特許第6645095号(P6645095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645095
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】粘着シートの製造方法、及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20200130BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20200130BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200130BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20200130BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J133/00
   C09J11/06
   C09J201/00
【請求項の数】18
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2015-190516(P2015-190516)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-66210(P2017-66210A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】松岡 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 丘雅
(72)【発明者】
【氏名】上村 和恵
(72)【発明者】
【氏名】加藤 揮一郎
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−196805(JP,A)
【文献】 特開2017−066211(JP,A)
【文献】 特許第6068728(JP,B2)
【文献】 特開2015−196807(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/051106(WO,A1)
【文献】 特開2012−172006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材又は剥離材上に、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層してなる樹脂層を有し、少なくとも層(Xα)の表面(α)が粘着性を有し、表面(α)上の任意に選択された一辺1mmの正方形で囲まれた領域(Q)内に、前記凹部が1個以上存在する粘着シートを製造する方法であって、
層(Xβ)は、樹脂を含み、粘着付与剤を実質的に含有しない組成物(xβ)を用いて形成し、
層(Y1)は、樹脂及び微粒子を含み、粘着付与剤を実質的に含有せず、当該微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y1)を用いて形成し、
層(Xα)は、粘着性樹脂100質量部と、粘着付与剤1質量部以上とを含む組成物(xα)を用いて形成し、少なくとも層(Xα)と層(Y1)を同時に乾燥して形成する、
粘着シートの製造方法。
【請求項2】
少なくとも下記工程(1A)及び(2A)を有する、請求項1に記載の粘着シートの製造方法。
工程(1A):基材又は剥離材上に、組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)、組成物(y1)からなる塗膜(y1’)、及び組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2A):工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y1’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥し、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)を形成する工程
【請求項3】
工程(1A)において、組成物(xβ)、組成物(y1)、及び組成物(xα)を用いて、塗布速度8m/分以上にて、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)をそれぞれ形成する、請求項2に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項4】
少なくとも下記工程(1B)及び(2B)を有する、請求項1に記載の粘着シートの製造方法。
工程(1B):基材又は剥離材の表面上に、組成物(xβ)から形成された層(Xβ)上に、組成物(y1)からなる塗膜(y1’)、及び組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2B):工程(1B)で形成した塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥し、層(Y1)及び層(Xα)を形成する工程
【請求項5】
工程(1B)において、組成物(y1)及び組成物(xα)を用いて、塗布速度8m/分以上にて、塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)をそれぞれ形成する、請求項4に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項6】
工程(2A)又は(2B)により、層(Xα)の表面(α)上に、不定形の凹部が形成される、請求項2〜5のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項7】
組成物(xα)に含まれる粘着付与剤の含有量が、組成物(xα)中の前記粘着性樹脂100質量部に対して、400質量部以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項8】
塗膜(xα’)の塗布量が1.5〜800g/mである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項9】
塗膜(y1’)の塗布量が1.5〜800g/mである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項10】
塗膜(xα’)と塗膜(y1’)との塗布量の比〔(xα’)/(y1’)〕が、100/5〜100/2000である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項11】
前記樹脂層の全質量100質量%に対する、粘着付与剤の含有量が、2〜60質量%である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項12】
組成物(xβ)及び組成物(y1)に含まれる前記樹脂が、粘着性樹脂である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項13】
組成物(xα)に含まれる前記粘着性樹脂が、官能基を有するアクリル系樹脂である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項14】
組成物(xα)が、さらに金属キレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤から選ばれる1種以上を含む、請求項13に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項15】
前記官能基がカルボキシ基である、請求項13又は14に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項16】
組成物(y1)に含まれる前記微粒子が、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項17】
基材又は剥離材上に、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層してなる樹脂層を有し、少なくとも層(Xα)の表面(α)が粘着性を有する粘着シートであって、
層(Xα)の表面(α)上に、不定形の凹部を有し、
一個の凹部の最大高低差は0.5μm以上樹脂層の厚さ以下であり、凹部の幅の平均値は1〜500μmであり、
表面(α)に存在する平坦面が占める面積割合は、50〜90%であり、
層(Xβ)が、樹脂を含み、粘着付与剤を実質的に含有しない組成物(xβ)から形成された層であり、
層(Y1)が、樹脂及び微粒子を含み、粘着付与剤を実質的に含有せず、当該微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y1)から形成された層であり、
層(Xα)が、粘着性樹脂100質量部と、粘着付与剤1質量部以上とを含む組成物(xα)から形成された層である、
粘着シート。
【請求項18】
前記凹部が、前記樹脂層の自己形成化により形成されたものである、請求項17に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートの製造方法、及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な粘着シートは、基材と、該基材上に形成された粘着剤層と、必要に応じて該粘着剤層上に設けられた剥離材から構成されており、使用に際しては、剥離材が設けられている場合には、その剥離材を剥がし、粘着剤層を被着体に当接させて貼付する。
ところで、例えば、識別・装飾用、塗装マスキング用、金属板等の表面保護用等に使用する、貼付面積が大きい粘着シートは、被着体に貼付する際に、粘着剤層と被着体との間に空気溜まりが発生しやすく、その部分が「ふくれ」となって、粘着シートを被着体にきれいに貼付できにくいという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1には、粘着剤層の表面に、微細なエンボスパターンを有する剥離材を接触させて、粘着剤層の表面に、特定形状の溝を、所定パターンで人工的に配置させてなる粘着シートが開示されている。
このような粘着シートを用いることで、被着体との貼付時に発生した「空気溜まり」は、粘着剤層の表面に人工的に形成された溝を介して、外部へ逃すことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−507732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に記載されたような、一般的な特定形状の溝が所定パターンで配置された粘着剤層を有する粘着シートは、溝の幅が狭いと空気が抜けにくく、溝の幅が広いと表面基材が凹んで外観が劣るだけでなく、粘着力が低下するという問題がある。
また、当該粘着シートは、溝が所定パターンで配置されているため、溝が配置された箇所の粘着力は局所的に劣り、当該粘着シートを被着体に貼付した際、当該箇所から剥がれが発生する可能性がある。
一方、当該粘着シートを被着体に貼付後に再剥離する際、当該粘着シートの粘着特性が局所的に異なるため、粘着シートの剥がす方向によっては、被着体に糊残りが生じる恐れがある。例えば、格子状に溝が配置された粘着剤層を有する粘着シートの場合、斜め方向に剥離すると、被着体に糊残りが生じる可能性がある。
さらに、当該粘着シートに対して打ち抜き加工を行う場合、溝の配置パターンと打ち抜き加工のパターンとが重なる恐れがある。その場合、切り込み深さにバラつきが生じ、適切に粘着シートに切り込みを形成できない等の問題がある。
【0006】
また、一般的に、粘着シートに設けられた剥離材を剥がしやすくするために、剥離材にのみ切り込みを施し、剥離のきっかけを設ける工程(いわゆる背割れ加工)を行うことがある。当該工程を行う場合、粘着シートから剥離材を一旦剥がして、剥離材に切り込みを施した後、再度剥離材と粘着シートの粘着剤層とをラミネートすることが一般的である。
しかし、特許文献1に記載の粘着シートでは、エンボスライナーを剥離材として用いているため、再度剥離材と粘着剤層とをラミネートする際に、剥離材のエンボスパターンに追従しにくいため、エンボス加工が施されていない別の剥離材を用意する必要が生じる。
【0007】
さらに、特許文献1では、粘着剤層に微細構造を形成するために、一度エンボスライナーに粘着剤を塗布し粘着剤層を形成してから、当該粘着剤層と基材とをラミネートする方法(いわゆる転写塗布法)を採用している。しかしながら、上記基材として、ポリオレフィン系基材等の低極性表面を有する基材を用いると、当該方法では、基材と粘着剤層との界面に十分な密着性が得られない。
その上、紙からなる剥離材と異なり、樹脂フィルムからなる剥離材では、粘着剤層に対して、微細なエンボスパターンの形成が難しい。
また、一般に、粘着力を向上させるために、粘着付与剤を配合することが知られているが、3層以上の多層粘着シートにおいて、中間層に粘着付与剤を含有させると、生産性を上げて粘着シートを製造しようとした場合、エア抜け性、耐ブリスター性に優れた粘着シートが得られないという問題が発生することが本発明者らによって確認された 。
【0008】
本発明は、粘着力、エア抜け性、耐ブリスター性に優れた粘着シートを生産性よく製造することができる粘着シートの製造方法、及び粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、基材又は剥離材上に、特定の層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)を積層してなる樹脂層を有し、層(Xα)の表面(α)が粘着性を有する粘着シートの製造方法が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[20]を提供するものである。
[1]基材又は剥離材上に、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層してなる樹脂層を有し、少なくとも層(Xα)の表面(α)が粘着性を有し、表面(α)上の任意に選択された一辺1mmの正方形で囲まれた領域(Q)内に、前記凹部が1個以上存在する粘着シートを製造する方法であって、
層(Xβ)は、樹脂を含み、粘着付与剤を実質的に含有しない組成物(xβ)を用いて形成し、
層(Y1)は、樹脂及び微粒子を含み、粘着付与剤を実質的に含有せず、当該微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y1)を用いて形成し、
層(Xα)は、粘着性樹脂100質量部と、粘着付与剤1質量部以上とを含む組成物(xα)を用いて形成する、粘着シートの製造方法。
[2]少なくとも下記工程(1A)及び(2A)を有する、上記[1]に記載の粘着シートの製造方法。
工程(1A):基材又は剥離材上に、組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)、組成物(y1)からなる塗膜(y1’)、及び組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2A):工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y1’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥し、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)を形成する工程
[3]工程(1A)において、組成物(xβ)、組成物(y1)、及び組成物(xα)を用いて、塗布速度8m/分以上にて、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)をそれぞれ形成する、上記[2]に記載の粘着シートの製造方法。
[4]少なくとも下記工程(1B)及び(2B)を有する、上記[1]に記載の粘着シートの製造方法。
工程(1B):基材又は剥離材の表面上に、組成物(xβ)から形成された層(Xβ)上に、組成物(y1)からなる塗膜(y1’)、及び組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2B):工程(1B)で形成した塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥し、層(Y1)及び層(Xα)を形成する工程
[5]工程(1B)において、組成物(y1)及び組成物(xα)を用いて、塗布速度8m/分以上にて、塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)をそれぞれ形成する、上記[4]に記載の粘着シートの製造方法。
[6]工程(2A)又は(2B)により、層(Xα)の表面(α)上に、不定形の凹部が形成される、上記[2]〜[5]のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
[7]組成物(xα)に含まれる粘着付与剤の含有量が、組成物(xα)中の前記粘着性樹脂100質量部に対して、400質量部以下である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
[8]塗膜(xα’)の塗布量が1.5〜800g/mである、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
[9]塗膜(y1’)の塗布量が1.5〜800g/mである、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
[10]塗膜(xα’)と塗膜(y1’)との塗布量の比〔(xα’)/(y1’)〕が、100/5〜100/2000である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
[11]前記樹脂層の全質量100質量%に対する、粘着付与剤の含有量が、2〜60質量%である、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
[12]組成物(xβ)及び組成物(y1)に含まれる前記樹脂が、粘着性樹脂である、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
[13]組成物(xα)に含まれる前記粘着性樹脂が、官能基を有するアクリル系樹脂である、上記[1]〜[12]のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
[14]組成物(xα)が、さらに金属キレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤から選ばれる1種以上を含む、上記[13]に記載の粘着シートの製造方法。
[15]前記官能基がカルボキシ基である、上記[13]又は[14]に記載の粘着シートの製造方法。
[16]組成物(y1)に含まれる前記微粒子が、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上である、上記[1]〜[15]のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
[17]基材又は剥離材上に、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層してなる樹脂層を有し、少なくとも層(Xα)の表面(α)が粘着性を有する粘着シートであって、
層(Xβ)が、樹脂を含み、粘着付与剤を実質的に含有しない組成物(xβ)から形成された層であり、
層(Y1)が、樹脂及び微粒子を含み、粘着付与剤を実質的に含有せず、当該微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y1)から形成された層であり、
層(Xα)が、粘着性樹脂100質量部と、粘着付与剤1質量部以上とを含む組成物(xα)から形成された層である、粘着シート。
[18]層(Xα)の表面(α)上に、不定形の凹部を有する、上記[17]に記載の粘着シート。
[19]前記凹部が、前記樹脂層の自己形成化により形成されたものである、上記[18]に記載の粘着シート。
[20]層(Y1)が粘着付与剤を含む、上記[17]〜[19]のいずれかに記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粘着力、エア抜け性、耐ブリスター性に優れた粘着シートを生産性よく製造することができる粘着シートの製造方法、及び粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の粘着シートの構成の一例を示す、該粘着シートの断面模式図である。
図2】本発明の粘着シートが有する樹脂層の表面(α)側から観察した際の表面(α)の平面模式図である。
図3】本発明の粘着シートが有する樹脂層の表面(α)側の形状の一例を示す、該樹脂層の断面模式図である。
図4】要件(II)で規定する断面の選択の方法を説明するため図であって、本発明の一態様の粘着シートの斜視図である。
図5】本発明の一態様の粘着シートに対して、要件(II)で規定する断面(P1)の 模式図の一例である。
図6】実施例1で作製した粘着シートの樹脂層の表面(α)上の任意に選択した縦8mm×横10mmの長方形で囲まれた領域(D)を、デジタル顕微鏡を用いて樹脂層の表面(α)側から撮影した画像の2値化画像である 。
図7】実施例2で作製した粘着シートの樹脂層の表面(α)上の任意に選択した縦8mm×横10mmの長方形で囲まれた領域(D)を、デジタル顕微鏡を用いて樹脂層の表面(α)側から撮影した画像の2値化画像である。
図8】比較例1で作製した粘着シートをデジタル顕微鏡を用いて得た、樹脂層の表面(α)側から撮影した画像の2値化画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、例えば、「主成分としてXX成分を含むYY」や「主にXX成分からなるYY」との記載は、「YYに含まれる成分のうち、最も含有量が多い成分はXX成分である」ということを意味している。当該記載における具体的なXX成分の含有量としては、YYの全量(100質量%)に対して、通常50質量%以上、好ましくは65〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは85〜100質量%である。
また、本発明において、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
さらに、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10〜90、より好ましくは30〜60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10〜60」とすることもできる。
【0014】
〔本発明の粘着シートの製造方法〕
本発明の粘着シートの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)は、基材又は剥離材上に、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層してなる樹脂層を有し、少なくとも層(Xα)の表面(α)(以下、単に「表面(α)」ともいう)が粘着性を有し、表面(α)上の任意に選択された一辺1mmの正方形で囲まれた領域(Q)内に、前記凹部が1個以上存在する粘着シート(以下、「本発明の粘着シート」ともいう)を製造する方法であって、
層(Xβ)は、樹脂を含み、粘着付与剤を実質的に含有しない組成物(xβ)を用いて形成し、
層(Y1)は、樹脂及び微粒子を含み、粘着付与剤を実質的に含有せず、当該微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y1)を用いて形成し、
層(Xα)は、粘着性樹脂100質量部と、粘着付与剤1質量部以上とを含む組成物(xα)を用いて形成する、粘着シートの製造方法である。
【0015】
本発明の製造方法において、組成物(xβ)が粘着付与剤を実質的に含有せず、組成物(y1)が、微粒子15質量%以上を含み、粘着付与剤を実質的に含有せず、組成物(xα)のみが、粘着性樹脂100質量部と粘着付与剤1質量部以上とを含むことで、高速塗布して製造しても、小さな凹部 と平坦面が多数存在する表面(α)を有する粘着シートを製造することができ、粘着力に優れ、エア抜け性、耐ブリスター性にも優れた粘着シートを得ることができる。
本発明の製造方法によれば、図1(a)の粘着シート1a等のように、主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)、粒子部分(Y1)を含む層(Y1)、及び主に樹脂部分(X)を含む層(Xα)をこの順で積層した多層構造体を形成してなる樹脂層を有する粘着シートを生産性よく製造することができる。
本発明の製造方法に特に制限はないが、粘着性及び生産性の観点、並びに、樹脂層の表面(α)の凹部及び平坦面の形成を容易にして、エア抜け性、耐ブリスター性を向上させる観点から、以下の第1態様の製造方法、及び第2態様の製造方法が好ましい。
【0016】
<第1態様の製造方法>
第1態様の製造方法は、少なくとも下記工程(1A)及び(2A)を有する方法である。
工程(1A):基材又は剥離材上に、組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)、組成物(y1)からなる塗膜(y1’)、及び組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2A):工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y1’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥し、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)を形成する工程
【0017】
<第2態様の製造方法>
第2態様の製造方法は、少なくとも下記工程(1B)及び(2B)を有する方法である。
工程(1B):基材又は剥離材の表面上に、組成物(xβ)から形成された層(Xβ)上に、組成物(y1)からなる塗膜(y1’)、及び組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2B):工程(1B)で形成した塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥し、層(Y1)及び層(Xα)を形成する工程
本発明の製造方法においては、工程(2A)又は(2B)により、層(Xα)の表面(α)上に、不定形の凹部が効果的に形成され、不定形の凹部が形成されることで、平坦面の形状も不定形となる。
【0018】
〔本発明の製造方法により得られる粘着シートの構成〕
本発明の製造方法により得られる粘着シートは、基材又は剥離材上に、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層してなる樹脂層を有し、少なくとも層(Xα)の表面(α)が粘着性を有する粘着シートであって、表面(α)には、凹部が存在する。
【0019】
図1は、本発明の粘着シートの構成の一例を示す断面模式図である。
本発明の一態様の粘着シートとしては、例えば、図1(a)に示すような、基材11上に、樹脂層12を有する粘着シート1aや、図1(b)に示すような、剥離材21上に、樹脂層12を有する粘着シート1bが挙げられる。
【0020】
本発明の一態様の粘着シートとしては、少なくとも基材11又は剥離材21が設けられた側とは反対側の層(Xα)12の表面(α)12aは粘着性を有し、凹部13及び平坦面14が存在する。
そのため、取扱性の観点から、本発明の別の一態様の粘着シートとしては、図1に示す粘着シート1a、1bに対して、樹脂層12の表面(α)12a上にさらに剥離材22を設けた、図1(c)又は(d)に示すような、粘着シート2a、2bのような構成を有するものが好ましい。
【0021】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、図1に示すように、樹脂層12が、樹脂を含む樹脂部分(X)と、微粒子からなる粒子部分(Y)とを含む。
樹脂層12中に粒子部分(Y)を含むことで、貼付後の形状維持性を向上することができ、得られる粘着シートを高温下で使用した場合に、耐ブリスター性 を向上させた粘着シートとすることができる。
樹脂部分(X)及び粒子部分(Y)の詳細は後述のとおりである。
【0022】
また、本発明の一態様である粘着シートにおいて、基材11又は剥離材21が設けられた側の樹脂層12の表面(β)12b(以下、「表面(β)」ともいう)も粘着性を有していてもよい。
表面(β)も粘着性を有することで、図1(a)及び(c)に示す粘着シート1a、2aであれば、樹脂層12と基材11との密着性が良好となり、図1(b)及び(d)に示す粘着シート1b、2bであれば、両面粘着シートとすることができる。
【0023】
〔表面(α)に存在する凹部及び平坦面に関する要件〕
本発明の粘着シートは、図1(a)〜(d)に示すように、樹脂層12の表面(α)12aには凹部13及び平坦面14が存在する。
表面(α)に存在する凹部13は、本発明の粘着シートの樹脂層の表面(α)を被着体に貼付する際に生じる「空気溜まり」を外部へ逃すための空気排出通路としての役割を担うものである。
一方、表面(α)に存在する平坦面14は、被着体との貼り合わせ時に、被着体と直接接触して密着する面であり、粘着シートの粘着力に影響を及ぼす箇所である。
【0024】
図2は、本発明の粘着シートが有する樹脂層の表面(α)側から観察した際の表面(α)の平面模式図である。
樹脂層の表面(α)に存在する凹部は、図2に示すような、不定形の凹部13であることが好ましいが、定形の凹部が存在していてもよい。
ただし、本発明の一態様において、図2に示すように、樹脂層12の表面(α)12aに、不定形の凹部13が1個以上存在していることが好ましく、不定形の凹部13が複数存在していることがより好ましい。
樹脂層の表面(α)に不定形の凹部が存在していることで、エア抜け性及び粘着特性をバランス良く、更に向上させた粘着シートとすることができる。
また、不定形の凹部が複数存在することで、一定方向からの圧力が加えられ、表面(α)に存在する凹部の一部の形状が崩れた場合においても、表面(α)には形状が維持された凹部13が存在し易く、エア抜けの経路が消失することを防ぐことが出来る。
【0025】
なお、表面(α)に存在する凹部13を平面視した場合における当該凹部13の長さは、特に制限はない。つまり、凹部13は、比較的長い溝形状のものや、比較的短い窪み形状のものが含まれる。
【0026】
また、樹脂層の表面(α)に存在する平坦面は、図2に示すような、不定形の平坦面14であることが好ましいが、定形の平坦面が存在していてもよい。
ただし、本発明の一態様において、図2に示すように、樹脂層12の表面(α)12aに、不定形の平坦面14が1個以上存在していることが好ましく、不定形の凹部14が複数存在していることがより好ましい。
樹脂層の表面(α)に不定形の平坦面が存在していることで、一般的なエンボスパターンを有する剥離シートを用いて形成された粘着剤層の表面と異なり、局所的に粘着力が弱い箇所やエア抜け性が劣る箇所の存在を限りなく少なくすることができる。その結果、樹脂層の表面(α)に対して、一様に優れたエア抜け性及び粘着特性を発現させることができる。
【0027】
なお、本発明において、「不定形」とは、円や楕円等の中心を作図可能な図形、及び多角形等といった定形の形状を有さず、形に規則性が無く、個々の形状に類似性が見られない形状を指し、具体的には、図2に示す凹部13及び平坦面14の形状が該当する。
一方、「不定形」ではない「定形」のものとしては、円や楕円及び多角形等が挙げられる。なお、本明細書において、「多角形」とは、その内部に(外部にはみ出さずに)対角線を作図可能な図形であって、内角の和が180×n(度)(nは自然数)の直線で囲まれた図形を指す。当該多角形は、その角部がアール状の湾曲形状であるものも含まれる。
【0028】
また、本発明において、樹脂層の表面(α)に「不定形」の凹部又は平坦面が存在しているか否かの判断は、樹脂層の表面(α)側から、観察対象の平坦面又は凹部の形状を目視又はデジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)で観察して判断するのが原則である。
なお、 デジタル顕微鏡を用いる場合には、図5の表面(α)上の目視で平坦面が存在すると思われる箇所の上方からA方向へ順に焦点を移動し、初めて焦点があった部分を平坦面として観察するのが適当である。
また、上記の方法で焦点が定まらない場合には、樹脂層の表面(α)上に平滑面を有する透光性被着体を可能な限り荷重をかけないようにスキージを用いて貼り、デジタル顕微鏡を用いて透光性被着体を介して樹脂層の表面(α)を観察し、凹部及び平坦面が存在しているか否かを確認する方法で判断してもよい。
【0029】
ただし、表面(α)上の任意に選択された縦8mm×横10mmの長方形で囲まれた領域(D)を1〜10領域選択し、選択した各領域(D)内に存在する凹部又は平坦面の形状を表面(α)側から目視又はデジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)で観察して判断してもよい。つまり、選択したいずれの領域においても、不定形の凹部又は平坦面が存在していれば、「表面(α)に、不定形の凹部又は平坦面が存在する」とみなすこともできる。同様に、選択したいずれの領域においても、不定形の凹部又は平坦面が複数存在していれば、「表面(α)に、不定形の凹部又は平坦面が複数存在する」とみなすこともできる。
領域(D)の観察に際しては、デジタル顕微鏡を用いて、低倍率で選択した領域(D)の全面を一度に観察してもよい。
また、デジタル顕微鏡を用いて、高倍率で、選択した領域(D)を観察してもよいが、高倍率で観察しているため、当該領域(D)が、デジタル顕微鏡の撮影可能領域より大きくなる場合がある。このような場合には、デジタル顕微鏡の画像連結機能を用いて、任意に選択した互いに隣り合わせの領域を撮影して隣接する複数の画像を取得し、当該複数の画像を連結し連結画像として、当該連結画像から任意に選択した縦8mm×横10mmの長方形で囲まれた部分を領域(D)として、上記の判断に用いてもよい。
なお、以下に記載において、ある要件を満たしているか否かの判断を行うために、選択した領域内をデジタル顕微鏡を用いて観察する場合においても、上記と同様に連結画像から判断してもよい。
【0030】
本明細書の記載にて、各種形状の観察を行う際に使用するデジタル顕微鏡としては、例えば、キーエンス社製の製品名「デジタルマイクロスコープVHX−1000」や「デジタルマイクロスコープVHX−5000」等が挙げられる。
また、各種形状を観察する際には、表面(α)を上記倍率にて直接デジタル顕微鏡で観察する方法でもよく、上記倍率にてデジタル顕微鏡を用いて画像を取得し、当該画像に示された凹部及び平坦部の形状を目視で観察する方法でもよい。
【0031】
また、表面(α)に存在する不定形の凹部の形状が、表面(α)側から目視により視認できることが好ましい。
同様に、表面(α)に存在する不定形の平坦面の形状が、表面(α)側から目視により視認できることが好ましい。
なお、図1(c)又は(d)に示すような、樹脂層12の表面(α)12a上に剥離材22が積層した粘着シート2a、2bにおいては、当該剥離材22を除去した際に、表出した表面(α)を目視で観察するものとする。
【0032】
本発明の一態様において、表面(α)には、図2に示すような、不定形の凹部13と共に、定形の凹部が存在していてもよい。
ただし、表面(α)に存在する凹部の全面積100%に対する、表面(α)に存在する不定形の凹部が占める面積割合としては、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、更に好ましくは95〜100%、より更に好ましくは100%である。
【0033】
同様に、本発明の一態様において、表面(α)には、図2に示すような、不定形の平坦面14と共に、定形の平坦面が存在していてもよい。
ただし、表面(α)に存在する平坦面の全面積100%に対する、表面(α)に存在する不定形の平坦面が占める面積割合としては、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、更に好ましくは95〜100%、より更に好ましくは100%である。
【0034】
なお、上記の「凹部又は平坦面が占める面積割合」は、デジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)を用いて、表面(α)の画像を取得し、当該画像に対して画像処理(2値化処理)を行い算出することができる。
また、表面(α)上の任意に選択された縦8mm×横10mmの領域(D)を1〜10領域選択し、デジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)を用いて、当該領域の画像を取得し、当該画像から各領域の「凹部又は平坦面が占める面積割合」の値を算出し、選択した1〜10領域の当該値の平均を、対象となる粘着シートの樹脂層の表面(α)に存在する「凹部又は平坦面が占める面積割合」とみなすこともできる。
表面(α)に存在する平坦面が占める面積割合としては、好ましくは50〜90%、より好ましくは55〜80%、更に好ましくは60〜70%である。
【0035】
本発明の一態様において、よりエア抜けや粘着特性等の各種特性をバランス良く向上させた粘着シートとする観点から、樹脂層の表面(α)に存在する凹部及び平坦面の形状が、一定の繰り返し単位となる形状を有するものではないことが好ましい。
【0036】
また、本発明の一態様において、よりエア抜けや粘着特性等の各種特性をバランス良く向上させた粘着シートとする観点から、樹脂層の表面(α)に複数の凹部が存在し、当該複数の凹部の存在する位置が周期性を有さないことが好ましい。また、同様の観点から、樹脂層の表面(α)に複数の平坦面が存在し、当該複数の平坦面の存在する位置が周期性を有さないことが好ましい。
本発明において、「複数の凹部又は平坦面の存在する位置が周期性を有さない」とは、樹脂層の表面(α)上において、複数の凹部又は平坦面の存在する位置が、同じ繰り返しパターンを持たずに、不規則(ランダム)である状態を意味する。
【0037】
なお、 「凹部及び平坦面の形状が、一定の繰り返し単位となる形状を有するものではない」か否かの判断、並びに「複数の凹部又は平坦面の存在する位置が周期性を有さない」か否かの判断は、上述の「樹脂層の表面(α)に、不定形の凹部又は平坦面が存在しているか否か」の判断方法と同じ方法にて判断することができる。
【0038】
以下、表面(α)に存在する凹部及び平坦面に関する特有の要件について説明する。
【0039】
<表面(α)に存在する凹部に関する特有の要件>
本発明の一態様において、樹脂層の表面(α)上の任意に選択された一辺1mmの正方形で囲まれた領域(Q)内に、不定形の凹部が1個以上存在することが好ましく、不定形の凹部が複数存在していることがより好ましい。
上述の領域(Q)内に不定形の凹部が1個以上存在することで、エア抜け性や粘着特性等の各種特性をバランス良く向上させた粘着シートとすることができる。
【0040】
本発明の一態様において、樹脂層12の表面(α)12aに存在する凹部13は、0.5μm以上の最大高低差 を有するものであることが好ましい。
ここで規定する「凹部」は、0.5μm以上の最大高低差を有する凹みを指し、0.5μm以上の高低差を有する箇所が凹部のいずれかの部分で存在していればよく、当該凹部の全領域にわたって、0.5μm以上の高低差を有している必要はない。
【0041】
図3は、本発明の粘着シートが有する樹脂層の表面(α)側の形状の一例を示す、該樹脂層の断面模式図である。
図3(a)に示された凹部13のように、通常の凹部の形状としては、2つの山部分(M)、(M)と、谷部分(N)とを有する。本発明において凹部の「最大高低差」とは、樹脂層12の厚さ方向に対して、2つの山部分(M)、(M)のうち最も高い位置(m)(図3(a)では山部分(M)の極大点)と、最も低い位置(n)(図3(a)では谷部分(N)の極小点)との差(h)の長さを意味する。
また、図3(b)のような場合は、2つの山部分(M11)、(M12)と、谷部分(N)とを有する凹部131と、2つの山部分(M12)、(M13)と、谷部分(N)とを有する凹部132との2つの凹部を有していると考えられる。この場合、山部分(M11)の極大点と谷部分(N)の極小点との差(h)の長さが凹部131の最大高低差を表し、山部分(M13)の極大点と谷部分(N)の極小点との差(h)の長さが凹部132の最大高低差を表す。
【0042】
一個の凹部の最大高低差としては、粘着シートのエア抜け性の向上の観点、粘着シートの外観を良好に保つ観点、並びに、粘着シートの形状安定性の観点から、より好ましくは1.0μm以上樹脂層の厚さ以下であり、更に好ましくは3.0μm以上樹脂層の厚さ以下、より更に好ましくは5.0μm以上樹脂層の厚さ以下である。
【0043】
また、当該凹部の幅の平均値としては、粘着シートのエア抜け性の向上の観点、並びに粘着シートの粘着性を良好とする観点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは3〜400μm、更に好ましくは5〜300μmである。
なお、本発明において、当該凹部の幅とは、2つの山部分の極大点間の距離を意味し、図3(a)に示された凹部13においては、山部分(M)と山部分(M)との距離Lを指す。また、図3(b)に示された凹部131においては、山部分(M11)と山部分(M12)との距離Lを指し、凹部132においては、山部分(M13)と山部分(M12)との距離Lを指す。
また、本発明の粘着シートを平面視した際に(真上から見た際に)、凹部が長辺と短辺を有する場合は、短辺を幅という。
【0044】
当該一個の凹部の最大高低差と幅の平均値との比〔最大高低差/幅の平均値〕(図3(a)に示された凹部13においては、「h/L」を指す)としては、粘着シートのエア抜け性の向上の観点、並びに粘着シートの粘着性を良好とする観点から、好ましくは1/500〜100/1、より好ましくは3/400〜70/3、更に好ましくは1/60〜10/1である。
【0045】
<表面(α)に存在する平坦面に関する特有の要件>
本発明の一態様において、樹脂層の表面(α)に、少なくとも直径100μm(好ましくは直径150μm、より好ましくは直径200μm)の円で囲まれた領域を選択可能な広さを有する平坦面(f1)が1個以上存在することが好ましく、当該平坦面(f1)が複数存在することがより好ましい。
表面(α)に平坦面(f1)が存在することで、表面(α)上の被着体との接着部分を十分であるため、被着体との密着性を向上させることができ、より粘着力が高い粘着シートとすることができる。
また、本発明の上記の実施態様において、樹脂層の表面(α)上の任意に選択された縦8mm×横10mmの領域(D)において、平坦面(f1)が1個以上を存在することが好ましく、当該平坦面(f1)が複数存在することがより好ましい。
なお、上述の実施態様において、樹脂層の表面(α)もしくは領域(D)に存在する平坦面の全てが、平坦面(f1)に該当している必要はなく、表面(α)もしくは領域(D)に存在する平坦面が、平坦面(f1)を含むものであればよい。
【0046】
また、本発明の別の一態様において、前記樹脂層の表面(α)に、0.2mm以上(好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.4mm以上)の面積を有する平坦面(f2)が1個以上存在することが好ましく、当該平坦面(f2)が複数存在することがより好ましい。
表面(α)に平坦面(f2)が存在することで、表面(α)上の被着体との接着部分を十分であるため、被着体との密着性を向上させることができ、より粘着力が高い粘着シートとすることができる。
また、本発明の上記態様において、樹脂層の表面(α)上の任意に選択された縦8mm×横10mmの領域(D)において、平坦面(f2)が1個以上を存在することが好ましく、当該平坦面(f2)が複数存在することがより好ましい。
なお、上述の上記態様において、樹脂層の表面(α)もしくは領域(D)に存在する平坦面の全てが、平坦面(f2)に該当している必要はなく、表面(α)もしくは領域(D)に存在する平坦面が、平坦面(f2)を含むものであればよい。
【0047】
また、樹脂層の表面(α)もしくは表面(α)上の任意に選択された縦8mm×横10mmの領域(D)に、上述の平坦面(f1)及び(f2)の双方ともに該当する平坦面(f12)が1個以上存在すること好ましく、当該平坦面(f12)が複数存在することがより好ましい。
【0048】
なお、本発明において、表面(α)もしくは領域(D)に上述の平坦面(f1)、(f2)、(f12)が存在しているか否かの判断は、対象となる粘着シートの樹脂層の表面(α)もしくは領域(D)に存在する平坦面をデジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)を用いて観察した画像を取得し、当該画像を元に、画像解析ソフトを用いて、直径100μmの円で囲まれた領域を選択可能か否かの判断や、平坦面の面積の算出を行ってもよい。
【0049】
本発明の一態様において、前記樹脂層の表面(α)上の任意に選択した縦8mm×横10mmの領域(D)において、当該領域(D)に存在する凹部の総面積100%に対して、70〜99.99%(より好ましくは85〜99.99%)の面積を有する凹部が存在することが好ましい。
このような連続性を有する凹部が存在することで、エア抜け性をより向上させた粘着シートとすることができる。
【0050】
〔断面(P1)に関する要件〕
本発明の粘着シートは、樹脂層の表面(α)上の一辺5mmの正方形で囲まれた領域(P)を任意に選択し、当該正方形の2本の対角線のそれぞれを通り、表面(α)に対して垂直となるような平面で領域(P)を切断した当該粘着シートの2つの断面のうち、少なくとも1つの断面(P1)において、下記要件(I)を満たす複数の凹部と、下記要件(II)を満たす平坦部とが存在する。
・要件(I):前記断面(P1)の表面(α)側に、前記樹脂層の総厚の40%以上の最大高低差を有し、切断部分の形状が互いに異なる複数の凹部が存在する。
・要件(II):前記断面(P1)の表面(α)側に、領域(P)内に存在する前記平坦面の切断部分に相当し、前記基材又は剥離材の前記樹脂層と接触した表面と略平行な平坦部が存在する。
【0051】
まず、図4を適宜参照して、上述の「粘着シートの2つの断面」を取得するまでの流れについて説明する。
図4は、本発明で規定する「粘着シートの2つの断面」を取得する方法を説明するため図であって、本発明の一態様の粘着シートの斜視図である。図4では、一例として、図1(a)に示す粘着シート1aと同一の構成を有する粘着シート11aの斜視図を示しており、樹脂層12の表面(α)12aに存在する凹部及び平坦面の記載は省略している。
【0052】
最初に、樹脂層12の表面(α)12a上に、一辺5mmの正方形50で囲まれた領域(P)を任意に選択する。この際、選択する領域(P)について、表面(α)12a上での位置や正方形50の向き等の制限は無い。
そして、領域(P)を構成する正方形50の2本の対角線51、52のそれぞれを通り、表面(α)12aに対して垂直となるような平面で領域(P)を切断した際の当該粘着シートの2つの断面61、62を考える。
つまり、対角線51を通るように、厚さ方向Aに沿って、表面(α)12aに対して垂直となるような平面で、領域(P)を切断した場合には、粘着シートの断面61が得られる。
一方、対角線52を通るように、厚さ方向Aに沿って、表面(α)12aに対して垂直となるような平面で領域(P)を切断した場合には、粘着シートの断面62が得られる。
【0053】
本発明では、このようにして取得された粘着シートの2つの断面61、62について、上記要件(I)を満たす複数の凹部と、上記要件(II)を満たす平坦部とが存在する断面を「断面(P1)」と表す。
つまり、本発明においては、断面61、62の少なくとも1つが、上記要件(I)を満たす複数の凹部と、上記要件(II)を満たす平坦部とが存在する断面(P1)であることを要する。
なお、本発明の一態様において、2つの断面61、62のいずれもが、断面(P1)に該当することが好ましい。
【0054】
本発明において、2つの断面61、62が、上記要件(I)を満たす複数の凹部と、上記要件(II)を満たす平坦部とが存在する断面(P1)に該当するか否かの判断、並びに、前記断面(P1)における、後述の各種要件を満たしているか否かの判断は、対象となる断面を走査型電子顕微鏡(倍率:100〜1000倍)を用いて取得した画像から判断する。
【0055】
図5は、本発明で規定する断面(P1)の模式図の一例である。
上記の方法により得られた断面(P1)60は、図5に示すように、断面(P1)60の表面(α)12a側には、少なくとも複数の凹部13aと、平坦部14aとが存在する。
なお、図5に示すように、断面(P1)60の表面(α)12a側に、凸部15aが存在していてもよい。
【0056】
前記断面(P1)60において、上記要件(I)のとおり、前記断面の表面(α)12a側には、前記樹脂層12の総厚の40%以上の最大高低差を有し、切断部分の形状が互いに異なる複数の凹部13a が存在する。
樹脂層12の総厚の40%以上の最大高低差を有する凹部13aは、粘着シートのエア抜け性に大きく影響を及ぼす、空気排出通路としての役割を担う箇所である。
このような複数の凹部13aの切断部分の形状が互いに異なることで、粘着シートの貼付前後に関わらず、一定の方向性のある力が粘着シートに加えられた際に、全ての凹部が同じように変形し、空気排出通路としての役割を果たす溝が消失してしまう状況を防ぐことができる。その結果、エア抜け性に非常に優れた粘着シートとすることができる。
【0057】
また、上記観点から、本発明の一態様において、前記断面(P1)60において、要件(I)で規定する、表面(α)12a側に存在する複数の凹部13aのうち、切断部分の形状が不定形である凹部を含むことが好ましい。
なお、ここでいう「不定形」とは、上記と同じ意味を示す。
【0058】
本発明において、「樹脂層12の総厚の40%以上の最大高低差を有する凹部に該当するか否か」の判断、「複数の凹部の切断部分の形状が互いに異なるか否か」、並びに、「切断部分の形状が不定形である凹部に該当するか否か」の判断は、上述のとおり、前記断面(P1)60を走査型電子顕微鏡を用いて取得した画像から判断する。
なお、 上記のうち、「複数の凹部の切断部分の形状が互いに異なるか否か」の判断は、例えば、上記画像に示された対象となる2個の凹部同士の切断部分の形状を重ね合わせて、一致する箇所が全体の90%未満である場合、「この2個の凹部は切断部分の形状が互いに異なる」と判断してもよい。
【0059】
前記断面(P1)60において、上記要件(II)のとおり、前記断面の表面(α)12a側には、図2に示すような領域(P)内に存在する前記平坦面14の切断部分に相当し、前記基材又は剥離材の前記樹脂層12と接触した表面と略平行な平坦部14aが存在する。
平坦部14aは、表面(α)に存在する平坦面14の切断面に相当し、断面(P1)60においては、前記基材又は剥離材の表面と略平行な部分に対応する。
つまり、図5に示す断面(P1)60おいて、平坦部14aを通る直線eαは、樹脂層12と接触する基材11の表面を通る直線eβと略平行である。そのため、平坦部14aは、図4に示すような、直線eαに対して上方に盛り上がるように形成された凸部15aとは区別される。
【0060】
なお、本発明でいう「略平行」とは、当該断面(P1)の表面(α)側に存在する平坦部14aを通る直線と、樹脂層と接触する基材又は剥離材の表面を通る直線とのなす角度が0度となる場合はもちろんのこと、当該なす角度が実質的に平行と見なせる程度の僅かな傾きを有する場合(例えば、当該なす角度が5度以下、好ましくは2度以下の場合)を含む。
【0061】
また、エア抜け性及び粘着特性をバランス良く向上させた粘着シートとする観点から、前記断面(P1)60において、前記平坦部14aが、当該断面(P1)60の表面(α)12a側に複数存在することが好ましく、表面(α)12a側に存在する前記複数の平坦部14aの位置が周期性を有さないことがより好ましい。
なお、「平坦部の位置が周期性を有さない」とは、複数の平坦部の存在する位置が、同じ繰り返しパターンを持たずに、不規則(ランダム)である状態を意味する。
【0062】
また、前記断面(P1)60において、当該断面(P1)60の表面(α)12a側に平坦部14aが複数存在する場合、当該複数の平坦部14aは上記要件(II)を満たすものであるため、表面(α)12a側に存在する前記複数の平坦部14aのそれぞれの前記基材又は剥離材までの距離が同一であるといえる。
なお、 本発明において、「複数の平坦部のそれぞれの前記基材又は剥離材までの距離が同一」とは、対象となる2個の平坦部の基材又は剥離材までの距離の差が、当該距離の平均値に対して、5%未満(好ましくは2%未満)である範囲を含むものである。
【0063】
さらに、エア抜け性及び粘着特性をバランス良く向上させた粘着シートとする観点から、下記要件(Ia)及び(IIa)の少なくとも一方を満たすことが好ましく、下記要件(Ia)及び(IIa)の双方を満たすことがより好ましい。
・要件(Ia):前記断面(P1)60において、表面(α)12a側の前記樹脂層12の水平方向の幅(Eα)100に対する、表面(α)に存在する前記凹部13aの幅の合計が占める割合が10〜90である。
・要件(IIa):前記断面(P1)60において、表面(α)12a側の前記樹脂層12の水平方向の幅(Eα)100に対する、表面(α)に存在する前記平坦部14aが占める割合が10〜90である。
【0064】
要件(Ia)及び(IIa)で規定する、「表面(α)側の前記樹脂層の水平方向の幅(Eα)」とは、図5中のEαで示される長さであって、例えば、選択した断面(P1)60の形状が長方形であれば、当該長方形の横の長さに対応する。
【0065】
要件(Ia)で規定する、表面(α)12aに存在する前記凹部13aの幅の合計が占める割合としては、10〜90であるが、好ましくは20〜80、より好ましくは25〜70、更に好ましくは30〜60である。
凹部13aの幅の合計が占める割合が大きくなる程、エア抜け性が向上し、当該割合が小さくなる程、平坦部14aの占める割合が増えるために、粘着特性が向上する。
なお、上述のとおり、本発明において、「凹部の幅」とは、図3(a)に示されたとおり、2つの山部分(M)と山部分(M)との距離Lを指す。そのため、この「凹部の幅」には、凸部15aの一部が含まれた長さとなるため、表面(α)に凸部15aが存在している場合には、要件(Ia)で規定の割合と、要件(IIa)で規定の割合との合計が、水平方向の幅(Eα)と同じ「100」にはならない。
【0066】
要件(IIa)で規定する、表面(α)に存在する前記平坦部が占める割合としては、10〜90であるが、好ましくは20〜80、より好ましくは25〜70、更に好ましくは30〜60である。
当該平坦部が占める割合が大きくなる程、粘着特性が向上し、当該割合が小さくなる程、凹部の占める割合が増えるために、エア抜け性が向上する。
【0067】
本発明の一態様において、上述の断面において、前記要件(I)で規定の複数の凹部、及び前記要件(II)を満たす平坦部が存在するような粘着シートとする観点から、前記凹部が、エンボスパターンを有する剥離材を用いて形成されたものではないことが好ましい。
なお、「エンボスパターンを有する剥離材を用いて形成された凹部」とは、例えば、以下のようなものが挙げられ、上記の態様の凹部とは区別される。
・粘着剤組成物から形成した粘着剤層が有する平坦な表面に、エンボスパターンが施された剥離シートを押し付け、エンボスパターンの転写により形成された凹部。
・剥離処理面にエンボスパターンが施された剥離シートを用いて、当該剥離処理面に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成した後、当該剥離シートを除去した際に当該粘着剤層の表面に表出する凹部。
このような凹部は、前述の特許文献1に記載された粘着シートに関する問題点として列挙したような数々の不具合が生じる。
【0068】
本発明の一態様において、樹脂層の表面(α)に上述の要件を満たす凹部及び平坦面を形成した粘着シートとする観点から、前記凹部は、上記樹脂層の自己形成化によって形成されたものであることが好ましい。
本発明において、「自己形成化」とは、樹脂層の自律的な形成過程において、自然に無秩序な形状を作り出す現象を意味し、より詳しくは、樹脂層の形成材料である組成物から形成された塗膜を乾燥して、樹脂層の自律的な形成過程において、自然に無秩序な形状を作り出す現象を意味する。
なお、このように樹脂層の自己形成化によって形成された凹部の形状は、乾燥条件や樹脂層の形成材料である組成物中の成分の種類や含有量を調整することで、ある程度の調整は可能ではあるものの、エンボスパターンの転写により形成される溝とは異なり、「全く同じ形状のものを再現することは事実上できない」といえる。そのため、樹脂層の自己形成化によって形成された凹部は不定形であるといえる。
また、不定形の凹部が形成されることで、平坦面の形状も不定形となる。
【0069】
樹脂層の自己形成化によって形成された凹部の形成過程は、以下のように考えられる。
まず、樹脂層の形成材料となる組成物からなる塗膜の形成時において、塗膜を乾燥させる工程にて、塗膜内部に収縮応力が発生して、樹脂の結合力が弱くなった部分で、塗膜内で割れが生じる。そして、この割れ部分の周辺の樹脂が、割れにより一時的に生じた空間に流入することで、樹脂層の表面(α)上に凹部が形成されると考えられる。
樹脂の含有量が異なる2層の塗膜を形成した後、当該2層の塗膜を同時に乾燥させることで、乾燥する際に塗膜内部に収縮応力差が発生し、塗膜の割れを生じ易くなると考えられる。
【0070】
なお、凹部を形成し易くする観点から、以下の事項を適宜考慮の上、調整することが好ましい。これらの事項による要因が複合的に作用して、凹部が形成し易くなるものと考えられる。ちなみに、凹部を形成し易くするための各事項の好適な態様は、後述の該当項目での記載のとおりである。
・塗膜の形成材料である組成物中に含まれる樹脂の種類、構成モノマー、分子量、含有量。
・塗膜の形成材料である組成物中に含まれる架橋剤の種類、溶媒の種類。
・塗膜の形成材料である組成物の粘度、固形分濃度。
・形成する塗膜の厚さ。(複層の場合は、各塗膜の厚さ)
・形成した塗膜の乾燥温度、乾燥時間。
【0071】
なお、一般的な粘着シートの粘着剤層の形成においては、平坦な表面を有する粘着剤層を形成することを目的とし、上記の事項を適宜設定している場合が多い。
一方、本発明では、粘着シートのエア抜け性の向上に寄与し得る凹部が意図的に形成されるように上記の事項を設定しており、一般的な粘着シートの粘着剤層の設計方法とは、全く異なる。
【0072】
上記の事項は、形成される塗膜中に含まれる樹脂の流動性等を考慮して、適宜設定されることが好ましい。
例えば、組成物中に微粒子を含む場合、微粒子を多く含む組成物からなる塗膜の粘度を適度な範囲に調整することで、塗膜中での微粒子の所定の流動性を維持しつつも、他の塗膜(樹脂を多く含む塗膜)との入り混じりを適度に抑制することができる。このように調整することで、樹脂を多く含む塗膜において、水平方向に割れが生じ、凹部が形成され易くなる傾向にある。
その結果、表面(α)上における、形成される凹部の占める割合を増やすことができると共に、互いに繋がっている凹部の割合も増やし、より優れたエア抜け性を有する粘着シートとすることができる。
【0073】
また、上記の事項の中でも、樹脂を多く含む塗膜に含まれる樹脂が適度な粘弾性を有するように、当該樹脂の種類、構成モノマー、分子量、樹脂の含有量を適宜調整することが好ましい。
つまり、塗膜の硬さ(樹脂の粘弾性、塗布液の粘度等の因子で決まる硬さ)を適度に硬くすることで、樹脂部分(X)の収縮応力が強くなり、凹部が形成し易くなる。当該塗膜の硬さが硬いほど収縮応力が強くなり、凹部が発生しやすくなるが、硬すぎると塗布適性が低下する。また、樹脂の弾性を上げ過ぎると、塗膜から形成される樹脂層の粘着力が低下する傾向にある。その点を考慮して、樹脂の粘弾性を適度に調整することが好ましい。
また、組成物や塗膜中に微粒子を含む場合、微粒子の分散状態を適切化することで、微粒子による樹脂層の厚さの膨れ上がりの程度や、凹部の自己形成力を調節し、結果的に表面(α)上に凹部を形成し易く調整できるものと考えられる。
【0074】
さらに、形成した塗膜(もしくは形成材料である組成物)の架橋速度を考慮して、上記の事項を適宜設定することが好ましい。
つまり、塗膜の架橋速度が速すぎる場合には、凹部が形成される前に、塗膜が硬化してしまう恐れがある。また、塗膜の割れの大きさにも影響を及ぼす。
塗膜の架橋速度は、形成材料である組成物中の架橋剤の種類及び溶媒の種類や、塗膜の乾燥時間及び乾燥温度を適宜設定することで調整可能である。
【0075】
なお、樹脂層が、樹脂を含む樹脂部分(X)と、微粒子からなる粒子部分(Y)とを含む層である場合、上述の自己形成化により形成された樹脂層において、図1(a)〜(d)や図5に示すように、粒子部分(Y)は、表面(α)上に凹部が存在する箇所においては、粒子部分(Y)が占める割合が他に比べて少なくなるような分布となる傾向がある。
これは、樹脂層の自己形成化の過程において、樹脂層の表面(α)に凹部が形成される際に、凹部が形成された位置に存在していた微粒子が移動することで、このような分布になったものと考えられる。
【0076】
このような自己形成化により形成された樹脂層中の粒子部分(Y)の分布の態様として、図5に示すような態様が挙げられる。
つまり、図5に示すように、前記断面60において、樹脂層12中に含まれる粒子部分(Y)の水平方向での分布が、不均一であって、表面(α)12aに存在する凹部13aに対して、厚さ方向で当該凹部13aの下に位置する領域(s1)での粒子部分(Y)の分布が、領域(s1)と同じ水平位置で、表面(α)12aに平坦部を有する領域(s2)に比べて少ないことが好ましい。
このような粒子部分(Y)の分布の偏りは、自己形成化により形成された樹脂層に特有のものである。
【0077】
以下、本発明で用いる各構成について説明する。
【0078】
〔基材〕
本発明で用いる基材としては、特に制限はなく、例えば、紙基材、樹脂フィルム又はシート、紙基材を樹脂でラミネートした基材等が挙げられ、本発明の一態様の粘着シートの用途に応じて適宜選択することができる。
紙基材を構成する紙としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
樹脂フィルム又はシートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
紙基材を樹脂でラミネートした基材としては、上記の紙基材を、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0079】
これらの基材の中でも、樹脂フィルム又はシートが好ましく、ポリエステル系樹脂からなるフィルム又はシートがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)から構成されるフィルム又はシートが更に好ましい。
また、本発明の粘着シートを耐熱性が要求される用途に使用する場合には、ポリエチレンナフタレート及びポリイミド系樹脂から選ばれる樹脂から構成されるフィルム又はシートが好ましく、耐候性が要求される用途に使用する場合には、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、及びフッ素樹脂から選ばれる樹脂から構成されるフィルム又はシートが好ましい。
【0080】
基材の厚さは、本発明の粘着シートの用途に応じて適宜設定されるが、取扱性及び経済性の観点から、好ましくは5〜1000μm、より好ましくは10〜500μm、更に好ましくは12〜250μm、より更に好ましくは15〜150μmである。
なお、基材には、さらに紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0081】
また、本発明で用いる基材は、得られる粘着シートの耐ブリスター性向上の観点から、非通気性基材であることが好ましく、具体的には、上述の樹脂フィルム又はシートの表面上に金属層を有する基材が好ましい。
当該金属層に含まれる金属としては、例えば、アルミニウム、スズ、クロム、チタン等の金属光沢を有する金属等が挙げられる。
当該金属層の形成方法としては、例えば、上記金属を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD法により蒸着する方法、又は、上記金属からなる金属箔を一般的な粘着剤を用いて貼付する方法等が挙げられるが、上記金属をPVD法により蒸着する方法が好ましい。
【0082】
さらに、基材として樹脂フィルム又はシートを用いる場合、これらの樹脂フィルム又はシート上に積層する樹脂層との密着性を向上させる観点から、樹脂フィルム又はシートの表面に対して、酸化法や凹凸化法等による表面処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、熱風処理、オゾン、及び紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0083】
〔剥離材〕
本発明で用いる剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
なお、当該剥離処理面は、凹凸形状が形成されておらず、平坦である剥離材(例えば、エンボスパターンが施されていない剥離材)が好ましい。
剥離材用の基材としては、例えば、本発明の一態様の粘着シートが有する基材として用いられる上述の紙基材、樹脂フィルム又はシート、紙基材を樹脂でラミネートした基材等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、特に制限ないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜170μm、更に好ましくは35〜80μmである。
【0084】
〔樹脂層〕
図1に示すように、本発明の粘着シートが有する樹脂層12は、樹脂を含む樹脂部分(X)と、微粒子からなる粒子部分(Y)とを含むものであることが好ましい。
樹脂部分(X) は、樹脂層中に含まれる微粒子以外の成分を含む部分を示す。つまり、樹脂層中に含まれる、樹脂だけでなく、粘着付与剤、架橋剤、汎用添加剤等の微粒子以外の成分は「樹脂部分(X)」に含まれる。
一方、粒子部分(Y)は、樹脂層中に含まれる微粒子からなる部分を示す。
【0085】
樹脂層中に粒子部分(Y)が含まれることで、貼付後の形状維持性を向上することができ、得られる粘着シートを高温下で使用した場合に、ブリスターの発生を効果的に抑制することができる。
樹脂層12中の樹脂部分(X)と粒子部分(Y)との分布の構成としては、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とがほぼ均等に分布した構成であってもよく、局所的に主に樹脂部分(X)からなる箇所と、主に粒子部分(Y)からなる箇所と、分けられるような構成であってもよい。
【0086】
本発明の粘着シートが有する樹脂層は、樹脂部分(X)及び粒子部分(Y)以外に、更に空隙部分(Z)を有することが好ましい。樹脂層中に空隙部分(Z)を有することで、粘着シートの耐ブリスター性を向上させることができる。
この空隙部分(Z)は、前記微粒子同士の間に存在する空隙や、前記微粒子が二次粒子である場合、当該二次粒子内に存在する空隙等も含まれる。
なお、当該樹脂層が多層構造を有する場合、樹脂層の形成過程や形成直後において、空隙部分(Z)が存在していたとしても、空隙部分(Z)に樹脂部分(X)が流入して、空隙が消失し、空隙部分(Z)が無い樹脂層となることもある。
しかしながら、このように樹脂層中に一時期存在していた空隙部分(Z)が消失した場合であっても、本発明の一態様である粘着シートは、樹脂層の表面(α)に凹部が存在するため、エア抜け性は良好であり、樹脂層が粒子部分(Y)を有するため、耐ブリスター性にも優れる。
【0087】
また、本発明の粘着シートが有する樹脂層の100℃における剪断貯蔵弾性率は、粘着シートのエア抜け性及び耐ブリスター性の向上の観点から、好ましくは9.0×10Pa以上、より好ましくは1.0×10Pa以上、更に好ましくは2.0×10Pa以上である。
なお、本発明において、樹脂層の100℃における剪断貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製、装置名「DYNAMIC ANALYZER RDA II」)を用いて、周波数1Hzで測定することにより測定した値を意味する。
【0088】
樹脂層の厚さは、好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜150μm、更に好ましくは10〜75μmである。
【0089】
本発明の粘着シートは、少なくとも基材又は剥離材が設けられた側とは反対側の当該樹脂層の表面(α)が粘着性を有しているが、基材又は剥離材が設けられた側の当該樹脂層の表面(β)も粘着性を有していてもよい。
【0090】
本発明の粘着シートの樹脂層の表面(α)における粘着力としては、好ましくは0.5N/25mm以上、より好ましくは2.0N/25mm以上、より好ましくは3.0N/25mm以上、更に好ましくは4.0N/25mm以上、より更に好ましくは7.0N/25mm以上である。
また、樹脂層の表面(β)も粘着性を有する場合、表面(β)における粘着力は、上記の範囲に属することが好ましい。
なお、粘着シートの当該粘着力の値は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0091】
<樹脂層の多層構造体>
本発明における樹脂層は、基材又は剥離材上に、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層してなる樹脂層を有する、3種以上の層から構成される多層構造体である。
このような多層構造体である樹脂層としては、図1の粘着シート1a等のような、基材又は剥離材が設けられた側から、主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)、粒子部分(Y)を含む層(Y1)、及び主に樹脂部分(X)を含む層(Xα)をこの順で積層した多層構造体が挙げられる。
なお、樹脂層の多層構造体の構成においては、積層する2つの層の境界が判別できずに、混層した状態であってもよい。
つまり、図1の粘着シート1aが有する樹脂層12においては、層(Xβ)と層(Y1)との境界、及び/又は、層(Y1)と層(Xα)との境界が判別できずに、混層した構成であってもよい。
【0092】
以下、図1の粘着シート1aが有する、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)の3層から構成された樹脂層12を一例として、多層構造体である樹脂層の構成について説明する。
【0093】
層(Xβ)及び層(Xα)は、主に樹脂部分(X)を含む層であるが、粒子部分(Y)を含んでいてもよい。ただし、層(Xβ)及び層(Xα)中の粒子部分(Y)の含有量は、それぞれ独立に、層(Xβ)又は層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、15質量%未満であり、且つ層(Xβ)又は層(Xα)中の樹脂の含有量よりも少ない。
つまり、粒子部分(Y)の含有量の点において、層(Xβ)及び層(Xα)と、層(Y1)とは区別される。
なお、層(Xβ)及び層(Xα)は、樹脂部分(X)及び粒子部分(Y)以外に、更に上述の空隙部分(Z)を有してもよい。
【0094】
層(Xβ)及び層(Xα)中の樹脂部分(X)の含有量としては、それぞれ独立に、層(Xβ)又は層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、通常85質量%超であり、好ましくは87〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
なお、上記の「樹脂部分(X)の含有量」は、層(Xβ)又は層(Xα)中に含まれる樹脂部分(X)を構成する、樹脂、粘着付与剤、架橋剤、及び汎用添加剤等の微粒子以外の成分の合計含有量を意味する。
【0095】
層(Xβ)及び層(Xα)中の粒子部分(Y)を構成する微粒子の含有量としては、それぞれ独立に、層(Xβ)又は層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、15質量%未満であるが、好ましくは0〜13質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0質量%である。
なお、本発明において、「層(Xβ)及び層(Xα)中の微粒子の含有量」は、当該層(Xβ)又は層(Xα)の形成材料である樹脂組成物の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))中の微粒子の含有量とみなすこともできる。
【0096】
層(Xα)中の樹脂の含有量としては、層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、通常30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、更に好ましくは60〜100質量%である。
一方、層(Xβ)中の樹脂の含有量としては、層(Xβ)の全質量(100質量%)に対して、通常50〜100質量%、好ましくは65〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは85〜100質量%である。
なお、本発明において、「層(Xβ)及び層(Xα)中の樹脂の含有量」は、当該層(Xβ)又は層(Xα)の形成材料である樹脂組成物の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))中の樹脂の含有量とみなすことができる。
【0097】
層(Y1)は、樹脂部分(X)と共に 粒子部分(Y)と共に含む層であり、更に空隙部分(Z)を有する層であってもよい。
層(Y1)中の粒子部分(Y)を構成する微粒子の含有量としては、層(Y1)の全質量(100質量%)に対して、15質量%以上であるが、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは25〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%、より更に好ましくは35〜80質量%である。
【0098】
層(Y1)中の樹脂の含有量としては、層(Y1)の全質量(100質量%)に対して、通常0〜85質量%、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは10〜70質量%、より更に好ましくは20〜65質量%である。
【0099】
なお、本発明において、「層(Y1)中の微粒子の含有量」及び「層(Y1)中の樹脂の含有量」は、当該層(Y1)の形成材料である組成物の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))中の微粒子又は樹脂の含有量とみなすこともできる。
【0100】
本発明の一態様において、層(Xα)は、樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満である組成物(xα)から形成された層であることが好ましい。
同様に、層(Xβ)も、樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満である組成物(xβ)から形成された層であることが好ましい。
また、上記層(Y1)は、微粒子を15質量%以上含む組成物(y1)から形成された層である。
なお、組成物(xα)、組成物(xβ)、及び組成物(y1)の好適な態様(含有成分、含有量等)については、後述のとおりである。
【0101】
<樹脂部分(X)>
樹脂層を構成する樹脂部分(X)は、樹脂層中に含まれる微粒子以外の成分を含む部分であって、その点で粒子部分(Y)とは区別される。
樹脂部分(X)は、樹脂と共に、粘着付与剤、架橋剤、汎用添加剤等が含まれていてもよい。
【0102】
樹脂部分(X)中の樹脂の含有量は、樹脂部分(X)の全量(100質量%)に対して、通常30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂部分(X)の形成材料となる樹脂組成物中の樹脂の含有量の値を、上記「樹脂部分(X)中の樹脂の含有量」とみなすこともできる。
【0103】
樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂としては、形成される樹脂層の表面(α)に粘着性を発現させる観点から、粘着性樹脂を含むことが好ましい。
特に、図1(a)の粘着シート1a等のように、樹脂層が、基材又は剥離材が設けられた側から、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層した多層構造を有する場合には、上記観点から、少なくとも層(Xα)は、粘着性樹脂を含む。また、両面粘着シートの構成とする観点、並びに、基材との密着性を向上させる観点から、少なくとも層(Xα)及び層(Xβ)が、粘着性樹脂を含むことが好ましい。
【0104】
(粘着性樹脂)
当該粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
これらの 粘着性樹脂の中でも、粘着特性及び耐候性が良好であり、樹脂層 の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
アクリル系樹脂の含有量は、樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは25〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
【0105】
また、樹脂層の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、樹脂部分(X)が、官能基を有する樹脂を含むことが好ましく、官能基を有するアクリル系樹脂を含むことがより好ましい。
特に、図1(a)の粘着シート1a等のように、樹脂層が、基材又は剥離材が設けられた側から、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層した多層構造体である場合には、上記観点から、少なくとも層(Y1)は、官能基を有する樹脂を含むことが好ましい。
当該官能基は、架橋剤との架橋起点となる基であって、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、シアノ基、ケト基、アルコキシシリル基等が挙げられるが、カルボキシ基が好ましい。
【0106】
樹脂部分(X)は、前記官能基を有する樹脂と共に、さらに架橋剤を含有することが好ましい。特に、樹脂層が上述の多層構造体である場合には、少なくとも層(Y1)は、前記官能基を有する樹脂と共に、架橋剤を含有することが好ましい。
当該架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
【0107】
イソシアネート系架橋剤は、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに、これらの化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、及び、低分子活性水素含有化合物(エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等)との反応物であるアダクト体;等が挙げられる。
【0108】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0109】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
【0110】
金属キレート系架橋剤には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物が挙げられるが、樹脂層の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、アルミニウムキレート系架橋剤が好ましい。
アルミニウムキレート系架橋剤としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0111】
なお、これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、樹脂層の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、樹脂部分(X)が、金属キレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましく、アルミニウムキレート系架橋剤を含むことが更に好ましい。
【0112】
樹脂部分(X)中の架橋剤の含有量は、樹脂部分(X)に含まれる官能基を有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜7.0質量部である。
【0113】
また、本発明の一態様としては、樹脂層の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、樹脂部分(X)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。
樹脂部分(X)が金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含む場合、上記観点から、樹脂部分(X)中の金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]としては、質量比で、好ましくは10/90〜99.5/0.5、より好ましくは50/50〜99.0/1.0、更に好ましくは65/35〜98.5/1.5、より更に好ましくは75/25〜98.0/2.0である。
【0114】
樹脂部分(X)は、表面(α)の粘着特性をより向上させる観点から、粘着性樹脂と共に、さらに粘着付与剤を含有することが好ましい 。特に、樹脂層が上述の多層構造体である場合には、層(Xα)が、粘着性樹脂及び粘着付与剤を含有することが好ましい。
【0115】
(粘着付与剤)
本発明で用いる粘着付与剤は、粘着性樹脂の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が通常1万未満のオリゴマーを指し、上述の粘着性樹脂とは区別されるものである。
粘着付与剤の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは400〜8000、より好ましくは5000〜5000、より好ましくは800〜3500である。
【0116】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等のロジン系樹脂;これらロジン系樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂;テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系樹脂;これらテルペン系樹脂を水素化した水素化テルペン系樹脂;α−メチルスチレン又はβ−メチルスチレン等のスチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとを共重合して得られるスチレン系樹脂;これらスチレン系樹脂を水素化した水素化スチレン系樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3−ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂及びこのC5系石油樹脂の水素化石油樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂及びこのC9系石油樹脂を水素化石油樹脂;等が挙げられる。
本発明で用いる粘着付与剤は、単独で又は軟化点や構造が異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
粘着付与剤の軟化点としては、好ましくは80℃以上、より好ましくは80〜180℃、更に好ましくは83〜170℃、より更に好ましくは85〜150℃である。
なお、本発明において、粘着付与剤の「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
また、2種以上の複数の粘着付与剤を用いる場合、それら複数の粘着付与剤の軟化点の加重平均が、上記範囲に属することが好ましい。
【0118】
樹脂部分(X)中に粘着付与剤を含有する場合における、粘着付与剤の含有量は、樹脂部分(X)に含まれる粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは1〜200質量部、更に好ましくは3〜150質量部、より更に好ましくは5〜90質量部である。
【0119】
また、樹脂部分(X)には、上述の架橋剤や粘着付与剤以外の汎用添加剤を含有していてもよい。
汎用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
なお、これらの汎用添加剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの汎用添加剤を含有する場合、それぞれの汎用添加剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜60質量部、より好ましくは0.001〜50質量部である。
【0120】
樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂は、1種のみでもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の粘着シートが有する樹脂層の樹脂部分(X)の形成材料としては、官能基を有する粘着性樹脂を含む粘着剤であることが好ましく、官能基を有するアクリル系樹脂(A)(以下、単に「アクリル系樹脂(A)」ともいう)を含むアクリル系粘着剤であることがより好ましく、官能基を有するアクリル系樹脂(A)及び架橋剤(B)を含むアクリル系粘着剤であることが更に好ましい。
当該アクリル系粘着剤は、溶媒型、エマルション型のいずれであってもよい。
以下、樹脂部分(X)を形成材料として好適な、上記のアクリル系粘着剤について説明する。
【0121】
当該アクリル系粘着剤中に含まれるアクリル系樹脂(A)としては、例えば、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する重合体、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する重合体等が挙げられる。
アクリル系樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは5万〜150万、より好ましくは15万〜130万、更に好ましくは25万〜110万、より更に好ましくは35万〜90万である。
【0122】
アクリル系樹脂(A)としては、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)、及び官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A1)を含むことが好ましく、アクリル系共重合体(A1)であることがより好ましい。
アクリル系共重合体(A1)の含有量は、アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%である。
なお、アクリル系共重合体(A1)の共重合の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0123】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、粘着特性の向上の観点から、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8、より更に好ましくは4〜6である。
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0124】
構成単位(a1)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50〜99.5質量%、より好ましくは60〜99質量%、更に好ましくは70〜95質量%、より更に好ましくは80〜93質量%である。
【0125】
モノマー(a2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有物モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基含有モノマーがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0126】
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%、より更に好ましくは7〜20質量%である。
【0127】
なお、アクリル系共重合体(A1)は、上記モノマー(a1’)及び(a2’)以外のその他のモノマー(a3’)に由来する構成単位(a3)を有していてもよい。
その他のモノマー(a3’)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
【0128】
構成単位(a3)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%、より更に好ましくは0〜5質量%である。
なお、上述のモノマー(a1’)〜(a3’)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0129】
アクリル系共重合体(A1)成分の合成方法については、特に限定されるものではなく、例えば、原料モノマーを溶媒中に溶解して、重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下で溶液重合する方法や、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、分散剤等の存在下で、原料モノマーを用いて水系でエマルション重合する方法にて製造される。
【0130】
前記アクリル系粘着剤中に含まれる架橋剤(B)としては、上述のものが挙げられるが、粘着特性を良好とする観点、並びに、樹脂層の表面(α)に凹部を形成しやすくする観点から、金属キレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましく、アルミニウムキレート系架橋剤を含むことが更に好ましい。
また、本発明の一態様としては、樹脂層の表面(α)に存在する複数の凹部の形状維持性を向上させる観点から、架橋剤(B)としては、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。
【0131】
架橋剤(B)の含有量は、前記アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜7.0質量部である。
【0132】
金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を併用する場合、金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]としては、質量比で、好ましくは10/90〜99.5/0.5、より好ましくは50/50〜99.0/1.0、更に好ましくは65/35〜98.5/1.5、より更に好ましくは75/25〜98.0/2.0である。
【0133】
本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、汎用添加剤を含有してもよい。汎用添加剤としては、上述のものが挙げられ、また、当該汎用添加剤の含有量も、上述のとおりである。
【0134】
また、本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤は、表面(α)の粘着特性をより向上させる観点から、さらに粘着付与剤を含有することが好ましい。粘着付与剤としては、上述のものが挙げられ、また、当該粘着付与剤の含有量も、上述のとおりである。
【0135】
本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、アクリル系樹脂(A)以外の粘着性樹脂(例えば、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等)を含有していてもよい。
アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂(A)の含有量は、アクリル系粘着剤に含まれる粘着性樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
【0136】
<粒子部分(Y)>
本発明の一態様の粘着シートが有する樹脂層においては、微粒子からなる粒子部分(Y)を含むことが好ましい。
微粒子の平均粒径としては、粘着シートのエア抜け性及び耐ブリスター性の向上の観点、並びに、樹脂層の表面(α)に凹部及び平坦面 を形成しやすくする観点から、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.05〜25μm、更に好ましくは0.1〜10μmである。
【0137】
本発明の一態様で用いる微粒子としては、特に制限はなく、シリカ粒子、酸化金属粒子、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ、スメクタイト等の無機粒子や、アクリルビーズ等の有機粒子等が挙げられる。
これらの微粒子の中でも、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上が好ましく、シリカ粒子がより好ましい。
【0138】
本発明の一態様で用いるシリカ粒子は、乾式シリカ及び湿式シリカのいずれであってもよい。
また、本発明の一態様で用いるシリカ粒子は、反応性官能基を有する有機化合物等で表面修飾された有機修飾シリカ、アルミン酸ナトリウムや水酸化ナトリウム等の無機化合物で表面処理された無機修飾シリカ、並びに、これらの有機化合物及び無機化合物で表面処理された有機無機修飾シリカ、シランカップリング剤等の有機無機ハイブリッド材料で表面処理された有機無機修飾シリカ等であってもよい。
なお、これらのシリカ粒子は、2種以上からなる混合物であってもよい。
【0139】
シリカ粒子中におけるシリカの質量濃度は、シリカ粒子の全量(100質量%)に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。
また、本発明の一態様で用いるシリカ粒子の体積平均二次粒子径は、粘着シートのエア抜け性及び耐ブリスター性の向上の観点、並びに、樹脂層の表面(α)に凹部及び平坦面を形成しやすくする観点から、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜8μm、更に好ましくは1.5〜5μmである。
なお、本発明において、シリカ粒子の体積平均二次粒子径の値は、マルチサイザー・スリー機等を用いて、コールターカウンター法による粒度分布の測定を行うことにより求めた値である。
【0140】
酸化金属粒子としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、及びこれらの複合酸化物から選ばれる酸化金属からなる粒子等が挙げられ、これらの酸化金属からなるゾル粒子も含まれる。
【0141】
スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ノントロナイト、ソーコナイト等が挙げられる。
【0142】
本発明の一態様の粘着シートが有する樹脂層を800℃で30分間加熱した後の質量保持率は、好ましくは3〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは7〜70質量%、より更に好ましくは9〜60質量%である。
当該質量保持率は、樹脂層中に含まれる微粒子の含有量(質量%)を示すとみなすことができる。
当該質量保持率が3質量%以上であれば、エア抜け性及び耐ブリスター性に優れた粘着シートとなり得る。また、本発明の粘着シートの製造時において、樹脂層の表面(α)に凹部が形成されやすくなる。一方、当該質量保持率が90質量%以下であれば、樹脂層の膜強度が高く、耐水性や耐薬品性が優れ、樹脂層の表面(α)に平坦面が形成されやすくなる。
【0143】
〔本発明の粘着シートの製造方法〕
次に、本発明の粘着シートの製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、生産性の観点、並びに、樹脂層の表面(α)に凹部及び平坦面を形成しやすくする観点から、基材又は剥離材上に、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層してなる樹脂層を有し、少なくとも層(Xα)の表面(α)が粘着性を有し、表面(α)上の任意に選択された一辺1mmの正方形で囲まれた領域(Q)内に、前記凹部が1個以上存在する粘着シートを製造する方法であって、層(Xβ)は、樹脂を含み、粘着付与剤を実質的に含有しない組成物(xβ)を用いて形成し、層(Y1)は、樹脂及び微粒子を含み、粘着付与剤を実質的に含有せず、当該微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y1)を用いて形成し、層(Xα)は、粘着性樹脂100質量部と、粘着付与剤1質量部以上とを含む組成物(xα)を用いて形成する。
【0144】
本発明の製造方法において、組成物(xβ)が粘着付与剤を実質的に含有せず、組成物(y1)が、微粒子15質量%以上を含み、粘着付与剤を実質的に含有せず、組成物(xα)のみが、粘着性樹脂100質量部と粘着付与剤1質量部以上とを含むことで、8m/分以上の高速塗布によって塗膜を形成しても、エア抜け性、耐ブリスター性、及び粘着特性を良好とし得るような表面(α)に凹部及び平坦面を形成することができるため、粘着シートの生産性を格段に向上させることができる。
さらに、表面(β)側に基材を有する場合には、当該基材と樹脂層の表面(β)との密着性を良好とすることができ、表面(β)側に剥離材を有する場合には、当該剥離材の表面(β)に対する剥離性を良好とすることができる。
【0145】
(層(Xβ)、組成物(xβ))
層(Xβ)は、樹脂を含み、粘着付与剤を実質的に含有しない組成物(xβ)を用いて形成される。
組成物(xβ)中の樹脂の含有量は、組成物(xβ)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、通常30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0146】
組成物(xβ)中に含有する樹脂としては、上述の樹脂部分(X)を構成する樹脂が挙げられ、粘着性樹脂であることが好ましく、官能基を有する粘着性樹脂がより好ましく、上述の官能基を有するアクリル系樹脂(A)が更に好ましく、上述のアクリル系共重合体(A1)がより更に好ましい。
【0147】
組成物(xβ)は、更に架橋剤(B)を含むことが好ましい。
組成物(xβ)中に含有される架橋剤としては、上述の樹脂部分(X)中に含有する架橋剤が挙げられるが、組成物(xβ)が、金属キレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましく、アルミニウムキレート系架橋剤を含むことが更に好ましい。
さらに、本発明の一態様としては、組成物(xβ)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。組成物(xβ)が金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含む場合、組成物(xβ)中の金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との好適な含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]は、上述のとおりである。
架橋剤の含有量は、組成物(xβ)中に含有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜7.0質量部である。
【0148】
また、組成物(xβ)は、上述の微粒子を含有していてもよい。
ただし、組成物(xβ)中の当該微粒子の含有量は、15質量%未満であり、且つ組成物(xβ)中に含まれる樹脂の含有量よりも少ない。
具体的な組成物(xβ)中の微粒子の含有量としては、組成物(xβ)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、15質量%未満であるが、好ましくは0〜13質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0質量%である。
【0149】
(層(Y1)、組成物(y1))
層(Y1)は、表面(α)の粘着特性をより向上させる観点から、樹脂及び微粒子を含み、粘着付与剤を実質的に含有せず、当該微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y1)を用いて形成される。
組成物(y1)は、粒子部分(Y)の形成材料であり、組成物(y1)中に含まれる樹脂としては、上述の組成物(xβ)に含まれる樹脂と同じものが挙げられる。
組成物(y1)に含まれる樹脂は粘着性樹脂であることが好ましく、組成物(xβ)と同様に、官能基を有する樹脂が好ましく、上述の官能基を有するアクリル系樹脂(A)がより好ましく、上述のアクリル系共重合体(A1)が更に好ましい。
組成物(y1)中の樹脂の含有量は、組成物(y)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、通常0〜85質量%、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは10〜70質量%、より更に好ましくは20〜65質量%である。
【0150】
組成物(y1)中に含まれる微粒子としては、上述のものが挙げられるが、樹脂層中に空隙部分(Z)を形成し、耐ブリスター性を向上させた粘着シートとする観点から、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上が好ましい。
組成物(y1)中の微粒子の含有量は、樹脂層の表面(α)上に、樹脂層の自己形成化によって形成される不定形の凹部及び平坦面を形成しやすくする観点から、組成物(y1)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、15質量%以上であるが、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは25〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%、より更に好ましくは35〜80質量%である。
【0151】
組成物(y1)は、微粒子の分散性の観点から、微粒子と共に、樹脂を含有し、さらに架橋剤を含有することがより好ましい。また、さらに汎用添加剤を含んでもよい。組成物(y1)中に含まれる微粒子以外の成分(樹脂、架橋剤及び汎用添加剤)は、樹脂部分(X)の形成材料となる。
組成物(y1)中に含有する架橋剤としては、上述の樹脂部分(X)中に含有する架橋剤と同じものが挙げられ、その好適態様も同じである。
さらに、本発明の一態様としては、組成物(y1)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。組成物(y1)が金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含む場合、組成物(y1)中の金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との好適な含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]は、上述のとおりである。
組成物(y1)中の架橋剤の含有量は、組成物(y1)中に含有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜7.0質量部である。
【0152】
(層(Xα)、組成物(xα))
層(Xα)は、表面(α)の粘着特性をより向上させる観点から、粘着性樹脂100質量部と、粘着付与剤1質量部以上とを含む組成物(xα)を用いて形成される。
組成物(xα)は、樹脂部分(X)の形成材料であり、粘着性樹脂と共に粘着付与剤を含有するが、さらに上述の架橋剤、及び汎用添加剤を含有してもよい。
粘着性樹脂の詳細は上述のとおりであり、粘着特性をより向上させ、樹脂層の表面(α)に凹部及び平坦面を形成しやすくする観点から、上記のとおり、官能基を有するアクリル系樹脂を含むことが好ましい。
当該官能基は、架橋剤との架橋起点となる基であって、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、シアノ基、ケト基、アルコキシシリル基等が挙げられるが、カルボキシ基が好ましい。
アクリル系樹脂の含有量は、上記の観点から、樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは25〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
【0153】
本発明で用いる粘着付与剤は、粘着性樹脂の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が通常1万未満のオリゴマーを指す。粘着付与剤の詳細は上述のとおりであり、それらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
組成物(xα)に含まれる粘着付与剤の含有量は、表面(α)の粘着特性をより向上させる観点から、組成物(xα)中の粘着性樹脂100質量部に対して、1質量部以上であり、好ましくは3質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、その上限は、好ましくは400質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、より更に好ましくは50質量部以下である。
また、前記樹脂層の全質量100質量%に対する、粘着付与剤の含有量は、好ましくは2〜60質量%、より好ましくは4〜60質量%、更に好ましくは6〜20質量%である。
【0154】
組成物(xα)は、更に架橋剤を含むことが好ましい。
組成物(xα)中に含有される架橋剤としては、上述の樹脂部分(X)中に含有する架橋剤が挙げられるが、組成物(xβ)が、金属キレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及びアジリジン系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましく、アルミニウムキレート系架橋剤を含むことが更に好ましい。
さらに、本発明の一態様としては、組成物(xα)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。組成物(xα)が金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含む場合、組成物(xα)中の金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との好適な含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]は、上述のとおりである。
架橋剤の含有量は、組成物(xα)中に含有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜7.0質量部である。
【0155】
<本発明の製造方法の態様>
本発明の製造方法に特に制限はないが、粘着性及び生産性の観点、並びに、樹脂層の表面(α)に凹部及び平坦面を形成しやすくして、エア抜け性、耐ブリスター性を向上させる観点から、以下の第1態様の製造方法、及び第2態様の製造方法が好ましい。
【0156】
<第1態様の製造方法>
第1態様の製造方法は、少なくとも下記工程(1A)及び(2A)を有する。
工程(1A):基材又は剥離材上に、組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)、組成物(y1)からなる塗膜(y1’)、及び組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2A):工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y1’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥し、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)を形成する工程
【0157】
<工程(1A)>
工程(1A)は、基材又は剥離材上に、組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)、組成物(y1)からなる塗膜(y1’)、及び組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程である。
上記塗膜を形成する際に、塗膜を形成しやすくするため、組成物(xβ)、組成物(y1)、及び組成物(xα)に、溶媒を配合し、組成物の溶液の形態とした後、塗布することが好ましい。
このような溶媒としては、水や有機溶媒等が挙げられる。
当該有機溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、s−ブタノール、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。なお、これらの溶媒は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0158】
塗膜(xβ’)、(y1’)及び(xα’)の形成方法としては、(xβ’)を形成した後、塗膜(xβ’)上に塗膜(y1’)を形成し、さらに塗膜(y1’)上に塗膜(xα’)を逐次形成する方法でもよく、また、生産性の観点から、塗膜(xβ’)、塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)を多層コーターで同時塗布し形成する方法でもよい。
各塗膜を逐次形成する際に用いるコーターとしては、例えば、スピンコーター、スプレーコーター、バーコーター、ナイフコーター、ロールコーター、ナイフロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ダイコーター等が挙げられる。
多層コーターで同時塗布する際に用いるコーターとしては、例えば、カーテンコーター、ダイコーター等が挙げられるが、これらの中でも、操作性の観点から、ダイコーターが好ましい。
【0159】
組成物(xβ)、組成物(y1)、及び組成物(xα)を用いて、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)を形成する場合の塗布速度は、生産性の観点から、それぞれ好ましくは8m/分以上、より好ましくは10m/分以上、更に好ましくは12m/分以上、より更に好ましくは15m/分以上である。
【0160】
塗膜(xα’)の塗布量は、エア抜け性と粘着特性を向上させる観点から、好ましくは1.5〜800g/m、より好ましくは5〜500g/m、更に好ましくは10〜300g/m、より更に好ましくは20〜200g/mである。
塗膜(y1’)の塗布量は、エア抜け性と粘着特性を向上させる観点から、好ましくは1.5〜800g/m、より好ましくは5〜500g/m、更に好ましくは10〜300g/m、より更に好ましくは20〜200g/mである。
塗膜(xα’)と塗膜(y1’)との塗布量の比〔(xα’)/(y1’)〕は、エア抜け性と粘着特性を向上させる観点から、好ましくは100/5〜100/2000、より好ましくは100/50〜100/1500、更に好ましくは100/100〜100/1000である。
【0161】
なお、工程(1A)において、塗膜(xβ’)、塗膜(y1’)、及び塗膜(xα’)の少なくとも一方の形成後に、工程(2A)に移る前に、当該塗膜の硬化反応が進行しない程度のプレ乾燥処理を施してもよい。
例えば、塗膜(xβ’)、塗膜(y1’)、及び塗膜(xα’)のそれぞれの塗膜の形成後に、その都度上記のプレ乾燥処理を行ってもよく、塗膜(xβ’)及び塗膜(y1’)の形成後に、まとめて上記のプレ乾燥処理を行った後、塗膜(xα’)を形成してもよい。
工程(1A)における、当該プレ乾燥処理を行う際の乾燥温度としては、通常は、形成した塗膜の硬化が進行しない程度の温度範囲に適宜設定されるが、好ましくは工程(2A)での乾燥温度未満である。「工程(2A)での乾燥温度未満」との規定が示す具体的な乾燥温度としては、好ましくは10〜45℃、より好ましくは10〜34℃、更に好ましくは15〜30℃である。
【0162】
<工程(2A)>
工程(2A)は、工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y1’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥し、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)を形成する工程である。
工程(2A)において、形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y1’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させることで、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む樹脂層が形成される。
また、工程(2A)により、層(Xα)の表面(α)上に、不定形の凹部が効果的に形成されることで、平坦面の形状も不定形となる。その結果、粘着力、エア抜け性、耐ブリスター性に優れた粘着シートを得ることができる。
空隙部分(Z)は、上述の組成物(y1)中に含有する微粒子として、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上を用いることで、容易に形成することができる。
なお、当該乾燥温度が低いほど、形成される凹部の高低差が大きくなるが、形成される凹部の数が減少する傾向がある。
【0163】
<第2態様の製造方法>
第2態様の製造方法は、少なくとも下記工程(1B)及び(2B)を有する。
工程(1B):基材又は剥離材の表面上に、組成物(xβ)から形成された層(Xβ)上に、組成物(y1)からなる塗膜(y1’)、及び組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2B):工程(1B)で形成した塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥し、層(Y1)及び層(Xα)を形成する工程
【0164】
<工程(1B)>
工程(1B)は、基材又は剥離材の表面上に、組成物(xβ)から形成された層(Xβ)上に、組成物(y1)からなる塗膜(y1’)、及び組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程である。
工程(1B)において、「主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)」は、樹脂を含み、粘着付与剤を実質的に含有しない組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)を乾燥させて形成することができる。
層(Xβ)は組成物(xβ)から形成されるため、層(Xβ)には、樹脂以外にも、架橋剤や汎用添加剤等が含有していてもよい。層(Xβ)中の樹脂部分(X)の含有量としては、上述のとおりである。
【0165】
層(Xβ)の形成方法としては、基材又は剥離材上に、樹脂を含む組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)を形成し、該塗膜(xβ’)を乾燥させて形成することができる。
このときの乾燥温度としては、特に制限はなく、好ましくは35〜200℃、より好ましくは60〜180℃、更に好ましくは70〜160℃、より更に好ましくは80〜140℃である。
【0166】
なお、本第2態様の製造方法においては、塗膜(xβ’)上ではなく、乾燥後に得られた層(Xβ)上に、塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)をこの順で形成する点で、上述の第1態様の製造方法とは異なる。
工程(1B)においても、組成物(y1)及び組成物(xα)には、上述の溶媒を配合し、組成物の溶液の形態とした後、塗布することが好ましい。
塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)の形成方法としては、層(Xβ)上に、塗膜(y1’)を形成した後、塗膜(y1’)上に塗膜(xα’)を形成するというように、上述のコーターを用いて逐次形成する方法でもよく、塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)を、上述の多層コーターを用いて同時塗布し形成する方法でもよい。
【0167】
組成物(y1)及び組成物(xα)を用いて、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を形成する場合の塗布速度は、生産性の観点から、それぞれ好ましくは8m/分以上、より好ましくは10m/分以上、更に好ましくは12m/分以上、より更に好ましくは15m/分以上である。
塗膜(xα’)の塗布量、塗膜(y1’)の塗布量、及び塗膜(xα’)と塗膜(y1’)との塗布量の比〔(xα’)/(y1’)〕は、上述の工程(1A)と同様である。
なお、本工程(1B)において、塗膜(y1’)の形成後、もしくは塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)の形成後に、工程(2B)に移る前に、当該塗膜の硬化反応が進行しない程度のプレ乾燥処理を施してもよい。
本工程(1B)における、当該プレ乾燥処理の条件は、上述の工程(1A)と同様である。
【0168】
<工程(2B)>
工程(2B)は、工程(1B)で形成した塗膜(y1’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥し、層(Y1)及び層(Xα)を形成する工程である。
工程(2B)における乾燥温度の好適範囲は、上述の工程(1B)と同様である。
本工程(2B)により、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む樹脂層が形成される。
また、工程(2B)により、層(Xα)の表面(α)上に、不定形の凹部が効果的に形成され、不定形の凹部が形成されることで、平坦面の形状も不定形となる。
【0169】
〔粘着シート〕
本発明の製造方法により、以下の粘着シートが得られる。
基材又は剥離材上に、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層してなる樹脂層を有し、少なくとも層(Xα)の表面(α)が粘着性を有する粘着シートであって、
層(Xβ)が、樹脂を含み、粘着付与剤を実質的に含有しない組成物(xβ)から形成された層であり、
層(Y1)が、樹脂及び微粒子を含み、粘着付与剤を実質的に含有せず、当該微粒子の含有量が15質量%以上である組成物(y1)から形成された層であり、
層(Xα)が、粘着性樹脂100質量部と、粘着付与剤1質量部以上とを含む組成物(xα)から形成された層である、粘着シート。
本発明の粘着シートの構成は、上述のとおりである。
本発明の粘着シートは、層(Xα)の表面(α)上に、不定形の凹部を有する。
前記凹部は、前記樹脂層の自己形成化により形成される。
また、本発明の粘着シートにおいては、層(Y1)が、層(Xα)から移行した粘着付与剤を含んでもよい。
【実施例】
【0170】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0171】
<樹脂の質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−L」「TSK gel G2500HXL」「TSK gel G2000HXL」「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0172】
<シリカ粒子の体積平均二次粒子径の測定>
シリカ粒子の体積平均二次粒子径は、マルチサイザー・スリー機(ベックマン・コールター社製)を用いて、コールターカウンター法による粒度分布の測定を行うことにより求めた。
【0173】
<樹脂層の厚さの測定>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG−02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
具体的には、測定対象の粘着シートの総厚を測定した上で、予め測定した基材もしくは剥離シートの厚みを差し引いた値を「樹脂層の厚さ」とした。
【0174】
製造例x−1〜x−3
(樹脂組成物の溶液(xβ−1)及び(xα−1)〜(xα−2)の調製)
表1に記載の種類及び固形分量のアクリル系樹脂の溶液に対して、表1に記載の種類及び配合量の架橋剤、及び粘着付与剤を添加し、表1に記載の希釈溶媒を用いて希釈し、表1に記載の固形分濃度を有する樹脂組成物の溶液(xβ−1)及び(xα−1)〜(xα−2)をそれぞれ調製した。
【0175】
なお、樹脂組成物の溶液(xβ−1)及び(xα−1)〜(xα−2)の調製に使用した表1に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
<アクリル系樹脂の溶液>
・溶液(i): アクリル系樹脂(x−i)(BA/AA=90/10(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、Mw:47万)を含有する固形分濃度37.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液。
・溶液(ii): アクリル系樹脂(x−ii)(2EHA/VAc/AA=75/23/2(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、Mw:66万)を含有する固形分濃度33.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液。
・溶液(iii): アクリル系樹脂(x−iii)(2EHA/BA/VAc/AA=70/20 /5/5(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、Mw:63万)を含有する固形分濃度33.5質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液。
なお、上記のアクリル系共重合体の構成する原料モノマーの略称は、以下のとおりである。
・BA:n−ブチルアクリレート
・2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
・AA:アクリル酸
・VAc:酢酸ビニル
【0176】
<架橋剤>
・Al系架橋剤:製品名「M−5A」、総研化学株式会社製、アルミニウムキレート系架橋剤、固形分濃度=4.95質量%。
・エポキシ系架橋剤:「TETRAD−C」(製品名、三菱ガス化学株式会社製)をトルエンで希釈し、固形分濃度5質量%としたエポキシ系架橋剤の溶液。
【0177】
<粘着付与剤>
・ロジンエステル系TF :ロジンエステル系重合体、Mw:1万未満、軟化点:135℃。
・テルペン系TF :芳香族変性テルペン系重合体、Mw:1万未満、軟化点:115℃。
・水素化テルペン系TF :芳香族変性テルペン系重合体の水素化物、Mw:1万未満、軟化点:100℃。
【0178】
<希釈溶媒>
・混合溶媒(1):トルエン/イソプロピルアルコール(IPA)=35/65(質量比)で混合してなる混合溶媒。
・混合溶媒(2):トルエン/イソプロピルアルコール(IPA)=40/60(質量比)で混合してなる混合溶媒。
【0179】
【表1】
【0180】
製造例f−1
(微粒子分散液(f−1)の調製)
上述のアクリル系樹脂(x−i)を含む溶液(i)(BA/AA=90/10(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体(Mw:47万)を含有する固形分濃度37.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液)を使用した。
当該溶液(i)100質量部(固形分:37.0質量部)に対して、微粒子として、シリカ粒子(製品名「ニップシール E−200A」、東ソー・シリカ株式会社製、体積平均二次粒子径:3μm)を55.5質量部(固形分:55.5質量部)及びトルエンを添加して、微粒子を分散させて、アクリル系樹脂(x−i)及びシリカ粒子を含む固形分濃度30質量%の微粒子分散液(f−1)を調製した。
【0181】
製造例y−1〜y−2
(塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)〜(y−2)の調製)
表2に記載の種類及び配合量の微粒子分散液、アクリル系樹脂の溶液、架橋剤、粘着付与剤及び希釈溶媒を添加して、表2に記載の固形分濃度の塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)〜(y−2)をそれぞれを調製した。
【0182】
なお、塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)〜(y−2)の調製に使用した表2に記載の各成分
の詳細は以下のとおりである。
<微粒子分散液>
・分散液(f−1):製造例f−1で調製した、アクリル系樹脂(x−i)及びシリカ粒子を含む固形分濃度30質量%の微粒子分散液(f−1)。
<アクリル系樹脂の溶液>
・溶液(i):アクリル系樹脂(x−i)(BA/AA=90/10(質量%)からなる原料モノマーに由来の構成単位を有するアクリル系共重合体、Mw:47万)を含有する固形分濃度37.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液。
<架橋剤>
・Al系架橋剤:製品名「M−5A」、総研化学株式会社製、アルミニウムキレート系架橋剤、固形分濃度=4.95質量%。
<粘着付与剤>
・ロジンエステル系TF :ロジンエステル系重合体、Mw:1万未満、軟化点:135℃。
・テルペン系TF :芳香族変性テルペン系重合体、Mw:1万未満、軟化点:115℃。
・水素化テルペン系TF :芳香族変性テルペン系重合体の水素化物、Mw:1万未満、軟化点:100℃。
<希釈溶媒>
・混合溶媒(3):IPA/CHN:イソプロピルアルコール(IPA)及びシクロヘキサノン(CHN)からなる混合溶媒(IPA/CHN=95/5(質量比))。
【0183】
【表2】
【0184】
実施例1〜2、比較例1
(1)塗膜の形成
片面にアルミ蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック株式会社製、製品名「FNSケシN50」、厚さ50μm)を基材として用いた。
当該PETフィルムのアルミ蒸着層上に、製造例x−1で調製した樹脂組成物の溶液(xβ−1)と、表3に記載の製造例y−1〜y−2で調製した塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)〜(y−2)のいずれかと、表3に記載の製造例x−2〜x−3で調製した樹脂組成物の溶液(xα−1)〜(xα−2)のいずれかとを、この順で、多層ダイコーター(幅:250mm)を用いて塗布速度40m/分にて同時に塗布し、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を同時に形成した。
なお、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を形成するための各溶液(塗布液)の流量と、各塗膜の塗布量は、表3に記載のとおりである。
【0185】
(2)乾燥処理
形成した3層の塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を、乾燥温度100℃にて2分間、同時に乾燥させて、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む、表3に示す厚さの樹脂層を形成した。
そして、形成した樹脂層の表面(α)に、剥離材である剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」)の剥離処理面と貼合するようにラミネートし、基材付き粘着シートを作製した。
【0186】
【表3】
【0187】
実施例及び比較例で作製した基材付き粘着シートを用いて、当該粘着シートが有する樹脂層及び当該粘着シートの特性について、以下の方法により、測定又は観察を行った。これらの結果を表4に示す。
【0188】
<樹脂層の表面(α)の状態>
(1)不定形の凹部の有無
実施例及び比較例で作製した粘着シートの樹脂層の表面(α)上において縦8mm×横10mmの長方形で囲まれた領域(D)を任意に4領域選択し、各領域(D)内をデジタル顕微鏡(キーエンス株式会社製、製品名「デジタルマイクロスコープVHX−1000」、倍率:50倍)で表面(α)側から平面視(必要に応じて立体視)して観察及び撮影した。
なお、当該撮影に際し、より具体的には、図5のA方向から目視にて平坦面だと判断した部位の上方から順に焦点を移動し、初めに焦点があった部分を平坦面として撮影した。さらに、デジタル顕微鏡(倍率50倍)を用いて、表面(α)上の任意に選択した互いに隣り合わせの範囲を、デジタル顕微鏡の画像連結機能により連結した連結画像を取得し、得られた連結画像において、縦8mm×横10mmの長方形で囲まれた領域を任意に選択し、これを「領域(D)の画像」とした。
また、画像の目視にて、平坦面であるかどうかを判断出来ない場合は、樹脂層の表面(α)に平滑面を有する透光性被着体を可能な限り荷重をかけないようにスキージ−にて手貼りし、図5のA方向から 、透光性被着体の平滑面と樹脂層12の表面(α)12aとの界面を撮影し、貼付した部分は平坦面であると判断した。平滑面を有する透光性被着体は、無アルカリガラス(製品名「イーグルXG」、コーニング株式会社製)を使用した。
得られた領域(D)の画像を観察し、不定形の凹部の存在の有無を確認し、以下の基準により、表面(α)上の不定形の凹部の存在の有無を評価した。
A:選択したいずれの領域(D)においても、不定形の凹部が確認された。
B:選択した領域(D)の一部において、不定形の凹部が確認された。
C:選択したいずれの領域(D)においても、凹部の存在を確認することができなかった。
【0189】
(2)平坦面が占める面積割合
上記(1)で取得した「領域(D)の画像」を基に、上記と同じデジタル顕微鏡を用いて、自動面積計測を行ない、領域(D)に存在する各平坦面の面積をそれぞれ得た。
なお、自動面積計測は、領域(D)に存在する平坦面を、デジタル顕微鏡及び必要に応じて目視による画像処理にて2値化した後、得られた2値化画像の数値(面積)の計測を行ない、各平坦面の面積をそれぞれ測定した。平坦面がそれぞれ複数存在する場合には、それぞれの平坦面の面積の計測を行った。得られた各平坦面の面積の合計の領域(D)の全面積に対する割合である、「平坦面が占める面積割合(%)」を算出した。
自動面積計測の条件は、以下のとおりである。
(自動面積計測条件)
・抽出モード:輝度(ノイズ除去弱)
・抽出領域:数値指定(矩形)にて縦8mm×横10mmの長方形を抽出
・抽出領域の整形:粒除去(面積100μm以下除去)
【0190】
<エア抜け性>
縦50mm×横50mmの大きさとした基材付き粘着シートを、空気溜まりが生じるように、被着体であるメラミン塗装板に貼付した。そして、スキージを用いて圧着した後の空気溜まりの有無を観察し、以下の基準により、各粘着シートのエア抜け性を評価した。
A:空気溜まりが完全に消失しており、エア抜け性に優れる。
F:空気溜まりが一部残っており、上記A評価の粘着シートに比べて、エア抜け性が劣る。
【0191】
<耐ブリスター性>
縦50mm×横50mmの大きさとした粘着シートを、縦70mm×横150mm×厚さ2mmのポリメチルメタクリレート板(三菱レイヨン株式会社製、製品名「アクリライトL001」)に貼付し、スキージーを用いて圧着し、試験サンプルを作製した。
この試験サンプルを、23℃で12時間静置した後、80℃の熱風乾燥機内に1.5時間静置し、さらに90℃の熱風乾燥機内に1.5時間静置して、加熱促進後のブリスターの発生状態を目視により観察し、以下の基準により、各粘着シートの耐ブリスター性を評価した。
A:ブリスターが全く確認されなかった。
B:部分的にブリスターが確認された。
C:全面にブリスターが確認された。
【0192】
<粘着力>
実施例及び比較例で作製した基材付き粘着シートを縦25mm×横300mmの大きさに切断した後、当該粘着シートの樹脂層の表面(α)を、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、ステンレス板(SUS304、360番研磨)に貼付した積層体を、同じ環境下で24時間静置した。
静置後、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて、各粘着シートの粘着力を測定した。
【0193】
【表4】
【0194】
実施例1〜2で得られた粘着シートは、比較例1で得られた粘着シートに比べて、優れたエア抜け性、耐ブリスター性を示し、粘着特性とのバランスがよく、かつ生産性がよい結果となった 。
なお、図6、7及び図8は、それぞれ、実施例1、2及び比較例1で作製した粘着シートの樹脂層の表出している表面(α)の任意に選択した縦8mm×横10mmの長方形で囲まれた領域(D)を、デジタル顕微鏡を用いて表面(α)側から撮影して得た画像の2値化画像である。つまり、図6及び図7の長方形の画像の縦が「8mm」、横が「10mm」にあたる。
これらの2値化画像において、黒色部分が平坦面であり、白色部分が凹部に該当するが、実施例1の図6、実施例2の図7では、比較例1の図8に比べて、より緻密な平坦面及び凹部を有するため、優れたエア抜け性、耐ブリスター性を示し、粘着特性とのバランスがよいと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明の一態様の粘着シートは、識別又は装飾用、塗装マスキング用、金属板等の表面保護用等に使用する、貼付面積が大きい粘着シートとして有用である。
【符号の説明】
【0196】
1a、11a、12a、1b、2a、2b 粘着シート
11 基材
12 樹脂層
12a 表面(α)
12b 表面(β)
(X) 樹脂部分(X)
(Y) 粒子部分(Y)
(Xβ) 主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)
(Xα) 主に樹脂部分(X)を含む層(Xα)
(Y1) 粒子部分(Y)を15質量%以上含む層(Y1)
13、13a、131、132 凹部
14 平坦面
14a 平坦部
15a 凸部
21、22 剥離材
50 正方形
51、52 対角線
60 断面(P1)
61、62 断面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8