(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体としては、架橋性ケイ素基を有する有機重合体であれば特に制限はない。本発明では、主鎖がポリシロキサンでない有機重合体であり、ポリシロキサンを除く各種の主鎖骨格を有する有機重合体が、入手が容易であり、かつ、電気用途分野において接点障害の要因となる低分子環状シロキサンを含有せず、若しくは発生させない点で好ましい。
【0018】
(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体の主鎖骨格の例としては、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、又はラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体;(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーをラジカル重合して得られるビニル系重合体;有機重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ポリアミド系重合体;ポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体等が挙げられる。これらの骨格は、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体の中に単独で含まれていても、2種類以上がブロック若しくはランダムに含まれていてもよい。
【0019】
更に、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン等の飽和炭化水素系重合体や、ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから好ましい。また、ポリオキシアルキレン系重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、透湿性が高く、1液型組成物にした場合に深部硬化性に優れることから特に好ましい。
【0020】
(A)成分中の架橋性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得る基である。架橋性ケイ素基としては、一般式(1)で示される基が好ましい。
【0022】
式(1)中、R
1は有機基を示す。R
1は、炭素数が1〜20の炭化水素基が好ましい。これらの中でR
1は特にメチル基が好ましい。R
1は置換基を有していてもよい。Xは水酸基、又は加水分解性基を示し、Xが2個以上存在する場合、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。aは1、2又は3の整数のいずれかである。硬化性を考慮し、十分な硬化速度を有する光硬化性組成物を得る観点からは、式(1)においてaは2以上が好ましく、3がより好ましい。十分な柔軟性を有する光硬化性組成物を得る観点からは、aは2が好ましい。
【0023】
Xで示される加水分解性基としては、F原子以外であれば特に限定されない。例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの中では、加水分解性が穏やかで取扱やすいという観点からアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ない基の方が反応性が高い。メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなるほどに反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが、通常、メトキシ基やエトキシ基が用いられる。
【0024】
架橋性ケイ素基の具体的な構造としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基[−Si(OR)
3]、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基[−SiR
1(OR)
2]が挙げられ、トリアルコキシシリル基[−Si(OR)
3]が反応性が高い点で好適であり、トリメトキシシリル基がより好適である。ここでRはメチル基やエチル基のようなアルキル基である。本発明に係る光硬化性組成物は、反応性が高いトリメトキシシリル基を有する重合体を用い、かつ、100℃程度の高温に加熱しても硬化が進行せず優れた安定性を示す。このように熱的には安定にもかかわらず、光照射により速やかに硬化する。したがって、光硬化性組成物の製造には架橋性ケイ素基としてはトリメトキシシリル基が最も好ましい。
【0025】
また、架橋性ケイ素基は1種で使用してもよく、2種以上併用してもよい。架橋性ケイ素基は、主鎖又は側鎖あるいはいずれにも存在しうる。
【0026】
架橋性ケイ素基を有する有機重合体は直鎖状、又は分岐を有してもよい。その数平均分子量はGPCにおけるポリスチレン換算において500〜100,000程度、より好ましくは1,000〜50,000であり、特に好ましくは3,000〜30,000である。数平均分子量が500未満では、硬化物の伸び特性の点で不十分な傾向があり、100,000を超えると、高粘度となるために作業性が低下する傾向がある。なお、光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の柔軟性を確保する観点からは、数平均分子量は高いことが望ましい。
【0027】
高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物を得るためには、架橋性ケイ素基を有する有機重合体に含有される架橋性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して0.8個以上、好ましくは1.0個以上、より好ましくは1.1〜5個存在することが好ましい。分子中に含まれる架橋性ケイ素基の数が、平均して0.8個未満になると、硬化性が不充分になり、良好なゴム弾性を発現しにくくなる。また、架橋密度を低下させる観点からは、分子中に含まれる架橋性ケイ素基の数が平均して1.0個以下の有機重合体を併用することが好ましい。架橋性ケイ素基は、有機重合体分子鎖の主鎖の末端若しくは側鎖の末端にあっても、また、両方にあってもよい。特に、架橋性ケイ素基が分子鎖の主鎖の末端にのみある場合、最終的に形成される硬化物に含まれる有機重合体成分の有効網目長が長くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。
【0028】
ポリオキシアルキレン系重合体は、本質的に一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
−R
2−O−・・・(2)
一般式(2)中、R
2は炭素数が1〜14の直鎖状若しくは分岐アルキレン基であり、炭素数が1〜14の直鎖状若しくは分岐アルキレン基が好ましく、炭素数が2〜4の直鎖状若しくは分岐アルキレン基が更に好ましい。
【0029】
一般式(2)で示される繰り返し単位の具体例としては、−CH
2CH
2O−、−CH
2CH(CH
3)O−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位から構成されてもよく、2種類以上の繰り返し単位から構成されてもよい。
【0030】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法の例としては、KOH等のアルカリ触媒による重合法、複金属シアン化物錯体触媒による重合法等が挙げられるが、特に限定されない。複金属シアン化物錯体触媒による重合法によれば数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いポリオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0031】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格中にはウレタン結合等の他の結合を含んでいてもよい。ウレタン結合としては、例えば、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートと水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体との反応から得られる結合を挙げることができる。
【0032】
分子中に不飽和基、水酸基、エポキシ基、又はイソシアネート基等の官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を有する官能基、並びに架橋性ケイ素基を有する化合物を反応させることで、ポリオキシアルキレン系重合体へ架橋性ケイ素基を導入できる(以下、高分子反応法という)。
【0033】
高分子反応法の例として、不飽和基含有ポリオキシアルキレン系重合体に架橋性ケイ素基を有するヒドロシランや、架橋性ケイ素基を有するメルカプト化合物を作用させてヒドロシリル化やメルカプト化し、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得る方法を挙げることができる。不飽和基含有ポリオキシアルキレン系重合体は水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有するポリオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
【0034】
また、高分子反応法の他の例として、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体とイソシアネート基、並びに架橋性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法や、末端にイソシアネート基を有するポリオキシアルキレン系重合体と水酸基やアミノ基等の活性水素基、並びに架橋性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法を挙げることができる。イソシアネート化合物を用いると、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を容易に得ることができる。
【0035】
架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0036】
飽和炭化水素系重合体は芳香環を除く他の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体である。その骨格を有する重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等の炭素数が2〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させるか、(2)ブタジエン、イソプレン等のジエン系化合物を単独重合させるか、あるいは、ジエン系化合物とオレフィン系化合物とを共重合させた後、水素添加する等の方法により得ることができる。イソブチレン系重合体や水添ポリブタジエン系重合体は、末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすく、また、末端官能基の数を多くすることができるので好ましい。イソブチレン系重合体が特に好ましい。主鎖骨格が飽和炭化水素系重合体は耐熱性、耐候性、耐久性、及び湿気遮断性に優れる特徴を有する。
【0037】
イソブチレン系重合体は、単量体単位の全てがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、他単量体との共重合体でもよい。ゴム特性の面からは、イソブチレンに由来する繰り返し単位を50質量%以上含有する重合体が好ましく、80質量%以上含有する重合体がより好ましく、90〜99質量%含有する重合体が特に好ましい。
【0038】
飽和炭化水素系重合体の合成法としては、各種重合方法が挙げられる。特に、様々なリビング重合が開発されている。飽和炭化水素系重合体、特にイソブチレン系重合体は、Kennedyらによって見出されたイニファー重合(J.P.Kennedyら、J.Polymer Sci., Polymer Chem. Ed. 1997年、15巻、2843頁)により容易に製造できる。この重合法によれば、分子量500〜100,000程度、分子量分布1.5以下の重合体を得ることができ、分子末端に各種官能基を導入できる。
【0039】
架橋性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体の製法の例としては、安定な炭素陽イオンを生成する有機ハロゲン化合物とフリーデルクラフツ酸触媒との組合せを共重合開始剤として用いるカチオン重合法が挙げられる。一例として、特公平4−69659号に開示されているイニファー法が挙げられる。
【0040】
架橋性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体は、単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の主鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、各種のモノマーを用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー;脂環式(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;芳香族(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸の誘導体;フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体では、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと共に、以下のビニル系モノマーを共重合することもできる。ビニル系モノマーを例示すると、スチレン、無水マレイン酸、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0043】
これらは、単独で用いても、複数を共重合させてもよい。更に、架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを併用することで、(メタ)アクリル酸エステル系重合体中の架橋性ケイ素基の数を制御できる。接着性が良いことからメタクリル酸エステルモノマーからなるメタクリル酸エステル系重合体が特に好ましい。また、低粘度化、柔軟性の付与、粘着性の付与をする場合、アクリル酸エステルモノマーを適時用いることが好適である。なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合反応を用いたラジカル重合法を用いることができる。ラジカル重合法の例としては、重合開始剤を用いて所定の単量体単位を共重合させるラジカル重合法(フリーラジカル重合法)や、末端等の制御された位置に架橋性ケイ素基を導入できる制御ラジカル重合法が挙げられる。重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物等を用いるフリーラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなる。したがって、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るためには、制御ラジカル重合法を用いることが好適である。
【0045】
制御ラジカル重合法の例としては、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合法やリビングラジカル重合法が挙げられる。付加−開裂移動反応(Reversible Addition-Fragmentation chain Transfer;RAFT)重合法、遷移金属錯体を用いたラジカル重合法(Transition-Metal-Mediated Living Radical Polymerization)等のリビングラジカル重合法がより好ましい。また、反応性シリル基を有するチオール化合物を用いた反応や、反応性シリル基を有するチオール化合物及びメタロセン化合物を用いた反応も好適である。
【0046】
架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0047】
これらの架橋性ケイ素基を有する有機重合体は、単独で用いても、2種以上併用してもよい。具体的には、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、架橋性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体、並びに架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる群から選択される2種以上をブレンドした有機重合体も用いることができる。特に架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とをブレンドした有機重合体が優れた特性を有している。このような重合体を光硬化性組成物に適用すると、硬化物の引張せん断接着力、及び粘着力を高めることができる。
【0048】
架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とをブレンドした有機重合体の製造方法としては、様々な方法が挙げられる。例えば、架橋性ケイ素基を有し、分子鎖が実質的に、一般式(3):
−CH
2−C(R
3)(COOR
4)− ・・・(3)
(式中、R
3は水素原子又はメチル基、R
4は炭素数が1〜5のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、一般式(4):
−CH
2−C(R
3)(COOR
5)− ・・・(4)
(式中、R
3は前記に同じ、R
5は炭素数が6以上のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体に、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体をブレンドして製造する方法が挙げられる。
【0049】
一般式(3)のR
4としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数が1〜5、好ましくは炭素数が1〜4、更に好ましくは炭素数が1〜2のアルキル基が挙げられる。なお、R
4のアルキル基は単独でもよく、2種以上混合していてもよい。
【0050】
一般式(4)のR
5としては、例えば、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数が6以上、通常は炭素数が7〜30、好ましくは炭素数が8〜20の長鎖のアルキル基が挙げられる。なお、R
5のアルキル基はR
4の場合と同様、単独でも2種以上混合してもよい。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の分子鎖は実質的に式(3)及び式(4)の単量体単位からなる。ここで、「実質的に」とは、共重合体中に存在する式(3)及び式(4)の単量体単位の合計が50質量%を超えることを意味する。式(3)及び式(4)の単量体単位の合計は好ましくは70質量%以上である。また式(3)の単量体単位と式(4)の単量体単位との存在比は、質量比で95:5〜40:60が好ましく、90:10〜60:40が更に好ましい。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は、600〜10,000が好ましく、600〜5,000がより好ましく、1,000〜4,500が更に好ましい。数平均分子量をこの範囲とすることにより、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体との相溶性が向上する。(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、単独で用いても、2種以上併用してもよい。架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体との配合比には特に制限はないが、(メタ)アクリル酸エステル系重合体とポリオキシアルキレン系重合体との合計100質量部に対して、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が10〜60質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは20〜50質量部の範囲内であり、更に好ましくは25〜45質量部の範囲内である。(メタ)アクリル酸エステル系重合体が60質量部より多いと粘度が高くなり、作業性が悪化するため好ましくない。
【0053】
更に、架橋性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体とをブレンドした有機重合体も用いることができる。架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をブレンドして得られる有機重合体の製造方法としては、他にも、架橋性ケイ素基を有する有機重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合する方法を利用できる。
【0054】
(B)成分である粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ロジンエステル樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、キシレンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂等の極性基を有する樹脂や、比較的極性の小さい芳香族系、脂肪族−芳香族共重合体系、又は脂環式系等の各種石油樹脂、若しくはクマロン樹脂、低分子量ポリエチレン樹脂、テルペン樹脂、及びこれらを水素添加した樹脂等の粘着付与樹脂を用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0055】
芳香族系石油樹脂の例として、α−メチルスチレン単一重合樹脂[FTR Zeroシリーズ、三井化学(株)製]、スチレン系モノマー単一重合樹脂[FTR 8000シリーズ、三井化学(株)製]、スチレン系モノマー/芳香族系モノマー共重合系樹脂[FMRシリーズ、三井化学(株)製]、α−メチルスチレン/スチレン共重合系樹脂[FTR 2000シリーズ、三井化学(株)製]等の芳香族系スチレン樹脂や、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合系樹脂[FTR 6000シリーズ、三井化学(株)製]、スチレン系モノマー/α−メチルスチレン/脂肪族系モノマー共重合系樹脂[FTR 7000シリーズ、三井化学(株)製]等の脂肪族−芳香族共重合体系スチレン樹脂が挙げられる。
【0056】
(A)架橋性ケイ素基を有する有機重合体に対する相溶性の観点から、粘着付与樹脂は、Hoyの定数を用いたSmall法により算出した溶解度パラメータ(以下、原則「SP値」と略記する)が、7.9〜11.0が好ましく、8.2〜9.8がより好ましく、8.5〜9.5が最も好ましい。感圧接着剤の接着力の観点から、被着体の極性に合わせた極性を有する樹脂を選択することが好ましい。粘着付与樹脂を極性の低い被着体に用いる場合は、極性の低い粘着付与樹脂を用いることが好ましく、極性の高い被着体に用いる場合は、極性の高い粘着付与樹脂を用いることが好ましい。極性が高い被着体から極性の低い被着体まで幅広い被着体に粘着付与樹脂を用いる場合には、極性の低い粘着付与樹脂と極性の高い粘着付与樹脂とを混合して用いることが好ましい。なお、テルペンフェノール樹脂の極性(SP値)は、YSポリスター(ヤスハラケミカル社製)UシリーズのSP値8.69、TシリーズのSP値8.81、SシリーズのSP値8.98、GシリーズのSP値9.07、KシリーズのSP値9.32である。極性(SP値)を選択することにより、極性の低い被着体から極性の高い被着体まで、様々な極性の被着体に適応できる。
【0057】
粘着付与樹脂としては、架橋性ケイ素基を有する有機重合体との相溶性がよく、光硬化性組成物のUV未照射時の加熱安定性がよい観点からテルペンフェノール樹脂や芳香族系石油樹脂が好ましい。芳香族系石油樹脂としては芳香族系スチレン樹脂、脂肪族−芳香族共重合体系スチレン樹脂が好ましく、脂肪族−芳香族共重合体系スチレン樹脂がより好ましい。加熱安定性と共に粘着力が優れている観点からは、テルペンフェノール樹脂が最も好ましい。また、VOC及びフォギングの観点からは、脂肪族−芳香族共重合体系スチレン樹脂を用いることが好ましい。
【0058】
粘着付与樹脂(B)の使用量は、(A)成分100質量部に対して10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。10質量部未満では粘着力が不十分であり、150質量部より多いと硬化物が硬くなりすぎて粘着力が不十分であり、また粘度が高くなり作業性が低下してしまう。
【0059】
(C)Si−F結合を有するケイ素化合物としては、Si−F結合を有するケイ素基(以下、フルオロシリル基と称することがある)を含む様々な化合物を用いることができる。(C)成分のケイ素化合物として無機化合物及び有機化合物のいずれも用いることができる。(C)成分としてフルオロシリル基を有する有機化合物が好ましく、フルオロシリル基を有する有機重合体が、安全性が高くより好適である。また、光硬化性組成物が低粘度となる点からフルオロシリル基を有する低分子有機ケイ素化合物が好ましい。
【0060】
(C)Si−F結合を有するケイ素化合物の好適な例としては、式(5)で示されるWO2015−088021号公報に記載のフルオロシラン、式(6)で示されるWO2015−088021号公報に記載のフルオロシリル基を有する化合物(以下、フッ素化化合物とも称する)、及びWO2015−088021号公報に記載のフルオロシリル基を有する有機重合体(以下、フッ素化ポリマーとも称する)等が挙げられる。
【0061】
R
64−dSiF
d ・・・(5)
(式(5)において、R
6はそれぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数が1〜20の炭化水素基、又はR
7SiO−(R
7はそれぞれ独立に、炭素数が1〜20の置換若しくは非置換の炭化水素基、又はフッ素原子である)で示されるオルガノシロキシ基のいずれかを示す。dは1〜3のいずれかであり、dが3であることが好ましい。R
6及びR
7が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0062】
−SiF
dR
6eZ
f ・・・(6)
(式(6)中、R
6及びdはそれぞれ式(5)と同一であり、Zはそれぞれ独立して水酸基又はフッ素を除く他の加水分解性基であり、eは0〜2のいずれかであり、fは0〜2のいずれかであり、d+e+fは3である。R
6、R
7及びZが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0063】
式(5)で示されるフルオロシランの例としては、フルオロジメチルフェニルシラン、ビニルトリフルオロシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリフルオロシラン、オクタデシルトリフルオロシラン等が挙げられる。
【0064】
式(6)で示されるフルオロシリル基を有する化合物において、Zで示される加水分解性基としては、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基が好ましく、R
6としては、メチル基が好ましい。
【0065】
式(6)で表されるフルオロシリル基を例示すると、フッ素以外に加水分解性基を有さないケイ素基やR
6がメチル基であるフルオロシリル基が好ましく、トリフルオロシリル基がより好ましい。
【0066】
式(6)で示されるフルオロシリル基を有する化合物としては、特に限定されず、低分子化合物、高分子化合物のいずれも用いることができる。例えば、無機ケイ素化合物;ビニルジフルオロメトキシシラン、ビニルトリフルオロシラン、フェニルジフルオロメトキシシラン、フェニルトリフルオロシラン等の低分子有機ケイ素化合物;末端に式(6)で示されるフルオロシリル基を有するフッ素化ポリシロキサン等の高分子化合物が挙げられる。式(5)で示されるフルオロシランや、主鎖又は側鎖の末端に式(6)で示されるフルオロシリル基を有する重合体が好適である。
【0067】
フッ素化ポリマーとしては、Si−F結合を有する様々な有機重合体を用いることができる。
【0068】
フッ素化ポリマーは、フルオロシリル基、及び主鎖骨格が同種である単一の重合体、すなわち、1分子あたりのフルオロシリル基の数、その結合位置、及びフルオロシリル基が有するFの数、並びに主鎖骨格が同種である単一の重合体であってもよい。また、これらのいずれか、又は全てが異なる、複数の重合体の混合物であってもよい。これらのフッ素化ポリマーはいずれも、速硬化性を示す光硬化性組成物の樹脂成分として作用する。
【0069】
フッ素化ポリマーは直鎖状であってもよく、又は分岐を有してもよい。フッ素化ポリマーの数平均分子量は、GPCにおけるポリスチレン換算において3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは3,000〜50,000であり、特に好ましくは3,000〜30,000である。
【0070】
(C)Si−F結合を有するケイ素化合物の配合割合は特に制限はないが、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体100質量部に対して、0.01〜30質量部が好ましく、0.05〜20質量部がより好ましい。成分(C)としてフッ素化ポリマー等の数平均分子量3,000以上の高分子化合物を用いる場合は、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体100質量部に対して、0.01〜80質量部が好ましく、0.01〜30質量部がより好ましく、0.05〜20質量部が更に好ましい。成分(C)として数平均分子量3,000未満のフルオロシリル基を有する低分子化合物(例えば、式(5)で示されるフルオロシラン類や式(6)で示されるフルオロシリル基を有する低分子有機ケイ素化合物、フルオロシリル基を有する無機ケイ素化合物等)を用いる場合は、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。
【0071】
(D)光塩基発生剤は、光を照射すると(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体の硬化触媒として作用する。(D)光塩基発生剤は、紫外線、電子線、X線、赤外線、及び可視光線等の活性エネルギー線の作用により塩基及び/又はラジカルを発生する。(1)紫外線・可視光・赤外線等の活性エネルギー線の照射により脱炭酸して分解する有機酸と塩基の塩、(2)分子内求核置換反応や転位反応等により分解してアミン類を放出する化合物、若しくは(3)紫外線・可視光・赤外線等のエネルギー線の照射により所定の化学反応を起こして塩基を放出する化合物等の公知の(D)光塩基発生剤を用いることができる。(D)光塩基発生剤から発生する塩基が(A)成分を硬化させる機能を有する。
【0072】
(D)光塩基発生剤から発生する塩基としては、例えば、アミン化合物等の有機塩基が好ましく、例として、WO2015−088021号公報記載の第1級アルキルアミン類、第1級芳香族アミン類、第2級アルキルアミン類、2級アミノ基及び3級アミノ基を有するアミン類、第3級アルキルアミン類、第3級複素環式アミン、第3級芳香族アミン類、アミジン類、ホスファゼン誘導体が挙げられる。このうち、第3級アミノ基を有するアミン化合物が好ましく、強塩基であるアミジン類、ホスファゼン誘導体がより好ましい。アミジン類は非環状アミジン類及び環式アミジン類のいずれも用いることができ、環式アミジン類がより好ましい。これら塩基は単独で用いても、2種以上組み合わせてもよい。
【0073】
非環状アミジン類としては、例えば、WO2015−088021号公報記載のグアニジン系化合物、ビグアニド系化合物等が挙げられる。また、非環状アミジン化合物の中でも、例えば、WO2015−088021号公報記載のアリール置換グアニジン系化合物、若しくはアリール置換ビグアニド系化合物を発生する光塩基発生剤は、重合体(A)の触媒として用いた場合、表面の硬化性が良好となる傾向を示すこと、得られる硬化物の接着性が良好となる傾向を示すこと等から好ましい。
【0074】
環式アミジン類としては、例えば、WO2015−088021号公報記載の環式グアニジン系化合物、イミダゾリン系化合物、イミダゾール系化合物、テトラヒドロピリミジン系化合物、トリアザビシクロアルケン系化合物、ジアザビシクロアルケン系化合物が挙げられる。
【0075】
環式アミジン類のうち、工業的に入手が容易である点や、共役酸のpKa値が12以上であり、高い触媒活性を示す点から、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)が特に好適である。
【0076】
(D)光塩基発生剤としては、様々な光塩基発生剤を用いることができる。活性エネルギー線の作用によりアミン化合物を発生する光潜在性アミン化合物が好ましい。光潜在性アミン化合物としては、活性エネルギー線の作用により第1級アミノ基を有するアミン化合物を発生する光潜在性第1級アミン、活性エネルギー線の作用により第2級アミノ基を有するアミン化合物を発生する光潜在性第2級アミン、及び活性エネルギー線の作用により第3級アミノ基を有するアミン化合物を発生する光潜在性第3級アミンのいずれも用いることができる。発生塩基が高い触媒活性を示す点からは、光潜在性第3級アミンがより好適である。
【0077】
光潜在性第1級アミン及び光潜在性第2級アミンの例としては、WO2015/088021号公報記載のオルトニトロベンジルウレタン系化合物;ジメトキシベンジルウレタン系化合物;カルバミン酸ベンゾイン類;o−アシルオキシム類;o−カルバモイルオキシム類;N−ヒドロキシイミドカルバマート類;ホルムアニリド誘導体;芳香族スルホンアミド類;コバルトアミン錯体等が挙げられる。
【0078】
光潜在性第3級アミンの例としては、WO2015−088021号公報記載のα−アミノケトン誘導体、α−アンモニウムケトン誘導体、ベンジルアミン誘導体、ベンジルアンモニウム塩誘導体、α−アミノアルケン誘導体、α−アンモニウムアルケン誘導体、アミンイミド類、光によりアミジンを発生するベンジルオキシカルボニルアミン誘導体、及びカルボン酸と3級アミンとの塩等が挙げられる。
【0079】
α−アミノケトン化合物の例としては、5−ナフトイルメチル−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナン、5−(4’−ニトロ)フェナシル−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナン等のアミジン類を発生するα−アミノケトン化合物、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン(イルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン(イルガキュア369)、2−(4−メチルベンジル)−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン(イルガキュア379)等の一個の窒素原子で構成される第3級アミン基を有する第3級アミン類を発生するα−アミノケトン化合物が挙げられる。
【0080】
α−アンモニウムケトン誘導体の例としては、1−ナフトイルメチル−(1−アゾニア−4−アザビシクロ[2,2,2]−オクタン)テトラフェニルボレート、5−(4’−ニトロ)フェナシル−(5−アゾニア−1−アザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0081】
ベンジルアミン誘導体の例としては、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナン、5−(アントラセン−9−イル−メチル)−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナン、5−(ナフト−2−イル−メチル)−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0082】
ベンジルアンモニウム塩誘導体の例としては、(9−アントリル)メチル1−アザビシクロ〔2.2.2〕オクタニウムテトラフェニルボレート、5−(9−アントリルメチル)−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕−5−ノネニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0083】
α−アミノアルケン誘導体との例しては、5−(2’−(2”−ナフチル)アリル)−1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナン等が挙げられる。
【0084】
α−アンモニウムアルケン誘導体の例としては、1−(2’−フェニルアリル)−(1−アゾニア−4−アザビシクロ[2,2,2]−オクタン)テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0085】
光によりアミジンを発生するベンジルオキシカルボニルアミン誘導体の例としては、WO2015−088021号公報記載のベンジルオキシカルボニルイミダゾール類、ベンジルオキシカルボニルグアニジン類、ジアミン誘導体等が挙げられる。
【0086】
カルボン酸と3級アミンとの塩の例としては、WO2015−088021号公報記載のα−ケトカルボン酸アンモニウム塩、及びカルボン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0087】
(D)光塩基発生剤の中でも、発生塩基が高い触媒活性を示す点から光潜在性第3級アミンが好ましく、塩基の発生効率が高いこと及び組成物としての貯蔵安定性が良いこと等から、ベンジルアンモニウム塩誘導体、ベンジル置換アミン誘導体、α−アミノケトン誘導体、α−アンモニウムケトン誘導体が好ましい。特に、塩基の発生効率がより良いことから、α−アミノケトン誘導体、α−アンモニウムケトン誘導体がより好ましく、光硬化性組成物に対する溶解性よりα−アミノケトン誘導体がより好ましい。α−アミノケトン誘導体の中でも発生塩基の塩基性の強さよりアミジン類を発生するα−アミノケトン化合物がよく、入手のしやすさより一個の窒素原子で構成される第3級アミン基を有する第3級アミン類を発生するα−アミノケトン化合物が挙げられる。
【0088】
これら(D)光塩基発生剤は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。(D)光塩基発生剤の配合割合は特に制限はないが、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、0.1〜40質量部がより好ましく、0.2〜15質量部が更に好ましい。硬化触媒として用いられる(D)光塩基発生剤とSi−F結合を有するケイ素化合物(C)との配合割合は、(D):(C)が質量比で1:0.008〜1:300が好ましく、1:0.016〜1:40がより好ましい。
【0089】
感圧接着剤を製造する光硬化性組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤(接着性付与剤)、光増感剤、フィラー、希釈剤、可塑剤、水分吸収剤、(C)成分や(D)成分を除く他の縮合反応促進触媒、エポキシ基を有する化合物、ラジカル重合性の官能基を有する化合物、引張特性等を改善する物性調整剤、補強剤、着色剤、難燃剤、タレ防止剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤、香料、顔料、染料、導電性粉、熱伝導性粉、蛍光体、ワックス等の各種添加剤を加えてもよい。
【0090】
シランカップリング剤は接着性付与剤として作用する。シランカップリング剤の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン型シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等の塩素原子含有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート含有シラン類;デシルトリメトキシシラン等のアルキルシラン類;フェニルトリメトキシシラン等のフェニル基含有シラン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、アミノ基含有シラン類と上記のシラン類を含むエポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、(メタ)アクリロイル基含有化合物とを反応させて、アミノ基を変性した変性アミノ基含有シラン類を用いてもよい。
【0091】
アミノ基含有シラン類はシラノール縮合触媒として作用し、ケチミン型シラン類は水分の存在下でアミノ基含有シラン類を生成し、これはシラノール縮合触媒として作用する。したがって、アミノ基含有シラン類やケチミン型シラン類以外のシランカップリング剤を使用することが好ましい。また、アミノ基含有シラン類やケチミン型シラン類を使用する場合、本発明の目的・効果が達成される範囲で種類や使用量に注意して使用すべきである。
【0092】
上記のようにアミノ基含有シラン類やケチミン型シラン類は本発明において使用が制限される場合がある。しかし、接着性付与剤としてアミノ基含有シラン類やケチミン型シラン類を使用することが望ましい場合には、光照射前にはアミノ基を有する化合物を発生せず、光照射によりアミノ基含有シラン類を発生する化合物(以下、光アミノシラン発生化合物とも称する)を使用することができる。光アミノシラン発生化合物としては、WO2015−088021号公報記載の光官能基が、o−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、オキシム残基、ベンジル基、及びベンゾイル基や置換されたこれらの基等である化合物が挙げられる。光官能基がo−ニトロベンジル基である光アミノシラン発生化合物の例としては、2−ニトロベンジル−N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメイト、2−ニトロベンジル−N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]カルバメイト、3,4−ジメトキシ−2−ニトロベンジル−N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメイト等が挙げられる。光官能基がp−ニトロベンジル基である光アミノシラン発生化合物の例としては、4−ニトロベンジル−N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメイト等が挙げられる。光官能基がベンジル基である光アミノシラン発生化合物の例としては、1−(3,5−ジメトキシフェニル)−1−メチルエチル−N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメイトが等挙げられる。光官能基がオキシム残基基である光アミノシラン発生化合物の例としては、ベンゾフェノンO−{[3−(トリメトキシシリル)プロピル]}オキシム等が挙げられる。
【0093】
シランカップリング剤の配合割合は特に制限はないが、組成物中に0.01〜20質量%が好ましく、0.025〜10質量%がより好ましい。これらシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
光増感剤としては、225−310kJ/molの三重項エネルギーをもつカルボニル化合物が好ましく、例えば、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等のチオキサントンとその誘導体、9,10−ジブトキシアントラセン等のジアルコキシアントラセン誘導体、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチル等のベンゾフェノンとその誘導体、3−アシルクマリン、3,3′−カルボニルビスクマリン等のクマリン誘導体等が挙げられ、チオキサントンとその誘導体及びクマリン誘導体が好ましく、チオキサントンとその誘導体、ベンゾフェノンとその誘導体、及びクマリン誘導体がより好ましい。
【0095】
光増感剤の配合割合は特に制限はないが、光硬化性組成物中に0.01〜5質量%が好ましく、0.025〜2質量%がより好ましい。これら光増感剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
フィラーとしては樹脂フィラー(樹脂微粉末)や無機フィラーを使用することができる。樹脂フィラーとしては、有機樹脂等からなる粒子状のフィラーを用いることができる。例えば、樹脂フィラーとして、ポリアクリル酸エチル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂系、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等の有機質微粒子を用いることができる。
【0097】
樹脂フィラーは、単量体(例えば、メタクリル酸メチル)等を懸濁重合させること等によって容易に得られる真球状のフィラーが好ましい。また、樹脂フィラーは、組成物に充填材として好適に含有されるので、球状の架橋樹脂フィラーが好ましい。なお、感圧接着剤を液晶表示装置の周辺部等の遮光性が要求される用途に用いる場合は、樹脂フィラーが黒色の樹脂フィラーを含むことが好ましい。平均粒子径1〜150μmの黒色の樹脂フィラーを用いることにより、単一波長のLEDランプ等を用いた場合においても良好な硬化性を得ることができ、優れた遮光性と硬化性とを達成できる。
【0098】
無機フィラーとしては、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ素、含水ケイ素、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
希釈剤を配合することにより、光硬化性組成物の粘度等の物性を調整することができる。希釈剤としては、公知の希釈剤を広く用いることができ、特に制限はないが、例えば、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和炭化水素系溶剤、HSダイマー(豊国製油株式会社商品名)等のα−オレフィン誘導体、芳香族炭化水素系溶剤、ダイアセトンアルコール等のアルコール系溶剤、エステル系溶剤、クエン酸アセチルトリエチル等のクエン酸エステル系溶剤、ケトン系溶剤等の各種溶剤が挙げられる。
【0100】
希釈剤の引火点に特に制限はないが、組成物の安全性を考慮すると、組成物の引火点は高い方が望ましく、組成物からの揮発物質は少ない方が好ましい。そのため、希釈剤の引火点は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。2種以上の希釈剤を混合する場合、混合した希釈剤の引火点が70℃以上であることが好ましい。なお、一般的に引火点が高い希釈剤は組成物に対する希釈効果が低くなる傾向があるので、引火点は250℃以下であることが好適である。
【0101】
組成物の安全性、希釈効果の双方を考慮すると、希釈剤としては飽和炭化水素系溶剤が好適であり、ノルマルパラフィン、イソパラフィンがより好適である。ノルマルパラフィン、イソパラフィンの炭素数は10〜16であることが好ましい。
【0102】
希釈剤の配合割合は特に制限はないが、配合による塗工作業性向上と物性低下とのバランスの観点から、組成物中に0〜25%配合することが好ましく、0.1〜15%配合することがより好ましく、1〜7%配合することが更に好ましい。これら希釈剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
可塑剤としては、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類、グリセリンモノオレイル酸エステル等の脂肪族一塩基酸エステル類、アジピン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸エステル類、ポリプロピレングリコール類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
水分吸収剤としては、前述したシランカップリング剤やシリケートが好適である。シリケートとしては、特に限定されず、例えば、テトラメトキシシラン、テトラアルコキシシラン等及びその部分加水分解縮合物があげられる。
【0105】
(C)成分や(D)成分を除く他の縮合反応促進触媒としては、公知の縮合反応促進触媒を広く用いることができ、特に制限はないが、例えば、有機金属化合物、酸やアミン等の塩基が挙げられる。有機金属化合物の例としては、有機錫化合物;ジアルキルスズオキサイド;ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等;チタン酸エステル類;有機アルミニウム化合物類;チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;有機酸ビスマス、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素の錯体、フッ素化剤、及び多価フルオロ化合物のアルカリ金属塩等が挙げられる。シラノール縮合触媒としては、様々なその他の酸性触媒及び塩基性触媒等が挙げられる。シラノール縮合触媒として公知のその他の酸性触媒及び塩基性触媒等が挙げられる。しかしながら、有機錫化合物は添加量に応じて、得られる組成物の毒性が強くなる場合がある。本発明の(C)成分や(D)成分が縮合反応促進触媒として作用するため、これら以外の硬化触媒を使用する場合は本発明の目的や効果を達成できる範囲で使用するのが好ましい。
【0106】
感圧接着剤を製造する光硬化性組成物にはエポキシ化合物を添加することができる。感圧接着剤はシリコン離型紙やシリコン離型層を有する基材と共に用いられることが多い。しかし、本発明の(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有する光硬化性組成物の硬化物を感圧接着層として使用した感圧接着剤において、シリコン離型紙を用いると離型紙剥離後の感圧接着剤としての特性、特に粘着性、が低下する場合がある。ところが、(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有する光硬化性組成物にさらにエポキシ化合物を添加するとシリコン離型紙剥離後の感圧接着剤としての特性が低下しないことが判明した。
【0107】
エポキシ化合物の例としては分子中に1個のエポキシ基を有する化合物(以下、単官能エポキシ化合物ともいう)や分子中に複数のエポキシ基を有する化合物であるエポキシ樹脂を挙げることができる。単官能エポキシ化合物の例としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル、エポキシ炭化水素化合物、脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。グリシジルエーテル化合物としては、アルキルモノグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、直鎖アルコールモノグリシジルエーテル、ポリグリコールグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等の架橋性ケイ素基を有しないグリシジルエーテル化合物;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のグリシジルエーテル基含有シラン化合物が挙げられる。
【0108】
エポキシ炭化水素化合物の例としては、1,2エポキシドデカン、スチレンオキシド等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物の例としては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランシクロヘキサンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル等の脂環式エポキシ化合物;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等の脂環式エポキシ基含有シラン化合物が挙げられる。
【0109】
分子中に複数のエポキシ基を有する化合物であるエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノールF系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、グリシジルエステル系化合物、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化SBS(SBSは、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を示す。)等が挙げられる。
【0110】
エポキシ化合物の中では、グリシジルエーテル基含有シラン化合物や脂環式エポキシ基含有シラン化合物のようなエポキシ基と架橋性ケイ素基の双方を有するエポキシ化合物が好ましい。なお、エポキシ基と架橋性ケイ素基の双方を有するエポキシ化合物はシランカップリング剤でもある。エポキシ化合物を使用する場合その配合割合は、(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜10質量部がさらに好ましい。
【0111】
ラジカル重合性の官能基を有する化合物としては、ラジカル重合性のビニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択される少なくとも1つの基を有する有機化合物が挙げられる。特に、ビニル基を有する有機化合物を用いることが好ましい。更にラジカル重合性の官能基は、アクリロイル基、及びメタクリロイル基からなる群から選択される少なくとも1つの基であってもよい。有機化合物として、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び窒素原子にビニル基が直接結合したN−ビニル化合物を用いることができる。ラジカル重合性の官能基を有する化合物を添加した場合、光照射直後の剥離強度を高めることができる。
【0112】
ラジカル重合性の官能基を有する化合物を使用する場合、光ラジカル発生剤を併用してもよい。光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾインエーテル誘導体、ベンジルケタール誘導体、α―ヒドロキシアセトフェノン誘導体、α―アミノアセトフェノン誘導体等のアリールアルキルケトン類、アシルホスフィンオキシド類、チタノセン類、オキシムケトン類、チオ安息香酸S−フェニル類、及びそれらを高分子量化した誘導体が挙げられる。
【0113】
本発明の光硬化性組成物を製造する方法は特に制限はなく、例えば、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を所定量配合し、また、必要に応じて他の配合物質を配合し、脱気攪拌することにより製造することができる。各成分及び他の配合物質の配合順は特に制限はなく、適宜決定すればよい。この光硬化性組成物は、必要に応じて1液型とすることもできるし、2液型とすることもできるが、特に1液型として好適に用いることができる。
【0114】
感圧接着テープ等の感圧接着剤は、支持体に光硬化性組成物を塗工することにより製造する。光硬化性組成物を塗工する支持体としては、紙、プラスチックフィルム(PETフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィンフィルム)、不織布、発泡体基材、及び剥離処理した紙、又はプラスチックフィルム等を用いることができる。剥離処理剤としては、例えば、フッ素化合物、シリコーン等を用いることができる。この支持体は可撓性を有していることが好ましい。
【0115】
このような支持体の少なくとも一方の面に、上記光硬化性組成物を塗工する。この光硬化性組成物の塗工厚は、適宜選択することができるが、通常は1〜300μm、好ましくは5〜250μm、特に好ましくは10〜200μm程度である。また、基材の厚さは、通常は10〜3000μm、好ましくは12〜200μm、特に好ましくは20〜150μm程度である。
【0116】
上記のような支持体の少なくとも一方の面に光硬化性組成物をロールコーター、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビアコーター、メイヤーバーコーター等を用いて塗工する。塗工する際の光硬化性組成物の粘度は1〜200Pa・s、好ましくは1〜100Pa・s、特に好ましくは1〜30Pa・sの範囲内にあることが望ましい。
【0117】
本発明に使用する光硬化性組成物はUV未照射時の加熱時安定性が良い。すなわち加熱しても(A)成分の硬化反応が進行せず光硬化性組成物の粘度が上昇したり、ゲル化することがない。従って、所定の被着体に塗工する前に加熱することができる。光硬化性組成物は加熱しながら塗工することにより望ましい粘度範囲に調整され、優れた塗工作業性が得られる。塗工温度は50℃以上が好ましく、70℃以上が好ましく、75〜120℃が最も好ましい。
【0118】
こうして光硬化性組成物を支持体表面に塗工した後、この塗工された光硬化性組成物に紫外線等の光を照射して、支持体上に塗工された光硬化性組成物中の硬化性成分を架橋硬化させる。この場合の紫外線等の光の照射時間は、通常は1秒〜300秒、好ましくは1秒〜180秒である。
【0119】
本発明にいう光とは紫外線、可視光線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等を含む活性エネルギー線をいう。
【0120】
硬化速度、照射装置の入手のしやすさ、価格、太陽光や一般照明下での取扱の容易性等の観点からは、紫外線又は電子線照射による硬化が好ましく、紫外線照射による硬化がより好ましい。なお、紫外線には、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、i線(波長365nm)等も含まれるものである。活性エネルギー線源としては、特に限定されないが、使用する光塩基発生剤の性質に応じて、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー、メタルハライド等があげられる。
【0121】
照射エネルギーは、積算光量、及び光の照射時間に応じて選択すればよい。光の照射時間をできるだけ短くするためには、例えば紫外線の場合、照度は、10mW/cm
2以上が好ましく、50mW/cm
2以上がより好ましく、100mW/cm
2以上が更に好ましく、1,000mW/cm
2以上が特に好ましい。
【0122】
照射エネルギーの上限は特に限定されないが、必要以上に光照射しても時間とコストが無駄となり、基材を傷めてしまう場合があるため、照度は、20,000mW/cm
2以下が好ましく、10,000mW/cm
2以下がより好ましく、8,000mW/cm
2以下が更に好ましく、5,000mW/cm
2以下がより更に好ましく、3,000mW/cm
2以下が特に好ましい。
【0123】
このように光照射することにより、光照射によって速やかに架橋反応が進行する。更に、こうして製造された感圧接着剤は、必要により剥離紙等を介して巻回される。感圧接着テープの幅には特に制限はない。以上、主にテープ状の感圧接着剤について説明したが、シート状の感圧接着剤も同様に製造できる。さらに本発明の感圧接着剤は両面テープや両面シート等の両面感圧接着剤として使用されることもできる。
【0124】
感圧接着剤は、通常テープ状やシート状のものである。しかし、接合すべき被着体にテープやシートを使用せずに直接存在させてもよい。例えば、プラスチック成型品等の第1の被着体に光硬化性組成物を塗工した後に活性エネルギー線を照射し、硬化して生成した感圧接着層を挟む位置で別のプラスチック成型品等の第2の被着体を第1の被着体に貼り合わせることができる。活性エネルギー線を照射した後、光硬化性組成物はただちに完全に硬化せず、短時間の間未硬化状態である。この間に第2の被着体を第1の被着体に貼り合わせると感圧接着剤が被着体に浸透しやすく、より十分な接合が得られる。この場合、被着体への塗工にはホットメルトガン、ドラムメルター等の加熱供給装置付スプレーガン、加温ユニットが搭載されたディスペンサー等を用いることができる。
【0125】
本発明の感圧接着剤は、電気・電子回路、電子部品、建材、及び/又は自動車等の輸送機、土木・建築、医療又はレジャーの用途、ラベル類等のOA用品、画像表示装置の貼り合わせ等に利用できる。なお、土木・建築の用途としては、感圧接着シート、防水シート、若しくは防振シート等が挙げられる。
【実施例】
【0126】
以下に実施例を挙げて本実施形態に係る光硬化性組成物を更に具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0127】
数平均分子量の測定
数平均分子量は、特に指定がない限りゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定した。実施例の説明において、下記測定条件でGPCにより測定し、標準ポリスチレンで換算した最大頻度の分子量を「数平均分子量」と称する。
・分析装置:Alliance(Waters社製)、2410型示差屈折検出器(Waters社製)、996型多波長検出器(Waters社製)、Milleniamデータ処理装置(Waters社製)
・カラム:PlgelGUARD+5μmMixed−C×3本(50×7.5mm,300×7.5mm:PolymerLab社製)
・流速:1mL/分
・換算したポリマー:ポリスチレン
・測定温度:40℃
・GPC測定時の溶媒:THF
【0128】
(合成例1)末端にトリメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体A1の合成
エチレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドを反応させ、ポリオキシプロピレンジオールを得た。WO2015−088021の合成例2の方法に準じ、得られたポリオキシプロピレンジオールの末端にアリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得た。この重合体に対し、水素化ケイ素化合物であるトリメトキシシランと白金ビニルシロキサン錯体イソプロパノール溶液を添加して反応させ、末端にトリメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体A1を得た。
【0129】
得られた末端にトリメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体A1の分子量をGPCにより測定した結果、ピークトップ分子量は25000、分子量分布1.3であった。
1H−NMR測定により末端のトリメトキシシリル基は1分子あたり1.7個であった。
【0130】
(合成例2)トリメトキシシリル基を有するシリル基を有する(メタ)アクリル系重合体A2の合成
メチルメタクリレート70.00g、2−エチルヘキシルメタクリレート30.00g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12.00g、及び金属触媒としてのチタノセンジクライド0.10g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン8.60g、重合停止剤としてのベンゾキノン溶液(95%THF溶液)20.00gを用いて、WO2015−088021の合成例4の方法に準じ、トリメトキシシリル基を有する(メタ)アクリル系重合体A2を得た。(メタ)アクリル系重合体A2のピークトップ分子量は4,000、分子量分布は2.4であった。
1H−NMR測定により含有されるトリメトキシシリル基は1分子あたり2.00個であった。
【0131】
(合成例3)末端にジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体A3の合成
エチレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドを反応させ、ポリオキシプロピレンジオールを得た。WO2015−088021の合成例2の方法に準じ、得られたポリオキシプロピレンジオールの末端にアリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得た。この重合体に対し、水素化ケイ素化合物であるメチルジメトキシシランと白金ビニルシロキサン錯体イソプロパノール溶液を添加して反応させ、末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体A3を得た。
【0132】
得られた末端にジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体A3の分子量をGPCにより測定した結果、ピークトップ分子量は5,000、分子量分布1.3であった。
1H−NMR測定により末端のジメトキシシリル基は1分子あたり1.0個であった。
【0133】
(合成例4)フッ素化ポリマーC1の合成
分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドを反応させてポリオキシプロピレンジオールを得た。WO2015−088021の合成例2の方法に準じ、得られたポリオキシプロピレンジオールの末端にアリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得た。この重合体に対し、水素化ケイ素化合物であるメチルジメトキシシランと白金ビニルシロキサン錯体イソプロパノール溶液を添加して反応させ、末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体A4を得た。
【0134】
得られた末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体A4の分子量をGPCにより測定した結果、ピークトップ分子量は15,000、分子量分布1.3であった。
1H−NMR測定により末端のメチルジメトキシシリル基は1分子あたり1.7個であった。
【0135】
次に、BF
3ジエチルエーテル錯体2.4g、脱水メタノール1.6g、重合体A4を100g、トルエン5gを用い、WO2015−088021の合成例4の方法に準じ、末端にフルオロシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(以下、フッ素化ポリマーC1と称する)を得た。得られたフッ素化ポリマーC1の
1H−NMRスペクトルを測定したところ、原料である重合体のシリルメチレン(−CH
2−Si)に対応するピーク(m,0.63ppm)が消失し、低磁場側(0.7ppm〜)にブロードピークが現れた。
【0136】
(実施例1〜13、比較例1〜7)
表1に示す配合割合にて、攪拌機、温度計、窒素導入口、及び水冷コンデンサーを装着したフラスコに、(A)架橋性ケイ素基を有する有機重合体、(B)粘着付与樹脂を投入し、120℃で減圧撹拌し、粘着付与樹脂を溶解させた。その後、(C)Si−F結合を有するケイ素化合物、及び(D)光塩基発生剤を投入し、減圧撹拌し、実施例1に係る光硬化性組成物を得た。得られた組成物の特性を下記の方法で評価した。評価結果を表1に示す。また、光照射後の硬化性を評価する試料において光照射で硬化したものは感圧接着剤として使用できる粘着性を有していた。更に、実施例1と同様にして、実施例2〜13に係る光硬化性組成物を調製し、実施例1と同様に組成物の特性を評価した。その評価結果を表1に示す。また、比較例1〜7について、表2に示すように配合を変更した以外は実施例1と同様の方法で光硬化性組成物を調製し、特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
表1及び表2において、各配合物質の配合量はgで示され、その他の配合物質の詳細は下記の通りである。なお、軟化点はJIS K2207(環球法)による値である。
*1 SP値8.81、軟化点130℃、商品名「YSポリスターT130」、ヤスハラケミカル社製
*2 SP値9.32、軟化点125℃、商品名「YSポリスターK125」、ヤスハラケミカル社製
*3 スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合体樹脂、軟化点95℃:商品名「FTR−6100」、三井化学社製
*4 スチレン系モノマー/α−メチルスチレン/脂肪族系モノマー共重合樹脂、軟化点100℃:商品名「FTR−7100」、三井化学社製
*5 スチレン系モノマー単一重合系モノマー、軟化点100℃:商品名「FTR−8100」、三井化学社製
*6 超淡色ロジンエステル、軟化点100℃:商品名「パインクリスタルKE−359」、荒川化学工業社製
*7 商品名「IRGACURE379EG」の50%PC(プロピレンカーボネート)溶液、BASF社製
*8 商品名「IRGACURE907」の50%PC(プロピレンカーボネート)溶液、BASF社製
*9 商品名「PBG−SA2」の20%PC溶液、サンアプロ株式会社製
*10 三フッ化ホウ素モノエチルアミンの10%PC(プロピレンカーボネート)溶液
*11 商品名「DBU」、サンアプロ株式会社製
*12 商品名「アルミキレートD」、川研ファインケミカル株式会社製
*13 商品名「ネオスタン U−100」、日東化成工業株式会社製
*14 商品名「KBM−403」、信越化学工業株式会社製
【0140】
1)加熱時安定性(UV未照射時の加熱安定性試験)
直径100mm、高さ1mmの円筒形容器に厚みが1mmになるように光硬化性組成物を注ぎ、暗室下100℃の環境下において(なお、実施例1については暗室下50℃の環境下においても実施した)、5分ごとに指触にて光硬化性組成物の状態を確認した。5時間以上で指触後の指に付着物が残る場合を◎(すなわち、光硬化性組成物が液状を示す場合)、1.5時間以上から5時間未満の間、指触後の指に付着物が残る場合を〇、1.5時間未満で指に付着物が残らない場合を×(すなわち、光硬化性組成物がゲル状、若しくは固体状を示す場合)とした。なお、表1のUV未照射時の加熱安定性試験の欄においては、上段に試験結果が得られた時点の加熱継続時間、下段に試験結果を示す。例えば、実施例1〜12においては、100℃で5時間の加熱後においても光硬化性組成物は液状を示した。一方、比較例1においては100℃で40分以内の加熱で組成物がゲル化した。
【0141】
2)表面硬化性試験
PETフィルム上に厚みが200μmになるように光硬化性組成物を塗工し、UV照射[照射条件:UV−LED365nm、照度:1000mW/cm
2、積算光量:3000mJ/cm
2]後直ちに、暗室下23℃50%RHの環境下において、1分ごとに指触にて表面が硬化するまでの時間を測定した。(C)成分や(D)成分を除く他のシラノール縮合反応促進触媒が配合された、比較例1〜4の試料については塗工後、暗室下23℃50%RHの環境下において、1分ごとに指触にて表面が硬化するまでの時間を測定した。表面硬化時間が1時間未満の場合「○」と評価し、1時間以上の場合を「×」と評価した。なお、比較例6及び比較例7の試料は未硬化であった。
【0142】
3)シリコーン処理離型紙への適合性試験
PETフィルム上に厚みが200μmになるように光硬化性組成物を塗工し、UV照射[照射条件:UV−LED365nm、照度:1000mW/cm
2、積算光量:3000mJ/cm
2]後直ちに、シリコーン離型処理剤で処理された離型紙を貼り合わせた。その後、50℃で24時間養生した。また、離型紙を貼り合わせずに50℃で24時間養生した試料も調製した。養生後、離型紙を手で剥がし、指触により感圧接着層のタックを評価した。離型紙を貼り合わせない感圧接着層と比較してタックが低下しない場合を◎、タックが低下する場合を○、離型紙を手で剥がすことが困難である、又はタックがほとんど無くなる場合を×とした。
【0143】
表1に示すように、実施例に係る光硬化性組成物はいずれも、高温に加熱しても硬化が進行せず、すなわち、加熱時の安定性に優れるにもかかわらず、光照射によって速やかに架橋反応が進行することが示された。なお、光照射後の硬化性を評価する試料において光照射によって硬化した試料は感圧接着剤として使用できる粘着性を有していた。
【0144】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。