入候補を表示部16に表示することで、自動運転と同様の処理を行うことができ、また自動運転と同様の効果を得ることができる。
【0034】
ところで、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2を制御して、「最終投入候補」に貯留されたごみを掴み、ごみホッパ200に当該ごみを投入するが、この際、「自動運転」であっても「手動運転」であっても、ごみクレーン2に「垂直撹拌」を1回実行させる。そして、垂直撹拌の後、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2に最終投入候補のごみを再び掴ませ、バケット23内のごみの重量を調整した後、当該ごみをごみホッパ200に投入する。
そして、当該投入の後、ごみクレーン動作制御部11は、ごみ撹拌エリア120の「最終始点候補」へごみクレーン2を移動させ、ごみ撹拌エリア120におけるごみの撹拌を継続する。
【0035】
ただし、(1)ごみ投入エリア130においてごみクレーン2が「最終投入候補」のごみを掴む動作を実行中の場合、(2)ごみ撹拌エリア120からごみ投入エリア130の「最終投入候補」に向けてごみクレーン2が移動中の場合、または(3)ごみクレーン2がごみホッパ200へごみを投入する動作を実行中の場合において、制御装置10が「投入扉開信号」を受信した場合は、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2を次のように制御する。
すなわち、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2を制御して、最終投入候補のごみを上述のように垂直撹拌してからごみホッパ200へ投入させ、バケット23を空にする。
その後、ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2を、開いたごみ投入扉111に隣接するごみ受入エリア110のマスに向けて移動させ、投入扉111から投入されて当該マスに貯留されたごみを掴ませ、ごみ撹拌エリア120のいずれかの終点候補へ向けて移動撹拌または移動散乱撹拌させる。ごみクレーン動作制御部11は、ごみクレーン2がごみ受入エリア110でごみを掴んだマスから、最も近い終点候補に向けて、ごみクレーン2を制御するのが望ましい。当該最も近い終点候補の周囲の凹凸が大きい場合には、ごみクレーン動作制御部11は、選択部13がバケット23の上下移動を少なくなるように選択した先述の最終終点候補に向けてごみクレーン2を制御すると、ごみクレーン2の移動時間を総合的に短縮することができる。
【0036】
上述のように、表示部16は、オペレータが操作盤17で設定することで、記憶部15に記憶されたごみピット100の各マスの情報を、二次元的または三次元的に表示することができる。
図6は、表示部16が、ごみ撹拌エリア120の各マスを二次元的に表示した例である。「移動撹拌」を実行した場合には、その実行前と実行後で、複数の始点候補(第一始点候補、第二始点候補)と複数の終点候補(第一終点候補、第二終点候補)が変化する。そこで、
図6では、撹拌前の図(
図4と同一)を左図、撹拌後の図を右図として併記している。
同様に、
図9は、表示部16が、ごみ撹拌エリア120の各マスを二次元的に表示した別の例である。ただし、
図9は、
図6と異なり、「移動散乱撹拌」を実行した場合の図である。
図9では、
図6と同様に、撹拌前の図(
図4と同一)を左図、撹拌後の図を右図として併記している。なお、移動散乱撹拌の場合は、最終始点候補や最終終点候補以外のマスの情報も、実行前後で変化する。
図11は、ごみピット100のごみ撹拌エリア120とごみ投入エリア130の各マスを、三次元的に表示した例である。各マスのごみの高さを、オペレータ等、人が視覚的に認識したい場合には、平面、すなわち二次元的な表示よりも、立体、すなわち三次元的な表示の方が優れている。
表示部16は、ごみ受入エリア110、ごみ撹拌エリア120、ごみ投入エリア130の全てのエリアの各マスを二次元的または三次元的に表示することもできるし、この中の1つのエリア、または2つのエリアを抽出して、これらの各マスを二次元的または三次元的に表示することもできる。
【0037】
では、
図6、
図7、
図8を用いて、ごみクレーン制御システム1が「移動撹拌」を実行した場合の表示部16における表示の変化について説明する。説明の簡便のため、
図6の撹拌前の図(左図)は
図4と同一であり、ごみクレーン2の現在の位置は
図4で示された位置と同じであり、ごみクレーン制御システム1が「手動運転」されるとして説明する。
移動先でバケット23から落下するごみの撹拌度は、本来、バケット23に掴まれたごみの平均的な撹拌度に、[0019]で示した式、すなわち、「(K1×撹拌評価点)+(K2×かさ比重評価点)+(K3×滞留時間評価点)」の式で得られる値を加算するが、説明の簡便のため、K1=1、K2=K3=0とし、当該式を簡略化して説明する。すなわち、「移動先でバケット23から落下するごみの撹拌度」=「バケット23に掴まれたごみの平均的な撹拌度」+「撹拌評価点」として説明する。ここでは、移動撹拌の評価点は「0.5」とする。
この場合、
図4を用いて既に説明した通り、「A1」マスが最終始点候補となる。そして、「E5」マスが第一終点候補であり、「B3」マスが第二終点候補であるが、オペレータは、「B3」マスを最終終点候補として選択したとして説明を続ける。
上述のとおり、「最終始点候補」と「最終終点候補」の距離が所定距離である2マス以内であるので、「A1」マスから「B3」マスへの「移動撹拌」が実行される。
「A1」マスの各層のごみの高さおよび各層の撹拌度について、撹拌前後の変化を
図7に示す。また、「B3」マスの各層のごみの高さおよび各層の撹拌度について、撹拌前後の変化を
図8に示す。
【0038】
先述のように、バケット23が掴むごみは、表面から深さ方向に3ブロック分(高さ「3.0」)である。従って、「A1」マスのごみ表面から3ブロック分のごみが取り除かれると、
図7の右図にあるように、「A1」マスのごみ表面は、撹拌度「4.0」の層となる。そして、「A1」マスで表示される括弧書きの撹拌度、すなわち平均的な撹拌度は、当該表面から3ブロック分の撹拌度の平均値であるので、(4.0+3.2+6.5)/3≒4.6となる。
また、「A1」マスでは、移動撹拌前の高さから3ブロック分が取り除かれたので、撹拌前に高さ「10.0」であったのが、撹拌後には高さ「7.0」となる。
さらに、上述のルールによれば、高さ「7.0」は記号化された高さ「M」に相当し、平均的な撹拌度4.6は四捨五入して整数化すると「5」であるので、「A1」マスの撹拌パラメータは、
図6の右図に示すように、移動撹拌後に「5M」に変化する。
一方、移動撹拌前の「B3」マスは、
図8の左図に示すように、表面に高さ「0.2」で撹拌度「1.5」のブロックと、その直下に下方に向かって順に、高さ「1.0」で撹拌度「2.5」のブロック、高さ「1.0」で撹拌度「2.3」のブロック、高さ「1.0」で撹拌度「3.0」のブロックが積層している。従って、「B3」マスで表示される括弧書きの撹拌度、すなわち平均的な撹拌度は、当該表面から3ブロック分の撹拌度の平均値であるので、(1.5×0.2+2.5+2.3+3.0×(1−0.2))/3=2.5となる。また、「B3」マスの高さは、高さ「1.0」のブロックが3ブロックと、高さ「0.2」のブロックが1ブロック積層されているので、(1.0×3+0.2)=3.2となる。従って、上述のルールによれば、高さ「3.2」は記号化された高さ「L」に相当し、平均的な撹拌度2.5は四捨五入して整数化すると「3」であるので、「B3」マスの撹拌パラメータは、
図6の左図に示すように、撹拌前は「3L」と表示される。
【0039】
そして、移動撹拌後、「B3」マスの情報は、
図6の右図に示すように変化する。これは、以下の理由による。
「A1」マスで取り除かれた3ブロック分(いずれも高さ「1.0」で、各々、撹拌度「1.4」、「1.0」、「1.2」)のごみは、バケット23内で混ざり、撹拌度が平均化される。すなわち、平均化された撹拌度は(1.4+1.0+1.2)/3=1.2となる。そして、移動撹拌の評価点は「0.5」であるので、移動先である「B3」マスにバケット23から落下するごみの撹拌度は、1.2+0.5=1.7となる。そして、撹拌前に高さ「3.2」の「B3」マスに、高さ「3.0」(3ブロック分)のごみが落下するので、撹拌後の「B3」マスの高さは、(3.2+3.0)=6.2となる。従って、上述のルールによれば、高さ「6.2」は記号化された高さ「M」に相当し、平均的な撹拌度1.7は四捨五入して整数化すると「2」であるので、「B3」マスの撹拌パラメータは「2M」と表示される。
【0040】
そして、移動撹拌が実行されることで、選択部13が選択する複数の始点候補と複数の終点候補が別のマスに変化しうる。
図6の場合、撹拌前は、「A1」マスが第一始点候補、「E1」マスが第二始点候補であり、「E5」マスが第一終点候補、「B3」マスが第二終点候補であったが、撹拌後は、「E1」マスが第一始点候補、「D1」マスが第二始点候補となり、「E5」マスが第一終点候補(変化せず)、「D4」マスが第二終点候補となる。
【0041】
次に、
図9及び
図10を用いて、ごみクレーン制御システム1が「移動散乱撹拌」を実行した場合の表示部16における表示の変化について説明する。説明の簡便のため、
図9の撹拌前の図(左図)は
図4と同一であり、ごみクレーン2の現在の位置は
図4で示された位置と同じであり、ごみクレーン制御システム1が「自動運転」されるとして説明する。自動運転であるので、撹拌前において、複数の始点候補の中から「A1」マスが最終始点候補として選択され、複数の終点候補の中から「E5」マスが最終終点候補として選択される。
従って、「A1」マスから「E5」マスに向かって移動散乱撹拌が実行される。
ここで、移動散乱撹拌の場合、ごみクレーン2の移動中に掴んだごみを随時落下させるため、説明の簡便のため、
図9の左図に示した点線内のマス(最終始点候補の「A1」マスを除く)に均等に同量のごみが落下するとして説明する。なお、実際には、上述のように、ごみクレーン2の重量センサ22は重量情報を、ごみクレーン2の位置センサ21は位置情報を、時々刻々、リアルタイムに制御装置10へ送信するので、制御装置10は、移動途中で各マスに落下するごみの量を適切に把握して詳細かつ複雑な処理を行い、表示部16に各マスの情報を表示することができる。
また、ここでは、先述の「移動撹拌」の場合と同様、説明の簡便のため、「移動先でバケット23から落下するごみの撹拌度」=「バケット23に掴まれたごみの平均的な撹拌度」+「撹拌評価点」として説明する。ここでは、移動散乱撹拌の評価点は「1.0」とする。
【0042】
最終始点候補の「A1」マスにおける撹拌前後の情報の変化については、上述の
図7に示した「移動撹拌」の場合と同一であるので、説明を省略する。
一方、移動散乱撹拌前の「E5」マスは、
図10の左図に示すように、表面に高さ「1.0」で撹拌度「1.0」のブロックと、その直下に下方に向かって順に、高さ「1.0」で撹拌度「1.1」のブロック、高さ「1.0」で撹拌度「1.5」のブロックが積層している。従って、「E5」マスで表示される括弧書きの撹拌度、すなわち平均的な撹拌度は、当該表面から3ブロック分の撹拌度の平均値であるので、(1.0+1.1+1.5)/3=1.2となる。また、「E5」マスの高さは、高さ「1.0」のブロックが3ブロック積層されているので、(1.0×3)=3.0となる。従って、上述のルールによれば、高さ「3.0」は記号化された高さ「L」に相当し、平均的な撹拌度1.2は四捨五入して整数化すると「1」であるので、「E5」マスの撹拌パラメータは、
図9の左図に示すように、撹拌前は「1L」と表示される。
【0043】
そして、移動撹拌後、「E5」マスの情報は、
図9の右図に示すように変化する。これは、以下の理由による。
まず、最終始点候補の「A1」マスで取り除かれた3ブロック分(いずれも高さ「1.0」で、各々、撹拌度「1.4」、「1.0」、「1.2」)のごみは、バケット23内で混ざり、撹拌度が平均化される。すなわち、平均化された撹拌度は(1.4+1.0+1.2)/3=1.2となる。そして、移動散乱撹拌の評価点は「1.0」であるので、バケット23から落下するごみの撹拌度は、1.2+1.0=2.2となる。
次に、最終始点候補の「A1」マスを除き、最終終点候補の「E5」マスに向かう上記点線内の範囲に存在するマスは、面積の半分が当該範囲に含まれる8つのマス(「B1」マス、「A2」マス、「C2」マス、「B3」マス、「D3」マス、「C4」マス、「E4」マス、「D5」マス)、及び、全面積が当該範囲に含まれる4つのマス(「B2」マス、「C3」マス、「D4」マス、「E5」マス)である。バケット23は高さ「1.0」のブロックを3つ掴んでおり、これらのマスにごみの量が均等に落下するので、最終終点候補の「E5」マスの高さの増分は、3/(8/2+4)≒0.4となる。従って、撹拌後の「E5」マスの高さは、(3.0+0.4)=3.4となる。
そして、撹拌後、「E5」マスには、高さ「0.4」、撹拌度「2.2」のブロックが積層するので、「E5」マスで表示される括弧書きの撹拌度、すなわち平均的な撹拌度は、当該表面から3ブロック分の撹拌度の平均値であるので、(2.2×0.4+1.0+1.1+1.5×(1−0.4))/3≒1.3となる。
従って、上述のルールによれば、高さ「3.4」は記号化された高さ「L」に相当し、平均的な撹拌度1.3は四捨五入して整数化すると「1」であるので、「E5」マスの撹拌パラメータは、
図9の右図に示すように、移動撹拌後に「1L」に変化する。
【0044】
そして、移動散乱撹拌が実行されることで、選択部13が選択する複数の始点候補と複数の終点候補が別のマスに変化しうる。
図9の場合、撹拌前は、「A1」マスが第一始点候補、「E1」マスが第二始点候補であり、「E5」マスが第一終点候補、「B3」マスが第二終点候補であったが、撹拌後は、「E1」マスが第一始点候補、「D1」マスが第二始点候補となり、「A5」マスが第一終点候補、「B5」マスが第二終点候補となる。
【0045】
以上、実施形態のごみクレーン制御システム1について詳述したが、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【解決手段】ごみピットに仮想的に配置した格子の各マスに貯留されたごみの撹拌度及び高さを演算し、各マスの中から少なくとも2つの始点候補及び終点候補を選択し、最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを始点候補として選択し、複数存在する場合は、複数のマスのうち撹拌度が最も低いマスを始点候補として選択し、始点候補を除き、最も高さが高いマスが唯一存在する場合はこれを別の始点候補として選択し、複数存在する場合は、撹拌度が最も低いマスを別の始点候補として選択する。ごみクレーンは、複数の始点候補のうち最も近い始点候補から終点候補に向かって移動され、移動撹拌または移動散乱撹拌を行う。