特許第6645057号(P6645057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6645057コンバータ装置およびコンバータ装置製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645057
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】コンバータ装置およびコンバータ装置製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20200130BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20200130BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H05K5/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-143201(P2015-143201)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2017-28020(P2017-28020A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】北谷 一治
(72)【発明者】
【氏名】浦田 光
【審査官】 石丸 昌平
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−062791(JP,U)
【文献】 特開2002−203425(JP,A)
【文献】 特開昭49−081867(JP,A)
【文献】 特開2009−294077(JP,A)
【文献】 特開2014−146688(JP,A)
【文献】 特開2000−068446(JP,A)
【文献】 特開平08−335785(JP,A)
【文献】 特開平09−326567(JP,A)
【文献】 実開昭52−044367(JP,U)
【文献】 特開2009−081328(JP,A)
【文献】 実開昭62−201975(JP,U)
【文献】 特開2007−335719(JP,A)
【文献】 特開平07−030265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07, 25/18
H05K 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に電気部品が実装された実装基板と、一面に開口部を有して当該実装基板を収容する筐体と、前記開口部を覆うように前記筐体に装着される蓋部とを備え、当該筐体に収容された前記実装基板の前記電気部品を覆うように当該筐体内に充填剤が充填されて構成されたコンバータ装置であって、
前記筐体は、底板と当該底板の外周部に立設された第1側板とを備え、当該底板側から前記開口部側に向かうに従って水平面積が徐々に広くなりかつ当該開口部側の水平面積を前記基板の面積に合わせた形状に形成されると共に、前記第1側板における互いに対向する内面に一対以上のリブが設けられ、かつ当該第1側板における前記開口部側の縁部に形成された係合部を備えて構成され、
前記実装基板は、前記電気部品が実装されている前記基板の実装面が前記底板に対向しかつ前記リブに前記実装面が当接した状態で前記筐体に収容され、
前記充填剤は、前記底板と前記実装基板の前記実装面との間に充填され、
前記蓋部は、前記筐体の前記開口部と略同形状の主板と当該主板の外周部に立設された第2側板とを備え、当該主板の内面に設けられた突起部を有し、かつ前記筐体に装着された状態において前記係合部が係合する被係合部を備えて構成されると共に、前記第2側板の内面が前記第1側板における前記開口部側の外面に接触し、かつ前記突起部が前記実装基板における前記基板の裏面に当接して当該実装基板を前記底板側に押え付けた状態で前記被係合部に前記係合部が係合させられて前記筐体に装着されているコンバータ装置。
【請求項2】
前記筐体は、一面に開口部を有する直方体形状に形成されている請求項1記載のコンバータ装置。
【請求項3】
前記筐体は、一面に開口部を有する立方体形状に形成されている請求項1記載のコンバータ装置。
【請求項4】
前記筐体は、一端部に開口部を有する円筒形状に形成されている請求項1記載のコンバータ装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記底板を平面視した平面視状態において当該底板の中心を対称点として点対称の形状に形成されている請求項1からのいずれかに記載のコンバータ装置。
【請求項6】
基板に電気部品が実装された実装基板と、一面に開口部を有して当該実装基板を収容する筐体と、前記開口部を覆うように前記筐体に装着される蓋部とを備え、当該筐体に収容された前記実装基板の前記電気部品を覆うように当該筐体内に充填剤が充填されて構成されたコンバータ装置を製造するコンバータ装置製造方法であって、
底板と当該底板の外周部に立設された第1側板とを備えて当該第1側板における互いに対向する内面に一対以上のリブが設けられ、かつ当該第1側板における前記開口部側の縁部に形成された係合部を備えて構成された前記筐体内に流動性を有する状態の前記充填剤を注入し、
その後に、前記電気部品が実装されている前記基板の実装面が前記筐体の底板に対向する姿勢で前記実装基板を当該筐体内に収容し、
その後に、前記筐体の前記開口部と略同形状の主板と当該主板の外周部に立設された第2側板とを備えて当該主板の内面に突起部が設けられ、かつ前記筐体に装着された状態において前記係合部が係合する被係合部を備えた前記蓋部を当該開口部を覆うように前記筐体に装着する際に、前記第2側板の内面を前記第1側板における前記開口部側の外面に接触させ、かつ前記突起部を前記実装基板における前記基板の裏面に当接させて、前記リブに前記実装面が当接するまで前記実装基板を前記底板側に押え付けると共に前記係合部を前記被係合部に係合させ
その後に、前記充填剤を硬化させて前記コンバータ装置を製造するコンバータ装置製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装基板と実装基板を収容する筐体と筐体の開口部を覆う蓋部とを備え実装基板の電気部品を覆うように筐体内に充填剤が充填されたコンバータ装置、およびそのコンバータ装置を製造するコンバータ装置製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、下記特許文献1に開示された樹脂封止型電子回路装置(以下「電子回路装置」ともいう)が知られている。この電子回路装置は、ケースと、部品が実装された配線基板と、ケースの開口部を覆う蓋状枠体とを備えて構成されている。また、この電子回路装置では、ケース内に収容された配線基板の部品を覆うように充填樹脂がケース内に充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平03−6879号公報(第3−4頁、第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の電子回路装置には、以下の問題点がある。すなわち、従来の電子回路装置では、部品を上向きにした状態(ケースの開口部側に向けた状態)で配線基板をケースの底部側に収容し、その上から流動性を有する充填樹脂を流し込んで部品を覆っている。この場合、充填樹脂は、部品が発生する熱を熱伝導させてケースを介してケースの外に放熱させることが主な機能であるため、部品同士の隙間、部品と基板との間の隙間、および部品とケースとの間の隙間に満遍なく充填されることが望ましい。しかしながら、部品の上から充填樹脂を流し込むだけでは、上記した各隙間に充填樹脂を満遍なく充填させるのは困難である。このため、従来の電子回路装置には、充填樹脂の放熱機能を効果的に発揮させることができないという問題点が存在する。また、この種の電子回路装置に用いられる樹脂製のケースは、一般的に射出成形によって形成されるが、射出成形では、成形品の離型性を確保するために、底部側から開口部側に向かうに従って水平面積が広くなる形状にケースを構成する必要がある。このため、ケースの底部側に配線基板を収容する従来の電子回路装置では、ケースにおける開口部側の水平面積が配線基板の面積よりも大きくなる。このため、従来の電子回路装置には、ケース内における配線基板よりも開口部側の領域に無駄な空間が多く存在することとなるため、その分、小形化が困難となっている。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、実装基板における電気部品間の隙間に充填材を確実に充填すると共に小形化を実現し得るコンバータ装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明に係るコンバータ装置は、基板に電気部品が実装された実装基板と、一面に開口部を有して当該実装基板を収容する筐体と、前記開口部を覆うように前記筐体に装着される蓋部とを備え、当該筐体に収容された前記実装基板の前記電気部品を覆うように当該筐体内に充填剤が充填されて構成されたコンバータ装置であって、前記筐体は、底板と当該底板の外周部に立設された第1側板とを備え、当該底板側から前記開口部側に向かうに従って水平面積が徐々に広くなりかつ当該開口部側の水平面積を前記基板の面積に合わせた形状に形成されると共に、前記第1側板における互いに対向する内面に一対以上のリブが設けられ、かつ当該第1側板における前記開口部側の縁部に形成された係合部を備えて構成され、前記実装基板は、前記電気部品が実装されている前記基板の実装面が前記底板に対向しかつ前記リブに前記実装面が当接した状態で前記筐体に収容され、前記充填剤は、前記底板と前記実装基板の前記実装面との間に充填され、前記蓋部は、前記筐体の前記開口部と略同形状の主板と当該主板の外周部に立設された第2側板とを備え、当該主板の内面に設けられた突起部を有し、かつ前記筐体に装着された状態において前記係合部が係合する被係合部を備えて構成されると共に、前記第2側板の内面が前記第1側板における前記開口部側の外面に接触し、かつ前記突起部が前記実装基板における前記基板の裏面に当接して当該実装基板を前記底板側に押え付けた状態で前記被係合部に前記係合部が係合させられて前記筐体に装着されている。
【0007】
また、本発明に係るコンバータ装置は、前記筐体は、一面に開口部を有する直方体形状に形成されている。
【0008】
また、本発明に係るコンバータ装置は、前記筐体は、一面に開口部を有する立方体形状に形成されている。
【0009】
また、本発明に係るコンバータ装置は、前記筐体は、一端部に開口部を有する円筒形状に形成されている。
【0011】
また、本発明に係るコンバータ装置は、前記筐体は、前記底板を平面視した平面視状態において当該底板の中心を対称点として点対称の形状に形成されている。
【0012】
また、本発明に係るコンバータ装置製造方法は、基板に電気部品が実装された実装基板と、一面に開口部を有して当該実装基板を収容する筐体と、前記開口部を覆うように前記筐体に装着される蓋部とを備え、当該筐体に収容された前記実装基板の前記電気部品を覆うように当該筐体内に充填剤が充填されて構成されたコンバータ装置を製造するコンバータ装置製造方法であって、底板と当該底板の外周部に立設された第1側板とを備えて当該第1側板における互いに対向する内面に一対以上のリブが設けられ、かつ当該第1側板における前記開口部側の縁部に形成された係合部を備えて構成された前記筐体内に流動性を有する状態の前記充填剤を注入し、その後に、前記電気部品が実装されている前記基板の実装面が前記筐体の底板に対向する姿勢で前記実装基板を当該筐体内に収容し、その後に、前記筐体の前記開口部と略同形状の主板と当該主板の外周部に立設された第2側板とを備えて当該主板の内面に突起部が設けられ、かつ前記筐体に装着された状態において前記係合部が係合する被係合部を備えた前記蓋部を当該開口部を覆うように前記筐体に装着する際に、前記第2側板の内面を前記第1側板における前記開口部側の外面に接触させ、かつ前記突起部を前記実装基板における前記基板の裏面に当接させて、前記リブに前記実装面が当接するまで前記実装基板を前記底板側に押え付けると共に前記係合部を前記被係合部に係合させ、その後に、前記充填剤を硬化させて前記コンバータ装置を製造する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコンバータ装置では、実装面が筐体の底板に対向し、かつ筐体の第1側板に形成されたリブに実装面が当接した状態で実装基板が筐体に収容され、底板と実装基板の実装面との間に充填剤が充填され、蓋部に設けられた突起部が実装基板の基板の裏面に当接して実装基板を底板側に押え付けた状態で蓋部が筐体に装着されている。このため、このコンバータ装置では、突起部による底板側への実装基板の押え付けにより、各電気部品同士の間の隙間や、各電気部品と実装面との間の隙間に充填剤が満遍なく充填されている。したがって、このコンバータ装置によれば、充填剤の放熱機能を効果的に発揮させることができる。また、このコンバータ装置によれば、底板側から開口部側に向かうに従って水平面積が徐々に広くなる形状に形成された筐体の底板に実装面が対向し、リブに実装面が当接した状態で実装基板が筐体に収容されているため、実装基板の基板を筐体の開口部側に位置させることができる。したがって、このコンバータ装置によれば、開口部側の水平面積を実装基板の基板の面積に合わせて筐体を形成することで、底板側の水平面積を基板の面積よりも狭くすることができる結果、筐体を小形化することができる。
【0014】
また、本発明に係るコンバータ装置によれば、一面に開口部を有する直方体形状に筐体を形成したことにより、コンバータ装置の配置スペースが直方体形状のときに、無駄な隙間を少なく抑えた状態でその配置スペースにコンバータ装置を配置することができる。
【0015】
また、本発明に係るコンバータ装置によれば、一面に開口部を有する立方体形状に筐体を形成したことにより、コンバータ装置の配置スペースが立方体形状のときに、無駄な隙間を少なく抑えた状態でその配置スペースにコンバータ装置を配置することができる。
【0016】
また、本発明に係るコンバータ装置によれば、一端部に開口部を有する円筒形状に筐体を形成したことにより、コンバータ装置の配置スペースが円柱状のときに、無駄な隙間を少なく抑えた状態でその配置スペースにコンバータ装置をその配置スペース配置することができる。
【0017】
また、本発明に係るコンバータ装置によれば、係合部を備えて筐体を構成し、装着状態において係合部係合する被係合部を備えて蓋部を構成したことにより、筐体の開口部に向けて蓋部を押圧するだけで、係合部と被係合部とが係合して、筐体からの蓋部の脱落を確実に防止することができると共に、実装基板を筐体の底板側に押え付けた状態に維持することができる。また、係合部と被係合部とが係合するため、筐体と蓋部とを固定用の部材等で固定するような作業を行うことなく、充填剤の充填、実装基板の収容、および蓋部の装着が完了した筐体を例えば加熱装置にセットして充填剤に対する加熱処理(硬化処理)を行うことができるため、製造効率を向上させることができる。
【0018】
また、本発明に係るコンバータ装置によれば、底板の中心を対称点として点対称の形状に筐体を形成したことにより、点対称の形状に形成されていない筐体とは異なり、実装基板を筐体に収容する際に、筐体の左右の向きを実装基板の左右の向きに合わせるような作業を行う必要がないため、その分、製造効率を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係るコンバータ装置製造方法によれば、筐体内に流動性を有する状態の充填剤を注入し、その後に実装面が筐体の底板に対向する姿勢で実装基板を筐体内に収容し、その後に蓋部を筐体に装着する際に、蓋部の突起部を実装基板における基板の裏面に当接させて、筐体のリブに実装面が当接するまで実装基板を底板側に押え付け、その後に充填剤を硬化させることにより、突起部による底板側への実装基板の押え付けによって各電気部品同士の間の隙間や、各電気部品と実装面との間の隙間に充填剤を満遍なく充填させることができる。したがって、このコンバータ装置製造方法によれば、充填剤の放熱機能を効果的に発揮させることができるコンバータ装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】コンバータ装置1の斜視図である。
図2】蓋部4を外した状態のコンバータ装置1の斜視図である。
図3】実装基板2の斜視図である。
図4】筐体3の斜視図である。
図5】開口部33側から見た筐体3の平面図である。
図6】蓋部4の斜視図である。
図7】コンバータ装置1の製造方法を説明する第1の説明図である。
図8】コンバータ装置1の製造方法を説明する第2の説明図である。
図9】コンバータ装置1の製造方法を説明する第3の説明図である。
図10】コンバータ装置1の製造方法を説明する第4の説明図である。
図11】コンバータ装置1の製造方法を説明する第5の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、コンバータ装置およびコンバータ装置製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう)の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0022】
最初に、コンバータ装置の一例としての図1に示すコンバータ装置1の構成について説明する。コンバータ装置1は、例えば、交流電流を入力して、直流電流を出力するAC−DCコンバータであって、同図および図2に示すように、実装基板2、筐体3および蓋部4を備えて構成されている。また、このコンバータ装置1では、図10に示すように、筐体3内に充填剤5が充填されている。
【0023】
実装基板2は、図3に示すように、基板21、および基板21に実装された各種の電気部品22を備えて構成されている。基板21は、同図に示すように、平面視略矩形(例えば、略長方形)に形成されている。各電気部品22は、AC−DC変換処理を行う処理回路を構成する。また、この実装基板2では、各電気部品22のうちの、トランスやコンデンサ等の大形の電気部品22が、基板21の実装面21a(同図における下面)に実装されている。また、基板21の裏面21b(実装面21aの反対側の面であって、同図における上面)には、交流電流を入力する2本の入力端子(一次側端子)23a、および直流電流を出力する2本の出力端子(二次側端子)23bが配設されている。また、実装基板2は、図10に示すように、実装面21aが筐体3の底板31に対向する(つまり、トランスやコンデンサ等の大形の電気部品22が下向きとなる)と共に、基板21が筐体3の開口部33側に位置する状態で筐体3に収容されている。
【0024】
筐体3は、図4,5に示すように、略矩形の底板31、および底板31の各外周部に立設された4つの側板32a〜32d(「第1側板」の一例:以下、区別しないときには「側板32」ともいう)を有して、一面に開口部33を有する(一面が開放された)略直方体の箱形に形成されている。この場合、筐体3は、樹脂を射出成形することによって形成されるため、成形時の離型性を確保するために、底板31側から開口部33側に向かうに従って水平面積が徐々に広くなる形状に形成されている。
【0025】
ここで、このコンバータ装置1では、上記したように、実装面21aが筐体3の底板31に対向し、基板21が筐体3の開口部33側に位置する状態で実装基板2が筐体3に収容されている(図10参照)。このため、このコンバータ装置1では、開口部33側の水平面積を実装基板2の基板21の面積に合わせて筐体3を形成することができるため、底板31側の水平面積を基板21の面積よりも狭くすることが可能となっている。このため、このコンバータ装置1では、基板21が底板31側に位置する状態で実装基板2が筐体3に収容される構成と比較して、筐体3を小形化することが可能となっている。言い換えれば、筐体3を同じ大きさとした場合には、基板21が底板31側に位置する状態で実装基板2が筐体3に収容される構成と比較して、基板21の水平面積を大きくすることが可能となっている。
【0026】
また、図5に示すように、各側板32のうちの互いに対向する2つの側板32a,32cの内面には、リブ34(図4も参照)がそれぞれ設けられている。このリブ34は、図10に示すように、実装基板2を筐体3内に収容する際に、実装基板2の基板21における実装面21aの縁部が当接して実装基板2を支持する機能を有している。また、リブ34は、同図に示すように、底板31からリブ34の上端部(基板21に当接する部分)までの長さが、実装基板2における基板21の実装面21aからの電気部品22の最大の高さ(同図では下端部までの長さ)よりもやや長くなるように形成されている。
【0027】
また、図4,5に示すように、各側板32のうちの互いに対向する2つの側板32b,32dにおける開口部33側の縁部には、蓋部4の係合孔44(被係合部に相当する:図6参照)と係合する爪部35(係合部)がそれぞれ形成されている。
【0028】
また、筐体3は、図5に示すように、底板31を平面視した平面視状態において、底板31の中心31aを対称点として点対称の形状に形成されている。つまり、各リブ34の形成位置や各爪部35の形成位置が、底板31の中心31aを対称点として点対称となるように規定されている。
【0029】
蓋部4は、図6に示すように、略矩形(筐体3の開口部33と略同形状)の主板41、および主板41の各外周部に立設された4つの側板42a〜42d(「第2側板」の一例:以下、区別しないときには「側板42」ともいう)を有して浅皿状に形成され、図1,11に示すように、筐体3の開口部33(図4参照)を覆うように筐体3に装着可能に構成されている。この場合、蓋部4は、樹脂を射出成形することによって形成される。
【0030】
また、図6に示すように、主板41の内面(同図における上面)には、複数(例えば、3つ)の突起部43が設けられている。この場合、図10に示すように、実装基板2が収容された筐体3に蓋部4を装着したときに、基板21の裏面21bに実装されている電気部品22に接触しない任意の位置に突起部43を設けることができる。この突起部43は、同図に示すように、コンバータ装置1を製造する際に、筐体3内に収容した実装基板2における基板21の裏面21bに先端部を当接させて、実装基板2を筐体3の底板31側に押え付けるのに用いられる。
【0031】
また、図6に示すように、主板41には、実装基板2の各入力端子23aおよび各出力端子23bを挿通させるための挿通孔45が形成されている。また、主板41における互いに対向する2つの縁部およびこれらの縁部に立設されている2つの側板42b,42dには、これらの一部を切り欠いて形成されて、筐体3の爪部35と係合する係合孔44(図10,11も参照)がそれぞれ形成されている。
【0032】
充填剤5は、一例として熱硬化型シリコーン樹脂(熱硬化型シリコーンエラストマー)であって、絶縁性を有すると共に、硬化処理前の状態では、流動性を有するゲル状をなし、硬化処理(加熱処理)によって硬化してゴム状に変化する。また、この充填剤5では、熱伝導率が高く、放熱性に優れた熱硬化型シリコーン樹脂が用いられている。この充填剤5は、実装基板2が収容された筐体3内、具体的には、筐体3の底板31と実装基板2の基板21との間に充填されて、実装基板2を筐体3に固定する(実装基板2の移動を規制する)と共に、電気部品22が発生する熱を熱伝導させて筐体3を介して外部に放熱させる機能を有している。
【0033】
次に、コンバータ装置1を製造するコンバータ装置製造方法について、図面を参照して説明する。なお、図7図10では、筐体3の内部の状態を説明するため、紙面手前側の側板32を透視した状態で図示している。
【0034】
まず、図7に示すように、硬化処理前のゲル状の充填剤5を、ディスペンサ50を用いて、予め決められた規定量だけ筐体3内に注入する。次いで、図8に示すように、実装基板2における基板21の実装面21aが筐体3の底板31に対向する姿勢で、実装基板2を筐体3内に収容する。
【0035】
この場合、このコンバータ装置1では、筐体3が、底板31の中心31aを対称点として点対称の形状に形成されている(図5参照)。つまり、筐体3は、左右を入れ替えても(180°回動させても)平面視形状が変化しない構成となっている。このため、筐体3の平面視形状が点対称ではない構成とは異なり、実装基板2を筐体3に収容する際に、筐体3の左右の向きを実装基板2の左右の向きに合わせるような作業を行う必要がないため、その分、製造効率を向上させることが可能となっている。
【0036】
続いて、図9に示すように、筐体3の開口部33を覆うように、蓋部4を筐体3に装着する。具体的には、実装基板2の入力端子23aおよび出力端子23bを蓋部4の各通孔45に挿通させ、次いで、蓋部4を下向きに移動させる。
【0037】
続いて、図10に示すように、下向きへの蓋部4の移動によって突起部43の先端部が実装基板2における基板21の裏面21bに当接したときに、蓋部4を下向きに(筐体3の開口部33に向けて)押圧して、実装基板2を筐体3の底板31側に押え付ける。この際に、基板21の移動によって充填剤5に圧力が加わり、基板21の実装面21aに実装されている各電気部品22同士の間の隙間や、各電気部品22と実装面21aとの間の隙間に充填剤5が流れ込む。この結果、同図に示すように、これらの隙間に充填剤5が満遍なく充填される。
【0038】
次いで、基板21の実装面21aが筐体3に形成されているリブ34の上端部に当接したときには、蓋部4に対する押圧を解除する(蓋部4から手を離す)。この状態では、図10,11に示すように、筐体3の爪部35と蓋部4の係合孔44とが係合して、筐体3からの蓋部4の脱落が確実に防止される。また、爪部35と係合孔44とが係合することで、蓋部4から手を離しても、実装基板2が筐体3の底板31側に押え付けられた状態が維持される。
【0039】
以上により、充填剤5の充填、実装基板2の収容、および蓋部4の装着が完了する。続いて、充填剤5に対する硬化処理を実行する。この硬化処理では、充填剤5の充填、実装基板2の収容、および蓋部4の装着が完了した筐体3(以下、「組立が完了した筐体3」ともいう)を図外の加熱装置にセットして硬化処理としての加熱処理を行う。この場合、上記したように、爪部35と係合孔44とが係合することで、筐体3からの蓋部4の脱落が確実に防止されると共に、実装基板2が筐体3の底板31側に押え付けられた状態が維持されるため、筐体3と蓋部4とを固定用の部材等で固定するような作業を行うことなく、組立が完了した筐体3をそのまま加熱装置にセットして充填剤5に対する加熱処理を行うことができるため、製造効率を向上させることができる。
【0040】
上記の加熱処理(硬化処理)によって充填剤5が硬化してゲル状からゴム状に変化する。また、充填剤5が硬化することにより、実装基板2が筐体3に確実に固定される。これにより、コンバータ装置1が完成する。このコンバータ装置1では、上記したように、各電気部品22同士の間の隙間や、各電気部品22と実装面21aとの間の隙間に充填剤5が満遍なく充填されている。このため、このコンバータ装置1では、充填剤5の放熱機能を効果的に発揮させることが可能となっている。
【0041】
このように、このコンバータ装置1では、実装面21aが筐体3の底板31に対向し、かつ筐体3の側板32a,32cに形成されたリブ34に実装面21aが当接した状態で実装基板2が筐体3に収容され、底板31と実装基板2の実装面21aとの間に充填剤5が充填され、蓋部4に設けられた突起部43が実装基板2の基板21の裏面21bに当接して実装基板2を底板31側に押え付けた状態で蓋部4が筐体3に装着されている。このため、このコンバータ装置1では、突起部43による底板31側への実装基板2の押え付けにより、各電気部品22同士の間の隙間や、各電気部品22と実装面21aとの間の隙間に充填剤5が満遍なく充填されている。したがって、このコンバータ装置1によれば、充填剤5の放熱機能を効果的に発揮させることができる。また、このコンバータ装置1によれば、実装面21aが底板31に対向し、リブ34に実装面21aが当接した状態で実装基板2が筐体3に収容されているため、実装基板2の基板21を筐体3の開口部33側に位置させることができる。したがって、このコンバータ装置1によれば、開口部33側の水平面積を実装基板2の基板21の面積に合わせて筐体3を形成することで、底板31側の水平面積を基板21の面積よりも狭くすることができる結果、筐体3を小形化することができる。
【0042】
また、このコンバータ装置1によれば、筐体3を一面に開口部33を有する直方体形状に形成したことにより、コンバータ装置1の配置スペースが直方体形状のときに、無駄な隙間を少なく抑えた状態でその配置スペースにコンバータ装置1を配置することができる。
【0043】
また、このコンバータ装置1によれば、爪部35を備えて筐体3を構成し、装着状態において爪部35係合する係合孔44を備えて蓋部4を構成したことにより、筐体3の開口部33に向けて蓋部4を押圧するだけで、爪部35と係合孔44とが係合して、筐体3からの蓋部4の脱落を確実に防止することができると共に、実装基板2を筐体3の底板31側に押え付けた状態に維持することができる。また、爪部35と係合孔44とが係合するため、筐体3と蓋部4とを固定用の部材等で固定するような作業を行うことなく、充填剤5の充填、実装基板2の収容、および蓋部4の装着が完了した筐体3を例えば加熱装置にセットして充填剤5に対する加熱処理(硬化処理)を行うことができるため、製造効率を向上させることができる。
【0044】
また、このコンバータ装置1によれば、底板31の中心31aを対称点として点対称の形状に筐体3を形成したことにより、点対称の形状に形成されていない筐体3とは異なり、実装基板2を筐体3に収容する際に、筐体3の左右の向きを実装基板2の左右の向きに合わせるような作業を行う必要がないため、その分、製造効率を向上させることができる。
【0045】
また、このコンバータ装置製造方法によれば、筐体3内に流動性を有する状態の充填剤5を注入し、実装面21aが筐体3の底板31に対向する姿勢で実装基板2を筐体3内に収容し、蓋部4を筐体3に装着する際に、蓋部4の突起部43を実装基板2における基板21の裏面21bに当接させて、筐体3のリブ34に実装面21aが当接するまで実装基板2を底板31側に押え付け、その後に充填剤5を硬化させることにより、突起部43による底板31側への実装基板2の押え付けによって各電気部品22同士の間の隙間や、各電気部品22と実装面21aとの間の隙間に充填剤5を満遍なく充填させることができる。したがって、このコンバータ装置製造方法によれば、充填剤5の放熱機能を効果的に発揮させることができるコンバータ装置1を製造することができる。
【0046】
なお、コンバータ装置およびコンバータ装置製造方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、筐体3の側板32a,32cにそれぞれリブ34を設けた例について上記したが、側板32b,32dにそれぞれリブ34を設けたり、4つの側板32の全てにそれぞれリブ34を設けたりする構成を採用することもできる。また、各側板32に設けるリブ34の数は、1つに限定されず、複数でもよい。また、平面視形状が点対称となるように筐体3を形成した例について上記したが、平面視形状が点対称とはならない構成の筐体3を採用することもできる。
【0047】
また、側板32b,32dに係合部としての爪部35をそれぞれ形成し、主板41における互いに対向する2つの縁部、および2つの側板42b,42dに被係合部としての係合孔44をそれぞれ形成した例について上記したが、爪部35や係合孔44の形成位置や数は任意に規定することができる。また、爪部35や係合孔44の形状も任意に変更することができる。また、蓋部4の主板41に3つの突起部43を設けた例について上記したが、突起部43は3つに限定されず任意の数(1つ若しくは2つ、好ましくは3つ以上)に規定することができる。また、上記した他の構成の筐体3や蓋部4を備えるコンバータ装置、およびそのコンバータ装置製造方法を採用することができる。
【0048】
また、充填剤5の一例として、熱硬化型シリコーン樹脂を用いる構成および方法について上記したが、充填剤5はこれに限定されず、上記した構成および方法に適合する各種の充填剤5を用いることができる。
【0049】
また、一面に開口部33を有する直方体形状に筐体3を形成した例について上記したが、筐体3の形状は任意に規定することができる。例えば、一面に開口部を有する立方体形状に形成した筐体3や、一端部に開口部を有する円筒形状に形成した筐体を採用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 コンバータ装置
2 実装基板
3 筐体
4 蓋部
5 充填剤
21 基板
21a 実装面
21b 裏面
22 電気部品
31 底板
31a 中心
32a〜32d 側板
33 開口部
34 リブ
35 爪部
41 主板
43 突起部
44 係合孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11