(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸素濃度を低める雰囲気ガスが内部に導入され、当該内部をワークが通過するパージボックスと、前記パージボックスの内部のワークに紫外線を照射する紫外線照射器と、を有した紫外硬化用装置と、
前記パージボックスへの雰囲気ガスの吐出圧力を入力信号に応じて制御する電空レギュレータを備え、前記吐出圧力の調整により前記パージボックスに導入される前記雰囲気ガスの流量を調整する流量調整装置と、
前記流量調整装置が備える電空レギュレータを遠隔操作する遠隔操作装置と、
前記紫外硬化用装置、及び前記流量調整装置に電力を供給する電源装置と、を備え、
前記流量調整装置は、
異常発生時に前記パージボックスへの雰囲気ガスの供給を遮断する電磁弁を備え、
前記電空レギュレータは、
前記電磁弁の上流側に設けられ、かつガス吸入側に一定以上のガス圧が加えられており、
前記遠隔操作装置は、
前記吐出圧力を指示するユーザ操作を受け付ける操作部と、
前記ユーザ操作によって指示された吐出圧力と前記電空レギュレータに入力する指示信号との対応を予め記憶したメモリを有し、当該メモリに記憶された前記対応に基づいて前記入力信号を生成して前記流量調整装置に出力する信号生成部と、を備え、
前記電源装置が、前記操作部、及び前記信号生成部を備える
ことを特徴とする紫外線硬化処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本実施形態では、紫外線硬化処理システムの一態様として、フィルムコーティングシステムを例示する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るフィルムコーティングシステム1の概略構成を示す図である。
フィルムコーティングシステム1は、紫外線硬化型のコーティング剤が塗布されたワーク2に紫外線を照射してコーティング剤を紫外線硬化させるシステムであり、ワーク2は、例えば光学フィルム等の各種のフィルム状の材料である。
図1に示すように、このフィルムコーティングシステム1は、装置本体たる紫外硬化用装置4と、電源装置6と、窒素ガス流量調整盤8と、操作装置10とを備えている。
【0015】
紫外硬化用装置4は、紫外線硬化処理を行う主装置であり、搬送機構12と、複数(図示例では2つ)の照射器14と、パージボックス16と、を備えている。
搬送機構12は、ワーク2を搬送する装置であり、このワーク2を周回動させるローラ19を備えている。ローラ19は、モータ(図示せず)に直結され、或いは、カップリングを介し減速機を経由してモータに接続されて回転駆動される。なお、ローラ19に代えて、ワーク2を搬送する任意の機構を用いることもできる。
【0016】
照射器14は、紫外線をワーク2に照射する紫外線照射器であり、ローラ19の周面に対面配置されている。照射器14の光源には、コーティング剤の硬化速度を速めてコーティング処理のスループット向上を図るために、高出力タイプの紫外線放電ランプ20(例えば水銀ランプなど)が用いられている。
【0017】
パージボックス16は、酸素濃度を低めた雰囲気下でワーク2に紫外線照射をするために設けられている装置であり、雰囲気ガスとして不活性ガスが注入されて内部の酸素濃度が低められている。このフィルムコーティングシステム1が不活性ガスに用いるガスは窒素ガスであり、窒素ガスに代えて、ヘリウムガスやネオンガス、アルゴンガス等の希ガスを不活性ガスに用いることもできる。
【0018】
図2はパージボックス16の断面を照射器14、及びローラ19と共に示す拡大図であり、
図3はパージボックス16の構成をローラ19と共に示す斜視図である。
図2、及び
図3に示すように、パージボックス16は、ローラ19の周面19Aが挿入される開口24を有した筐体25を備えている。この筐体25には、開口24から挿入されたローラ19の周面19Aに対面する箇所に、
図3に示すように、当該ローラ19の幅方向に延びる紫外線導入窓26が設けられている。照射器14は紫外線照射口14Aを紫外線導入窓26に向けて配設され、紫外線照射口14Aから照射された紫外線が紫外線導入窓26を通じてパージボックス16に導入されローラ19の周面19Aに照射される。このパージボックス16は、波長フィルタ等の適宜の光学フィルタ27が紫外線導入窓26に設けられており、紫外線硬化処理に適した光学特性の紫外線が周面19Aに照射される。
【0019】
ワーク2は、ローラ19の回動に伴って開口24からパージボックス16の中に導かれ、パージボックス16の中で紫外線が照射されてコーティング剤が紫外線硬化され(紫外線硬化処理され)、開口24から排出される。
【0020】
またパージボックス16には、
図2、及び
図3に示すように、ローラ19の幅方向に延びて筐体25を貫通する複数本(図示例では6本)の雰囲気ガス導入パイプ30が設けられている。雰囲気ガス導入パイプ30は、雰囲気ガスをパージボックス16の内部に導入し、当該内部に噴出するパイプである。すなわち、雰囲気ガス導入パイプ30の周面には、多数のノズル開口31がローラ19の幅に亘って設けられており、これらノズル開口31から雰囲気ガスが噴射される。この雰囲気ガスの噴射によってパージボックス16の中の酸素濃度が低められる。
【0021】
特に、このパージボックス16では、
図2に示すように、紫外線導入窓26から導入された紫外線が照射される照射箇所Pに雰囲気ガスが吹き付けられるように雰囲気ガス導入パイプ30が設けられている。これにより、照射箇所Pを含む範囲が雰囲気ガスリッチな状態に維持されることとなり、他の箇所に比べて相対的に酸素濃度が低い状態の下で紫外線照射が効率的に行われる。
【0022】
なお、
図1の紫外硬化用装置4には、紫外線硬化処理に要する主要な構成を図示している。すなわち、紫外硬化用装置4は、
図1に示す構成の他にも、ワーク2にコーティング剤を塗布する装置や、紫外線硬化処理後にワーク2のコーティング面を乾燥する装置といった、フィルムコーティング処理の実施に要する各種の装置や部材を備えている。
【0023】
前掲
図1に戻り、電源装置6は、商用電源34の電力をフィルムコーティングシステム1の各部に供給する装置である。商用電源34は、このフィルムコーティングシステム1が設置される施設に供給されている商用の交流電力である。電源装置6は、商用電源34の商用電力を電力変換する電力変換装置35を備え、電力変換装置35が紫外硬化用装置4、及び窒素ガス流量調整盤8を稼働させる電力を生成する。この電源装置6は、通常、施設が備える電源設備(例えば分電盤や配電盤)等の近傍に設置され、この電源装置6と紫外硬化用装置4の間は、高圧電力を伝送する高圧線36、電力の制御信号を伝送する制御線37によって接続されている。高圧線36の高圧電力は、例えば照射器14に供給され紫外線放電ランプ20の点灯に用いられる。電力の制御信号には、電力値の安定化制御等の各種の制御に要する信号が含まれている。
また、電源装置6と窒素ガス流量調整盤8の間は、当該窒素ガス流量調整盤8の駆動電力を伝送する電源線38によって接続されている。
【0024】
この電源装置6が置かれる場所は、上述のとおり、施設の電源設備の位置に依存することがあり、必ずしも、紫外硬化用装置4の近傍に配置されるとは限らない。電源装置6が紫外硬化用装置4から離れて設置されている場合、特に紫外硬化用装置4が置かれた室B(例えばクリーンルーム等)とは別の室に電源装置6が配置されている場合、紫外硬化用装置4を操作している作業者は、電源の投入/遮断等の電源操作の度に、態々電源装置6まで移動する必要があり、作業性が悪い。
【0025】
そこで、このフィルムコーティングシステム1では、電源装置6を遠隔操作する操作装置10が紫外硬化用装置4の近傍、或いは当該紫外硬化用装置4に設けられている。
操作装置10は、通信線39によって電源装置6と通信可能に接続されており、作業者の操作を受け付け、この操作を通信によって電源装置6に送信する。なお、電源装置6と操作装置10の間の通信は、有線に限らず無線通信であっても良い。また、この通信には任意のプロトコルを用いることができる。
【0026】
この操作装置10は、操作子の一例たるタッチパネル40を備え、このタッチパネル40には、各種の情報が表示されている。この情報には、フィルムコーティングシステム1を用いた紫外線硬化処理に係る各種のパラメータが含まれている。このパラメータには、例えば窒素ガス流量調整盤8が吐出する窒素ガスの吐出圧力が含まれるが、これについては後述する。
なお、操作装置10が、これら各種の情報を表示する表示装置を、タッチパネル40とは別に備えることもできる。また、操作装置10は、タッチパネル40に代えて任意の操作子を備えることもできる。
【0027】
窒素ガス流量調整盤8は、窒素ガス供給源42に接続され、窒素ガスを雰囲気ガスとしてパージボックス16に供給する装置である。窒素ガス供給源42は、施設が備える設備であり、例えば多数の窒素ガスボンベ等を備えて構成されている。
この窒素ガス流量調整盤8が置かれる場所は、窒素ガス供給源42に応じた場所に設置され紫外硬化用装置4の近傍とは限らず、窒素ガス供給源42の位置に応じて配置される。
窒素ガス流量調整盤8は、窒素ガス供給源42とガス配管46によって接続され、このガス配管46にはMRユニット44、及び圧力計45が設けられている。
MRユニット44は、減圧弁と、窒素ガスから水分や塵埃を除去する除去ユニットとを備えた装置であり、圧力計45はガス配管46の中のガス圧を検出する計器である。
【0028】
作業者は、フィルムコーティングシステム1を稼働させるときには、圧力計45の値を確認しながら、MRユニット44の減圧弁のバルブを手動操作して、窒素ガス供給源42から窒素ガス流量調整盤8に供給する窒素ガスの圧力を所定値に調整する。
【0029】
窒素ガス流量調整盤8は、パージボックス16との間がガス配管48によって接続されている。このフィルムコーティングシステム1では、ガス配管48は1本ではなく、パージボックス16が備える複数本分だけ窒素ガス流量調整盤8から引き出されている。
具体的には、
図1に示すように、窒素ガス流量調整盤8の内部には、窒素ガス供給源42のガス配管46が接続される導入管60と、この導入管60を雰囲気ガス導入パイプ30の本数分だけ分岐する分岐管61とを備えている。これら分岐管61ごとにガス配管48が接続され、これらのガス配管48が雰囲気ガス導入パイプ30の各々に接続されている。これら分岐管61のそれぞれ、及びガス配管48のそれぞれは、ガス抵抗や流量に違いを生じさせない程度に径、及び一長さが揃えられている。
【0030】
導入管60には常開の電磁弁62が設けられており、各種の異常発生時に閉成制御され、パージボックス16への窒素ガスの供給が遮断される。
【0031】
さらに、この窒素ガス流量調整盤8は、
図1に示すように、酸素濃度検出機構66と、流量調整機構67とを備えている。
酸素濃度検出機構66は、パージボックス16の中の酸素濃度を検出する機構であり、サンプル導入配管68と、酸素濃度計69と、サンプル切替電磁弁70とを備えている。サンプル導入配管68は、パージボックス16の中のガスを採取して酸素濃度検出機構66に導入するために設けられた配管である。パージボックス16には内部に貫通する配管接続開口50(
図1)が複数の箇所に設けられており、それぞれの配管接続開口50に、サンプル導入配管68が接続されている。
【0032】
これらサンプル導入配管68は、窒素ガス流量調整盤8の内部でサンプル切替電磁弁70に接続され、このサンプル切替電磁弁70には酸素濃度計69が接続されている。
サンプル切替電磁弁70は、サンプル導入配管68を択一的に選択し、当該サンプル導入配管68から導入されるガスを酸素濃度計69に供給する。酸素濃度計69は、サンプル切替電磁弁70から供給されるガスの酸素濃度を検出する。
この酸素濃度検出機構66は、サンプル切替電磁弁70がサンプル導入配管68を一定時間ごとに順次に切り替えて選択し、これにより、パージボックス16の配管接続開口50の各々で採取される酸素濃度が順次に検出され、配管接続開口50の各々の酸素濃度のバラツキや平均値等の各種の値が求められる。
【0033】
流量調整機構67は、導入管60に設けられた電空レギュレータ71と、分岐管61の各々に設けられたスピードコントローラ74、及び流量センサ72と、を備えている。
電空レギュレータ71は、導入管60への吐出圧力を制御するレギュレータであり、通常雰囲気(非真空状態)で用いられるものである。吐出圧力が制御によって調整されることで、分岐管61のそれぞれを流れる窒素ガスの流量が一括して調整される。
スピードコントローラ74は、分岐管61を流れる窒素ガスの流量を調整するものであり、流量センサ72は、この分岐管61を流れる窒素ガスの流量を検出する。
分岐管61の各々の流量にバラツキが生じている等して、それぞれを個別に調整する必要がある場合には、スピードコントローラ74を用いて調整が行われる。
【0034】
図4は、電空レギュレータ71の吐出圧力と、分岐管61ごとの流量検出値の合計値との関係を示す図であり、
図5は吐出圧力とパージボックス16の酸素濃度検出値との関係を示す図である。
図4に示すように、分岐管61の流量は電空レギュレータ71の吐出圧力に略正比例しており、所望の流量に対応する吐出圧力を指示することで、分岐管61の各々の流量を一括して調整できることが分かる。
また
図5に示すように、
図4において吐出圧力と流量が略正比例する吐出圧力範囲Wでは、吐出圧力を高めるほど酸素濃度が低められ非常に低い値に維持されることが分かる。
【0035】
前掲
図1に戻り、この窒素ガス流量調整盤8には、操作パネル73が設けられている。この操作パネル73には、電空レギュレータ71の吐出圧力、酸素濃度計69の酸素濃度、及び流量センサ72の流量の各々の値を表示する表示パネル(図示せず)と、電空レギュレータ71の吐出圧力、スピードコントローラ74、及び電磁弁62の操作に用いる操作子(図示せず)とが設けられている。
作業者は、操作パネル73の表示を見ながら電空レギュレータ71やスピードコントローラ74を調整し、必要に応じて電磁弁62を閉じて窒素ガスの供給を遮断できるようになっている。
【0036】
しかしながら、この窒素ガス流量調整盤8は、上述の通り、必ずしも、紫外硬化用装置4の近傍に配置されるとは限らない。したがって、紫外硬化用装置4を操作している作業者は、電空レギュレータ71、酸素濃度計69、及び流量センサ72の各々の値の確認や電空レギュレータ71の吐出圧力調整のために、窒素ガス流量調整盤8の操作パネル73まで移動する必要があり作業性が悪い。また、窒素ガスの流量調整に要する時間は、窒素ガス流量調整盤8の元まで作業者が移動する時間分をロスすることになる。
【0037】
そこで、このフィルムコーティングシステム1では、電源装置6の操作装置10が窒素ガス流量調整盤8の遠隔操作装置として構成されている。この構成により、作業者は紫外硬化用装置4の傍らで作業しながら、操作装置10を操作して窒素ガス流量調整盤8の電空レギュレータ71を遠隔操作し、吐出圧力を調整できるようにしている。
【0038】
窒素ガス流量調整盤8の遠隔操作の構成について詳述すると、窒素ガス流量調整盤8と電源装置6は、互いに通信可能に通信線80で接続されており、操作装置10が受け付けたユーザ操作が電源装置6に入力され、当該電源装置6から通信線80を通じて窒素ガス流量調整盤8に入力される。
また窒素ガス流量調整盤8は、電空レギュレータ71の吐出圧力、酸素濃度計69の酸素濃度、及び流量センサ72の流量の各々の値を電源装置6に通信線80を通じて送信し、当該電源装置6が操作装置10に出力し、当該操作装置10が電空レギュレータ71、酸素濃度計69、及び流量センサ72の各々の値をタッチパネル40に表示する。これにより作業者は、これらの値を窒素ガス流量調整盤8まで行かずとも紫外硬化用装置4の傍で作業しながら確認できる。
【0039】
窒素ガス流量調整盤8が備える電空レギュレータ71は、吐出圧力を指示する指示信号が入力される入力回路と、当該指示信号Dに応じて吐出圧力を無段階に調整する調整回路とを含む電気回路ユニット71Bをレギュレータ71Aに設けたレギュレータデバイスであり、外部の装置から指示信号Dを入力することで吐出圧力を電気制御可能なものである。
【0040】
ここで電空レギュレータ71は、吐出圧力の制御の際には、ガス吸入側に一定以上のガス圧が加えられることで、良好な応答速度で吐出圧力が制御される。この電空レギュレータ71が設けられる導入管60には、弁体である電磁弁62も設けられているが、この電磁弁62よりも上流側に電空レギュレータ71が配置されているため、応答速度が電磁弁62の開度によって損なわれることがない。
【0041】
このフィルムコーティングシステム1では、係る電空レギュレータ71を電源装置6が外部から制御するように構成されている。
具体的には、電源装置6は、PLC回路83と、通信回路84とを備えている。PLC回路83は、操作装置10に対する作業者の操作に基づいて電空レギュレータ71の指示信号Dを生成して通信回路84に出力するプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller)である。
このPLC回路83には、吐出圧力のユーザ指示値と、電空レギュレータ71に入力する指示信号Dの対応を予め記憶したメモリが設けられており、PLC回路83は、当該対応に基づいて指示信号Dを生成する。通信回路84は、通信線80を通じて窒素ガス流量調整盤8と通信する回路である。
【0042】
一方、窒素ガス流量調整盤8は、上記電源装置6と通信線80を通じて通信する通信回路85を備え、これら通信回路84、85の通信を通じて、上記指示信号Dが電源装置6から窒素ガス流量調整盤8に送信される。
窒素ガス流量調整盤8は、電源装置6から指示信号Dを受信すると、この指示信号Dを電空レギュレータ71に入力し、電空レギュレータ71が指示信号Dに基づいて吐出圧力を調整する。
これにより、作業者は、紫外硬化用装置4の傍に居ながら操作装置10に吐出圧力の指示値を入力する操作をすることで、窒素ガス流量調整盤8の電空レギュレータ71が遠隔操作され、パージボックス16に流れる窒素ガスの流量が調整されることとなる。
【0043】
図6は、作業者がフィルムコーティングシステム1を稼働させる際に行う窒素流量調整手順を示すフローチャートである。
同図に示すように、作業者は、先ず、窒素ガス供給源42の図示せぬバルブを操作する等してガス配管46への窒素ガスの供給を開始し(ステップS1)、MRユニット44により窒素ガス中の塵埃やミストを除去する(ステップS2)。
次いで、作業者は、MRユニット44に内蔵の減圧弁を圧力計45の値を確認しながら所定の圧力値に調整する(ステップS3)。これにより、窒素ガス流量調整盤8に所定圧力値に一定に維持された窒素ガスが供給される。
【0044】
次いで作業者は、電源装置6と窒素ガス流量調整盤8を通信させ、電空レギュレータ71を電源装置6の操作装置10から遠隔操作可能な状態にする(ステップS4)。これにより、操作装置10が電空レギュレータ71の遠隔操作装置として機能するようになり、作業者は、操作装置10を用いて電空レギュレータ71の吐出圧力を遠隔操作できるようになる。
そして作業者が操作装置10を操作して電空レギュレータ71を遠隔操作して吐出圧力を所定の値に調整すると(ステップS5)、この窒素ガス流量調整盤8からパージボックス16に窒素ガス導入される。この結果、パージボックス16の中は、電空レギュレータ71の吐出圧力に応じた酸素濃度(
図5)に維持される。
【0045】
図7は、操作装置10のタッチパネル40における表示例を示す図である。
タッチパネル40には、紫外硬化用装置4の照射器14の稼働状態、及び窒素ガスの供給状態を示す稼働状態表示欄75に加え、各種の設定値を表示する設定値表示欄76が設けられている。この設定値表示欄76には、電空レギュレータ71の吐出圧力(図示例では、「電空レギュレータ出力」)を表示する表示欄76Aが設けられている。この表示欄76Aの表示により、作業者は、電空レギュレータ71の現在の値(設定値)を窒素ガス流量調整盤8から離れていても知ることができる。
また、この操作装置10は、タッチパネル40の設定値表示欄76へのタッチ操作により、各種の設定値(ユーザ指示値)の入力操作を受け付け電源装置6に送信する。
作業者が電空レギュレータ71を遠隔操作する場合には、表示欄76Aをタッチ操作して、吐出圧力の指示値をタッチ操作により入力することとなる。
【0046】
このタッチパネル40は、酸素濃度計69の酸素濃度、及び流量センサ72の流量を表示する「モニタ画面」に画面表示を切り替える「モニタ」ボタン77が設けられている。
作業者は、「モニタボタン」77を操作してモニタ画面を表示することで、酸素濃度や流量をモニタリングすることができる。
【0047】
そして何らかの要因により、酸素濃度計69が所定の値まで低下しない場合には、作業者は、電空レギュレータ71の吐出圧力を高めるように操作装置10を操作して電空レギュレータ71を遠隔操作することになる(
図6:ステップS6)。
また、作業者は、モニタ画面の表示により分岐管61の各々で流量にバラツキが生じていると判断した場合、パージボックス16の中に酸素濃度ムラが生じるおそれがあるため、スピードコントローラ74を用いて流量の調整を行う(
図6:ステップS7)。このスピードコントローラ74に対する操作は、窒素ガス流量調整盤8の操作パネル73を用いて行われるが、電空レギュレータ71と同様に、操作装置10のタッチパネル40から遠隔操作可能に構成してもよい。
【0048】
またタッチパネル40には、
図7に示すように、異常発生時に窒素ガス供給を緊急停止するために操作する「異常」ボタン78が設けられている。この「異常」ボタン78の操作は、指示信号Dと同様に、電源装置6を通じて窒素ガス流量調整盤8に入力され、窒素ガス流量調整盤の図示せぬ制御回路が、この入力に基づいて電磁弁62を閉成制御する。
【0049】
これにより、作業者が
図6のステップS5において窒素ガスを紫外硬化用装置4に供給開始したとき、或いは、紫外硬化用装置4の稼働中に何らかの異常を察知したときには、操作装置10の「異常」ボタン78を操作することで窒素ガス流量調整盤8を遠隔操作し窒素ガス供給を速やかに遮断することができる(
図6:ステップS8)。
【0050】
なおタッチパネル40には、メインメニュー画面に表示を切り替える「メイン」ボタンや、PLC回路83の設定画面に表示を切り替える「PLC」ボタンなどの各種のボタンも設けられている。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、窒素ガス流量調整盤8が流量を調整するレギュレータとして、電空レギュレータ71を備え、この電空レギュレータ71を遠隔操作する操作装置10を備える構成とした。
これにより、作業者(ユーザ)は、窒素ガスの流量調整操作のために窒素ガス流量調整盤8に移動する必要はなく、操作装置10を用いて速やか、かつ簡単に流量調整操作をすることができる。
また流量調整のレギュレータが電空レギュレータ71であるから、吐出圧力が手動調整されるのではなく、電子制御によって調整されるので、正確かつ速やかに吐出圧力を所定の値に維持し、パージボックス16の中の酸素濃度を所定の値まで速やかに低め、維持することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、窒素ガス流量調整盤8は、異常発生時にパージボックス16への窒素ガスの供給を遮断する電磁弁62を備え、電空レギュレータ71は、この電磁弁62の上流側に設けられる構成とした。
この構成により、電空レギュレータ71の応答速度が電磁弁62の開度に影響されることがない。
【0053】
また本実施形態によれば、紫外硬化用装置4、及び窒素ガス流量調整盤8に電力を供給する電源装置6を備え、この電源装置6が、電空レギュレータ71の作業者の操作を受け付ける操作部たる操作装置10と、この作業者の操作に基づいて電空レギュレータ71の指示信号Dを生成して窒素ガス流量調整盤8に出力するPLC回路83を信号生成部として備える構成とした。
これにより、窒素ガス流量調整盤8の遠隔操作のための通信線80を、電源装置6の電源線38とまとめて敷設することができる。
また、窒素ガス流量調整盤8を遠隔操作する遠隔操作装置を別に備える必要がないため、システム構成が簡略化される。
【0054】
また本実施形態によれば、電源装置6を遠隔操作する操作装置10が、電空レギュレータ71を操作する操作部の機能を有する構成とした。
これにより、作業者は、紫外硬化用装置4の傍で作業しながら、遠くに設置された電源装置6、及び窒素ガス流量調整盤8を遠隔操作することができ、作業の効率化が図られる。
【0055】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0056】
例えば、電源装置6と窒素ガス流量調整盤8の間の通信は、通信線80による有線通信に限らず、無線通信であっても良く、また、通信のプロトコルは任意である。
また例えば、上述した実施形態では、酸素濃度を低めるために、電空レギュレータ71の吐出圧力を遠隔操作により設定する構成とした。この構成に限らず、PLC回路83が所定のプログラムにしたがって酸素濃度を指定し、窒素ガス流量調整盤8が当該酸素濃度の指定を受け、この酸素濃度を実現するように電空レギュレータ71の吐出圧力を調整する構成としても良い。
また例えば、本発明は、フィルムコーティングシステム1に限らず、紫外線硬化型の材料を紫外線照射により硬化させる紫外線硬化処理を含むシステムであれば、任意のシステムに適用することができる。