特許第6645648号(P6645648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645648
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】踏切保安装置および踏切物体検知装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/00 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   B61L29/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-4870(P2016-4870)
(22)【出願日】2016年1月14日
(65)【公開番号】特開2017-124731(P2017-124731A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】岩村 和典
(72)【発明者】
【氏名】海川 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】若井 宏顕
(72)【発明者】
【氏名】大後 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】武井 大海
(72)【発明者】
【氏名】若林 卓也
(72)【発明者】
【氏名】播磨 義憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 良次
(72)【発明者】
【氏名】曽川 和晴
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−138860(JP,U)
【文献】 特開平11−278274(JP,A)
【文献】 特開2015−140130(JP,A)
【文献】 特開2004−106779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道の線路を横切る踏切から列車検知区間が外れる状態で前記線路に設定された警報始動点に係る列車検知を行う始動点用踏切制御子と、前記踏切の踏切道の幅員を列車検知区間に収める状態で前記線路に設定された警報終止点に係る列車検知を行う終止点用踏切制御子と、前記踏切の踏切道上における物体の有無を非接触で検知する感応部と、前記始動点用踏切制御子の始動点検知結果に基づいて前記警報始動点への列車進入を検知するとともに前記終止点用踏切制御子の終止点検知結果と前記感応部の物体検知結果とに基づいて前記踏切に係る列車進入および列車進出を検知する物体検知論理判定部とを備えた踏切保安装置であって、
前記物体検知論理判定部が、前記警報始動点への列車進入の検知から前記踏切への列車進入の検知までの間は前記感応部の検知した物体を障害物と判定し、前記踏切への列車進入の検知から前記踏切からの列車進出の検知までの間は前記感応部の検知した物体を列車と判定することにより、前記感応部にて検知された物体が障害物であるか列車であるかを弁別するようになっており、而も、前記警報始動点への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果との双方が成立したことに応じて前記踏切への列車進入を検知し、前記踏切への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果との双方が不成立に転じたことに応じて前記踏切からの列車進出を検知するようになっており、更に、前記物体検知結果が成立から不成立に転ずるときの状態遷移を列車進出確認時素の分だけ遅延させるようになっており、前記列車進出確認時素が、走行列車の台枠の下を前記感応部の検知媒体がくぐり抜ける隙間の最大値を潜り最大幅とし、走行列車の車輪のレールからの浮き上がりに起因して前記終止点用踏切制御子の検知結果が一時的に成立から不成立に転ずることがある列車走行速度の最小値を煽り最低速度として、前記潜り最大幅を前記煽り最低速度で除した両立確定時間以上になっている、
ことを特徴とする踏切保安装置。
【請求項2】
鉄道の線路を横切る踏切から列車検知区間が外れる状態で前記線路に設定された警報始動点に係る列車検知を行う始動点用踏切制御子から始動点検知結果を取得する手段と、前記踏切の踏切道の幅員を列車検知区間に収める状態で前記線路に設定された警報終止点に係る列車検知を行う終止点用踏切制御子から終止点検知結果を取得する手段と、前記踏切の踏切道上における物体の有無を非接触で検知する感応部から物体検知結果を取得する手段と、前記始動点検知結果と前記終止点検知結果と前記物体検知結果とに基づいて踏切警報の開始および停止を制御する手段とを備えた踏切物体検知装置であって、
前記警報始動点への列車進入の検知から前記踏切への列車進入の検知までの間は前記感応部の検知した物体を障害物と判定し、前記踏切への列車進入の検知から前記踏切からの列車進出の検知までの間は前記感応部の検知した物体を列車と判定することにより、前記感応部にて検知された物体が障害物であるか列車であるかを弁別するようになっており、而も、前記警報始動点への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果との双方が成立したことに応じて前記踏切への列車進入を検知し、前記踏切への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果との双方が不成立に転じたことに応じて前記踏切からの列車進出を検知するようになっており、更に、前記物体検知結果が成立から不成立に転ずるときの状態遷移を列車進出確認時素の分だけ遅延させるようになっており、前記列車進出確認時素が、走行列車の台枠の下を前記感応部の検知媒体がくぐり抜ける隙間の最大値を潜り最大幅とし、走行列車の車輪のレールからの浮き上がりに起因して前記終止点用踏切制御子の検知結果が一時的に成立から不成立に転ずることがある列車走行速度の最小値を煽り最低速度として、前記潜り最大幅を前記煽り最低速度で除した両立確定時間以上になっている、
ことを特徴とする踏切物体検知装置。
【請求項3】
前記終止点用踏切制御子の列車検知区間に収まる状態で前記線路に設置されたATS利用の踏切バックアップ装置を備えており、前記物体検知論理判定部が、前記踏切への列車進入の検知に際して、前記警報始動点への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果と前記踏切バックアップ装置の列車検知結果とが総て成立したことに応じて前記踏切への列車進入を検知するようになっていることを特徴とする請求項1記載の踏切保安装置。
【請求項4】
前記終止点用踏切制御子の列車検知区間に収まる状態で前記線路に設置されたATS利用の踏切バックアップ装置の列車検知結果であるバックアップ検知結果を取得する手段を具備しており、前記踏切への列車進入の検知に際して、前記警報始動点への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果と前記バックアップ検知結果とが総て成立したことに応じて前記踏切への列車進入を検知するようになっていることを特徴とする請求項2記載の踏切物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の複線区間や単線区間の踏切に設置される踏切保安装置と、それに組み込まれて踏切道上の物体を検知する踏切物体検知装置に関し、詳しくは、検知した物体が列車なのか踏切障害物なのかの判別まで行うことにより、警報終止点に係るいわゆる煽り対策を強化して踏切警報終止条件を適正化するとともに、踏切障害物検知装置のマスク条件をも適正化することにより、踏切警報制御の質の向上に資する踏切保安装置および踏切物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の複線区間や単線区間の踏切に設置される踏切保安装置は、警報始動点警報終止点での列車検知を車輪とレールとの短絡すなわち列車の車輪とレールの踏面との接触による電気導通に基づいて行う始動点用踏切制御子や終止点用踏切制御子と、それらによる列車の在線/非在線の検知結果に基づいて踏切警報に係る制御を行う踏切制御回路を備えており、一般に、警報始動点には、短小軌道回路の一種である閉電路形の踏切制御子が用いられるのに対し、警報終止点には、やはり短小軌道回路の一種であるが特性の異なる開電路形の踏切制御子が用いられている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0003】
また、現行の多くの踏切保安装置では、警報終止のタイミング決定に関わる終止点用踏切制御子の列車検知区間が踏切道に重なっていると、踏切道を通行する踏切通行体たとえば犬の鎖や,スキーのエッジ,トラクターのクローラーなどの金属物で左右のレールが短絡されたときに、終止点用踏切制御子が作動して、列車が踏切道に進入(到達)したと誤認され、警報が不所望に停止するので、それを避ける必要がある。また(図5参照)、列車が踏切道13を通過し終わったことを確実に検知するために、警報終止のタイミング決定に関わる終止点用踏切制御子BDCを列車の進行方向に対して踏切道の前方側(進出側)に設置し、上記の不所望な警報停止を避けるために上記の終止点用踏切制御子BDCの列車検知区間Sbが踏切道13と重ならないように列車検知区間長を調整している。
【0004】
しかも、それらの踏切保安装置では、列車が終止点用踏切制御子の列車検知区間を通過したら直ちに警報が停止するのでなく、予め設定された警報遅延時素(リレー回路では緩動時素で実現)の時間だけ更に経過した後に警報が停止するようになっている。その理由は、列車検知をより確実に行うためであり、具体的には、列車検知に際して、列車が存在するにも係わらず列車走行時の揺れによる車輪のレールからの浮き上がり等に起因して一時的に“列車が存在しない”と踏切制御子が誤検知する、いわゆる列車検知の“煽り”をマスクするためであり、警報遅延時素は、1〜4秒程度の適宜な時間にされている。
【0005】
終止点用踏切制御子の設置位置が踏切道の前方側にあることと、警報遅延時素が付加されるために、現行の多くの踏切保安装置では、列車速度が想定速度であっても列車が踏切道を通過し終わってから相当時分(3〜6秒)経過した後でなければ踏切警報が停止しない。列車速度が想定速度より遅ければ、列車検知区間の通過に長時間を要するので、警報停止まで更に長い時間が掛かることになる。
しかしながら、列車が踏切道を通過した後も暫く警報が停止せずに踏切の通過が阻止されるのは、道路通行者の焦燥感・イライラ感を招来することになるので、好ましくないことから、そのような道路通行者の負担を軽減することが社会的に要請される。
【0006】
そして、かかる要請に応えるべく、列車が踏切道を通過した後は速やかに警報が停止するように踏切保安装置が改良されている(例えば特許文献1,2参照)。具体的には、終止点用踏切制御子の列車検知区間(第2検知点)が踏切道を跨ぐように(即ちその列車検知区間に踏切の幅員が収まるように)終止点用踏切制御子を設置するとともに、警報終止点警報始動点との間の中間検知区間(第1検知点)でも列車が検知できるようにしたうえで、列車検知始動点への列車進入と第1検知点への列車進入と第2検知点への列車進入および列車進出とがその順に行われたか否かを判別する通過完了判定手段や列車追跡手段が踏切制御回路に追加されている。しかも、そのような列車検知結果を利用して、踏切障害物検知装置の障検マスク区間を第1検知点への列車進入と第2検知点からの列車進出とに亘る区間に拡大することにより、簡便に、障検マスク区間が踏切より広くなるので、踏切障害物検知装置のマスク条件が適正化される。
【0007】
また(例えば特許文献3参照)、踏切道を通る障害物を非接触で検知できる踏切障害物検知装置に、列車の踏切道通過を検知してこれを踏切警報停止条件として踏切制御装置に提供する踏切警報制御支援機能を付加して、踏切障害物検知装置を踏切物体検知装置とすることにより、簡便に、警報終止点に係るいわゆる煽り対策を強化した踏切保安装置も開発されている。この踏切物体検知装置は、検知した物体が列車なのか踏切障害物なのかの判別まで行うことにより踏切警報制御の質の向上に資するものであり、具体的には、警報始動点への列車進入の検知から踏切への列車進入の検知までの間は感応部の検知した物体を障害物と判定し、踏切への列車進入の検知から踏切からの列車進出の検知までの間は感応部の検知した物体を列車と判定することにより、感応部にて検知された物体が障害物であるか列車であるかを弁別するようになっている。
【0008】
さらに(例えば特許文献4参照)、そのような踏切障害物検知装置による列車検知と警報終止用の踏切制御子による列車検知とを協働させて踏切警報の停止を的確化する踏切物体検知装置を更に改良することにより、煽り対策を一層強化するとともに踏切障害物検知装置のマスク条件を適正化した踏切保安装置も開発されている。この踏切物体検知装置は、警報始動点への列車進入の検知から踏切への列車進入の検知までの間は非接触式の感応部の検知物体を障害物と判定し、踏切への列車進入から列車進出までの間は感応部の検知物体を列車と判定することで、障害物と列車を弁別するのに加えて、更に、警報始動点への列車進入の検知後に物体検知結果と終止点検知結果との双方が成立したことに応じて踏切への列車進入を検知し、これを障害物検知装置のマスク条件とするとともに、その後に物体検知結果と終止点検知結果が共に不成立に転じたことに応じて踏切からの列車進出を検知するようになっている。
【0009】
しかも、そのような警報始動点には、ATS車上装置からの常時発振信号を受けて動作する踏切バックアップ装置が並設されることもあり(例えば特許文献4参照)、その場合、列車の先頭車の床下に取り付けられたATS車上装置の車上子から踏切バックアップ装置の地上子へ発振信号が届くことによっても、警報終止点への列車到来が検知される。
この例の踏切バックアップ装置の併用では(特許文献4参照)、踏切バックアップ装置が終止点用踏切制御子の列車検知区間の外に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014−054866号公報
【特許文献2】特開2014−125205号公報
【特許文献3】特開2014−205444号公報
【特許文献4】特開2015−140130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような従来の踏切保安装置や踏切物体検知装置では、非接触式の障害物検知装置を利用して接触式の終止点用踏切制御子の煽り対策を強化するとともに踏切警報終止条件を適正化するために、終止点用踏切制御子の列車検知区間を前後の位置で切り替えるとともに後方位置の列車検知区間が踏切道を跨ぐようにしたうえで列車追跡を行ったり(特許文献1,2参照)、踏切への列車進入の判定条件を厳しくして障害物検知装置を障害物検知にとどまらず列車検知にまで用いるようになっている(特許文献3,4参照)。
【0012】
もっとも、煽り対策が強化されたとはいえ、前者は(特許文献1,2参照)、踏切警報終止条件の適正化を主眼としており、接触式の終止点用踏切制御子が重用されているので、激しい煽りにまで対処しきれるものではない。
これに対し、後者は(特許文献3,4参照)、非接触式の障害物検知装置を障害物の検知にとどまらず列車の検知にも用いるため、煽りに対する対処能力が高い。
しかしながら、赤外光やレーザー光を用いる既存の障害物検知装置には、いわゆる「くぐり抜け」の起こりうるものが有り、そのような障害物検知装置をそのまま上述した踏切物体検知装置(特許文献3,4参照)に用いる訳にはいかない。
【0013】
すなわち、先ず、くぐり抜けを詳述すると、既存の障害物検知装置で多用されている線検知式や面検知方式では、障害物検知の検知線や検知面の標準高さが踏切道面から745mmであるのに対し、鉄道の車両の台枠の上面(床面)の高さは、950mmや,1000mm,1100mmなどと、まちまちであるうえ、検知線や検知面の標準高さより高い。このため、一部の車両では、検知線や検知面をなす検知光が検知対象の台枠の下をくぐり抜けるという事象が、発生することがある。とはいえ、台枠の下面は上面より低いことや、台枠の下には台車や車輪があること、貨物車両では台枠の中央部分が下がっていること、旅客車両では付随車であっても床下に様々な機器がぶら下がっていることから、検知光が台枠の下を常にくぐり抜ける訳でなく、検知光が台枠の下をくぐり抜ける隙間(前後方向・車両走行方向の間隔・幅)は、5000mm以下である。
【0014】
次に、くぐり抜けによる踏切物体検知装置の不都合を詳述すると、従来の踏切物体検知装置では、上述したように、踏切への列車進入を検知した後に物体検知結果と終止点検知結果が共に不成立に転じたことに応じて踏切からの列車進出を検知するようになっていることから、列車の踏切通過中にくぐり抜けが発生すると、一時的とはいえ検知光が検知されて物体検知結果が不成立に転じるため、列車が踏切道を進出し終えたと誤判定されるので、踏切警報を適時よりも早く停止させてしまうという不所望な踏切制御が行われてしまう。
【0015】
このような不具合を解消する直截的な解決法は、くぐり抜けが発生しないように障害物検知装置を改良したり、くぐり抜けが発生しないような障害物検知装置を新設することである。例えば、検知光などの非接触検知媒体としてレーザー光を用いるレーザー式の障害物検知装置であれば、障害物検知装置の投光器と受光器とのうち何れか一方を高さ800mmといった低めに設置するとともに何れか他方を高さ1000mmといった高めに設置して、レーザー光が車両の台枠の床に斜めに当たるように配光する、といった対策を講じることにより、くぐり抜けを回避することができる。
【0016】
もっとも、このような斜め投光の配光法を採用した場合でも、既存の障害物検知装置の投受光器の再配置や再調整は必要であり、複線の場合、一組の投受光器を上り線用と下り線用とに共用することができないため、二組の投受光器が必要であり、設備費が嵩む。
これに対し、終止点用踏切制御子の列車検知区間を踏切道に重ねて終止点用踏切制御子の列車検知区間に踏切道を跨がせる手法(特許文献1,2参照)では「くぐり抜け」が問題にならないので、その手法と、障害物検知装置を列車検知にも用いる手法(特許文献3,4参照)とを、併用するのが良かろうと思われる。
【0017】
しかしながら、両手法を単純に組み合わせただけでは、くぐり抜けが発生したときに折悪しく煽りまで発生すると、列車検知結果ばかりか終止点検知結果まで不成立に転じて、やはり踏切警報の停止を招くため、不所望な踏切警報の停止の発生頻度がかなり下がるとはいえ、不所望な踏切警報の停止の発生を十分に抑えることができる訳ではない。
そこで、両手法を組み合わせるに際して更なる工夫を加味することにより、くぐり抜けが発生しても踏切警報が不所望には停止しない踏切保安装置および踏切物体検知装置を簡便に実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の踏切保安装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
鉄道の線路を横切る踏切から列車検知区間が外れる状態で前記線路に設定された警報始動点に係る列車検知を行う始動点用踏切制御子と、前記踏切の踏切道の幅員を列車検知区間に収める状態で前記線路に設定された警報終止点に係る列車検知を行う終止点用踏切制御子と、前記踏切の踏切道上における物体の有無を非接触で検知する感応部と、前記始動点用踏切制御子の始動点検知結果に基づいて前記警報始動点への列車進入を検知するとともに前記終止点用踏切制御子の終止点検知結果と前記感応部の物体検知結果とに基づいて前記踏切に係る列車進入および列車進出を検知する物体検知論理判定部とを備えた踏切保安装置であって、
前記物体検知論理判定部が、前記警報始動点への列車進入の検知から前記踏切への列車進入の検知までの間は前記感応部の検知した物体を障害物と判定し、前記踏切への列車進入の検知から前記踏切からの列車進出の検知までの間は前記感応部の検知した物体を列車と判定することにより、前記感応部にて検知された物体が障害物であるか列車であるかを弁別するようになっており、而も、前記警報始動点への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果との双方が成立したことに応じて前記踏切への列車進入を検知し、前記踏切への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果との双方が不成立に転じたことに応じて前記踏切からの列車進出を検知するようになっており、更に、前記物体検知結果が成立から不成立に転ずるときの状態遷移を列車進出確認時素の分だけ遅延させるようになっており、前記列車進出確認時素が、走行列車の台枠の下を前記感応部の検知媒体がくぐり抜ける隙間の最大値を潜り最大幅とし、走行列車の車輪のレールからの浮き上がりに起因して前記終止点用踏切制御子の検知結果が一時的に成立から不成立に転ずることがある列車走行速度の最小値を煽り最低速度として、前記潜り最大幅を前記煽り最低速度で除した両立確定時間以上になっている、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の踏切物体検知装置は(解決手段2)、上記解決手段1の踏切保安装置から物体検知論理判定部を抽出して装置にしたものであり、
鉄道の線路を横切る踏切から列車検知区間が外れる状態で前記線路に設定された警報始動点に係る列車検知を行う始動点用踏切制御子から始動点検知結果を取得する手段と、前記踏切の踏切道の幅員を列車検知区間に収める状態で前記線路に設定された警報終止点に係る列車検知を行う終止点用踏切制御子から終止点検知結果を取得する手段と、前記踏切の踏切道上における物体の有無を非接触で検知する感応部から物体検知結果を取得する手段と、前記始動点検知結果と前記終止点検知結果と前記物体検知結果とに基づいて踏切警報の開始および停止を制御する手段とを備えた踏切物体検知装置であって、
前記警報始動点への列車進入の検知から前記踏切への列車進入の検知までの間は前記感応部の検知した物体を障害物と判定し、前記踏切への列車進入の検知から前記踏切からの列車進出の検知までの間は前記感応部の検知した物体を列車と判定することにより、前記感応部にて検知された物体が障害物であるか列車であるかを弁別するようになっており、而も、前記警報始動点への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果との双方が成立したことに応じて前記踏切への列車進入を検知し、前記踏切への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果との双方が不成立に転じたことに応じて前記踏切からの列車進出を検知するようになっており、更に、前記物体検知結果が成立から不成立に転ずるときの状態遷移を列車進出確認時素の分だけ遅延させるようになっており、前記列車進出確認時素が、走行列車の台枠の下を前記感応部の検知媒体がくぐり抜ける隙間の最大値を潜り最大幅とし、走行列車の車輪のレールからの浮き上がりに起因して前記終止点用踏切制御子の検知結果が一時的に成立から不成立に転ずることがある列車走行速度の最小値を煽り最低速度として、前記潜り最大幅を前記煽り最低速度で除した両立確定時間以上になっている、ことを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明の踏切保安装置は(解決手段3)、踏切バックアップ装置の利用についても改良を加えたものであり、
上記解決手段1の踏切保安装置であって、前記終止点用踏切制御子の列車検知区間に収まる状態で前記線路に設置されたATS利用の踏切バックアップ装置を備えており、前記物体検知論理判定部が、前記踏切への列車進入の検知に際して、前記警報始動点への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果と前記踏切バックアップ装置の列車検知結果とが総て成立したことに応じて前記踏切への列車進入を検知するようになっていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の踏切物体検知装置は(解決手段4)、上記解決手段3の踏切保安装置から該当部分を抽出したものであり、
上記解決手段2の踏切物体検知装置であって、前記終止点用踏切制御子の列車検知区間に収まる状態で前記線路に設置されたATS利用の踏切バックアップ装置の列車検知結果であるバックアップ検知結果を取得する手段を具備しており、前記踏切への列車進入の検知に際して、前記警報始動点への列車進入の検知後に前記物体検知結果と前記終止点検知結果と前記バックアップ検知結果とが総て成立したことに応じて前記踏切への列車進入を検知するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
このような本発明の踏切保安装置および踏切物体検知装置にあっては(解決手段1,2)、終止点用踏切制御子の列車検知区間に踏切道を跨がせる手法と障害物検知装置を列車検知にも用いる手法とを併用したうえで、踏切からの列車進出の検知条件を物体検知結果と終止点検知結果との双方不成立にし、更に、物体検知結果の成立から不成立への状態遷移を列車進出確認時素の分だけ遅延させるとともに、その列車進出確認時素を、くぐり抜け要因の隙間最大値(潜り最大幅)と煽り発生限界の列車走行速度最小値(煽り最低速度)とで決まる両立確定時間以上の時間にしたことにより、列車が煽り最低速度以上で走行するときにはくぐり抜けが発生せず、列車が煽り最低速度以下で走行するときにはくぐり抜けが発生しても煽りが発生しない。
そのため、何れの速度であれ踏切から列車が進出する前に物体検知結果と終止点検知結果との双方が不成立になることは無いので、踏切からの列車進出が的確に検知される。
したがって、この発明によれば、くぐり抜けが発生しても或いは煽りが発生しても踏切警報が不所望には停止しない踏切保安装置および踏切物体検知装置を簡便に実現することができる。
【0023】
また、本発明の踏切保安装置および踏切物体検知装置にあっては(解決手段3,4)、踏切バックアップ装置を終止点用踏切制御子の列車検知区間に収まるようにすることで簡便に設置環境を整えることができる。そして、そのような踏切バックアップ装置の列車検知結果を踏切への列車進入の検知条件に加えるとともに、その際に、その列車検知結果を他の物体検知結果および終止点検知結果と同じくAND条件(論理積)だけで用いるようにもしたことにより、判定内容が厳格化されるのに論理は単純化・明瞭化される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1について、踏切保安装置および踏切物体検知装置の構造を示し、(a)が踏切保安装置のうち複線区間の下り線における踏切制御子等の配置を示す記号図、(b)がリレーで構成された踏切物体検知装置の回路図である。
図2】本発明の実施例1について、踏切保安装置および踏切物体検知装置の動作状態を示し、(a)が複線区間の下り線を走行する列車の進行状態を示す記号図、(b)がリレー信号のタイムチャートである。
図3】(a),(b)何れもタイムチャートの一部の拡大図であるが、(a)は列車が煽り発生限界の列車走行速度最小値(煽り最低速度)より高速で走行して「煽り」が発生したときのものであり、(b)は列車が列車走行速度最小値(煽り最低速度)より低速で走行して「くぐり抜け」が発生したときのものである。
図4】本発明の実施例2について、踏切保安装置のうち複線区間の下り線における踏切制御子等の配置を示す記号図である。
図5】従来の複線区間の下り線における踏切制御子の配置を示す記号図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
このような本発明の踏切保安装置および踏切物体検知装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜3により説明する。
図1〜3に示した実施例1は、上述した解決手段1〜4(出願当初の請求項1〜4)を具現化したものであり、図示を割愛した実施例2は、その拡張例であり、図4に示した実施例3は、変形例である。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、筐体や機械部などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に記号図や回路図を多用した。
【実施例1】
【0026】
本発明の踏切保安装置および踏切物体検知装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が複線区間の線路10のうち下り線11に係る踏切制御子(ADC,BDC)等の配置を示す記号図であり、(b)が下り踏切物体検知装置20のリレー回路図である。
【0027】
ここで例示する下り踏切物体検知装置20は、複線区間の踏切13に係る踏切保安装置に組み込まれており、踏切制御装置に加えて踏切障害物検知装置が設けられている場合はそれらを部分改造した形で分散設置されたり、既存装置の改造は信号提供程度にとどめて別ユニットを追加する形で設置されたり、既存の踏切障害物検知装置を取り外して或いは新規な踏切障害物検知装置の追加に代えて本装置20を追加する形で設置されたり、種々の態様で設置しうるので、ここでは、踏切保安装置の各部材の配置状態と、リレーを用いて具体化された下り踏切物体検知装置20の回路構成とを説明する。
【0028】
下り踏切物体検知装置20の設置先は(図1(a)参照)、複線区間の線路10のうち下りの線路(下り線)11であり、それと並走する上り線(上りの線路)12には本例では同様な別の踏切物体検知装置が設置されているものとする。踏切13の踏切道や警報灯14は下り列車と上り列車とに共用されるが、下り線11や,下り始動点ADC(警報始動点),下り終止点BDC(警報終止点),下り踏切バックアップ装置BBu,下り感応部15+16は、上り列車には使用されず、下り列車だけに使用される。なお、それらの部材の下り列車専用化は絶対的なものでなく、単線の場合や複線でも多少改造した場合など、共用できることがある(例えば一組の感応部15+16を下りの線路11と上りの線路12とに共用させても良い)。
【0029】
このような下り線11については、踏切13の起点側で手前位置の下り始動点ADCに、閉電路形の踏切制御子が接続されるのに加え、下り始動点ADCと踏切13との中間位置に下り終止点BDCが設定されて、そこに開電路形の踏切制御子が接続されるとともに、下り踏切バックアップ装置BBuが設置される。その際、下り始動点ADCの列車検知区間Saが踏切道に掛かることなく踏切道から外れるよう、その踏切制御子が踏切道から十分に離れた所に打ち込まれる。具体的には、下り始動点ADCは、踏切警報を発してから20〜600m程度の編成長の列車が踏切13に到達するまでの警報時間(第1種、第3種の踏切の別、跨線数などにより異なるが、概ね25秒〜40秒)を確保するために、列車の最高速度にもよるが踏切13から650〜850m程の遠くに設定される。
【0030】
これに対し、下り終止点BDCは、その列車検知区間Sbが踏切13の踏切道を跨ぐよう、その踏切制御子が踏切道の近くに打ち込まれる。具体的には、下り終止点BDCは、列車検知区間Sbが踏切道に掛かる所、例えば踏切道から数mほど離れた所に、列車検知区間Sbの両端が踏切道の両側に分かれる状態で、設定される。
また、下り踏切バックアップ装置BBuの地上子も、踏切道から数mほど離れた所に設置される。この設置状態は、下り踏切バックアップ装置BBuの地上子とATS装置の車上子とが正対したときに、列車の最先頭が踏切道上に差し掛かり、下り踏切物体検知装置20が列車の最先頭を物体と検知する位置関係を満たすとともに、下り踏切バックアップ装置BBuが下り終止点BDCの列車検知区間Sbに収まるという位置関係も満たしている。なお、図示の例では、下り終止点BDCが下り踏切バックアップ装置BBuと踏切13との間に位置しているが、下り踏切バックアップ装置BBuが下り終止点BDCと踏切13との間に位置していても良い。
【0031】
また、下り感応部15+16は、下り線11に対しても踏切13の踏切道に対しても両側に分かれて設置された投光器15と受光器16とからなるものを図示したが、赤外光・レーザ光での送受光に係る遮断の有無や、レーダ方式で測定した距離の遠近などに応じて、踏切道を通る人や車などの障害物と列車とを非接触で検知できるものであれば公知のものでも改良品でも良く、列車が少しでも踏切道に掛かっていれば列車検知結果が成立するよう線路と踏切道に対し平面視で傾斜しており、踏切障害物検知装置が既に設けられている場合、大抵は、その感応部を流用することが可能である。警報始動点用や警報終止点用の踏切制御子も、ATS利用の下り踏切バックアップ装置BBuも、既述した既存品や公知品で良いが、下り終止点BDCと下り踏切バックアップ装置BBuの位置は、列車が踏切道を通過し終わってから素早く警報停止するという観点からすれば、踏切道の手前になっているのがベターなので、本例ではそのようになっている。
【0032】
下り踏切物体検知装置20は(図1(b)参照)、それらの地上設備から検知結果を取得するために下り始動点検知結果取得部21と下り終止点検知結果取得部22と下りバックアップ検知結果取得部23と下り物体検知結果取得部24とを具備するとともに、それらの検知結果に基づいて下り始動点ADC(警報始動点)への下り列車の進入とその後の踏切13への下り列車の進入とその後の踏切13からの下り列車の進出とを検知する下り物体検知論理判定部25〜30と具備しており、この実施例では、何れもリレー回路で具現化されている。
【0033】
下り始動点検知結果取得部21は、警報始動用の踏切制御子のリレー出力を条件とする中継リレーを主体とした回路からなり、下り始動点ADC(警報始動点)に係る列車検知結果である下り始動点検知結果APRを中継リレーで取得して出力するようになっている。
下り終止点検知結果取得部22は、警報終止用の踏切制御子のリレー出力を条件とする中継リレーを主体とした回路からなり、下り終止点BDC(警報終止点)に係る列車検知結果である下り終止点検知結果BPRを中継リレーで取得して出力するようになっている。
【0034】
下りバックアップ検知結果取得部23は、下り踏切バックアップ装置BBuのリレー出力を条件とする中継リレーを主体とした回路からなり、下り踏切バックアップ装置BBuの列車検知結果である下りバックアップ検知結果BBuRを中継リレーで取得して出力するようになっている。
下り物体検知結果取得部24は、下り感応部15+16のリレー出力である下り障検Rを条件とする中継リレーを主体とした回路からなり、下り線11における踏切道上の物体検知結果を下り感応部15+16から取得して、それを下り障検PRとして出力するようになっている。
【0035】
しかも、この下り物体検知結果取得部24の中継リレーには、物体検知結果が不成立から成立に転ずるときの状態遷移を遅延させることで過剰検知を回避するために約1s(1秒)の緩放性が付与されるとともに、500ms(0.5s、0.5秒、列車進出確認時素の分)の緩動性が付与されて、物体検知結果が成立から不成立に転ずるときの状態遷移が500msだけ遅延するようになっている。
この500msの列車進出確認時素は、次のような潜り最大幅を煽り最低速度で除した両立確定時間(450ms)以上の時間として選定されている。
【0036】
上記の両立確定時間を定める2要素のうち、潜り最大幅は、走行列車の台枠の下を前記感応部の検知媒体がくぐり抜ける隙間の最大値であり、課題欄において既述した5000mmが採用される。これは、踏切通過対象の全列車に係る「潜り最大幅」である。
また、煽り最低速度は、走行列車の車輪のレールからの浮き上がりに起因して終止点用踏切制御子の検知結果が一時的に成立から不成立に転ずることがある列車走行速度の最小値であり、具体的には、経験則に基づき、注意信号時の列車走行速度である時速55kmや時速45kmよりも低速の時速40kmが採用される。これは、踏切通過対象の全列車に係る「煽り最低速度」である。
【0037】
そして、潜り最大幅の5000mmを煽り最低速度の時速40kmで除して、450ms(0.45s、0.45秒)の両立確定時間が得られ、少しだけ安全側で切りの良い500ms(0.5s、0.5秒)が列車進出確認時素に採用されている。また、列車進出確認時素と両立確定時間との差には、切りの良さにとどまらず、上記の潜り最大幅や煽り最低速度として採用した値の不確実性を考慮した安全率を反映する意義や、地上設備におけるコンデンサ容量といった時素の経年変化による変動などを吸収する意義もある。
なお、列車進出確認時素に明確な上限は無いが、踏切からの列車進出の後に踏切警報を停止したり遮断桿を上げたりするタイミングが遅くなるのを回避するといった観点から、列車進出確認時素は1s以下が望ましい。
【0038】
下り物体検知論理判定部25〜30は、下り警報検知部25と所定時間経過検知部26と踏切進入検知部27と踏切警報制御部28と踏切警報停止部29と物体弁別部30とを具備していて、上述した下り始動点検知結果APRと下り終止点検知結果BPRと下りバックアップ検知結果BBuRと下り障検PR(物体検知結果)とに基づき、下り列車の進行に伴う検知結果の遷移に応じて下り始動点ADC(警報始動点)への列車進入とその後の踏切13への列車進入とその後の踏切13からの列車進出とを論理判定にて検知するようになっている。さらに、判定結果の一つとして後述の警報Rを出して警報灯14や在れば踏切遮断機の動作制御に供するとともに、もう一つの判定結果としてやはり後述する特殊信号発光機制御用リレーの信号EUR(以下、EURという。)を出して特殊信号発光器や障検警報用ブザー等の動作制御に供するようになっている。
【0039】
下り警報検知部25は、上述の下り始動点検知結果APRと下りSRと後述の下り警報停止Rとを条件とする下りSR信号用リレーを主体とした回路からなり、下り始動点検知結果APRの成立(リレー落下)にて警報始動点への列車進入を検知して下りSRを成立(リレー落下)させるとともに、その下りSR成立状態を下り警報停止Rの成立(リレー動作)時まで維持するようになっている。
所定時間経過検知部26は、上述の下りSRを条件とする下りSLPR信号用リレーを主体とした回路からなり、下りSLPRに20s(20秒)の緩放性を持たせることで、下りSRの成立(警報開始)から上述の遮断完了時間(20s)だけ遅れて下りSLPRが成立(リレー落下)するとともに、下りSRの不成立(リレー動作)に伴って下りSLPRも不成立状態に戻るようになっている。
【0040】
踏切進入検知部27は、後述の下り警報停止Rと上述の下りSLPRと上述の下り終止点検知結果BPRと上述の下りバックアップ検知結果BBuRと下り障検列車進入検知Rと上述の下り障検PR(物体検知結果)とを条件とする下り障検列車進入検知R信号用リレーを主体とした回路からなり、下りSLPRの成立(リレー落下)によって下り始動点ADCへの列車進入から上述の遮断完了時間(20s)が経過した後であることが確認されていることと、下り終止点検知結果BPRが成立(リレー動作)したことと、下りバックアップ検知結果BBuRが成立(リレー動作)したことと、下り障検PR(物体検知結果)が成立(リレー落下)したこととが、全て満たされたときに、下り障検列車進入検知Rを成立(リレー動作)させることで、踏切13への列車進入を検知するとともに、その下り障検列車進入検知R成立状態を下り警報停止Rの成立(リレー動作)時まで維持するようになっている。
【0041】
踏切警報制御部28は、上述の下りSRと上り側の同様な上りSRと上述の下り終止点検知結果BPRと上り側の同様な上り終止点検知結果DPRとを条件とする警報R信号用リレーを主体とした回路からなり、下りSRと下り終止点検知結果BPRと上りSRと上り終止点検知結果DPRとのうち何れか一つでも成立(下りSR及び上りSRのリレー落下、BPR及びDPRのリレー動作)している間は警報Rを成立(リレー落下)させることで、下り列車が下り始動点ADCに進入してから踏切13を通過し終えるまで、更には同様に上り列車の警報始動点進入から踏切進出までも、警報灯14に踏切警報を出させるようになっている。なお、上り側の上りSRは、下り踏切物体検知装置20の生成する信号ではないので図示や繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、例えば、本実施例の欄の冒頭で言及した上り線用の別の踏切物体検知装置において下り警報検知部25と同様の回路により下りSRと同様にして生成されるので、その出力信号が用いられる。
【0042】
踏切警報停止部29は、何れも上述した下り障検列車進入検知Rと下り障検PR(物体検知結果)と下り終止点検知結果BPRとを条件とする下り警報停止R信号用リレーを主体とした回路からなり、下り障検列車進入検知Rが成立(リレー動作)していることに基づいて踏切13への列車進入が検知された後であることと、下り終止点検知結果BPRが不成立(リレー落下)になっていることと、下り障検PR(物体検知結果)が不成立(リレー動作)になったこととが、全て満たされたときに、踏切13からの列車進出を検知して、下り警報停止Rを成立(リレー動作)させるようになっている。
【0043】
物体弁別部30は、上述の警報Rと上述の下り障検PR(物体検知結果)と上述の下り障検列車進入検知Rと上り側も同様になっていればその上り障検PR及び上り障検列車進入検知Rとを条件とするEUR用の特殊信号発光機制御用リレーを主体とした回路からなり、警報Rが成立(リレー落下)していて警報灯14が踏切警報を出しているときのうち、下り障検列車進入検知Rが不成立(リレー落下)になっているとき、即ち下り始動点ADC(警報始動点)への列車進入の検知から踏切13への列車進入の検知までの間は、下り感応部15+16が踏切道上の物体を検知して下り障検R又は下り障検PR(物体検知結果)が落下すると、下り感応部15+16の検知した物体を障害物と判定して、過剰検知回避用の緩放性による4〜6sの確認期間の経過後にEURを成立(リレー落下)させることで踏切障害物検知装置に障検警報を出させるようになっている。これに対し、それ以外のときは、特に警報Rの成立(リレー落下)時であっても、下り障検列車進入検知Rが成立(リレー動作)しているときは、すなわち踏切への列車進入の検知から踏切からの列車進出の検知までの間は、下り感応部15+16の検知した物体を列車と判定して、EURを不成立(リレー動作)状態にすることで、踏切障害物検知装置に障検警報を出させないようになっている。
【0044】
この実施例1の踏切保安装置および踏切物体検知装置20について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図2(a)は、複線区間の下り線11を走行する下り列車の進行状態を示す記号図である。また、図2(b)は、下り踏切物体検知装置20の動作状態を示すリレー信号のタイムチャートであり、図3(a),(b)は、何れも、図2(b)のタイムチャートの一部の拡大図である。
【0045】
ここで、上述したように、踏切13を通過する対象の全列車に係る煽り発生限界の列車走行速度最小値である煽り最低速度が40km/h(即ち時速40km)であり、やはり踏切通過対象の全列車に係る下り列車の台枠の下を感応部15+16の検知媒体がくぐり抜ける隙間の最大値である潜り最大幅が5m(即ち5000mm)であり、その5mを煽り最低速度40km/hで除して算出された両立確定時間が0.45sであるので、両立確定時間0.45sと煽り最低速度40km/hとは密に対応していると言える。
【0046】
これに対し、両立確定時間0.45sに少しだけ上乗せして選定された列車進出確認時素0.5sと密に対応しているのは、その0.5sで潜り最大幅5mを除して得られる36km/h(即ち時速36km)であり、この潜り最低速度36km/hは、踏切13を通過する下り列車の走行速度がその潜り最低速度以上であれば、下り物体検知結果取得部24の緩動性(列車進出確認時素0.5s)の働きによって、感応部15+16の検出した不所望な「くぐり抜け」が下り物体検知結果取得部24の出力する下り障検PRにまで及んで検知されるのが阻止される限界の速度である。
【0047】
このような煽り最低速度40km/hと潜り最低速度36km/hとを用いて図2(b),図3(a),図3(b)のタイムチャートを分類すると、図2(b)は、列車走行速度が潜り最低速度36km/hと煽り最低速度40km/hとの間であって、「くぐり抜け」が検知されず、「煽り」が発生しないときのものである。
また、図3(a)は、列車走行速度が煽り最低速度40km/hよりも高速であって、「煽り」は発生するが、「くぐり抜け」が検知されないときのものである。
さらに、図3(b)は、列車走行速度が潜り最低速度36km/hよりも低速であって、「くぐり抜け」は検知されるが、「煽り」が発生しないときのものである。
【0048】
これから詳述する列車通過時の一連動作からも確認されるように(図2(a)参照)、下り始動点ADCの列車検知区間Saの起点側の端から、踏切13の踏切道(より正確には列車検知区間Sbと下り感応部15+16検知区間とを併せた区間)の終点側の端までが、警報Rの成立(リレー落下)する下りの踏切制御区間になる。
また、踏切13の踏切道(より正確には列車検知区間Sbと下り感応部15+16検知区間とが重複する区間)の起点側の端から、踏切13の踏切道(より正確には列車検知区間Sbと下り感応部15+16検知区間とを併せた区間)の終点側の端までが、踏切障害物検知をマスク・抑制するマスク条件として使用される下り障検列車進入検知Rの成立(リレー動作)する下りの障検マスク区間になる。そのため、下り列車が下りの踏切制御区間より起点側を走行して踏切13に向かっているところから説明を始める。
【0049】
このとき、すなわち下り列車が下りの踏切制御区間に在線していないときには(図2(b)の左端部を参照)、下り始動点検知結果APRが不成立(リレー動作)になり、下り終止点検知結果BPRも下りバックアップ検知結果BBuRも不成立(リレー落下)になっている。また、踏切横断中のものが無ければ下り障検R,PR(物体検知結果)が不成立(リレー動作)になり、踏切横断の有無にかかわらず下り障検列車進入検知Rも下り警報停止Rも不成立(リレー落下)になっている。さらに、下りSRも下りSLPRも警報Rも不成立(リレー動作)になっているので、警報灯14は踏切警報を発せず、踏切障害物検知装置は障検警報を発せず、踏切道の通行が認容される。
【0050】
そして、下り列車が下り始動点ADCに到達して列車検知区間Saに進入すると(図2(a)参照)、そのとき(図2(b)時刻T1参照)、下り始動点検知結果APRが成立(リレー落下)し、それに応じて下りSRが成立(リレー落下)し、さらには警報Rも成立(リレー落下)するので、警報灯14から踏切警報が発せられる。下り列車が下り始動点ADCを通過してからも暫くは(図2時刻T1〜T3参照)、下り始動点ADCへの列車進入の検知後の上述のリレー状態が継続するが、その検知から上述の遮断完了時間(20s)が経過すると、下りSLPRが成立(リレー落下)して、踏切13への列車進入を検知する態勢が整う。
【0051】
遮断完了時間(20s)は、上述したように1種踏切において遮断機により踏切が遮断されるまでの時間であり、踏切警報機や踏切しゃ断機により踏切が遮断され、通常は道路通行人や自動車が踏切道に侵入することができなくなるまでの期間である。警報始動点への列車進入から上記の遮断完了時間(20s)が経過したことは、下り列車が踏切13の踏切道の間近に接近した状態になっている或いはなりつつあることを意味する。そのため、踏切13への列車進入の検知結果である障検列車進入検知Rの条件に、下りSRに20秒程の緩放時素を付加した下りSLPRの成立(リレー落下)条件を追加することにより、踏切への列車進入を示す信号の不所望な成立の機会を的確に限定して誤検知を少なくすることができる。
【0052】
具体的には、その間に(図2(b)時刻T2辺りを参照)、踏切13の踏切道上の二本レールがスキー板のエッジといった金属物などで短絡されると短絡解消・解放まで一時的に下り終止点検知結果BPRが成立(リレー動作)するが(図2(b)#1a参照)、下り障検PR(物体検知結果)が不成立(リレー動作)であることや、下りバックアップ検知結果BBuRが不成立(リレー落下)であることから、下り障検列車進入検知Rが不成立(リレー落下)を維持するので(図2(b)#1b参照)、踏切13への列車進入の誤検知が的確に防止される。
【0053】
また、踏切13の踏切道を歩行者や自動車などが通過すると、下り感応部15+16の下り障検Rが一時的に成立(リレー落下)するが、その成立時間が1s未満のものは、下り物体検知結果取得部24の1sの緩放性によって速やかに除かれるので、下り障検PRにも下り障検列車進入検知Rにも影響しない。一方、成立時間が1s以上の下り障検Rは(図2(b)#2a参照)、下り障検PRの一時的な成立(リレー落下)を招くが(図2(b)#2b参照)、下りバックアップ検知結果BBuRが不成立(リレー落下)であることや、下りSLPRが不成立(リレー動作)であることから、下り障検列車進入検知Rが不成立(リレー落下)を維持する(図2(b)#2c参照)。
そのため、何れの場合も、踏切13への列車進入の誤検知が的確に防止される。
【0054】
それから、下り列車が下り終止点BDCまで進むと(図2時刻T3参照)下り終止点検知結果BPRが成立(リレー動作)し、下り列車が下り踏切バックアップ装置BBuまで進むと下りバックアップ検知結果BBuRが成立(リレー動作)し、更に下り列車の先頭が踏切13の踏切道に差し掛かると(図2時刻T4参照)、下り障検R,PR(物体検知結果)が成立(リレー落下)する。これで、警報始動点への列車進入の検知後に必要な遮断完了時間(20s)が経過したことと、終止点検知結果が成立したことと、バックアップ検知結果が成立したことと、踏切道上の物体検知結果が成立したこととが、全て満たされる。そのため、下り障検列車進入検知Rが成立(リレー動作)して、踏切13への列車進入が検知されることとなる。
【0055】
更に下り列車が踏切道上を走行すると、下りバックアップ検知結果BBuRが不成立(リレー落下)となり、それから、下り列車が最後尾まで踏切13の踏切道を完全に通過し終えると(図2時刻T5参照)、同時に或いは僅かに前後して、下り終止点検知結果BPRが不成立(リレー落下)になるとともに、下り障検R,PR(物体検知結果)が不成立(リレー動作)に戻り、それに応じて下り警報停止Rが一時だけ成立(リレー動作)し、それに緩放性の100msだけ遅れて下り障検列車進入検知Rが不成立(リレー落下)になる。このように、踏切13への列車進入の検知後に、下り終止点検知結果BPRと下り障検PR(物体検知結果)との双方が不成立になったことに応じて、下り警報停止Rが一時だけ成立(リレー動作)することで、踏切13からの列車進出が検知されることとなる。
【0056】
それに加え、下り警報停止Rの成立(リレー動作)に応じて、下りSRも下りSLPRも警報Rも不成立(リレー動作)状態になって(図2(b)の右端部を参照)、下り列車が下りの踏切制御区間に在線していないときの状態に下り踏切物体検知装置20の動作状態が戻るので(図2(b)の左端部を参照)、次の下り列車を迎えることができる。
このような一連の動作状態で、踏切通過時(図2時刻T3〜T5参照)の列車走行速度が潜り最低速度36km/hと煽り最低速度40km/hとの間にあると、上述したように(図2(b)参照)、下り障検PRに乱れが生じないので、「くぐり抜け」の不所望な検知はなされず、更に、「煽り」の発生も無いので、下り終止点検知結果BPRにも乱れが生じない。そのため、踏切13に係る列車進入と列車進出が的確に検知される。
【0057】
これに対し、踏切通過時(図3(a)時刻T3〜T5参照)の列車走行速度が煽り最低速度40km/hよりも高速であると、上述したように、「くぐり抜け」は検知されないが、「煽り」は発生することがある(図3(a)参照)。煽りが発生して、その影響が下り終止点検知結果BPRに及ぶと、成立(リレー動作)状態を維持すべき下り終止点検知結果BPRが一時的に不成立(リレー落下)状態に転じてしまうが、これが踏切13への列車進入の検知後に起こっても(図3(a)#3a参照)、くぐり抜けの影響の無い下り障検PRが成立(リレー落下)状態を維持しているため(図3(a)#3b参照)、下り警報停止Rは不成立(リレー落下)状態を維持するので(図3(a)#3c参照)、踏切警報の早すぎる停止も踏切13からの列車進出の誤検知も的確に防止される。
【0058】
さらに、踏切通過時(図3(b)時刻T3〜T5参照)の列車走行速度が潜り最低速度36km/hよりも低速であると、上述したように、「煽り」は発生しないが、「くぐり抜け」は検知されることがある(図3(b)参照)。下り感応部15+16の下り障検Rに発現するくぐり抜けのうち(図3(b)#4a参照)、列車進出確認時素0.5sを超えるものだけが下り物体検知結果取得部24によって検知され、その影響が下り障検PRに及ぶと、成立(リレー落下)状態を維持すべき下り障検PRが一時的に不成立(リレー動作)状態に転じてしまうが、これが踏切13への列車進入の検知後に起こっても(図3(b)#4b参照)、煽りの影響の無い下り終止点検知結果BPRが成立(リレー動作)状態を維持しているため(図3(b)#4c参照)、下り警報停止Rは不成立(リレー落下)状態を維持するので(図3(b)#4d参照)、踏切警報の早すぎる停止も踏切13からの列車進出の誤検知も的確に防止される。
【実施例2】
【0059】
図示は割愛したが、本発明の踏切保安装置および踏切物体検知装置を実施するのに好適な他の実施例として、列車進出確認時素を個々の列車の状況に応じて一時的に変更する例を述べる。ここでは、踏切に向けて又は踏切上を実際に走行している個々の列車に係る個別情報を取得する適宜な手段が設けられていることを前提として、その手段にて個別情報が得られたときに、その個別情報に基づいて列車進出確認時素を変更する要因として、くぐり抜け要因の隙間最大値(潜り最大幅)と、煽り発生限界の列車走行速度最小値(煽り最低速度)と、踏切に対する列車の走行位置(障害物検知時vs列車検知時)とを取り扱う。
【0060】
上述の実施例1では列車進出確認時素の下限の両立確定時間が踏切通過対象の全列車に係る潜り最大幅および煽り最低速度を用いて算定されていたのに対し、この実施例2では、そのような共通の潜り最大幅と煽り最低速度に基づく列車進出確認時素が引き続き使用されるが、その使用態様が常時使用ではなくなり常態値(デフォルト値)として使用されるものにとどまり、上述した三つの列車進出確認時素変更要因の取得状況に応じて適宜一時変更されるようになっている。
【0061】
具体的には、個々の列車に係るくぐり抜け要因の隙間最大値(潜り最大幅)や煽り発生限界の列車走行速度最小値(煽り最低速度)を一方でも取得できたときには、その個別値を用いて両立確定時間を算出し直し、安全率乗算や端数切り上げ等を施して個別値を求めてから、一時的に列車進出確認時素を変更するようになっている。これにより、簡便に、踏切警報の停止タイミングの遅れが個別に適正化される。
また、感応部の検知した物体を列車と判定する列車検知時には列車進出確認時素を使用する(有効にする,正数値にする)が、感応部の検知した物体を障害物と判定する障害物検知時には、列車進出確認時素を使用しない(無効にする,ゼロにする)ようになっている。これにより、簡便に、障害物検知時のブザー音の延長が回避される。
【0062】
列車毎の個別値は、列車の車上子と踏切バックアップ装置との通信や、沿線に設けられた有線・無線の通信回線を介する司令室との通信などで、取得することができる。
列車進出確認時素の変更は、列車進出確認時素を異なる緩動時素で具現化したリレーを複数設けて択一的な切り替えにて使用することや、時素のカウント値を書き込み変更できるデジタル式の時素リレーを採用するといったことで、行える。
【実施例3】
【0063】
本発明の踏切保安装置および踏切物体検知装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は、踏切保安装置のうち複線区間の下り線における踏切制御子BDCや下り踏切バックアップ装置BBuの配置を示す記号図である。
この例では、踏切物体検知装置20を設置する際、既存の終止用制御子BDCを踏切道13に寄せて移設するとともに、その近くに踏切バックアップ装置BBuを設置する。
【0064】
この場合、リレー論理は、上述した実施例1,2のものと同じであるが、警報停止時期が上述の実施例に比べると、終止用制御子BDCの列車検知区間Sbの半分15m強(打込み点が踏切道13の縁端から3〜5mなので18〜20m)が踏切道13の前方側に及ぶので、列車が踏切道13を通過し終わってから警報停止するタイミングは踏切道縁端からの距離で表すと18〜20m、時間で0.8秒(時速90kmにて)遅くなる。列車が踏切道を通過し終わってから警報停止するタイミングは、上述の実施例の設備構成に比べ、距離で18〜20m、時間で0.8秒(時速90kmにて)遅くなるが、一方、終止用制御子BDCの設置位置が踏切道基準で移設前と同じ側なので、終止用制御子BDCや踏切バックアップ装置BBuへのケーブルを既存の接続箱等へ繋ぎ込む際に踏切道13を横断して敷設する必要がなく施工費を抑えることができる利点がある。
【0065】
[その他]
上記実施例では、下り線と上り線の夫々に感応部を設けたものを図示したが、上下両線を跨ぐように感応部を設けて共用するのも状況にもよるが可能である。
上記実施例では、警報始動点ADC,CDCや警報終止点BDCで列車を検知するものとして、列車検知長の短い軌道回路である踏切制御子を挙げたが、列車検知長の長い一般的な軌道回路の使用が排除される訳ではない。
【0066】
上記実施例では、踏切物体検知装置がリレー回路で具体化されていたが、リレーは電磁リレーでも半導体リレーでも良い。また、デジタル回路やプログラマブルなマイクロプロセッサといった電子回路で踏切物体検知装置を具体化しても良い。
上記実施例では、物体検知結果が成立から不成立に転ずるときの状態遷移を列車進出確認時素500msだけ遅延させる具体的な手段として、下り物体検知結果取得部24の中継リレーに500msの緩動性を持たせたが、これは一例にすぎず、他のリレーを用いても実現しても良く、タイマやカウンタなどで実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
上記実施例では、複線区間の下り線の踏切への適用例を述べたが、本発明の踏切保安装置および踏切物体検知装置の適用は、それに限られる訳でなく、複線区間の上り線の踏切や、単線区間の踏切にも適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…線路、11…下り線、12…上り線、13…踏切、14…警報灯、
15+16…感応部、15…投光器、16…受光器、
ADC…下り始動点(警報始動点)、BDC…下り終止点(警報終止点)、
Sa,Sb…列車検知区間(検知長)、
20…下り踏切物体検知装置、
21…下り始動点検知結果取得部、22…下り終止点検知結果取得部、
23…下りバックアップ検知結果取得部、24…下り物体検知結果取得部、
25〜30…下り物体検知論理判定部、
25…下り警報検知部、26…所定時間経過検知部、27…踏切進入検知部、
28…踏切警報制御部、29…踏切警報停止部、30…物体弁別部
図1
図2
図3
図4
図5