【文献】
「Sideways FIB TEM sample preparation for improved construction analysis in TEM」 H. B. Chong他、Physical and Failure Analysis of Integrated Circuits, 2012 19th IEEE International Symposium on the , IEEE,2012年7月2日,p.1−4
【文献】
「FIB/SEM Structural Analysis of Through−Silicon−Vias」 H.Bender他、Frontiers of Characterization and Metrology for Nanoelectronics:2011,AIP CONFERENCE PROCEEDINGS,2011年5月23日,p.274−278
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
集積回路を形成する構造体および他のナノテクノロジは、ナノメートル規模の寸法を有する。プロセス開発、プロセス制御、欠陥分析などの目的でこれらの構造体を観察する1つの方法は、集束イオン・ビーム(FIB)システムを使用し、露出させた構造体を、走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)を使用して観察して、構造体の一部分を露出させる方法である。観察するためにイオン・ビームによって材料をミリングし構造体を露出させると、そのイオン・ビームが、構造体を歪めたり、観察を妨害するアーチファクトを生み出したりすることがある。
【0003】
高アスペクト比(high aspect ratio:HAR)構造体は、1つの寸法、例えば高さが、別の寸法、例えば幅よりもはるかに大きい構造体である。例えば、集積回路の層間のホール(hole)の高さが、その幅の数倍であることがある。例えば、高さが幅の3倍よりも大きい特徴部分である。
【0004】
フラッシュ・メモリ内で使用される3D NAND回路などの集積回路内の3D構造体の高アスペクト比構造体、特に、充填されていないコンタクトまたはバイアを分析する際、従来のイオン・ビーム試料作製プロセスは、構造体の歪みなどのアーチファクト、およびイオン・ビーム・カーテン効果(curtain effect)を生じさせる。
【0005】
このイオン・ビーム・カーテン効果またはカーテニング(curtaining)は、異なるミリング速度で材料が除去されるときに生じる。このような状況は、同じビームによって異なる速度で除去される複数の材料からなる特徴部分をミリングするときに生じることがある。このような状況は、不規則な形状を有する表面をミリングするときにも生じることがある。例えば、注目の特徴部分が、スルー・シリコン・バイア(through−silicon via:TSV)であることがある。TSVの断面を形成することは、ボイドおよび境界面の特性を評価するために半導体研究室において一般的に実施されている作業である。TSVの深さ(一般に50〜300nm)のために、イオン・ビームを用いてTSVの断面をミリングするとかなりのカーテニングが生じることがある。
【0006】
特徴部分を露出させるためのイオン・ビーム・ミリングに起因する損傷およびアーチファクトのため、画像は、製造プロセスの結果を忠実には示さず、測定を妨げ、製造プロセスの評価を妨げる。それらの画像および測定値は試料作製の結果を示すものであり、製造プロセスの結果を示すものではないためである。このことはさらに、高アスペクト比垂直構造体の分析を実行することを困難にする。
【0007】
現在のところ、バイア、コンタクトなどの高アスペクト比ホールが繰返し現れる3D NAND構造体および他のIC構造体のTEM試料を、カーテンを生じさせずに製作することは、困難であるかまたは達成不可能である。FIBを用いてミリングもしくは作製し、かつ/またはSEMを用いて画像化するときに、高アスペクト比ホールまたは高アスペクト比トレンチの形状完全性を維持することは困難または不可能であった。充填されていないホールが試料上にあるとき、材料と何もないオープン・エリア(ホール)に隣接したエリアとの間にはミリング速度に大きな差がある。ミリング速度のこの大きな差の結果、ホールの形状を歪めるカーテニング効果またはウォーター・フォール(water fall)効果が生じる。
【0008】
FIBは、オープン構造体上にアーチファクトを生成する。エッチングされたホールまたはトレンチは、TEM作製する断面のためにFIBを用いて処理されたときに、重大なカーテニング・アーチファクトを有する傾向がある。その断面から情報を読み取ることは困難または不可能である。複雑な材料スタックを有する高アスペクト比ホールまたは高アスペクト比トレンチは、他の方法(スキャッタロメトリ(scatterometry)、CD−SEMなど)を用いて測定することが難しい。平面視材料除去または視射角材料除去は、測定のためにさまざまな深さにアクセスすることを可能にする。しかしながら、このような方法は、高アスペクト比ホールまたは高アスペクト比バイアの全長にわたって垂直な電子ビームでの観察を提供しない。
【0009】
先行技術では、試料の上面にわたって保護堆積物を配置することによって、または試料の形状が与えられた場合に可能な、試料を逆さにするほどまでの最大オフセット角のミルを実行することによって、カーテニング効果が軽減される。FIBの真空室内において半導体ウェーハなどの加工物の向きを再調整する能力は一般に限られている。試料の複数の平面からミリングし観察する能力を得ることにも、いくつかの問題がある。荷電粒子ビーム・システム内において試料を操作する先行技術の技法は非常に限られたものであり、一般に、1つまたは2つの観察平面を可能にするだけである。現行のチャンキング(chunking)法および溶接(welding)法は、システム・ハードウェアの制約のため、限られた情報を提供することができるだけである。複数回の溶接および複数回の試料操作を実行するのには長い時間がかかる。システムから試料を手動でロードおよびアンロードすること、または試料をひっくり返すこと、または別のホルダに試料を配置することが必要となることがあり、それによって処理時間はさらに増大する。他の方法は、1つの平面内で関心領域をスライスし、次いでデータを再構成して、他の角度からの情報を得ることを含む。しかしながら、この方法は時間がかかり、複数回のミルの後にいくつかの画像を形成し、次いでデータを再構成して、別の平面の画像を形成することを必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】高アスペクト比特徴部分を有する試料を示す図である。
【
図2】試料からナノマニピュレータへある体積を抜き出し、グリッドに装着し、位置を調整し、ミリングし、その後に、その体積のSEM画像を撮影する、本発明の好ましい一実施形態の一般的なプロセス・フローを示す図である。
【
図4】ナノマニピュレータに取り付けられた、加工物から抜き出された後の試料を示す図である。
【
図5】グリッド502などのホルダに取り付けられた試料を示す図である。
【
図6A】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする方法を示す断面図である。
【
図6B】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする方法を示す断面図である。
【
図6C】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする方法を示す断面図である。
【
図6D】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする方法を示す断面図である。
【
図6E】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする方法を示す断面図である。
【
図6F】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする方法を示す断面図である。
【
図7A】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする別の方法を示す断面図である。
【
図7B】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする別の方法を示す断面図である。
【
図7C】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする別の方法を示す断面図である。
【
図7D】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする別の方法を示す断面図である。
【
図7E】ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着しミリングする別の方法を示す断面図である。
【
図8A】カーテニング効果を受けた試料断面を示す図である。
【
図8B】カーテニング効果が低減された、本発明の実施形態に基づく試料断面を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態を実施するのに適した典型的なデュアル・ビーム・システム910を示す図である。
【
図10】荷電粒子ビーム・システムのバルク試料ステージ925上に配置された独立運動ステージ1002の一実施形態を示す図である。
【
図11】試料から、複数の関心領域を有する試料塊を、針型マニピュレータを用いて抜き出し、運動ステージ上の第2の針型マニピュレータに装着し、位置を調整し、ミリングし、その後に、関心領域内の特徴部分のSEM画像を形成する、本発明の一実施形態の一般的なプロセス・フローを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
構造体の密度が変化していることにより、観察するために試料の内部を露出させるイオン・ビーム・ミリングの最中に、FIBによってミリングされた最終的な面に、非平面アーチファクトおよび構造的なアーチファクト(topographical artifact)が導入されることがある。このことは、近接した2つの断面をミリングして試料の薄い膜を得るTEM試料の作製において特に問題である。試料表面に対して完全には垂直でない方向から断面をミリングすることによって、これらの「カーテニング」効果を、ビーム方向に対して平行に導くことができる。密度が変化する繰返し構造体を有する試料上で、「カーテン」の方向を、複数の繰返し構造体にわたってエイリアシングすることができ、事実上、カーテニングを低減させ、または排除することができる。
【0024】
図1は、ホール102などの複数の高アスペクト比構造体を有する加工物100の一部分を示す。矢印104aおよび104bによって示された向きにイオン・ビームが加工物へ導かれると、露出した断面は大きなカーテニングを示す。イオン・ビーム走査のある部分の間に、ビームが、矢印104aによって示された位置に配置されたとき、ビームは複数のホール102を横切る。矢印104bによって示されている部分の走査の間、ビームはどのホールも横切らない。この一貫性のなさが大きなカーテニングにつながる。
【0025】
矢印106によって示された向きにイオン・ビームが導かれると、ビームは、走査の間ずっと、ホールと中実領域の組合せに遭遇する。これによりカーテニングは低減する。走査の全ての位置においてビームが同様の条件に遭遇するためである。カーテニングに対する試料の向きの影響は
図8A、8Bおよび8Cにも示されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、ビーム走査に沿って最も終始一貫した条件をビームに提示するビームの向きを計算する。例えば、その平面へのホール102の投影面積が最大になる平面を計算することができる。次いで、計算した平面に対して垂直な向きにビームを導いて、カーテニングが低減された断面を生成する。他のアルゴリズムを使用して、ミリングの好ましい向きまたは最適な向きを決定することもできる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、試料の形状情報を使用してこのオフセット角を正確に決定する。試料の形状を分析することによって、プロセスのスループットおよび信頼性を向上させるミリング法を実現することができる。この最適化は、断面試料の作製およびTEM試料の作製を含む、密度が変化する大部分の構造体に適用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態は、試料内に存在する密度が変化する繰返し構造体の形状に基づいて、断面をミリングするのに最適な、垂直入射から傾斜した角度を識別することを含む。このことは特に半導体試料において効果的である。本発明は、問題があるカーテニング効果の原因となる密度が変化する構造体を識別すること、それらの構造体の形状を分析すること、および、ミリング角度を傾斜させ、それらの構造体にわたってカーテニングを分散させるエイリアシング効果を最適化することからなる。したがって、最初に、試料を通過するビーム経路のビーム走査全体体にわたる均一性を最大化するイオン・ビームの最適な向きを決定することができる。次いで、試料またはビームを、決定した角度で試料に衝突する向きに向ける。試料をミリングした後、露出した表面をSEMまたはTEMを用いて観察する。
【0029】
図2に本発明の別の実施形態のステップが示される。ステップ202で、
図4に示されたナノマニピュレータ402を使用して、加工物から試料を抜き出す。
図4は、ナノマニピュレータ402に取り付けられた、加工物から抜き出された後の試料を示す。
図3Aは、試料300の上面図を示す。
図3Bは、試料300の上面図を示す。
【0030】
ステップ204で、試料の向きを定め、グリッド502(
図5)などのホルダに、試料を、典型的にはイオン・ビーム誘起堆積を使用して取り付ける。
図5は、同じ構造体を含む2つの試料を示し、これらの2つの試料は、グリッド502に、2つの異なる向きで取り付けられている。これらの2つの異なる向きは、試料302および304の特徴部分を分析のために異なる形で露出させることを可能にし、さらに、好ましくも、カーテニングを低減させることを可能にする。例えば、後により詳細に説明するが、試料302の向きは、高アスペクト比相互接続の深さ全体の特性評価を、最小限のカーテニングで提供する。試料304の向きは、特定の深さにおけるホールの断面の観察を提供する。いくつかの実施形態では、このグリッドが、
図6Aに示されているように上方から試料302をミリングすることができるように回転可能であり、さらに、グリッドを回転させることにより、
図6Bに示されているように紙面に向かって試料304をミリングすることができるように回転可能である。試料302および試料304はそれぞれ、
図6Aから
図6Fへ次第に程度を増してミリングされ、そのため、
図6Aには最小量のミリングが、
図6Fには最大量のミリングが示されている。
図6A〜6Fに示されたミリング量は単なる例であり、それらよりも多くのミリングまたはそれらよりも少ないミリングを実行することもできる。例えば
図6A〜6Eに示されているように試料をミリングした後に、
図6fに示されているようなホール断面のSEM画像を撮影することによって、試料302のホールの特性を、それらのホールの深さ全体にわたって評価することができる。試料304は、特定の深さにおける複数のホールの断面を観察し測定することを可能にする。グリッド502の向きを再調整した後、試料304のミリングされた表面を、デュアル・ビーム・システム内のSEMに対して垂直に向けることができる。
【0031】
図7A〜7Eは、ホールの特性をその断面全体にわたって評価するために試料を装着する別の方法を示す断面図である。一連のミルは、
図7Aから始めて、
図7Eで、観察するホールの断面が露出するまでミリングされている試料を示す。いくつかの実施形態では、複数の試料を別々に抜き出し、グリッドに取り付けることができる。いくつかの実施形態では、1つの試料を抜き出し、グリッドに取り付け、次いで、その試料を、追加の複数の試料に分割することができる。それらの追加の試料は次いで、グリッド上の異なる位置に取り付けられる。試料の向きは、前述の通り、カーテニングを最小化するように決定することができる。本発明のいくつかの実施形態は以下のことを達成することができる:
・SEMに対して90度の角度で、最小限のカーテニングで観察することができる、HAR相互接続の深さ全体にわたる断面
・相互接続ホールを、最上部から最下部まで、SEMに対して90度の角度で、最小限のカーテニングで観察すること、さらに、ホールの垂直3D再構成を可能にすること
・試料の真の平面視
図8Aは、カーテニング効果を受けた試料断面を示す図である。この例では、断面が、垂直に向けられたFIBによって上下方向へミリングされた。密度が変化する繰返し構造体はカーテニング効果の原因となる。密度が変化する構造体は異なるミル速度を示す傾向があるためである。例えば、スルー・シリコン・バイア(TSV)などのホール102は、周囲のシリコン基板とは異なる密度を有する。カーテニングは、ある列の2つのホール間のエリアでFIBが走査されたときと、事実上ホールの下の列をミリングする、同じ列のホールにわたってFIBが走査されたときのミル速度の差によって引き起こされる。すなわち、FIBは、それぞれの走査においておおよそ同じ位置で、シリコンまたはホールの上を通る。これによって、ホールが存在する走査の位置は、ホールのない走査の位置よりも速くミリングされる。
【0032】
図8Bは、カーテニング効果が低減された、本発明の実施形態に基づく試料断面を示す図である。この例では、断面が、垂直に向けられたFIBによって上下方向へミリングされていない。その代わりに、結果として生じるカーテンが断面にわたって分散し、または断面にわたってエイリアシングされるように、断面がある角度でミリングされた。すなわち、断面ミルが最上部から最下部へ進むにつれて、FIBは、それぞれの走査において異なる位置でシリコンまたはホールの上を通る。事実上、これによって、カーテンは断面にわたって分散し、互いに重なり合う。適切な角度は、断面の特徴部分の形状に依存する。
【0033】
本発明の実施形態に基づくカーテニングの低減は、問題のあるカーテニング効果の原因となる密度が変化する構造体を識別すること、それらの構造体の形状を分析すること、および、ミリング角度をオフセットして、それらの構造体にわたってカーテンを分散させるエイリアシング効果を最適化することを含む。この方法のいくつかの実施形態は、加工物を横切る平面であり、カーテニングまたは他の画像アーチファクトの原因となる構造体の面積を最大にする平面を決定すること、この平面が集束イオン・ビームの軸に対して垂直になるように試料を傾けること、および、集束イオン・ビームを用いて加工物をミリングして、この平面の下の断面を露出させることを含む。
【0034】
ミリング角度を調整することによってカーテニングを最小化するいくつかの方法とは違い、本発明の実施形態は、試料の真の平面視を可能にする。高アスペクト比相互接続の深さ全体にわたる断面を、SEMに対して90度の角度で、最小限のカーテニングで観察することができる。相互接続ホールを、最上部から最下部まで、SEMに対して90度で、最小限のカーテニングで観察することもできる。本発明のいくつかの実施形態は、90度の視角では構造体の画像を撮影できないという問題を解決する。
【0035】
いくつかの実施形態は、ユーザが、試料を抜き出し、その試料を、非常に大きな柔軟性を可能にする別の位置決めシステムに装着することを可能にし、そのため、室内において以前は容易には実行されなかった方向の断面をFIBによって形成することができる。新たな位置決めによって、試料を、ミリングに対して最適に配置して、測定学上の問題を引き起こすカーテニング効果を最小化することができる。ミリングの後、SEMに対して90度になるように、また短い作動距離のところに位置するように試料の位置を調整して、カーテニング効果によって通常は遮られまたは歪められるROIの高分解能画像を得ることができる。
【0036】
図9は、垂直に装着されたSEMカラムと、垂直から約52°の角度に装着されたFIBカラムとを備える、本発明の実施形態を実施するのに適した典型的なデュアル・ビーム・システム910を示す。適当なデュアル・ビーム・システムは例えば、本出願の譲受人である米オレゴン州HillsboroのFEI Companyから市販されている。適当なハードウェアの一例を以下に示すが、本発明は、特定のタイプのハードウェアで実現されることだけに限定されない。
【0037】
走査電子顕微鏡941および電源および制御ユニット945はデュアル・ビーム・システム910を備える。陰極952と陽極954の間に電圧を印加することによって、陰極952から電子ビーム943が放出される。電子ビーム943は、集光レンズ956および対物レンズ958によって微細なスポットに集束する。電子ビーム943は、偏向コイル960によって試験体上で2次元的に走査される。集光レンズ956、対物レンズ958および偏向コイル960の動作は電源および制御ユニット945によって制御される。
【0038】
電子ビーム943を、下室926内の可動式X−Yステージ925上にある基板922上に焦束させることができる。電子ビーム中の電子が基板922に当たると、2次電子が放出される。この2次電子は、後に論じる2次電子検出器940によって検出される。
【0039】
デュアル・ビーム・システム910は集束イオン・ビーム(FIB)システム911をさらに含み、FIBシステム911は、上部ネック部912を有する排気された室を含み、上部ネック部912内にはイオン源914および集束カラム916が位置し、集束カラム916は、引出し電極および静電光学系を含む。集束カラム916の軸は、電子カラムの軸から52度傾いている。上部ネック部912は、イオン源914、引出し電極915、集束要素917、偏向要素920および集束イオン・ビーム918を含む。イオン源914を出たイオン・ビーム918は、集束カラム916を通過し、920に概略的に示されている静電偏向手段間を通り抜けて、下室926内の可動X−Yステージ925上に配置された基板922、例えば半導体デバイスを含む基板922に向かって進む。
【0040】
ステージ925は、水平面(X軸およびY軸)内で移動することができ、かつ垂直に(Z軸)移動することができることが好ましい。ステージ925はさらに約60°傾くことができ、Z軸を軸にして回転することができる。X−Yステージ925上に基板922を挿入するため、および内部ガス供給リザーバが使用される場合には内部ガス供給リザーバの整備作業のために、扉961が開かれる。システムが真空状態にある場合に開かないように、この扉はインタロックされる。バルク試料ステージ925上に配置された運動ステージを荷電粒子ビーム・システムが有する代替実施形態が、
図10に関して説明される。
【0041】
上部ネック部912を排気するためにイオン・ポンプ968が使用される。室926は、真空コントローラ932の制御の下、ターボ分子および機械ポンピング・システム930によって排気される。この真空システムは、室926に、約1×10
−7トルから5×10
−4トルの間の真空を提供する。エッチング支援ガス、エッチング遅延ガスまたは堆積前駆体ガスを使用する場合、室のバックグラウンド圧力は典型的には約1×10
−5トルまで上昇することがある。
【0042】
イオン・ビーム918にエネルギーを与え集束させるため、高圧電源が、イオン・ビーム集束カラム集束916内の電極に適当な加速電圧を印加する。イオン・ビーム918が基板922に当たると、材料がスパッタリングされる。すなわち試料から材料が物理的に追い出される。あるいは、イオン・ビーム918が前駆体ガスを分解して、材料を堆積させることもできる。
【0043】
液体金属イオン源914と、約1keVから60keVのイオン・ビーム918を形成しそれを試料に向かって導くイオン・ビーム集束カラム916内の適当な電極とに高圧電源934が接続されている。パターン発生器938によって提供される所定のパターンに従って動作する偏向コントローラおよび増幅器936が偏向板920に結合されており、それによって、対応するパターンを基板922の上面に描くようにイオン・ビーム918を手動または自動で制御することができる。いくつかのシステムでは、当技術分野ではよく知られているように、偏向板が、最後のレンズの前に配置される。イオン・ビーム集束カラム916内のビーム・ブランキング(blanking)電極(図示せず)は、ブランキング・コントローラ(図示せず)がブランキング電極にブランキング電圧を印加したときに、イオン・ビーム918を、基板922ではなくブランキング絞り(図示せず)に衝突させる。
【0044】
液体金属イオン源914は一般にガリウムの金属イオン・ビームを提供する。イオン・ミリング、強化されたエッチングもしくは材料堆積によって基板922を改変するため、または基板922を画像化するために、この源を一般に、基板922の位置における幅が1/10マイクロメートル未満のビームに集束させることができる。
【0045】
2次イオンまたは2次電子の放出を検出する目的に使用されるエバーハート・ソーンリー(Everhart Thornley)検出器、マルチチャンネル・プレートなどの荷電粒子検出器940がビデオ回路942に接続されており、ビデオ回路942は、ビデオ・モニタ944に駆動信号を供給し、コントローラ919から偏向信号を受け取る。下室926内における荷電粒子検出器940の位置は実施形態によって変更することができる。例えば、荷電粒子検出器940はイオン・ビームと同軸とすることができ、イオン・ビームが通り抜けることを可能にする穴を含むことができる。他の実施形態では、最終レンズを通して2次粒子を集め、次いで収集するために軸から逸らすことができる。
【0046】
ガス蒸気を導入し基板922に向かって導くためにガス送達システム946が下室926内へ延びている。本発明の譲受人に譲渡されたCasella他の「Gas Delivery Systems for Particle Beam Processing」という名称の米国特許第5,851,413号明細書は適当なガス送達システム946を記載している。別のガス送達システムが、やはり本発明の譲受人に譲渡されたRasmussenの「Gas Injection System」という名称の米国特許第5,435,850号明細書に記載されている。例えば、イオン・ビームまたは電子ビームの衝突時に金属を堆積させるため、ビーム衝突位置に金属有機化合物を送達することができる。白金を堆積させるための(CH
3)
3Pt(C
pCH
3)、タングステンを堆積させるためのタングステンヘキサカルボニルなどの前駆体ガスを送達し、電子ビームによって分解して、ステップ108の保護層を提供することができる。
【0047】
システム・コントローラ919は、デュアル・ビーム・システム910のさまざまな部分の動作を制御する。従来のユーザ・インタフェース(図示せず)にコマンドを入力することにより、ユーザは、システム・コントローラ919を介して、イオン・ビーム918または電子ビーム943を所望の通りに走査することができる。あるいは、システム・コントローラ919は、プログラムされた命令に従って、デュアル・ビーム・システム910を制御することができる。好ましいコントローラは、
図1のステップを自動的に実施する命令を記憶した記憶装置と通信し、または
図1のステップを自動的に実施する命令を記憶した記憶装置を含む。いくつかの実施形態では、デュアル・ビーム・システム910が、関心領域を自動的に識別する米マサチューセッツ州NatickのCognex Corporationから市販されているソフトウェアなどの画像認識ソフトウェアを含み、システムは、本発明に従って画像化する断面を手動でまたは自動的に露出させることができる。例えば、システムは、複数のデバイスを含む半導体ウェーハ上の同様の特徴部分を自動的に突き止め、異なる(または同じ)デバイス上の注目の特徴部分を露出させ、その画像を形成することができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、この荷電粒子ビーム・システムが、バルク試料ステージ925上に配置された運動ステージを有する。このバルク試料ステージは、少なくともx平面およびy平面内で平行移動することができる。この運動ステージは、z平面内で独立して平行移動することができ、ある軸に沿って回転することができる。バルク・ステージ上で運動ステージを使用すると、体積内へミリングし体積内を見ることによって、ユーザは、ほとんど全ての位置および方向を見ることができる。バルク試料から試料を取り出し、その試料を運動ステージ上に戦略的に配置する。正確に装着されている場合、バルク・ステージを運動ステージと組み合せて使用することによって、ユーザが望む任意の位置および任意の向きに試料を配置することができる。これは全て、単回溶接法(single weld method)を用いて、システムを換気することなしに、またはロード・ロック交換を必要とすることなしに達成することができる。
【0049】
可能なほとんど全ての角度から試料の側面を観察することができる。試料の実際の3次元情報を得たいオペレータは、この方法を使用して、試料をミリングし、試料内のどの位置でも観察することができる。試料を、短い作動距離のところに、電子顕微鏡の電子ビームに対して直角に配置して、高分解能画像を得ることができる。バルク試料ステージ上に装着された運動ステージを有する本発明の実施形態に基づく荷電粒子ビーム・システムは、より高いスループットおよびより速いサイクル・タイムを有し、より良質の最終結果を生み出す。
【0050】
バルク試料材料から、複数の関心領域を含む単一の塊を抜き出す。抜き出した塊を、独立運動ステージ上の試料ホルダに装着する。この試料ホルダは針型試料ホルダであることが好ましい。この独立運動ステージは、ほとんど全ての方向から試料を同時にミリングし観察することを可能にする。次いで、この試料を、電子ビームに対して90度の角度で、より短い作動距離で観察して、高分解能の特性評価を達成することができる。1回の溶接および独立した運動を使用する多平面試料アクセスは、ユーザが試料の「寸法」を探査する多くの可能性を開く。ユーザは、1方向から断面を形成して関心領域の位置を突き止めることができ、次いで、最上部から切削された平面を観察して、全く異なる方向から関心領域の特性を評価することができる。
【0051】
図10は、荷電粒子ビーム・システムのバルク試料ステージ925上に配置された独立運動ステージ1002の一実施形態を示す。バルク試料ステージ925は、x方向(
図10では左右方向)およびy方向(
図10では紙面に出入りする方向)に平行移動する。運動ステージ1002は、バルク試料ステージ902上に装着されている。運動ステージ1002は、z方向(
図10では上下方向)に独立して平行移動することができ、運動ステージ1002が装着されたバルク試料ステージ925の表面に対して実質的に垂直な軸を軸にして独立して回転することができる。運動ステージ1002は試料プローブ1004を含む。試料プローブ1004は、その長軸を軸にして回転することができる。一実施形態では、試料プローブ1004が、運動ステージ1002の回転軸と実質的に直交する軸を軸にして回転する。抜き出された試料塊は、試料プローブ1004の端に配置されたステージ装着針1006に装着される。バルク試料ステージ925および運動ステージ1002の運動によって、ステージ装着針1006に取り付けられた試料を、荷電粒子ビーム集束カラム1008に対するほぼ全ての所望の向きに配置することができる。荷電粒子ビーム集束カラム1008は、SEM941の集束カラムまたはFIB911の集束カラムとすることができる。
【0052】
図11は、試料から、複数の関心領域を有する試料塊を、針型マニピュレータを用いて抜き出し、運動ステージ上の第2の針型マニピュレータに装着し、位置を調整し、ミリングし、その後に、関心領域内の特徴部分のSEM画像を形成する、本発明の一実施形態の一般的なプロセス・フローを示す流れ図である。このプロセスはステップ1102から始まる。ステップ1104で、本出願の譲受人であるFEI Companyから販売されている荷電粒子ビーム・システム内に見られるEasyLift(商標)マイクロマニピュレータなどの抜き出し用の第1の針型マニピュレータを使用して、バルク試料から、複数の関心領域を含む単一の試料塊を抜き出す。ステップ1106で、その試料塊を、運動ステージ1002の試料プローブ1004上のステージ装着針1006へ移送する。ステップ1108で、ステージ装着針1006を使用して、試料塊を、少なくとも1つの関心領域の特徴部分を荷電粒子ビーム・ミリングによって露出させることができるような向きに配置する。ステップ1110で、荷電粒子ビームによって試料塊をミリングして、カーテニングが低減された関心領域内の特徴部分を露出させる。ステップ1112で、露出させた特徴部分のSEM画像を形成する。ステップ1114で、プロセスは終了となる。
【0053】
本発明は、幅広い適用可能性を有し、上記の例において説明し示した多くの利点を提供することができる。本発明の実施形態は、具体的な用途によって大きく異なる。全ての実施形態が、これらの全ての利点を提供するわけではなく、全ての実施形態が、本発明によって達成可能な全ての目的を達成するわけでもない。本発明を実施するのに適した粒子ビーム・システムは例えば、本出願の譲受人であるFEI Companyから市販されている。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、観察するために試料中の構造体の一部分を荷電粒子ビーム・システム内で露出させる方法であって、バルク試料から試料を抜き出すこと、カーテニングを低減させる試料の向きを決定すること、構造体を露出させるために試料をミリングするときに、試料がカーテニングを低減させる向きを向くように、試料を荷電粒子ビーム・システム内のホルダに装着すること、カーテニングを低減させる方向に試料をミリングすることによって構造体を露出させること、および構造体を画像化することを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、この方法は、カーテニングを低減させる方向に構造体をミリングすることが、ホルダを回転させることを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、この方法は、バルク試料から構造体を抜き出すことが、少なくとも1本の回転軸を軸にして試料を回転させる能力を有するナノマニピュレータまたは他の装置を使用して、バルク試料から構造体を抜き出すことを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、この方法は、構造体が高アスペクト比構造体である。
【0058】
いくつかの実施形態では、この方法は、構造体をミリングすることが、イオン・ビームまたは電子ビームを用いて構造体をミリングすることを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、この方法は、構造体の画像が、構造体の配向平面(orientation plane)に対して垂直な画像中の構造体を観察することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、観察するために構造体の一部分を露出させる方法であって、加工物を横切る平面であり、カーテニングまたは他の画像アーチファクトの原因となる構造体の面積を最大にする平面を決定すること、この平面が集束イオン・ビームの軸に対して垂直になるように試料を傾けること、および集束イオン・ビームを用いて加工物をミリングして、平面の下の断面を露出させることを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、この方法は、カーテニングの原因となる構造体が高アスペクト比ホールを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、この方法は、カーテニングの原因となる構造体が金属構造体を含む。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビーム・システムが、1つまたは複数の荷電粒子ビーム・カラムと、少なくとも第1の方向および第2の方向に平行移動することができるバルク試料ステージと、バルク試料ステージ上に配置された運動ステージであり、第3の方向に独立して平行移動することができ、ある軸を軸にして独立して回転することができる運動ステージとを備える。
【0064】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムが、運動ステージ上に配置された試料プローブをさらに備え、この試料プローブが、荷電粒子ビームによって処理または画像化するために試料を保持することができ、ある軸を軸にして独立して回転することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムが、バルク試料から試料を抜き出し、カーテニングを低減させる試料の向きを決定し、試料プローブに試料を装着し、観察するために試料中の構造体を露出させるために試料をミリングするときのカーテニングを低減させる向きに試料を配置し、カーテニングを低減させる方向に試料をミリングすることによって構造体を露出させ、前記構造体を画像化するようにプログラムされたコントローラをさらに備える。
【0066】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムが、バルク試料から試料を抜き出し、試料プローブに試料を装着し、加工物を横切る平面であり、カーテニングまたは他の画像アーチファクトの原因となる構造体の面積を最大にする平面を決定し、この平面が集束イオン・ビームの軸に対して垂直になるように試料を傾け、集束イオン・ビームを用いて加工物をミリングして、平面の下の断面を露出させるようにプログラムされたコントローラをさらに備える。
【0067】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムが、バルク試料から試料を抜き出すナノマニピュレータをさらに備える。
【0068】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムにおいて、ナノマニピュレータがバルク試料から試料プローブへ試料を移送するように適合されている。
【0069】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムにおいて、構造体が高アスペクト比構造体である。
【0070】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムにおいて、1つまたは複数の荷電粒子ビーム・カラムがイオン・ビーム・カラムまたは電子ビーム・カラムである。
【0071】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムにおいて、構造体が高アスペクト比構造体である。
【0072】
いくつかの実施形態では、荷電粒子ビーム・システムにおいて、1つまたは複数の荷電粒子ビーム・カラムがイオン・ビーム・カラムまたは電子ビーム・カラムである。
【0073】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。