(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<記録シート>>
本発明の記録シートは、基材の少なくとも一方の面上にインク受容層を備えた記録シートであって、前記インク受容層は、顔料及びバインダーを含有し、前記インク受容層は、前記顔料として、平均2次粒子径が異なる第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウムを含有し、前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径が1μm未満であり、前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径が2〜5μmであり、前記インク受容層は、前記バインダーとして、重合度が500より大きく2500以下であり、かつケン化度が82モル%以上であるポリビニルアルコールを含有し、前記インク受容層において、前記バインダーの総含有量に対する前記ポリビニルアルコールの含有量の割合が50質量%よりも大きいものである。
本発明の記録シートは、インク受容層が上記のような限定的な組成を有することにより、インクの乾燥性が高く、ドット滲みを抑制でき、インク受容層の強度が高く、極めて優れたインクジェット印刷適性を有する。ここで、「インク受容層の強度」とは、インク受容層が水分の共存下及び非共存下のいずれにおいても、その構造を安定して保持できる程度を意味する。インク受容層が水分の共存下でその構造を安定して保持できる程度は、耐水性と呼ぶこともできる。例えば、フルカラープリントでは、インクの使用量が多くなるが、その場合でも、本発明の記録シートは耐水性が高いため、インク受容層の構造を安定して保持できる。また、本発明の記録シートは、水分の非共存下でもインク受容層の構造を安定して保持できる。
【0012】
前記インク受容層は、これを構成するための成分を含有するインク受容層用組成物を基材上に塗工し、乾燥させることで形成できる。
インク受容層用組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、インク受容層の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
【0013】
本発明の記録シートは、例えば、インクジェット用記録シート及び液体トナー用記録シートのいずれとしても使用可能であり、汎用性が高い。
以下、本発明の記録シートについて、おもにインクジェット用記録シートを例に挙げて説明する。
【0014】
<インク受容層用組成物>
前記インク受容層用組成物(以下、単に「組成物」と略記することがある)としては、例えば、前記顔料、バインダー、及び必要に応じてこれらのいずれにも該当しないその他の成分を含有するものが挙げられる。
以下、各成分について説明する。
【0015】
[顔料]
前記顔料は、インク受容層において、インク中の顔料を保持し、水分の吸収及び透過に影響を与える成分である。
インク受容層用組成物及びインク受容層は、前記顔料として、平均2次粒子径が異なる第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウムを含有する。
【0016】
炭酸カルシウムには、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムが存在する。
重質炭酸カルシウムは、天然の石灰石を粉砕分級したものである。
軽質炭酸カルシウムは、化学的に合成したものであり、その粒子の形や大きさは化学的に制御できる。軽質炭酸カルシウムの粒子の形は、通常、立方形、紡錘形、柱形等である。軽質炭酸カルシウムには、1次粒子が単体粒子として存在するものと、1次粒子が凝集して2次粒子を形成したものとがある。
1次粒子が凝集して2次粒子を形成した軽質炭酸カルシウムを凝集軽質炭酸カルシウムという。1次粒子の平均粒子径(平均1次粒子径)は、例えば、走査型電子顕微鏡での観察結果から求められる。2次粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折法での測定により求められる。
本発明においては、前記顔料として、少なくとも平均2次粒子径が互いに異なる第1の凝集軽質炭酸カルシウム及び第2の凝集軽質炭酸カルシウムを用いる。
【0017】
前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径は1μm未満であり、前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径は2〜5μmである。インク受容層は、平均2次粒子径が1μm未満の凝集軽質炭酸カルシウムを含有することにより、インクジェット印刷した場合のドット滲みを抑制する効果が高くなる。また、インク受容層は、平均2次粒子径が2〜5μmの凝集軽質炭酸カルシウムを含有することにより、インクジェット印刷した場合のインクの乾燥性が高くなる。ここで、「インクの乾燥性が高い」とは、インクの乾燥に要する時間が短いことを意味する。
【0018】
インク受容層用組成物及びインク受容層において、第1の凝集軽質炭酸カルシウムの含有量:第2の凝集軽質炭酸カルシウムの含有量の比率は、特に限定されないが、10:90〜90:10であることが好ましく、10:90〜80:20であることがより好ましい。ドット滲みの抑制効果を向上させる点では、第1の凝集軽質炭酸カルシウムの含有量が多いことが好ましく、インクの乾燥性を向上させる点では、第2の凝集軽質炭酸カルシウムの含有量が多いことが好ましい。第1の凝集軽質炭酸カルシウムの含有量:第2の凝集軽質炭酸カルシウムの含有量の比率が、例えば、10:90〜40:60であることにより、ドット滲みの抑制効果の向上と乾燥性の向上との双方をさらにバランスよく達成できる。
【0019】
インク受容層用組成物及びインク受容層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウム以外のその他の顔料を含有していてもよい。
前記その他の顔料としては、例えば、第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウム以外の凝集軽質炭酸カルシウム、上述の重質炭酸カルシウム等の、第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウム以外の炭酸カルシウムが挙げられる。
【0020】
第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウム、並びに前記その他の顔料は、いずれも1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0021】
インク受容層用組成物及びインク受容層において、顔料の総含有量に対する、第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウムの合計含有量の割合は、92質量%以上であることが好ましく、94質量%以上であることがより好ましく、96質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0022】
インク受容層用組成物における、後述する溶媒以外の成分の総含有量に対する顔料の含有量の割合(すなわち、インク受容層の顔料の含有量)は、70〜95質量%であることが好ましく、75〜92質量%であることがより好ましく、80〜90質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、顔料を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、前記割合が前記上限値以下であることで、インク受容層の強度がより高くなる。
なお、本明細書において、「顔料の含有量」とは、特に断りのない限り、第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウムだけでなく、その他の顔料も含めて、用いているすべての顔料の含有量(すなわち、顔料の総含有量)を意味する。
【0023】
[バインダー]
前記バインダーは、インク受容層において、これが含有する顔料(第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウム等)を保持する成分である。
インク受容層用組成物及びインク受容層は、前記バインダーとして、重合度が500より大きく2500以下であり、かつケン化度が82モル%以上であるポリビニルアルコールを含有する。前記ポリビニルアルコールは、インク受容層におけるインクの乾燥性及びドット滲み、並びにインク受容層の強度にも影響を与える成分である。
【0024】
バインダーとして使用可能なポリビニルアルコールとしては、例えば、完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコール等が挙げられる。本発明においては、これらポリビニルアルコールのうち、重合度が500より大きく2500以下であり、かつケン化度が82モル%以上であるものを用いることができる。
【0025】
前記ポリビニルアルコールの重合度は、600〜2500であることが好ましく、700〜2500であることがより好ましく、800〜2500であることがさらに好ましく、900〜2500であることが特に好ましい。
【0026】
前記ポリビニルアルコールのケン化度は、82モル%以上であり、83モル%以上であることが好ましく、84モル%以上であることがより好ましく、85モル%以上であることがさらに好ましく、86モル%以上であることが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度が前記下限値以上であることで、ドット滲みの抑制効果がより高くなり、インク受容層の強度がより高くなる。前記ポリビニルアルコールのケン化度の上限値は特に限定されず、例えば、99.5モル%であってもよいし、100モル%であってもよい。
【0027】
インク受容層用組成物及びインク受容層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記ポリビニルアルコール以外のその他のバインダーを含有していてもよい。
前記その他のバインダーとしては、例えば、前記ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子等が挙げられる。
【0028】
前記水溶性高分子としては、例えば、完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールで、重合度が500以下であるか、重合度が2500より大きいか、又はケン化度が82モル%未満であるもの(以下、「その他のポリビニルアルコール」と略記することがある);カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール;酸化デンプン;リン酸エステル化デンプン;ローコンス;カゼイン;カルボキシメチルセルロース(CMC);エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等のポリウレタン等が挙げられる。
【0029】
前記ポリウレタンは、例えば、カチオン性、アニオン性及び非イオン性のいずれでもよい。
【0030】
前記ポリビニルアルコール、及び前記その他のバインダーは、いずれも1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0031】
インク受容層用組成物及びインク受容層において、バインダーの総含有量に対する、前記ポリビニルアルコール(重合度が500より大きく2500以下であり、かつケン化度が82モル%以上であるポリビニルアルコール)の含有量の割合は、50質量%よりも大きく、55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、例えば、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上及び95質量%以上のいずれかであってもよいし、100質量%であってもよい。
【0032】
インク受容層用組成物及びインク受容層において、顔料の含有量に対する、バインダーの含有量の割合は、3〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましく、5〜13質量%であることが特に好ましく、例えば、5〜12質量%であってもよい。特に、後述する多価金属塩として硫酸アルミニウムカリウムをインク受容層が含有していない場合には、インク受容層用組成物及びインク受容層において、顔料の含有量に対する、バインダーの含有量の割合は、12質量%以下であることが好ましく、11質量%以下であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、インク受容層の強度がより高くなり、前記割合が前記上限値以下であることで、インク受容層でのインクの乾燥性がより高くなる。
なお、本明細書において、「バインダーの含有量」とは、特に断りのない限り、重合度が500より大きく2500以下であり、かつケン化度が82モル%以上であるポリビニルアルコールだけでなく、その他のバインダーも含めて、用いているすべてのバインダーの含有量(すなわち、バインダーの総含有量)を意味する。
【0033】
[その他の成分]
前記その他の成分としては、例えば、溶媒、カチオン樹脂、多価金属塩、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、酸化防止剤、防腐剤、耐水化剤、紙力増強剤、着色染料、着色顔料、色素定着剤、顔料分散剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等、インクジェット用記録シートのインク受容層において通常使用される成分が挙げられる。
前記その他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0034】
(溶媒)
前記溶媒とは、前記顔料又はバインダーを分散物として配合し、そのときの分散媒として使用したもの以外に溶媒を使用しなかった場合には、前記分散媒を指す。また、前記分散媒として使用したもの以外に、別途溶媒を配合した場合には、前記分散媒とこの別途配合した溶媒の双方を指す。そして、顔料及びバインダーを共に固形物として配合した場合には、これらとは別に配合した溶媒を指す。
前記溶媒としては、例えば、水、アルコール等が挙げられる。
【0035】
溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0036】
インク受容層用組成物の溶媒の含有量は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、20〜60質量%であることが好ましい。
【0037】
(カチオン樹脂)
前記カチオン樹脂は、インクの定着剤として好適なものであり、水に溶解したときに解離してカチオン性を呈するものが好ましい。
なかでも、カチオン樹脂は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン若しくは第4級アンモニウム塩のモノマー、オリゴマー又はポリマーであることが好ましく、前記オリゴマー又はポリマーであることがより好ましい。
カチオン樹脂でさらに好ましいものとしては、例えば、アルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合物;第2級アミノ基、第3級アミノ基又は第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体;ポリビニルアミン;ポリビニルアミジン;5員環アミジン類;ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体等のジシアン系カチオン樹脂;ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合物等のポリアミン系カチオン樹脂;ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類及びその誘導体;ジアリルジメチルアンモニウム−SO
2共重合物;ジアリルアミン塩−SO
2共重合物;ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物;アリルアミン塩の重合物;ビニルベンジルトリアリルアンモニウム塩の単独重合体又は共重合体;ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合物;アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物;ポリ塩化アルミニウム、ポリ酢酸アルミニウム等のアルミニウム塩が挙げられ、アルキルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物であることが特に好ましく、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物であることが最も好ましい。
なお、本明細書において「誘導体」、「類」との記載は、特に断りのない限り、元の化合物の1個以上の水素原子が水素原子以外の基(原子)で置換されているものを意味する。
【0038】
カチオン樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0039】
インク受容層用組成物及びインク受容層において、顔料の含有量に対する、カチオン樹脂の含有量の割合は、1〜40質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい。
【0040】
(多価金属塩)
前記多価金属塩は、インクの乾燥性を向上させる成分であり、価数が2以上の金属カチオンを構成成分とするものであれば特に限定されない。
多価金属塩としては、例えば、塩化カルシウム(CaCl
2)、塩化マグネシウム(MgCl
2)、塩化アルミニウム(AlCl
3)、塩化バリウム(BaCl
2)、塩化亜鉛(ZnCl
2)、硫酸カルシウム(CaSO
4)、硫酸マグネシウム(MgSO
4)、硝酸カルシウム(Ca(NO
3)
2)、酢酸マグネシウム((CH
3COO)
2Mg)、酢酸カルシウム((CH
3COO)
2Ca)、硫酸アルミニウムカリウム(カリミョウバン、AlK(SO
4)
2)等が挙げられる。
多価金属塩は水和物であってもよいし、非水和物であってもよい。
なかでも、多価金属塩は、インクの乾燥性及び発色濃度、並びにインク受容層の耐水性及び耐擦過性等のインクジェット印刷適性をバランスよく向上させることができ、安全性も高い点で、塩化カルシウム、塩化マグネシウム又は硫酸アルミニウムカリウムであることが好ましく、特にインクの乾燥性がより向上する点では、硫酸アルミニウムカリウムであることが好ましい。
【0041】
多価金属塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0042】
インク受容層用組成物及びインク受容層は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び硫酸アルミニウムカリウムからなる群より選択される1種以上を含有するものが好ましく、硫酸アルミニウムカリウムを含有するものがより好ましく、硫酸アルミニウムカリウムを含有する場合、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムのいずれか一方又は両方を含有するものもより好ましい。インク受容層は、少なくとも硫酸アルミニウムカリウムを含有することで、インクの乾燥性がより向上する。
【0043】
インク受容層用組成物及びインク受容層において、顔料の含有量に対する、多価金属塩の含有量の割合は、3〜55質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、3〜15質量%であることがさらに好ましく、3〜10質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、多価金属塩を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、前記割合が前記上限値以下であることで、多価金属塩の過剰使用が抑制される。
【0044】
インク受容層用組成物及びインク受容層が硫酸アルミニウムカリウムを含有する場合、インク受容層用組成物及びインク受容層において、多価金属塩の総含有量に対する、硫酸アルミニウムカリウムの含有量の割合は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、硫酸アルミニウムカリウムを用いたことによる効果がより顕著に得られる。
一方、インク受容層用組成物及びインク受容層において、多価金属塩の総含有量に対する、硫酸アルミニウムカリウムの含有量の割合の上限値は、特に限定されず、例えば、70質量%、80質量%、90質量%及び100質量%のいずれかから選択できるが、これらに限定されない。
【0045】
インク受容層用組成物における、前記その他の成分の総含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。
【0046】
<インク受容層用組成物の製造方法>
インク受容層用組成物は、前記顔料、バインダー、及び必要に応じてその他の成分を配合して、これら配合成分を十分に撹拌することで製造できる。インク受容層用組成物において、顔料及びバインダーは、共に分散されていることが好ましい。
【0047】
各成分は、一度にまとめて配合してもよいし、成分ごとに順次配合してもよく、一部の成分のみをまとめて配合してもよい。各成分の配合順序は特に限定されない。
【0048】
各成分の配合時の温度は特に限定されず、配合成分の種類等に応じて適宜調節すればよいが、通常は、15〜30℃であることが好ましい。
撹拌は、ミキサーを使用する方法等、分散物を調製する公知の方法で行えばよい。撹拌時間は、製造するインク受容層用組成物の総量や撹拌方法等に応じて、適宜調節すればよく、例えば、10分〜24時間であることが好ましい。
【0049】
本発明の記録シートは、前記インク受容層用組成物を基材上に塗工し、乾燥させて、インク受容層を形成することで製造できる。
【0050】
基材の材質は特に限定されず、塗工層を形成可能なものから目的に応じて選択すればよい。
基材の材質として、具体的には、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、レジンコート紙、合成紙等の紙類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の合成樹脂等が挙げられる。
【0051】
基材の厚さは、基材の形状がシート状又はフィルム状である限り、特に限定されないが、20〜1000μmであることが好ましく、35〜500μmであることがより好ましく、50〜200μmであることが特に好ましい。基材の厚さが前記下限値以上であることで、インク受容層の構造をより安定して保持でき、基材の厚さが前記上限値以下であることで、記録シートとしての取り扱い性がより良好となる。
【0052】
基材は、単層からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが異なっていてもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。ここで、複数層が互いに異なるとは、各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
なお、基材が複数層からなる場合には、各層の合計の厚さが、上記の好ましい基材の厚さとなるようにするとよい。
【0053】
インク受容層用組成物の塗工方法は特に限定されず、液状物を塗工できる方法であれば、いずれでもよい。具体的な塗工方法としては、例えば、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、グラビアオフセットコーター等の各種コーター;ワイヤーバーコーター等の装置を使用する公知の方法が挙げられる。
【0054】
インク受容層用組成物の基材上への塗工は、1回で行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。塗工を複数回に分けて行う場合には、乾燥させた塗工層上に、さらにインク受容層用組成物を塗工する方法、及び、乾燥させていない塗工層上に、さらにインク受容層用組成物を塗工する方法のいずれでもよい。
インク受容層用組成物の塗工量は、インク受容層用組成物の固形分濃度、インク受容層の厚さ等を考慮して、適宜調節すればよい。
【0055】
塗工したインク受容層用組成物は、送風乾燥、加熱送風乾燥等、公知の方法で乾燥させればよい。乾燥温度、乾燥時間等の条件は、乾燥方法に応じて適宜設定すればよい。
【0056】
インク受容層の厚さは、1〜30μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましい。インク受容層の厚さがこのような範囲であることで、インク受容層の構造をより安定して保持できると共に、本発明の効果により優れた記録シートとなる。
インク受容層の厚さがこのような範囲である場合、基材上でのインク受容層の形成量は、1〜30g/m
2であることが好ましく、2〜20g/m
2であることがより好ましい。
【0057】
本発明の記録シートは、インク受容層を基材の少なくとも一方の面上に備えていればよく、片面上のみに備えていてもよいし、両面上に備えていてもよい。
本発明の記録シートが、基材の両面上にインク受容層を備えている場合、これら2層のインク受容層は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0058】
図1は、本発明の記録シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。また、
図2は、本発明の記録シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
なお、
図2においては、
図1に示すものと同じ構成要素には、
図1の場合と同じ符号を付している。
また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0059】
図1に示す記録シート1は、基材11の一方の面11a上のみにインク受容層12を備えたものである。
また、
図2に示す記録シート2は、基材11の一方の面11a上及び他方の面11b上に、ともにインク受容層12を備えたものである。記録シート2における2層のインク受容層12,12については、必要に応じて、基材11の一方の面11a上に設けられているものを第1インク受容層121として示し、基材11の他方の面11b上に設けられているものを第2インク受容層122として示して、互いに区別する。
図1及び
図2において、基材11及びインク受容層12(第1インク受容層121、第2インク受容層122)は、それぞれ上記で説明したものである。
ただし、
図1及び
図2に示す記録シートは、本発明の記録シートの一例に過ぎず、本発明の記録シートはこれらに限定されない。
【0060】
本発明の記録シートにおいて、インク受容層は、基材上の形成対象面の全面に設けられていてもよいし、一部の面のみに設けられていてもよい。
本発明の記録シートをインク受容層が設けられている側の上方から見下ろして平面視したときに、インク受容層の表面積は、基材の表面積に対して同等以下であればよく、この条件を満たす限り、特に限定されない。そして、このように平面視したときのインク受容層及び基材の形状も、目的に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
【0061】
本発明の記録シートは、インク受容層形成後に、マシンカレンダー、TGカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー、コンパクトカレンダー、マットスーパーカレンダー、マットカレンダー等の装置を使用して、表面が平滑化処理されていてもよい。表面が平滑化処理された記録シートは、表面の光沢度が高くなる。
【0062】
カレンダー装置は、コーターと分離されたオフタイプ、及びコーターと一体となったオンタイプのいずれであってもよい。
カレンダー装置のうちロールには、例えば、剛性ロール及び弾性ロールがある。
前記剛性ロールとしては、例えば、金属製ロール、金属の表面が硬質クロムメッキ等で鏡面処理されたロール等が挙げられる。
前記弾性ロールとしては、例えば、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂又はポリアクリレート等の樹脂製ロール;コットン、ナイロン、アスベスト又はアラミド繊維等を成型したロール等が挙げられる。
【0063】
平滑化処理の条件は、剛性ロールの温度、カレンダー圧力、ニップ数、ロール速度、平滑化処理前の紙水分等により、要求される品質に応じて適宜選択される。
【0064】
基材上にインク受容層が形成された後に表面が平滑化処理された記録シートは、その厚さ方向に圧縮されているため、基材やインク受容層がより目詰まりして通気性が低下し(例えば、透気度の値が大きくなり)、通常であれば、インクの通りが悪くなって乾燥性が低下する傾向にある。しかし、本発明の記録シートは、表面が平滑化処理されていても、インク受容層が上記のような限定的な組成を有することにより、インクの乾燥性の低下が抑制されている。
また、本発明の記録シートは、平滑化処理のとき、例えば、カレンダー装置のロール等によって押圧されるが、インク受容層の強度が高いため、インク受容層の基材からの剥がれ(剥離)が抑制される。
【0065】
本発明の記録シートは、上述のように、インクジェット用記録シートとして好適なものであるが、さらに液体トナー用記録シートとしても好適である。本発明の記録シートを液体トナー用記録シートとして用いる場合、インク受容層は、液体トナーの受容層として機能する。
本発明の記録シートは、インク受容層が上記のような特定範囲の材料で構成されるため、このようにインクジェット用及び液体トナー用のいずれとしても用いることができ、汎用性に優れる。
【実施例】
【0066】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
なお、以下に示す表において、配合成分の欄における「−」との記載は、その成分が配合されていないことを意味する。また、評価結果の欄における「−」との記載は、その項目が未評価であることを意味する。
【0067】
<使用原料>
インク受容層用組成物の製造で用いた原料を以下に示す。
[顔料]
表1に示す物性の顔料を用いた。
表1に示す顔料の平均1次粒子径は、走査型電子顕微鏡を用いて顔料を倍率30000倍で観察し、1次粒子20個の粒子径を測定してその平均値として算出したものである。表1に示す顔料の平均2次粒子径又は平均粒子径は、日機装社製「MICROTRAC MT3000」を用いたレーザー回折法により、測定したものである。測定結果は個数基準に換算した。
[バインダー]
表2に示す特性のバインダーを用いた。
[カチオン樹脂]
アルキルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物(里田化工社製「Jetfix260」)を用いた。
[多価金属塩]
塩化カルシウム(CaCl
2)及び硫酸アルミニウムカリウム(AlK(SO
4)
2)を用いた。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表3に、インク受容層用組成物の配合成分及び配合量を示す。表3中の配合量の数字の単位はすべて質量部であり、固形分換算した量である。
【0071】
<インクジェット用記録シートの製造>
[実施例1]
顔料(A)(平均2次粒子径0.49μmの凝集軽質炭酸カルシウム)25質量部と顔料(B)(平均2次粒子径3.39μmの凝集軽質炭酸カルシウム)75質量部を混合したものに、ポリビニルアルコール(「PVA117」)7.5質量部(固形分)を加え、さらにカチオン樹脂(「Jetfix260」)2.5質量部、塩化カルシウム4.3質量部、硫酸アルミニウムカリウム2.1質量部を加えて、固形分濃度が40質量%となるように水を加え、撹拌機を用いて25℃で1時間撹拌することで十分に分散を行い、インク受容層用組成物を製造した。
【0072】
得られたインク受容層用組成物を、エアナイフコーターを用いて、基材(フォーム用紙、日本製紙社製「NPiフォーム<90>」、厚さ128±8μm、A4サイズ)の片面上に塗工し、エアドライヤーを用いて熱風を吹き付けることで加熱送風乾燥を行い、厚さが14.5μmのインク受容層を形成した。インク受容層の形成量は12g/m
2であった。次いで、このインク受容層を形成した基材に対して、下記方法でカレンダーによる平滑化処理を行い、インクジェット用記録シートを製造した。
【0073】
(平滑化処理)
ロール温度を40〜50℃に設定した実機スーパーカレンダー装置を用いて、表面の光沢度が10〜50となるように、平滑化処理を行った。
【0074】
[実施例2〜20、比較例1〜5]
インク受容層用組成物の配合成分及び配合量の少なくとも一方を、表3に示すとおりとした点以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜20及び比較例1〜5のインクジェット用記録シートを製造した。
【0075】
なお、実施例1及び比較例1〜2では、インク受容層用組成物の基材上への塗工を、実機エアナイフコーターを用いて行い、平滑化処理を実機スケールで行った。実施例2〜20及び比較例3〜5では、インク受容層用組成物の基材上への塗工をラボスケールでのワイヤーバーを用いて行い、平滑化処理を実機スケールで行った。
【0076】
<インクジェット用記録シートの評価>
上記で得られたインクジェット用記録シートについて、下記項目を評価した。
【0077】
[インクの乾燥性]
卓上インクジェットプリンターを用いて、上記の各実施例及び比較例のインクジェット用記録シートのインク受容層上に、水性黒色顔料インクを2cm×2cmのサイズでベタ印刷(単色印刷)した。次いで、排紙直後からインクが乾燥するまでの時間(秒)を目視で判定し、下記評価基準でインクの乾燥性を評価した。なお、インクの乾燥に要する時間が3.6秒以下であれば、インクの乾燥性は極めて高く、高速インクジェットプリンター(印刷速度500f(152.4m)/分)で印刷した場合であっても、良好な乾燥性を示すことを事前に確認した。また、インクの乾燥に要する時間が3.6秒を超え5.1秒以下の場合においても、高速インクジェットプリンター(印刷速度500f(152.4m)/分)での印刷が可能な場合があり、通常の印刷では実用上問題ないことを事前に確認した。結果を表4に示す。かっこ内に乾燥に要した時間(秒)を示す。
○:インクの乾燥に要する時間が3.6秒以下である。
△:インクの乾燥に要する時間が3.6秒を超え5.1秒以下である。
×:インクの乾燥に要する時間が5.1秒を超えている。
【0078】
[ドット滲み]
ドット滲みをドット形状係数により評価した。評価サンプルは、卓上インクジェットプリンターを用いて、上記の各実施例及び比較例のインクジェット用記録シートのインク受容層上に、水性黒色顔料インクを2cm×2cmのサイズでドットが重ならないように濃度10%で印刷(単色印刷)して作成した。次いで、インクジェット用記録シートの表面の顕微鏡画像を撮影し、ドットアナライザー(王子計測機器社製「DA6000」)を用いて解析した。具体的には、ドットの周囲長及び面積を測定し、以下の計算式によりドット形状係数を算出した。
ドット形状係数=(周囲長)
2/(4π×面積)
【0079】
ドット形状係数は、ドットが真円であるときには1となり、ドットの形状が真円から離れるほど、すなわち、ドットが滲んでいるほど大きな値となる。なお、卓上インクジェットプリンター(印刷速度0.43f(0.13m)/分)で測定したドット形状係数が、高速インクジェットプリンター(印刷速度500f(152.4m)/分)で測定したドット形状係数と十分な相関があることを事前に確認した。
【0080】
上記の方法により、約30個のドットについて、ドット形状係数を算出して平均値を求め、下記評価基準でドット滲みを評価した。結果を表4に示す。かっこ内にドット形状係数の平均値を示す。
○:ドット形状係数の平均値が1.8以下である。
△:ドット形状係数の平均値が1.8を超え2.0以下である。
×:ドット形状係数の平均値が2.0を超えている。
【0081】
[インク受容層の強度(耐水性)]
基材上に形成したインク受容層に対して、10μLの水道水を滴下し、その上に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムを重ね、このフィルム上で重さ2kgの金属製ローラーを2往復させた後、前記フィルムを剥がし、基材上のインク受容層の状態について、その壊れ、剥がれの程度に基づいて、目視により下記基準でインク受容層の耐水性を評価した。結果を表4に示す。
A:インク受容層の壊れ、剥がれが認められず、耐水性が高い。
B:インク受容層の若干の剥がれが認められる。
C:インク受容層の明らかな剥がれが認められる。
D:インク受容層が壊れ、根こそぎ剥がれている。
【0082】
[インク受容層の強度(耐剥離性)]
基材上に形成したインク受容層に対して、貼付部分の長さが約50mmとなるようにセロハンテープ(登録商標)を貼り付け、このテープ上で重量2kgの錘を1往復させ、基材の表面にテープを完全に貼付した。このようにテープを完全に貼付してから30秒後に、テープの一方の端を指で持って、基材の表面に対して水平な方向へテープを引張ることで、0.5〜1.0秒の時間(引き剥がし時間)で基材の表面からテープを確実に引き剥がした。次いで、テープを引き剥がした後の基材上のインク受容層の状態について、その剥がれの程度に基づいて、目視により下記基準でインク受容層の耐剥離性を評価した。結果を表4に示す。
A:インク受容層の剥がれが認められず、耐剥離性が高い。
B:インク受容層の若干の剥がれが認められる。
C:インク受容層の明らかな剥がれが認められる。
D:インク受容層が根こそぎ剥がれている。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
上記結果から明らかなように、実施例1〜20のインクジェット用記録シートはすべて、平滑化処理を行っているにもかかわらず、インクの乾燥性が高く、ドット滲みを抑制でき、インク受容層の強度(耐水性及び耐剥離性)が高く、極めて優れたインクジェット印刷適性を有していた。また、実施例1〜20のインクジェット用記録シートはすべて、平滑化処理のときに、インク受容層の基材からの剥がれが認められなかった。
【0086】
これに対して、比較例1のインクジェット用記録シートは、バインダーであるポリビニルアルコールとして、所定の重合度のものを用いなかったことにより、インク受容層の強度(耐水性)が劣っていた。
比較例2のインクジェット用記録シートは、バインダーであるポリビニルアルコールとして、所定の重合度のものを用いず、かつバインダーとしてポリウレタンを併用したことにより、インク受容層の強度(耐剥離性)が劣っていた。
比較例3のインクジェット用記録シートは、バインダーとして所定の重合度であるポリビニルアルコールの使用量が少なかったことにより、インク受容層の強度(耐水性及び耐剥離性)が劣っていた。
比較例4のインクジェット用記録シートは、比較例3の場合と同様に、バインダーとして所定の重合度であるポリビニルアルコールの使用量が少なかったことにより、インク受容層の強度(耐水性)が劣っていた。比較例4のインクジェット用記録シートでは、顔料の配合比(組成)を比較例3とは変えることで、インク受容層の耐剥離性は改善したが、耐水性の改善は見られなかった。
比較例5のインクジェット用記録シートは、バインダーであるポリビニルアルコールとして、所定のケン化度のものを用いなかったことにより、インク受容層の強度(耐水性)が劣っていた。
【0087】
なお、上記の実施例及び比較例全般の結果から、特に、実施例1、10及び11の比較、実施例6及び7の比較、実施例8及び9の比較、実施例12及び13の比較等から、多価金属塩として硫酸アルミニウムカリウムを用いることで、インクの乾燥性が向上する傾向が見られた。
【0088】
なお、実施例1のインクジェット用記録シートについて、以下に示す方法で、さらに液体トナーの定着性について評価した。
(液体トナーの定着性)
液体トナー方式電子写真プリンタ(HP Indigoシリーズ)を用いて、インクジェット用記録シートに対して印字を行った後、前記シートの液体トナーによる印字面(ベタ面)に対して、セロハンテープ(登録商標)を貼付した。このとき、前記テープの貼付部分の長さは、約50mmとした。
次いで、前記テープ上に重さ2kgの錘を載せて、この状態で前記テープ上において前記錘を1往復させて圧力を加えることで、前記印字面に前記テープを完全に貼付した。
次いで、このように前記テープを完全に貼付してから30秒後に、前記テープの一端を指でつまんで、前記印字面に対して水平な方向で、かつ前記テープの他端の方向へ、前記テープを引き剥がした。このときの引き剥がし時間は、0.5〜1.0秒とし、前記テープを確実に引き剥がした。
次いで、前記テープを引き剥がした後のインクジェット用記録シートにおける、液体トナー印字面の状態を目視観察し、下記基準でインク受容層の耐剥離性(液体トナーの定着性)を評価した。
A:液体トナー印字面において、インク受容層の剥がれが認められず、インク受容層の耐剥離性が高い。
B:液体トナー印字面において、インク受容層の若干の剥がれが認められる。
C:液体トナー印字面において、インク受容層の明らかな剥がれが認められる。
D:液体トナー印字面が根こそぎ剥がれている。
【0089】
その結果、実施例1のインクジェット用記録シートの評価結果はAであり、このインクジェット用記録シートは、液体トナー用記録シートとしても十分に使用可能であることを確認した。