【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例1について、
図1〜
図20を参照して説明する。同図に示すように、金属箔シート1の加工装置2は、金属箔シート1に複数の貫通孔3を形成する貫通孔形成装置4と、この貫通孔形成装置4により複数の貫通孔3が穿設された金属箔シート1の歪を矯正して修正する歪修正装置5と、金属箔シート1を巻いたロール1Rから、該金属箔シート1を引出し、この引き出した金属箔シート1を前記貫通孔形成装置4の搬送路4Hと、歪修正装置5の搬送路5Hに沿って連続して搬送する搬送手段6と、前記歪修正装置5の部材に超音波振動を付与する超音波発生装置7を備える。また、歪修正装置5を通過した金属箔シート1を検査する検査装置9を備える。この検査装置9は金属箔シート1に非接触状態で画像処理などにより状態を検出するものなどを用いることができる。
【0021】
尚、本発明は、金属箔シート1にレーザー加工、パンチング、エッチングなどの加工により生じる金属箔シート1の歪、たわみを修正する加工装置と加工方法に係るものであり、前記貫通孔形成装置4は、以下の実施例に示すレーザー加工以外でも、パンチングやエッジングなどにより、搬送方向及び幅方向にそれぞれ略等間隔で複数の貫通孔3を形成するものを用いることができる。
【0022】
前記金属箔シート1は、一例として、厚さが100μm以下のものが用いられ、幅は加工装置2の幅により対応可能である。
【0023】
前記貫通孔形成装置4は、複数のレーザー加工部4K,4K・・・を有し、搬送路4Hを搬送される金属箔シート1にレーザー光線を照射して複数の貫通孔3を搬送方向に所定間隔で形成するものである。また、複数のレーザー加工部4K,4K・・・は金属箔シート1の幅方向に所定の間隔を置いて貫通孔3を形成する。
【0024】
前記歪修正装置5は、修正装置側搬送手段11として、搬出側に上下一対の駆動ローラ12,12Aと、搬入側に上下一対の従動ローラ13,13Aを備え、これら駆動ローラ12,12Aと従動ローラ13,13Aの間に前記搬送路5Hが設けられ、前記駆動ローラ12,12Aを回転駆動する駆動手段14を備える。
【0025】
また、前記修正装置側搬送手段11には、搬送中の金属箔シート1に張力を付与する張力付与手段たるパウダークラッチ15を備え、このパウダークラッチ15を前記従動ローラ13,13Aの一方である下の従動ローラ13Aの回転軸に設けている。前記パウダークラッチ15は、加電圧を上げることにより、クラッチが繋がって回転抵抗が増加するように構成されており、これにより駆動ローラ12,12Aにより送られる金属箔シート1の張力を調整することができる。
【0026】
また、前記歪修正装置5は、前記搬送路5Hの上下の一方に一側修正体21を配置すると共に、上下の他方に他側修正体22を配置しており、この例では、一側修正体21を搬送路5Hの上側に配置すると共に、他側修正体22を搬送路5Hの下側に配置している。尚、一側及び他側修正体21,22は金属製である。
【0027】
前記一側修正体21及び他側修正体22の本体21A,22Aには、それぞれ前記搬送路5H側に突起部23を設け、この例では、複数の突起部23,23・・・を搬送路5Hの長さ方向に所定の間隔Kを置いて配置している。また、下側の一側修正体21の突起部23は上向きで、上側の他側修正体22の突起部23は下向きであり、一側修正体21と他側修正体22は対向して配置される
。
【0028】
そして、前記一側修正体21の複数の突起部23,23・・・の間の位置に、他側修正体22の複数の突起部23,23・・・を配置すると共に、一側及び他側修正体21,22の突起部23,23の先端の位置を搬送路5Hの交差方向(前記間隔Kの交差方向)において重ね合わせ、先端同士を噛み合わせている。前記重ね合わせ寸法Rは、後述する実験例では、3mm以下、0.5mm、0.75mm、1mm、1.5mm、2mmとした。尚、一側及び他側修正体21,22の突起部23,23同士は、非接触状態で、間隔を置いて設けられる。
【0029】
前記突起部23は前記搬送路5Hに対して略直交して設けられ、
図4に示す断面が搬送路5Hの幅方向に連続して形成されている。前記突起部23は、基端部24が略一定厚さに形成され、この基端部24の先端側に、
図5のものでは、先端側向かって細くなるテーパー部25を設け、このテーパー部25の先端に、円弧状に湾曲した先端部26が設けられている。この先端部26の曲率は、半径5mm程度以下の小径においては、同径のローラレベラーよりも優位と考えられ、後述する実験例では、0.4mm、1mm、1.5mm、2mmを用いた。また、隣り合う突起部23,23の間には、溝部27が設けられ、この溝部27は、前記突起部23の先端側が挿入可能な幅を有し、この例では溝部27の幅は、突起部23の最大幅寸法である基端部24の厚さよりも広い。
【0030】
前記間隔Kが狭い程、矯正効果が得られるが、一側と他側の先端部26,26が重ね合わせ寸法Rを持って接触しないように取り付けための手間及び取付精度等を考慮すると、先端部26の厚さと溝部27の幅を加えた寸法以上に前記間隔Kをすることが好ましい。
【0031】
また、先端部26の変形例としては、
図5に示すように、半径2mmの半円状先端部の中心に、ボールエンドミルにより直径1.5mmの円弧状の凹部28を形成し、この凹部28の両側にそれぞれ形成された部分により先端部26A,26Aを構成することもできる。
【0032】
前記加工装置2は、前記一側及び他側修正体21,22の少なくとも一方に超音波振動を付与する前記超音波発生装置7を備え、この例では、超音波発生装置7は上側に配置する一側修正体21に略上下方向(搬送路5Hと交差方向)の超音波振動を付与する。
【0033】
次に、前記加工装置2による加工方法について説明する。まず、搬送手段6によりロール1Rから引き出された金属箔シート1は、貫通孔形成装置4の搬送路4Hを搬送される間に、レーザー加工部4K,4K・・・により複数の貫通孔3が形成される(貫通孔形成工程)。
【0034】
次の歪修正工程において、貫通孔3が形成された金属箔シート1は、歪修正装置5の搬送路5Hを搬送され、駆動ローラ12,12Aと従動ローラ13,13Aの間で、パウダークラッチ15により所定の張力を保った状態で搬送され、このように金属箔シート1に張力を付与することにより歪を矯正することができる。
【0035】
また、歪修正工程において、金属箔シート1は一側修正体21と他側修正体22の突起部23,23の間を通過し、他側修正体22には超音波発生装置7により超音波振動が付与されており、突起部23,23を通過する間に金属箔シート1の歪や皺が矯正される。この場合、一側修正体21と他側修正体22の突起部23,23は、櫛形断面形状をなし、突起部23,23の先端位置が重ね合されており、ローララベラーのように金属箔シート1に繰り返し曲げ変形を与えることにより、金属箔シート1の内部歪を均一化することができる。また、突起部23,23間を通過する際、一方の突起部23に超音波振動を付与することにより、金属箔シート1と先端部26とにおける低摩擦化効果が得られる。即ち、超音波振動を付与することにより、金属箔シート1が先端部26に密着せず、金属箔シート1が先端部26を通る際に、超音波振動により、先端部26に付いたり離れたりするように振動し、摩擦が低減する。
【0036】
以下、実験例について説明する。先端部26の半径が2mmの一側及び他側修正体21,22を試作し、加工装置2による矯正基礎実験を行った。
図2に試験状況を示す。超音波発生装置7である超音波振動子に一側修正体21を接続し、他側修正体22は固定した状態とし、他側修正体22に位置を調整することにより、前記重ね合わせ寸法Rを設定した。
【0037】
[実験例1]
この実験例1では、先端部26の半径が2mmで、突起部23の幅が150mm、重ね合わせ寸法Rが3mm、超音波周波数が19.5kHz、超音波出力が出力1でホーン先端(先端部26)振動速度0.38m/s、レーザー加工エリアは、幅80mm、長さ200mmで、金属箔シート1の送り速度を1.76m/minとした。また、
図3に示すように、上の一側修正体21は4箇所の突起部23を備え、下の他側修正体22は3箇所の突起部23を備える。また、銅の金属箔シート1の厚さは10μmで、レーザー加工により直径100μmの貫通孔3を複数形成し、貫通孔3の開口率を10%とした。
【0038】
実験例1の結果を
図6に示す。歪修正工程前の
図6(A)に示すように、貫通孔3を形成した金属箔シート1は、レーザー加工による熱変形の影響でシワやひずみが発生し、一方、被髄修正工程後の
図6(B)に示すように、歪修正工程により金属箔シート1の凹凸が低減させることが確認できた。
図6(B)では、レーザー加工の熱ひずみに対して歪修正工程による曲げひずみによるひずみ均一化が不十分と考えられ、これには先端部26の半径の小径化が有効ではないかと考えられる。また、貫通孔3を加工した周囲のシワ部において耳波の状態の矯正効果は小さかった。これにはテンションによる矯正が必要と考えられる。
【0039】
[実験例2]
上記実験例1を踏まえて、先端部26を小径化するため、上述した
図5に示した先端部26Aを用いて実験例2を行った。非接触三次元測定機により、歪修正工程の前後の金属箔シート1の形状測定を行った。尚、実験例2が実験例1と相違するのは、先端部26の形状である。
図7(A)(B)に歪修正工程の前後の金属箔シート1の外観をそれぞれ示す。金属箔シート1の全体の曲り、うねりがあり、基準高さを決められないため、しわの絶対高さ値を評価することはできないが
図8(A)に示すように加工エリア(貫通孔3を設けたエリア)内に生じたシワ、加工エリア外に見られる耳波の凹凸は
図8(A)(B)のコンター(等高線)図に示すように改善していることが見てとれる。すなわち低い方から紫→青→緑→黄→橙→赤である。これは
図7(A)の歪処理工程前の写真の状態と良く対応していることが分かる。一方、
図8(B)に示す歪処理工程後の状態では、加工エリアの内、外ともにコンターの色の変化がなだらかとなり、加工前に見られたシワ、耳波が除去されているのが確認できる。この実験例2では、レーザー加工によるシワ、耳波が金属箔シート1から除去された。
【0040】
上記の実験例等から、金属箔シート1の平坦化に寄与すると考えられるもう一つの加工条件としてテンションの付与が挙げられる。そこで、以下に説明する実験例3では、上述したように下の従動ローラ13Aの回転軸に前記パウダークラッチ15を設けた。その装置を
図9に示す。それら従動ロー
ラ13,13A間のクリアランスおよびパウダークラッチ15への加電圧調整により従動ロー
ラ13,13Aの回転抵抗を調整することで、テンション調整を行った。
【0041】
前記パウダークラッチ15による加電圧によるワーク(金属箔シート)のテンション調整の機能を確認するため、ダミーのワークとして幅60mm、厚さ9μmの電解銅箔シートを用い、曲げひずみを除去するため表裏にひずみゲージを張り付けた2ゲージ法によるテンション測定を行った。このときロー
ラ間のクリアランスは−1.0mmとした(マイナスは従動ローラ13,13Aの押し込み量)。
図10にパウダークラッチ
15の加電圧(V)とひずみゲージにより測定したテンション(N)を示す。ロー
ラ間クリアランス(−1.0)による従動ローラ13,13Aの回転抵抗により生じるテンションは54.3Nであり、パウダークラッチ15の加電圧調整により、最大74.1N程度まで付加することができる。そして、ロー
ラ間クリアランス調整によりさらに広い範囲でテンション調整を行うことができる。
【0042】
歪修正工程における平坦化効果は先端部26の半径を小さくすることにより大きくなることを実験例2で確認した。そこで、この結果を踏まえ、先端部26の半径を0.4mmにした一側修正体21と他側修正体22を設計、製作した。
図11に組み立て状態の一側修正体21と他側修正体22の外観写真を示す。
【0043】
さらに、貫通孔形成工程において、レーザー加工により貫通孔3を形成した。レーザー加工においては、ナノ秒レーザーがピコ秒レーザーに比べ、加工速度が速くて有利であるが、ピコ秒レーザーに比べ、ナノ秒レーザーを用いた孔加工では、ワンショットのビームエネルギーが大きいため、加工バリが大きくなることやワーク(金属箔シート1)にヒュームが再付着することが懸念される。ヒュームの再付着を防ぐため、
図1に示したように、開発しているレーザー加工部4Kにはダストの吸引装置8が設置され、この吸引装置8の吸引ノズル8Aをワークのレーザー入射側に配置し、入射側からの吸引を行う。この吸引装置8による吸引の効果を比較するため、吸引の有無におけるレーザー加工表面を観察した。また、歪修正工程後のワークの貫通孔3周りのバリをはじめ、表面状態をSEM観察により微視的に評価した。
【0044】
この実験例3では、
図11に示すように、上の一側修正体21は8箇所の突起部23を備え、下の他側修正体22は上よりも多い9箇所の突起部23を備える。また、先端部26の半径は0.4mmで、重ね合わせ寸法Rを0.5mm、0.75mm、1.0mmとした。超音波振動レベルは重ね合わせ寸法Rが0.5mm、0.75mmの場合に出力2としたが、重ね合わせ寸法Rが1mmでは金属箔シート1が破断したため、摩擦抵抗をより低減させるため出力3に上げて加工した。尚、レーザー加工エリアは、幅20mm、長
さ120mmで、金属箔シート1の送り速度を1m/minとした。尚、超音波振動レベルは出力1ではホーン先端振動速度0.38m/s、出力2ではホーン先端振動速度0.59m/s、出力3ではホーン先端振動速度0.80m/sである。また、搬送路5Hにおける金属箔シート1を
図12に示す。
【0045】
レーザー加工時の吸引有り/無しの場合のレーザー入射側表面SEM写真を
図13に示し、同出射側の写真を
図14に示す。
【0046】
図13(A)の低倍率(x50)では、貫通孔3の周辺に白く見える領域が出来ており加工時の酸化と思われる。吸引の有無で違いは見られない。また、
図13(B)の1500倍の観察では、貫通孔3の周辺にレーザー加工によりバリが広がっているのが見てとれる。
【0047】
図14でもレーザー入射側と同様、出射側においても吸引による違いは見られない。また、出射側では入射側に見られたような貫通孔3の周辺の酸化は見られない。入射側と比較すると非常に小さいが、出射側には加工バリが見られた。
【0048】
歪補修工程で、(1)重ね合わせ寸法Rが0.5mm、超音波の出力2の場合(
図15及び
図18)、(2)重ね合わせ寸法Rが0.75mm、超音波の出力2の場合(
図16及び
図19)、(3)重ね合わせ寸法Rが1.0mm、超音波の出力3の場合(
図17及び
図20)の各加工条件における金属箔シート1の表面のSEM写真を
図15〜
図20に示す。但し、
図15〜
図17は吸引装置8による吸引無しの場合、
図18〜
図20は吸引装置8による吸引有りの場合である。
【0049】
上記(1)〜(3)のいずれの条件においても、出射側のバリは除去された。入射側のバリは除去されず、潰れたような平坦な部分31ができている。これは先端部26との摩擦によるものと考えられる。また、重ね合わせ寸法Rが大きくなると、入射面においては酸化した白い部分に擦れたようなコントラスト32が見られ、出射面では、ワークの送り方向に表面のひずみと思われる縞状のパターンが見られた。
【0050】
このように本実施例では
、金属箔シート1の歪を修正する歪修正装置5を備えた金属箔シート1の加工装置において、歪修正装置5は、複数の突起部23,23を間隔Kを置いて設けた一側修正体21と、この一側修正体21側に突起部23を設けた他側修正体22とを備え、一側修正体21の複数の突起部23,23の間の位置に、他側修正体22の突起部23を配置すると共に、前記一側及び他側修正体21,22の突起部23,23の先端の位置を間隔Kの交差方向において重ね合わせ、金属箔シート1に接した一側及び他側修正体21,22の少なくとも一方に超音波振動を付与する超音波発生装置7を備えるから、位置を重ね合わせた一側及び他側修正体21,22の突起部23,23の先端間において、金属箔シート1に繰り返し曲げ変形を与え、金属箔シート1の内部歪を均一化することができる。この際、少なくとも一方の突起部23に超音波振動を付与することにより、低摩擦化効果が得られる。
【0051】
このように本実施例では、請求項
1に対応して、貫通孔3が複数設けられた金属箔シート1の加工装置において、金属箔シート1に貫通孔3を形成する貫通孔形成装置4と、貫通孔形成装置4により貫通孔3が複数設けられた金属箔シート1の歪を修正する歪修正装置5と、歪修正装置5の搬送路5Hに沿って金属箔シート1を搬送する搬送手段6と、を備え、歪修正装置5は、搬送路5H側に設けた複数の突起部23,23を搬送路5Hの搬送方向に間隔を置
くと共に突起部23,23の間に溝部27を設けた一側修正体21と、搬送路5H側に
複数の突起部23
,23を
搬送方向に間隔を置くと共に突起部23,23の間に溝部27を設けた他側修正体22とを搬送路5Hを挟んで配置し、
一側及び他側修正体21,22の突起部23の先端を湾曲状に形成し、一側修正体21の複数の突起部23,23の間の位置に、他側修正体22の突起部23を配置すると共に、一側及び他側修正体21,22の突起部23,23の先端の位置を搬送路5Hの交差方向において重ね合わせ、
一側修正体21の複数の溝部27,27に他側修正体22の突起部23の先端が一側修正体21の突起部23と非接触状態で配置され、一側及び他側修正体21,22の少なくとも一方に超音波振動を付与
して一側及び他側修正体21,22の少なくとも一方の複数の突起部23,23に超音波振動を付与する超音波発生装置7を備えるから、レーザー加工により効率よく貫通孔3を形成し、その際、金属箔シート1に歪が生じるが、この歪が生じた金属箔シート1を、位置を重ね合わせた一側及び他側修正体21,22の突起部23,23の先端間を通過させることにより、金属箔シート1に繰り返し曲げ変形を与え、金属箔シート1の内部歪を均一化することができる。この際、少なくとも一方の突起部23に超音波振動を付与することにより、低摩擦化効果が得られる。
【0052】
このように本実施例では、請求項
1に対応して、突起部23の先端を湾曲状に形成したから、金属箔シート1と突起部23の摩擦を軽減できる。
【0053】
このように本実施例では、請求項
1に対応して、他側修正体22に突起部23を複数設けたから、複数の突起部23を備えることにより、効率よく金属箔シート1に繰り返し曲げ変形を与えることができる。
【0054】
このように本実施例では、請求項
2に対応して、歪修正装置5の搬送路5Hにおいて金属箔シート1に張力を付与する張力付与手段たるパウダークラッチ15を備えるから、テンションを付与することにより金属箔シート1を矯正することができる。
【0055】
このように本実施例では
、金属箔シートの歪を歪修正装置5により修正する歪修正工程を備えた金属箔シートの加工方法において、歪修正装置5は、複数の突起部23,23を間隔Kを置いて設けた一側修正体21と、この一側修正体21側に突起部23を設けた他側修正体22とを備え、一側修正体21の複数の突起部23,23の間の位置に、他側修正体22の突起部23を配置すると共に、前記一側及び他側修正体21,22の突起部23,23の先端の位置を間隔Kの交差方向において重ね合わせ、前記金属箔シート1に接した前記一側及び他側修正体21,22の少なくとも一方に超音波振動を付与するから、金属箔シート1に繰り返し曲げ変形を与え、金属箔シート1の内部歪を均一化することができ、この際、少なくとも一方の突起部23に超音波振動を付与することにより、低摩擦化効果が得られる。
【0056】
このように本実施例では、請求項
3に対応して、貫通孔3が複数設けられた金属箔シート1の加工方法において、金属箔シート1に貫通孔3を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔3が複数形成された金属箔シート1が搬送路5Hを搬送中に該金属箔シート1の歪を歪修正装置5により修正する歪修正工程と、を備え、歪修正装置5は、搬送路5H側に設けた複数の突起部23,23を搬送路5Hの搬送方向に間隔を置
くと共に突起部23,23の間に溝部27を設けた一側修正体21と、搬送路5H側に
複数の突起部23
,23を
搬送方向に間隔を置くと共に突起部23,23の間に溝部27を設けた他側修正体22とを搬送路5Hを挟んで配置し、
一側及び他側修正体21,22の突起部23の先端を湾曲状に形成し、一側修正体21の複数の突起部23,23の間の位置に、他側修正体22の突起部23を配置すると共に、一側及び他側修正体21,22の突起部23,23の先端の位置を搬送路5Hの交差方向において重ね合わせ、
一側修正体21の複数の溝部27,27に他側修正体22の突起部23の先端が一側修正体21の突起部23と非接触状態で配置され、金属箔シート1の搬送中に一側及び他側修正体21,22の少なくとも一方に超音波振動を付与
して一側及び他側修正体21,22の少なくとも一方の複数の突起部23,23に超音波振動を付与するから、金属箔シート1に繰り返し曲げ変形を与え、金属箔シート1の内部歪を均一化することができ、この際、少なくとも一方の突起部23に超音波振動を付与することにより、低摩擦化効果が得られる。
【0057】
実施例上の効果として、搬送中の金属箔シート1に張力を付与する張力付与手段たるパウダークラッチ15を備えるから、搬送中の金属箔シート1に張力を付与することにより歪を矯正することができる。また、突起部23は、基端部24から先端側向かって細くなる部分であるテーパー部25を設け、このテーパー部25の先端に先端部26を設けたから、先端部26の半径を小さくしても、基端部24を厚くできるから、突起部23の強度を確保することができる。さらに、貫通孔形成装置4はレーザー加工により貫通孔3を形成するものであるから、パンチングやエッジングなどに比べて、貫通孔3の加工速度を上げることでき、効率よく貫通孔3を形成することができ、特にナノ秒レーザーを使用することにより、貫通孔3の加工を速く行うことができる。また、今回の実験では、厚さが約10μmの銅製金属箔シート1に対して、重ね合わせ寸法Rが0.5〜3.0mm、先端部26の半径が0.4〜2.0mmのもので、矯正効果が確認されたが、重ね合わせ寸法Rと先端部26の半径寸法の条件を設定すると共に、金属箔シート1の送り速度、付与する張力、超音波の出力などを適宜設定することにより、10μm未満及び10μmを超える厚さの金属箔シートの加工に適用できることは言うまでもない。
【0058】
尚、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、一側と他側修正体の突起部の数はどちらが多くてもよい。また、実施例では、突起部を全て同じ構成としたが、一側と他側修正体で突起部や先端部の大きさを変え、適宜組み合わせてもよい。また、実施例では、金属箔シートを横方向に搬送したが、金属箔シートを上下方向に搬送しながら歪修正工程を行ってもよく、この場合は、突起部を横向きに配置すればよい。さらに、貫通孔形成装置及び貫通孔形成工程を従来例のものを用いてもよく、例えば、貫通孔形成装置は、実施例で示したレーザー加工によるもの以外でも、パンチング(特許文献2)やエッジング(特許文献1)などにより貫通孔を形成するものを用いてもよく、特に、金属箔シートを搬送しながら貫通孔を連続して形成できる装置を用いることが好ましい。また、実施例では、銅製の金属箔を例に説明したが、他の金属製のものにも適用可能である。さらに、本発明は、圧延銅の金属箔シートに好適であるが、実験例で示したように、電解銅箔シートにも適用可能である。また、実施例では、金属箔シートを連続搬送しながら歪修正装置により歪を修正するように構成したが、断続的に搬送しても良いし、或いは歪処理装置に金属箔シートをセットし、歪を修正した後、金属箔シートを歪処理装置から取り外すといったバッチ処理を行ってもよい。