(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コプレーナ回路を有する配線板に電磁波シールドシートを張り合わせ、マイクロストリップ回路を有する配線板の信号配線と、電磁波シールドシートの絶縁層とを積層し、マイクロストリップ回路の信号配線に10GHzのサイン波を流した際の、コプレーナ回路のクロストークが、−45dB未満であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の電磁波シールドシート。
請求項1〜5いずれか1項記載の電磁波シールドシート、カバーコート層、ならびに信号配線および絶縁性基材を有する配線板を備えることを特徴とするプリント配線板。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。尚、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、これに限定されるものではない。また、本明細書において「任意の数A〜任意の数B」なる記載は、当該範囲に数Aが下限値として、数Bが上限値として含まれる。また、本明細書における「シート」とは、JISにおいて定義される「シート」のみならず、「フィルム」も含むものとする。また、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。
【0012】
本発明に係る電磁波シールドシート10は、導電性接着剤層1、金属層2、絶縁層3がこの順に積層された積層体からなる。電磁波シールドシート10は、部品(不図示)上に導電性接着剤層1を配置し、接合処理により当該部品と接合することができる。接合処理は、接合できればよいが、熱処理または熱圧着処理が好適である。絶縁層3は、導電性接着剤層1、および金属層2を保護する役割を担い、金属層2より表層側に配置される。金属層2は、絶縁層3と導電性接着剤層1の間に挟持された層であり、主として電磁波をシールドする役割を担う。プリント配線板においては、部品内部の信号配線等から発生する電磁ノイズをシールドしたり、外部からの信号を遮蔽する役割を担う。
金属層2は、面積0.7〜5000μm
2の開口部4を100〜200000個/cm
2有し、かつ金属層の開口部において、数式(1)から求められるwが0.8〜2.2である。
開口部4は、絶縁層3と導電性接着剤層1が接着している箇所でもあり、ハンダリフロー耐性およびメッキ液耐性を向上させる役割を担う。また、後述するように開口部4と非開口部の面積から計算される開口率を所定の範囲に設定することで、ハンダリフロー耐性及びメッキ液耐性と、高い電磁波シールド性とを両立することができる。
【0013】
《金属層》
本発明の金属層は、電磁波および電界波を遮蔽する役割を担い、面積0.7〜5000μm
2の開口部を100〜200000個/cm
2有し、かつ金属層の開口部において、数式(1)から求められるwが0.8〜2.2であることを特徴とする。このような特定の開口部を有することにより、高い電磁波シールド性と、ハンダリフロー耐性およびメッキ液耐性との両立が可能となる。同時に反発力を下げることができる。
【0014】
<開口部>
本発明の金属層は全面に複数の開口部を有することを特徴とする。開口部はプリント配線板をハンダリフロー処理した際に、プリント配線板のポリイミドフィルムやカバーレイ接着剤に含まれる揮発成分を外部に逃がしカバーレイ接着剤および電磁波シールドシートの界面剥離による外観不良及び接続信頼性の低下を抑制する役割を担う。さらに
図1の断面模式図に示すように、開口部内部で絶縁層と導電性接着剤層が接着することにより、絶縁層/金属層/導電性接着剤層同士の界面の接着力がより向上し、メッキ液耐性及び、ハンダリフロー耐性がさらに向上する。
【0015】
開口部の一例を
図2に示す。
開口部の形状は例えば、円、楕円、四角、多角形、星形、台形等、必要に応じて各形状を形成することができるが、製造コスト及び膜の強靭性の観点から、円および、楕円が好ましい。
【0016】
開口部1個あたりの面積は0.7〜5000μm
2である。開口部の面積は10〜4000μm
2が好ましく、20〜2000μm
2がより好ましい。開口部面積を0.7μm
2以上とすることで、絶縁層と導電性接着剤層が接着良好となり、ハンダリフロー耐性及びメッキ液耐性が優れたものとなる。開口部面積を5000μm
2以下とすることで、高い電磁波シールド性に優れたものとすることができる。
【0017】
開口部の個数は、100〜200000個/cm
2であり、1000〜150000個/cm
2がより好ましい。開口部の個数を100個/cm
2以上とすることで揮発成分を効率的に外部に出しやすくなるためハンダリフロー耐性を向上させることができる。加えて反発力を低下できる。開口部の数を200000個/cm
2以下にすることで、高い電磁波シールド性を確保することができる。
【0018】
<開口率>
本発明における金属層の開口率は、0.05〜40%であることが好ましい。開口率は開口部の面積と個数から調整できる。また、開口率は下記式1から求められる。
(式1)
開口率(%)=単位面積あたりの開口部面積/(単位面積あたりの開口部面積+単位面積あたりの非開口部面積)×100
開口率の下限は、0.05%が好ましく、1%がより好ましい。開口率の上限は、40%が好ましく、35%がより好ましい。
開口率を0.05〜40%の範囲にすることで、ハンダリフロー耐性及びメッキ液耐性と、高い電磁波シールド性能を保持し、反発力を低下することができる。
【0019】
開口率の測定は、例えば金属層を面方向から垂直にレーザー顕微鏡及び走査型電子顕微鏡(SEM)で500〜2000倍に拡大した画像を用いて、開口部と非開口部を2値化し、単位面積当たりの2値化した色のピクセル数をそれぞれの面積とすることで求めることができる。
【0020】
<開口部の分散性(w)>
本発明の金属層は全面に複数の開口部を有し、さらにこの開口部が下記数式(1)から求められるwが0.8〜2.2である。より好ましくは1.0〜2.0であり、さらに好ましくは1.0〜1.8である。
【数1】
Wは、平均最近隣距離、E[W]は、平均最近隣距離の期待値であり、下記数式(2)および数式(3)によって求めることができる値である。
【数2】
【数3】
d
iは、開口部の中心点iから最近隣の開口部の中心点までの距離であり、nは、金属層の面積S中の開口部の個数である。
【0021】
数式(1)のwは、開口部の配列の分散性を表す指標であり、wが1よりも低い値では、開口部はクラスター状でムラのある分布をとり、wが1に近い場合ランダム配列で分散し、wが1より高い値では規則的に配列した分散状態であることを示している。
wを0.8以上にすることで、開口部をムラなく全面に形成することができ、メッキ液耐性、反発力およびハンダリフロー耐性が向上する。wを2.2以下にすることで、特定周波数の共振を抑制できるため、クロストークの悪化を抑制し電磁波シールド性が向上する。なお、メッシュパターン等であって、開口部が最も等間隔で規則的に分散配列している状態の場合、wは2.4となる。このようなwが2.4の場合も上述した通り、一部の周波数帯で共振を起こしやすく、電磁波シールド性が悪化する傾向がある。
【0022】
数式(2)の平均最近隣距離および、数式(3)の平均最近隣距離の期待値の算出方法について説明する。まず、開口部を有する金属層の平面画像を取得する。倍率は開口部が50から100個が認識できる倍率であればよく、例えば、1000〜50000倍の倍率で開口部画像を取り込む。次いで、10000μm
2等の任意の面積Sを設定し、その面積内にある開口部の個数nをカウントすることで、数式(3)の平均最近隣距離の期待値を算出する。開口部の分散性(w)を求めるための金属層の画像面積Sの設定は、開口部が少なくとも20個程度入る領域とすることが好ましい。
カウントした開口部毎に隣り合う開口部の最も近い距離すなわち最近隣距離を測定することで数式(2)の平均最近隣距離を求める。開口部の個数及び開口部同士の距離を測定する際には、開口部の中心点を基準とする。開口部の中心点は開口部を、面積が最小となるよう長方形で囲み、この長方形の4隅から引いた直線の交点を中心点とする。上記の測定を異なる3箇所で行いその平均値を用いてwを算出する。
【0023】
金属層の厚みは0.2〜5μmであることが好ましい。金属層の厚みは、0.5〜4.5μmがより好ましく、1〜4μmがさらに好ましい。金属層の厚みが1〜5μmの範囲にあることで高い電磁波シールド性能と反発力とのバランスを取ることが可能となる。
【0024】
金属層は、例えば金属箔、金属蒸着膜、金属メッキ膜を使用できる。
金属箔に使用する金属は、例えばアルミニウム、銅、銀、金等の導電性金属が好ましく、電磁波シールド性およびコストの面から銅、銀、アルミニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。銅は、例えば、圧延銅箔または電解銅箔を使用することが好ましく、電解銅箔がより好ましい。電解銅箔を使用すると金属層の厚みをより薄くできる。また、金属箔はメッキで形成してもよい。金属箔の厚みは1〜5μmが好ましく、1.5〜4μmがより好ましい。
【0025】
金属蒸着膜及び金属メッキ膜に使用する金属は、例えばアルミニウム、銅、銀、金が好ましく、銅、銀がより好ましい。金属蒸着膜および金属メッキ膜の厚みは、0.2〜3μmが好ましく、0.3〜2μmがより好ましい。
金属層は薄膜化の点から蒸着膜が好ましい。電磁波シールド性の点からは金属箔が好ましい。
【0026】
<金属層の製造方法>
開口部を有する金属層の製造方法は、例えば金属箔を機械的に打ち抜きをするパンチング方法、針状の突起を全面に突き刺し金属箔に開口部を形成する方法、金属箔上にパターンレジスト層を形成し金属箔をエッチングして開口部を形成する方法、スクリーン印刷によって所定のパターンに導電性ペーストを印刷する方法、所定のパターンでアンカー剤をスクリーン印刷しアンカー剤印刷面のみに金属メッキする方法、および特開2015‐63730号公報に記載されている製造方法等が適用できる。すなわち、支持体に水溶性、又は溶剤可溶性インクをパターン印刷し、その表面に金属蒸着膜を形成しパターンを除去する。その表面に離形層を形成し電解メッキすることでキャリア付開口部を有する金属層を得ることができる。
【0027】
《導電性接着剤層》
導電性接着剤層は、等方導電性接着剤層または異方導電性接着剤層から適宜選択できる。等方導電性接着剤層は、電磁波シールドシートを水平に置いた状態で、上下方向および水平方向に導電性を有する。また、異方導電性接着剤層は、電磁波シールドシートを水平に置いた状態で、上下方向のみに導電性を有する。
導電性接着剤層は、等方導電性あるいは異方導電性のいずれでもよく、異方導電性の場合、コストダウンが可能となるため好ましい。
導電性接着剤層は、導電性接着剤を使用して形成できる。導電性接着剤は、熱硬化性樹脂、硬化剤、および導電性微粒子を含む従来公知のものを任意に用いることが可能である。
【0028】
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂は、硬化剤と反応可能な官能基を複数有する樹脂である。官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、メトキシメチル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化カルボキシル基、シラノール基等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール系樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリ乳酸樹脂、オキサゾリン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、単独または2種類以上併用できる。
【0029】
これらの中でも屈曲性とハンダリフロー耐性の点から、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0030】
また、ポリアミド樹脂の中でも、窒素含有複素環およびアミド結合を有している樹脂であることが好ましい。ポリアミド樹脂が窒素含有複素環およびアミド結合を有することで、水素結合による金属表面への吸着力が向上するため、導電性微粒子の分散性向上、および金属層に対する接着力が向上する。そのため被着体との間で良好な接着界面が形成できるため電磁波シールドシートのハンダリフロー耐性及びメッキ液耐性が向上する。
【0031】
ポリアミド樹脂が含む窒素含有複素環は、一つの環構造中に窒素原子を1〜3個含むことが好ましく、2個がより好ましい。また窒素含有複素環の構造は、5員環、および6員環が好ましい。
このような窒素含有複素環は、例えばイミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾリン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、トリアゾール、トリアジン、メラミン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、プリン等が挙げられる。これらの中でもピペラジンが好ましい。本発明では、これらの窒素含有複素環を有するアミンをポリアミド樹脂の合成に使用することが好ましい。
【0032】
ポリアミド樹脂は、例えば、ジカルボン酸とジアミン等の脱水縮合反応よりアミド結合を形成する方法で合成するのが一般的であるところ、アミノカルボン酸の自己縮合反応させる方法、またはアミノカルボン酸の分子内環状化合物の開環重合させる方法、またはこれらの複合反応よりアミド結合を形成する方法等公知の方法でも合成できる。なお、合成時にジアミン以外のモノアミン、トリアミン等のアミン化合物を使用しても良い。
【0033】
ポリアミド樹脂への窒素含有複素環の導入は、公知の合成方法が利用できるところ、窒素含有複素環を有するジアミン、窒素含有複素環を有するアミノカルボン酸、窒素含有複素環を有するモノアミンを使用して合成することが好ましい。ポリアミド樹脂を合成するために窒素含有複素環を有しないジアミンを使用することも好ましい。これによりアミド樹脂の性質(耐熱性や柔軟性)を向上できる。
【0034】
窒素含有複素環は、アミン化合物の合計100モル%中に20〜100モル%使用することが好ましく、40〜100モル%がより好ましい。窒素含有複素環を20〜100モル%使用することでハンダリフロー耐性を向上させることができる。
【0035】
窒素複素環を有するアミン化合物は、窒素複素環の水中における酸解離定数(pKa)が3〜11であることが好ましい。pKaが3〜11であることでカルボン酸との反応速度が向上しアミド樹脂の収率が向上する。
【0036】
窒素含有複素環を有しないアミン化合物は、例えばエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、p−ジアミノメチルシクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、イソホロンジアミン、ダイマージアミン等の公知の化合物が挙げられる。
【0037】
ジカルボン酸は、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸は、アミド樹脂の溶剤に対する溶解性が向上するため好ましい。
【0038】
アミノカルボン酸は、例えば11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、4−アミノメチル安息香酸、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。また、アミノカルボン酸の分子内環状化合物として、例えばβ−ラクタム、ε−カプロラクタム、ラウリンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。
【0039】
また、ポリアミド樹脂は、アミド結合にホルマリンとアルコールとを付加させたN−アルコキシメチル基を形成することでアルコール可溶性が得られる。N−アルコキシメチル基を有することでポリアミド樹脂は、融点が低下し、可とう性が向上し、溶解性もより向上する。
【0040】
ポリアミド樹脂は、無溶剤下での一括仕込みで脱水縮合反応、脱アルコール反応、開環重合反応等により合成することができる。その際には、原料と一緒に予め水を仕込んでおき、この水を留去しながら脱水反応を行うこともできる。この反応は常圧下、減圧下のいずれで行ってもよい。ポリアミド樹脂の分子量及びアミン価は、ポリアミド樹脂を合成する際のジアミンとジカルボン酸との仕込み比率や反応時間及び減圧度を変更することで調整できる。
【0041】
熱硬化性樹脂の酸価は、1〜50mgKOH/gが好ましく、3〜30mgKOH/gがより好ましい。酸価を1〜50mgKOH/gとすることでハンダリフロー耐性がより向上する。
【0042】
熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、20000〜100000が好ましい。重量平均分子量は、20000〜100000とすることでメッキ液耐性を向上させることができる。
【0043】
熱硬化性樹脂は、導電性接着剤層の固形分中の含有量が、10〜80重量%配合することが好ましく、15〜80重量%がより好ましい。上記配合の範囲にすることで、ハンダリフロー耐性とメッキ液耐性を向上させることができる。
【0044】
<硬化剤>
硬化剤は、熱硬化性樹脂の官能基と反応可能な官能基を複数有している。硬化剤は、例えばエポキシ化合物、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、フェノール化合物、有機金属化合物等の公知の化合物が挙げられる。
硬化剤は、単独または2種類以上併用できる。
【0045】
硬化剤は、熱硬化性樹脂100重量部に対して各種1〜50重量部含むことが好ましく、3〜30重量部がより好ましく、3〜20重量部がさらに好ましい。
【0046】
<導電性微粒子>
導電性微粒子は、導電性接着剤層に導電性を付与する機能を有する。導電性微粒子は、素材としては、例えば金、白金、銀、銅およびニッケル等の導電性金属およびその合金、ならびに導電性ポリマーの微粒子が好ましく、価格と導電性の面から銀がより好ましい。
また単一素材の微粒子ではなく金属や樹脂を核体とし、核体の表面を被覆した被覆層を有する複合微粒子もコストダウンの観点から好ましい。ここで核体は、価格が安いニッケル、シリカ、銅およびその合金、ならびに樹脂から適宜選択することが好ましい。被覆層は、導電性金属または導電性ポリマーが好ましい。導電性金属は、例えば、金、白金、銀、ニッケル、マンガン、およびインジウム等、ならびにその合金が挙げられる。また導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリアセチレン等が挙げられる。これらの中でも価格と導電性の面から銀が好ましい。
【0047】
導電性微粒子の形状は、所望の導電性が得られればよく形状は限定されない。具体的には、例えば、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状、針状、棒状、ブドウ状が好ましい。また、これらの異なる形状の導電性微粒子を2種類混合しても良い。
導電性微粒子は、単独または2種類以上併用できる。
【0048】
導電性微粒子の平均粒子径は、D50平均粒子径であり、異方性を充分に確保する観点から、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、7μm以上とすることが更に好ましい。一方、導電性接着剤層の薄さと両立させる観点からは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下とすることが更に好ましい。D50平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置等により求めることができる。
【0049】
導電性微粒子は、熱硬化性樹脂の固形分100重量部に対して、10〜700重量部を配合することが好ましく、20〜500重量部がより好ましい。
含有量が20〜500重量部であることにより、ハンダリフロー耐性がより良好な電磁波シールドシートとすることができる。
【0050】
導電性接着剤は、他に任意成分としてシランカップリング剤、防錆剤、還元剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤などを配合できる。
【0051】
導電性接着剤は、これまで説明した材料を混合し攪拌して得ることができる。攪拌は、例えばディスパーマット、ホモジナイザー等に公知の攪拌装置を使用できる。
【0052】
導電性接着剤層の作製は、公知の方法を使用できる。例えば、導電性接着剤を剥離性シート上に塗工して乾燥することで導電層を形成する方法、または、Tダイのような押出成形機を使用して導電性接着剤をシート状に押し出すことで形成することもできる。
【0053】
塗工方法は、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等の公知の塗工方法を使用できる。塗工に際して、乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥工程は、例えば、熱風乾燥機、赤外線ヒーター等の公知の乾燥装置を使用できる。
【0054】
導電性接着剤層の厚みは、2〜100μmが好ましく、4〜50μmがより好ましく、6〜15μmがさらに好ましい。厚みが2〜100μmの範囲にあることでハンダリフロー耐性と、その他の物性とのバランスを取り易くなる。
【0055】
《絶縁層》
絶縁層は、従来公知の絶縁性樹脂組成物を使用して形成できる。
絶縁性樹脂組成物は、導電性接着剤で説明した熱硬化性樹脂および硬化剤を必要に応じて上記任意成分を含むことができる。なお、絶縁層および導電性接着剤層に使用する熱硬化性樹脂、硬化剤は、同一、または異なっていてもよい。
【0056】
絶縁性樹脂組成物は、導電性接着剤と同様の方法で得ることが出来る。
【0057】
また、絶縁層は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の絶縁性樹脂を成形したフィルムを使用することもできる。
【0058】
絶縁層の厚みは、通常2〜10μm程度である。
【0059】
導電接着剤層および絶縁層の未硬化時のガラス転移温度(Tg)は、それぞれ独立に、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましい。また、導電接着剤層と絶縁層のガラス転移温度(Tg)の温度の差分は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度(Tg)の差分が40℃以下であることで、後述する熱圧着時に金属層の開口部に導電接着剤層と絶縁層とが流入しやすくなりメッキ液耐性が向上する。また折り曲げ後の接続抵抗値の上昇が抑制される。
【0060】
《電磁波シールドシート》
本発明の電磁波シールドシートは、少なくとも絶縁層、開口部を有する金属層、および導電性接着剤層を備える。
本発明の電磁波シールドシートは、面積0.7〜5000μm
2の開口部を、100〜200000個/cm
2有する金属層を備えているため、特に高周波(例えば、100MHzから50GHz)の信号を伝送する配線板でクロストーク等をより抑制することができる。
【0061】
また、本発明の電磁波シールドシートは、コプレーナ回路を有する配線板に張り合わせ、マイクロストリップライン回路を有する配線板の信号配線と、電磁波シールドシートの絶縁層とを積層し、マイクロストリップライン回路の信号配線に10GHzのサイン波を流した際の、コプレーナ回路のクロストークが、−45dB未満である、という優れた電磁波シールド性を有することができる。
【0062】
具体的には、例えば以下のようにして、電磁波シールド性を評価することができる。
まず、コプレーナ回路を用意する。
コプレーナ回路とはポリイミドフィルム等の絶縁性基材の片面側に信号配線がプリントされた平面伝送回路の一つであり、本発明においてコプレーナ回路はポリイミドフィルム上に2本の信号配線を挟む形でグランド配線が平行に形成された回路を用いる。尚、前述したコプレーナ回路は、対向する面にグランド設置用のグランドパターンが、スルーホールを介して設置されている。
コプレーナ回路の信号配線と反対側の絶縁性基材面に電磁波シールドシートの導電接着剤層面を張り合わせ、熱圧着によって電磁波シールド層を形成する。
【0063】
次に、別途用意したマイクロストリップライン回路を有するプリント配線基板の信号配線をコプレーナ回路に形成した電磁波シールド層の絶縁層面に積層する。この時、信号配線が電磁波シールド層側になるよう積層し、測定用のテストピースが得られる。このテストピースのコプレーナ回路およびマイクロストリップライン回路に、ネットワークアナライザを接続し、マイクロストリップライン回路の信号配線に10MHzから20GHzのサイン波を流した際の、コプレーナ回路におけるクロストークを測定し、電磁波シールド性を評価することができる。
尚、上述のコプレーナ回路およびマイクロストリップライン回路上には、接着剤付きポリイミドカバーレイフィルムを貼りつけるが、ネットワークアナライザのプローブを接続するため回路の一部を露出させている。
【0064】
本発明において、マイクロストリップライン回路の信号配線に10GHzのサイン波を流した際の、コプレーナ回路のクロストークは、−45dB未満が好ましく、−50dB未満がより好ましく、−55dB未満がさらに好ましい。クロストークが−45dB未満になることで、高い電磁波シールド性を得ることができる。
【0065】
本発明の電磁波シールドシートは、反発力が30mN/mm 以下であることが好ましい。面積0.7〜5000μm
2の開口部を100〜200000個/cm
2有し、かつ金属層の開口部において、数式(1)から求められるwが0.8〜2.2である金属層を備えているため、金属層が有する反発力を低減し電磁波シールドシートとしての反発力を30mN/mm 以下にすることができる。上記の反発力とすることで、後述するプリント配線板のハンドリング性が向上し、狭い筐体内に実装した際に電子部品の不具合を低減する。
【0066】
電磁波シールドシートは、導電性接着剤層に含まれる熱硬化性樹脂と硬化剤が未硬化状態で存在し(Bステージ)、配線板と加熱圧着により硬化することで(Cステージ)、所望の接着強度を得ることが出来る。なお、前記未硬化状態は、硬化剤の一部が硬化した半硬化状態を含む。
【0067】
剥離性シートは、紙やプラスチック等の基材に公知の剥離処理を行ったシートである。
【0068】
なお電磁波シールドシートは、異物の付着を防止するため、導電性接着剤層および絶縁層に剥離性シートを貼り付けた状態で保存することが一般的である。
【0069】
電磁波シールドシートは、絶縁層、金属層、および導電性接着剤層のほかに、他の機能層を備えることができる。他の機能層とは、ハードコート性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、熱伝導性、低誘電率、高誘電率性または耐熱性等の機能を有する層である。
【0070】
本発明の電磁波シールドシートは、電磁波をシールドする必要がある様々な用途に使用できる。例えば、フレキシブルプリント配線板は元より、リジッドプリント配線板、COF、TAB、フレキシブルコネクタ、液晶ディスプレイ、タッチパネル等に使用できる。また、パソコンのケース、建材の壁および窓ガラス等の建材、車両、船舶、航空機等の電磁波を遮蔽する部材としても使用できる。
【0071】
<電磁波シールドシートの作製方法>
電磁波シールドシートの作製において、導電性接着剤層と金属層とを積層する方法は、公知の方法を使用できる。
例えば、(i)剥離性シート上に導電性接着剤層を形成し、銅キャリア付開口部を有する電解銅箔の電解銅箔面側に導電性接着剤層を重ねてラミネートした後に、銅キャリアを剥がす。そして、銅キャリアを剥がした面と、別途剥離性シート上に形成した絶縁層とを重ねてラミネートする方法、(ii)剥離性シート上に絶縁層を形成し、銅キャリア付開口部を有する電解銅箔の電解銅箔面側に絶縁層を重ねてラミネートした後に、銅キャリアを剥がす。そして、銅キャリアを剥がした面と、別途剥離性シート上に形成した導電性接着剤層とを重ねてラミネートする方法、(iii)銅キャリア付開口部を有する電解銅箔の電
解銅箔面側に絶縁性樹脂組成物を塗工して絶縁層を形成し剥離性シートを張り合わせる。その後銅キャリアを剥がし、別途剥離性シート上に形成した導電性接着剤層とを重ねてラミネートする方法、(iv)剥離性シート上に導電性接着剤層を形成し、銅キャリア付電解銅箔の電解銅箔面側に導電性接着剤層を重ねてラミネートした後に、銅キャリアを剥がす。そして、銅キャリアを剥がした面と、別途剥離性シート上に形成した絶縁層とを重ねてラミネートした後、針状の治具で電磁波シールドシートに開口部を形成する方法等が挙げられる。
【0072】
《プリント配線板》
本発明のプリント配線板は、電磁波シールドシート、カバーコート層、ならびに信号配線とグランド配線とを有する回路パターンおよび絶縁性基材を有する配線板を備えており、電磁波シールドシートが、絶縁層と金属層と導電性接着剤層とから構成され、前記金属層は、面積0.7〜5000μm
2の開口部を100〜200000個/cm
2有し、かつ金属層の開口部において、数式(1)から求められるwが0.8〜2.2である。
【0073】
本発明のプリント配線板において、電磁波シールド層は、絶縁層と金属層と導電性接着剤層とから構成される電磁波シールドシートを熱圧着してなり、
金属層は、面積0.7〜5000μm
2の開口部を、100〜200000個/cm
2有しており、かつ金属層の開口部において、数式(1)から求められるwが0.8〜2.2である。
配線板は、絶縁性基材の表面に信号配線とグランド配線とを有する回路パターンを有し、
前記配線板上に、信号配線とグランド配線とを絶縁保護し、グランド配線上の少なくとも一部に開口部を有するカバーコート層を形成し、
前記電磁波シールドシートの導電性接着剤層面を、前記カバーコート層上に配置した後、前記電磁波シールドシートを熱圧着し、金属層の開口部内部において、導電性接着剤層と絶縁層とを互いに流入させ開口部の内部で接着させることにより、製造することができる。
【0074】
また、例えば、電磁波シールド層は、絶縁層と金属層と導電性接着剤層とから構成される電磁波シールドシートを熱圧着してなり、
金属層は、面積0.7〜5000μm
2の開口部を100〜200000個/cm
2有しており、かつ金属層の開口部において、数式(1)から求められるwが0.8〜2.2である。
配線板は、絶縁性基材の表面に信号配線とグランド配線とを有する回路パターンを有し、裏面にグランドパターンを有し、スルーホールを介してグランド配線とグランドパターンが導通しており、
前記配線板の絶縁性基材表面上に、前記回路パターンを絶縁保護するカバーコート層を形成し、
前記電磁波シールドシートの導電性接着剤層面を、絶縁性基材裏面のグランドパターンを含む裏面全面に配置した後、前記電磁波シールドシートを熱圧着し、金属層の開口部内部において、導電性接着剤層と絶縁層とを互いに流入させ開口部の内部で接着させることにより、製造することができる。
【0075】
なお、スルーホールは、メッキ処理されていることが好ましい。
また、スルーホールの位置は、任意の場所に、任意の個数設けることができる。
【0076】
カバーコート層は、配線板の信号配線を覆い、外部環境から保護する絶縁材料である。カバーコート層は、熱硬化性接着剤付きポリイミドフィルム、熱硬化型もしくは紫外線硬化型のソルダーレジスト、または感光性カバーレイフィルムが好ましく、微細加工をするためには感光性カバーレイフィルムがより好ましい。またカバーコート層は、ポリイミド等の耐熱性と柔軟性を備えた公知の樹脂を使用するのが一般的である。カバーコート層の厚みは、通常10〜100μm程度である。
【0077】
回路パターンは、アースを取るグランド配線、電子部品に電気信号を送る信号配線を含み、両者は銅箔をエッチング処理することで形成することが一般的である。回路パターンの厚みは、通常1〜50μm程度である。
【0078】
絶縁性基材は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等の屈曲可能なプラスチックが好ましく、液晶ポリマーおよびポリイミドがより好ましい。これらの中でも高周波の信号を伝送するプリント配線板の用途を考慮すると比誘電率および誘電正接が低い液晶ポリマーがさらに好ましい。
配線板がリジッド配線板の場合、絶縁性基材の構成材料は、ガラスエポキシが好ましい。これらのような絶縁性基材を備えることで配線板は高い耐熱性が得られる。
【0079】
本発明のプリント配線板の一例について、
図1を参照して説明する。
電磁波シールドシート10は、絶縁層3、開口部を有する金属層2、導電性接着剤層1を含む構成である。
【0080】
カバーコート層8は、配線板の信号配線を覆い外部環境から保護する絶縁材料である。
【0081】
回路パターンは、アースを取るグランド配線5、電子部品に電気信号を送る信号配線6を含む。両者は銅箔をエッチング処理することで形成することが一般的である。
【0082】
電磁波シールドシート10と、配線板との加熱圧着は、温度150〜190℃程度、圧力1〜3MPa程度、時間1〜60分程度の条件で行うことが一般的である。加熱圧着により導電性接着剤層1とカバーコート層8が密着するとともに、導電性接着剤層1が流動して穴11を埋めることでグランド配線5との間で導通が取れる。さらに熱硬化性樹脂を使用した場合、加熱圧着により熱硬化性樹脂と硬化剤が反応する。
同時に金属層2の開口部4内部に導電接着剤層1と絶縁層3が流入し開口部4内部で接着し硬化する。開口部内部で接着し硬化することで、導電接着剤層1、金属層2、絶縁層3の接着強度が増強されメッキ液耐性が大幅に向上する。
なお、硬化を促進させるため、加熱圧着後に150〜190℃で30〜90分間ポストキュアを行う場合もある。なお、電磁波シールドシートは、加熱圧着後に電磁波シールド層ということがある。
【0083】
前記電磁波シールド層は配線基板の両面に形成することが、電磁波の漏れをより効果的に抑制できる点から好ましい。本発明の電磁波シールドシートは、絶縁層と金属層と導電性接着剤層とから構成され、前記金属層は、面積0.7〜5000μm
2の開口部を100〜200000個/cm
2有し、かつ金属層の開口部において、数式(1)から求められるwが0.8〜2.2であるため、両面に張り付けられ電磁波シールド層を形成した後、リフロー処理した場合においても、内部残留ガスを外部に排出するため発泡が生じない。加えて、本発明のプリント配線板における電磁波シールドシート10は電磁波を遮蔽する他に、グランド回路として利用でき、それにより、グランド回路の一部を省略し、プリント配線板の面積を縮小することでコストダウンが可能となり筐体内の狭い領域に組み込むことができる。
【0084】
また、信号配線に関して、特に限定するものではなく、一本の信号配線からなるシングルエンド、2本の信号配線からなる差動回路のどちらの回路にも使用可能であるが、差動回路がより好ましい。一方、プリント配線板の回路パターン面積に制約があり、グランド回路を並列に形成することが難しい場合においては、信号回路の横にはグランド回路を設けず、シールドシートをグランド回路として用いて、厚み方向にグランドを有するプリント配線板構造にすることもできる。
【0085】
本発明のプリント配線板は、液晶ディスプレイ、タッチパネル等のほか、ノートPC、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の電子機器に備える(搭載する)ことが好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」を其々表すものとする。
【0087】
なお、樹脂の酸価と重量平均分子量(Mw)とガラス転移温度(Tg)、導電性微粒子の平均粒子径、および金属層の開口部の分散性(w)の測定は次の方法で行なった。
【0088】
<樹脂の酸価の測定>
酸価はJIS K0070に準じて測定した。共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密
に量り採り、テトラヒドロフラン/エタノール(容量比:テトラヒドロフラン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、指示薬が淡紅色を30秒間保持した時を終点とした。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0089】
<樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF−604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0090】
<樹脂のガラス転移温度(Tg)>
Tgの測定は、示差走査熱量測定(メトラー・トレド社製「DSC−1」)によって測定した。
【0091】
<導電性微粒子の平均粒子径測定>
D50平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、導電性微粒子を測定して得た数値であり、粒子径累積分布における累積値が50%の粒子径である。なお、屈折率の設定は1.6とした。
【0092】
<開口部の分散性(w)の測定>
金属層の開口部が20個程度入るように、レーザー顕微鏡VK-X100(キーエンス
社製)を用いて2000倍の倍率で金属層の平面画像を取得した。
一例を挙げると、
図2は後述する銅箔15の開口部取得画像である。取得した画像から、画像内の金属層の面積S、開口部の個数nおよび開口部毎の最近隣距離を測定し、数式(2)数式(3)から、平均最近隣距離の期待値と平均最近隣距離を算出し、数式(1)によってwを求めた。
【0093】
続いて、実施例で使用した原料を以下に示す。
<原料>
導電性微粒子1:複合微粒子(核体の銅100重量部に対して銀が10重量部被覆されたデンドライト状の微粒子)平均粒径D50:11.0μm 福田金属箔粉工業社製
電解銅箔:「MT18SD−H(18μmの銅キャリアに3μmの電解銅箔)」(三井金属社製)
エポキシ化合物:「JER828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂 エポキシ当量=189g/eq)三菱化学社製
アジリジン化合物:「ケミタイトPZ−33」日本触媒社製
【0094】
<金属層>
表1に記載する銅キャリア付き銅箔1〜17を使用した。
【表1】
【0095】
<バインダー樹脂>
[合成例1]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸とテレフタル酸及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる数平均分子量(以下、「Mn」という)=1006であるジオール414部、ジメチロールブタン酸8部、イソホロンジイソシアネート145部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン27部、ジ−n−ブチルアミン3部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液816部を添加し、70℃で3時間反応させ、ポリウレタン樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、固形分30%であるポリウレタン樹脂(熱硬化性樹脂1)溶液を得た。重量平均分子量は54,000、Tgは−7℃、酸価は5mgKOH/gであった。
【0096】
[合成例2]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンカーボネートジオールとから得られるMn=981であるジオール390部、ジメチロールブタン酸16部、イソホロンジイソシアネート158部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン29部、ジ−n−ブチルアミン3部、2−プロノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液814部を添加し、70℃で3時間反応させ、ポリウレタン樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、固形分30%であるポリウレタン樹脂(熱硬化性樹脂2)溶液を得た。重量平均分子量は43,000、Tgは−5℃、酸価は10mgKOH/gであった。
【0097】
[合成例3]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとから得られるMn=1002であるジオール352部、ジメチロールブタン酸32部、イソホロンジイソシアネート176部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン32部、ジ−n−ブチルアミン4部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液810部を添加し、70℃で3時間反応させ、ポリウレタンポリウレア樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、固形分30%であるポリウレタン樹脂(熱硬化性樹脂3)溶液を得た。重量平均分子量は35,000、Tgは−1℃、酸価は21mgKOH/gであった。
【0098】
[合成例4]
攪拌機、温度計、滴下装置、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器に、水酸基価110mgKOH/gのポリテトラメチレングリコール101.1部、ジメチロールブタン酸21.9部、溶剤としてメチルエチルケトン60部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで加熱し、均一になるまで溶解した。続いてこの反応容器に、イソホロンジイソシアネート52.1部を投入し、80℃で8時間反応を行った。室温に冷却後、メチルエチルケトンで希釈することで固形分50%のカルボキシル基を含有するポリウレタン樹脂(熱硬化性樹脂4)溶液を得た。重量平均分子量は28,000、Tgは−10℃、酸
価は47mgKOH/gであった。
【0099】
[合成例5]
攪拌機、温度計、滴下装置、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器にメチルエチルケトン50部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でメタクリル酸3部、nーブチルメタクリレート32部、ラウリルメタクリレート65部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1部をメチルエチルケトン50部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を継続した後、室温まで冷却した。次いでメチルエチルケトンで希釈することで固形分30%のカルボキシル基を含有するアクリル樹脂(熱硬化性樹脂5)溶液を得た。重量平均分子量は27,000、Tgは−11℃、酸価は20mgKOH/gであった。
【0100】
[合成例6]
攪拌機、温度計、滴下装置、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器にメチルエチルケトン50部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でメタクリル酸3部、nーブチルメタクリレート72部、ラウリルメタクリレート25部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1部をメチルエチルケトン50部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を継続した後、室温まで冷却した。次いでメチルエチルケトンで希釈することで固形分30%のカルボキシル基を含有するアクリル樹脂(熱硬化性樹脂6)を得た。重量平均分子量は24,000、Tgは−40℃、酸価は20mgKOH/gであった。
【0101】
[合成例7]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオ−ル(クラレポリオールC−2020)193.8部、主鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化株式会社製)29.2部、溶剤としてトルエン350部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃ まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ化合物(YD−8125:新日鐵化学株式会社製:エポキシ当量=175g/eq)34.2部、触媒としてトリフェニルホスフィン4部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、側鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸15.21部を添加し、110℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分30%になるよう調整し、付加型ポリエステル樹脂溶液(熱硬化性樹脂7)を得た。重量平均分子量は50,
000、Tgは20℃、酸価は19mgKOH/gであった。
【0102】
[合成例8]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオ−ル(クラレポリオールC−2041)191.3部、主鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドHNA−100:新日本理化株式会社製)34.6部、溶剤としてトルエン350部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ化合物(YD−8125:新日鐵化学株式会社製:エポキシ当量=175g/eq)31.9部、触媒としてトリフェニルホスフィン4部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、側鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸16.78部を添加し、110℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分30%になるよう調整し、付加型ポリエステル樹脂(熱硬化性樹脂8)溶液を得た。重量平均分子量は132,000、Tgは−15℃、酸価は20mgKOH/gであった。
【0103】
[合成例9]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、ポリカーボネートジオ−ル(クラレポリオールC−2090)195.1部、主鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸(リカシッドTH:新日本理化株式会社製)29.2部、溶剤としてトルエン350部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃ まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコを110℃に昇温し、3時間反応させた。その後、40℃に冷却後、ビスフェノールA型エポキシ化合物(YD−8125:新日鐵化学株式会社製:エポキシ当量=175g/eq)26部、触媒としてトリフェニルホスフィン4部を添加して110℃に昇温し、8時間反応させた。室温まで冷却後、側鎖用の酸無水物基含有化合物としてテトラヒドロ無水フタル酸11.56部を添加し、110℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで固形分30%になるよう調整し、付加型ポリエステル樹脂溶液(熱硬化性樹脂9)を得た。重量平均分子量は15,00
0、Tgは−25℃、酸価は25mgKOH/gであった。
【0104】
[合成例10]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、セバシン酸54.5部、5−ヒドロキシイソフタル酸5.5部、ダイマージアミン「プリアミン1074」(クローダジャパン株式会社製、アミン価210.0mgKOH/g)148.4部、イオン交換水を100部仕込み、発熱の温度が一定になるまで撹拌した。温度が安定したら110℃まで昇温し、水の流出を確認してから、30分後に温度を120℃に昇温し、その後、30分ごとに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になったら、そのままの温度で3時間反応を続け、約2KPaの真空下で、1時間保持した。その後、温度を低下し、トルエン146部、2−プロパノール146部で希釈して、ポリアミド樹脂(熱硬化性樹脂11)溶液を得た。重量平均分子量は36,000、Tgは5℃、酸価は12mgKOH/gであった。
【0105】
[合成例11]
攪拌機及び還流脱水装置を備えたフラスコに、ジカルボン酸成分としてダイマー酸(クローダージャパン社製、Pripol1009)100重量部、及びジアミン成分としてピペラジン14.89重量部を仕込んだ。115℃/時間の割合で230℃にまで昇温し、6時間反応を継続してポリアミド樹脂(熱硬化性樹脂12)を得た。重量平均分子量は29,000、Tgは15℃、酸価は7mgKOH/gであった。
【0106】
合成例1〜11で得られたバインダー樹脂を表2に示す。
【表2】
【0107】
<導電性接着剤>
[導電性接着剤1]
固形分換算で熱硬化性樹脂2を100部、導電性微粒子1を60部、エポキシ化合物を10部、アジリジン化合物を0.5部容器に仕込み、不揮発分濃度が40%になるように混合溶剤(トルエン:イソプロピルアルコール=2:1(重量比))を加えディスパーで10分攪拌して導電性接着剤1を得た。
【0108】
[導電性接着剤2〜15]
表3および4に記載した樹脂、導電性微粒子、および硬化剤の種類、および配合量に変更した以外は、実施例1の導電性接着剤1と同様にして、導電性接着剤2〜15を得た。
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
[実施例1]
導電性接着剤1をバーコーターで乾燥厚みが10μmになるように剥離性シート上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで導電性接着剤層を得た。
尚、導電性接着剤層のガラス転移温度Tgは−3℃であった。
【0112】
別途、固形分換算で熱硬化性樹脂2を100部、エポキシ化合物10部およびアジリジン硬化剤1部を加えディスパーで10分攪拌することで絶縁性樹脂組成物1を得た。次いで得られた絶縁性樹脂組成物をバーコーターを使用して乾燥厚みが5μmになるように、銅箔1に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥した後、絶縁層に微粘着剥離性シートを張り合わせた。
尚、この絶縁層のガラス転移温度Tgは−5℃であった。
【0113】
次いで、銅箔1の銅キャリアを剥がし、銅箔面に導電性接着剤層を張り合わせることで、「剥離性シート/絶縁層/銅箔1/導電性接着剤層/剥離性シート」からなる電磁波シールドシートを得た。銅箔1と導電性接着剤層の貼り合せは、温度は90℃、圧力は3kgf/cm
2で、熱ラミネーターにより貼り合わせた。
【0114】
[実施例2〜15、比較例1〜3]
実施例1の銅箔1を表1に記載した銅箔2〜銅箔17または電解銅箔に変更した以外は、実施例1と同様に行うことで実施例2〜15、比較例1〜3の電磁波シールドシートをそれぞれ得た。
【0115】
[実施例16]
導電性接着剤2をバーコーターで乾燥厚みが10μmになるように剥離性シート上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで導電性接着剤層を得た。
【0116】
別途、固形分換算で熱硬化性樹脂2を100部、エポキシ化合物10部およびアジリジン硬化剤1部を加えディスパーで10分攪拌することで絶縁性樹脂組成物1を得た。次いで得られた絶縁性樹脂組成物1をバーコーターを使用して乾燥厚みが5μmになるように、銅箔4に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥した後、絶縁層に微粘着剥離性シートを張り合わせた。
尚、この絶縁層のガラス転移温度は−5℃であった。
【0117】
次いで、銅箔4の銅キャリアを剥がし、銅箔面に導電性接着剤層を張り合わせることで、「剥離性シート/絶縁層/銅箔1/導電性接着剤層/剥離性シート」からなる電磁波シールドシートを得た。銅箔4と導電性接着剤層の貼り合せは、温度は90℃、圧力は3kgf/cm
2で、熱ラミネーターにより貼り合わせた。
【0118】
[実施例17〜29]
実施例16のバインダー樹脂および導電性微粒子の量を表5〜8に記載した通りに変更した以外は、実施例12と同様に行うことで実施例17〜29の電磁波シールドシートをそれぞれ得た。
【0119】
得られた電磁波シールドシートを用いて、下記評価を行った。結果を表5〜8に示す。
なお、表7および8中の「*ガラス転移温度(Tg)差」とは、導電接着剤層と絶縁層のガラス転移温度(Tg)の温度の差分(℃)である。
*ガラス転移温度(Tg)差=|導電接着剤層のTg−絶縁層のTg|
【0120】
<ハンダリフロー耐性>
ハンダリフロー耐性は、電磁波シールドシートと溶融半田とを接触させた後の、外観変化の有無により評価した。ハンダリフロー耐性が高い電磁波シールドシートは、外観が変化しないが、ハンダリフロー耐性が低い電磁波シールドシートは、発泡や剥がれが発生する。
まず、幅25mm・長さ70mmの電磁波シールドシートの導電性接着剤層の剥離性シートを剥がし、露出した導電性接着剤層と、総厚64μmの金メッキ処理された銅張積層板(金メッキ0.3μm/ニッケルメッキ1μm/銅箔18μm/接着剤20μm/ポリイミドフィルム25μm)の金メッキ面を150℃、2.0MPa、30分の条件で圧着し、熱硬化させて積層体を得た。得られた積層体を幅10mm・縦65mmの大きさに切り取り試料を作製した。得られた試料を40℃、90%RHの雰囲気下で72時間放置した。その後、試料のポリイミドフィルム面を下にして250℃の溶融半田上に1分間浮かべ、次いで試料を取り出し、その外観を目視で観察し、発泡、浮き、剥がれ等の異常の有無を次の基準で評価した。
◎:外観変化全く無し。
〇:小さな発泡がわずかに観察される。
△:小さな発泡が多数観察される。
×:激しい発泡や剥がれが観察される。
【0121】
<電磁波シールド性>
電磁波シールド性は、クロストークを測定して評価した。クロストークは以下の測定用試料を用いて評価した。
(コプレーナ回路を有する配線板の製造)
図3に、測定に用いたコプレーナ回路を有するフレキシブルプリント配線板(以下、コプレーナ回路を有する配線板ともいう)20の主面側の模式的平面図を、
図4に、裏面側の模式的平面図を示す。まず、厚さ50μmのポリイミドフィルム50の両面に、厚さ12μmの圧延銅箔を積層した両面CCL「R−F775」(パナソニック社製)を用意した。そして、矩形状の4つのコーナー部近傍に、其々6か所のスルーホール51(直径0.1mm)を設けた。尚、図中においては、図示の便宜上、各コーナー部にスルーホール51を2つのみ示している。次いで、無電解メッキ処理を行った後に、電解メッキ処理を行って10μmの銅メッキ膜52を形成し、スルーホール51を介して両主面間の導通を確保した。その後、
図3に示すように、ポリイミドフィルム50の主面に長さが10cmの2本の信号配線53、およびその外側に信号配線53と並行なグランド配線54、およびグランド配線54から延在され、ポリイミドフィルム50短手方向のスルーホール51を含む領域にグランドパターン(i)55を形成した。
【0122】
その後、ポリイミドフィルム50の裏面に形成された銅箔をエッチングして、グランドパターン(i)55に対応する位置に、
図4に示すような裏面側グランドパターン(ii)56を得た。回路の外観、公差の検査仕様はJPCA規格(JPCA−DG02)とした。次に、ポリイミドフィルム50の主面側に、ポリイミドフィルム8a(厚さ12.5μm)と絶縁性接着剤層8b(厚さ15μm)とで構成されるカバーコート層8「CISV1215(ニッカン工業社製)」を貼り付けた(
図3参照)。尚、
図3においては、信号配線53等の構造がわかるように、カバーコート層8を透視図で示した。その後、カバーコート層8から露出した銅箔パターンにニッケルメッキ(不図示)を行い、次いで金メッキ(不図示)処理を行った。
【0123】
次に
図5に示すように、導電性接着剤層1、金属層2、絶縁層3の積層体からなる電磁波シールドシート10を用意し、電磁波シールドシート10の導電性接着剤層1上に設けられた剥離処理シート(不図示)を剥がした。そして、電磁波シールドシート10の導電性接着剤層1を内側としてコプレーナ回路を有する配線板20の裏全面側に、150℃、2.0MPa、30分の条件で圧着することにより電磁波シールドシート付きコプレーナ回路を有する配線板20を得た。
図5においては、裏面側グランドパターン(ii)56を透視図で示した。
【0124】
(マイクロストリップライン回路を有する配線板の製造)
別途、
図6及び
図7に示すようにマイクロストリップライン回路を有する配線板30を作製した。まず、厚さ12μmの圧延銅箔を積層した両面CCL「R−F775」(パナソニック社製)を用意した。そして、一方の面に長さが10cmの2本の信号配線35をエッチングによって形成した。回路の外観、公差の検査仕様はJPCA規格(JPCA−DG02)とした。次に、信号配線35側に、ポリイミドフィルム31a(厚さ12.5μm)と絶縁性接着剤層31b(厚さ15μm)とで構成されるカバーレイ31「CISV1215(ニッカン工業社製)」を貼り付けた(
図6参照)。尚、
図6においては、信号配線35等の構造がわかるように、カバーレイ31を透視図で示した。その後、カバーレイ31から露出した信号配線35にニッケルメッキ(不図示)を行い、次いで金メッキ(不図示)処理を行った。また、ポリイミドフィルム33の裏面側にはグランド層34が設けられている。
【0125】
(テストピースの作製)
次いで、マイクロストリップライン回路を有する配線板30の信号配線35側とコプレーナ回路を有する配線板20の電磁波シールドシート10側とが接触するように積層させ治具で固定した。積層体の模式的平面図を
図8及び
図9に示す。
図8は
図3のXI−XI切断部断面図に相当し、
図9は
図3のXII−XII切断部断面図に相当する。
マイクロストリップライン回路を有する配線板30の露出した信号配線35と、コプレーナ回路を有する配線板20の露出した信号配線53にネットワークアナライザE5071C(アジレント・ジャパン社製)を接続し、マイクロストリップライン回路を有する配線板30の信号配線35には10MHz〜20GHzのサイン波を入力し、その時のコプレーナ回路を有する配線板20におけるクロストークを測定し、この値によって電磁波シールド性の影響を確認した。
尚、信号配線35のL/S(ライン/スペース)は特性インピーダンスが±5Ωに入るよう適宜調整した。グランド配線54の幅は100μm、グランド配線54と信号配線53の間の距離は1mmとした。
実施例9、11及び、比較例2の測定データを
図11に示す。
測定したクロストークを下記の基準で評価した。
◎:10GHzにおけるクロストークが−55dB未満
〇:10GHzにおけるクロストークが−55dB以上、−45dB未満
×:10GHzにおけるクロストークが−45dB以上
【0126】
<メッキ液耐性>
幅40mm・長さ40mmの電磁波シールドシートの導電性接着剤層の剥離性シートを剥がし、露出した導電性接着剤層と、幅50mm・長さ50mmカプトン500Hを150℃、2.0MPa、30分の条件で圧着し、熱硬化させて積層体を得た。得られた積層体の電磁波シールドシートの絶縁層側に、JISK5400に準じてクロスカットガイドを使用し、間隔が1mmの碁盤目を100個作成した。その後、10%塩酸水溶液に20分浸漬させ、水洗いを行った後乾燥させた。碁盤目部に粘着テープを強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を下記の基準で判断した。
◎:どの格子の目も剥がれない。
〇:カットの交差点における塗膜の小さな剥がれ。明確に5%を上回らない。
△:塗膜がカットの線に沿って部分的、全面的に剥がれている。15%以上35%未満。×:塗膜がカットの線に沿って部分的、全面的に剥がれている。35%以上。
【0127】
<反発力>
反発力はJPCA−TM002 8.4.2に記載の試験条件に準じてスティフネス(stiffness)値を測定して評価した。JPCA−TM002 8.4.2に記載のパターンA(L/S:1.0/1.0mm、ライン数:3往復(六本))の片面CCLを用意した。次いで、電磁波シールドシートを幅2cm・長さ6cmの大きさに準備し試料とした。導電性接着剤層側の剥離性シートを剥がし、前述の片面CCLと150℃、2MPa、30minの条件で圧着させた後、幅1.5cm、長さ3cmにカットして絶縁層側の剥離性シートを剥がし、JPCA−TM002 8.4.2に記載の試験条件にてスティフネス(stiffness)値を測定した。なお結果は以下の判定基準に従い評価した。なお、反発力が高すぎると、例えばFPCを折り曲げて電子機器の内部に収納する場合、FPCの信号配線に負担が掛かり、断線する恐れがあるなどのデメリットがある。
◎ : 反発力が50mN/mm未満。非常に良好な結果である。
○ : 反発力が50mN/mm以上、100mN/mm未満。良好な結果である。
△ : 反発力が100mN/mm以上、150mN/mm未満。実用上問題ない。
× : 反発力が150mN/mm以上。実用不可。
【0128】
<折り曲げ後の接続信頼性>
電磁波シールドシートを幅20mm、長さ50mmの大きさに準備し試料25とした。
図10(1)の平面図を示して説明すると電磁波シールドシート25から剥離性シートを剥がし、露出した導電性接着剤層25bを、別に作製したフレキシブルプリント配線板(厚み25μmのポリイミドフィルム21上に、互いに電気的に接続されていない厚み18μmの銅箔回路22A、および銅箔回路22Bが形成されており、銅箔回路22A上に、厚み37.5μmの、直径1.6mmのスルーホール24を有する接着剤付きポリイミドカバーレイ23が積層された配線板)に150℃、2MPa、30分の条件で圧着し、電磁波シールドシートの導電性接着剤層25bおよび絶縁層25aを硬化させることで試料を得た。次いで、試料の絶縁層25a側の剥離性シートを除去し、
図10(4)の平面図に示す22A−22B間の初期接続抵抗値を、三菱化学製「ロレスターGP」のBSPプローブを用いて測定した。その後、
図10(4)の平面図に示すE−E’に沿って山折りを10回繰り返した後、22A−22B間の折り曲げ後の接続抵抗値を測定した。下記式で算出した値を折り曲げ後の接続信頼性として評価した。なお、
図10(2)は、
図10(1)のD−D’断面図、
図10(3)は
図10(1)のC−C’断面図である。同様に
図10(5)は、
図10(4)のD−D’断面図、
図10(6)は
図10(4)のC−C’断面図である。折り曲げ後の接続信頼性の評価基準は以下の通りである。
折り曲げ後の接続信頼性(%)=折り曲げ後の接続抵抗値/初期接続抵抗値×100
◎:200%未満 非常に良好な結果である。
○:200%以上400%未満 良好な結果である。
△:400%以上600%未満 実用上問題ない。
×:600%以上 実用不可
【0129】
【表5】
【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】