【実施例1】
【0026】
本発明の踏切保安装置および踏切物体検知装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、(a)が複線区間の線路10のうち下り線11に係る踏切制御子(ADC,BDC)等の配置を示す記号図であり、(b)が下り踏切物体検知装置20のリレー回路図である。
【0027】
ここで例示する下り踏切物体検知装置20は、複線区間の踏切13に係る踏切保安装置に組み込まれており、踏切制御装置に加えて踏切障害物検知装置が設けられている場合はそれらを部分改造した形で分散設置されたり、既存装置の改造は信号提供程度にとどめて別ユニットを追加する形で設置されたり、既存の踏切障害物検知装置を取り外して或いは新規な踏切障害物検知装置の追加に代えて本装置20を追加する形で設置されたり、種々の態様で設置しうるので、ここでは、踏切保安装置の各部材の配置状態と、リレーを用いて具体化された下り踏切物体検知装置20の回路構成とを説明する。
【0028】
下り踏切物体検知装置20の設置先は(
図1(a)参照)、複線区間の線路10のうち下りの線路(下り線)11であり、それと並走する上り線(上りの線路)12には本例では同様な別の踏切物体検知装置が設置されているものとする。踏切13の踏切道や警報灯14は下り列車と上り列車とに共用されるが、下り線11や,下り始動点ADC(
警報始動点),下り終止点BDC(警報終止点),下り踏切バックアップ装置BBu,下り感応部15+16は、上り列車には使用されず、下り列車だけに使用される。なお、それらの部材の下り列車専用化は絶対的なものでなく、単線の場合や複線でも多少改造した場合など、共用できることがある(例えば一組の感応部15+16を下りの線路11と上りの線路12とに共用させても良い)。
【0029】
このような下り線11については、踏切13の起点側で手前位置の下り始動点ADCに、閉電路形の踏切制御子が接続されるのに加え、下り始動点ADCと踏切13との中間位置に下り終止点BDCが設定されて、そこに開電路形の踏切制御子が接続されるとともに、下り踏切バックアップ装置BBuが設置される。その際、下り始動点ADCの列車検知区間Saが踏切道に掛かることなく踏切道から外れるよう、その踏切制御子が踏切道から十分に離れた所に打ち込まれる。具体的には、下り始動点ADCは、踏切警報を発してから20〜600m程度の編成長の列車が踏切13に到達するまでの警報時間(第1種、第3種の踏切の別、跨線数などにより異なるが、概ね25秒〜40秒)を確保するために、列車の最高速度にもよるが踏切13から650〜850m程の遠くに設定される。
【0030】
これに対し、下り終止点BDCは、その列車検知区間Sbが踏切13の踏切道を跨ぐよう、その踏切制御子が踏切道の近くに打ち込まれる。具体的には、下り終止点BDCは、列車検知区間Sbが踏切道に掛かる所、例えば踏切道から数mほど離れた所に、列車検知区間Sbの両端が踏切道の両側に分かれる状態で、設定される。
また、下り踏切バックアップ装置BBuの地上子も、踏切道から数mほど離れた所に設置される。この設置状態は、下り踏切バックアップ装置BBuの地上子とATS装置の車上子とが正対したときに、列車の最先頭が踏切道上に差し掛かり、下り踏切物体検知装置20が列車の最先頭を物体と検知する位置関係を満たすとともに、下り踏切バックアップ装置BBuが下り終止点BDCの列車検知区間Sbに収まるという位置関係も満たしている。なお、図示の例では、下り終止点BDCが下り踏切バックアップ装置BBuと踏切13との間に位置しているが、下り踏切バックアップ装置BBuが下り終止点BDCと踏切13との間に位置していても良い。
【0031】
また、下り感応部15+16は、下り線11に対しても踏切13の踏切道に対しても両側に分かれて設置された投光器15と受光器16とからなるものを図示したが、赤外光・レーザ光での送受光に係る遮断の有無や、レーダ方式で測定した距離の遠近などに応じて、踏切道を通る人や車などの障害物と列車とを非接触で検知できるものであれば公知のものでも改良品でも良く、列車が少しでも踏切道に掛かっていれば列車検知結果が成立するよう線路と踏切道に対し平面視で傾斜しており、踏切障害物検知装置が既に設けられている場合、大抵は、その感応部を流用することが可能である。警報始動点用や警報終止点用の踏切制御子も、ATS利用の下り踏切バックアップ装置BBuも、既述した既存品や公知品で良いが、下り終止点BDCと下り踏切バックアップ装置BBuの位置は、列車が踏切道を通過し終わってから素早く警報停止するという観点からすれば、踏切道の手前になっているのがベターなので、本例ではそのようになっている。
【0032】
下り踏切物体検知装置20は(
図1(b)参照)、それらの地上設備から検知結果を取得するために下り始動点検知結果取得部21と下り終止点検知結果取得部22と下りバックアップ検知結果取得部23と下り物体検知結果取得部24とを具備するとともに、それらの検知結果に基づいて下り始動点ADC(警報始動点)への下り列車の進入とその後の踏切13への下り列車の進入とその後の踏切13からの下り列車の進出とを検知する下り物体検知論理判定部25〜30と具備しており、この実施例では、何れもリレー回路で具現化されている。
【0033】
下り始動点検知結果取得部21は、警報始動用の踏切制御子のリレー出力を条件とする中継リレーを主体とした回路からなり、下り始動点ADC(警報始動点)に係る列車検知結果である下り始動点検知結果APRを中継リレーで取得して出力するようになっている。
下り終止点検知結果取得部22は、警報終止用の踏切制御子のリレー出力を条件とする中継リレーを主体とした回路からなり、下り終止点BDC(警報終止点)に係る列車検知結果である下り終止点検知結果BPRを中継リレーで取得して出力するようになっている。
【0034】
下りバックアップ検知結果取得部23は、下り踏切バックアップ装置BBuのリレー出力を条件とする中継リレーを主体とした回路からなり、下り踏切バックアップ装置BBuの列車検知結果である下りバックアップ検知結果BBuRを中継リレーで取得して出力するようになっている。
下り物体検知結果取得部24は、下り感応部15+16のリレー出力である下り障検Rを条件とする中継リレーを主体とした回路からなり、下り線11における踏切道上の物体検知結果を下り感応部15+16から取得して、それを下り障検PRとして出力するようになっている。
【0035】
しかも、この下り物体検知結果取得部24の中継リレーには、物体検知結果が不成立から成立に転ずるときの状態遷移を遅延させることで過剰検知を回避するために約1s(1秒)の緩放性が付与されるとともに、500ms(0.5s、0.5秒、列車進出確認時素の分)の緩動性が付与されて、物体検知結果が成立から不成立に転ずるときの状態遷移が500msだけ遅延するようになっている。
この500msの列車進出確認時素は、次のような潜り最大幅を煽り最低速度で除した両立確定時間(450ms)以上の時間として選定されている。
【0036】
上記の両立確定時間を定める2要素のうち、潜り最大幅は、走行列車の台枠の下を前記感応部の検知媒体がくぐり抜ける隙間の最大値であり、課題欄において既述した5000mmが採用される。これは、踏切通過対象の全列車に係る「潜り最大幅」である。
また、煽り最低速度は、走行列車の車輪のレールからの浮き上がりに起因して終止点用踏切制御子の検知結果が一時的に成立から不成立に転ずることがある列車走行速度の最小値であり、具体的には、経験則に基づき、注意信号時の列車走行速度である時速55kmや時速45kmよりも低速の時速40kmが採用される。これは、踏切通過対象の全列車に係る「煽り最低速度」である。
【0037】
そして、潜り最大幅の5000mmを煽り最低速度の時速40kmで除して、450ms(0.45s、0.45秒)の両立確定時間が得られ、少しだけ安全側で切りの良い500ms(0.5s、0.5秒)が列車進出確認時素に採用されている。また、列車進出確認時素と両立確定時間との差には、切りの良さにとどまらず、上記の潜り最大幅や煽り最低速度として採用した値の不確実性を考慮した安全率を反映する意義や、地上設備におけるコンデンサ容量といった時素の経年変化による変動などを吸収する意義もある。
なお、列車進出確認時素に明確な上限は無いが、踏切からの列車進出の後に踏切警報を停止したり遮断桿を上げたりするタイミングが遅くなるのを回避するといった観点から、列車進出確認時素は1s以下が望ましい。
【0038】
下り物体検知論理判定部25〜30は、下り警報検知部25と所定時間経過検知部26と踏切進入検知部27と踏切警報制御部28と踏切警報停止部29と物体弁別部30とを具備していて、上述した下り始動点検知結果APRと下り終止点検知結果BPRと下りバックアップ検知結果BBuRと下り障検PR(物体検知結果)とに基づき、下り列車の進行に伴う検知結果の遷移に応じて下り始動点ADC(警報始動点)への列車進入とその後の踏切13への列車進入とその後の踏切13からの列車進出とを論理判定にて検知するようになっている。さらに、判定結果の一つとして後述の警報Rを出して警報灯14や在れば踏切遮断機の動作制御に供するとともに、もう一つの判定結果としてやはり後述する特殊信号発光機制御用リレーの信号EUR(以下、EURという。)を出して特殊信号発光器や障検警報用ブザー等の動作制御に供するようになっている。
【0039】
下り警報検知部25は、上述の下り始動点検知結果APRと下りSRと後述の下り警報停止Rとを条件とする下りSR信号用リレーを主体とした回路からなり、下り始動点検知結果APRの成立(リレー落下)にて警報始動点への列車進入を検知して下りSRを成立(リレー落下)させるとともに、その下りSR成立状態を下り警報停止Rの成立(リレー動作)時まで維持するようになっている。
所定時間経過検知部26は、上述の下りSRを条件とする下りSLPR信号用リレーを主体とした回路からなり、下りSLPRに20s(20秒)の緩放性を持たせることで、下りSRの成立(警報開始)から上述の遮断完了時間(20s)だけ遅れて下りSLPRが成立(リレー落下)するとともに、下りSRの不成立(リレー動作)に伴って下りSLPRも不成立状態に戻るようになっている。
【0040】
踏切進入検知部27は、後述の下り警報停止Rと上述の下りSLPRと上述の下り終止点検知結果BPRと上述の下りバックアップ検知結果BBuRと下り障検列車進入検知Rと上述の下り障検PR(物体検知結果)とを条件とする下り障検列車進入検知R信号用リレーを主体とした回路からなり、下りSLPRの成立(リレー落下)によって下り始動点ADCへの列車進入から上述の遮断完了時間(20s)が経過した後であることが確認されていることと、下り終止点検知結果BPRが成立(リレー動作)したことと、下りバックアップ検知結果BBuRが成立(リレー動作)したことと、下り障検PR(物体検知結果)が成立(リレー落下)したこととが、全て満たされたときに、下り障検列車進入検知Rを成立(リレー動作)させることで、踏切13への列車進入を検知するとともに、その下り障検列車進入検知R成立状態を下り警報停止Rの成立(リレー動作)時まで維持するようになっている。
【0041】
踏切警報制御部28は、上述の下りSRと上り側の同様な上りSRと上述の下り終止点検知結果BPRと上り側の同様な上り終止点検知結果DPRとを条件とする警報R信号用リレーを主体とした回路からなり、下りSRと下り終止点検知結果BPRと上りSRと上り終止点検知結果DPRとのうち何れか一つでも成立(下りSR及び上りSRのリレー落下、BPR及びDPRのリレー動作)している間は警報Rを成立(リレー落下)させることで、下り列車が下り始動点ADCに進入してから踏切13を通過し終えるまで、更には同様に上り列車の警報始動点進入から踏切進出までも、警報灯14に踏切警報を出させるようになっている。なお、上り側の上りSRは、下り踏切物体検知装置20の生成する信号ではないので図示や繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、例えば、本実施例の欄の冒頭で言及した上り線用の別の踏切物体検知装置において下り警報検知部25と同様の回路により下りSRと同様にして生成されるので、その出力信号が用いられる。
【0042】
踏切警報停止部29は、何れも上述した下り障検列車進入検知Rと下り障検PR(物体検知結果)と下り終止点検知結果BPRとを条件とする下り警報停止R信号用リレーを主体とした回路からなり、下り障検列車進入検知Rが成立(リレー動作)していることに基づいて踏切13への列車進入が検知された後であることと、下り終止点検知結果BPRが不成立(リレー落下)になっていることと、下り障検PR(物体検知結果)が不成立(リレー動作)になったこととが、全て満たされたときに、踏切13からの列車進出を検知して、下り警報停止Rを成立(リレー動作)させるようになっている。
【0043】
物体弁別部30は、上述の警報Rと上述の下り障検PR(物体検知結果)と上述の下り障検列車進入検知Rと上り側も同様になっていればその上り障検PR及び上り障検列車進入検知Rとを条件とするEUR用の特殊信号発光機制御用リレーを主体とした回路からなり、警報Rが成立(リレー落下)していて警報灯14が踏切警報を出しているときのうち、下り障検列車進入検知Rが不成立(リレー落下)になっているとき、即ち下り始動点ADC(警報始動点)への列車進入の検知から踏切13への列車進入の検知までの間は、下り感応部15+16が踏切道上の物体を検知して下り障検R又は下り障検PR(物体検知結果)が落下すると、下り感応部15+16の検知した物体を障害物と判定して、過剰検知回避用の緩放性による4〜6sの確認期間の経過後にEURを成立(リレー落下)させることで踏切障害物検知装置に障検警報を出させるようになっている。これに対し、それ以外のときは、特に警報Rの成立(リレー落下)時であっても、下り障検列車進入検知Rが成立(リレー動作)しているときは、すなわち踏切への列車進入の検知から踏切からの列車進出の検知までの間は、下り感応部15+16の検知した物体を列車と判定して、EURを不成立(リレー動作)状態にすることで、踏切障害物検知装置に障検警報を出させないようになっている。
【0044】
この実施例1の踏切保安装置および踏切物体検知装置20について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図2(a)は、複線区間の下り線11を走行する下り列車の進行状態を示す記号図である。また、
図2(b)は、下り踏切物体検知装置20の動作状態を示すリレー信号のタイムチャートであり、
図3(a),(b)は、何れも、
図2(b)のタイムチャートの一部の拡大図である。
【0045】
ここで、上述したように、踏切13を通過する対象の全列車に係る煽り発生限界の列車走行速度最小値である煽り最低速度が40km/h(即ち時速40km)であり、やはり踏切通過対象の全列車に係る下り列車の台枠の下を感応部15+16の検知媒体がくぐり抜ける隙間の最大値である潜り最大幅が5m(即ち5000mm)であり、その5mを煽り最低速度40km/hで除して算出された両立確定時間が0.45sであるので、両立確定時間0.45sと煽り最低速度40km/hとは密に対応していると言える。
【0046】
これに対し、両立確定時間0.45sに少しだけ上乗せして選定された列車進出確認時素0.5sと密に対応しているのは、その0.5sで潜り最大幅5mを除して得られる36km/h(即ち時速36km)であり、この潜り最低速度36km/hは、踏切13を通過する下り列車の走行速度がその潜り最低速度以上であれば、下り物体検知結果取得部24の緩動性(列車進出確認時素0.5s)の働きによって、感応部15+16の検出した不所望な「くぐり抜け」が下り物体検知結果取得部24の出力する下り障検PRにまで及んで検知されるのが阻止される限界の速度である。
【0047】
このような煽り最低速度40km/hと潜り最低速度36km/hとを用いて
図2(b),
図3(a),
図3(b)のタイムチャートを分類すると、
図2(b)は、列車走行速度が潜り最低速度36km/hと煽り最低速度40km/hとの間であって、「くぐり抜け」が検知されず、「煽り」が発生しないときのものである。
また、
図3(a)は、列車走行速度が煽り最低速度40km/hよりも高速であって、「煽り」は発生するが、「くぐり抜け」が検知されないときのものである。
さらに、
図3(b)は、列車走行速度が潜り最低速度36km/hよりも低速であって、「くぐり抜け」は検知されるが、「煽り」が発生しないときのものである。
【0048】
これから詳述する列車通過時の一連動作からも確認されるように(
図2(a)参照)、下り始動点ADCの列車検知区間Saの起点側の端から、踏切13の踏切道(より正確には列車検知区間Sbと下り感応部15+16検知区間とを併せた区間)の終点側の端までが、警報Rの成立(リレー落下)する下りの踏切制御区間になる。
また、踏切13の踏切道(より正確には列車検知区間Sbと下り感応部15+16検知区間とが重複する区間)の起点側の端から、踏切13の踏切道(より正確には列車検知区間Sbと下り感応部15+16検知区間とを併せた区間)の終点側の端までが、踏切障害物検知をマスク・抑制するマスク条件として使用される下り障検列車進入検知Rの成立(リレー動作)する下りの障検マスク区間になる。そのため、下り列車が下りの踏切制御区間より起点側を走行して踏切13に向かっているところから説明を始める。
【0049】
このとき、すなわち下り列車が下りの踏切制御区間に在線していないときには(
図2(b)の左端部を参照)、下り始動点検知結果APRが不成立(リレー動作)になり、下り終止点検知結果BPRも下りバックアップ検知結果BBuRも不成立(リレー落下)になっている。また、踏切横断中のものが無ければ下り障検R,PR(物体検知結果)が不成立(リレー動作)になり、踏切横断の有無にかかわらず下り障検列車進入検知Rも下り警報停止Rも不成立(リレー落下)になっている。さらに、下りSRも下りSLPRも警報Rも不成立(リレー動作)になっているので、警報灯14は踏切警報を発せず、踏切障害物検知装置は障検警報を発せず、踏切道の通行が認容される。
【0050】
そして、下り列車が下り始動点ADCに到達して列車検知区間Saに進入すると(
図2(a)参照)、そのとき(
図2(b)時刻T1参照)、下り始動点検知結果APRが成立(リレー落下)し、それに応じて下りSRが成立(リレー落下)し、さらには警報Rも成立(リレー落下)するので、警報灯14から踏切警報が発せられる。下り列車が下り始動点ADCを通過してからも暫くは(
図2時刻T1〜T3参照)、下り始動点ADCへの列車進入の検知後の上述のリレー状態が継続するが、その検知から上述の遮断完了時間(20s)が経過すると、下りSLPRが成立(リレー落下)して、踏切13への列車進入を検知する態勢が整う。
【0051】
遮断完了時間(20s)は、上述したように1種踏切において遮断機により踏切が遮断されるまでの時間であり、踏切警報機や踏切しゃ断機により踏切が遮断され、通常は道路通行人や自動車が踏切道に侵入することができなくなるまでの期間である。警報始動点への列車進入から上記の遮断完了時間(20s)が経過したことは、下り列車が踏切13の踏切道の間近に接近した状態になっている或いはなりつつあることを意味する。そのため、踏切13への列車進入の検知結果である障検列車進入検知Rの条件に、下りSRに20秒程の緩放時素を付加した下りSLPRの成立(リレー落下)条件を追加することにより、踏切への列車進入を示す信号の不所望な成立の機会を的確に限定して誤検知を少なくすることができる。
【0052】
具体的には、その間に(
図2(b)時刻T2辺りを参照)、踏切13の踏切道上の二本レールがスキー板のエッジといった金属物などで短絡されると短絡解消・解放まで一時的に下り終止点検知結果BPRが成立(リレー動作)するが(
図2(b)#1a参照)、下り障検PR(物体検知結果)が不成立(リレー動作)であることや、下りバックアップ検知結果BBuRが不成立(リレー落下)であることから、下り障検列車進入検知Rが不成立(リレー落下)を維持するので(
図2(b)#1b参照)、踏切13への列車進入の誤検知が的確に防止される。
【0053】
また、踏切13の踏切道を歩行者や自動車などが通過すると、下り感応部15+16の下り障検Rが一時的に成立(リレー落下)するが、その成立時間が1s未満のものは、下り物体検知結果取得部24の1sの緩放性によって速やかに除かれるので、下り障検PRにも下り障検列車進入検知Rにも影響しない。一方、成立時間が1s以上の下り障検Rは(
図2(b)#2a参照)、下り障検PRの一時的な成立(リレー落下)を招くが(
図2(b)#2b参照)、下りバックアップ検知結果BBuRが不成立(リレー落下)であることや、下りSLPRが不成立(リレー動作)であることから、下り障検列車進入検知Rが不成立(リレー落下)を維持する(
図2(b)#2c参照)。
そのため、何れの場合も、踏切13への列車進入の誤検知が的確に防止される。
【0054】
それから、下り列車が下り終止点BDCまで進むと(
図2時刻T3参照)下り終止点検知結果BPRが成立(リレー動作)し、下り列車が下り踏切バックアップ装置BBuまで進むと下りバックアップ検知結果BBuRが成立(リレー動作)し、更に下り列車の先頭が踏切13の踏切道に差し掛かると(
図2時刻T4参照)、下り障検R,PR(物体検知結果)が成立(リレー落下)する。これで、警報始動点への列車進入の検知後に必要な遮断完了時間(20s)が経過したことと、終止点検知結果が成立したことと、バックアップ検知結果が成立したことと、踏切道上の物体検知結果が成立したこととが、全て満たされる。そのため、下り障検列車進入検知Rが成立(リレー動作)して、踏切13への列車進入が検知されることとなる。
【0055】
更に下り列車が踏切道上を走行すると、下りバックアップ検知結果BBuRが不成立(リレー落下)となり、それから、下り列車が最後尾まで踏切13の踏切道を完全に通過し終えると(
図2時刻T5参照)、同時に或いは僅かに前後して、下り終止点検知結果BPRが不成立(リレー落下)になるとともに、下り障検R,PR(物体検知結果)が不成立(リレー動作)に戻り、それに応じて下り警報停止Rが一時だけ成立(リレー動作)し、それに緩放性の100msだけ遅れて下り障検列車進入検知Rが不成立(リレー落下)になる。このように、踏切13への列車進入の検知後に、下り終止点検知結果BPRと下り障検PR(物体検知結果)との双方が不成立になったことに応じて、下り警報停止Rが一時だけ成立(リレー動作)することで、踏切13からの列車進出が検知されることとなる。
【0056】
それに加え、下り警報停止Rの成立(リレー動作)に応じて、下りSRも下りSLPRも警報Rも不成立(リレー動作)状態になって(
図2(b)の右端部を参照)、下り列車が下りの踏切制御区間に在線していないときの状態に下り踏切物体検知装置20の動作状態が戻るので(
図2(b)の左端部を参照)、次の下り列車を迎えることができる。
このような一連の動作状態で、踏切通過時(
図2時刻T3〜T5参照)の列車走行速度が潜り最低速度36km/hと煽り最低速度40km/hとの間にあると、上述したように(
図2(b)参照)、下り障検PRに乱れが生じないので、「くぐり抜け」の不所望な検知はなされず、更に、「煽り」の発生も無いので、下り終止点検知結果BPRにも乱れが生じない。そのため、踏切13に係る列車進入と列車進出が的確に検知される。
【0057】
これに対し、踏切通過時(
図3(a)時刻T3〜T5参照)の列車走行速度が煽り最低速度40km/hよりも高速であると、上述したように、「くぐり抜け」は検知されないが、「煽り」は発生することがある(
図3(a)参照)。煽りが発生して、その影響が下り終止点検知結果BPRに及ぶと、成立(リレー動作)状態を維持すべき下り終止点検知結果BPRが一時的に不成立(リレー落下)状態に転じてしまうが、これが踏切13への列車進入の検知後に起こっても(
図3(a)#3a参照)、くぐり抜けの影響の無い下り障検PRが成立(リレー落下)状態を維持しているため(
図3(a)#3b参照)、下り警報停止Rは不成立(リレー落下)状態を維持するので(
図3(a)#3c参照)、踏切警報の早すぎる停止も踏切13からの列車進出の誤検知も的確に防止される。
【0058】
さらに、踏切通過時(
図3(b)時刻T3〜T5参照)の列車走行速度が潜り最低速度36km/hよりも低速であると、上述したように、「煽り」は発生しないが、「くぐり抜け」は検知されることがある(
図3(b)参照)。下り感応部15+16の下り障検Rに発現するくぐり抜けのうち(
図3(b)#4a参照)、列車進出確認時素0.5sを超えるものだけが下り物体検知結果取得部24によって検知され、その影響が下り障検PRに及ぶと、成立(リレー落下)状態を維持すべき下り障検PRが一時的に不成立(リレー動作)状態に転じてしまうが、これが踏切13への列車進入の検知後に起こっても(
図3(b)#4b参照)、煽りの影響の無い下り終止点検知結果BPRが成立(リレー動作)状態を維持しているため(
図3(b)#4c参照)、下り警報停止Rは不成立(リレー落下)状態を維持するので(
図3(b)#4d参照)、踏切警報の早すぎる停止も踏切13からの列車進出の誤検知も的確に防止される。