特許第6645668号(P6645668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645668
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】画像表示装置および画像表示方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20200203BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20200203BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20200203BHJP
   H04N 5/66 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   G09G3/36
   G09G3/20 642A
   G09G3/20 641P
   G09G3/20 650M
   G09G3/20 642E
   G09G3/20 670Q
   G09G3/20 642P
   G02F1/133 575
   H04N5/66 102B
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-540242(P2018-540242)
(86)(22)【出願日】2016年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2016077620
(87)【国際公開番号】WO2018055657
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2018年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】300016765
【氏名又は名称】NECディスプレイソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】松井 勝之
【審査官】 中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−235541(JP,A)
【文献】 特開2005−055830(JP,A)
【文献】 特開平05−183921(JP,A)
【文献】 特開2001−134235(JP,A)
【文献】 特開2003−018416(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/073356(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0348505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 − 5/42
G02F 1/133
H04N 5/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルの表示画面に表示される複数の画面の黒ムラを補正して表示する画像表示装置であり、
前記画面毎の黒輝度と最小黒輝度とから、前記画面毎に差分輝度を求め、前記差分輝度を前記画面毎の最大白レベルで除算し、前記除算の結果を前記画面毎の画像オフセット補正量を求めるオフセット量算出部と、
前記オフセット量算出部から前記画像オフセット補正量の出力を受け、前記画面毎に黒レベルを調整する画像オフセット部と、
前記黒レベルと前記画面毎に設定される白レベルとにより、前記表示画面全体におけるムラ補正を行なう黒ムラ補正部と
を備える
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記黒レベルの補正が行なわれた前記画面毎の画像の合成を行ない、前記液晶パネルの前記表示画面に表示される画像を生成する画像合成部
をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記画像合成部により画面毎に生成された画像における画素の階調及び前記液晶パネルの位置に対応して、ムラ補正量を求める黒ムラ補正量計算部
をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記黒ムラ補正量計算部が、
白レベルにおける最大値の最大白レベルを前記黒輝度の最小値で減算した目標コントラスト比に基づいて、前記画像オフセット補正量により調整された前記画面の画像が合成された表示画像の画素各々の階調を補正する黒ムラ補正量を求め
ことを特徴とする請求項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記黒ムラ補正量計算部が、
前記白レベルにおける最大値の最大白レベルを前記黒輝度の最小値で減算した目標コントラスト比と、製造時における表示ムラ補正の調整を行なった際の調整時コントラスト比とを比較し、前記黒ムラ補正量を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
ユーザーが前記画面毎に設定した黒レベルと白レベルの値を読出し、前記画面毎における黒レベルの絶対値を算出する黒輝度算出部
をさらに備える
ことを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記黒輝度算出部が、
前記黒レベルと前記白レベルとを乗算し、乗算結果を前記黒輝度とする
ことを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
液晶パネルの表示画面に表示される複数の画面の黒ムラを補正して表示する画像表示方法であり、
オフセット量算出部が、前記画面毎の黒輝度と最小黒輝度とから、前記画面毎に差分輝度を求め、前記差分輝度を前記画面毎の最大白レベルで除算し、前記除算の結果を前記画面毎の画像オフセット補正量を求めるオフセット量算出過程と、
画像オフセット部が、前記オフセット量算出部から前記画像オフセット補正量の出力を受け、前記画面毎に黒レベルを調整する画像オフセット過程と、
黒ムラ補正部が、前記黒レベルと前記画面毎に設定される白レベルとにより、前記表示画面全体におけるムラ補正を行なう黒ムラ補正過程と
を備える
ことを特徴とする画像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶モニターなどの画像表示装置及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医用あるいはグラフィックデザインなどといった業務においては、診断や色彩の表現に使用されるため、画像表示装置(ディスプレイ)に対して数値的に正確な色再現が必要である。このため、画像表示装置には、表示画面に表示される画像の輝度や色度の正確さ、及び表示画面内における輝度均一性が求められている。
さらに、近年において、画像表示装置は、表示画面の大画面化に伴い、例えば、異なる装置で運用していた医用における画像診断(X線画像)と、事務用の電子カルテとの表示の統合(PinP(picture in picture)/PbyP(picture by picture)などを用いた表示)が求められている。
【0003】
すなわち、画像表示装置の表示画面内において、この表示画面に表示される異なる複数のアプリケーションの画面の各々が、それぞれの独立した画質設定に対応した画像を正確に表示することが求められている。
このため、画像表示装置においては、映像表示部(液晶パネルやバックライト)における、例えば図7に示す表示画面の表示ムラを補正し、表示画面内で均一な表示を実現している(例えば、特許文献1参照)。
図7は、画像表示装置の表示画面内における表示ムラの一例を示す3次元グラフである。一般的に、表示画面内における表示ムラは、個々の画像表示装置によって状態が異なる。この図7は、画像表示装置の表示画面における水平方向の位置に対応するx軸及び垂直方向の位置に対応するy軸の各々の座標値で設定される画素におけるz軸の画面輝度値[cd/m]を示している。すなわち、各画素が同じ階調の画像を表示したときの画像表示装置の表示画面における表示ムラ(画面輝度値の不均一性)を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−219062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような表示装置の場合、表示画面における独立した黒レベルをそれぞれ有する画面において、それぞれの画面の独立した画質設定に対応した画像を正確に表示することが困難である。
すなわち、図8に示すように、特許文献1の画像表示装置200において、画像オフセット回路201は、画像入力部202を介して入力される画面画像の黒レベルを、予め画質設定記憶部203に設定された黒レベル(黒レベル補正データ)によりオフセット調整する。また、画像オフセット回路204は、画像入力部205を介して入力される画面画像の黒レベル(画像オフセット回路201に入力される黒ラベルと独立に設定された黒レベル)を、画質設定記憶部203に設定された黒レベルによりオフセット調整する。
【0006】
そして、画像合成回路206は、画像オフセット回路201及び204の各々から出力される、それぞれオフセット調整された画面画像を合成して、表示画面画像を生成する。黒ムラ補正回路207は、画質設定記憶部203に設定されたムラ補正設定である黒ムラ補正データにより、表示画面画像の黒ムラ補正を行ない、画像表示部208に対して出力する。ここで、黒ムラ補正回路207は、画像表示部208の表示ムラを表示画面内で均一な表示とするムラ補正によって、黒ムラの補正を行なっている。画像表示部208は、液晶パネルであり、黒ムラ補正回路207から供給される表示画面画像を、表示画面に対して表示する。この図8は、特許文献1の画像表示装置の概念図である。
【0007】
このため、特許文献1の画像表示装置は、黒レベルの設定とは異なる表示画面内の黒ムラ(表示ムラ)のムラ補正を行なっており、この2つの独立した黒レベルの設定の組合わせにより、画像表示部208の表示画面に表示される各画面における画質が決定される。しかしながら、黒ムラ補正回路207において表示画面のムラ補正を行なわれることにより、画像表示部208の表示画面全体の黒レベルが上昇して、表示画面に表示される画面毎における希望するコントラスト特性が得られなくなる。
【0008】
上述の課題を鑑み、本発明は、表示画面に表示される複数の画面毎に適切な画像を表示することができる画像表示装置および画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、液晶パネルの表示画面に表示される複数の画面の黒ムラを補正して表示する画像表示装置であり、前記画面毎の黒輝度と最小黒輝度とから、前記画面毎に差分輝度を求め、前記差分輝度を前記画面毎の最大白レベルで除算し、前記除算の結果を前記画面毎の画像オフセット補正量を求めるオフセット量算出部と、前記オフセット量算出部から前記画像オフセット補正量の出力を受け、前記画面毎に黒レベルを調整する画像オフセット部と、前記黒レベルと前記画面毎に設定される白レベルとにより、前記表示画面全体におけるムラ補正を行なう黒ムラ補正部とを備えることを特徴とする画像表示装置である。
【0010】
また、本発明は、液晶パネルの表示画面に表示される複数の画面の黒ムラを補正して表示する画像表示方法であり、オフセット量算出部が、前記画面毎の黒輝度と最小黒輝度とから、前記画面毎に差分輝度を求め、前記差分輝度を前記画面毎の最大白レベルで除算し、前記除算の結果を前記画面毎の画像オフセット補正量を求めるオフセット量算出過程と、画像オフセット部が、前記オフセット量算出部から前記画像オフセット補正量の出力を受け、前記画面毎に黒レベルを調整する画像オフセット過程と、黒ムラ補正部が、前記黒レベルと前記画面毎に設定される白レベルとにより、前記表示画面全体におけるムラ補正を行なう黒ムラ補正過程とを備えることを特徴とする画像表示方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表示画面に表示される複数の画面毎に適切な画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による画像表示装置1の構成例を示す図である。
図2】本実施形態における、目標コントラストが100:1の場合の黒ムラ補正を行なったときの表示ムラの一例を示す図である。
図3】本実施形態における、目標コントラストが30:1の場合の黒ムラ補正を行なったときの表示ムラの一例を示す図である。
図4】本実施形態における、目標コントラストが10:1の場合の黒ムラ補正を行なったときの表示ムラの一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態の概念を説明する図である。
図6】画像表示装置1が行う液晶パネル21に表示画面画像を表示する処理例を示すフローチャートである。
図7】画像表示装置の表示画面内における表示ムラの一例を示す3次元グラフである。
図8】特許文献1の画像表示装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による画像表示装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態による画像表示装置1の構成例を示す図である。
図1に示すように、画像表示装置1は、黒輝度算出部11、オフセット量算出部12、最小黒輝度選択部13、最大輝度選択部14、黒ムラ補正量計算部15、画像入力部16、画像オフセット部17、画像合成部18、黒ムラ補正部19、記憶部20及び液晶パネル21を備えている。
【0014】
本実施形態においては、液晶パネル21の表示画面に表示される画面(例えば、ウィンドウ表示)毎に黒レベルと白レベルとが、表示画面の設定としてユーザにより入力される。すなわち、ユーザは、液晶パネル21の表示画面における画面毎に、希望する白レベル及び黒レベルの各々を、画像表示装置1に対して設定する。設定値の単位と範囲とは任意であるが、本実施形態においては、白レベル及び黒レベルの各々の単位及び範囲を、それぞれ0〜100[%]とする。白レベルは、所定の画面に表示される画像の最も明るい輝度(最大階調を表示したときの輝度)に対応する。黒レベルは、所定の画面に表示される画像の最も暗い輝度(最小階調を表示したときの輝度)に対応する。白レベルは、バックライトの出力や画像信号の最大レベル(液晶パネル21の画素における光の最大透過率)を可変して制御する。黒レベルは、画像信号の最小レベル(液晶パネル21の画素における光の最小透過率)を可変する。バックライトや画像信号を可変して制御する動作は、一般的な液晶パネルと同様である。表示画面は、例えば、PinP(picture in picture)、PbyP(picture by picture)などを用いて表示される。すなわち、PinPとして表示する場合、表示領域の一部の領域に第2の画面が表示され、第2の画面を除く表示領域全体に第1の画面が表示される。また、PinP(picture in picture)として表示する場合、表示領域を2つに分割し、一方の領域に第1の画面が表示され、他方の画面に第2の画面が表示される。なお、2つの画面(第1の画面、第2の画面)について説明したが、3つの画面(第1の画面、第2の画面、第3の画面)など、複数の画面が表示されるようにしてもよい。
【0015】
黒輝度算出部11は、ユーザが設定した画面毎の黒レベルと白レベルとから、画面各々における黒レベルの絶対値(各画面に表示される際の実際に輝度)である黒輝度を算出する。黒輝度として、表示画面における正確な黒画面輝度[cd/m]の算出が望ましい。しかしながら、本実施形態においては、簡便に黒レベルと白レベルとの各々を乗算した結果を黒輝度として求める。すなわち、黒輝度は、表示画面に最小階調の画像を表示したときの輝度に対応している。
【0016】
例えば、液晶パネル21の表示画面に画面P1(第1の画面)及び画面P2(第2の画面)の各々が表示される際に、画面P1の黒レベルが10%、白レベルが30%として設定された場合、黒輝度は0.03(=0.1×0.3)と求められる。同様に、画面P2の黒レベルが5%、白レベルが100%として設定された場合、黒輝度は0.05(=0.05×1.0)と求められる。黒レベルは、液晶パネル20の画素における光の透過率を示している。白レベルは、最大輝度値であり、バックライト(不図示)の最大照度に対する比率を示している。なお、液晶パネル20は、バックライトが発する光を映像信号に基づいて変調して画像を表示する。
【0017】
液晶パネル21の表示画面に表示される画面の各々において、それぞれ独立した黒レベル及び白レベルを適切に再現するため、画面間における白レベル及び黒レベルの大小を明確化する必要がある。黒レベルは、白レベルに対する相対値である。このため、白レベルとは異なり、黒レベル自体では、画面間における大小を明確化することができない。本実施形態においては、上述した黒輝度を算出し、画面間における黒レベルの相対評価を行なっている。
【0018】
最小黒輝度選択部13は、黒輝度算出部11が求めた各画面における黒輝度の中で、最も小さな黒輝度(最小黒輝度)を選択する。また、最小黒輝度選択部13は、選択した最小黒輝度を黒ムラ補正量計算部15に対して出力する。ここで、本実施形態の場合、最小黒輝度選択部13は、画面P1の黒輝度0.03を選択する。
【0019】
最大輝度選択部14は、画面の各々の白レベルから、最大の輝度値(白輝度)、すなわち最大の白レベル(最大白レベル)を選択する。また、最小黒輝度選択部13は、選択した最大白レベルを黒ムラ補正量計算部15に対して出力する。本実施形態の場合、最大輝度選択部14は、画面P2の白レベル1.0を選択する。
【0020】
画像入力部16は、外部機器から液晶パネル21の画像表示面に表示される画面の各々の画面表示画像それぞれを入力する。
【0021】
オフセット量算出部12は、画面の黒輝度と、最小黒輝度と、最大白レベルとの各々により、画像オフセット補正量の算出を行なう。ここで、オフセット量算出部12は、画面の黒輝度の各々から、最小黒輝度を減算し、減算結果として画面それぞれの差分輝度を求める。そして、オフセット量算出部12は、画面の差分輝度の各々を、最大白レベルで除算し、画面それぞれの画像オフセット補正量を求める。また、オフセット量算出部12は、求めた画像オフセット補正量を画像オフセット部17へ出力する。
【0022】
例えば、最小黒輝度が0.03であるため、画面P1の画面表示画像の差分輝度は、0.0(=0.03−0.03)となる。一方、画面P2の画面表示画像の差分輝度は、0.02(=0.05−0.03)となる。また、最大白レベルが1であるため、画面P1及び画面P2の各々の画面表示画像の画像オフセット補正量は、それぞれ0.0(=0.0/1.0)、0.02(=0.02/1.0)となる。
【0023】
画像オフセット部17は、オフセット量算出部12から供給される画像オフセット補正量に基づいて、画面の各々の画面表示画像の黒レベルを上昇させる。すなわち、画像オフセット部17は、画面表示画像の各画素の階調を画像オフセット量分上昇させる処理を行ない、補正後の階調からなる画面表示画像を出力する。本実施形態において、画像オフセット部17は、画面P1の画面表示画像に対する画像オフセット補正量が0であるため、画面P1の画面表示画像に対するオフセットによる補正を行なわない。一方、画像オフセット部17は、画面P2の画面表示画像に対する画像オフセット補正量が0.02であるため、画面P2の画面表示画像の各々の階調を画像オフセット補正量0.02分上昇させる補正を行う。
【0024】
画像合成部18は、画像オフセット部17がオフセット補正を行なった画面P1の画面表示画像と画面P2の画面表示画像との各々を、液晶パネル21の表示画面に表示する表示画面画像として合成する。そして、画像合成部18は、合成した表示画面画像を、黒ムラ補正部19に対して出力する。
【0025】
黒ムラ補正量計算部15は、最大白レベルと最小黒輝度とから目標コントラスト比を算出する。本実施形態において、黒ムラ補正量計算部15は、最大白レベルが白レベル1であり、最小黒輝度が黒輝度0.03であるため、目標コントラスト比が100:3(≒33:1)として算出される。このコントラスト比の計算方法は、簡易的な計算であり、さらに係数を乗じるなどする正確なコントラスト比を計算できる手順を用いても良い。黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比と、表示ムラ調整時におけるコントラスト比である調整時コントラスト比とを比較し、目標コントラスト比が得られるように、黒ムラ補正量を求める。
記憶部20には、調整時コントラスト比が予め書き込まれて記憶されている。以下、この調整時コントラスト比について説明する。
【0026】
液晶パネル21を製造した際または表示装置を製造した際など、この液晶パネル21の表示画面の表示ムラを補正するための基準となるムラ補正(表示ムラ)データを決定し、予め記憶部20に書き込んで記憶させておく。このムラ補正データ(補正値)は、一般的に、色(例えば、R(レッド)、G(グリーン)及びB(ブルー)の各々)と、階調(階調255、192、128、64、0)の各々との組合わせ毎に、上記表示画面における位置(例えば、表示画面の画素の配列において、所定の横20画素、縦11画素)に対応して、それぞれ独立したルックアップテーブルとして記憶部20に書き込まれて記憶されている。これらの補正値は、表示画面における画素の位置、画素の階調に対して全て設定されているのではなく、記憶部20の記憶容量の増加を抑制するため、所定の代表的な階調あるいは所定の間隔に散布された位置の画素に対して設定されている。液晶パネルのムラ補正は、ムラ補正データを用いて行われる。なお、黒ムラ補正は階調0のムラ補正に対応する。
【0027】
したがって、補正値が存在する画素間にある、補正値が存在しない画素に対しては、補正値が存在する最も近接する2つの画素の補正値の直線補完などにより、補正値を求めることになる。同様に、補正値が存在する階調間にある、補正値が存在しない階調に対しては、補正値が存在する最も近接する2つの階調の補正値の直線補完などにより、補正値を求めることになる。
表示画面における表示ムラ調節は、例えば、CCD(charge coupled device)などの撮像素子により取得した2次元輝度分布(表示ムラ分布)に基づいて、表示ムラが低減される補正値を求めることで行なう。すなわち、液晶パネル21の製造時において、表示画面における各位置の画素の階調を全て同一とし、表示ムラが均一となるように、その階調となる各画素の補正値を求める。これをすでに述べた代表的な階調毎に行ない、それぞれの階調における補正値を求める。
【0028】
そして、調整時コントラスト比は、上述した表示ムラが均一となるように補正した際における、表示画面の中央の位置における画素の黒レベルと白レベルとのコントラスト比として求められ、予め記憶部20に書き込まれている。また、表示画面の中央の位置における画素の黒ムラ補正を行なわない場合のコントラスト比を、無補正コントラスト比として、記憶部20に書き込んで記憶させる。表示ムラ(黒ムラ補正)の補正を行なった場合、原理的に白レベルの輝度が低下し、黒レベルの輝度が上昇する。このため、調整時コントラスト比は、無補正コントラスト比に対して低下することになる。例えば、無補正コントラスト比が1000:1であっても、表示ムラの補正を行なった場合、調整時コントラスト比として300:1に低下する。
【0029】
黒ムラ補正量計算部15は、上述した記憶部20に記憶されている調整時コントラスト比を参照して、ルックアップテーブルにおける表示ムラの補正値を用いて目標コントラスト比が実現できるように、表示画面画像の各々の画素の黒ムラ補正量を算出する。ここで、記憶部20に記憶されているルックアップテーブルにおける表示ムラの補正値は、調整時コントラスト比に対応している。このため、ルックアップテーブルの補正値をそのまま用いた場合、ユーザが希望とする目標コントラスト比が得られない。
【0030】
黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比が得られるように、以下の処理を行なう。まず、黒ムラ補正量計算部15は、記憶部20から調整時コントラスト比と無補正コントラスト比とを読み出す。また、黒ムラ補正量計算部15は、表示画面画像における画素の各々の階調及び液晶パネル21の位置に対応して、それぞれの画素の階調に対するムラ補正量を、記憶部20のルックアップテーブルを参照して計算する。すでに述べたように、黒ムラ補正量計算部15は、対象の画素がルックアップテーブルに存在する代表位置であり、かつ代表の階調であれば、その位置及び階調に対応するムラ補正量を、その画素の補正値とする。一方、黒ムラ補正量計算部15は、対象の画素がルックアップテーブルに存在する代表位置でないか、あるいは代表の階調でない場合、代表位置及び代表の階調の各々から直線補完などを用いて算出する。
【0031】
また、黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比と、調整時コントラスト比及び無補正コントラスト比の各々とを比較する。そして、黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比が調整時コントラスト比以下であれば、上述したように求めた階調値(ムラ補正量)を黒ムラ補正量として、黒ムラ補正部19に対して出力する。
一方、黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比が無補正コントラスト比を超えている場合、黒ムラ補正量を「0」として、黒ムラ補正部19に対して出力する。また、黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比が、調整時コントラスト比を超え、かつ無補正コントラスト比未満である場合、目標コントラスト比から調整時コントラスト比を減算した減算結果を、無補正コントラスト比から調整時コントラスト比から減算した減算結果により除算し、1から除算結果を減算した数値を調整量とする。そして、黒ムラ補正量計算部15は、求めたムラ補正量に対して上記調整量を乗算し、この乗算結果を黒ムラ補正量として、黒ムラ補正部19に対して出力する。
【0032】
上述した処理において、各画面において設定された白レベルと黒レベルとから求めた黒輝度を、目標コントラスト比と調整時コントラスト比との比較に対応して、最大白レベルに対する相対的な黒レベルに再度変換している。この変換は、黒ムラ補正が表示画面画像の表示ムラの補正であり、白レベル(最大白レベル)を輝度の最大値(基準値)として、この白レベルに対する相対値として、表示ムラの補正に用いる黒ムラ補正量を算出するために行なわれる。一般的に、液晶パネル21などの液晶ディスプレイにおける絶対的な輝度は、バックライトの照射光の制御により決定される。このため、オフセット量、黒ムラ補正量などの画像補正値は、白レベルに対する相対値として求める必要がある。
【0033】
図2は、本実施形態における、目標コントラストが100:1の場合の黒ムラ補正を行なったときの表示ムラの一例を示す図である。図3は、本実施形態における、目標コントラストが30:1の場合の黒ムラ補正を行なったときの表示ムラの一例を示す図である。図4は、本実施形態における、目標コントラストが10:1の場合の黒ムラ補正を行なったときの表示ムラの一例を示す図である。なお、表示画面内における表示ムラは、個々の表示パネルによって異なる。
図2図3及び図4の各々において、x軸は液晶パネル21の表示画面の横方向(例えば、長尺方向、または水平方向)の画素の位置を示している。また、y軸は液晶パネル21の表示画面の縦方向(例えば、短尺方向、または垂直方向)の画素の位置を示している。z軸は、x軸におけるx座標とy軸におけるy座標とにより示される、表示画面の画素の位置における画面輝度[cd/m]を示している。この画面輝度は、黒ムラ補正量に対応している。
図2図3及び図4の各々に示されるように、目標コントラスト比が小さくなるに従い、輝度を補正する黒ムラ補正量が増加する。すなわち、図2は、黒ムラ補正がかかっていない、またはほとんどかかっていない状態を示す。図3は、表示画面の最低輝度が0.4[cd/m]程度になるように黒ムラ補正をかけた状態を示す。また、図4は、表示画面の最低輝度が0.6[cd/m]程度になるように黒ムラ補正をかけた状態を示す。
【0034】
黒ムラ補正部19は、表示画面画像の各画素の階調を、黒ムラ補正量計算部15が求めた黒ムラ補正量に対応した階調値により補正する。そして、黒ムラ補正部19は、各画素の階調が補正された表示画面画像を、液晶パネル21に対して出力する。
液晶パネル21は、黒ムラ補正部19から供給される表示画面画像を、表示画面に対して表示する。
【0035】
上述したように、本実施形態によれば、液晶パネル21の表示画面に複数の画面を表示させる際、黒ムラ補正部19で補正される表示画面画像の全体で共有される最小黒輝度のレベルと、画像オフセット部17で補正される画面間の黒レベルに基づくオフセットとにより、黒レベルを分割して補正、すなわち2段階で補正することにより、画面毎の画質設定と、表示画面における表示ムラの抑圧(ムラ補正)との各々を両立して行なうことができる。このため、本実施形態によれば、複数の画面の各々に対して、それぞれに独立した黒レベルの設定を行ない、かつ表示画面全体における黒ムラのムラ補正を行なえるため、画面の各々の独立した画質設定に対応した画面表示画像を、それぞれ画面に適切に表示することができる。
【0036】
図5は、本発明の実施形態の概念を説明する図である。図5において、本発明の実施形態における画像表示装置100は、液晶パネルの表示画面に表示される複数の画面の各々の黒ムラを補正して表示する画像表示装置であり、画像オフセット部17と黒ムラ補正部19と液晶パネル21とを備えている。画像オフセット部は、液晶パネル21の表示画面に表示される画面毎に設定される黒レベルに基づくオフセット量により、画面それぞれの黒レベルの輝度を調整する。黒ムラ補正部19は、黒レベルと画面毎に設定される白レベルとにより、液晶パネル21の表示画面に表示される画面を合成した表示画面画像全体におけるムラ補正を行ない、液晶パネル21に対して、この表示画面画像を出力する。
【0037】
これにより、表示画面に表示される複数の画面毎に適切な画像を表示することができる。また、表示画面に表示される複数の画面毎に独立した画質設定に対応した画像を画面に正確に表示することができる。
【0038】
図6は、画像表示装置1が行う液晶パネル21に表示画面画像を表示する処理例を示すフローチャートである。
ステップS1:
画像入力部16は、外部機器から液晶パネル21の表示画面に表示する画面の各々の画面表示画像を入力する。
また、図示しない入力手段から、ユーザによって画面の各々に対する黒レベルと白レベルとのそれぞれの設定値が入力され、記憶部20に書き込まれて記憶される。
【0039】
ステップS2:
黒輝度算出部11は、記憶部20から画面の各々の黒レベル及び白レベルを読出し、それぞれの画面の黒輝度を算出し、各画面に対応させて記憶部20に対して書き込んで記憶させる。
【0040】
ステップS3:
最小黒輝度選択部13は、記憶部20を参照し、記憶されている各画面の黒輝度から最小の黒輝度を、最小黒輝度として選択して読み出し、オフセット量算出部12に対して出力する。
また、最大輝度選択部14は、記憶部20を参照し、記憶されている各画面の白レベルから最大の白レベルを、最大白レベルとして選択して読み出し、オフセット量算出部12に対して出力する。
そして、オフセット量算出部12は、最小黒輝度と最大白レベルから画像オフセット補正量(オフセット量)を算出する。すなわち、オフセット量算出部12は、画面の各々の黒輝度と最小黒輝度とから、それぞれの画面の差分輝度を求める。オフセット量算出部12は、画面の各々の差分輝度を最大白レベルで除算し、除算結果を画面それぞれの画像オフセット補正量として算出する。オフセット量算出部12は、画面の各々の画像画像オフセット補正量それぞれを画像オフセット部17に対して出力する。
【0041】
ステップS4:
画像オフセット部17は、供給された画像オフセット補正量に基づき、画面の各々の画面表示画像の黒レベルを上昇させるオフセット処理により、各画面の画面表示画像における階調の補正を行う。
そして、画像合成部18は、階調の補正が行なわれた画面表示画像の各々の合成を行ない、液晶パネル21の表示画面に表示される表示画面画像を生成する。
【0042】
ステップS6:
黒ムラ補正量計算部15は、上記表示画面画像における画素の各々の階調及び液晶パネル21の位置に対応して、それぞれの画素の階調及び位置に対応したムラ補正量を、記憶部20のルックアップテーブルを参照して、ルックアップテーブルの補正値を用いた直線補完などを行なって求める。
【0043】
ステップS7:
次に、黒ムラ補正量計算部15は、最大白レベルを最小黒輝度により除算し、除算結果を目標コントラスト比とする。また、黒ムラ補正量計算部15は、記憶部20から調整時コントラスト比と無補正コントラスト比とを読み出す。
そして、黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比と、調整時コントラスト比及び無補正コントラスト比の各々とを比較する。このとき、黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比が調整時コントラスト比以下であれば、処理をステップS8へ進める。また、黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比が、調整時コントラスト比を超え、かつ無補正コントラスト比未満である場合、処理をステップS9へ進める。また、黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比が無補正コントラスト比を超えている場合、処理をステップS10へ進める。
【0044】
ステップS8:
黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比が調整時コントラスト比以下の場合、求めた階調値(ムラ補正量)を黒ムラ補正量として、黒ムラ補正部19に対して出力する。
【0045】
ステップS9:
黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比が、調整時コントラスト比を超え、かつ無補正コントラスト比未満である場合、目標コントラスト比から調整時コントラスト比を減算した減算結果を、無補正コントラスト比から調整時コントラスト比から減算した減算結果により除算し、1から除算結果を減算した数値を調整量とする。そして、黒ムラ補正量計算部15は、求めたムラ補正量に対して上記調整量を乗算し、この乗算結果を黒ムラ補正量として、黒ムラ補正部19に対して出力する。
【0046】
ステップS10:
黒ムラ補正量計算部15は、目標コントラスト比が無補正コントラスト比を超えている場合、黒ムラ補正量を「0」として、黒ムラ補正部19に対して出力する。
【0047】
ステップS11:
黒ムラ補正部19は、表示画面画像の各画素の階調を、黒ムラ補正量計算部15が求めた黒ムラ補正量に対応した階調値により補正する。
【0048】
ステップS12:
液晶パネル21は、黒ムラ補正部19が補正した表示画面画像を、表示画面に表示する。
【0049】
また、図1の画像表示装置における液晶パネルにおける表示ムラを補正する処理を、画像表示装置における制御機能を実現するためのコントロールを外部コンピュータシステムによって行てもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0050】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述した画像表示システムは、表示画像において数値的に正確な色再現が必要であり、かつユーザに対して負荷をかけることなく、簡便な操作により使い勝手が良いことが求められる液晶を用いたディスプレイに適用することができる。特に、グラフィックデザインや印刷所向け用途や、医用の画像診断向け用途など、正確な色再現が必要な用途に適している。
【符号の説明】
【0052】
1,100…画像表示装置
11…黒輝度算出部
12…オフセット量算出部
13…最小黒輝度選択部
14…最大輝度選択部
15…黒ムラ補正量計算部
16…画像入力部
17…画像オフセット部
18…画像合成部
19…黒ムラ補正部
20…記憶部
21…液晶パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8