(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば
図5に示すように、トンネルの内壁に沿って複数回巻回された操作側アンテナ60は、切羽面41から所定距離L1だけ離れた位置のトンネル内壁に張られ、トンネル内壁に沿って巻回されて形成されている。そして操作側アンテナ60の周囲に発生する磁界の方向は、
図3において一点鎖線で示すように、巻回された操作側アンテナ60の中央部の近傍では、切羽面41にほぼ直交する方向(この場合、Z軸方向)である。しかし、巻回された操作側アンテナ60の中央部から離れた縁部の近傍における磁界の方向は、切羽面41に直交する方向に対して大きく湾曲した方向となる。つまり、
図5の例において、巻回された操作側アンテナ60の中央近傍となる装薬位置P2bでは、磁界の方向の成分がほぼZ軸方向のみであるので、この位置ではZ軸方向を軸として導電線が巻回されたアンテナで効率良く前記エネルギーを受け取ることができる。しかし、
図5の例において、巻回された操作側アンテナ60の縁部の近傍となる位置である、例えば装薬位置P3cでは、磁界の方向は、X軸方向の成分とY軸方向の成分とZ軸方向の成分を有し、しかもZ軸方向の成分の大きさは、X軸方向の成分の大きさ及びY軸方向の成分の大きさよりも小さくなる場合がある。従って、例えば装薬位置P3cの位置では、Z軸方向を軸として導電線が巻回されたアンテナでは効率良く前記エネルギーを受け取ることができないとともに、無線の制御信号を効率良く受信することができない可能性がある。
【0009】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明では、無線起爆雷管用アンテナの導電線は円筒状に巻回されて円筒の軸方向が装薬孔の軸方向(すなわち
図5におけるZ軸方向)に沿う方向に設定されて装薬孔内に配置されている。従って、当該無線起爆雷管用アンテナでは、巻回された操作側アンテナの中央部の近傍では効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができるが、巻回された操作側アンテナの縁部では、効率良く前記エネルギーを受け取ることができないとともに、無線の制御信号を効率良く受信することができない可能性がある。
【0010】
また特許文献3及び特許文献4に記載の発明では、無線起爆雷管用アンテナである受信コイルにおける導電線の巻回方向に関する記載が見当たらないので、特許文献1及び特許文献2と同様、導電線が円筒状に巻回されたアンテナであると考えられる。従って、特許文献1及び特許文献2と同様、巻回された操作側アンテナの中央部の近傍では効率良く前記エネルギーを受け取るとともに無線の制御信号を効率良く受信することができるが、巻回された操作側アンテナの縁部では、効率良く前記エネルギーを受け取ることができないとともに、無線の制御信号を効率良く受信することができない可能性がある。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、操作側アンテナと無線起爆雷管用アンテナの位置関係の影響によらず、より効率良く点火用のエネルギーと電子回路駆動用のエネルギーと制御信号を受け取ることができる無線起爆雷管用アンテナ、当該無線起爆雷管用アンテナを備えた無線起爆雷管、及び当該無線起爆雷管を用いた無線起爆システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る無線起爆雷管用アンテナ、無線起爆雷管、及び無線起爆システムは次の手段をとる。まず、本発明の第1の発明は、無線方式で点火用のエネルギーと電子回路駆動用のエネルギーと制御信号を受け取るアンテナである無線起爆雷管用アンテナであって、磁性体が肉薄筒状とされた筒状磁性体と、前記筒状磁性体の軸の周囲に巻回されるように導電線が巻回された筒状コイルと、を有し、前記筒状磁性体の外周面に、前記筒状コイルが設けられて、全体が筒状に形成されている無線起爆雷管用アンテナである。
【0013】
次に、本発明の第2の発明は、無線方式で点火用のエネルギーと電子回路駆動用のエネルギーと制御信号を受け取るアンテナである無線起爆雷管用アンテナであって、磁性体が肉薄筒状とされた筒状磁性体と、前記筒状磁性体の軸に直交する軸の周囲に巻回されるように導電線が巻回されたシート状コイルと、を有し、前記筒状磁性体の外周面に、前記シート状コイルが設けられて、全体が筒状に形成されている無線起爆雷管用アンテナである。
【0014】
次に、本発明の第3の発明は、無線方式で点火用のエネルギーと電子回路駆動用のエネルギーと制御信号を受け取るアンテナである無線起爆雷管用アンテナであって、磁性体が肉薄筒状とされた筒状磁性体と、前記筒状磁性体の軸の周囲に巻回されるように導電線が巻回された筒状コイルと、前記筒状磁性体の軸に直交する軸の周囲に巻回されるように導電線が巻回されたシート状コイルと、を有し、前記筒状磁性体の外周面に、前記筒状コイルと前記シート状コイルとが重ならないように設けられて、全体が筒状に形成されている無線起爆雷管用アンテナである。
【0015】
次に、本発明の第4の発明は、無線方式で点火用のエネルギーと電子回路駆動用のエネルギーと制御信号を受け取るアンテナである無線起爆雷管用アンテナであって、磁性体が肉薄筒状とされた筒状磁性体と、前記筒状磁性体の軸をZ軸、前記Z軸に直交する軸をX軸、前記Z軸と前記X軸との双方に直交する軸をY軸とした場合、前記Z軸の周囲に導電線が巻回されたZ軸用筒状コイルと、前記X軸の周囲に導電線が巻回されたX軸用シート状コイルと、前記Y軸の周囲に導電線が巻回されたY軸用シート状コイルと、を有し、前記Z軸用筒状コイルと前記X軸用シート状コイルと前記Y軸用シート状コイルとが、重ならないようにいずれかの順序で前記筒状磁性体の外周面に設けられて、全体が筒状に形成されている無線起爆雷管用アンテナである。
【0016】
次に、本発明の第5の発明は、上記第4の発明に係る無線起爆雷管用アンテナであって、前記Z軸用筒状コイルは、前記X軸用シート状コイルと前記Y軸用シート状コイルとに挟まれる位置に配置されている無線起爆雷管用アンテナである。
【0017】
次に、本発明の第6の発明は、上記第1の発明〜第5の発明のいずれか1つに係る無線起爆雷管用アンテナと、前記無線起爆雷管用アンテナに接続されて起爆部に点火する制御部と、前記制御部に接続された前記起爆部と、を有する、無線起爆雷管である。
【0018】
次に、本発明の第7の発明は、上記第6の発明に係る無線起爆雷管と、前記無線起爆雷管が取り付けられて、被爆破個所に削孔された装薬孔に装填される爆薬と、前記装薬孔の近傍に張り巡らされた操作側アンテナと、前記装薬孔から離れた遠隔位置に配置されて前記操作側アンテナを介して無線方式で前記点火用のエネルギーと前記電子回路駆動用のエネルギーと前記制御信号を前記無線起爆雷管用アンテナを介して前記無線起爆雷管に受け渡す起爆操作機と、にて構成されている、無線起爆システムである。
【0019】
次に、本発明の第8の発明は、上記第7の発明に係る無線起爆システムであって、前記無線起爆雷管における前記無線起爆雷管用アンテナの内径は、前記爆薬の外径よりも大きく形成されており、前記爆薬は、前記無線起爆雷管用アンテナに挿通されて前記無線起爆雷管用アンテナと一体化されて前記装薬孔に装填されている無線起爆システムである。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、筒状磁性体の軸が装薬孔の軸方向(すなわち
図5におけるZ軸方向)と一致するように配置された場合、
図5の例において、巻回された操作側アンテナ60の中央近傍となる装薬位置P2b(Z軸方向の磁界が最も大きな装薬位置)の近傍において、最も効率良く前記エネルギーと制御信号(例えば、ID要求信号や蓄電要求信号や蓄電状況確認信号や起爆実行信号等を含む)を無線方式で受け取ることができる無線起爆雷管用アンテナを実現することができる。
【0021】
第2の発明によれば、筒状磁性体の軸が装薬孔の軸方向(すなわち
図5におけるZ軸方向)と一致するように配置された場合、
図5の例において、巻回された操作側アンテナ60の中央近傍を除いた縁部の近傍となる装薬位置(すなわち、Z軸方向の磁界の大きさよりも、X軸方向やY軸方向の磁界の大きさのほうが大きい位置)において、Z軸方向以外の磁界を利用して、最も効率良く前記エネルギーと制御信号(例えば、ID要求信号や蓄電要求信号や蓄電状況確認信号や起爆実行信号等を含む)を無線方式で受け取ることができる無線起爆雷管用アンテナを実現することができる。
【0022】
第3の発明によれば、巻回軸が筒状磁性体の軸である筒状コイルと、巻回軸が筒状磁性体の軸に直交する軸であるシート状コイルと、の双方を備える。これにより、切羽面における位置に応じて、筒状コイルまたはシート状コイルの少なくとも一方で効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる無線起爆雷管用アンテナを実現することができる。
【0023】
第4の発明によれば、
図5におけるZ軸方向の磁界成分に対して効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができるZ軸用筒状コイルと、
図5におけるX軸方向の磁界成分に対して効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができるX軸用シート状コイルと、
図5におけるY軸方向の磁界成分に対して効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができるY軸用シート状コイルと、の3つのコイルで構成された無線起爆雷管用アンテナを構成することができる。これにより、切羽面における位置毎に異なる無線起爆雷管用アンテナを構成する必要がなく、1種類の無線起爆雷管用アンテナにて、切羽面におけるいずれの位置に削孔された装薬孔であっても、より効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる無線起爆雷管用アンテナを実現することができる。
【0024】
第5の発明によれば、第1軸方向に沿って並べられた1つのZ軸用筒状コイルと2つのシート状コイル(X軸用シート状コイルとY軸用シート状コイル)において、Z軸用筒状コイルを中央に配置する。発明者による種々の実験の結果、Z軸用筒状コイルを中央に配置した場合のほうが、Z軸用筒状コイルを端部に配置した場合よりも、より効率良く前記エネルギーと制御信号を受け取ることができることを確認した。従って、切羽面におけるいずれの位置に削孔された装薬孔であっても、さらに効率良く前記エネルギーと制御信号を受け取ることができる無線起爆雷管用アンテナを実現することができる。
【0025】
この第6の発明によれば、切羽面に削孔された各装薬孔にて、より効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる無線起爆雷管用アンテナを備えた無線起爆雷管を実現することができる。
【0026】
この第7の発明によれば、切羽面に削孔された各装薬孔にて、より効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる無線起爆雷管用アンテナを有する無線起爆雷管を用いた無線起爆システムを実現することができる。
【0027】
この第8の発明によれば、無線起爆雷管用アンテナに爆薬を挿通することができるので、装薬孔の最も奥まで爆薬を装填することが可能になり、起爆効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明し、トンネルの掘削現場を例として説明する。なお、X軸とY軸とZ軸が記載されている場合、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Y軸方向は鉛直上方を示し、Z軸方向はトンネルの堀削方向(水平方向)とは反対方向を向く装薬孔40の軸方向を示している。
【0030】
●[無線起爆システム1の全体構成(
図1)と、装薬孔40への爆薬ユニット20の装填状態(
図2)]
図1に示すように、無線起爆システム1は、切羽面41(被爆破個所)に削孔された装薬孔40に装填される爆薬ユニット20(
図2参照)と、装薬孔40から離れた遠隔位置に配置されて爆薬ユニット20に対して、操作側アンテナ周囲に磁界を発生させるための電流を供給するとともに制御信号(例えば、ID要求信号や蓄電要求信号や蓄電状況確認信号や起爆実行信号等を含む)を重畳する起爆操作機50と、切羽面41(装薬孔)の近傍に張り巡らされた操作側アンテナ60と、にて構成されている。
【0031】
起爆操作機50は、発破母線62と補助母線61を介して操作側アンテナ60に電流を供給して、操作側アンテナ60の周囲に磁界を発生させるとともに制御信号を重畳している。従って、起爆操作機50は、操作側アンテナ60を介して無線方式で、点火用のエネルギーと電子回路駆動用のエネルギーと制御信号を、後述する無線起爆雷管用アンテナ11を介して、無線起爆雷管を構成している制御部及び起爆部に受け渡す。そして、磁界を発生させるために操作側アンテナ60に流れる電流の周波数、および制御信号の周波数である操作周波数は、例えば100[KHz]以上500[KHz]以下に設定されている。なお、操作周波数を500[KHz]より高くすると、トンネル内で定在波が発生しやすいので、あまり好ましくない。また起爆操作機50は、無線起爆雷管からの無線の応答信号を、操作側アンテナ60と補助母線61と発破母線62を介して受信する。なお、無線起爆雷管からの応答信号の周波数である応答周波数は、例えば10[MHz]に設定されている。
【0032】
操作側アンテナ60は、切羽面41から例えば1[m]程度の距離L1だけ離れた位置に、洞床42、洞側壁43、洞天井44に沿って張られている。発破母線62の先端から切羽面41までの距離L2は、例えば30[m]程度である。また発破母線62の先端から起爆操作機50までの距離L3は、例えば70[m]程度である。起爆操作機50には、発破母線62と補助母線61を介して操作側アンテナ60が接続されている。なお、操作側アンテナ60と補助母線61は、爆破する毎に新たに張られる。
【0033】
図2に示すように、装薬孔40は、例えば径D1が5[cm]程度、深さD2が2[m]程度に削孔された孔であるが、この数値に限定されるものではない。そして
図2に示すように装薬孔40内には、爆薬ユニット20が装填され、粘土等の込め物22にて蓋がされている。また爆薬ユニット20は、親ダイ201と増しダイ202にて構成されている。なお、増しダイ202に無線起爆雷管10が取り付けられることで親ダイ201が構成されている。親ダイ201は、装薬孔40に装填される際の先頭となる爆薬であって無線起爆雷管10が取り付けられた爆薬である。また増しダイ202は、親ダイ201に対して適宜増減される爆薬である。なお、爆薬ユニット20は、親ダイ201のみ、あるいは親ダイ201に増しダイ202が追加された状態の爆薬である。
【0034】
無線起爆雷管10は、
図2に示すように、略筒状の無線起爆雷管用アンテナ11と、制御部12と、起爆部14と、にて構成され、例えば制御部12と起爆部14は、無線起爆雷管用アンテナ11内に収容されている。また、略筒状の無線起爆雷管用アンテナ11の内径は、爆薬の外径よりも大きく形成されている。そして爆薬は、無線起爆雷管用アンテナ11に挿通されて起爆部14が差し込まれ、無線起爆雷管用アンテナ11と一体化されて親ダイ201を形成し、装薬孔40に装填されている。また、無線起爆雷管用アンテナ11の外径は、装薬孔40の内径以下である。なお、
図10の例に示すように、起爆部14のみを無線起爆雷管用アンテナ11内に収容し、制御部12を無線起爆雷管用アンテナ11の外に配置してもよい。
【0035】
また表示装置72は、作業者が無線起爆雷管10を識別可能な個体情報(例えば起爆遅延時間や識別番号)が表示されたものであり、ケーブル71を介して無線起爆雷管10に取り付けられている。そしてケーブル71の長さは、親ダイ201が装薬孔40に装填された際に、表示装置72が装薬孔40の外に達することが可能な長さに設定されている。従って
図2に示すように、表示装置72は、親ダイ201が装薬孔40に装填された場合、装薬孔40の外に配置される。なお、ケーブル71と表示装置72は省略してもよい。また本実施の形態の説明では、無線起爆雷管10にケーブル71を介して表示装置72を取り付けた例を説明したが、表示装置72を無線起爆雷管10に直接取り付けてもよい。表示装置を無線起爆雷管に直接取り付けた場合、作業者は、装薬孔に装填した後に表示装置を確認することはできないが、装薬孔に装填する際に表示装置を確認しながら装填することができる。
【0036】
●[操作側アンテナ60の周囲に発生する磁界の方向(
図3〜
図5)]
図3は、
図1から操作側アンテナ60のみを抽出した図である。
図3において、操作側アンテナ60に実線の矢印の方向に電流が流れると、一点鎖線に示すような磁界が発生する。無線起爆雷管用アンテナ11は、この磁界の方向を軸とした場合、当該軸の回りに導電線が巻回されている場合に、最も効率良く点火用のエネルギーや電子回路駆動用のエネルギーを受け取ることができる(なお、本明細書では、「点火用のエネルギーや電子回路駆動用のエネルギー」を「前記エネルギー」と記載する)とともに無線の制御信号を受信することができる。
【0037】
なお
図4は、
図3をIV方向から見た図である。巻回された操作側アンテナ60に対して、ほぼ中央に相当する切羽面41の装薬孔の位置を装薬位置P2bにて示す。そして操作側アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの左上方の位置を装薬位置P1aにて示し、操作側アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの右上方の位置を装薬位置P1cにて示し、操作側アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの上方の位置を装薬位置P1bにて示す。また、操作側アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの左方の位置を装薬位置P2aにて示し、操作側アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの右方の位置を装薬位置P2cにて示す。また、操作側アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの左下方の位置を装薬位置P3aにて示し、操作側アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの右下方の位置を装薬位置P3cにて示し、操作側アンテナ60の縁部に相当する位置であって装薬位置P2bの下方の位置を装薬位置P3bにて示す。
【0038】
図5は、
図4に示す切羽面41の装薬位置P1a〜P1c、装薬位置P2a〜P2c、装薬位置P3a〜P3cの各位置における、磁界(操作側アンテナ60の周囲に発生する磁界)の方向と大きさの例を示す図である。操作側アンテナ60のほぼ中央に相当する装薬位置P2bでは、磁界の成分はZ軸方向のみであるので、Z軸回りに導電線を巻回したアンテナ(
図6の例ではZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナ)で効率良く前記エネルギーを受け取ることができる。しかし、操作側アンテナ60の縁部の近傍では、Z軸方向の磁界の大きさが減少し、X軸方向の磁界やY軸方向の磁界の大きさが増大する。例えば装薬位置P3cでは、Z軸方向の磁界の大きさは装薬位置P2bよりも小さく、X軸方向の磁界とY軸方向の磁界の大きさがZ軸方向の磁界の大きさよりも大きい。また装薬位置P1bでは、Z軸方向の磁界の大きさは装薬位置P2bよりも小さく、Y軸方向の磁界の大きさがZ軸方向の磁界の大きさよりも大きい。従って、操作側アンテナ60の縁部の位置となる、装薬位置P1a〜P1c、装薬位置P2a、装薬位置P2c、装薬位置P3a〜P3cでは、Z軸回りに導電線を巻回したアンテナ(
図6の例ではZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナ)のみでは、効率良く前記エネルギーを受け取るとともに無線の制御信号を効率良く受信することができるとは限らない。そこで、以下に説明する無線起爆雷管用アンテナ11とすることで、切羽面41におけるいずれの位置に削孔された装薬孔に配置(装填)された無線起爆雷管用アンテナであっても、より効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる無線起爆雷管用アンテナ11を実現する。
【0039】
●[無線起爆雷管10の構造(
図6〜
図10)]
図6は、無線起爆雷管10の分解斜視図を示している。無線起爆雷管10は、無線起爆雷管用アンテナ11と、無線起爆雷管用アンテナ11に接続されて起爆部14に点火する制御部12と、制御部12に接続された起爆部14と、にて構成されている。また
図7は、
図6における無線起爆雷管用アンテナ11を
図6中のVII方向から見た図である。無線起爆雷管用アンテナ11は、筒状のベース筒体114(例えば筒状のアクリル材)と、シート状の磁性体(例えばフェライト)を肉薄筒状となるようにベース筒体114の外周に巻回した筒状磁性体115(
図11参照)と、筒状磁性体115の外周に設けた筒状コイル(Z軸用筒状コイル119)及びシート状コイル117(X軸用シート状コイル117XとY軸用シート状コイル117Y)と、が同軸に配置されて構成されている。そして無線起爆雷管用アンテナ11は、Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yの3つが、Z軸の方向に沿って並べられている。なお、無線起爆雷管用アンテナ11の形状は、肉薄円筒状であることが好ましいが、肉薄の筒状であればよく、軸方向の断面が、円、楕円、多角形等、どのような形状であってもよい。また無線起爆雷管用アンテナ11と制御部12とは導電線111にて接続されている。
【0040】
また
図8は、無線起爆雷管用アンテナ11内に制御部12と起爆部14とを収容させた無線起爆雷管10の断面図を示している。制御部12には起爆部14が固定され、制御部12は無線起爆雷管用アンテナ11の一方の開口部に固定されている。そして無線起爆雷管用アンテナ11と制御部12との空隙には、爆薬が充填されることが好ましい。これにより、装薬孔の最も奥まで爆薬を配置できるので、破砕効果の向上を図ることができる。そして起爆部14は他方の開口部の側に延びるように固定され、他方の開口部から爆薬が挿通されると、挿通された爆薬の先端に起爆部14が差し込まれ、親ダイが形成される。
【0041】
また
図9は、無線起爆雷管用アンテナ11内に、制御部12と起爆部14とを収容させた、
図8とは異なる構成の無線起爆雷管10Aの断面図の例を示している。
図9に示す例では、無線起爆雷管用アンテナ11と筒状磁性体115とベース筒体114とが同軸に配置されて筒状に形成されている。そして一方の開口部に、起爆部14が固定された制御部12が、例えば接着剤161にて固定されている。また制御部12は、制御ケース162と電子回路164(
図24中に符号12で示す部分の電子回路)と緩衝材163等にて構成されている。そして起爆部14は他方の開口部の側に延びるように固定され、他方の開口部から爆薬が挿通されると、挿通された爆薬の先端に起爆部14が差し込まれ、親ダイが形成される。また、比較的強度が高い金属等の材質で制御ケース162を形成して適切な緩衝材163を用いることで、隣接する装薬孔に配置された爆薬が起爆する際に発生した衝撃波が、電子回路164へ伝わる前に制御ケース162と緩衝材163で減衰され、電子回路164が損傷しないようにすることもできる。
【0042】
また
図10は、無線起爆雷管用アンテナ11内に起爆部14を収容させ、制御部12を無線起爆雷管用アンテナ11の外に配置した無線起爆雷管10Bの断面図の例を示している。
図10に示す例では、無線起爆雷管用アンテナ11と筒状磁性体115とベース筒体114とが同軸に配置されたものを、さらに筒状の保護ケース165内に収容している。また保護ケース165は、起爆部14及び爆薬から制御部12を隔離する隔離壁166を有している。制御部12は、隔離壁166を挟んで起爆部14と反対の側であって無線起爆雷管用アンテナ11内ではなく無線起爆雷管用アンテナ11の外に配置されている。なお、制御部12は、保護ケース165の一方の開口部に嵌め込まれて固定されていてもよいし、保護ケース165の一方の開口部に接着剤等にて固定されていてもよい。また制御部12は、制御ケース162と電子回路164と緩衝材163等にて構成されている点は、
図9に示す例と同じである。そして
図9の例と同様に、起爆部14は他方の開口部の側に延びるように固定され、他方の開口部から爆薬が挿通されると、挿通された爆薬の先端に起爆部14が差し込まれ、親ダイが形成される。また、制御ケース162を比較的強度が高い金属等の材料で形成することで、隣接する装薬孔に配置された爆薬が起爆する際に発生した衝撃波が、電子回路164へ伝わる前に制御ケース162と緩衝材163で減衰され、電子回路164が損傷しないようにすることもできる。さらに、制御ケース162の一部を無線起爆雷管用アンテナ11の外に配置することで、電子回路164のサイズをベース筒体114の内径以上のサイズとすることが可能となり、電子回路164のサイズの自由度が向上する。さらに、爆薬を挿通する領域が拡大し、破砕効果の向上を図ることができる。
【0043】
●[無線起爆雷管用アンテナ11の構造(
図11〜
図17)]
図11は、無線起爆雷管用アンテナ11の分解斜視図を示している。無線起爆雷管用アンテナ11は、無線方式で点火用のエネルギーと電子回路駆動用のエネルギーと制御信号を受け取るアンテナである。無線起爆雷管用アンテナ11は、ベース筒体114と、筒状磁性体115と、X軸用シート状コイル117Xと、Z軸用筒状コイル119と、Y軸用シート状コイル117Yと、にて構成されている。なお、ベース筒体114を省略してもよい。
【0044】
筒状磁性体115の材質は、磁性体の中でも比較的容易に磁極が消失したり反転したりする高透磁率の材料であって、例えば鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、センダスト、パーメンジュール、フェライト、アモルファス磁性合金、ナノクリスタル磁性合金、等が好ましく、本実施の形態では、フェライトを使用している。そして筒状磁性体115は、
図11に示すように、シート状に形成されており、ベース筒体114の外周面に巻回されて肉薄筒状とされている。筒状磁性体115の巻回の端部は、
図12に示すように、オーバーラップすることなく、隙間172がほぼゼロとなるように巻回されていることが、より好ましい。しかし、
図11に示すように、筒状磁性体115の巻回の一方の端部が他方の端部と重なってオーバーラップ部171を有するように巻回されていても良いし、筒状磁性体115が二重、三重となるように巻回されていても良い。なお、
図12に示す隙間172は、例えば1[mm]程度の微小隙間であれば許容範囲内であるが、隙間172が微小隙間よりも大きい隙間である場合は好ましくない。また筒状磁性体115の軸であるアンテナ軸J11は、
図6及び
図11に示すように、Z軸と平行であり、Z軸であるといえる。
【0045】
そして
図11に示すように、Z軸用筒状コイル119とX軸用シート状コイル117XとY軸用シート状コイル117Yは、ベース筒体114と筒状磁性体115と同軸となるように取り付けられて、無線起爆雷管用アンテナ11が形成される。この無線起爆雷管用アンテナ11は、無線起爆雷管用アンテナ11の軸であるアンテナ軸J11が、装薬孔40の軸方向(この場合、Z軸方向)と一致するように装薬孔に装填される。そして、
図5におけるZ軸方向の成分の磁界に対しては、Z軸方向を導電線の巻回の軸とするZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナにて効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる。また
図5におけるX軸方向の成分の磁界に対しては、X軸方向を導電線の巻回の軸とするX軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体によるX軸用シート状アンテナにて効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる。また
図5におけるY軸方向の成分の磁界に対しては、Y軸方向を導電線の巻回の軸とするY軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体によるY軸用シート状アンテナにて効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を効率良く受信することができる。なお、
図11に示す例は、ベース筒体114と、筒状磁性体115と、Z軸用筒状コイル119と、X軸用シート状コイル117Xと、Y軸用シート状コイル117Yと、にて無線起爆雷管用アンテナ11を構成した例を示しているが、ベース筒体114を省略してもよい。
【0046】
無線起爆雷管用アンテナ11は、Z軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナ、X軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体によるX軸用シート状アンテナ、Y軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体によるY軸用シート状アンテナの3つが、Z軸方向に沿って、重ならないようにいずれかの順序で並べられて形成されている。発明者による種々の実験の結果によれば、Z軸用筒状コイル119を中央に配置する(Z軸用筒状コイルを、X軸用シート状コイルとY軸用シート状コイルに挟まれる位置に配置する)ことが、より好ましい。例えば、
図13の例では、左側にX軸用シート状コイル117X、中央にZ軸用筒状コイル119、右側にY軸用シート状コイル117Y、となる順序で並べられており、この並び方を(117X、119、117Y)と記載する。Z軸用筒状コイル119が中央に配置された並び方には、
図13に示す(117X、119、117Y)の順序の並び方と、
図13に示す状態からZ軸回りに90[°]回転させた(117Y、119、117X)の順序の並び方がある。なお、
図14の例に示すようにZ軸用筒状コイル119を左端部に配置した(119、117X、117Y)の順序の並び方や、図示省略するが、(119、117Y、117X)、及びZ軸用筒状コイル119を右端部に配置した(117X、117Y、119)、(117Y、117X、119)の順序の並び方としてもよい。
【0047】
なお、無線起爆雷管用アンテナ11を、Z軸用筒状コイル119(筒状コイル)とX軸用シート状コイル117X(シート状コイル)とY軸用シート状コイル117Y(シート状コイル)の3つのコイルと筒状磁性体で構成することなく、筒状コイル、あるいはシート状コイル、の少なくとも1つのコイルと筒状磁性体で構成してもよい。その場合、
図5に示す装薬位置P2cに対しては、
図15の例に示すようにZ軸用筒状コイル119とX軸用シート状コイル117Xとベース筒体114と筒状磁性体115とで無線起爆雷管用アンテナ11Cを構成してもよい(ただし、ベース筒体114は省略してもよい)。また、
図5の例において、例えば装薬位置P2bに対しては、
図16の例に示すようにZ軸用筒状コイル119とベース筒体114と筒状磁性体115とで無線起爆雷管用アンテナ11Aを構成してもよい(ただし、ベース筒体114は省略してもよい)。また、
図5に示す装薬位置P1bに対しては、
図17の例に示すようにY軸用シート状コイル117Yとベース筒体114と筒状磁性体115とで無線起爆雷管用アンテナ11Bを構成してもよい(ただし、ベース筒体114は省略してもよい)。つまり、装薬孔の位置に応じて、その位置で(最も)磁界の成分が大きい方向を軸とするアンテナを構成する。この場合、X軸、Y軸、Z軸に限らず、その位置における磁界の方向にアンテナの導電線の巻回の軸を一致させると、より好ましい。
【0048】
なお、
図16及び
図17に示す例に対して、X軸用シート状コイル117Xとベース筒体114と筒状磁性体115とで無線起爆雷管用アンテナを構成してもよい(ただし、ベース筒体114は省略してもよい)。また、
図15に示す例に対して、Z軸用筒状コイル119とX軸用シート状コイル117Xを、Z軸用筒状コイル119とY軸用シート状コイル117Yに変更してもよいし、X軸用シート状コイル117XとY軸用シート状コイル117Yに変更してもよい。このように、切羽面における装薬孔の位置毎に異なる無線起爆雷管用アンテナを選定し、切羽面に削孔された各装薬孔にて、より効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を受信することができる無線起爆雷管用アンテナを実現することができる。
【0049】
●[Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yの構造(
図18〜
図23)]
以下の各コイルの説明では、筒状磁性体の軸をZ軸、Z軸に直交する軸をX軸、Z軸とX軸との双方に直交する軸をY軸、として説明する。
図18にZ軸用筒状コイル119の外観の例を示す。Z軸用筒状コイル119は、Z軸の周囲に導電線111が巻回されて筒状に形成された筒状コイルである。なお
図18では筒体112上に導電線111を巻回して筒状コイルを形成した例を示しているが、筒体112を設けずに導電線111を巻回して筒状コイルとしてもよい。また、
図16の分解斜視図の状態から、Z軸用筒状コイル119(筒状コイルに相当)を、肉薄筒状とされた筒状磁性体115と同軸(この場合、Z軸と同軸)となるように筒状磁性体115の外周面に設けて全体を筒状に形成することで、無線起爆雷管用アンテナ11A(Z軸用筒状アンテナ)を構成することができる。
【0050】
図19にX軸用シート状コイル117Xの外観の例を示す。X軸用シート状コイル117Xは、
図21に示すように、平行な仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に導電線111が巻回されて、仮想軸JNAとJNBのそれぞれに直交するシート状としたコイル116として形成された後、
図19に示すように仮想軸JNAとJNBが同軸となるように筒状に形成されたシート状コイルである。X軸用シート状コイル117Xは、
図19に示すように、仮想軸JNAとJNB(
図21参照)が、同軸となるように湾曲され、同軸とされた仮想軸JNAとJNBがX軸に平行となるように配置されている。すなわち、X軸用シート状コイル117Xは、X軸の周囲に導電線111が巻回されたシート状コイルである。なお
図21に示すようにシート113上に導電線111を巻回してシート状としたコイルを形成しても良いし、シート113を設けずに導電線111を巻回してシート状としたコイルとしてもよい。また、
図17に示す分解斜視図においてY軸用シート状コイル117YをX軸用シート状コイル117Xに代えて、当該分解斜視図の状態から、筒状磁性体115の外周面に沿うように湾曲させたX軸用シート状コイル(シート状コイルに相当)を、肉薄筒状とされた筒状磁性体115の外周面に設けて全体を筒状に形成することで、無線起爆雷管用アンテナ(X軸用シート状アンテナ)を構成することができる。このとき、X軸用シート状コイルは、筒状磁性体115の軸(Z軸)に直交する軸(この場合、X軸)の周囲に導電線が巻回されている。なお、仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に導電線111を巻回したシート状としたコイル116の例として、
図22や
図23のように導電線111を巻回してもよい。
【0051】
図20にY軸用シート状コイル117Yの外観の例を示す。Y軸用シート状コイル117Yは、
図21に示すように、平行な仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に導電線111が巻回されて、仮想軸JNAとJNBのそれぞれに直交するシート状としたコイル116として形成された後、
図20に示すように仮想軸JNAとJNBが同軸となるように筒状に形成されたシート状コイルである。Y軸用シート状コイル117Yは、
図20に示すように、仮想軸JNAとJNB(
図21参照)が、同軸となるように湾曲され、同軸とされた仮想軸JNAとJNBがY軸に平行となるように配置されている。すなわち、Y軸用シート状コイル117Yは、Y軸の周囲に導電線111が巻回されたシート状コイルである。なお
図21に示すようにシート113上に導電線111を巻回してシートとした状コイルを形成しても良いし、シート113を設けずに導電線111を巻回してシート状としたコイルとしてもよい。また、
図17に示す分解斜視図において、当該分解斜視図の状態から、筒状磁性体115の外周面に沿うように湾曲させたY軸用シート状コイル(シート状コイルに相当)を、肉薄筒状とされた筒状磁性体115の外周面に設けて全体を筒状に形成することで、無線起爆雷管用アンテナ(Y軸用シート状アンテナ)を構成することができる。このとき、Y軸用シート状コイルは、筒状磁性体115の軸(Z軸)に直交する軸(この場合、Y軸)の周囲に導電線が巻回されている。なお、仮想軸JNAとJNBのそれぞれの周囲に導電線111を巻回したシート状としたコイル116の例として、
図22や
図23のように導電線111を巻回してもよい。
【0052】
従って、X軸用シート状コイル117Xを、Z軸回りに90[°]旋回させたものがY軸用シート状コイル117Yである。Z軸用筒状コイル119、X軸用シート状コイル117X、Y軸用シート状コイル117Yのそれぞれは、筒状磁性体115の外周面に設けられている場合のほうが、筒状磁性体115の内周面に設けられている場合よりも、より効率良く点火用のエネルギーと電子回路駆動用のエネルギーと制御信号を受け取ることができる。また
図19、
図20等に示すように本実施の形態の説明では、X軸用シート状コイル117X及びY軸用シート状コイル117Yにおける導電線111の巻回を、矩形状に巻回した例を示しているが、巻回の形状は矩形状に限定されるものではなく、渦巻き状(らせん状)や種々の多角形状に巻回してもよい。また種々の形状が混在するように巻回してもよい。またZ軸用筒状コイル、X軸用シート状コイル、Y軸用シート状コイルは、作業者が手作業で導電線111を所定回数巻回して作成するようにしてもよい。
【0053】
●[無線起爆雷管10の制御部12内及び起爆部14内の回路(
図24)]
次に
図24に示す回路ブロック図を用いて、無線起爆雷管10の制御部12内及び起爆部14内の回路について説明する。
図24は、
図6に示す無線起爆雷管用アンテナ11を含めた、制御部12、起爆部14の、それぞれの回路(ブロック図)を示している。
【0054】
無線起爆雷管用アンテナ11は、X軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体によるX軸用シート状アンテナと、Z軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナと、Y軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体によるY軸用シート状アンテナと、にて構成されている。X軸用シート状コイル117Xは、可変コンデンサ等にて構成された同調回路121を介してスイッチモジュール124に接続されている。同様に、Z軸用筒状コイル119は、可変コンデンサ等にて構成された同調回路122を介してスイッチモジュール124に接続されている。同様に、Y軸用シート状コイル117Yは、可変コンデンサ等にて構成された同調回路123を介してスイッチモジュール124に接続されている。このように、X軸用シート状コイル117X、Z軸用筒状コイル119、Y軸用シート状コイル117Y、のそれぞれは、導電線111が、同調回路121、122、123、のそれぞれに接続されている。そして、同調回路121、122、123、のそれぞれが、スイッチモジュール124に接続されている。
【0055】
制御部12は、同調回路121、122、123、スイッチモジュール124、CPU131、検波・復調回路125、レギュレータ128、変調回路133、送信回路134、ID記憶装置132、起爆用蓄電装置136、電子回路駆動用蓄電装置127、蓄電状態検出回路137、起爆用スイッチ回路138、整流回路126、蓄電用スイッチ回路135等にて構成されている。なお、同調回路121、122、123、のそれぞれは、対応するX軸用シート状コイル117X、Z軸用筒状コイル119、Y軸用シート状コイル117Y、の共振周波数を調整するための可変コンデンサ等にて構成されている。
【0056】
スイッチモジュール124は、CPU131の制御信号154にてスイッチの状態が切り換えられる。スイッチモジュール124は、無線起爆雷管用アンテナ11が前記エネルギーを受け取ったり制御信号を受信したりする場合、CPU131からの制御信号154に基づいて、無線起爆雷管用アンテナ11を経路151と経路152に接続する。なお、経路151は、受信した制御信号を取り込むルートであり、経路152は、受け取ったエネルギーを整流、蓄電、定電圧化するルートである。そして、経路151及び検波・復調回路125を介して受信された無線の制御信号(ID要求信号や蓄電要求信号や蓄電状況確認信号や起爆実行信号等を含む)は、CPU131に取り込まれ、経路152及びレギュレータ128(定電圧回路)を経由した前記エネルギーは、CPU等の電子回路の電源として使用されるとともに電子回路駆動用蓄電装置127に蓄電される。また、制御信号により起爆のためのエネルギーの蓄電が指示されると、CPU131の制御信号155にて蓄電用スイッチ回路135の状態が切り換えられ、起爆のためのエネルギーが起爆用蓄電装置136に蓄電される。これにより、起爆のためのエネルギーが勝手に起爆用蓄電装置136に蓄電されることを防止できる。またスイッチモジュール124は、CPU131が無線信号を送信する場合、CPU131からの制御信号154に基づいて、CPUから送信される信号を変調回路133及び送信回路134を介した経路153を、同調回路121を介してX軸用シート状コイル117X、同調回路122を介してZ軸用筒状コイル119、同調回路123を介してY軸用シート状コイル117Y、のいずれか1つ以上に接続する。なお、経路153は、無線起爆雷管から操作側アンテナへの応答信号を送信するルートである。そしてCPU131は経路153と無線起爆雷管用アンテナ11から応答信号を送信する。
【0057】
ID記憶装置132には、無線起爆雷管10に固有の識別情報が記憶されている。CPU131は、ID要求信号(制御信号)を受信すると、ID記憶装置132から読み出した識別情報を含む応答信号を送信する。
【0058】
起爆用蓄電装置136は、整流回路126から出力される前記エネルギーを蓄電する。また蓄電状態検出回路137は、起爆用蓄電装置136に蓄電されたエネルギーに応じた信号をCPU131に出力する。またCPU131は、蓄電状態確認信号(制御信号)を受信すると、検出した蓄電状態を含む応答信号を送信する。またCPU131は、起爆実行信号(制御信号)を受信すると、制御信号156にて、起爆用スイッチ回路138を開状態から短絡状態へと制御して、起爆用蓄電装置136に蓄えたエネルギーを点火回路141に出力して起爆を実行する。
【0059】
起爆部14は、点火回路141、点火玉142、起爆薬143、添装薬144等を有している。点火回路141は、起爆用スイッチ回路138が短絡されると、起爆用蓄電装置136から電力(エネルギー)が供給されて点火玉142が着火される。そして点火玉142が点火されると、起爆薬143と添装薬144が点火され、起爆部14が点火される。そして起爆部14が点火されると、
図2に示す親ダイ201が起爆される。
【0060】
本実施の形態にて説明する無線起爆システム1では、操作周波数を100[KHz]以上500[KHz]以下とする。無線起爆雷管は、効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を受信することができるので、操作側アンテナ60の巻き回数を、1回あるいは数回程度とすることができる。そして、当該操作周波数の電流を操作側アンテナ60に供給することで無線起爆雷管10の制御部12に給電するとともに点火用のエネルギーを蓄電させる。制御部12への給電及び蓄電のために操作側アンテナ60に供給する電力は、数10[W]〜数100[W]程度の比較的小電力で行うことができる。さらに、前記電流に重畳された制御信号(例えば、ID要求信号や蓄電要求信号や蓄電状況確認信号や起爆実行信号等を含む)にて、無線起爆雷管の制御を行う。
【0061】
また、無線起爆雷管10から応答する信号の周波数を1[MHz]以上10[MHz]以下に設定することで、操作側アンテナ60の長さも、洞床、洞側、洞天井に沿って1回あるいは数回巻く程度の長さで良い。また、操作側アンテナ60にて、送信信号の送信と応答信号の受信を兼用させることが可能であり、送信信号の送信専用アンテナ及び応答信号の受信専用のダイポールアンテナを必要としない。例えば無線起爆雷管からの応答周波数を10[MHz]とした場合、起爆操作機の受信用のアンテナの長さは、応答周波数の波長λ(この場合、30[m])を超えない長さとすることが好ましく、1〜数回巻きの操作側アンテナを兼用することができる。また、無線起爆雷管用アンテナ11は、送信専用アンテナ及び受信専用アンテナを別々に用意する必要がなく、無線起爆雷管10から起爆操作機50へ送信する応答信号の送信用アンテナは、無線起爆雷管用アンテナ11を兼用することができる。
【0062】
また、本実施の形態にて説明した無線起爆雷管用アンテナ11は、Z軸方向の磁界から効率よく前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を受信することができるZ軸用筒状コイル119と筒状磁性体によるZ軸用筒状アンテナと、X軸方向の磁界から効率よく前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を受信することができるX軸用シート状コイル117Xと筒状磁性体によるX軸用シート状アンテナと、Y軸方向の磁界から効率よく前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を受信することができるY軸用シート状コイル117Yと筒状磁性体によるY軸用シート状アンテナと、を有している。このため、
図1に示す切羽面41におけるいずれの位置に削孔された装薬孔40であっても、より効率良く前記エネルギーを受け取ることができるとともに無線の制御信号を受信することができる。また
図2に示すように、筒状の無線起爆雷管用アンテナ11内に爆薬を挿通することで、装薬孔内に、より多くの爆薬を装填することが可能になり、起爆効率を向上させることができる。
【0063】
本発明の無線起爆雷管用アンテナ11、無線起爆雷管10、無線起爆システム1は、本実施の形態にて説明した外観、構造、構成、形状等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0064】
また、X軸用シート状コイル117Xにおける導電線の巻回の軸(筒状磁性体の軸に直交する軸)は、Z軸用筒状コイル119における導電線の巻回の軸(筒状磁性体の軸)に直交している。また、Y軸用シート状コイル117Yにおける導電線の巻回の軸(筒状磁性体の軸に直交する軸)は、Z軸用筒状コイル119における導電線の巻回の軸(筒状磁性体の軸)に直交しており、X軸用シート状コイル117Xにおける導電線の巻回の軸に直交している。
【0065】
また本実施の形態にて説明した無線起爆雷管用アンテナ11、無線起爆雷管10、無線起爆システム1は、トンネルの掘削現場に限定されず、種々の現場の爆破に適用することが可能である。
【0066】
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【0067】
本実施の形態にて説明した無線起爆雷管用アンテナ11は、Z軸用筒状アンテナのみをZ軸方向に沿って装薬孔に配置した従来のアンテナに対して、点火用のエネルギーや電子回路駆動用のエネルギー等を、より「効率良く」受け取ることができるとともに、無線の制御信号を、より「効率良く」受信することができる。なお「効率良く」とは、従来のアンテナでは、例えば
図4の例に示す装薬位置P1a、P1c、P3a、P3c等の操作側アンテナの縁部では、点火用のエネルギーや電子回路駆動用のエネルギーを充分に受け取れない場合や、無線の起爆信号を受信できない場合が、稀に発生したが、本実施の形態の無線起爆雷管用アンテナでは、発明者が何度も実験した結果、点火用のエネルギーや電子回路駆動用のエネルギーを充分に受け取れない場合や、無線の起爆信号を受信できない場合が、一度も発生しなかった、という意味を含んでいる。つまり本実施の形態にて説明した無線起爆雷管用アンテナ11にて「効率良く受け取ることができる」「効率良く受信できる」とは、上記の従来のアンテナと比較して、点火用のエネルギーや電子回路駆動用のエネルギー等を「より確実に受け取ることが可能」であり、無線の起爆信号を「より確実に受信することができる」、という意味を含んでいる。