特許第6645667号(P6645667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645667
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】投写型表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/16 20060101AFI20200203BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20200203BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20200203BHJP
   H04N 9/31 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   G03B21/16
   G03B21/00 D
   H04N5/74 Z
   H04N9/31 440
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-536009(P2018-536009)
(86)(22)【出願日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2016074855
(87)【国際公開番号】WO2018037539
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2019年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】300016765
【氏名又は名称】NECディスプレイソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山下 栄介
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−337380(JP,A)
【文献】 特開2008−058626(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0029472(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/121028(WO,A1)
【文献】 米国特許第6758565(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00−21/10;21/12−21/13;
21/134−21/30;33/00−33/16
H05K7/20
H04N9/12−9/31
H04N5/66−5/74
F21K9/00−9/90
F21S2/00−45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
防塵ケースと、
放熱フィンと、
前記放熱フィンに冷却風を流入させる放熱ファンと、を備え、
前記光源からの光を複数の照明光に分離するプリズムユニットと、
内部循環ファンと、
受熱フィンと、を前記防塵ケース内にさらに備え、
前記放熱フィン及び前記受熱フィンは、ヒートパイプで接続され、いずれも略直方体であり、第1の面および該第1の面よりも面積の大きな第2の面を有し、
前記内部循環ファンによる前記防塵ケース内の冷却風は、前記受熱フィンの前記第1の面および第2の面より流入し、
前記放熱ファンによる冷却風は、前記放熱フィンの前記第2の面より流入する、投写型表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の投写型表示装置において、
前記放熱ファンは、前記放熱フィンに隣接される、投写型表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の投写型表示装置において、
前記防塵ケース内に設けられた、前記プリズムユニットにより分離された複数の照明光のそれぞれに対応して設けられた複数の画像形成素子を備える投写型表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の投写型表示装置において、
前記複数の画像形成素子がDMDである投写型表示装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の投写型表示装置において、
前記防塵ケース内に設けられた、前記光源からの光を前記プリズムユニットに導光する、ミラーおよびレンズを有する光学エンジンを備える投写型表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の投写型表示装置において、
前記防塵ケース内の不要光が入射する位置に設けられた不要光受光面と、
前記放熱フィンによる冷却風を受ける位置となる前記防塵ケースの外部に設けられ、前記不要光受光面とヒートパイプを介して接続された不要光放熱フィンを備える投写型表示装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の投写型表示装置において、
前記プリズムユニットを覆う冷却ダクトと、
前記冷却ダクトに設けられ、前記内部循環ファンによる冷却風を前記プリズムユニットに向けて噴き付ける冷却用開口と、を備える投写型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投写型表示装置は、光源と、光源から出射された光をレンズやミラーなどの光学部品により光学処理した後に画像生成素子(液晶パネルやDMD(Digital Micro−mirror Device))により画像を生成する光学エンジンと、画像生成素子により生成された画像を拡大投写する投写レンズによって構成される。
【0003】
光源は、従来キセノンランプ、高圧水銀ランプが使用されていたが、近年はLED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)が使用されるようになり、光源の出力輝度の低下により定義される光源寿命は、5〜10倍以上長くなっている。投写型表示装置の輝度低下の要因には、光源寿命以外に、光学部品や画像生成素子に、空気中の塵埃や粉塵、油煙などが付着することにより生じる光学部品の透過率低下がある。特に、画像生成素子のように光が結像する部品に塵埃などが付着すると、付着物の形状が、投写画像に写し出される不具合にもつながる。さらに、塵埃などに光が照射されると、発熱し、高温になることで、光学部品が破損し、投写型表示装置の故障につながる。
【0004】
光源寿命が延びたことで、光源が寿命に達するまでに光学部品や画像生成素子に付着する粉塵などによる輝度低下の発生量は増加している。また、近年の投写型表示装置の高輝度化により、付着した粉塵などを原因とする昇温が発生しやすくなり、前述した透過率低下、不具合、故障が発生しやすくなっている。
【0005】
上記のような透過率低下、不具合、故障の発生を防ぐには、光学部品や画像生成素子に粉塵などを付着させないことが必要であり、光学部品や画像生成素子を構造部品で密閉することで、投写型表示装置の周囲の空気に含まれる粉塵などを光学部品や画像生成素子の周辺に侵入させない構造が検討されている。密閉構造内部では、光学部品や画像生成素子が吸収する光エネルギや、投写画面上に到達しない不要光の光エネルギによる発熱が生じるため、密閉構造外部に効率よく放熱する必要がある。
【0006】
密閉構造の放熱技術には、ヒートパイプを用いた熱交換器がよく使われる。例えば、特許文献1(特開2010−107631号公報)では、投写型表示装置の吸気口と排気口をダクトで連結し、ダクト内部に、ヒートパイプの両端にフィンを設けた熱交換器を設置する構成が開示されている。
【0007】
ダクト内部のフィンが排気口から排気される高温空気の通過の際に受熱し、ヒートパイプによりダクト外部のフィンに熱輸送し、ダクト外部のフィンに対してファンによる送風を行うことで放熱している。ダクト外部に放熱されることで、ダクト内部のフィンを通過した空気温度は低下し、投写型表示装置の吸気口へと流入し、投写型表示装置内部の部品を冷却することで高温になった空気が排気口から排気される。投写型表示装置の吸気口や排気口とダクトは密閉され、冷却に使われる空気は吸気口、投写型表示装置内、排気口、ダクトを循環するため、投写型表示装置の周囲の空気に含まれる粉塵などは、投写型表示装置内に侵入しないため、光学部品や画像生成素子に粉塵などは付着しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−107631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1に開示される技術では、投写型表示装置の周囲に熱交換器やダクトを設置するため、装置が大型化する。大型化の主な要因は、熱交換器のフィンの前後の空気が流通するダクト空間が大きいことである。また、投写型表示装置の吸気口と排気口や投写レンズ周囲を密閉しても、筐体に隙間があると、その隙間から周囲空気が粉塵などと共に投写型表示装置内に侵入し、光学部品や画像生成素子に粉塵などが付着する。筐体の外郭は、比較的大きな樹脂部品や板金部品で構成されることが多く、歪みが生じやすく、隙間も生じやすい。特に、映画館などで使用されるような投写型表示装置では、1辺が1000mmを超える板金で構成されるものが一般的である。さらに、電源や映像信号入力のための端子もあり、すべての隙間を密閉することは極めて困難である。 総じて、特許文献1に開示される技術では、ダクト構造も含めた装置全体が大型化するだけでなく、光学部品や画像生成素子の周囲に塵埃などが侵入することを防ぐのは極めて困難である。

本発明の目的は、密閉領域を小型化することで光学エンジン内部への粉塵の侵入防止を比較的容易に実現するとともに、小型で効率の良い放熱構造および光学エンジンの冷却構造を備えた投写型表示装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による投写型表示装置は、光源と、
防塵ケースと、
放熱フィンと、
前記放熱フィンに冷却風を流入させる放熱ファンと、を備え、
前記光源からの光を複数の照明光に分離するプリズムユニットと、
内部循環ファンと、
受熱フィンと、を前記防塵ケース内にさらに備え、
前記放熱フィン及び前記受熱フィンは、ヒートパイプで接続され、いずれも略直方体であり、第1の面および該第1の面よりも面積の大きな第2の面を有し、
前記内部循環ファンによる前記防塵ケース内の冷却風は、前記受熱フィンの前記第1の面および第2の面より流入し、
前記放熱ファンによる冷却風は、前記放熱フィンの前記第2の面より流入する。
【発明の効果】
【0011】
防塵ケースは、光学エンジンやプリズムユニットなどを包含する必要最小限の大きさであるため、隙間を埋めることは比較的容易であり、光学部品や画像生成素子近傍への粉塵などの侵入を防止できる。受熱フィンを流通する空気の流れ方向の断面積は小さいため、防塵ケース内の空間を小型化できる。放熱フィンと放熱ファンは防塵ケースの外部に設けているので、放熱フィンを流通する空気の流れ方向の断面積を大きくし、高い風量を得ることができるため、放熱の効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a),(b)は本発明による投写型表示装置の第1の実施形態の外観を示す斜視図である。
図2】(a),(b)は筐体を非表示にした斜視図である。
図3】(a)は、防塵ケース内部の構成を示した斜視図、(b)は、熱交換器と放熱ファンを非表示にした斜視図である。
図4】(a),(b)はプリズムユニットの斜視図である。
図5】不要光用ヒートシンクの斜視図である。
図6】防塵ケース205の内部を循環する空気の流れを説明する図であり、(a)は防塵ケース205の斜視図、(b)は、防塵ケース205の側壁の一部と不要光用ヒートシンク301、投写レンズ204の周囲の部品を非表示にした斜視図である。
図7】防塵ケースの内部循環空気の流れを説明する別の図であり、(a)は防塵ケースを図6とは別の角度から見た斜視図、(b)は防塵ケース205の側壁の一部と不要光用ヒートシンク301、投写レンズ204の周囲の部品を非表示にした斜視図である。
図8】防塵ケース205の内部を循環する空気の流れを説明するためのさらに別の図であり、(a)は、防塵ケース205の側壁の一部と不要光用ヒートシンク301、投写レンズ204の周囲の部品を非表示にして投写レンズ204の方向から見た図、(b)は、防塵ケース205の側壁の一部と不要光用ヒートシンク301、投写レンズ204の周囲の部品、フィン側面を非表示にして放熱ファン吸気口104の方向から見た図である。
図9】(a),(b)は、放熱フィン304を冷却する冷却風の流れを示した図であり、筐体の一部を非表示にした図である。
【発明の実施の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
第1の実施形態
図1ないし図5は、本発明による投写型表示装置の第1の実施形態を示す図であり、図1(a),(b)は外観を示す斜視図、図2(a),(b)は筐体を非表示にした斜視図、図3(a)は、防塵ケース内部の構成を示した斜視図、図3(b)は、熱交換器と放熱ファンを非表示にした斜視図、図4(a),(b)はプリズムユニットの斜視図、図5は不要光用ヒートシンクの斜視図である。
【0015】
図1に示される投写型表示装置101は、筐体102に電源冷却ファン吸気口103、放熱ファン吸気口104、排気口105が設けられている。
【0016】
筐体102内には、図2に示される、光源203、電源202、電源冷却ファン201、排気ファン206や、図3に示される、光学エンジン310、内部循環ファン303などが格納されている。光源203や光学エンジン310、電源202は、冷却風を送風する電源冷却ファン201によって冷却され、各部品を冷却し、昇温した空気は、排気ファン206によって投写型表示装置101の外部に排気される。
【0017】
筐体102に設けられた電源冷却ファン吸気口103、放熱ファン吸気口104、排気口105は、電源冷却ファン201、排気ファン206により発生する冷却風が流通するために設けられており、本来は安全のための格子状のルーバーや塵埃の侵入を防ぐためのフィルタが設置されるが、本説明では図示しない。
【0018】
図2に示される防塵ケース205内には、図3に示されるように、プリズムユニット308やレンズマウント309、ミラーなどを搭載する光学エンジン310などの光学部品が設置され、光源203から出射した光が、スクリーン上に投写されるまでの光学経路を形成する。
【0019】
防塵ケース205内の光学部品に粉塵などが付着すると、照度低下や故障の原因になるため、気密性の高い防塵ケース205により、粉塵などの光学部品近傍への侵入防止が図られている。説明の都合上、発光素子であるランプやLDの他、発光素子近傍のレンズやミラーなどの光学部品も含めて光源と表現し、光源への粉塵付着を防止するためには、光源も気密性の高い構造で囲われる必要があるが、本発明は主にプリズムユニット308およびその近傍の光学部品を小型の防塵ケース205で密閉し、防塵ケース205内部の熱を効率よく防塵ケース205の外へ放熱する構成であるため、光源203への粉塵付着や光源203の冷却に関する説明は省略する。
【0020】
電源202から光源203へ電力が供給され、光源203が発光し、光源203から出射された光は、ロッド311に入射する。ロッド311は四角柱状のガラスで、入射した光が四角柱の側面において反射を繰り返して進むことで、面内の光強度分布が均一になり、投写映像の品質が向上する。ロッド311の代わりに、ミラーを四角柱状に貼り合わせて、ミラーコート面で反射させるライトトンネルを用いる場合もある。
【0021】
ロッド311を通過した光は、光学エンジン310内に保持されるレンズやミラーによって光学処理された後、プリズムユニット308に含まれるプリズムの入射面に入射する。光学部品や光学設計の特性上、各部品を通過する際、光エネルギの一部は、光学部品や周囲の構造部品で吸収されて熱になる。本実施形態では、フィリップスプリズムとして知られるプリズムを使用している。図4に示されるプリズム入射面406に入射する光は白色光であるが、プリズムにより、R(赤)、G(緑)、B(青)の照明光に分離され、各色の画像を生成する各色にそれぞれ設けられたDMDに入射する。
【0022】
各DMDは、投写画像の各画素に対応する小型ミラーを備えるもので、各DMDに対してそれぞれ設けられたDMD駆動基板401の駆動により、各小型ミラーの傾きを1秒間に数千回切り替えることで、入射した光が反射する角度を各画素で制御し、スクリーン状に照射される投写光と、スクリーン状に投写されない不要光とに分けられる。
【0023】
DMDは図4には示さないが、各色のDMD駆動基板401に形成されたDMD冷却ジャケットの裏側に設置されている。図4(a)には青色用のB−DMD冷却ジャケット403が示され、図4(b),(c)には赤色用と緑色用のR−DMD冷却ジャケット405,G−DMD冷却ジャケット407が示されている。
【0024】
なお、各DMD冷却ジャケットは液冷であり、本来、各DMD冷却ジャケットはゴムチューブのような中空管で連結されているが、図示しない。
【0025】
各色のDMDで反射された光のうち、投写光は、プリズムにより合成され、投写光出射面404から出射し、投写レンズ204を通って、スクリーンなどの投写面上に投写される。各色のDMDで反射された光のうち、不要光は、主に不要光出射面402から出射されるが、一部の光は、プリズムに接着されている板金部品などに照射されるため、これによる熱がプリズムユニット308内で発生する。不要光出射面402から出射された光は、図5に示されるように、不要光用ヒートシンク301の不要光受光面501に照射される。不要光受光面501は低反射率の処理が施されていることが望ましく、不要光受光面501で受光した光は不要光受光面501で吸収されて熱になる。以上が、光源203から出射された光が、スクリーン上に投写されるか、光学部品や構造部品内で熱となる過程の説明である。
【0026】
防塵ケース205内には発熱部品が複数存在する。例えば、光エネルギにより発熱するレンズやミラー、プリズム、電気部品であるDMD駆動基板がある。これらの発熱部品の熱は、発熱部品から防塵ケース205内の空気へ放熱される。防塵ケース205内の空気へ放熱された熱は、防塵ケース205の外であり、かつ、投写型表示装置101内の空気へ放熱され、投写型表示装置101内の空気が電源冷却ファン201、排気ファン206により投写型表示装置101の外へ排気されることで、防塵ケース205内の熱が投写型表示装置101の外へ放熱される。
【0027】
しかしながら、防塵ケース205は、前述のように、プリズムユニット308およびその近傍への粉塵などの付着を防止することを目的に設置されるため、気密性を高くし、防塵ケース205内外の空気の出入りを極力なくす必要がある。防塵ケース205の内外での空気の出入りがなくても、防塵ケース205内の熱を防塵ケース205の外に効率良く放熱するために、熱交換器307を設置している。
【0028】
熱交換器307は、複数のヒートパイプ306と、ヒートパイプ306の両端に複数接続されて固定されている、薄い板金で形成された放熱フィン304と受熱フィン305により構成されている。受熱フィン305は防塵ケース205の内部に配置され、放熱フィン304は防塵ケース205の外部に配置されている。防塵ケース205内には、防塵ケース205内の空気を循環させる内部循環ファン303が設置され、内部循環ファン303により送風された空気は、防塵ケース205内の発熱部品を冷却することで昇温し、昇温した空気は受熱フィン305を通過し、再び内部循環ファン303により送風される。
【0029】
放熱ファン302は放熱フィン304に隣接して設置され、放熱ファン302の前後の空気の流れを形成する。放熱ファン302が動作することで、投写型表示装置101の側面に設けられた放熱ファン吸気口104からの吸気が行われ、吸気による冷却風は放熱フィン304を通過した後、放熱ファン302の排気側へ流れる。放熱ファン302の下流側には、不要光用ヒートシンク301の不要光放熱フィン503が配置されており、放熱ファン302から流出した冷却風の一部は、不要光放熱フィン503をさらに冷却する。
【0030】
ヒートパイプ306は中空管であり、内部に液体を保有し、減圧された状態で封止されているため、受熱フィン305が形成された一端(受熱端)が高温になると、内部の液体が蒸発して気体になることで受熱し、気体は放熱フィン304が形成された他端(放熱端)に移動する。放熱端が冷却されることで、気体は液体に戻り、中空管の内壁に設けられた微小な凹凸構造であるウィックで生じる毛細管現象により、受熱端に戻る。ヒートパイプ306は、液体が気体に状態変化する際の潜熱を利用するため、少ない液体でも大きな熱量を輸送することができ、受熱端と放熱端の温度差は極めて小さく、効率よく熱輸送できる部品として知られている。
【0031】
防塵ケース205内の発熱部品を冷却し、昇温した空気が、受熱フィン305を通過する際、空気から受熱フィン305、ヒートパイプ306へと放熱する。受熱したヒートパイプ306は放熱フィン304に熱輸送し、放熱ファン302による冷却風へと放熱される。受熱フィン305を通過する際に、受熱フィン305、ヒートパイプ306への放熱が行われた防塵ケース205内の空気の温度は下がり、内部循環ファン303により送風され、再び防塵ケース205内の発熱部品を冷却する。
【0032】
プリズムユニット308の不要光出射面から出射した光は、不要光用ヒートシンク301の黒色処理された不要光受光面501に照射され、吸収されて熱となり、不要光用ヒートシンク301に設けられたヒートパイプ502により、防塵ケース205の外に配置される不要光放熱フィン503へと熱輸送される。不要光放熱フィン503は、放熱ファン302による冷却風の一部により冷却されるため、不要光出射面402から出射した光のエネルギは、不要光用ヒートシンク301の不要光受光面501、ヒートパイプ502、不要光放熱フィン503を経由し、防塵ケース205の外の空気へ放熱される。以上が、防塵ケース205内の熱が、防塵ケース205の外の空気へ効率よく放熱される過程の説明である。
【0033】
図6は、防塵ケース205の内部を循環する空気の流れを説明する図であり、図6(a)は防塵ケース205の斜視図、図6(b)は、防塵ケース205の側壁の一部と不要光用ヒートシンク301、投写レンズ204の周囲の部品を非表示にした斜視図である。
【0034】
図7は、防塵ケースの内部循環空気の流れを説明する別の図であり、図7(a)は防塵ケースを図6とは別の角度から見た斜視図、図7(b)は防塵ケース205の側壁の一部と不要光用ヒートシンク301、投写レンズ204の周囲の部品を非表示にした斜視図である。
【0035】
図8は、防塵ケース205の内部を循環する空気の流れを説明するためのさらに別の図であり、図8(a)は、防塵ケース205の側壁の一部と不要光用ヒートシンク301、投写レンズ204の周囲の部品を非表示にして投写レンズ204の方向から見た図、図8(b)は、防塵ケース205の側壁の一部と不要光用ヒートシンク301、投写レンズ204の周囲の部品、フィン側面を非表示にして放熱ファン吸気口104の方向から見た図である。
【0036】
投写型表示装置101のサイズは、輸送や設置の観点から、小型であることが要求される。投写型表示装置101を小型化するには、投写型表示装置101内の部品を小型化することが有効であるが、光学部品を小型化すると、光学効率が低下し、輝度の低下につながる。
【0037】
また、電源や電気基板、ファンを小型化すると、高級部品を使用することによる部品コストの増大、熱密度の増加やファン開口サイズ縮小による風量低下を補うためのファン回転数増加にともなうファン騒音の増大につながる。そのため、輝度低下やコスト、ファン騒音を増大させることなく、投写型表示装置101を小型化するには、冷却風の流通する空間を小型化するとともに、従来使用されていない空間を冷却風の流通する空間として利用することが有効である。
【0038】
内部循環ファン303によって送り出された冷却風は、プリズム冷却ダクト602内を流通し、プリズムユニット308を覆う冷却ダクトであるプリズム天面ダクト601へと流入する。なお、プリズム冷却ダクト602、プリズム天面ダクト601は、図6(b)に示される面と図6(a)に示され、図6(b)で非表示になっている面とで囲われる空間である。プリズムユニット308は、光学設計の特性上、プリズム入射面406が形成される底面が、防塵ケース205の底面に対して45°傾いた状態で設置されている。
【0039】
以下の説明では、図8における図面上下左右方向を用いて本実施形態の構成を説明する。
【0040】
プリズムユニット308を覆うプリズム天面ダクト601は、投写レンズ204の方向から見た場合、プリズムユニット308の上側を囲う防塵ケース天面802と、プリズムユニットの左側を囲い、防塵ケース天面802と直交する防塵ケース側面804と、45°傾いたプリズム天面801と平行な平面とによって構成される。
【0041】
また、内部循環ファン303は、放熱ファン吸気口104の方向から見て、ロッド311の上の空間の、防塵ケース天面802より低い位置に配置される。光源203と光学エンジン310を光学的に結ぶロッド311(またはライトトンネル)は、光学設計上不可欠であり、面内の輝度分布を均一にするには、ロッド311の内部で光を複数回反射させる必要があり、そのための長さを要する。よって、ロッド311の上の、光源203とプリズムユニット308の間の空間は光学設計上必ず生じる空間であり、この空間に内部循環ファン303およびプリズム冷却ダクト602を配置することで、空間を有効に利用できる。
【0042】
従来、プリズム天面801側から送風してプリズムユニット308を冷却するために、プリズム天面801に対向して冷却ファンが設置されていた。このような構成の場合、プリズム天面801の上に冷却ファンと冷却ファンが吸気するための空間が必要となるが、プリズムが45°傾いているために、投写型表示装置の高さと幅がともに大きくなっていた。本実施形態では、前述のプリズム天面801側の空間にプリズム冷却ダクト602を設置することで、防塵の観点からプリズムユニット308を囲うために必要な空間の内部に、プリズム天面ダクト601を配置することができ、冷却に必要な空間を確保して大型化することなく、プリズムユニット308を冷却できる構成となっている。
【0043】
プリズム天面ダクト601には、プリズムやDMD駆動基板を冷却するための冷却風を噴き付けるためのプリズム・基板冷却用開口603が設けられる。プリズムユニット308の冷却を必要とする箇所によって、プリズム・基板冷却用開口603の位置は自由に変えられる。プリズム天面801に対向する面に限らず、例えば、プリズム冷却ダクト602の、G−DMD駆動基板803と対向する面に開口を設けても良いし、別のダクトを形成し、冷却対象箇所近傍に開口を設けても良い。プリズム・基板冷却用開口603に流入する冷却風が、投写型表示装置101の後方(光源203側)から流入し、プリズム・基板冷却用開口603がプリズム天面801に平行な面に形成されているため、プリズム・基板冷却用開口603から流出する冷却風は、投写型表示装置101の前方(投写レンズ204側)、かつ、放熱ファン吸気口104が設けられる側面の下側に向かって流出する。
【0044】
プリズム・基板冷却用開口603から冷却風が流出する方向には、光学エンジン310や、受熱フィン305への流入口があり、滞ることなく冷却風が流れる。プリズムユニット308を冷却した冷却風は、光学エンジン310を構成するレンズやミラー、保持構造などを冷却し、受熱フィン305へと流入する。受熱フィン305に流入する前には、冷却風が流通するための受熱フィン前空間806が必要である。受熱フィン前空間806が狭いと、圧力損失が大きくなり、冷却風量が低下するとともに、冷却風が受熱フィン305全体に流れず、受熱フィン305やヒートパイプ306の利用効率が低下し、防塵ケース205内の冷却性能および防塵ケース205内の熱を外部に放熱する放熱性能が低下する。
【0045】
受熱フィン前空間806を設けることにより、図7(b)に示すように、プリズムユニット308を通った冷却風は、受熱フィン305のプリズムユニット308側となる第1の面と、第1の面と略直交する第2の面の一部から受熱フィン305に流入する。受熱フィン305のプリズムユニット308側の第1の面が塞がれた場合、防塵ケース205内の流路の圧力損失が大きくなり、冷却風量が低下する。受熱フィン305の第2の面が塞がれた場合、防塵ケース205内の流路の圧力損失が大きくなり、冷却風量が低下すると共に、受熱フィン305の放熱ファン吸気口104側となる側面からの冷却風流通量が少なくなり、受熱フィン305やヒートパイプ306の利用効率が低下する。
【0046】
熱交換器307の性能や、防塵ケース205内部の発熱量によっては、一方の面が塞がれても問題なく冷却できる場合もあるが、本実施形態のように、受熱フィン前空間806を設けて受熱フィン305の2つの面から冷却風を受熱フィン305へ流入させることで、冷却性能および放熱性能を向上することができる。
【0047】
また、受熱フィン前空間806の冷却風の流通する面積は、圧力損失増大の観点からは、受熱フィン305間の冷却風が流通する方向の断面積より広いことが望ましい。ただし、受熱フィン前空間806が狭く、受熱フィンのプリズムユニットのある第1の面から受熱フィン305に冷却風が流入する面積を広げすぎると、受熱フィン305の放熱ファン吸気口104側となる側面や第2の面の領域に冷却風が流れず、熱交換器の効率が低下するため、注意が必要である。
【0048】
受熱フィン305および放熱フィン304は上述したように薄い板金(フィン)から構成されるもので、具体的には平板状の複数のフィンが、面が平行かつ一定の間隔となるように配列されている。受熱フィン305を包含する最小の直方体において、通過する冷却風を冷却することに有効となる面は、受熱フィン305を構成するフィンの配列方向に垂直な4つの面であり、その4つの面には上述した第1の面と第2の面が含まれる。本実施形態では、冷却に有効な4つの面のうち、最小面積となる第2の面に対して垂直な方向から冷却風が流れる構成とすることで、受熱フィン前空間806の容積を最小にして必要十分に確保できる構成としている。また、受熱フィン前空間806を、従来デッドスペースとなっていたレンズマウント309と筐体102の角部の稜線近傍に囲われる空間に設置することで、空間を有効に使用している。
【0049】
冷却風が受熱フィン305を流通する際に、受熱フィン305、ヒートパイプ306に放熱することで、冷却風の温度は下がり、受熱フィン後空間807を通って、内部循環ファン303に戻り、再びプリズム冷却ダクト602へと送られる。本実施形態では、受熱フィン305を包含する最小の直方体において、放熱または受熱に有効となる冷却風の流入面となる冷却に有効な4つの面のうち、最小面積となる面に対して垂直な方向から冷却風が流れる構成とすることで、圧力損失を増大させることなく、受熱フィン後空間807の流路断面積を小さくでき、受熱フィン後空間807の容積も小さくできるものとなっている。
【0050】
図9(a),(b)は、放熱フィン304を冷却する冷却風の流れを示した図であり、筐体の一部を非表示にした図である。
【0051】
放熱ファン302が駆動することで、筐体102の側面に設けられた放熱ファン吸気口104より空気が流入し、放熱フィン304を通過、放熱ファン302により投写型表示装置101の内部へと送り込まれる。放熱フィン305を包含する最小の直方体において、通過する冷却風に放熱することに有効となる面は、受熱フィン304を構成するフィンの配列方向に垂直な4つの面であり、そのうちの最大面積となる面と平行に隣接するように放熱ファン302を設置し、この面の垂直方向に放熱フィン304の冷却風が流れる構成にすることで、低回転数で低騒音でも放熱フィン304の冷却風の風量を確保できる大型ファンを設置でき、効率よく放熱できるものとなっている。
【0052】
受熱フィン305の流れ方向における上流から下流までに設けられたヒートパイプ306に対して、放熱ファン吸気口104より流入した放熱フィン冷却風が並列に送風されることで、上流から下流までに設けられたヒートパイプ306および放熱フィン304を冷却する放熱フィン冷却風の温度は、同一のものとなり、かつ、投写型表示装置101外の空気温度、つまり、投写型表示装置101を冷却できる空気のうちの最も低い温度であるため、放熱フィン304を冷却する冷却性能は高くなり、放熱効率も高くなる。
【0053】
放熱フィン304と放熱ファン302の配置は、図9(a)に示した構成に限られるものではなく、放熱ファン吸気口104、放熱ファン302、放熱フィン304の順に放熱フィン冷却風が流通する構成としても良い。また、放熱フィン304の中央部を削除し、削除した空間に放熱ファン302を配置することで、放熱ファン吸気口104、放熱フィン304、放熱ファン302、放熱フィン304の順に放熱フィン冷却風が流通する構成としても良い。
【0054】
放熱ファン302により投写型表示装置101の内部に送り込まれた放熱フィン冷却風の一部は、放熱ファン302の下流側に位置する不要光放熱フィン503を冷却する。防塵ケース205の内部の不要光の光エネルギを、熱交換器307とは別の不要光用ヒートシンク301で放熱することで、熱交換器301による放熱量を低減でき、防塵ケース205内の空気温度上昇を抑えることができる。また、不要光用ヒートシンク301を使用しない場合でも、迷光除去の観点から防塵ケース205の内部に不要光受光面501を設けることは必要であり、不要光受光面501を冷却するための冷却風が必要である。本実施形態では、内部循環ファン303による冷却風の一部を、不要光受光面501を冷却するために使用しているので、プリズムやDMD駆動基板401を冷却する性能が低下する。これを補うために、不要光用ヒートシンク301を設置することで、防塵ケース205の内部の温度上昇を抑えるとともに、プリズムやDMD駆動基板401の十分な冷却性能を確保している。
【0055】
不要光放熱フィン503は、レンズマウント309の上の空間に設置されているが、この空間は従来利用されていない空間であり、空間を有効に使用している。また、不要光放熱フィン503を防塵ケース天面802と同じ面を構成するような配置とすることで、不要光用ヒートシンク301を設置することで、投写型表示装置101が大きくなることはない。
【0056】
放熱ファン302と不要光放熱フィン503との間にダクト状の壁面を形成することで、放熱ファン302から流出した放熱フィン冷却風を、不要光放熱フィン503に導風することができ、不要光放熱フィン503を冷却する風量が増加し、不要光用ヒートシンク301の放熱性能が高くなる。不要光放熱フィン503は、放熱ファン302と離れた位置に設置されるため、フィン間距離が小さいと、圧力損失が大きくなり、フィン間に放熱フィン冷却風が流れにくくなるため、不要光放熱フィン503のフィン間距離は、熱交換器307の放熱フィン304のフィン間距離よりも広くすることが望ましい。なお、配置を説明する都合上、例えば、図3では、放熱ファン吸気口104、放熱フィン304、放熱ファン302の外周に隙間を有して配置されている状態を示しているが、隙間が空いていると投写型表示装置101内の昇温した空気が放熱フィン間に流れたり、隙間から吸気することで放熱フィン304に流通する放熱フィン冷却風量が低下したりするため、放熱ファン吸気口104、放熱フィ304ン、放熱ファン302の外周の隙間をダクト状構造物で塞ぐことが望ましい。
【0057】
本実施形態の構成では、受熱フィン305を流通する空気の流れ方向は、受熱フィン305を包含する最小の直方体において、フィンの配列方向に垂直な面のうちの最小面積となる面の垂直方向であり、放熱フィンを流通する空気の流れ方向は、放熱フィン304を包含する最小の直方体においてフィンの配列方向に垂直な面のうちの最大面積となる面の垂直方向であるため、受熱フィン305を流通する空気の流れ方向と放熱フィン304を流通する空気の流れ方向は90°ねじれた方向関係にある。
【0058】
受熱フィン305に流れる空気は、防塵ケース205の内部に設置された内部循環ファン303により生成されるが、上記のように、空気の流れが流通する流路の断面積と空間を小さくできることから、防塵ケース205、および、防塵ケース205を収容する投写型表示装置101を小型化できる。
【0059】
また、放熱フィン304または放熱ファン302を筐体102に隣接させ、放熱フィン304を流通する空気の流れ方向の断面積は大きなものとなるため、吸気のための空間を投写型表示装置101内に設ける必要はなくなり、この点からも投写型表示装置を小型化できる。また、放熱ファン302を大型化できることから高い風量を得ることができ、放熱の効率が良い。防塵ケース205の内部に流通する空気から受熱し、防塵ケース205の外に放熱する熱交換器307以外に、光を受光し、熱に変えて防塵ケース205の外に放熱する不要光用ヒートシンク301を設置することで、さらに効率よく、防塵ケース205内の熱を放熱できる。防塵ケース205が小型であるため、組立工程上で生じうる防塵ケース205の内外を連通する隙間を塞ぐことが比較的容易で、光学部品や画像生成素子近傍への粉塵などの侵入を防止できるとともに、投写型表示装置101の大型化を抑制できる。総じて、本実施形態の構成は、密閉領域が小型で光学エンジン内部への粉塵の侵入防止を比較的容易に実現できるとともに、小型で効率の良い放熱構造および光学エンジンの冷却構造である。
【符号の説明】
【0060】
101 投写型表示装置
102 筐体
203 光源
205 防塵ケース
304 放熱フィン
305 受熱フィン
306 ヒートパイプ
308 プリズムユニット
図1
図2
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図6
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図9