(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645032
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】移動物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/12 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
G01D5/12 H
G01D5/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-104241(P2015-104241)
(22)【出願日】2015年5月22日
(65)【公開番号】特開2016-217927(P2016-217927A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】須山 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 将幹
【審査官】
吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−159137(JP,U)
【文献】
特開昭61−120967(JP,A)
【文献】
特開2010−165406(JP,A)
【文献】
特開2002−365352(JP,A)
【文献】
特開平11−101658(JP,A)
【文献】
特開平2−28577(JP,A)
【文献】
特開2002−84015(JP,A)
【文献】
米国特許第6064200(US,A)
【文献】
特開2014−102395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
H01F 7/00−7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気検出素子と、
前記磁気検出素子に磁界を加える直方体形状の磁石と、
前記磁気検出素子と電気的に接続された基板と、
前記磁石を囲う底部及び収納壁を有するカップ状の収納部と、前記基板を載せる載置部と、前記収納部の周りの空間部と、を設けるケースと、
前記磁気検出素子と前記磁石と前記基板とを覆うカバーと、
前記磁石を前記収納部内に固定する接着部材と、を備え
前記ケースの前記収納壁は、前記磁石の側面の角に対応する角部分四隅を有し、
この角部分四隅において、前記底部から所定距離離れた位置に、前記収納部から前記空間部まで貫通するスリット部を設けることを特徴とする移動物体検出装置。
【請求項2】
前記磁石を当接する前記底部からの前記収納壁の高さは、前記収納壁の少なくとも一部において、前記磁石の高さ寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の移動物体検出装置。
【請求項3】
外部機器と前記基板とを電気的に接続するリード端子を備え、
前記ケースは、前記磁石と前記リード端子との間に、前記空間部を設けることを特徴とする請求項1に記載の移動物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動物体検出装置に関し、例えば、金属歯車等の被検出体の回転移動を検出する移動物体検出装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の移動物体検出装置は、例えば、特許文献1に開示されるものがある。この移動物体検出装置は、磁気検出素子と、前記磁気検出素子に磁界を加える磁石と、前記磁気検出素子と電気的に接続された基板と、前記磁石と前記基板とを配設し前記基板と電気的に接続するリード端子とを備えたケースと、前記磁気検出素子と前記磁石と前記基板とを覆うカバーと、前記ケースと前記カバーとを相互に嵌合固定する嵌合部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−7670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、特許文献1に記載の移動物体検出装置は、ケースに磁石を配置するための収納部を備え、その収納部に磁石を自然硬化型の接着剤を介して配置し、その上方の本体の開口端に磁石を臨む開口部を備えた基板を配置し、基板の開口部周辺に設けられたランド部に磁気検出素子のリード部が電気的に接続する構造である。このため、収納部に磁石を押し込む際に、予め流入した接着剤がはみ出て他の部品に付着する可能性があり注意が必要であった。
【0005】
例えば、収納部からはみ出た余剰接着剤が、基板を支えるためのケースの載置部に付着して硬化し、このまま基板を組み付けることで、基板浮きが生じるなど所望のクリアランスが確保できなかったり、各部品に余計な応力が加わってしまうなどの不具合の要因となる虞があった。
【0006】
また、磁気検出素子と磁石との間の余剰接着剤が至って、そのまま硬化した場合、磁気検出素子と磁石との間隔が不規則になってしまい、磁気検出素子が傾くなどして電気的な接続不良や検出精度の低減を招く虞があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、前述課題に着目し、余剰接着剤による不良の発生を防止できる移動物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の移動物体検出装置は、
磁気検出素子と、
前記磁気検出素子に磁界を加える
直方体形状の磁石と、
前記磁気検出素子と電気的に接続された基板と、
前記磁石を囲う底部及び収納壁を有する
カップ状の収納部と、前記基板を載せる載置部と、
前記収納部の周りの空間部と、を設けるケースと、
前記磁気検出素子と前記磁石と前記基板とを覆うカバーと、
前記磁石を前記収納部内に固定する接着部材と、を備え
前記ケース
の前記収納壁は、前記磁石の側面の角に対応する角部分四隅を有し、
この角部分四隅において、前記底部から所定距離離れた位置に、前記収納部から前記空間部まで貫通するスリット部を設けることを特徴とする。
【0009】
また、前記磁石を当接する
前記底部からの前記収納壁の高さは、前記収納壁の少なくとも一部において、前記磁石の高さ寸法よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
また、
外部機器と前記基板とを電気的に接続するリード端子を備え、
前記ケースは、前記磁石と前記リード端子との間に、前記空間部を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の移動物体検出装置は、余剰接着剤による不良の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態における移動物体検出装置を示す断面図。
【
図2】同上実施の形態の移動物体検出装置を示す一部分解した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明が適用された実施の形態について車両に搭載されるギアツースセンサに適用したものについて例にあげて、添付図面を用いて説明する。
【0015】
本発明の移動物体検出装置1は、
図1,2に示すように、磁気検出素子2と、磁石3と、基板4と、リード端子5と、ケース6と、カバー7、接着剤8,9とを備えている。
【0016】
磁気検出素子2は、ホールICを適用でき、被検出体である移動物体の移動にともなう磁力の変化を電気信号に変換し、基板4やリード端子5を介して外部に出力する。磁気検出素子2は、基板4に実装され、カバー7と所定クリアランスを設けるように配置される。磁気検出素子2は、この場合、基板4の開口部41に配置する略直方体のパッケージに、基板4に接続するための電源線や信号線等の4本のリード部21を設けている。また、被検出体として車両の駆動力を伝える金属製のギアを適用でき、ギア歯の凹凸面との距離変化にともなう磁石3からの磁力変化を検出する構成である。
【0017】
磁石3は、永久磁石からなり、直方体形状をなしている。また、磁石3は、基板4に設けた開口部41から臨む位置で、接着剤8を用いてケース6に固定されており、磁気検出素子2に磁界を与える。
【0018】
基板4は、ガラスエポキシ樹脂などの硬質の絶縁材に、銅などの導電材料からなる配線パターンを設けているプリント配線基板を適用できる。この基板4は、磁気検出素子2、リード端子5と電気的に接続している。また、
図3に示すように、基板4には、電子部品42が実装されており、基板4のほぼ中央に磁気検出素子2を磁石3上に配置するための磁気検出素子2の外形よりも大きな矩形状の開口部41が形成されている。
【0019】
また、基板4は、開口部41に磁気検出素子2を配置することになるが、その開口部41に磁気検出素子2のリード部21が引き出される一辺と当接する当接部43を設け、磁気検出素子2は、その一辺が基板4の当接部43に当接した状態で、その一辺と対向する一辺と磁気検出素子2との間に隙間41aを設け、この隙間41aに磁気検出素子2と磁石3とを固定する接着剤9の余剰接着剤91を導くことで、磁気検出素子2のリード部21と基板4のランド部44との半田付け箇所に余剰接着剤91が及びにくい構成としている。
【0020】
基板4は、ケース6の開口端(カバー7に覆われる部分)上に、リード端子5との半田付け等によって固定されている。また、基板4は、磁石3上に接着剤9を介して固定された磁気検出素子2のリード部21をそれぞれ半田接続するためのランド部44を当接部43の近傍に設けている。
【0021】
リード端子5は、屈曲形成された3本のリードフレームからなり、ケース6に要部が内蔵されている。各リード端子5の一端部51は、ケース6に設けたコネクタ部60から露出しており、リード端子5の他端部52は半田によって基板4と電気的に接続されている。なお、コネクタ部60は、磁気検出素子2からの出力を外部機器へ接続伝達する。
【0022】
ケース6は、合成樹脂からなり、リード端子5をインサート成形することで、コネクタ部60を一体に備えた構造体である。ケース6のコネクタ部60の反対側には凹部形状をなしており、そのほぼ中央に磁石3を配置するための底部61と収納壁62とを有する収納部63を備えており、その収納部63内に接着剤(接着部材)8を介して磁石3が固定されている。
【0023】
また、ケース6は、開口端上に基板4を載せる載置部64と、基板4の位置決めのために開口端上方に突出する凸部64aとが3箇所に設けられており、この凸部64aの高さは基板4の厚みよりも低くなるように設けられている。一方、基板4には、この凸部64aに嵌る凹部45が設けられており、その凹部45からケース6の凸部64aが基板4の実装面よりも上方に突出しないようになっている。すなわち、基板4が、実装された状態において、凸部64aが突出しない寸法で形成される。また、基板4の外径はケース6の開口端の外周よりも小さくなるように形成されている。なお、ケース6の載置部64に塗布された接着剤を介して基板4を保持することもできる。
【0024】
また、
図4に示すように、ケース6の収納部63は、底部61に接着剤8を塗布し磁石3を配置し、磁石3を配置した際に発生する余剰接着剤81を収納部63の周りに設けられた空間部65にはみ出させるためのスリット部66が設けられており、そのスリット部66は収納壁62における磁石3の角部に対応した4隅に設けられている。また、スリット部66は収納部63の底面61から所定距離離れ、4隅から開口側(基板4側)に向かって形成されている。このため、収納部63は、カップ状の部分が設けられるため、この部分にて、十分に接着剤8を介在させることで磁石3を強固に保持できる。
【0025】
ケース6の検出部側は、略円柱形状をしており、二つの環状の溝10,11が形成されている。一方の溝10は、他方の溝11より直径が小さく、他方の溝11より磁気検出素子2側で、カバー7で覆われる位置に設けられている。他方の溝11は、ケース6の中程に設けられている。そして、各々の溝10,11には、封止部材であるOリング10a,11aが装着されている。Oリング10aは、移動物体検出装置1を図示しない機器などに取り付けた場合に、気密性を確保するためである。
【0026】
ケース6は、ケース6とカバー7とを嵌合固定する嵌合部を構成する複数の突起部67(係合部)を備えている。この場合、突起部67は、二つの溝部10,11間に設けられる。
【0027】
カバー7は、樹脂材料からなり、円盤状の天板71と、円筒形状の周壁部72とを備えたカップ形状である。このカバー7は、磁気検出素子2、磁石3、基板4を覆っている。カバー7は、ケース6の溝10に設けたOリング10aが、ケース6の溝10とカバー7の周壁部72の内側との間で圧縮されて、ケース6とカバー7とで形成される空間内に水や空気などが入り込まないように封止している。また、カバー7は、ケース6の突起部67に対応する開口73が形成されている。
【0028】
接着剤8,9は、自然硬化型の液状接着剤を適用でき、例えば、湿気等による水分で硬化するポリマー系接着剤を適用できる。接着剤8は、収納部63内に磁石3を固定するために流入される。また、接着剤9は、磁石3を収納部63に収めてから別工程によって、磁石3と磁気検出素子2とを接着するために塗布される。また、同様の接着剤を、載置部64に塗布して、基板4を保持させることもできる。
【0029】
斯かる移動物体検出装置1は、磁気検出素子2と、磁気検出素子2に磁界を加える磁石3と、磁気検出素子2と電気的に接続された基板4と、磁石3を囲う収納壁62と基板4を載せる載置部64とを設けるケース6と、磁気検出素子2と磁石3と基板4とを覆うカバー7と、を備え、磁石3は、収納壁62内に流入される接着剤8を用いて固定され、ケース6には、収納壁62の外側に、接着部材8が余剰した場合に、この余剰接着部材81を導入可能な空間部65を設ける。
【0030】
従って、収納部63に挿入された磁石3によって、予め流入している接着剤8が押し出される場合に、基板4やリード端子5など電気的な接続影響を及ぼす可能性がある箇所や、磁気検出素子2との接着面など、不良構造になる可能性のある箇所へ余剰接着剤81が届く前に、余剰接着剤81を空間部65に導入できる。このため、余剰接着剤81による不良の発生を防止できる移動物体検出装置1となる。
【0031】
また、磁石3を当接する底部61からの収納壁62の高さは、収納壁62の少なくとも一部において、磁石3の高さ寸法よりも小さいことによって、磁気検出素子2や基板4側に至る前に、収納壁62外側の空間部65へ余剰接着剤81を導くことができるため、接着剤8からの余剰接着剤81を注意深く監視しなくても、磁石3を押し込むだけで、簡単に収納部63へ組み付けできる。
【0032】
また、収納壁62には、空間部65まで貫通するスリット部66を設けることによって、磁石3が接着部材8を介して収納壁62に保持される面積を大きく確保しながら、余剰接着剤81を空間部65に導くことができる。また、磁石3の側面の角に対応する収納壁62の角部分四隅にスリット部66を設けることで、余剰接着剤81を効率よく収納壁62の外側へ排出できる。なお、磁石3の接着保持に適した接着剤8の量について、スリット部66の深さによって設定できるため、接着剤8の収納部63への流入作業も容易になる。
【0033】
また、磁石3と基板4とを電気的に接続するリード端子5を備え、ケース6は、磁石3とリード端子5との間に、空間部65を設けることによって、余剰接着剤8がリード端子5へ届かないようにできる。また、本実施の形態のように、収納壁62を更に囲うように溝上の空間部65を一周設けることで、空間部65以外に余剰接着剤81が及ぶことを防止できる。また、空間部65が一周に渡って繋がっていることで、空間部65の体積(余剰接着剤81の収容量)を一様に確保できる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、金属等の物体の移動状態を検出する移動物体検出装置に関し、例えば、車両の駆動部品の状態を検出する装置として適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 移動物体検出装置
2 磁気検出素子
21 リード部
3 磁石
4 基板
41 開口部
41a 隙間
42 電子部品
43 当接部
44 ランド部
45 凹部
5 リード端子
51 一端部
52 他端部
6 ケース
60 コネクタ部
61 底部
62 収納壁
63 収納部
64 載置部
64a 凸部
65 空間部
66 スリット部
67 突起部
7 カバー
71 天板
72 周壁部
73 開口
8 接着剤(接着部材)
9 接着剤
81,91 余剰接着剤
10,11 溝部
10a,11a Oリング