(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)白色セメント100質量部、(B)粒径600μm以上2500μm未満が39〜50質量%、粒径300μm以上600μm未満が23〜29質量%、粒径300μm未満が25〜34質量%の粒度で構成されるマンセルカラーシステムの彩度0.5〜1.0、明度8.5〜9.5の普通細骨材230〜360質量部、(C)メタカオリン2〜4質量部、(D)マンセルカラーシステムの彩度0.1〜1.0、明度8〜9.5の吸湿性粘土鉱物0.3〜2.5質量部、(E)シラン系撥水剤0.1〜0.6質量部、並びに(F)ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン共重合体及びエチレン酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種を有効成分とするポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂を固形分換算で2〜8質量部含有する仕上用モルタル。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の仕上用モルタルには、結合相形成成分、硬化成分として(A)白色セメントを含有する。白色セメントを用いることで白色度が向上し、また白色以外の着色も可能になる。白色セメントとしては、市販品が使用可能である。好ましくは、不純物含有量が少ない白色セメントほど白色度が高いので良く、特にFe
2O
3含有量を大凡0.2%以下に調整したものが良い。具体的には、山陽白色セメント株式界社製「ホワイトセメント」等が例示される。
【0011】
以下で述べる本発明の仕上用モルタルの配合成分の含有量は、特記無い限り、前記白色セメントの仕上用モルタル中の含有量100質量部に対する値である。
【0012】
本発明に用いられる(B)普通細骨材は、粒径600μm以上2500μm未満が39〜50質量%、粒径300μm以上600μm未満が23〜29質量%、粒径300μm未満が25〜34質量%の粒度で構成される。普通細骨材の粒度分布をこの範囲にすることによって、特に粒径300μm以上600μm未満のもの及び粒径300μm未満のものの含有量を低減することによって、施工性が良好で、仕上がりパターンの多様性に適応でき、ひび割れ抵抗性も向上させることができる。
【0013】
粒径600μm以上2500μm未満が50質量%を超えると、施工方法と造形面での仕上がりパターンが限定され、仕上がりパターンの多様性に優れた仕上材が得られない。粒径600μm以上2500μm未満が39質量%未満であると、水セメント比が大きくなるとともに適正な施工厚さが得られず、仕上がりパターンが意匠性の低いものになる。また、水セメント比の増加に伴い、乾燥収縮も大きくなり、ひび割れの発生する虞がある。粒径600μm以上2500μm未満は、42〜50質量%が好ましく、43〜50質量%がより好ましい。
また、粒径300μm未満が34質量%を超えると、他の粒度範囲の普通細骨材の割合が少なくなるので、適切な施工厚さが得難くなる上に仕上がりパターンが限定され、水セメント比が増加するため乾燥収縮が大きくなってひび割れ発生の虞がある。粒径300μm未満が25質量%未満では、比較的粗大な普通細骨材が多くなるため、緻密性が低くなり耐久性が低下し易くなる他、仕上げパターンが粗くなる虞がある。粒径300μm未満は、25〜33質量%が好ましく、25〜30質量%がより好ましい。
また、粒径300μm以上600μm未満が29質量%を超えると、他の粒度範囲の普通細骨材の割合が少なくなるので、仕上がりパターンが限定され、造形面での多様性が得られず、意匠性が低いものになる。また、粒径300μm以上600μm未満が23質量%未満であると、仕上がり面に斑が生じ易く、鏝作業性や造形性に難が生じ易くなるため好ましくない。粒径300μm以上600μm未満は、24〜29質量%が好ましく、24〜28質量%がより好ましい。
【0014】
本発明に用いられる(B)普通細骨材は、前記粒度構成とすることに加えて、マンセルカラーシステムの彩度0.5〜1.0、明度8.5〜9.5である。マンセルカラーシステムの彩度0.5未満では、着色の際に所望の発色が現れ難くなることがあるため好ましくない。また、彩度1.0を超えると白色セメントとの色差により細骨材が目立ち、均一な色の仕上がり面が得られないため好ましくない。彩度は、0.5〜9.0がより好ましい。
また、マンセルカラーシステムの明度8.5未満では、白色セメントとの色調の差から、普通細骨材がモルタル中で目立ち、均一な色調の仕上げ面が得難くなるので好ましくない。また、明度9.5を超えると、マンセルカラーシステムの色見本帳の記載限界を超えるため好ましくない。明度は、8.6〜9.3が好ましい。
【0015】
また、前記のようなマンセルカラーシステムの彩度、明度の普通細骨材が得易いことから、さらには良好な耐久性の施工物が得られることから、前記普通骨材は石灰石であることが好ましく、より好ましくは寒水石(白色石灰石)が良いが、前記普通骨材は石灰石骨材に限定されるものではない。
【0016】
また、前記のようなマンセルカラーシステムの色調及び粒度構成を具備した(B)普通細骨材以外の普通細骨材も本発明の仕上用モルタルでは含有することができるが、発色やひび割れ抵抗性の阻害要因となる虞があることから、前記(B)普通細骨材の含有量100質量部に対し、5質量部以下(0質量部を含む)の含有量にすることが好ましく、さらに3質量部以下(0質量部を含む)の含有量にすることがより好ましい。また、普通細骨材以外の骨材、例えば軽量骨材、特にパーライト等の発泡軽量骨材、ガラス中空粒子、樹脂中空粒子などの閉口空隙を含むことで軽量化をはかった軽量細骨材の使用は、施工時に破損し易いため、細かい仕上面模様を造形するには難があり、また強度発現性の低い施工物となって耐久性も劣るので、本発明の仕上用モルタルの細骨材にはこのような軽量骨材は含有しないことが望ましい。
【0017】
前記(B)普通細骨材の本発明の仕上用モルタル中の含有量は、(A)白色セメント100質量部に対し230〜360質量部とし、好ましくは、260〜300質量部とする。前記(B)普通細骨材の含有量が230質量部未満では、白色セメント量の割合が大きくなり過ぎて粘性が増し、施工性が低下する。そのため、良好な仕上がりパターンが出せず、さらに適正な施工厚さも得られない。また、水セメント比が増加し、乾燥収縮が大きくなってひび割れ発生の虞もある。また、含有量が360質量部を超えると鏝作業性が低下する。また白色セメントの含有割合が低下することになるので仕上がりパターンの輪郭が不明瞭になる等の造形性低下をもたらす。
【0018】
本発明の仕上用モルタルは、(C)メタカオリンを含有する。メタカオリンは、本発明では緻密性を高めることに寄与し、施工後のモルタルにしまりを与え、施工性と耐久性を向上することができる。メタカオリンは他のポゾラン反応性物質と比べると白色性が高く、かつ仕上げ色の阻害化を起こさずに高密化の達成が可能である。他のポゾラン反応性物質を使用すると仕上げ色の阻害化を起こし易い。
【0019】
(C)メタカオリンは不純物含有量の少ないものの方が白色性が高いので使用に好適であり、より好ましくは鏝作業性の改善効果があることからさらに比表面積10000cm
2/g以上の微粉の使用が良い。メタカオリンの本発明の仕上用モルタル中の含有量は、(A)白色セメント質量部に対し2〜4質量部とする。メタカオリン含有量2質量部未満では、高密化が得られないことがあるので好ましくなく、4質量部を超える含有量では反応に必要な配合水量を増加させる必要があり、水セメント比が増えて強度低下を起こすので好ましくない。より好ましいカオリンの含有量は2.2〜3.8質量部である。
【0020】
本発明の仕上用モルタルは、(D)吸湿性粘土鉱物を含有する。吸湿性粘土鉱物は、水を吸収できる粘土鉱物であり、水分の含有で、施工物に良好な流動性と施工時の付着性改善作用があり、施工性向上に大きく寄与する。このような粘度鉱物としては、セピオライト、ベントナイト、ゼオライト、アタパルジャイトが挙げられる。また、含有使用する吸湿性粘土鉱物は、マンセルカラーシステムの彩度0.5〜1.0、明度8.5〜9.5であることを必須とする。マンセルカラーシステムの彩度0.5未満では、彩度が低すぎて、純白色が得難くなるため好ましくなく、彩度1.0を超えると白色セメントとの色差が広がり過ぎて、含有する吸湿性粘土鉱物が色斑となって見られることがあるため好ましくない。
また、マンセルカラーシステムの明度8.5未満では、白色セメントとの色差が拡大し、普通細骨材がモルタル中で目立ち、均一な色調の仕上げ面が得難くなるので好ましくない。また、明度9.5はマンセルカラーシステムそのものの実質的な上限である。
このようなマンセルカラーシステムの値とすることで、鮮明な白色を呈することに寄与する一方、着色化を行う際に、所望の発色の阻害化になることを抑制できる。前記マンセルカラーシステムの値に該当する吸湿性粘土鉱物であれば、化学成分や組成等は特に制限されず、何れのものでも含有使用できる。吸湿性粘土鉱物の好ましい彩度は0.6〜0.9であり、明度は8.5〜9.3である。
【0021】
(D)吸湿性粘土鉱物の本発明の仕上用モルタル中の含有量は、(A)白色セメント100質量部に対して0.3〜2.5質量部とする。吸湿性粘土鉱物含有量0.3質量部未満では、鏝作業性等に関する施工性改善効果が得られないことがあるので好ましくなく、2.5質量部を超える含有量では粘性が増して混練性や塗り施工性に支障が生じることがあり、これを解消するため水量を増やすと強度低下やひび割れ発生が起き易くなり好ましくない。(D)吸湿性粘土鉱物の好ましい含有量は0.5〜2.5質量部であり、より好ましくは0.5〜2.0質量部である。
【0022】
本発明の仕上用モルタルは、(E)シラン系撥水剤を含む。シラン系撥水剤は、仕上用モルタルに、防汚性、耐凍害性、耐塩害性を付与するのに有用である。本発明に使用されるシラン系撥水剤としては、セメントモルタルに混和すると高アルカリ条件下で反応性のシラノールとなるシラン化合物が好ましい。例えば、有機シラン、ポリシラン等である。反応性シラノールは、シラノール基間の架橋や無機化合物との反応により表面が疎水性に変性される。そのため、シラン系撥水剤は混練性が良く、本発明の仕上用モルタルは硬化後優れた撥水性を発揮する。
【0023】
本発明の仕上用モルタルにおける(E)シラン系撥水剤の含有量は、(A)白色セメント100質量部に対し0.1〜0.6質量部とする。シラン系撥水剤含有量0.1質量部未満では、適正な撥水性が得られず、含有効果が無いので好ましくなく、0.6質量部を超える含有量では撥水効果の改善は殆ど見られず、高価なシラン系撥水剤の使用量が増えるだけなので不経済であり好ましくない。(E)シラン系撥水剤の好ましい含有量は、0.2〜0.6質量部であり、さらに好ましくは0.2〜0.5質量部である。
【0024】
本発明の仕上用モルタルは、(F)ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン共重合体(SBR)及びエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)から選ばれる少なくとも1種を有効成分とするポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂を含有する。このようなポリマーディスパージョンや再乳化形粉末樹脂をシラン系撥水剤やメタカオリンと併用することにより、仕上用モルタルのひび割れ低減化や下地との付着性向上に寄与する他、下地に対する変形追従性、耐塩害性や中性化阻止等の耐久性向上にも寄与する。
【0025】
本発明の仕上用モルタルにおける(F)ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン共重合体及びエチレン酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種を有効成分とするポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂の含有量は、(A)白色セメント100質量部に対して固形分換算の合計で2〜8質量部とする。前記含有量が2質量部未満では、含有効果が殆ど得られないので好ましくなく、また8質量部を超える含有量では、粘性が上がり過ぎて施工性が低下するので好ましくない。
【0026】
本発明の仕上用モルタルは、前記(A)〜(F)の成分の他に、更に(G)生石灰系膨張材及びエトリンガイト系膨張材から選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましい。生石灰系膨張材又は/及びエトリンガイト系膨張材を含むことにより、硬化初期段階における収縮を抑制することができ、ひび割れ発生の防止や寸法安定性に寄与する。また、前記(E)撥水剤や前記(F)ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂との併用により、水分散逸や不要な吸湿を防止する作用も加わり、長期間に渡りひび割れ抵抗性を持続可能となる。生石灰系膨張材は、生石灰を有効成分とし、その水和反応によって水酸化カルシウム生成に伴い体積の膨張が見られるものである。また、エトリンガイト系膨張材はカルシウムサルフォアルミネートを有効成分とし、水和反応でエトリンガイトが形成されることによって、体積膨張するものである。これらの膨張材は特に限定されたものを用いる必要はなく、例えば何れの市販品でも使用することができ、両者を併用することもできる。
【0027】
本発明の仕上用モルタルにおける(G)生石灰系膨張材又は/及びエトリンガイト系膨張材の含有量は(A)白色セメント100質量部に対して2〜6質量部が好ましい。より好ましくは3.3〜5.5質量部である。生石灰系膨張材又は/及びエトリンガイト系の膨張材の含有量を2〜6質量部とすることによって、膨張材の寄与に関わる前記効果を十分奏することができる。
【0028】
また、本発明の仕上用モルタルは、更に(H)セルロース系保水剤を含むことが好ましい。セルロース系保水剤はセルロース誘導体を有効成分とし、常温で水溶性のものなら何れのものでも使用できる。具体的には、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸エステル等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシエチルメチルセルロースを有効成分とする保水剤がより好ましい。セルロース系保水剤の含有により施工性、特に左官施工に適した状態の仕上用モルタルを得ることができ、また施工初期の急激な乾燥化の抑制や硬化性改善にも寄与する。
【0029】
本発明の仕上用モルタルにおける(H)セルロース系保水剤の含有量は、(A)白色セメント100質量部に対して0.1〜0.25質量部が好ましい。セルロース系保水剤の含有量を0.1〜0.25質量部とすることで、セルロース系保水剤による前記効果を十分奏することができる。
【0030】
また、本発明の仕上用モルタルは、更に(I)消泡剤を含有することが好ましい。消泡剤は、ポリエーテル系、シリコーン系の何れでも使用可能であり、例えばモルタルやコンクリート用の市販品が使用できる。消泡剤の含有により混練時に巻き込まれる気泡の残存を大幅に低減し、強度と緻密性の低下を抑制することができる他、施工後における破泡痕発生も防止でき、美感向上にも貢献する。
【0031】
本発明の仕上用モルタルにおける(I)消泡剤の含有量は、(A)白色セメント100質量部に対して0.08〜0.15質量部が好ましい。セルロース誘導体を有効成分とする保水剤の含有量を0.08〜0.15質量部とすることで、消泡剤による前記効果を十分奏することができる。
【0032】
本発明の仕上用モルタルは、前記(A)〜(I)以外の成分も、本発明による効果を実質喪失させないものであれば含有することが可能である。このような成分としては、例えば、何れもモルタルやコンクリートで含有使用することのできる、乾燥収縮低減剤、減水剤類(分散剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等と称されているものを含む。)、凝結調整剤などを挙げることができる。
【0033】
また、本発明の仕上用モルタルに、白色以外の着色化のために着色剤(材)を加えて仕上用着色モルタルにするときは、前記仕上用モルタルに、所望の着色剤(材)を外割で加える。その際の添加量は着色剤(材)や所望する発色の色合い等に応じて適宜定めれば良い。添加量の目安を例示すると、混練水を除いた他の成分を含む仕上用モルタル100質量部に対し、概ね15質量部以下、好ましくは0.5〜15質量部の添加量を挙げることができる。これ以上の添加量では、多くの場合、添加量増加に伴う色調の変化が感知し難くなる傾向にある。さらなる過度の大量添加は良好な耐久性や施工性に支障をきたす虞もある。添加可能な着色剤(材)としては、他の含有成分と化学反応を実質起こさないものであれば特に制限されず、例えばモルタル用の顔料や着色鉱石粒等を挙げることができる。また、着色化は仕上面全体を斑無く均一色で発色させる場合でも、仕上面の表明付近に分散した着色粒が発色する分散発色の場合の何れでも対応できる。後者の場合、分散着色粒が現れていない部分の仕上面の色調(背景色)は、通常は白色となる。
【0034】
本発明の仕上用モルタルは、例えばモルタルミキサなどの混合機を使用して、前記の各成分に水を加えて混練し、外壁等に塗布することにより施工することができる。本発明の仕上用モルタルの混練水の量は特に制限されるものではなく、配合や施工手段等に応じて適宜設定すれば良い。一例として、金鏝や木鏝を使用する左官施工を行う場合の目安を示すと、仕上用モルタル中の白色セメント含有量100質量部に対する混練水の量として、16〜18質量部を挙げることができ、吹付装置を使用した吹付施工を行う場合の目安を示すと、17〜19質量部を挙げることができる。これらの量に限定されるものではない。
【0035】
本発明の仕上用モルタルの施工対象としては、戸建住宅、集合住宅、公共建築物の外壁、擬木、擬石等が挙げられる。施工手段としては、鏝施工、ローラー施工等が好適であるが、吹付施工も行うことができる。造形上の仕上げ手段として、例えば掻き落とし仕上げ、漆喰仕上げ、木鏝仕上げ等を行うことができる。また、仕上げ表面に、櫛目、彫刻模様等の種種の紋様を施すこともできる。
【実施例】
【0036】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。尚、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0037】
[仕上用モルタルの作製]
作製は、特記無い限り、20(±1)℃の気温下で行った。
表1に表す材料と水を使用し、表3−1〜表3−3で表される配合となるようホバートミキサ又はハンドミキサを使用し、約1分間混練してフレッシュ状態の仕上用モルタル(本発明品1〜29、参考品31〜43)を作製した。ここで、表1に表した材料のうち、普通細骨材の粒度については表2にその詳細を表す。また、使用材料の一部について、マンセルカラーシステムの色相、明度および彩度を、色差計(日本電色工業社製)で1cm
2当たりのL値、a値及びb値を計測したものから求め、結果を表1に表す。さらに、仕上用モルタルに配合した普通細骨材のうち、マンセルカラーシステムの明度8.5〜9.5および彩度0.5〜1.0に相当する普通細骨材のみの粒度構成(当該色調の普通細骨材中の質量割合)を表4−1〜表4−3に表す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3-1】
【0041】
【表3-2】
【0042】
【表3-3】
【0043】
【表4-1】
【0044】
【表4-2】
【0045】
【表4-3】
【0046】
[仕上用モルタルのフレッシュ性状]
前記作製したフレッシュ状態の仕上用モルタルについて、次の性状を測定した。各測定結果は表5−1及び表5−2に纏めて表す。尚、基本性状の測定は20(±1)℃の気温下で行った。
【0047】
(1)モルタルのフロー値
測定方法はJIS R 5201に準拠した方法で行った。この測定は各仕上用モルタル作製から概ね30秒以内に行った。
【0048】
(2)単位容積質量
測定方法は内容積500mLのステンレス製底付円筒容器形を使用し、JIS A 1171に準拠した方法で行った。
【0049】
【表5-1】
【0050】
【表5-2】
【0051】
表5−1及び表5−2の結果から、本発明品の仕上用モルタルは、一般に、左官施工と吹付施工の何れにも適するとされているモルタルフロー値(20℃で160〜190mm)の範囲内であることがわかる。
【0052】
[仕上用モルタルの造形性及び施工性に関する試験]
前記作製された仕上用モルタルを、60×450mmの面の一方を底面として地面に垂直に設置した450×600×60mmのコンクリート平板の450×600mmの一方の面を壁面とし、この壁面に対し次の方法で塗布施工し、施工性と造形性を調べた。尚、施工は20(±1)℃の気温下で行った。
【0053】
(1)鏝施工性と鏝施工による造形性の試験
金鏝に7mmの櫛目鏝を使用し、前記仕上用モルタルをコンクリート壁面に約5mm厚で塗りつけた。塗布物のダレや落下が無く、且つ塗布後の金鏝に仕上用モルタルの付着残存が実質的に無かったものを鏝施工性「良好」と判断し、この状況にならなかったものを鏝施工性「不良」と判断した。
また、1回の鏝塗りで施工物に明瞭な櫛目模様が形成できたものを鏝施工による造形性が「良好」と判断し、この状況にならなかったものを造形性が「不良」と判断した。以上の結果を表6に表す。
【0054】
(2)鏝による掻き落としの造形性の試験
金鏝で、前記仕上用モルタルをコンクリート壁面に約5mm厚で塗りつけた後、180分以上経過後に、塗布物表目の凹凸を掻き落とし用の金鏝で掻き落とした。このような掻き落としを人力による金鏝で行うことができ、掻き落とした塗布物表面にほぼ均一な鳥肌状の突起模様が形成できたものを造形性が「良好」と判断し、このような模様が形成されないか明確さを欠く模様であったものを造形性が「不良」と判断した。以上の結果を表6に表す。
【0055】
(3)鏝による漆喰仕上げの造形性の試験
金鏝で、前記仕上用モルタルをコンクリート壁面に約5mm厚で塗りつけた後、コンクリート壁面上の塗布物を金鏝で壁面側に押しつけ、壁面に水平に均さずに、塗布物から金鏝をそのまま引き離した。塗布物が壁面から剥がれること無く、且つ塗布物表面に漆喰状の模様が形成されていたものを造形性が「良好」と判断し、このような状況に至らなかったものを造形性が「良好」と判断した。以上の結果を表6に表す。
【0056】
(4)吹付施工性と吹付施工による造形性の試験
市販のリシンガンを吹付装置として使用し、前記仕上用モルタルをコンクリート壁面に吹付けた。約5mm厚の塗布物を形成することができ、塗布物のダレや落下が無く、且つ使用したリシンガンの噴射口に閉塞化が見られなかったものを、吹付施工性「良好」と判断し、このような状況には至らなかったものを吹付施工性「不良」と判断した。
また、コンクリート壁面に吹付けられた塗布物の表面に明瞭なリシン模様が形成されていたものを吹付施工による造形性が「良好」と判断し、このようなリシン模様が得られなかったり、多少とも明瞭さを欠く模様の場合は、造形性が「不良」と判断した。以上の結果を表6−1及び表6−2に表す。
【0057】
【表6-1】
【0058】
【表6-2】
【0059】
表6−1及び表6−2の結果から、本発明品の仕上用モルタルは、多様な造形性に適したものであることがわかる。
【0060】
[仕上用モルタルの耐久性に関係する物理性状の試験]
前記作製された仕上用モルタルについて、耐久性に関係する次の物理性状を調べた。尚、性状把握のための試験・測定は、特記無い限り、20(±1)℃の気温下で行った。これらの結果は表7に纏めて表す。
【0061】
(1)形状寸法安定性の評価試験
JIS A 1171に準拠した方法で、材齢28日での長さ変化率を測定した。この長さ変化率が0.1%未満の場合は施工対称物との接着状態の維持が容易であるため、長期にわたり剥離や界面亀裂が発生し難く、この点に関して耐久性が「良好」と判断される。
【0062】
(2)吸水性の試験
JIS A 1171に準拠した方法で、24時間の吸水量を測定した。吸水量の多いものは乾燥収縮によるひび割れ発生の可能性が高まる。
【0063】
(3)凍結融解抵抗性の評価試験
内寸100×100×400mmの型枠に仕上用モルタルを充填し、48時間後に脱型した。次いで、得られた成形硬化体を4週間養生後、20℃の水中に24時間浸して試験体とした。この試験体を、JIS A 1148に規定のA法に準拠した方法で、凍結融解試験を300サイクルずつ行い、凍結融解300サイクル時の相対動弾性係数(%)を求めた。相対動弾性係数が85%以上の場合は、建築物では十分な耐凍害性が具備されていることから、この点に関して耐久性が「良好」と判断される。
【0064】
(4)圧縮強度及び曲げ強度試験
内寸40×40×160mmの型枠に仕上用モルタルを充填し、48時間後に脱型した。得られた成形硬化体を大気中で養生し、材齢28日になったものを供試体とし、JIS A 6916に準拠した方法で一軸圧縮強度と曲げ強度の測定を行った。
【0065】
【表7-1】
【0066】
【表7-2】
【0067】
表7−1及び表7−2の結果から、本発明品の仕上用モルタルは、ひび割れ抵抗性や耐久性に優れることがわかる。これに対し本発明外の参考品のモルタルは、このような性状に劣ったものとなった。
【0068】
[仕上用モルタルの美観に関係する特性の評価]
前記作製された仕上用モルタルについて、次の試験を行い、美観に関係する特性を調べた。
【0069】
(1)防汚性の評価試験
前記作製された仕上用モルタルを、金鏝を使用し、150×300mmの面が地面に水平となるように置かれた150×300×3mmのフレキ板2枚の上面に約5mm厚となるよう塗布した。20(±1)℃の屋内大気中で3週間養生した後、次いで、このフレキ板のうち1枚について、仕上用モルタルが塗布されていない残りの5面をエポキシ樹脂で被覆した。塗布物形成面が南向きになるよう150×3mmの一面を底面にして、屋外地面に垂直に設置し、平均気温23℃のもとで90日間暴露試験を行った。また、暴露試験を行わない方のフレキ板は、ダスト防止ケースに入れ、そのまま90日間20℃(±1℃)屋内で保管した。前記暴露試験終了後のフレキ板の塗布物表面と、同じ時までケース保管していたフレキ板の塗布物表面を、色差計(市販品)でそれぞれ測定し、両者の色差(Δ*
ab)を求めた。色差(Δ*
ab)が2.0未満であると、肉眼での明瞭な色差の確認がし難いことから、被暴露体に目立つ程の汚れは無く、防汚性が「良好」と判断される。色差(Δ*
ab)が2.0以上になると、肉眼で両フレキ板の塗布物の色差を区別できるようになるため、暴露中に汚染物付着の可能性が高まり、防汚性が「不良」と判断した。この結果を表8−1及び表8−2に表す。
【0070】
(2)ひび割れ抵抗性の評価
前記の防汚性の評価試験において、暴露試験終了後のフレキ板の塗布物表面と、同じ時期までケース保管していたフレキ板の塗布物表面に対し、ひび割れ発生の有無を調べた。5倍ルーペを使用した目視観察で、微細ひび割れを含め、全くひび割れが見られなかったものを、ひび割れ抵抗性「良好」と判断し、微細ひび割れが1ヶ所でも見られたものをひび割れ抵抗性「不良」と判断した。この結果も表8に表す。
【0071】
(3)仕上用モルタルの施工後の色調の評価
前記の防汚性の評価試験において、仕上用モルタル塗布後のフレキ板を20(±1)℃の屋内大気中で3週間養生した時点の塗布物の表面の色をマンセルカラーシステム色見本帳を用い、マンセルカラーシステムの色相、明度及び彩度を調べた。この結果も表8−1及び表8−2に表す。
【0072】
【表8-1】
【0073】
【表8-2】
【0074】
(4)仕上用着色モルタルの作製と評価
前記表3−1〜表3−3及び表4−1〜表4−3で表わした配合の一部の仕上用モルタルについて、作製時に、水を除いた配合に使用した材料の合計量の10質量%(実施例1−6、比較例1−4)に相当する量の表9に表すモルタル用顔料(尾関社製)又は2質量%(実施例7)、10質量%(実施例8)及び15質量%(実施例9)に相当する量の表9に表す着色合成鉱石粒(窯業用無機顔料を球形に溶融造粒したもの。平均粒径1.2mm)を外割で加えて混練し、着色を施した仕上用着色モルタル作製した。このモルタルを、150×300mmの面が地面に水平となるように置かれた150×300×3mmのフレキ板の上面に約5mm厚となるよう金鏝で塗布した。20(±1)℃の屋内大気中で3週間養生した時点の塗布物の表面の色を色差計(日本電色工業社製)で1cm
2当たりのL値、a値及びb値を計測してマンセルカラーシステムの色相、明度及び彩度に変換した。この結果を表9に表す。尚、実施例7および実施例8は白色地に細かい青色の斑点が存する仕上面となったが、マンセルカラーシステムの色相、明度及び彩度は約1cm
2の面に対する色差計によるL値、a値及びb値を測定したものから求めた。よって、白色部と青色部の個々の色調について色差計を使用した測定は行ったものではない。青色に発色した細かい斑点の色調を、マンセルカラーシステムの色見本帳を用いて眼視で見た限りは、混合前の着色鉱石粒単体のマンセル値の色調と実質同じ(明度、彩度とも単体から±0.2以内の差)であった。
【0075】
【表9】
【0076】
表8−1及び表8−2の結果から、本発明品の仕上用モルタルは、少なくとも90日間の暴露を経ても、暴露を経ずに防汚ケースに保管されていたものと比べ、肉眼で簡単に識別できるほどの色差が生じていないことから、汚れが付き難く、付いた汚れも雨水により自然に除去され易いと思われるため、防汚性に優れていることがわかる。また、本発明品の仕上用モルタルは、長期間の暴露を経たものでも微細なひび割れは全く発生しておらず、塗布時の表面外観を崩れることなく維持できることがわかる。
また、本発明の仕上用モルタルは、通常は鮮明な白色を安定して呈することができるが、さらに、表9の結果から、顔料などの着色物質を加えると、着色物質の色により忠実な色を発色する仕上用着色モルタルが得られることから、所望の色調に仕上げる基材としても適したものであることがわかる。