(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0029】
[実施形態1]
1.冷却システム
本実施形態に係るエンジンの冷却システムの概要について、
図1を用い説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係るエンジンは、エンジン本体1と、冷却システム2と、を有する。エンジン本体1は、シリンダブロック1aとシリンダヘッド1bとを有する。本実施形態では、エンジン本体1の一例として、直列4気筒のガソリンエンジンを採用している。
【0031】
シリンダブロック1aには、シリンダボア10a〜10dに対応してシリンダライナが形成されている。さらに、シリンダライナの外周にはシリンダボア壁11が形成され、さらにシリンダボア壁11の周囲を囲むように冷却液の流通路であるブロックウォータージャケット12が設けられている。
【0032】
ここで、
図1においては、“EX”と表記した側がシリンダブロック1aの排気側、“IN”と表記した側がシリンダブロック1aの吸気側としている。そして、ブロックウォータージャケット12は、シリンダブロック1aの吸気側に設けられた吸気側ウォータージャケット12bと、シリンダブロック1aの排気側に設けられた排気側ウォータージャケット12aと、を有している。吸気側ウォータージャケット12bと排気側ウォータージャケット12aとは、気筒列方向の一端部と他端部で互いに連続している。
【0033】
冷却システム2は、可変ウォーターポンプ20と、ラジエータ21と、冷却液流路FL
1〜FL
16と、を有する。可変ウォーターポンプ20とブロックウォータージャケット12の排気側ウォータージャケット12aとは、冷却液流路FL
1で接続されており、冷却液流路FL
1は、排気側ウォータージャケット12aに対して冷却液を導入するための導入部である。
【0034】
冷却液流路FL
2は、冷却液流路FL
1を通り導入された冷却液が、排気側ウォータージャケット12a内を流れる流路であり、冷却液流路FL
7との接続部分(排出部)まで気筒列方向に沿って延びている。
【0035】
冷却液流路FL
3は、吸気側ウォータージャケット12b内を冷却液が流れる流路であり、冷却液流路FL
2と並行するように、冷却液流路FL
7との接続部分(排出部)まで気筒列方向に沿って延びている。
【0036】
冷却液流路FL
2と冷却液流路FL
3とは、#1気筒のシリンダボア10aの外周部で連続しており、冷却液流路FL
2及び冷却液流路FL
3を流れる冷却液は、#1気筒側から#4気筒側に向けてそれぞれ流れる。
【0037】
冷却液流路FL
4は、冷却液流路FL
2の途中の部分から分岐し、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ22に接続されている。なお、本実施形態では、冷却液流路FL
2からの冷却液流路FL
4の分岐を、一例として#4気筒に対応する部分に設けている。また、後述するが、冷却液流路FL
4は、シリンダボア10a〜10dの下部に沿って流通した冷却液を流す流路であり、シリンダブロック1aからの受熱が相対的に少ない冷却液をEGRクーラ22に送ることができるようになっている。よって、本実施形態に係るエンジンでは、EGRクーラ22に導入される冷却液とEGRクーラ22に導入される排気ガスとの温度差を大きく確保できるので、EGRクーラ22の冷却効率を高めることができる。
【0038】
冷却液流路FL
5は、冷却液流路FL
3の途中の部分から分岐し、自動変速機オイル熱交換器26に接続されている。冷却液流路FL
5には、逆止弁28が介挿されている。本実施形態では、冷却液流路FL
3からの冷却液流路FL
5の分岐を、一例として#2気筒に対応する部分からとしている。
【0039】
冷却液流路FL
6は、自動変速機オイル熱交換器26と可変ウォーターポンプ20とを接続する。そして、冷却液流路FL
6は、途中の部分でオイルクーラ27を経由している。このため、自動変速機オイル熱交換器26から排出された冷却液は、エンジンオイルの冷却を行った後に可変ウォーターポンプ20に戻される。
【0040】
冷却液流路FL
7は、シリンダブロック1aから排出された冷却液をシリンダヘッド1bに導くための流路である。換言すると、冷却液流路FL
7は、シリンダブロック1aに設けられた冷却液流路FL
2及び冷却液流路FL
3と、シリンダヘッド1bに設けられた冷却液流路FL
8と、を接続するための流路である。
【0041】
冷却液流路FL
9は、冷却液流路FL
8の途中の部分から分岐された流路であり、冷却液の一部をエアバイパスバルブ24に導くための流路である。なお、エアバイパスバルブ24は、エンジンのスーパーチャージャ(不図示)をバイパスするように構成されたエアバイパス通路でのエア流量を制御するためのバルブである。本実施形態において、エアバイパスバルブ24は、エンジンルーム内において、車両前後方向におけるシリンダブロックよりも前方側に配置されている。
【0042】
冷却液流路FL
9を流れる冷却液は、シリンダブロック1a内のブロックウォータージャケット12で受熱することで加温されている。このため、冷却液流路FL
9を流れる冷却液は、温度がある程度上昇した状態となっており、シリンダブロックよりも車両前後方向の前方側に配置されたエアバイパスバルブ24が走行風により凍結することを防止できるように供給される。
【0043】
冷却液流路FL
9は、一端が冷却液流路FL
10に接続されている。冷却液流路FL
10は、他端がシリンダヘッド1bにおける排気ポート近傍部分に設けられた冷却液流路FL
13に接続されている。冷却液流路FL
10は、エンジンルーム内において、車両前後方向におけるシリンダブロック1aよりも前方側に配置されたエレキスロットルバルブ25を経由するように設けられている。冷却液流路FL
10を流れる冷却液についても、温度がある程度上昇した状態となっており、上述したエアバイパスバルブ24と同様に、エレキスロットルバルブ25の凍結防止のために供給される。
【0044】
冷却液流路FL
11は、EGRクーラ22とヒータ23とを接続する流路である。このため、ヒータ23には、EGRクーラ22で排気ガスと熱交換することで温度が上昇した冷却液が送られる。
【0045】
冷却液流路FL
12は、ヒータ23で熱が奪われて温度が低下した冷却液を、シリンダヘッド1bにおける排気ポート近傍の冷却液流路FL
13に供給するための流路である。冷却液流路FL
12を流れる冷却液は、上述のように、ヒータ23で熱が奪われて温度が低下しているので、シリンダヘッド1bにおける排気ポート近傍を冷却することができる。
【0046】
なお、ヒータ23の作動が制限されるレベルのエンジン冷間時においては、EGRクーラ22で温められた冷却液が冷却液流路FL
12を通り、ヒータ23で熱が奪われないままシリンダヘッド1bの排気ポート近傍に送られる。このため、EGRクーラ22で温められた冷却液により、シリンダヘッド1bの排気ポートが保温又は温度低下が抑制されることとなり、触媒(不図示)に高温の排気ガスを供給することができ、エミッション性能が確保できる。
【0047】
冷却液流路FL
13は、シリンダヘッド1bの排気ポート近傍を#4気筒側から#1気筒側に向けて延びている。そして、冷却液流路FL
13は、冷却液流路FL
14及び冷却液流路FL
16に接続されている。冷却液流路FL
13を流れる冷却液は、シリンダヘッド1bの排気ポート近傍の熱を奪いながら下流側へと導かれる。ただし、上述のように、ヒータ23の作動が制限されるレベルのエンジン冷間時においては、EGRクーラ22を通過することで温められた冷却液により、シリンダヘッド1bの排気ポートが保温される。
【0048】
冷却液流路FL
14は、冷却液流路FL
16を介して冷却液流路FL
8及び冷却液流路FL
13と可変ウォーターポンプ20とを接続する流路である。
【0049】
なお、冷却液流路FL
14は、冷却液流路FL
8との接続部分で分岐されており、もう一方の端部でラジエータ21にも接続されている。冷却液流路FL
15は、逆止弁29を介してラジエータ21と可変ウォーターポンプ20とを接続する。
【0050】
冷却液流路FL
16は、シリンダヘッド1bにおける排気ポート近傍の冷却液流路FL
13を流れてきた冷却液、及び冷却液流路FL
8を流れてきた冷却液の一部が、ラジエータ21を経由せず可変ウォーターポンプ20に戻されるための流路である。
【0051】
2.EGRクーラ22の配置箇所
EGRクーラ22の配置箇所について、
図2及び
図3を用い説明する。
図2は、エンジンを側方側(即ち、車幅方向)から見た模式側面図であり、
図3は、エンジンを後方側(即ち、車両前後方向の後側)から見た模式背面図である。
【0052】
図2及び
図3に示すように、エンジン本体1は、吸気側を前方側、排気側が後方側となるように、車両に搭載されている。
図2に示すように、ラジエータ21は、エンジン本体1よりも前方側に配置されている。
【0053】
また、
図2に示すように、エンジン本体1は、シリンダヘッド1bにおける吸気側の頂面が、排気側よりも上方となるように、全体として傾斜して搭載されている。
【0054】
図3に示すように、EGRクーラ22は、エンジン本体1の左方に配置されている。そして、EGRクーラ22における冷却液流路FL
4の接続箇所(クーラ導入口22a)が、シリンダブロック1aの排気側側壁に開口された取出口14よりも上方に配置されている。即ち、車両における任意の位置を基準とする取出口14の鉛直方向高さレベルをHL
14とし、同じく任意の位置を基準とするクーラ導入口22aの鉛直方向高さレベルをHL
22aとするとき、次の関係を満たしている。
【0055】
[数1]HL
22a>HL
14
なお、
図3に示すように、取出口14とクーラ導入口22aを接続する冷却液流路(中継流路)FL
4は、取出口14よりも左方の領域において配索されており、EGRクーラ22の上方を通るように配索されている。
【0056】
図2に示すように、エンジン本体1の後方側には、排気通路中に介挿されたGPF(Gasoline Particulate Filter)31が配置されている。EGRガスは、排気通路におけるGPF31が介挿された部分から取り出され、エンジン本体1の吸気通路へと還流されるようになっている。EGRガスは、具体的には、GPF31の下流に設けられたガス分岐部31aから取り出され、EGRクーラ22を通りインテークマニホールドへと戻される。
【0057】
ここで、車両における任意の位置を基準とするガス分岐部31aの鉛直高さレベルをHL
31aとし、EGRクーラ22におけるEGRガスの導入部(ガス導入部22b)の鉛直高さレベルをHL
22bとするとき、次の関係を満たす。
【0058】
[数2]HL
22b>HL
31a
図3に示すように、エンジン本体1の右方には、冷却液の送液を実行する可変ウォーターポンプ20が配設されている。
【0059】
3.シリンダブロック1aにおける冷却構造
シリンダブロック1aにおける冷却構造について、
図4を用い説明する。
図4は、エンジン本体1のシリンダブロック1aとウォータージャケットスペーサ30とを示す模式展開斜視図である。なお、
図4においては、右方側がエンジン本体1の#1気筒側であり、左方側がエンジン本体1の#4気筒側である。
【0060】
図4に示すように、本実施形態に係るエンジン本体1のシリンダブロック1aには、シリンダボア10a〜10dを囲むシリンダライナが嵌め込まれている。そして、シリンダライナの周囲を囲んで形成されたシリンダボア壁11の外周面に面する状態で冷却液が流れる溝部としてのブロックウォータージャケット12が設けられている。
【0061】
シリンダブロック1aにおけるY方向手前(車両後方側)の側壁(排気側の側壁)には、導入口13と取出口14が開けられている。導入口13及び取出口14は、それぞれブロックウォータージャケット12に連通している。なお、導入口13は、
図1の冷却液流路FL
1中に含まれ、取出口14は、冷却液流路FL
4中に含まれる。
【0062】
また、
図4では、図示を省略しているが、シリンダブロック1aにおけるY方向奥側(車両前方側)の側壁(吸気側の側壁)には、冷却液流路FL
5中に含まれる取出口が開けられている。
【0063】
ここで、導入口13は、X方向右側の#1気筒に対応する部分に開けられている。これにより、導入口13からの冷却液は、ブロックウォータージャケット12の#1気筒に対応する部分に導入される。
【0064】
一方、取出口14は、X方向左側の#4気筒に対応する部分に開けられている。これにより、ブロックウォータージャケット12を流れる冷却液の一部は、#4気筒に対応する部分から取出口14を通り冷却液流路FL
4に取り出される。
【0065】
ウォータージャケットスペーサ30は、樹脂製のスペーサ部材であって、ブロックウォータージャケット12に挿入されている。ウォータージャケットスペーサ30は、ブロックウォータージャケット12へ挿入された状態において、Z方向の上端辺がシリンダブロック1aの上面と略同じ高さレベルとなる。なお、ウォータージャケットスペーサ30は、樹脂以外の材料、例えば金属材料をも用い形成されたものを採用することもできる。
【0066】
また、ウォータージャケットスペーサ30の下端辺は、ブロックウォータージャケット12の底部に当接するか近接する状態となっている。
【0067】
4.ウォータージャケットスペーサ30の構成
ウォータージャケットスペーサ30の構成について、
図5を用い説明する。
図5は、ウォータージャケットスペーサ30の構成を示す模式斜視図である。
【0068】
図5に示すように、ウォータージャケットスペーサ30は、4つのシリンダボア10a〜10dにそれぞれ対応する4つの筒部を有する。
【0069】
X方向右側の#1気筒のシリンダボア10aに対応する筒部は、Y方向手前側(排気側)の#1ボア部30aとY方向奥側(吸気側)の#1ボア部30eとを有する。
【0070】
2番目の#2気筒のシリンダボア10bに対応する筒部は、Y方向手前側(排気側)の#2ボア部30bとY方向奥側(吸気側)の#2ボア部30fとを有する。
【0071】
3番目の#3気筒のシリンダ簿Z10cに対応する筒部は、Y方向手前側(排気側)の#3ボア部30cとY方向奥側(吸気側)の#3ボア部30gとを有する。
【0072】
X方向右側の#4気筒のシリンダボア10dに対応する筒部は、Y方向手前側(排気側)の#4ボア部30dとY方向奥側(吸気側)の#4ボア部30hとを有する。
【0073】
ウォータージャケットスペーサ30における#1〜#4ボア部30a〜30dは、それぞれZ方向の上部の#1〜#4ボア上部30a
1〜30d
1と、Z方向の下部の#1〜#4ボア下部30a
2〜30d
2と、を有している。
【0074】
#1〜#4ボア下部30a
2〜30d
2のZ方向上部に外向きに凸で気筒列方向に延びるリブ部30lが設けられ、Z方向下部に同じく外向きに凸のリブ部30mが設けられている。また、#4ボア下部30d
2のX方向左側には、同じく外向きに凸でウォータージャケットスペーサ30の高さ方向に延びるリブ部30nが設けられている。リブ部30nは、Y方向からの側面視でシリンダブロック1aの側壁に開口された取出口14に対応する部分に設けられている。より具体的には、取出口14よりも気筒列方向の他端側(X方向左側)に設けられており、取出口14よりも上流から流れてきた冷却液が取出口14にスムーズに導かれるように構成されている。
【0075】
#1ボア上部30a
1には、連通部30iが開口され、#1ボア部30eの上部には、連通部30jが開口されている。連通部30i,30jは、#1ボア上部30a
1及び#1ボア部30eの上部の各壁部を内外に挿通する孔部である。本実施形態では、連通部30i,30jは、#1ボア上部30a
1及び#1ボア部30eの上部の各々に設けられている。具体的に、連通部30i,30jは、#1ボア上部30a
1及び#1ボア部30eの上部の各々における、#2ボア上部30b
1及び第2ボア部30fの上部の側に寄った領域に設けられている。
【0076】
また、Y方向からの側面視において、連通部30eと連通部30fとは重複する位置(即ち、気筒列方向において同じ位置)に設けられている。
【0077】
ウォータージャケットスペーサ30において、シリンダボア10a〜10dの間に相当する部分は、それぞれ外面側が曲面を以って構成されている。
【0078】
ウォータージャケットスペーサ30におけるX方向の左端部には、ブロックウォータージャケット12内を流れてきた冷却液をシリンダヘッド1b側に排出する部分である排出部30oが設けられている。本実施形態では、排出部30oは、Y方向に並ぶ状態で2つ設けられている(
図5では、図示の都合上、1つだけを図示している)。
【0079】
なお、
図5では、Y方向手前側が排気側ウォータージャケットに挿入される部分であり、Y方向奥側が吸気側ウォータージャケットに挿入される部分である。
【0080】
なお、
図5に示すように、本実施形態において#1〜#4ボア上部30a
1〜30d
1の各高さは、ブロックウォータージャケット12内の冷却液の流速を気筒列方向の他端側まで維持するために、#1気筒側から#4気筒側へとゆくに従って漸減し、流路断面積が下流側に行くに従って大きくなるように構成されている。
【0081】
5.シリンダブロック1aのブロックウォータージャケット12内での冷却液の流れ
シリンダブロック1aのブロックウォータージャケット12内での冷却液の流れについて、
図6から
図8を用い説明する。
図6は、シリンダブロック1aのブロックウォータージャケット12内での冷却液の流れを模式的に示す模式図であり、
図7は、ウォータージャケットスペーサ30に対する冷却液の流れを示す模式図であり、
図8は、
図6のVIII−VIII断面を示す模式断面図である。
【0082】
図6に示すように、可変ウォーターポンプ20から冷却液流路FL
1を通り送られてきた冷却液は、導入口13から導入部を通り排気側のウォータージャケット(排気側ウォータージャケット12a)の#1気筒のシリンダボア10aに対応する部分に導入される。排気側ウォータージャケット12aに導入された冷却液は、X方向の左側(#4気筒のシリンダボア10d側)に向けての流れ(冷却液流路FL
2での流れ)と、シリンダボア壁11の外周側(ブロックウォータージャケット12の気筒列方向の一端側)を回り込み吸気側のウォータージャケット(吸気側ウォータージャケット12b)に流れ込む流れとに分配される。吸気側ウォータージャケット12bに流れ込んだ冷却液は、X方向左側(#4気筒のシリンダボア10d側)に向けての流れ(冷却液流路FL
3での流れ)となる。
【0083】
冷却液流路FL
2を流れる冷却液の一部は、取出口14から冷却液流路FL
4を通り、EGRクーラ22に送られる。また、
図6では図示を省略しているが、冷却液流路FL
3を流れる冷却液の一部は、冷却液流路FL
5を通り自動変速機オイル用熱交換器26に送られる。
【0084】
冷却液流路FL
2及び冷却液流路FL
3をX方向左側端部(気筒列方向の端部)まで流れた冷却液は、冷却液流路FL
7を通りシリンダヘッド1bへと送られる。
【0085】
図7に示すように、ブロックウォータージャケット12内における冷却液の流れを、ウォータージャケットスペーサ30を基準としてみるとき、可変ウォーターポンプ20から送られてきた冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30における#1気筒のシリンダボア10aに対応する#1ボア上部30a
1及び#1ボア下部30a
2に向けて導入される。#1ボア上部30a
1に向けて導入された冷却液は、X方向の左右に分配され、右側に流れた冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30の#1ボア上部30a
1の外周面に沿って吸気側へと流れる。
【0086】
なお、#1ボア下部30a
2に向けて導入された冷却液の一部についても、ウォータージャケットスペーサ30の#1ボア下部30a
2の外周面に沿って吸気側へと流れる。
【0087】
一方、X方向左側に流れた冷却液は、連通部30iを通り、ウォータージャケットスペーサ30の内側(ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との間)に導かれる。そして、冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30の内側の冷却液流路FL
21をX方向左側へと導かれ、シリンダヘッド1bへと送られる。
【0088】
#1ボア下部30a
2に向けて導入された冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30の外側の冷却液流路FL
22をX方向左側へと導かれ、取出口14からEGRクーラ22に取り出される。上述のように、取出口14へ導かれる箇所は、リブ部30nが設けられた箇所付近であって、リブ部30nよりも上流である。
【0089】
本実施形態では、冷却液流路FL
21と冷却液流路FL
22とを纏めて、冷却液流路FL
2と呼んでいる。
【0090】
図7及び
図8に示すように、吸気側に回り込んだ冷却液は、冷却液流路FL
31と冷却液流路FL
32とをX方向左側へと導かれ、シリンダヘッド1bへと送られる。本実施形態では、冷却液流路FL
31と冷却液流路FL
32とを纏めて、冷却液流路FL
3と呼んでいる。
【0091】
図7及び
図8に示すように、吸気側において、冷却液流路FL
31を流れる冷却液は、連通部30jを通り、ウォータージャケットスペーサ30の内側(ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との間)に導かれる。そして、X方向左側(気筒列方向の端部)に導かれる。
【0092】
冷却液流路FL
32を流れる冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30の外側に沿ってX方向左側(気筒列方向の端部)に導かれる。この際、冷却液流路FL
32を流れる冷却液の一部は、自動変速機オイル熱交換器26、オイルクーラ27へと取り出される。
【0093】
6.EGRクーラ22及び冷却液流路FL
4の配設
EGRクーラ22及び冷却液流路FL
4の配設について、
図9を用い補足説明しておく。
図9は、シリンダブロック1aからEGRクーラ22に至る冷却液の流れを示す模式図である。
【0094】
図9に示すように、シリンダブロック1aのウォータージャケット12内においては、冷却液は#1気筒のシリンダボア10a側から#4気筒のシリンダボア10d側に向けて流れる。即ち、冷却液流路FL
2,FL
3では、冷却液はX方向右側から左側に向けて流れる。
【0095】
そして、上述のように、EGRクーラ22は、シリンダブロック1aに対してX方向左側に隣接して配置されている。このため、排気側の冷却液流路FL
22を流れてきた冷却液は、X方向左向きの流れ成分をもったままEGRクーラ22へと送られる。
【0096】
また、
図9の二点鎖線で囲んだ部分に示すように、取出口14に繋がる通路である取出部15は、#4気筒のシリンダボア10dにおけるY軸に沿った中心軸CL
4に沿って設けられている。即ち、取出部15は、Z方向からの平面視において、#4気筒のシリンダボア10dの最大径となる箇所を取出口14に向けて設けられている。
【0097】
このように取出部15を設けることにより、冷却液流路FL
22を流れてきた冷却液について、取出部15の接続箇所において冷却液が有しているY方向の流れ成分も活かして取出口14に向けて排出させることができる。
【0098】
また、
図9に示すように、本実施形態に係るエンジンでは、取出口14から取り出された冷却液は、当該取出口14よりもX方向左側の領域で配索された冷却液流路FL
4を通りEGRクーラ22へと導かれる。換言すると、冷却液流路FL
22での流れにおけるX方向左向きの流れ成分をそのまま活かしてEGRクーラ22へと冷却液を導くことができる。
【0099】
7.効果
本実施形態に係るエンジンの冷却システム2では、
図2,3,8を用い説明したように、エンジン本体1に対して水冷式熱交換器であるEGRクーラ22がX方向左側の領域(下流側領域)に配置されているとともに、エンジン本体1における取出口14とクーラ導入口22aとを接続する冷却液流路FL
4が取出口14よりもX方向左側の領域内で配索されている。即ち、本実施形態に係るエンジンの冷却システム2では、EGRクーラ22及冷却液流路FL
4が、エンジン本体1におけるブロックウォータージャケット12内を流れる冷却液に対して順方向となる側に配されている。
【0100】
従って、本実施形態に係るエンジンの冷却システム2では、EGRクーラ22に対して冷却液の流速の低下を抑制しながら冷却液の導入を行うことができ、可変ウォーターポンプ20の駆動抵抗の増大を抑制しながら、EGRクーラ22における高効率な冷却が可能である。
【0101】
また、本実施形態に係るエンジンの冷却システム2では、水冷式熱交換器であるEGRクーラ22に取り出される冷却液が、エンジン本体1のブロックウォータージャケット12において、ウォータージャケットスペーサ30の外周側を通るように流路(冷却液流路FL
22)を形成しているので、シリンダブロック1aにおけるシリンダボア壁からの熱の受熱が相対的に少ない状態の冷却液をEGRクーラ22に送ることができる。よって、本実施形態では、EGRクーラ22の冷却性能を更に高めることが可能となり、EGRクーラ22の小型化を図ることも可能である。
【0102】
本実施形態に係るエンジンの冷却システム2では、冷却液流路FL
21(第2流路)と冷却液流路FL
22(第1流路)とが連通部30iで連通した状態としているので、冷却液流路FL
22を流通する冷却液の一部が冷却液流路FL
21にも流れ込むこととなり、シリンダボア壁の冷却性能の低下を抑制することができる。
【0103】
本実施形態に係るエンジンの冷却システム2では、導入口13と取出口14とをシリンダブロック1aにおける同一の側壁に開口することとしているので、シリンダブロック1aのブロックウォータージャケット12内で冷却液の流速が高い状態で維持され、当該流速が高い状態で冷却液をEGRクーラ22に供給することができる。よって、本実施形態では、EGRクーラ22の冷却効率を更に高めるのに優位である。
【0104】
本実施形態に係るエンジンの冷却システム2では、
図9を用い説明したように、ブロックウォータージャケット12から取出口14に至る流路である取出部15を、#4気筒のシリンダボア10dの中心軸CL
4に沿って形成することとしているので、冷却液の流れがシリンダボア10dの外周から法線方向に向いて取出口14に流れる。よって、本実施形態では、EGRクーラ22へ供給する冷却液を、ブロックウォータージャケット12内における通液抵抗の低い箇所から取り出すことで、可変ウォーターポンプ20の駆動抵抗の増大を抑制するのに更に優位である。
【0105】
本実施形態に係るエンジンの冷却システム2では、#4気筒のシリンダボア10dに対応する部分に取出部15を設けているので、取出口14とEGRクーラ22とが互いに近い配置関係となり、中継配管(冷却液流路FL
4)を比較的短くすることができる。よって、本実施形態では、エンジン振動などによっても、取出口14とクーラ導入口22aとを接続する中継配管(冷却液流路FL
4)の耐久性低下を抑制することができる。また、シリンダブロック1aやエンジンの他の箇所への中継配管の支持箇所数を少なくすることができ、エンジンの組み立て時における作業性が優れる。
【0106】
本実施形態に係るエンジンの冷却システム2では、
図3を用い説明したように、EGRクーラ22の導入口22aが取出口14よりもZ方向上方に位置するようにしているので、仮にEGRクーラ22の冷却液通路内で気泡が発生した場合にあっても、当該気泡がブロックウォータージャケット12に戻ってしまうことが抑制される。
【0107】
また、本実施形態に係るエンジンの冷却システム2では、
図2を用い説明したように、EGRガスがEGRクーラ22に導入される部分(ガス導入部22b)を、GPF31のガス分岐部31aよりもZ方向上方に位置するようにしているので、EGRクーラ22のガス通路内で凝縮水が発生した場合にも、当該凝縮水(酸性の水)がEGRクーラ22内に留まることを抑制し、排気通路に戻すことができる。よって、本実施形態では、EGRクーラ22の耐久性を確保するのに優位である。
【0108】
[実施形態2]
実施形態2に係るエンジンの冷却システムについて、
図10を用い説明する。
図10では、エンジン本体4のシリンダブロック4aにおいて、ブロックウォータージャケット42a,42bにおける冷却液の流れを模式的に示す。なお、本実施形態において、図示及び説明を省略する構成については、上記実施形態1と同様の構成を採用している。
【0109】
図10に示すように、エンジン本体4は、上記実施形態1のエンジン本体1と同様に、X方向に直列に配置された#1〜#4気筒を備える。シリンダブロック4aには、各気筒に対応してシリンダボアが形成されている。
【0110】
シリンダブロック4aには、各シリンダボアを囲むようにシリンダライナが嵌め込まれており、シリンダライナの外周のシリンダボア壁41を囲むようにブロックウォータージャケット42a,42bが形成されている。排気側に設けられたウォータージャケットが排気側ウォータージャケット42aであり、吸気側に設けられたウォータージャケットが吸気側ウォータージャケット42bである。
【0111】
本実施形態では、可変ウォーターポンプから送られてきた冷却液が、冷却液流路FL
41を介して導入口43から排気側ウォータージャケット42aに導入される。また、シリンダブロック4aの側壁には、冷却液の一部をEGRクーラへ送るための取出口44と、冷却液の一部を自動変速機オイル用熱交換器に送るための取出口(不図示)と、が設けられている。取出口44には、冷却液流路FL
44が接続され、自動変速機オイル用熱交換器へ冷却液を送るために取出口にも、冷却液流路が接続されている。
【0112】
本実施形態に係るシリンダブロック4aのブロックウォータージャケット42a,42bにも、ウォータージャケットスペーサ50が挿入されている。ウォータージャケットスペーサ50の構成は、
図5を用い説明したウォータージャケットスペーサ30と同様である。
【0113】
本実施形態に係るブロックウォータージャケット42a,42bでの冷却液の流れは、導入口43から導入部を経て排気側ウォータージャケット42aに導入された冷却液が、X方向の左右に分配される。X方向左側に分配された冷却液は、一部が取出口44から冷却液流路FL
44に取り出され、残りが冷却液流路FL
42から吸気側ウォータージャケット42bの冷却液流路FL
43へと導かれる。
【0114】
導入された冷却液の内、X方向右側に分配された冷却液は、冷却液流路FL
47を介してシリンダヘッドへと送られる。また、吸気側ウォータージャケット42bの冷却液流路FL
43をX方向右側に向けて送られてきた冷却液も、冷却液流路FL
47を介してシリンダヘッドへと送られる。
【0115】
即ち、本実施形態に係るシリンダブロック4aでは、排気側ウォータージャケット42aの冷却液流路FL
42を流れる冷却液と、吸気側ウォータージャケット42bの冷却液流路FL
43を流れる冷却液とは、X方向において逆向きに流れることとなる。
【0116】
本実施形態に係るエンジンの冷却システムにおいても、排気側ウォータージャケット42aにおける#4気筒に対応する部分から取り出された冷却液が、X方向左側に配されたEGRクーラ22へと送られる。なお、冷却液流路FL
44の配索形態についても、上記実施形態1に係る冷却液流路FL
4と同様である。
【0117】
よって、本実施形態に係るエンジンの冷却システムでも、上記実施形態1の冷却システム2が奏する効果について同様に奏することができる。
【0118】
[変形例]
上記実施形態1及び上記実施形態2では、ウォータージャケットスペーサ30,50に設けたリブ部30l〜30nによって冷却液流路FL
22を規定することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ウォータージャケットスペーサにX方向に延びる溝部を形成することで、冷却液を導くこととしてもよい。また、冷却液流路FL
21と冷却液流路FL
22とをリブ部30lで区画する必要は必ずしもない。
【0119】
また、本発明では、ウォータージャケットスペーサは必須の構成要件ではない。シリンダブロックにおけるウォータージャケットで主流路(シリンダヘッドに導く流路)と副流路(水冷式熱交換器に導く流路)とを区画することとしてもよい。
【0120】
上記実施形態1では、ウォータージャケットスペーサ30における#1〜#4ボア上部30a
1〜30d
1の高さ#1気筒側から#4気筒側に向けて漸減する構成としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ボア上部の高さを気筒列方向に略同一とすることもできる。
【0121】
ただし、上記実施形態1のように、#1〜#4ボア上部30a
1〜30d
1の高さを気筒列方向に漸減させるようにすれば、冷却液流路FL
21を流れる冷却液が、#1気筒側から#4気筒側へと進むに従ってZ方向上方へと導かれ、シリンダヘッド1bへスムーズに冷却液を送るのに優位である。
【0122】
上記実施形態1及び上記実施形態2では、ウォータージャケットスペーサ30,50を一体形成したものを採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、2以上の要素の組み合わせを以ってウォータージャケットスペーサを構成することとしてもよい。上記実施形態1に係るウォータージャケットスペーサの形態の場合、#1気筒のシリンダボアに対応する部分と、#2〜#4気筒のシリンダボアに対応する部分とを別の部品として構成することなどが可能である。
【0123】
上記実施形態1及び上記実施形態2では、エンジン本体1,4における排気側の側壁に導入口13,43を開け、排気側ウォータージャケット12a,42aに対して導入部を接続することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、エンジン本体の吸気側の側壁に導入口を開け、吸気側ウォータージャケットに対して導入部を接続することとしてもよい。
【0124】
上記実施形態1及び上記実施形態2では、エンジン本体1,4として直列4気筒のガソリンエンジンを一例として採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、2気筒あるいは3気筒、あるいは5気筒以上のエンジンを採用することもできる。また、複数の気筒が直列配置されてなる部分を備えていればよく、例えば、V型やW型の4気筒以上のエンジン等を採用することもできる。
【0125】
上記実施形態1及び上記実施形態2では、シリンダブロック1a,4aのシリンダボアを囲むようにシリンダライナを嵌め込んだ構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。シリンダブロックに直接シリンダボアが設けられた構成のエンジンを採用することもできる。
【0126】
また、上記実施形態1及び上記実施形態2では、水冷式熱交換器の一例としてEGRクーラ22を適用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、自動変速機オイル熱交換器やオイルクーラなどに適用することも可能である。