特許第6645650号(P6645650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工サーマルシステムズ株式会社の特許一覧

特許6645650制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム
<>
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000012
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000013
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000014
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000015
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000016
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000017
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000018
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000019
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000020
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000021
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000022
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000023
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000024
  • 特許6645650-制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム 図000025
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6645650
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/47 20180101AFI20200203BHJP
【FI】
   F24F11/47
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-192697(P2018-192697)
(22)【出願日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年3月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物 平成30年 電気学会研究会資料,ST−18−014,第27〜31頁,2018.3,システム研究会
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年3月1日千代田区において開催されたシステム研究会(電気学会)で発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】森川 純次
(72)【発明者】
【氏名】近藤 成治
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 隆
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 忠三
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−142494(JP,A)
【文献】 特開2018−040510(JP,A)
【文献】 特開2014−009895(JP,A)
【文献】 特開2014−238221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00−11/89
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と複数の室内機が冷媒配管で接続された1つの冷媒系統で構成される空調機について、複数の前記空調機を制御することによって、複数の前記空調機のうちの異なる前記冷媒系統に属する前記室内機がそれぞれの空調対象のエリアに配置された1つ又は複数の前記エリアを空調する制御装置であって、
未来の所定期間における単位時間毎の電力料金単価の情報を取得する料金情報取得部と、
複数の前記空調機毎の運転状態に関する運転状態情報を取得する運転情報取得部と、
前記運転状態情報と所定の予測モデルとに基づいて、前記所定期間における複数の前記空調機毎の運転状態を予測する予測部と、
前記予測部が予測した運転状態に基づく前記所定期間にわたる前記エリア毎の快適性の評価値と、前記単位時間毎の電力料金単価の情報に基づく前記所定期間にわたる複数の前記空調機の動作に必要な電力料金の前記空調機毎の評価値と、に基づく前記空調機の全てを対象とする運転の評価値を算出する評価部と、
前記評価値が最適な値となるように運転するための前記空調機に対する制御情報を複数の前記空調機毎に算出する制御情報算出部と、
を備え、
前記評価部は、前記エリアに配置された前記室内機のうち、停止中の前記室内機を除く運転中の前記室内機について設定された設定温度と当該室内機によって制御される空調温度との温度差に基づいて前記エリア毎の快適性の評価値を算出する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御情報は、前記所定期間において前記空調機を運転するのに必要な電力の前記単位時間以下の長さを有する時間ごとの上限値である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記エリア毎の快適性の評価値に、前記エリアの空調の優先度を示す優先度係数を乗じた値を全ての前記エリアについて合計した値と、前記電力料金の評価値と、に基づいて、前記運転の評価値を算出し、
所定の設定温度の達成を重視する前記エリアについては、前記設定温度の達成を重視しない前記エリアよりも大きな値を有する前記優先度係数が設定される、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御情報算出部は、前記エリアに設置された前記室内機を備える前記空調機のそれぞれについて前記エリアに対して設定された前記優先度係数に応じた制御情報を算出する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
複数の建物の各々に1台以上の前記空調機が設置され、
前記評価部が、複数の前記建物の全ての前記エリア毎の快適性の評価値と、複数の前記建物に設置された全ての前記空調機を対象とする前記電力料金の評価値と、に基づいて前記評価値を算出する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
1つの前記エリアに対する前記快適性の評価値は、設定された設定温度と当該エリアを空調対象とする前記室内機によって制御される空調温度との温度差と、前記室内機の定格能力との積に基づく値である、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の制御装置と、
前記制御装置が算出する制御情報に基づいて運転する1台以上空調機と、
を備える空調制御システム。
【請求項8】
室外機と複数の室内機が冷媒配管で接続された1つの冷媒系統で構成される空調機について、複数の前記空調機を制御することによって、複数の前記空調機のうちの異なる前記冷媒系統に属する前記室内機がそれぞれの空調対象のエリアに配置された1つ又は複数の前記エリアを空調する制御方法であって、
未来の所定期間における単位時間毎の電力料金単価の情報を取得するステップと、
複数の前記空調機毎の運転状態に関する運転状態情報を取得するステップと、
前記運転状態情報と所定の予測モデルとに基づいて、前記所定期間における複数の前記空調機毎の運転状態を予測するステップと、
前記予測した運転状態に基づく前記所定期間にわたる前記エリア毎の快適性の評価値と、前記単位時間毎の電力料金単価の情報に基づく前記所定期間にわたる複数の前記空調機の動作に必要な電力料金の前記空調機毎の評価値と、に基づく前記空調機の全てを対象とする運転の評価値を算出するステップと、
前記評価値が最適な値となるように運転するための前記空調機に対する制御情報を複数の前記空調機毎に算出するステップと、
を有し、
前記評価値を算出するステップでは、前記エリアに配置された前記室内機のうち、停止中の前記室内機を除く運転中の前記室内機について設定された設定温度と当該室内機によって制御される空調温度との温度差に基づいて前記エリア毎の快適性の評価値を算出する、
制御方法。
【請求項9】
室外機と複数の室内機が冷媒配管で接続された1つの冷媒系統で構成される空調機について、複数の前記空調機を制御することによって、複数の前記空調機のうちの異なる前記冷媒系統に属する前記室内機がそれぞれの空調対象のエリアに配置された1つ又は複数の前記エリアの空調を制御するコンピュータを
未来の所定期間における単位時間毎の電力料金単価の情報を取得する手段、
複数の前記空調機毎の運転状態に関する運転状態情報を取得する手段、
前記運転状態情報と所定の予測モデルとに基づいて、前記所定期間における複数の前記空調機毎の運転状態を予測する手段、
前記予測した運転状態に基づく前記所定期間にわたる前記エリア毎の快適性の評価値と、前記単位時間毎の電力料金単価の情報に基づく前記所定期間にわたる複数の前記空調機の動作に必要な電力料金の前記空調機毎の評価値と、に基づく前記空調機の全てを対象とする運転の評価値を算出する手段、
前記評価値が最適な値となるように運転するための前記空調機に対する制御情報を複数の前記空調機毎に算出する手段、
として機能させ、
前記評価値を算出する手段は、前記エリアに配置された前記室内機のうち、停止中の前記室内機を除く運転中の前記室内機について設定された設定温度と当該室内機によって制御される空調温度との温度差に基づいて前記エリア毎の快適性の評価値を算出する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力の需要と供給のバランスを、例えば電力料金を上下させることによって調整し、ピーク時の電力供給量を抑制するADR(Automated Demand Response)と呼ばれる技術が存在する。例えば、米国では、OpenADRによる電力料金のリアルタイム化が一般市場において展開されており、リアルタイムで安い電力供給会社を選択する等の運用が可能になっている。我が国においても政府主導のもとADR規格として、米国のOpenADR2.0の国内版を展開する動きがある。
【0003】
このような動きに対し、電力料金がリアルタイムに変化する条件下で、空調の快適さを損なわずに電力料金を抑制する空調システムの制御方法(RTP(Real Time Pricing)制御)が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−040510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のRTP制御は、室外機および該室外機と冷媒配管で接続された1つ以上の室内機で構成される1つの冷媒系統を制御対象としている。ビルなどでは複数の異なる冷媒系統に属する空調機が導入されており、1つの部屋には異なる冷媒系統に属する複数の室内機が設けられている場合がある。RTP制御は、冷媒系統ごとに別々に制御を行うため、空調対象の部屋が複数の冷媒系統に跨る場合、その部屋に合わせた空調を行うことが難しい。また、空調の省エネルギー化は、部屋単位、フロア単位で行うことが多いが、RTP制御は、1つの冷媒系統全体について空調の快適性と低コストを実現するための制御であるため、部屋単位、フロア単位の制御を行うことが難しい。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる制御装置、空調制御システム、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、室外機と複数の室内機が冷媒配管で接続された1つの冷媒系統で構成される空調機について、複数の前記空調機を制御することによって、複数の前記空調機のうちの異なる前記冷媒系統に属する前記室内機がそれぞれの空調対象のエリアに配置された1つ又は複数の前記エリアを空調する制御装置であって、制御装置は、未来の所定期間における単位時間毎の電力料金単価の情報を取得する料金情報取得部と、複数の前記空調機毎の運転状態に関する運転状態情報を取得する運転情報取得部と、前記運転状態情報と所定の予測モデルとに基づいて、前記所定期間における複数の前記空調機毎の運転状態を予測する予測部と、前記予測部が予測した運転状態に基づく前記所定期間にわたる前記エリア毎の快適性の評価値と、前記単位時間毎の電力料金単価の情報に基づく前記所定期間にわたる複数の前記空調機の動作に必要な電力料金の前記空調機毎の評価値と、に基づく前記空調機の全てを対象とする運転の評価値を算出する評価部と、前記評価値が最適な値となるように運転するための前記空調機に対する制御情報を複数の前記空調機毎に算出する制御情報算出部と、を備え、前記評価部は、それぞれの前記エリアに配置された前記室内機のうち、停止中の前記室内機を除く運転中の前記室内機について設定された設定温度と当該室内機によって制御される空調温度との温度差に基づいて前記エリア毎の快適性の評価値を算出する。
本発明の一態様によれば、前記制御情報は、前記所定期間において前記空調機を運転するのに必要な電力の前記単位時間以下の長さを有する時間ごとの上限値である。
【0008】
本発明の一態様によれば、前記評価部は、前記エリア毎の快適性の評価値に、前記エリアの空調の優先度を示す優先度係数を乗じた値を全ての前記エリアについて合計した値と、前記電力料金の評価値と、に基づいて、前記運転の評価値を算出し、所定の設定温度の達成を重視する前記エリアについては、前記設定温度の達成を重視しない前記エリアよりも大きな値を有する前記優先度係数が設定される。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記制御情報算出部は、前記エリアに設置された前記室内機を備える前記空調機のそれぞれについて前記エリアに対して設定された前記優先度係数に応じた制御情報を算出する。
【0010】
本発明の一態様によれば、複数の建物の各々に1台以上の前記空調機が設置され、前記評価部が、複数の前記建物の全ての前記エリア毎の快適性の評価値と、複数の前記建物に設置された全ての前記空調機を対象とする前記電力料金の評価値と、に基づいて前記評価値を算出する。
【0011】
本発明の一態様によれば、1つの前記エリアに対する前記快適性の評価値は、設定された設定温度と当該エリアを空調対象とする前記室内機によって制御される空調温度との温度差と、前記室内機の定格能力との積に基づく値である。
【0012】
本発明の一態様によれば、空調制御システムは、上記の何れかに記載の制御装置と、前記制御装置が算出する制御情報に基づいて運転する1台以上の空調機とを備える。
【0013】
本発明の一態様によれば、室外機と複数の室内機が冷媒配管で接続された1つの冷媒系統で構成される空調機について、複数の前記空調機を制御することによって、複数の前記空調機のうちの異なる前記冷媒系統に属する前記室内機がそれぞれの空調対象のエリアに配置された1つ又は複数の前記エリアを空調する制御方法であって、制御方法は、未来の所定期間における単位時間毎の電力料金単価の情報を取得するステップと、複数の前記空調機毎の運転状態に関する運転状態情報を取得するステップと、前記運転状態情報と所定の予測モデルとに基づいて、前記所定期間における複数の前記空調機毎の運転状態を予測するステップと、前記予測した運転状態に基づく前記所定期間にわたる前記エリア毎の快適性の評価値と、前記単位時間毎の電力料金単価の情報に基づく前記所定期間にわたる複数の前記空調機の動作に必要な電力料金の前記空調機毎の評価値と、に基づく前記空調機の全てを対象とする運転の評価値を算出するステップと、前記評価値が最適な値となるように運転するための前記空調機に対する制御情報を複数の前記空調機毎に算出するステップと、を有し、前記評価値を算出するステップでは、それぞれの前記エリアに配置された前記室内機のうち、停止中の前記室内機を除く運転中の前記室内機について設定された設定温度と当該室内機によって制御される空調温度との温度差に基づいて前記エリア毎の快適性の評価値を算出する。
【0014】
本発明の一態様によれば、プログラムは、室外機と複数の室内機が冷媒配管で接続された1つの冷媒系統で構成される空調機について、複数の前記空調機を制御することによって、複数の前記空調機のうちの異なる前記冷媒系統に属する前記室内機がそれぞれの空調対象のエリアに配置された1つ又は複数の前記エリアの空調を制御するコンピュータを、未来の所定期間における単位時間毎の電力料金単価の情報を取得する手段、複数の前記空調機毎の運転状態に関する運転状態情報を取得する手段、前記運転状態情報と所定の予測モデルとに基づいて、前記所定期間における複数の前記空調機毎の運転状態を予測する手段、前記予測した運転状態に基づく前記所定期間にわたる前記エリア毎の快適性の評価値と、前記単位時間毎の電力料金単価の情報に基づく前記所定期間にわたる複数の前記空調機の動作に必要な電力料金の前記空調機毎の評価値と、に基づく前記空調機の全てを対象とする運転の評価値を算出する手段、前記評価値が最適な値となるように運転するための前記空調機に対する制御情報を複数の前記空調機毎に算出する手段、として機能させ、前記評価値を算出する手段は、それぞれの前記エリアに配置された前記室内機のうち、停止中の前記室内機を除く運転中の前記室内機について設定された設定温度と当該室内機によって制御される空調温度との温度差に基づいて前記エリア毎の快適性の評価値を算出する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、時々刻々と変化する電力料金に対応して、複数の冷媒系統全体での経済性と快適性を最適化する制御を行うことができる。また、空調快適性を重視する空間については優先的に空調を行うよう制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態における空調制御システムの一例を示す第一の図である。
図2】本発明の第一実施形態における制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の第一実施形態における電力料金スケジュール情報の一例を示す図である。
図4】本発明の第一実施形態における運転制限スケジュール情報の一例を示す図である。
図5】本発明の第一実施形態における電力制限運転を説明する第一の図である。
図6】本発明の第一実施形態における電力制限運転を説明する第二の図である。
図7】本発明の第一実施形態におけるエリア複合RTP制御の効果を説明する第一の図である。
図8】本発明の第一実施形態におけるエリア複合RTP制御の効果を説明する第二の図である。
図9】本発明の第一実施形態における設定温度からの乖離に対するペナルティの設定例を示す図である。
図10】本発明の第一実施形態における空調制御システムの一例を示す第二の図である。
図11】本発明の第一実施形態における制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図12】本発明の第一実施形態における電力制限値の探索範囲設定の一例を示す図である。
図13】本発明の第二実施形態における制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
図14】本発明の各実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態による空調制御システムを図1図12を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態における空調制御システムの一例を示す第一の図である。空調制御システム100は、ビル4に備えられた1台以上空調機31〜3mを、ユーザの快適性を保ちつつ、低コストで運転するための制御システムである。さらに本実施形態の空調制御システム100は、エリア毎にそのエリアに対する空調の優先度を設定したうえで、空調機31〜3m全体での経済性やエリア毎の快適性を所望の状態に制御することを特徴とする。ここでエリアとは、空調対象の単位となる空間のことである。エリアは、ビル4内の1つの部屋、1つのフロアであってもよいし、後述するように複数のビルを跨る複数の部屋や複数のフロアを1つのエリアとして設定してもよい。また、1つのエリアには、異なる冷媒系統(ブロック)に属する複数の室内機が設置されていてもよい。
【0018】
空調制御システム100は、DRASサーバ1と、DRASクライアント2と、ゲートウェイ3と、空調機31〜3mと、を含んで構成される。DRASサーバ1は、例えば電力会社が運用するサーバ端末装置である。電力会社は、電力料金単価を例えば10分毎に変更する。例えば、電力会社は、電力の需要による電力不足が見込まれる場合には、電力料金単価を上昇させて需要家に節電を促し、電力需要が比較的少ないと見込まれる時間には電力料金単価を下げて電力の消費を促す。DRASサーバ1とDRASクライアント2とは通信可能に接続されており、一般に公開されたプロトコル(例えばOpenADR2.0等)に基づく通信を行う。例えば、DRASサーバ1は、未来における所定期間分(例えば、30分間)の電力料金のスケジュール情報を、DRASクライアント2に送信する。
【0019】
DRASクライアント2は、例えば空調機31等の運用を行う企業が運用するサーバ端末装置である。DRASクライアント2は、DRASサーバ1から取得した電力料金のスケジュール情報に基づいて、どのような運転を行えば、ユーザの設定温度を実現しつつ安い電力料金で空調機31〜3mを運転できるかを示す運転制限スケジュール情報を算出する。DRASクライアント2は、インターネット等のネットワークを介して、ゲートウェイ3と通信可能に接続されている。DRASクライアント2は、算出した運転制限スケジュール情報をゲートウェイ3に送信する。
【0020】
ゲートウェイ3は、ビル4に設けられた通信装置である。ビル4には、複数の室内機を有するマルチ型の空調機31〜3mが設けられている。空調機31は、室外機301と、室内機311〜31nを備える。空調機32は、室外機302と、室内機321〜32nを備える。空調機33,34,3mについても同様である。例えば、室外機301は、圧縮機、熱交換器等を有しており、冷媒を室内機311,31n等へ送出する。室内機311等は、ビル4の部屋に設けられており、その部屋の温度を、ユーザ所望の温度となるように空調を行う。空調機31〜3mの各々は、1つの冷媒系統である。つまり、室外機301と、室内機311〜31n等は冷媒配管で接続された1つの制御単位である。本実施形態では、この制御単位をブロックと呼ぶ。例えば、空調機31をブロック1、空調機32をブロック2、空調機3mをブロックmと呼ぶ。空調制御システム100では、空調機31等の制御はブロック単位で行うが、温度制御はエリア単位で行う。例えば、エリアa1は1つの部屋であって、エリアa1の温度は複数の室内機311、312、321、322を用いて制御する。室内機311、312はブロック1、室内機321、322はブロック2に属している。同様にエリアa2は1つのフロア全体であって、エリアa2の温度を制御する室内機31n〜3mnは、それぞれブロック1〜mに属している。エリアが複数のブロックに跨ることは必須ではない。例えば、エリアa3は、室内機342〜343によって制御されるが、室内機342〜343は何れもブロック4に属している。また、エリアは、エリアa4のように1つの室内機3m1で制御される空間であってもよい。本実施形態では、エリア単位で室温達成の優先度を設定することができる。例えば、エリアa1の温度を重視する場合、エリアa1の優先度を高く設定することで、他のエリアの温度を多少犠牲にしても、エリアa1の温度をより高い精度で所望の温度に制御することができる。また、室温の達成をあまり重視しない部屋については、各部屋をそれぞれ1つずつのエリアとして設定してもよいし、それらの部屋をまとめて一つのエリアとして設定してもよい。
【0021】
ゲートウェイ3は、DRASクライアント2から取得した空調機毎の運転制限スケジュール情報を、対応する空調機31〜3mへ出力する。空調機31〜3mの各々は取得した運転制限スケジュール情報に基づいて、自装置の運転を制御する。
【0022】
図2は、本発明の第一実施形態における制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
図2を用いてDRASクライアント2の構成について説明する。DRASクライアント2は、運転情報取得部21と、料金情報取得部22と、制御情報算出部23と、運転状態予測部24と、評価部25と、通信部26と、記憶部27とを備える。
運転情報取得部21は、空調機31〜3mの運転情報を取得する。運転情報とは、例えば、空調機31の運転による消費電力量、運転時の室内温度、設定温度および室外温度等である。運転情報取得部21は、例えば所定の時間毎に空調機31〜3mの運転情報を取得し、記憶部27に取得した運転情報を記録する。
料金情報取得部22は、DRASサーバ1が送信した電力料金のスケジュール情報を取得する。電力料金のスケジュール情報については、後に図3を用いて説明する。
【0023】
制御情報算出部23は、所定の最適化手法を用いて、ユーザの快適性を保ちつつ、電力料金を抑制する空調機31〜3mの運転を実現する運転制限スケジュール情報を算出する。所定の最適化手法とは、例えば、焼きなまし法(Simulated Annealing)、遺伝的アルゴリズム、粒子群最適化などの手法である。また、ユーザの快適性を保ちつつ、電力料金を抑制する運転制限スケジュール情報とは、後述する評価部25が算出する評価値Jcが最も小さな値となる場合の運転制限スケジュールのことをいう。本実施形態の場合、運転制限スケジュール情報とは、所定時間毎の空調機31〜3mのそれぞれが消費する電力の上限値である。
【0024】
運転状態予測部24は、運転制限スケジュール情報が示す条件下での空調機31〜3mの運転状態を予測する。例えば、運転状態予測部24は、運転情報取得部21が取得した空調機31の現在の運転状態に基づいて数分先の空調機31の運転状態を予測する。また、例えば、運転状態予測部24は、現在の運転状態に基づいて予測した数分先の空調機31の運転状態に基づいて、さらに数分先の空調機31の運転状態を予測する。運転状態の予測には、例えば、ニューラルネットワークと呼ばれる機械学習アルゴリズムによる予測モデルを用いる。
【0025】
評価部25は、運転状態予測部24が予測した所定時間先の空調機31〜3mの運転を後述する評価関数によって評価する。より具体的には、評価部25は、電力料金評価部251と快適性評価部252とを備えており、電力料金(コスト)とユーザにとっての快適性の両面から運転状態予測部24が予測した未来における空調機31〜3mの運転に対する評価を行う。
通信部26は、他装置との通信を行う。例えば、通信部26は、DRASサーバ1とデータ通信を行い、電力料金のスケジュール情報を取得する。あるいは、通信部26は、ゲートウェイ3とデータ通信を行い、運転制限スケジュール情報をゲートウェイ3へ送信する。
【0026】
記憶部27は、運転制限スケジュール情報の算出に必要な種々のデータを記憶する。例えば、記憶部27は、運転状態予測部24が運転状態の予測に用いる予測モデルを記憶している。この予測モデルは、ある運転制限スケジュール情報を与えた場合の過去の運転状態の実績情報に基づいてニューラルネットワーク等の手法で生成した予測モデルである。この予測モデルは、電力制限スケジュール情報と、実際の消費電力量、室内温度、室外温度を入力すると、所定時間先の未来における室内温度とそのときまでに消費される消費電力量の予測値を出力する。本実施形態の場合、予測モデルは、1分毎の室内温度と消費電力量を5分先まで予測する。予測モデルは、例えば、空調機31〜3m毎に用意されている。
【0027】
次に電力料金のスケジュール情報について説明する。
図3は、本発明の第一実施形態における電力料金スケジュール情報の一例を示す図である。電力料金のスケジュール情報には、所定時間(例えば10分)毎の電力料金単価が含まれている。図3の例の場合、本日の14:00〜14:10では1kWhあたりの電力料金が30円、14:10〜14:20では10円、14:20〜14:30では100円となっている。DRASサーバ1は、例えば、時間が10分経過する毎に、30分先までの10分毎の電力料金単価が含まれたスケジュール情報をDRASクライアント2へ送信する。DRASクライアント2では、料金情報取得部22が電力料金単価のスケジュール情報を、通信部26を介して取得し、記憶部27へ記録する。
【0028】
次に運転制限スケジュール情報について説明する。
図4は、本発明の第一実施形態における運転制限スケジュール情報の一例を示す図である。運転制限スケジュール情報には、所定時間(例えば5分)毎の電力制限値が含まれている。
この電力制限値は、図3で例示した電力料金単価の場合に、ユーザが設定した室内の設定温度をなるべく達成しつつ、最安の電力料金で空調機31等を運転するための空調機31等が消費する電力の上限値である。
図4の例の場合、単価が30円の時間帯(14:00〜14:10)では、前半が14kW、後半が7kwとなっている。続いて、単価が10円の時間帯(14:10〜14:20)では前半が3kW、後半が7kwとなっている。最後に単価が100円の時間帯(14:20〜14:30)では前半、後半ともに0kwとなっている。
DRASクライアント2では、制御情報算出部23が算出した運転制限スケジュールが示す条件下での30分後までの空調機31〜3mの運転状態を運転状態予測部24が予測し、評価部25がその30分間の運転による電力料金、エリア毎の快適性を評価する。そして、制御情報算出部23は、評価部25による評価結果に基づいて、より適切な運転制限スケジュール情報を再設定する。例えば、快適性が良好でも電力料金が高額になる場合には、制御情報算出部23は運転制限スケジュールの電力制限値を抑え、より低電力で運転を行う条件を再設定する。また、例えば、電力料金は非常に安くなるが快適性も低い場合、制御情報算出部23は運転制限スケジュールの電力制限値を上昇させ、電力料金が相対的に上昇してもユーザが設定した設定温度を実現することにより(特に優先度の高いエリア)、快適性を向上させる条件を再設定する。本実施形態の複数ブロック全体での電力料金を抑えつつ、優先度の高いエリアの快適性を重視して空調快適性を実現する制御を、エリア複合RTP(Real Time Pricing)制御と呼ぶ。図4に例示する電力制限運転のスケジュール情報は、このようにして最適化された所定時間毎の電力制限値である。
【0029】
次に評価部25が使用する評価関数について説明する。以下の式(1)〜(4)が本実施形態の評価関数の一例である。
【0030】
【数1】
【0031】
【数2】
【0032】
【数3】
【0033】
【数4】
【0034】
ここで、αは電力料金評価に対する重み係数、bはブロックの識別番号(b=1,2,・・・,bmax)、mは単位時間(例えば5分間)の番号、R(m)はm単位時間時の電力単価、W(m)はm単位時間時におけるブロックbでの空調機3bによる使用電力量[Wh]、aはエリアの識別番号(a=1,2,・・・,amax)、Z(m)はm単位時間時におけるエリアaの快適性評価値である。βはエリアaに対する空調の優先度(−1.0≦β≦1.0)であって式(3)が成立する。TSAA(m)はm単位時間時におけるエリアaの平均室温偏差(℃)である。iは室内機の識別番号(i=1,2・・・Imax)、TAi(m)はm単位時間時における対象となるエリアaに属する室内機iのセンサが計測した室内温度(吸込み温度)(℃)、TSi(m)はm単位時間時における対象となるエリアaについて設定された室内機iのユーザ設定温度(℃)、CbPiはブロックbの室内機iの定格冷暖房能力[kW]、SbRSiはブロックbの室内機iの運転状態(0が停止、1が運転中)である。
【0035】
電力料金評価部251は、式(1)右辺の第1項の式により電力料金の評価値を算出する。快適性評価部252は、式(1)右辺の第2項の式と式(2)〜式(4)により快適性の評価値を算出する。式(1)右辺の第1項はブロック別の単位時間あたりの電力料金を所定期間にわたって合計し、合計した値を全ブロックについて集計する式である。電力料金が高い程、第1項の値は大きくなる。第2項は、単位時間あたりの室内機毎のユーザによる設定温度と実際の室内温度(空調温度)の温度差に関する値に対して、エリア別の優先度係数βを乗じて2乗した値を所定期間にわたって合計し、合計した値を全エリアについて集計する式である。第2項は、ユーザが設定した設定温度と実際の室内温度の温度差が大きい程(快適性が低い程)、大きな値となる。また、優先度係数βが大きい、つまり優先されるエリアaでの温度差が大きいほど、第2項の値は大きな値となる。従って、電力料金が安く、各エリア(特に優先度の高いエリア)での快適性が高い程、式(1)の値は小さな値となる。制御情報算出部23は、評価部25が算出した式(1)による評価値Jcがなるべく小さくなるように電力制限運転のスケジュール情報を調整する。
【0036】
なお、式(1)の右辺第1項のW(m)については、室外機が消費する電力量のみであってもよいし、室外機と全室内機が消費する電力量の合計であってもよい。数式で表すと以下のように表すことができる。
(室外機のみ)
=Pouj ・・・・(5)
【0037】
(室外機と全室内機の合計)
【0038】
【数5】
【0039】
ここで、Poujは、j単位時間に室外機が消費する電力量(Wh)、PIUjiは、j単位時間に室内機iが消費する電力量(Wh)である。
次に電力制限運転のスケジュール情報の最適化処理について説明する。
【0040】
図5は本発明の第一実施形態における電力制限運転を説明する第一の図である。
図6は本発明の第一実施形態における電力制限運転を説明する第二の図である。
図5図6において縦軸は消費電力量(kW)、横軸は時間(分)を示している。図6の場合、縦軸はさらに電力制限値(kW)を示している。
図5に示すグラフ51は、平常運転時の制御(本実施形態の電力制限値による運転制限を設けない制御)によって空調機31を運転したときの消費電力量の時間推移を示している。
図6に示すグラフ61は、本実施形態のエリア複合RTP制御によって空調機31〜3mを運転したときの空調機31についての消費電力量の時間推移を示している。また、グラフ62は、制御情報算出部23が算出した空調機31に対する運転制限スケジュール(電力制限値の時間推移)を示している。
【0041】
まず、運転状態予測部24が、運転情報取得部21が取得した最新の空調機31の運転状態情報(電力制限値、実際の電力、室内温度、設定温度、室外温度)と予測モデルによって5分先までの1分毎の空調機31の運転状態を予測する。次に運転状態予測部24が、自らが予測した5分後の空調機31の運転状態情報と予測モデルによってさらに5分先(つまり時間5分から10分)までの1分毎の空調機31の運転状態を予測する。運転状態予測部24は、同様の5分単位の予測を計6回繰り返し、時間0を基準として30分後までの運転状態を模擬する。なお、これら6回の模擬において電力制限値については任意の値を与える。
次に評価部25が式(1)に、運転状態予測部24が模擬した30分間の運転状態情報を代入し評価値を算出する。なお、α、β、CbPi等の定数については予め設定され記憶部27に記録されている。また時間毎の電力料金単価R(m)には料金情報取得部22が取得した電力料金スケジュール情報を用いる。各エリアの目標温度TSi(m)については、各室内機iを通じて設定された値を用いる。
【0042】
次に制御情報算出部23が、評価部25が算出した評価値に基づいて、5分毎の電力制限値の最適化を行う。例えば、開始から5分間(1回目の模擬区間)は目標の設定温度を達成するために高めの電力制限値を設定し、空調機31の運転を促進する。また、4回目の模擬区間(15〜20分)については、次に電力料金単価が100円と高額になる区間なので、高額区間(5〜6回目の模擬区間)での運転を抑制するために予め強めの運転を行って部屋を涼しくしておくなど、電力料金単価の変動と設定温度と室内温度との乖離具合(快適性)とに応じた電力制限値を設定する。
【0043】
電力制限値は消費電力量の上限を定めるものにすぎないから、制御情報算出部23が高めの電力制限値を設定しても、空調機31がその高めの電力制限値に応じて、電力料金単価が安いうちに運転の強度を増加させて動作するとは限らない。従ってこのような状況のために、制御情報算出部23は、電力料金単価が上昇する時間の前の模擬区間に、空調機31の運転強度を上昇させる制御情報を算出する。具体的には、制御情報算出部23は、空調機31が冷房運転を行っている場合、設定温度25℃よりも低い温度(例えば23℃)を暗に設定し、その温度に到達するように室外機301が備える圧縮機(図示せず)の回転数を上昇させる制御情報を算出する。同様に、暖房運転を行っている場合は、設定温度よりも高い温度を暗に設定し、部屋の温度がその温度に到達するように圧縮機の回転数を上昇させる制御情報を算出する。なお、暗に設定した部屋の目標温度に対応する圧縮機の回転数については予め定められ記憶部27に記録されているとする。このように制御情報算出部23は、状況に応じて、電力制限値と共に圧縮機の回転数の制御情報を含んだ運転制限スケジュール情報を算出する。
【0044】
また、制御情報算出部23は、目標の設定温度を達成すべく5分毎の電力制限値の設定を行うにあたり、各エリアaに付された優先度係数βを参照して、優先度係数βが大きな室内機iの室温が設定温度を達成できるような制御情報を算出する。例えば、制御情報算出部23は、優先度係数βに大きな値が設定された室内機を多く含むブロックの空調機31等への電力制限値は、確実に目標温度が達成できるように十分に大きな値を設定し、優先度係数βに小さな値が設定された室内機を多く含む空調機の電力制限値には、相対的に小さな値を設定する。
【0045】
次に運転状態予測部24は、制御情報算出部23が設定した6つの区間(30分間)に対する新たな運転制限スケジュール情報(時間毎の電力制限値、または時間毎の電力制限値および圧縮機の回転数)を用いて、再度、未来の30分間における空調機31の運転状態を模擬する。また、評価部25はその模擬結果を式(1)の評価関数によって評価する。また、制御情報算出部23が、焼きなまし法などの最適化手法を用いて評価値Jcを最小にする運転制限スケジュール情報を算出する。
【0046】
このような運転制限スケジュール情報の最適化を繰り返し、評価値Jcの値を最小にする空調機31〜3mごとの運転制限スケジュールが決定されると、制御情報算出部23が最適化された運転制限スケジュール情報を、通信部26を介してゲートウェイ3に送信する。ゲートウェイ3は最適化された運転制限スケジュール情報を空調機31〜3mに送信し、空調機31〜3mは、運転制限スケジュール情報が示す5分毎の電力制限値を超えないように運転を行う。
【0047】
次に、図7図8を用いて、本実施形態のエリア複合RTP制御の効果について説明する。
図7は、本発明の第一実施形態におけるエリア複合RTP制御の効果を説明する第一の図である。
図7に30分間の電力料金スケジュール情報のパターン6種類(RP1〜RP6)を示す。例えば、パターンRP1の場合、最初の10分間(R(1)〜R(2))は電力料金単価が100円、次の10分間(R(3)〜R(4))は10円、最後の10分間(R(5)〜R(6))は30円である。100円を高額、10円を低額、30円を中間とすると、RP1〜RP6は、30分内に電力料金単価が10分毎に高額、低額、中間の何れかに1回ずつ変化するとしたときの全パターンを網羅している。
複数の冷媒系統(ブロック)を備えるビル全体を対象とする空調について、RP1〜RP6の条件下で、本実施形態のエリア複合RTP制御、特許文献1に記載のRTP制御、平常運転を行った結果を図8に示す。
【0048】
図8は、本発明の第一実施形態におけるエリア複合RTP制御の効果を説明する第二の図である。
図8の左図は、RP1〜RP6の各パターンで各制御により空調を行ったとき電力料金の結果を示している。G1はエリア複合RTP制御を行ったときの電力料金、G2はRTP制御を行ったときの電力料金、G3は平常運転を行ったときの電力料金を示す。図示するように平常運転時の電力料金が最も高く、本実施形態のエリア複合RTP制御を行ったときの電力料金が最も低額となった。
【0049】
図8の右図は、RP1〜RP6の各パターンで各制御により空調を行ったとき優先エリアでの快適性の結果を示している。G4はエリア複合RTP制御を行ったときの快適性、G5はRTP制御を行ったときの快適性、G6は平常運転を行ったときの快適性を示す。図示するように平常運転時の快適性が最も良好で、本実施形態のエリア複合RTP制御を行ったときの快適性は平常運転時よりもわずかに低下する結果となった。
【0050】
ここで、比較の為、RTP制御の評価関数を記載すると、以下の式(7)〜(9)である。
【0051】
【数6】
【0052】
【数7】
【0053】
【数8】
【0054】
式(7)の右辺第1項に示すようにRTP制御ではブロック毎の電力量を全ブロックについて合計していない。また、式(7)の左辺第2項、式(8)に示すようにRTP制御では室内機毎の室温偏差に対する優先度係数が与えられていない。これらが示すようにRTP制御は、ブロック単位でコストと快適性を最適化する制御である。これに対し、エリア複合RTP制御は、複数ブロック全体でのコストと快適性を最適化し、さらに室内機(エリア)毎に室温偏差に対する優先度を設定することができる制御方法である。これにより、優先エリアが多く含まれるブロックに電力を多く使用させ、非優先エリアが多いブロックでの電力使用量を抑制することができ、複数のブロックを備える建物全体でコストと快適性を両立させた空調制御を行うことができる。
【0055】
特にビル等では1つのエリアが複数のブロックに跨ることが多いが(例えば図1のa1、a2)、エリア複合RTP制御であれば、異なるブロックに属する複数の室内機が設置されたエリア毎に優先度を与えることができるので、室内機がどのブロックに属するかに関わらず、重視すべきエリアの空調を優先的に行うことができる。なお、優先度の高いエリアは、複数のエリアに跨っている必要は無く、単一ブロックだけを含んでいてもよい(例えば図1のa3、a4)。エリア複合RTP制御によれば、RTP制御では困難な部屋毎の空調優先度の設定を行うことができる。例えば、図8右図のRP3やRP6の例のようにRTP制御を適用することによって室内温度が犠牲になる場合が生じ得るが、図8右図に示すようにエリア複合RTP制御では、室温を設定温度に制御することを厳しく要求されるエリアについては、そのエリアの優先度係数βに大きな値を設定することで所望の設定温度に制御することができる。
【0056】
なお、式(1)のαの値を調整することで、電力料金、快適性の何れに重きを置いた運転とするかを任意に調整することが可能である。また、設定温度との乖離度合いを評価値に反映させたい場合、例えば図9に示すように評価関数の快適性に関する係数の値を、式(1)の(1−α)の代わりに、設定温度からの乖離度合いと電力料金単価に応じて変化させた値とすることができる。図9は、本発明の第一実施形態における設定温度からの乖離に対するペナルティの設定例を示す図である。例えば、冷房運転時において多少の冷やし過ぎについては許容する運転を行うためには、同じ3℃の乖離でも−側に3.0℃乖離する場合よりも+側に3.0℃乖離する場合について、より大きな値を設定することで、そのような運転を実現することができる。図中、冷房運転時の電力料金単価が10円の場合の設定例は、このような考えに基づく設定である。つまり、同じ温度乖離していても+側に乖離している(室内温度が設定温度より高い)場合(「+3.0℃」の「10」)、−側に乖離している(室内温度が設定温度より低い)場合(「−3.0℃」の「5」)よりも大きなペナルティ値を設定する。
【0057】
また、冷房運転時に電力料金単価が高い場合は、多少暑くても許容する設定を行うことが可能である。例えば、同じ+3℃の乖離でも単価が10円の場合(「10」)よりも、単価が100円の場合(「5」)により小さな値を設定することでそのような運転を実現することができる。
【0058】
また、暖房運転時において、例えば、暖め過ぎに対しても暖め足りない状態に対しても同様のペナルティを課す設定とすることができる。図9の設定例では、暖房運転時の設定において同じ温度乖離していれば+側に乖離していても−側に乖離しても同じ大きさの値が設定されている。
また、暖房運転時に電力料金単価が高い場合は、多少寒くても許容する運転を行うことが可能である。例えば、図9に示すように同じ−3℃の乖離でも単価が10円の場合(「10」)よりも、単価が100円の場合(「5」)により小さな値を設定することでそのような運転を実現することができる。
なお、図9に例示するデータテーブルを、設定用インタフェースと共にユーザ毎(室内機毎)に用意し、ユーザが自由に設定できるよう構成してもよい。
【0059】
上記の説明では、ビル4など1つの建物を制御対象としたが、これに限定されない。図10に示すように複数のビル4A、4Bを1つの制御対象として、エリア複合RTP制御を行ってもよい。図10は、本発明の第一実施形態における空調制御システムの一例を示す第二の図である。空調制御システム100Aは、DRASサーバ1と、DRASクライアント2と、ゲートウェイ3Aと、空調機31A〜3mAと、ゲートウェイ3Bと、空調機31B〜3mBと、を含んで構成される。図示するようにビル4Aには空調機31A〜3mAが設置され、ビル4Bには空調機31B〜3mBが設置される。図1で説明したように、空調機31Aをブロック1A、空調機31Bをブロック1B等と呼ぶ。図10に示す空調制御システム100Aにおいて、DRASクライアント2は、ビル4A、4Bのブロック1A〜mAおよびブロック1B〜mBの全体を1つの制御対象とすることができる。また、ビル4Aとビル4Bに跨って1つのエリアを設定することができる。例えば図10に示すように、室内機3m2Aが設置されたビル4Aの部屋と、室内機312Bが設置されたビル4Bの部屋を1つのエリアa1Bとして設定し、優先エリアとして空調制御を行ってもよい。
【0060】
例えば、運転状態予測部24が、空調機31A〜3mAおよび空調機31B〜3mBそれぞれの運転状態を予測する。評価部25は、式(1)に運転状態予測部24が予測した30分間の運転状態情報を代入し評価値を算出する。式(1)の右辺第1項では、各ブロックの電力料金を、空調機31A〜3mAおよび空調機31B〜3mBについて合計する。式(1)の右辺第2項では、ビル4A〜4Bについて設定された全てのエリアについて優先度係数βが設定され、エリア別の室温偏差に優先度係数βを乗じる等して求めた値を全エリアについて合計する。制御情報算出部23は、評価値Jcの値を最小にする最適化された運転制限スケジュールを決定し、最適化された運転制限スケジュール情報を、通信部26を介してゲートウェイ3Aおよびゲートウェイ3Bに送信する。ゲートウェイ3Aは最適化された運転制限スケジュール情報を空調機31A〜3mAに送信する。ゲートウェイ3Bは最適化された運転制限スケジュール情報を空調機31B〜3mBに送信する。
このように、エリア複合RTP制御を用いると、複数の建物を1つの制御対象として、複数の建物全体で電力料金をなるべく抑えつつエリア毎の快適性を追求する空調制御を行うことができる。
【0061】
図11は、本発明の第一実施形態における制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図11を用いて運転制限スケジュール情報の生成処理の流れについて説明する。記憶部27には、式(1)〜(4)に用いられる定数(α,β等)が記録されている。空調制御システム100の構成は、図1の構成を前提とする。
まず、料金情報取得部22が、DRASサーバ1が生成した電力料金単価スケジュール情報を取得し(ステップS11)、記憶部27に記録する。電力料金スケジュール情報には、例えば、30分先までの10分毎の電力料金単価が含まれている。
次に運転情報取得部21が、複数の空調機31〜3mそれぞれの運転状態情報を取得する(ステップS12)。運転状態情報には、ブロック単位での単位時間毎の消費電力量、外気温度、室内機単位での室内温度、ユーザによる設定温度等の情報が含まれている。運転情報取得部21は、取得した運転状態情報を記憶部27に記録する。
【0062】
次に制御情報算出部23が、空調機31〜3mのそれぞれについて、未来の所定期間(例えば30分間)における所定時間毎(例えば5分毎)の運転制限スケジュール情報を算出する(ステップS13)。例えば、制御情報算出部23は、初回には任意の初期値を30分間にわたる5分毎の電力制限値として設定しても良い。あるいは、運転条件に応じた運転制限スケジュール情報の初期設定が予め記憶部27に記録されていて、制御情報算出部23は、電力料金スケジュール情報や外気温度、各室内機の室内温度等に応じてこれらの運転条件に適した電力料金スケジュール情報の初期設定の情報を記憶部27から読み出し、読み出した初期設定の情報を、30分間にわたる5分毎の電力制限値として設定しても良い。
【0063】
次に運転状態予測部24が、空調機31〜3mのそれぞれについて、未来の所定期間における所定時間毎の運転状態を予測する(ステップS14)。より具体的には、運転状態予測部24は、ステップS12で取得した運転状態情報と、ステップS13で設定した運転制限スケジュール情報とを予測モデルに入力し、未来の5分間における1分毎の空調機単位の消費電力量と、室内機単位の室内温度を予測する。次に運転状態予測部24は、ステップS12で取得した運転状態情報とステップS13で設定した運転制限スケジュール情報とのうち、ステップS12で取得した実際の消費電力量と室内温度とを、予測モデルによって予測した5分後の予測値で置き換えた情報を、予測モデルに入力し、さらに5分先(開始時間から5分後〜10分後までの5分間)までの1分毎の空調機単位の消費電力量と、室内機単位の室内温度を予測する。以下、同様にして5分毎の予測を計6回繰り返し、30分間分の消費電力量と、室内温度の予測を行う。
【0064】
次に評価部25が、運転状態予測部24によって予測された運転状態に対する評価値を算出する(ステップS15)。具体的には、ステップS14の予測により、1分毎の消費電力量、室内機毎の室内温度の予測値が算出されているので、評価部25は、式(1)〜式(4)を用いてビル4全体の評価値を算出する。このとき、評価部25(快適性評価部252)は、電力料金単価と許容できる温度偏差および偏差の方向(温度が目標とする設定温度と比べて高いか低いか)とに応じて重み係数を変更して快適性に関する評価値を算出しても良い(図9参照)。評価部25は、算出した評価値Jcを制御情報算出部23へ出力する。
【0065】
次に制御情報算出部23が、評価値が最小値に収束したかどうかを判定する(ステップS16)。評価値の収束判断は、例えば、評価値の繰り返し計算が規定回数に到達することや規定閾値と比較することで実施される。最小値に収束した場合(ステップS16;Yes)、制御情報算出部23は、評価値を最小にする場合の空調機31等毎の運転制限スケジュール情報を、ゲートウェイ3へ出力する(ステップS17)。ゲートウェイ3は、運転制限スケジュール情報を対応する空調機31〜3mへ出力し、各空調機31〜3mは、運転制限スケジュール情報に従って、次の30分間の運転を行う。これにより、ユーザ所望の設定温度を優先度係数βに応じて達成し快適性を維持しつつ、空調機の運転に必要な電力料金を低減することができる。
【0066】
最小値に収束していない場合(ステップS16;No)、評価値が収束するまで、ステップS13からの処理を繰り返す。具体的には、制御情報算出部23が焼きなまし法などの最適化手法を用いて、式(1)による評価値を最小化する新たな運転制限スケジュール情報を算出する(ステップS13)。このとき、計算時間の短縮のために例えば、図12で例示する探索範囲、探索単位を限定するデータテーブルを参照して、電力制限値を算出してもよい。図12は、本発明の第一実施形態における電力制限値の探索範囲設定の一例を示す図である。制御情報算出部23がリアルタイムに変化する電力料金単価に合わせて逐次最適な運転制御スケジュール情報を算出するためには、最適解を見つける時間を短縮する必要がある。図12に示すデータテーブルは、焼きなまし法によって制御情報算出部23が最適な電力制限値を見つける場合に、その探索範囲や探索単位(解像度)に加える制限を定めたものである。例えば、1行目の設定値によれば、室外機301が容量4HPという比較的小容量の室外機であれば、電力制限値の探索範囲は0kW〜15kW、探索単位は5kW毎に制限することを示している。このように探索範囲テーブルを用いることで、探索時間を少なくでき、無駄な領域探索を行うことなく最適解を導くことができる。なお、探索範囲と探索単位は、計算処理の能力に応じて調整できる。
【0067】
本実施形態によれば、電力料金単価が変動する環境下でも、ユーザが求める快適性を優先度係数βに応じて達成しつつ、建物全体での電力料金を抑えた空調機の運転が可能になる。また、αの値を調節することにより、電力料金の抑制と快適性実現のバランスを設定することができる。
なお、上記例では、運転制限スケジュール情報の算出を行う機能を、DRASクライアント2に実装する場合を例に説明を行ったが、これに限定されない。例えば、これらの機能をゲートウェイ3に実装してもよい。
なお、運転状態予測部24は、ある時刻において運転情報取得部21が取得した運転状態情報と、例えば5分後に運転情報取得部21が取得した運転状態情報と、その間設定されていた運転制限スケジュール情報とを取得して、ニューラルネットワーク等の機械学習手法を用いて、記憶部27に記録された予測モデルを継続的に更新するように構成されていてもよい。
【0068】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態による空調制御システムを、図13を参照して説明する。
第二実施形態では、快適性の評価について、さらに湿度、天気情報、人感センサ情報等を利用する。
図13は、本発明の第二実施形態における制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
本発明の第二実施形態に係る構成のうち、本発明の第一実施形態に係るDRASクライアント2を構成する機能部と同じものには同じ符号を付し、それらの説明を省略する。第二実施形態に係るDRASクライアント2aは、第一実施形態の構成に加えて、センサ情報取得部28、天気情報取得部29を備えている。また、DRASクライアント2aは、評価部25および快適性評価部252に代えて評価部25aおよび快適性評価部252aを備えている。
【0069】
センサ情報取得部28は、各室内機が備えられた部屋(エリア)に設けられた人感センサ又は画像センサ(カメラ)、湿度センサの計測した計測値を取得する。
天気情報取得部29は、気象データを保存した気象データサーバ端末装置(図示せず)から気象データを取得する。気象データには、日々の最高気温と最低気温の予報値が含まれる。
【0070】
快適性評価部252aは、第一実施形態の評価項目に加え、外温偏差係数、湿度係数、密集度係数などを考慮した評価式によって快適性の評価を行う。
評価部25aは、電力料金評価部251が算出した評価値と、快適性評価部252aが算出した評価値とを合計して評価値Jcを算出する。
【0071】
次に快適性評価部252aによる快適性の算出方法を説明する。
第二実施形態の快適性評価部252aによる快適性評価値は以下の数式で算出することができる。
(冷房時)
【0072】
【数9】
【0073】
(暖房時)
【0074】
【数10】
【0075】
なお、外温偏差係数は、以下で定義する。
(冷房時)
外温偏差係数 = δ1 × (最高気温 − 室内温度) ・・・・(12)
(暖房時)
外温偏差係数 = δ1 × (室内温度 − 最低気温) ・・・・(13)
ここで、δ1は任意の定数である。また、最高気温と最低気温は、それぞれ、天気情報取得部29が取得した日々の最高気温の予報値と最低気温の予報値である。但し、冷房運転時に(最高気温−室内温度)が負の値となる場合、快適性評価部252aはδ1=0を設定する。同様に暖房運転時に(室内温度−最低気温)が負の値となる場合、快適性評価部252aはδ1=0を設定する。また、室内温度とは、例えば最新の室内温度である。
【0076】
また、湿度係数は、以下で定義する。
湿度係数 = δ2 × {100÷(100−湿度)}・・・(14)
ここで、δ2は任意の定数である。また、湿度はセンサ情報取得部28が取得した各部屋(各エリア)の湿度の計測値である。
【0077】
また、密集係数は、以下で定義する。
密集係数 = δ3 × 密集度 ・・・(15)
ここで、δ3は任意の定数である。また、密集度はセンサ情報取得部28が取得した人感センサ又は画像センサが検出した各部屋(各エリア)に存在する人の数に応じた値である。例えば、記憶部27には部屋毎(エリア毎)の人感センサ等の検出値と密集度とが対応付けられたデータテーブルが記録されており、快適性評価部252aは、人感センサの検出値とこのデータテーブルに基づいて密集度を算出する。
【0078】
本実施形態によれば、湿度、最高・最低気温、人の密集度などを考慮したさらに精緻な快適性の指標に従って空調制御を行うことができる。
【0079】
図14は、本発明の各実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述のDRASクライアント2,2a(制御装置)は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0080】
なお、DRASクライアント2,2aの全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。なお、DRASクライアント2,2aは、複数のコンピュータ900によって構成されていても良い。
【0081】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態では空調機の制御を例に説明を行ったが、他の機器(冷蔵庫、ヒートポンプ等)に適用することも可能である。なお、DRASクライアント2、2aは制御装置の一例である。
【符号の説明】
【0082】
100、100A・・・空調制御システム
1・・・DRASサーバ
2、2a・・・DRASクライアント
3、3A、3B・・・ゲートウェイ
4、4A、4B・・・ビル
31、32、33、34、3m、31A、31B、3mA、3mB・・・空調機
301、302、303、304、30m、301A、30mA、301B、30mB・・・室外機
311、312、313、31n、321、322、323、32n、331、332、333、33n、341、342、343、34n、3m1、3m2、3m3、3mn、311A、312A、313A、31nA、3m1A、3m2A、3m3A、3mnA、311B、312B、313B、31nB、3m1B、3m2B、3m3B、3mnB・・・室内機
21・・・運転情報取得部
22・・・料金情報取得部
23・・・制御情報算出部
24・・・運転状態予測部
25、25a・・・評価部
251・・・電力料金評価部
252、252a・・・快適性評価部
26・・・通信部
27・・・記憶部
28・・・センサ情報取得部
29・・・天気情報取得部
【要約】
【課題】建物全体での空調制御の経済性、エリアごとの空調の快適性を最適化する制御を可能とする制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、時間ごとの電力料金単価の情報を取得し、室外機と1台以上の室内機を備える空調機について1台以上の空調機の運転状態に関する運転状態情報を取得し、運転状態情報と所定の予測モデルに基づいて未来の所定期間における空調機の運転状態を予測し、予測した運転状態に基づく所定期間におけるエリアごとの快適性の評価値と、電力料金単価の情報に基づく所定期間における空調機の電力料金の評価値に基づく1台以上の空調機の運転全体に関する評価値を算出し、評価値が最適な値となるように運転するための空調機に対する制御情報を算出する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14