特許第6645372号(P6645372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645372
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   B23K20/12 364
   B23K20/12 330
   B23K20/12 310
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-140233(P2016-140233)
(22)【出願日】2016年7月15日
(65)【公開番号】特開2018-8303(P2018-8303A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/060007(WO,A1)
【文献】 特開2015−213928(JP,A)
【文献】 特開2016−078081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、
少なくとも表面の高さが変化する前記第一金属部材の表面に、表面及び裏面の高さが変化する前記第二金属部材の裏面を重ね合わせて高さが変化する重合部を形成する重合工程と、
前記第二金属部材の表面から回転する前記回転ツールを挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第二金属部材に接触させた状態又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に接触させた状態で、高さが変化する前記重合部に対して前記回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌工程と、
前記摩擦攪拌工程で形成された塑性化領域を境に、前記第二金属部材のうちバリが形成された余剰片部ごと除去する除去工程と、を含むことを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記除去工程では、前記塑性化領域に形成された凹溝を境に前記余剰片部を除去することを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが前記余剰片部に形成されるように接合条件を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合の終了と同時に前記第二金属部材から前記余剰片部が除かれるように、接合条件を設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材同士を摩擦攪拌で接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、第一金属部材と第二金属部材を重ね合わせて重合部を形成した後、第二金属部材の表面から回転ツールを挿入して重合部を摩擦攪拌接合する接合方法が記載されている。当該摩擦攪拌接合では、攪拌ピンのみを第一金属部材及び第二金属部材に接触させた状態で摩擦攪拌を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−139800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の接合方法であると、塑性流動化した金属を回転ツールのショルダ部で押さえないため、バリが第二金属部材の表面に発生し、当該バリを除去する工程が煩雑になるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、バリを容易に除去することができる接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、少なくとも表面の高さが変化する前記第一金属部材の表面に、表面及び裏面の高さが変化する前記第二金属部材の裏面を重ね合わせて高さが変化する重合部を形成する重合工程と、前記第二金属部材の表面から回転する前記回転ツールを挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第二金属部材に接触させた状態又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に接触させた状態で、高さが変化する前記重合部に対して前記回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌工程と、前記摩擦攪拌工程で形成された塑性化領域を境に、前記第二金属部材のうちバリが形成された余剰片部ごと除去する除去工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
かかる接合方法によれば、高さが変化する重合部を接合することができるとともに、バリが形成された余剰片部ごと除去するため、バリを容易に除去することができる。
【0008】
また、前記除去工程では、前記塑性化領域に形成された凹溝を境に前記余剰片部を除去することが好ましい。かかる接合方法によれば、バリをより容易に除去することができる。
【0009】
また、前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが前記余剰片部に形成されるように接合条件を設定することが好ましい。かかる接合方法によれば、余剰片部にバリを集約することができるため、バリをより容易に除去することができる。
【0010】
また、前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合の終了と同時に前記第二金属部材から前記余剰片部が除かれるように、接合条件を設定することが好ましい。かかる接合方法によれば、接合サイクルを短くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る接合方法によれば、バリを容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る接合方法の第一金属部材及び第二金属部材を示す斜視図である。
図2】第一実施形態に係る接合方法の重合工程を示す断面図である。
図3】第一実施形態に係る接合方法の摩擦攪拌工程を示す斜視図である。
図4】第一実施形態に係る接合方法の摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図5】第一実施形態に係る接合方法の除去工程を示す断面図である。
図6】第一実施形態に係る接合方法の除去工程を示す斜視図である。
図7】第一実施形態に係る接合方法の変形例の摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図8】第二実施形態に係る接合方法の摩擦攪拌工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る接合方法について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る接合方法では、重合工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程と、を行う。なお、以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面という意味である。
【0014】
重合工程は、図1及び図2に示すように、第一金属部材1と、第二金属部材10とを重ね合わせる工程である。第一金属部材1及び第二金属部材10は、いずれも金属製の部材であって、同等の材料で形成されている。第一金属部材1及び第二金属部材10の材料は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等から適宜選択される。
【0015】
第一金属部材1は、直方体を呈する本体部2と、本体部2の上に形成され断面台形状を呈する凸部3とで構成されている。凸部3の表面3aは、本体部2の表面2a,2bよりも上方に位置している。凸部3の第一表面3bは、傾斜しており本体部2の表面2aと凸部3の表面3aとを連結している。また、凸部3の第二表面3cは、傾斜しており本体部2の表面2bと凸部3の表面3aとを連結している。
【0016】
第二金属部材10は、一定の板厚で形成された高さの異なる板状部材である。第二金属部材10は、基部11,11と、中央部12と、傾斜部13,14とで構成されている。中央部12は、基部11,11の中央において、基部11,11よりも高い位置に形成されている。傾斜部13は、一方の基部11と中央部12とを斜めに連結している。傾斜部14は、他方の基部11と中央部12とを斜めに連結している。また、基部11,11のそれぞれの端部の中央付近には、スリット5,5が設けられている。
【0017】
重合工程では、図2に示すように、第一金属部材1の表面に、第二金属部材10の裏面を重ね合わせて重合部J1を形成する。より詳しくは、本体部2の表面2a,2bと、基部11,11の裏面11b,11bとを重ね合わせるとともに、凸部3の表面3aと中央部12の裏面12bとを重ね合わせる。また、凸部3の第一表面3bと傾斜部13の裏面13bとを重ね合わせるとともに、凸部3の第二表面3cと傾斜部14の裏面14bとを重ね合わせる。
【0018】
第一金属部材1と第二金属部材10とはほぼ隙間なく重ね合わされる。重合部J1は、その高さ位置が変化するように形成される。つまり、重合部J1は、摩擦攪拌の始点(挿入位置)の高さ(標高)を基準高さとすると、始点から終点に至るまでに基準高さと高さの異なる区間が存在している。本実施形態では、重合部J1は、第一平部Jaと、第一傾斜部Jbと、第二平部Jcと、第二傾斜部Jdと、第三平部Jeとで構成されている。
【0019】
摩擦攪拌工程は、図3に示すように、接合用回転ツールFを用いて第一金属部材1と第二金属部材10との重合部J1を摩擦攪拌によって接合する工程である。接合用回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。接合用回転ツールFは、特許請求の範囲の「回転ツール」に相当する。接合用回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置の回転軸(図示省略)に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈している。
【0020】
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、接合用回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。
【0021】
なお、接合用回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(第一金属部材1及び第二金属部材10)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。
【0022】
接合用回転ツールFは、マシニングセンタ等の摩擦攪拌装置に取り付けてもよいが、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転手段を備えたアームロボットに取り付けてもよい。アームロボットに接合用回転ツールFを取り付けることにより接合用回転ツールFの回転中心軸Cを容易に傾斜させることができる。
【0023】
摩擦攪拌工程では、第二金属部材10の表面に設定した開始位置Spに、右回転させた接合用回転ツールFの攪拌ピンF2を挿入し、重合部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。本実施形態では、接合用回転ツールFの回転中心軸が、常に鉛直軸と平行となる状態で摩擦攪拌を行う。摩擦攪拌工程によって攪拌ピンF2の周囲が摩擦攪拌され第一金属部材1と第二金属部材10とが接合される。接合用回転ツールFの移動軌跡には、塑性化領域Wが形成される。
【0024】
図4に示すように、本実施形態に係る接合工程では、重合部J1に対する攪拌ピンF2の挿入深さをほぼ一定に保ちつつ、攪拌ピンF2のみを第一金属部材1及び第二金属部材10に接触させた状態で摩擦攪拌を行う。本実施形態に係る摩擦攪拌工程では、第一金属部材1及び第二金属部材10が固定された架台(図示省略)に対して接合用回転ツールFを上下動させることにより摩擦攪拌を行う。
【0025】
これにより、第一平部Jaの塑性化領域Wの深さZa、第一傾斜部Jbの塑性化領域Wの深さZb(傾斜部13の表面13aと直交する線上における塑性化領域Wの深さ)及び第二平部Jcの塑性化領域Wの深さZcをほぼ同等にすることができる。攪拌ピンF2の「挿入深さ」とは、接合用回転ツールFの回転中心軸C上における第二金属部材10の表面から攪拌ピンF2の先端までの距離を意味する。
【0026】
なお、本実施形態に係る接合工程では、架台(図示省略)に対して接合用回転ツールFを上下動させたが、接合用回転ツールFの高さ位置を固定して、架台を上下動させることにより摩擦攪拌を行ってもよい。また、本実施形態では、攪拌ピンF2のみを第一金属部材1及び第二金属部材10に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行ったが、攪拌ピンF2のみを第二金属部材10のみに接触させた状態で摩擦攪拌接合を行ってもよい。この場合は、第二金属部材10と攪拌ピンF2の摩擦熱によって重合部J1が塑性流動化する。
【0027】
図5に示すように、本実施形態では、接合用回転ツールFのシアー側(advancing side:回転ツールの外周における接線速度に回転ツールの移動速度が加算される側)が進行方向左側となるように、接合用回転ツールFの移動方向と回転方向を設定している。接合用回転ツールFの回転方向及び進行方向は前記したものに限定されるものではなく適宜設定すればよい。
【0028】
例えば、接合用回転ツールFの回転速度が遅い場合では、塑性化領域Wのフロー側(retreating side:回転ツールの外周における接線速度から回転ツールの移動速度が減算される側)に比べてシアー側の方が塑性流動材の温度が上昇しやすくなるため、塑性化領域W内のシアー側に凹溝が発生し、塑性化領域W外のシアー側にバリVが多く発生する傾向にある。一方、例えば、接合用回転ツールFの回転速度が速い場合、シアー側の方が塑性流動材の温度が上昇するものの、回転速度が速い分、塑性化領域W内のフロー側に凹溝が発生し、塑性化領域W外のフロー側にバリVが多く発生する傾向にある。
【0029】
本実施形態では、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定しているため、図5に示すように、塑性化領域W内のフロー側に凹溝Dが発生し、塑性化領域W外のフロー側にバリVが多く発生する傾向にある。図5中の符号Xは接合中心線である。凹溝Dは、塑性化領域Wのうち、より深くえぐれる部位である。また、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定することにより、接合用回転ツールFの移動速度(送り速度)を高めることができる。これにより、接合サイクルを短くすることができる。
【0030】
摩擦攪拌工程の際に、接合用回転ツールFの進行方向のどちら側にバリVが発生するかは接合条件によって異なる。当該接合条件とは、接合用回転ツールFの回転速度、回転方向、移動速度(送り速度)、攪拌ピンF2の傾斜角度(テーパー角度)、第一金属部材1及び第二金属部材10の材質、厚さ等の各要素とこれらの要素の組み合わせで決定される。接合条件に応じて、バリVが発生する側又はバリVが多く発生する側が後記する余剰片部20側となるように設定すれば、塑性化領域W内に形成される凹溝Dも余剰片部20側に形成される傾向があるので、後記する除去工程を容易に行うことができるため好ましい。
【0031】
除去工程は、図5及び図6に示すように、第二金属部材10の一部である余剰片部20を切除する工程である。余剰片部20とは、第二金属部材10において、塑性化領域Wを境にして切除される部位である。本実施形態では、第二金属部材10に形成された凹溝Dよりも外側(接合用回転ツールFの進行方向右側)の部位を余剰片部20としている。
【0032】
除去工程では、スリット5,5の一方を起点として余剰片部20の端部をめくり上げつつ、折り曲げるようにして除去する。除去工程では、装置を用いて余剰片部20を折り曲げてもよいが、本実施形態では、手作業で折り曲げて切除している。
【0033】
以上説明した接合方法によれば、高さが変化する重合部J1を接合することができるとともに、バリVが形成された余剰片部20ごと除去するため、バリVを容易に除去することができる。また、摩擦攪拌工程では、余剰片部20側にバリVが形成されるように接合条件を設定している。これにより、余剰片部20にバリVを集約させることができるため、バリVをより容易に除去することができる。
【0034】
また、本実施形態のように攪拌ピンF2のみを第一金属部材1及び第二金属部材10に接触させた状態、又は攪拌ピンF2のみを第二金属部材10のみに接触させた状態で摩擦攪拌を行うことで摩擦攪拌装置に大きな負荷がかからない状態で深い位置にある重合部J1を摩擦攪拌接合することができる。また、塑性化領域Wを一定にすることにより、接合強度を一定にすることができる。
【0035】
また、図5に示すように、本実施形態によれば、凹溝Dは塑性化領域W内で、かつ、フロー側に形成される。また、バリVは塑性化領域W外で、かつ、フロー側に形成されるので、余剰片部20とともにバリVを効率よく切除することができる。これにより、接合部(塑性化領域W)を大きく残存させることができるため、接合強度を高めることができる。また、凹溝Dによって余剰片部20を容易に折り曲げることができるとともに、バリ除去作業を別途行わなくても接合部(塑性化領域W)をきれいに仕上げることができる。
【0036】
なお、摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合の終了と同時に第二金属部材10から余剰片部20が除かれるように、接合条件を設定してもよい。つまり、当該摩擦攪拌工程では、凹溝Dがより深く形成されるとともに、摩擦攪拌接合の終了と同時に余剰片部20が第二金属部材10から離脱するように、接合条件を設定してもよい。これにより、接合サイクルを短くすることができる。この場合は、第一金属部材1の本体部2と同じ板厚の一対のタブ材を、第一金属部材1の両端に設けつつ、当該タブ材に摩擦攪拌の開始位置及び終了位置を設定して第二金属部材10の全長に亘って摩擦攪拌を行うことが好ましい。
【0037】
[変形例]
図7は、第一実施形態に係る接合方法の変形例の摩擦攪拌工程を示す断面図である。図7に示すように、変形例では、摩擦攪拌工程を行う際に、接合用回転ツールFを接合面に対して垂直に挿入しつつ摩擦攪拌を行う。変形例の摩擦攪拌工程では、第一平部Ja、第二平部Jc及び第三平部Jeにおいては、第一実施形態と同様に接合用回転ツールFの回転中心軸Cを鉛直軸と平行にした状態で摩擦攪拌を行う。一方、第一傾斜部Jb及び第二傾斜部Jdにおいては、接合用回転ツールFを鉛直軸に対して傾斜させて、第一傾斜部Jb及び第二傾斜部Jdの接合面に対して接合用回転ツールFの回転中心軸を垂直にした状態で摩擦攪拌を行う。
【0038】
変形例を行う場合は、例えば、先端にスピンドルユニット等の駆動手段を備えたロボットアームに接合用回転ツールFを取り付けて摩擦攪拌を行うことが好ましい。このような摩擦攪拌装置によれば、接合用回転ツールFの回転中心軸Cの角度を容易に変更することができる。これにより、重合部J1の高さが変化する場合においても、摩擦攪拌中に鉛直軸に対する接合用回転ツールFの回転中心軸Cの角度を変更することで、接合面に対して接合用回転ツールFを常に垂直にした状態で連続して摩擦攪拌を行うことができる。
【0039】
前記した変形例であっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、接合用回転ツールFを各接合面に対して垂直に挿入することができるため、傾斜面であっても重合部J1の深い位置まで摩擦攪拌を行うことができる。
【0040】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る接合方法では、重合工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程とを行う。第二実施形態では、金属部材同士が湾曲している点で第一実施形態と相違する。
【0041】
図8に示すように、重合工程では、第一金属部材30と、第二金属部材40とを重ね合わせる。第一金属部材30及び第二金属部材40は、摩擦攪拌可能な金属で形成されるとともに、同等の曲率半径で湾曲形成されている。第一金属部材30の表面30aと、第二金属部材40の裏面40bとを重ね合わせることにより、重合部J2が形成される。重ね合わされた第一金属部材30及び第二金属部材40は、治具によって架台Kにクランプされる。
【0042】
摩擦攪拌工程は、接合用回転ツールFを用いて重合部J2を摩擦攪拌接合する工程である。摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2を第二金属部材40の表面40aから挿入し、重合部J2に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールFの回転中心軸Cが第二金属部材40の法線と重なるように、接合用回転ツールFの傾斜角度を漸次変更する。また、摩擦攪拌工程では、塑性化領域W1が一定になるように攪拌ピンF2の挿入深さを設定する。除去工程は、第一実施形態と同等であるため説明を省略する。
【0043】
以上説明した第二実施形態に係る摩擦攪拌接合においても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、第一金属部材30及び第二金属部材40のように、重合部J2が湾曲している場合であっても、本発明を適用することができる。
【0044】
以上本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 第一金属部材
2 第二金属部材
F 接合用回転ツール(回転ツール)
F1 連結部
F2 攪拌ピン
C 回転中心軸
J1 重合部
V バリ
W 塑性化領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8