(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
整圧器の取り替えに際しては、機能低下が生じている付属設備のバルブ(中圧バルブ又は低圧バルブ)を同時取り替えすることが行われている。この際、低圧バルブの取り替えは、下流側(二次側)パイプラインのガス遮断が必要になる。
【0005】
図1は、従来の低圧バルブ取り替え工事を示している。整圧器の施設は、埋設された一次側パイプラインP1と二次側パイプラインP2に対して、立管P3,P4を接続して、地上のガバナボックスGB内で、付属設備の中圧バルブVmと低圧バルブVn、整圧器本体Gを設置している(
図1(a)参照)。整圧器の取り替えに際しては、中圧バルブVmと低圧バルブVnを閉にして、先ず、整圧器本体G及びその配管を撤去し(
図1(b)参照)、その後、整圧器下流側のガス遮断を行って低圧バルブVnを撤去する。その際、立管P4に穿孔することができないため、埋設された二次側パイプラインP2を開削し、そこに穿孔して二重のガスバッグT1,T2を挿入する作業を行っている(
図1(c)参照)。
【0006】
このような従来の方法では、整圧器施設の管理区域の外側(ガバナボックスGBの外側)で掘削作業を伴うガス遮断工事を行うことになるので、掘削作業の許可申請(通常、パイプラインは道路下に埋設されているので、交通規制を伴うことになり、道路管理者(自治体等)の許可が必要になる。)に伴う工期制限、掘削作業による工期の長期化や工事コストの高騰、掘削作業に伴う産業廃棄物処理の発生といった問題が生じることになる。
【0007】
また、整圧器付属のバルブを取り替える際には、バルブが接続されている既設管のフランジ接続面を清掃した後に新しいバルブを接続するので、その清掃工程を適性且つ安全に行うことが必要になる。
【0008】
本発明は、このような問題を解決することを課題とするものである。すなわち、本発明の課題は、整圧器付属の低圧バルブを取り替える際に、整圧器施設の管理区域外での掘削を伴うガス遮断工事を無くすことで、工期制限を無くし、工期の長期化や工事コストの高騰を避け、工事に伴う産廃の発生を抑止すること、また、低圧バルブの取り替え時に必要となる既設管のフランジ接続面の清掃を、適性且つ安全に行うことができること、などを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
整圧器に付属する既設バルブを新設バルブに取り替える工法であって、整圧器側接続部にノーブローバッグを装着した既設バルブを介して、ガスバッグを前記既設バルブが接続されている既設管内に挿入し、当該既設管のガス遮断を行うガス遮断工程と、前記既設バルブを前記既設管から取り外す既設バルブ取り外し工程と、前記ガスバッグの圧力注入ホースを引き出した状態で前記既設管の接続口を封止する接続口封止工程と、前記既設管の前記既設バルブが接続されていたフランジ接続面を清掃するフランジ接続面清掃工程と、前記接続口の封止を解除して、前記圧力注入ホースを引き出した状態で前記フランジ接続面に新設バルブを接続し、ノーブローバッグを介して前記ガスバッグを回収する新設バルブ設置工程と
を有し、前記接続口封止工程では、前記接続口に前記フランジ接続面を開放した状態で気密栓を装着し、前記気密栓には、前記圧力注入ホースを導出しながら、前記気密栓の内側に窒素ガスを封入させる窒素封入治具が取り付けられ、前記窒素封入治具は、内部に前記圧力注入ホースを通して、端部の前記気密栓を介して前記圧力注入ホースを導出する中空管を備え、該中空管内に連通する窒素導入口と排気口を有し、前記フランジ接続面清掃工程では、前記窒素封入治具を介して前記気密栓の内側に窒素ガスを封入しながら、前記フランジ接続面を清掃することを特徴とする整圧器付属バルブの取り替え工法。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明は、整圧器付属の低圧バルブを取り替えるに際して、整圧器施設の管理区域外での掘削を伴うガス遮断工事を無くすことができ、工期制限の排除、工期の短縮化、工事コストの低減を可能にし、工事に伴う産廃の発生を抑止することができる。また、低圧バルブの取り替え時に必要となる既設管のフランジ接続面の清掃を、接続口を封止した適性且つ安全な状態で行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る整圧器付属バルブの取り替え工法の工程フローを示している。以下の説明では、取り替え対象となる既設の低圧バルブを「既設バルブ」を呼び、新設の低圧バルブを「新設バルブ」と呼ぶ。
【0013】
本発明の実施形態に係る工法では、前述したように(
図1(b)に示したように)、整圧器本体及びその配管の撤去(
図2:S0)がなされた後、既設バルブが接続されている既設管のガス遮断を行うガス遮断工程(
図2:S1)、既設バルブを既設管から取り外す既設バルブ取り外し工程(
図2:S2)、既設管の接続口を封止する接続口封止工程(
図2:S3)、既設管における既設バルブが接続されていたフランジ接続面を清掃するフランジ接続面清掃工程(
図2:S4)、既設管に新設バルブを設置する新設バルブ設置工程(
図2:S5)が順次行われる。
【0014】
ガス遮断工程(
図2:S1)は、整圧器側接続部にノーブローバッグを装着した既設バルブを介して、ガスバッグを既設バルブが接続されている既設管内に挿入し、既設管のガス遮断を行う。
図3は、この工程の作業状態を示しており、
図3(a)が、ノーブローバッグ(SNBバッグ)1を装着した既設バルブ2を介して、ガスバッグ3を既設管4(90°エルボ管)内に挿入している状態を示し、
図3(b)が、既設管4内に挿入したガスバッグ3に圧力注入して、ガスバッグ3を膨らましてガス遮断した状態を示している。
【0015】
ここでは、先ず既設バルブ2のフランジ面(整圧器側接続部)2Aをウエス等で清掃した後、そのフランジ面2Aにパッキンを介してノーブローバッグ装着治具1Aを取り付ける(
図2:S1a)。そして、ガスバッグ3が内装されているノーブローバッグ1をノーブローバッグ装着治具1Aに装着する。ノーブローバッグ1は、ガスバッグ3の圧力注入ホース3Aを外に引き出すための引き出し口が設けられている。ガスバッグ3の挿入に際しては、ガスバッグ3のセンターが既設管(90°エルボ管)4と立管P4との接続フランジの上面に到達できるように、圧力注入ホース3Aにマークを付けておくことで、円滑な挿入が可能になる。
【0016】
ガスバッグ3を挿入するには、既設バルブ2を微開にして、ノーブローバッグ1内にガスが充満したのを確認し、その後、既設バルブ2を全開にして、ゆっくりとガスバッグ3を既設管4内に挿入していく。そして、圧力注入ホース3Aに付けたマークなどで、ガスバッグ3が所定の位置に達したことを確認して、圧力注入ホース3Aの端部から圧力注入を行い、ガスバッグ3を規定圧力(例えば、0.08MPa)まで膨らませる(
図2:S1b)。
【0017】
次の既設バルブ取り外し工程(
図2:S2)は、既設管4のガス遮断が正規に完了したことを確認して、既設バルブ2を既設管4のフランジ4Aから取り外す。
図4は、既設バルブ2を取り外した状態を示している。ここでは、既設バルブ2が接続されていた既設管4のフランジ接続面4A1の状態を確認する(
図2:S2a)。
【0018】
フランジ接続面4A1の状態によって、その後の清掃工程で電動工具を用いた清掃を行うか、手作業の清掃でよいかを判断する。ここでは先ず、電動工具を用いた清掃を行う場合を説明する。
【0019】
次の接続口封止工程(
図2:S3)では、ガスバッグ3の圧力注入ホース3Aを引き出した状態で既設管4の接続口(フランジ4Aの接続口)を封止する。具体的には、
図5に示すように、フランジ4Aの接続口に気密栓5を装着し(
図2:S3a)、気密栓5に、圧力注入ホース3Aを導出しながら、気密栓5の内側に窒素ガスを封入させる窒素封入治具6を取り付ける(
図2:S3b)。
【0020】
気密栓5は、弾性部材5Aを一対の圧縮板5Bで挟んだ構造を有し、一対の圧縮板5Bで弾性部材5Aを圧縮することで弾性部材5Aを拡径させ、弾性部材5Aの外周を接続口の内面に密着させる。気密栓5の中央には開口5Cが設けられ、この開口5Cに窒素封入治具6が接続される。
【0021】
窒素封入治具6は、中空管の内部にガスバッグ3の圧力注入ホース3Aを通して、端部の密封栓6Aを介して圧力注入ホース3Aを導出している。窒素封入治具6には、中空管内に連通する窒素導入口6Bと排気口6Cがあり、窒素導入口6Bから窒素を気密栓5の内側に導入し、既設管4の気密栓5とガスバッグ3との間の空間に残されたガスを窒素に置換して、排気口6Cから放出している。
【0022】
次のフランジ接続面清掃工程(
図2:S4)では、窒素封入治具6を介して気密栓5の内側に窒素ガスを封入しながら(
図2:S4a)、フランジ接続面4A1を清掃する。ここでの清掃は、バフグラインダーなどの電動工具を用いてフランジ接続面4A1を研磨する(
図2:S4b)。窒素の封入に際しては、圧力注入ホース3Aに圧力ゲージを取り付けて、ガスバッグ3の圧力に異常が無いことを確認しながら、窒素導入口6Bに窒素導入ホースを接続し、排気口6Cに排気用ホースを接続して、窒素導入ホースを介して窒素を封入する。窒素の封入により火花が生じる研磨作業を安全に行うことができる。
【0023】
その後の新設バルブ設置工程(
図2:S5)では、気密栓5を撤去して接続口の封止を解除し、圧力注入ホース3Aを引き出した状態でフランジ接続面4A1に新設バルブを接続し、ノーブローバッグを介してガスバッグ3を回収する。具体的には、気密栓撤去を行い(
図2:S5a)、その後は、新設バルブの接続準備ができるまで、ガス遮断治具の設置を行い、新設バルブの接続準備ができたらガス遮断治具を撤去する(
図2:S5b)。
【0024】
図6及び
図7は、ここで用いられるガス遮断治具の構成例を示している。
図6に示すように、ここで用いるガス遮断治具は、外側弾性栓10と内側弾性栓20を備えている。外側弾性栓10は、ゴムなどの弾性体で円錐台状に形成され、中央に開口10Aを有すると共に、開口10Aに連通するスリット10Bを有している。内側弾性栓20は、大径部21Aと小径部21Bを有すると共に中央に向けて切り込まれたスリット21Cを有するゴムなどの弾性体21と、弾性体21を圧縮する圧縮体22,23と、圧縮体22,23を近づけて弾性体21を圧縮するボルト24とナット25を備えている。
【0025】
外側弾性栓10は、気密栓5が撤去されたフランジ4Aの接続口に挿入され、既設管4のガス遮断を行っているガスバッグ3の圧力注入ホース3Aを、スリット10Bを通して開口10Aから引き出す。内側弾性栓20は、フランジ4Aの接続口に挿入された外側弾性栓10の開口10Aに圧入される。その際、圧力注入ホース3Aは弾性体21のスリット21Cを通して外に引き出される。内側弾性栓20は、ボルト24に対してナット25を締付けることで、一対の圧縮体22,23が近づいて弾性体21を圧縮し、弾性体21を拡径させて、開口10A内での気密性を確保する。また、内側弾性栓20は、圧縮体22,23による圧縮によってスリット21Cが密着するので、外に引き出される圧力注入ホース3Aを気密に保持することができる。
【0026】
図7は、外側弾性栓10と内側弾性栓20を備えるガス遮断治具をフランジ4Aに設置した状態を示している。この設置には、押さえ治具30が用いられる。押さえ治具30は、外側弾性栓10を押さえて、フランジ接続面4A1のボルト孔4A2にボルト・ナット33で取り付けられる。
【0027】
押さえ治具30は、外側弾性栓10の開口10Aに挿入された内側弾性栓20の周囲を囲むように外側弾性栓10の正面を押圧する押圧板31と、押圧板31をフランジ接続面4A1に取り付ける取り付け部材32を備えている。取り付け部材32は、左右一対に設けられ、ボルト・ナット33でフランジ接続面4A1のボルト孔4A2に取り付けられると共に、ネジ34で押圧板31に取り付けられる。取り付け部材32とフランジ接続面4A1との間には、必要に応じてスペーサ部材が挿入される。取り付け部材32と押圧板31とを接続するネジ34は、長孔32A内に通されており、長孔32Aの位置をスライドさせることで、取り付け部材32とフランジ接続面4A1との取り付け位置が変更できるようになっている。これによって、取り付け部材32は、一方の取り付け部材32で押圧板31を押さえている状態で、他方の取り付け部材32の接続位置を異なるボルト孔4A2に変えることができる。また、このようなガス遮断治具は、外側弾性栓10の開口10Aに内側弾性栓20を挿入した構造にしているので、仮に、既設管4内のガスバッグ3が破損してしまった場合には、内側弾性栓20を引き抜いて簡易にガスバッグ3を新たなものに交換することができる。
【0028】
このようなガス遮断治具を撤去した後には、準備が整った新設バルブを、清掃が完了したフランジ接続面4A1に接続する(
図2:S5c)。その後は、
図3(a)に示すと同様に、新設バルブに対してノーブローバッグ1を装着し、ガスバッグ3の圧力を抜き、ノーブローバッグ1を介してガスバッグ3を回収する(
図2:S5d)。ガスバッグ3の回収後は、新設バルブ内のエアパージを行い、ガス濃度検知器で新設バルブ内のガス濃度が100%であることを確認して、新設バルブを閉にする(S5e)。
【0029】
以上の説明は、既設バルブ取り外し工程(
図2:S2)におけるフランジ接続面の確認(
図2:S2a)で、電動工具を用いてフランジ接続面の清掃工程を行うと判断した場合の工程フローの説明である。
【0030】
図8は、本発明の他の実施形態を示している。ここでは、既設バルブ取り外し工程(
図8:S2)におけるフランジ接続面の確認(
図8:S2a)で、フランジ接続面の清掃に、電動工具を用いる必要が無いと判断した場合の工程フローを示している。
【0031】
図8における、整圧器本体(配管)撤去工程S0、ガス遮断工程S1、既設バルブ取り外し工程S2は、
図2に示した工程例と同様である。その後、接続口封止工程(S30)では、気密栓5の装着に代えて、前述したガス遮断治具を設置することによって、フランジ4Aの接続口を封止する(
図8:S30a)。すなわち、
図7に示した状態でフランジ4Aの接続口が封止される。
【0032】
その後のフランジ接続面清掃工程(
図8:S40)では、掻き取り具(スクレーパー)を用いた手作業での清掃が行われる(
図8:S40a)。この際、フランジ接続面4A1の掻き取り清掃作業は、
図7に示したガス遮断治具の設置状態でなされる。
【0033】
図7に示すように、ガス遮断治具における押さえ治具30は、取り付け部材32によってフランジ接続面4A1のボルト孔4A2に取り付けられるので、取り付け部材32がフランジ接続面4A1の一部を覆ってしまうことになる。これに対して、前述したように、取り付け部材32は、長孔32A内でのネジ34の位置をスライドさせることで、押圧板31を固定した状態で、フランジ接続面4A1における異なるボルト孔4A2に取り付けることができるようになっている。これによって、フランジ接続面清掃工程(
図8:S40)では、一方の取り付け部材32で押圧板31を押さえた状態で、他方の取り付け部材32のボルト孔4A2への取り付け位置を変えながら、フランジ接続面4A1の全面を隙間無く清掃することができる。
【0034】
次の新設バルブ設置工程(
図8:S50)は、フランジ接続面4A1の清掃が完了した後、
図7に示した状態のガス遮断治具を撤去する(
図8:S50a)。その後の新設バルブ接続(
図8:S50b)、ガスバッグ回収(
図8:S50c)、エアパージ/バルブ閉(
図8:S50d)は、
図2において説明した工程(S5c〜S5e)と同様である。
【0035】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る整圧器付属バルブの取り替え工法は、整圧器施設の管理区域内において、全ての工程を完了することができるので、工期制限を受けることなく、円滑な作業を行うことができる。また、管理区域外での掘削を伴うガス遮断工事が必要ないので、工期の短縮化、工事コストの低減、工事に伴う産廃の発生抑止が可能になる。
【0036】
また、新設バルブへの取り替え前に既設管のフランジ接続面を清掃する際に、電動工具を用いた研磨作業を行う場合には、フランジ4Aの接続口を気密栓5で封止して、窒素封入を行いながら、安全に作業を行うことができ、電動工具を用いる必要が無い場合には、ガス遮断治具によって、フランジ4Aの接続口を封止した状態で、フランジ接続面4A1の全面を隙間無く清掃することができる。
【0037】
また、本発明の実施形態では、地上におけるフランジ4Aの接続口近傍でガス遮断を行っているので、目視確認が可能な範囲で信頼性の高いガス遮断を実現することができる。この際にガス遮断に用いる気密栓5、窒素封入治具6、ガス遮断治具などは、小型化・コンパクト化ができる治具であるから、簡易な施工が可能になる。また、ノーブロー作業であるため、作業を安全に行うことができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。