(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645785
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】レーザーマーカー装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20200203BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20200203BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20200203BHJP
H01S 3/113 20060101ALI20200203BHJP
H01S 3/13 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/00 N
B23K26/082
H01S3/00 B
H01S3/113
H01S3/13
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-189011(P2015-189011)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-60985(P2017-60985A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 芳一
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−46556(JP,A)
【文献】
特開2015−145926(JP,A)
【文献】
特開2016−68111(JP,A)
【文献】
特開2012−84729(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0256161(US,A1)
【文献】
特開2001−18078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシブQスイッチレーザーを利用して媒体にマーキングを行うレーザーマーカー装置であって、
レーザーを出力するパッシブQスイッチレーザーと、
前記レーザーを反射して前記レーザーの照射位置を調整するレーザー反射部と、
前記レーザー反射部における前記レーザーの反射方向、及び前記パッシブQスイッチレーザーにおけるレーザーの出力タイミングを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記レーザーを一定周期で前記媒体に出力しつつ、前記レーザーの出力タイミングに合わせてマーキングすべき媒体上の位置に前記レーザーが照射されるよう前記レーザーの反射方向を制御する、
レーザーマーカー装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記媒体に対する前記レーザーの走査速度を可変にするよう前記レーザー反射部を制御する、
請求項1に記載のレーザーマーカー装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記レーザーによるマーキング間隔を一定時間で走査するよう前記レーザー反射部を制御する
請求項2に記載のレーザーマーカー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、レーザーを利用して媒体にマーキングを行うレーザーマーカー装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーマーカー装置などが備えるレーザーに使用されるQスイッチには、アクティブ型とパッシブ型のスイッチがある。パッシブQスイッチは、安価である反面、マーキング濃度が安定しづらく、アクティブQスイッチは、マーキング濃度は安定するものの高価であった。そのため、従来の装置では、価格を重視する場合にはパッシブQスイッチが採用され、マーキング濃度の安定を重視する場合にはアクティブQスイッチが採用されていた。特許文献1には、従来のレーザーマーキング装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−33476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のとおり、従来の構成を採用するだけでは、マーキング濃度を安定させつつ、安価にレーザーマーカー装置を構成することが困難であった。例えば、パッシブQスイッチを利用したレーザーマーカー装置でランダムドットパターンのマーキングを行うと、マーキング濃度が安定していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採る。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記するが、本発明の各構成要素はこれらの付記したものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0006】
本発明の一の手段は、
パッシブQスイッチレーザーを利用して媒体にマーキングを行うレーザーマーカー装置であって、
レーザーを出力するパッシブQスイッチレーザー(レーザーヘッド10)と、
前記レーザーを反射して前記レーザーの照射位置を調整するレーザー反射部(第1ガルバノメータ21及び第2ガルバノメータ22)と、
前記レーザー反射部における前記レーザーの反射方向、及び前記パッシブQスイッチレーザーにおけるレーザーの出力タイミングを制御する制御部(コントローラ50)と、を備え、
前記制御部は、前記レーザーの出力周期が一定となるよう前記パッシブQスイッチレーザー及び前記レーザー反射部を制御する
レーザーマーカー装置である。
【0007】
従来技術の課題であるパッシブQスイッチを採用したレーザーマーカー装置でマーキング濃度がばらつく原因は、レーザーの出力周期(レーザーオン指令信号の周期)が一定でなくなることが原因であると考えられる。そこで、上記のレーザーマーカー装置では、パッシブQスイッチを採用しつつ、レーザーの出力周期が一定となるような制御を行っている。これにより、上記レーザーマーカー装置では、比較的安価なパッシブQスイッチを採用しつつ、マーキング濃度を安定させることが可能となる。
【0008】
上記レーザーマーカー装置において、好ましくは、
前記制御部は、前記レーザーの出力周期を一定にするため、前記媒体に対する走査速度を可変にするよう前記レーザー反射部を制御する。
【0009】
上記のレーザーマーカー装置によれば、媒体をレーザーが走査する速度を変化させることが可能であり、これによってレーザーを照射すべき箇所の距離間隔に関わらず、レーザーの出力周期を一定にする制御を行うことが可能となる。これにより、効果的にマーキング濃度を安定化させることが可能となる。
【0010】
上記レーザーマーカー装置において、好ましくは、
前記制御部は、前記レーザーによるマーキング間隔を一定時間で走査するよう前記レーザー反射部を制御する。
【0011】
上記のレーザーマーカー装置によれば、レーザーの出力周期を一定にすることが可能となる。これにより、効果的にマーキング濃度を安定化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】レーザーマーカー装置によりマーキングすべきマークの配置例を示す図。
【
図3】従来のレーザーマーカー装置における各部動作の時間変化を示す図。
【
図4】実施形態のレーザーマーカー装置における各部動作の時間変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る実施形態について、以下の構成に従って図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
1.実施形態
(1)レーザーマーカー装置の構成例
(2)動作例
2.補足事項
【0014】
<1.実施形態>
本実施形態のレーザーマーカー装置は、パッシブQスイッチを採用し、レーザーの出力周期を一定にすることができるように、マーキング間隔を一定時間で走査(移動)するようガルバノメータを制御している点に特徴がある。以下、本実施形態のレーザーマーカー装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
<(1)レーザーマーカー装置の構成例>
図1は、本実施形態のレーザーマーカー装置の構成例を示す図である。
図1に示されるように、本実施形態のレーザーマーカー装置は、レーザーヘッド10、第1ガルバノメータ21、第2ガルバノメータ21、第1ガルバノ制御部31、第2ガルバノ制御部32、fθレンズ40、及びコントローラ50を含んで構成される。レーザーヘッド10からみてfθレンズの先には、マーキング対象媒体が配置される。
【0016】
<レーザーヘッド10>
レーザーヘッド10は、パッシブQスイッチを内蔵するレーザーヘッドであって、コントローラ50の制御により所定の時間間隔でレーザー光を出力(照射)するよう構成される。より具体的には、レーザーヘッド10は、コントローラ50から入力されるレーザーオン指令信号がオンしている間、レーザーが発振し、これによりレーザー光が断続的または連続的に出力する。
【0017】
<第1ガルバノメータ21及び第2ガルバノメータ22>
第1ガルバノメータ21及び第2ガルバノメータ22(総称してガルバノメータ21及び22と呼ぶことがある)は、それぞれ第1ガルバノ制御部31及び第2ガルバノ制御部32により制御されることで、レーザーヘッド10から出力されたレーザー光を所望の位置へ反射させ、これにより2次元座標の所定位置にレーザーをマーキングさせるよう構成される。すなわち、ガルバノメータ21及び22は、レーザー光を反射するミラーを備える。第2ガルバノメータ22により反射されたレーザー光は、fθレンズ40に向けて進む。
【0018】
<第1ガルバノ制御部31及び第2ガルバノ制御部32>
第1ガルバノ制御部31及び第2ガルバノ制御部32(総称してガルバノ制御部31及び32と呼ぶことがある)は、上記のとおり、それぞれ第1ガルバノメータ21及び第2ガルバノメータ22を制御し、これによってレーザー光の反射方向を変化させるよう構成される。第1ガルバノ制御部31及び第2ガルバノ制御部32は、コントローラ50から出力された、D/A変換された信号に基づき動作する。
【0019】
<fθレンズ40>
fθレンズ40は、第2ガルバノメータ22よりマーキング対象媒体よりに配置され、第2ガルバノメータ22により反射されたレーザー光を集光してマーキング対象媒体の所定位置に照射するよう構成される。
【0020】
<コントローラ50>
コントローラ50は、レーザーヘッド10、第1ガルバノ制御部31及び第2ガルバノ制御部32の動作を制御するよう構成される。コントローラ50は、ガルバノ制御部31及び32に対してはD/A変換されたアナログ信号を出力し、レーザーヘッド10に対してはディジタル信号であるレーザーオン指令信号を出力する。
【0021】
コントローラ50は、マーキング対象媒体に形成すべきパターンを示す入力マーキングパターンに基づいてレーザーヘッド10、第1ガルバノ制御部31及び第2ガルバノ制御部32を動作させるが、レーザーヘッド10に対しては一定周期、一定デューティのレーザーオン指令信号を出力する。一方、コントローラ50は、第1ガルバノ制御部31及び第2ガルバノ制御部32を、レーザーヘッド10から一定周期で周期的に出力されるレーザー光に動作タイミングを合わせることで、マーキング対象媒体に対して入力マーキングパターンに沿ったマーキングを行う。これらの特徴的な動作の具体例については後述する。
【0022】
<(2)動作例>
次に、
図2〜
図4を参照しながら、本実施形態のレーザーマーカー装置の動作例について具体的に説明する。
【0023】
以下の説明では、
図2に示されるような入力マーキングパターンを、従来構成、及び本実施形態の構成のレーザーマーカー装置でマーキングする際の各部動作の時間変化を比較説明していくことで、本実施形態の構成及び動作の効果を説明する。
【0024】
<従来構成>
図3は、本実施形態の効果を確認するための従来構成のレーザーマーカー装置における各部動作の時間変化を示す図である。
【0025】
図3(a)に示されるように、ガルバノ制御部31及び32からガルバノメータ21及び22に対して出力されるガルバノ変位指令値は、入力マーキングパターンの各ドットに対応するよう一定ステップずつ、一定速度でガルバノメータ21及び22を移動(走査)させる値となっている。これに対して、
図3(b)に示されるように、コントローラ50からレーザーヘッド10に対して出力されるレーザーオン指令信号は、ガルバノメータ21及び22の移動と同期を取りながら、入力―キングパターンにおけるマーキングすべきドットに移動したときに、一定時間、レーザーオン指令信号をオンにしている。
【0026】
上記のような制御により、
図3(c)に示されるように、レーザーオン指令信号がオンしている間、レーザーの発振が発生してレーザーヘッド10からレーザー光が出力され、これによってマーキング対象媒体に対するマーキングが行われる。
【0027】
上記のような従来構成の方法では、マーキングすべきドットが連続するパターンであればマーキング濃度が安定するが、
図2に示されたようなランダムなドットパターンであればマーキング濃度がばらつくことがある。このようなマーキング濃度のばらつきは、レーザーオン指令信号が一定周期ではないことからレーザーの温度などに変化が生じ、これによりレーザー光の強さが安定しないことが原因であると考えられる。
【0028】
<本実施形態>
一方で、
図4は、本実施形態のレーザーマーカー装置における各部動作の時間変化を示す図である。
【0029】
図4(a)に示されるように、ガルバノ制御部31及び32からガルバノメータ21及び22に対して出力されるガルバノ変位指令値は、入力マーキングパターンの各ドットに対応するような一定ステップずつではなく、入力マーキングパターンにマーキングしないドットがあればそのドットを飛ばして、次にマーキングすべきドット位置に一気に移動(走査)させるよう、コントローラ50により制御されている。すなわち、
図4(a)における「A」では、マーキングしないドットが1ドットあるためにガルバノ変位指令値が2ステップ分となり、「B」では、マーキングしないドットが2ドットあるためにガルバノ変位指令値が3ステップ分となっている。このように、入力マーキングパターンにおけるマーキングすべきドットとすべきでないドットの合計7ドットに対して、マーキングすべき4ドットに対する4ステップのレーザー照射動作となるよう、レーザー光の照射位置の移動速度(走査速度)を可変にしている。
【0030】
上記のような制御により、
図4(b)に示されるように、レーザーオン指令信号を一定周期、一定デューディの信号としつつ、
図2に示したような、ドット間隔がランダムなマーキングパターンに対応したマーキングが可能となっている。そして、
図4(c)に示されるように、レーザーオン指令信号がオンしている間、レーザーの発振によりレーザー光が出力される。
【0031】
上記のような本実施形態の方法では、従来構成の方法と異なり、レーザーオン指令信号の周期を一定にすることが可能となっているため、レーザー発振が安定することでレーザー強度も安定し、これによりマーキング濃度も安定させることが可能となっている。
【0032】
<2.補足事項>
以上、本発明の実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【0033】
上記実施形態では、第1ガルバノメータ21及び第2ガルバノメータ22を備える構成について説明したが、必ずしも2つのガルバノメータで構成される必要はなく、1または3以上のガルバノメータにより構成されてもよい。ただし、マーキング対象媒体に対して2次元座標にマーキングする場合には、2軸での制御を可能にするよう2つのガルバノメータを備える構成とすることが好ましい。
【0034】
また、ガルバノメータ21及び22は、他の反射機構、またはレーザー光の進行方向制御機構に置き換えてもよい。この場合、ガルバノ制御部31及び32も当該構成を制御する別の構成に置き換えられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、パッシブQスイッチを用いたレーザーマーキング装置などとして好適に適用される。
【符号の説明】
【0036】
10…レーザーヘッド
21…第1ガルバノメータ
22…第2ガルバノメータ
31…第1ガルバノ制御部
32…第2ガルバノ制御部
40…fθレンズ
50…コントローラ