(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示す第1実施形態の圧縮機10は、ロータリー式の圧縮機構11と、圧縮機構11を駆動するモータ12と、圧縮機構11およびモータ12を収容する円筒状のハウジング13と、アキュムレータ20(気液分離器)とを備えている。
【0019】
圧縮機10は、アキュムレータ20内の低圧のガス冷媒を配管21,22を通じて吸入し、モータ12から出力される回転駆動力がクランクシャフト14を介して伝達される圧縮機構11により冷媒を圧縮する。
圧縮機10およびアキュムレータ20は、空気調和機や冷凍装置等を構成しており、冷媒が循環する図示しない冷媒回路に接続されている。
【0020】
まず、圧縮機構11について説明する。
所謂ツインロータリー式である圧縮機構11は、上部圧縮機構110と、下部圧縮機構120と、セパレータプレート11Aと、クランクシャフト14を回転可能に支持する上部軸受11Bおよび下部軸受11Cとを備えている。
【0021】
上部圧縮機構110は、クランクシャフト14の軸心に対して偏心した上部クランクピン111と、上部ピストンロータ112と、上部シリンダ113と、上部マフラ114とを備えている。
上部ピストンロータ112は、上部クランクピン111の外周部に嵌合され、上部シリンダ113内で旋回される。
上部シリンダ113には、アキュムレータ20の配管21を通じてガス冷媒が吸入される吸入ポート113Aが上部シリンダ113の側壁を径方向に貫通して形成されている。
セパレータプレート11Aにより、上部シリンダ113の内部と下部シリンダ123の内部とが仕切られている。
【0022】
上部シリンダ113内に吸入され、上部ピストンロータ112の外周部に押圧される図示しないブレードよりも回転方向前方の空間にて圧縮された冷媒は、上部軸受11Bに形成された図示しない吐出ポートと、上部マフラ114に形成された図示しない開口とを通じてハウジング13内へと吐出される。
【0023】
下部圧縮機構120も、下部クランクピン121と、下部ピストンロータ122と、下部シリンダ123と、下部マフラ124とを備えている。
下部シリンダ123には、アキュムレータ20の配管22を通じてガス冷媒が吸入される吸入ポート123Aが下部シリンダ123の側壁を径方向に貫通して形成されている。
下部クランクピン121は、クランクシャフト14の軸心に対して、上部クランクピン111とは逆位相(180°)となる向きに偏心している。
【0024】
下部シリンダ123内に吸入された冷媒は、下部ピストンロータ122の回転に伴って圧縮され、下部軸受11Cに形成された図示しない吐出ポートと、下部マフラ124に形成された図示しない開口とを通じてハウジング13内へと吐出される。
【0025】
上部圧縮機構110および下部圧縮機構120によりハウジング13内へと吐出された冷媒は、ハウジング13の上部に設けられた吐出管131を通じて冷媒回路へと吐出される。
【0026】
次に、アキュムレータ20について説明する。
アキュムレータ20は、内部で冷媒を気液分離させる容器20Aと、容器20A内の気相であるガス冷媒を容器20A外へと取り出し、圧縮機10へと吸入させる2つの配管21,22と、2つの配管21,22を容器20A内で相互に拘束するブラケット30(拘束部)とを備えている。
【0027】
容器20Aは、円筒状に形成されており、圧縮機10のハウジング13の側壁13Aに支持されている。容器20Aの外周部には、ストラップ25が巻かれて締め付けられ、側壁13Aに設けられたアキュムレータブラケット26に固定されている。アキュムレータブラケット26およびストラップ25により、容器20Aがハウジング13の側壁13Aに片持ち支持されている。
容器20Aの上端部には、図示しない冷媒回路から低圧の冷媒を容器20A内に吸入する吸入管20Bが設けられている。
【0028】
配管21,22は、容器20A内で並行して延びている。配管21,22は、容器20Aの内壁20Wから離れている。
配管21は上部圧縮機構110に接続され、配管22は下部圧縮機構120に接続されている。
配管21は、容器20Aの上端部から所定距離だけ離れた位置から下方に向けて、上下方向(鉛直方向)に延びている直進部21Aと、直進部21Aに対して湾曲し、上部シリンダ113の吸入ポート113Aに向けて延びている湾曲部21Bとを備えている。
直進部21Aは、容器20A内から容器20Aの底部23を貫通して容器20A外へと至り、湾曲部21Bへと連続している。直進部21Aは、容器20Aの底部23に、直進部21Aが通される孔の周縁部をかしめることによって固定されている。
湾曲部21Bは、ハウジング13の側壁13Aに継手133により固定されている。湾曲部21Bの先端部は、側壁13Aを貫通して吸入ポート113Aに挿入されている。
【0029】
配管21,22は、銅系や鉄系の適宜な金属材料から形成することができる。
【0030】
配管22も、上下方向に沿って延びている直進部22Aと、直進部22Aに対して湾曲し、下部シリンダ123の吸入ポート123Aに向けて延びている湾曲部22Bとを備えている。
直進部22Aは、配管21の直進部21Aと平行に延びている。
湾曲部22Bは、上記配管21の湾曲部21Bよりも下方で、水平にかつ湾曲部21Bと平行に延びている。湾曲部22Bの先端部は、側壁13Aを貫通して吸入ポート123Aに挿入されている。
配管22の曲がり部分22Cは、配管21の曲がり部分21Cよりも外周に位置している。
【0031】
容器20Aの内部空間における上部において、配管21の直進部21Aの上端部21Uと、配管22の直進部22Aの上端部22Uとが、底部23からの高さが同等の位置に並んでいる。
容器20Aの内部空間における配管21,22の上端部よりも上方には、容器20A内を上下に仕切る仕切部材24が設置されている。仕切部材24は、吸入管20Bから容器20A内に流入した冷媒が配管21,22内に直接的に入るのを防ぐ。容器20A内に流入した冷媒は、仕切部材24に形成された図示しない開口を通り抜ける。
容器20A内の冷媒は、冷媒の密度差に基づいて、気相であるガス冷媒と液相である液冷媒とに分離される。容器20A内の上部に存在するガス冷媒は、上端部21U,22Uから配管21,22内に流入し、配管21,22内をそれぞれ流れて圧縮機構110,120へと吸入される。
【0032】
さて、アキュムレータ20には、配管21,22を通じて圧縮機10から振動が伝搬する。モータ12のトルクリップルやコギングトルク、圧縮機構11から吐出された冷媒の脈動等の加振源により加振された配管21,22は、容器20A内で振動する。
第1実施形態では、配管21,22の振動を低減する本発明の基本的な構成および作用効果を説明する。
【0033】
図2(a)は、既存のアキュムレータの配管91,92の振動解析結果の一例を示している。
図2(a)には、ロータリー圧縮機のハウジング13の外形を模式的に示している。圧縮機に接続される配管91,92は、それぞれ、1本の線で模式的に表されている。
ここで、運転停止中(非振動時)の圧縮機のハウジング13の軸線を一点鎖線で示し、運転中(振動時)の圧縮機10のハウジング13の軸線を実線で示している。
同様に、運転停止中(非振動時)の配管91,92の各々の軸線を一点鎖線で示し、運転中の配管91,92の各々の軸線を直線で示している。
【0034】
図2(a)より、圧縮機が、モータ12の磁気的な加振力や吐出冷媒の脈動により振動しているが、圧縮機から圧縮機構のシリンダやハウジング13を介して振動が伝わる配管91,92は、圧縮機以上に大きく振動している。特に、アキュムレータ容器の底部にかしめられた部位93から離れた配管91,92の各々の上端部91U,92U(自由端)付近の振幅が大きい。
【0035】
本実施形態は、アキュムレータ20の配管21,22の振動を減衰させるため、
図1に示すように、容器20A内で配管21と配管22とを容器20Aから離れた状態で拘束するブラケット30を備えることを特徴とする。
容器20A内で延出する配管21,22の直進部21A,22Aを1以上のブラケット30により拘束することができる。
本実施形態は、直進部21A,22Aの長さ方向(上下方向)の1箇所にブラケット30を備えている。
ブラケット30は、容器20Aの内壁20Wから離れていて容器20Aには固定されておらず、容器20A内で延びている直進部21A,22Aを相互に拘束している。
【0036】
ブラケット30は、
図3(a)に示すように、内側に挿入された直進部21Aの外周部を保持する円筒状の保持部31と、同じく内側に挿入された直進部22Aの外周部を保持する円筒状の保持部32と、保持部31および保持部32を連結する板状の連結部33とを備えている。
ブラケット30は、適宜な樹脂系の材料や適宜な金属材料から、保持部31、保持部32、および連結部33が一体に形成されている。ブラケット30は、適度な弾性を備えていることが好ましい。
【0037】
保持部31は、上下方向における直進部21Aの所定の部位に固定されている。
保持部32も、上下方向における直進部2
2Aの所定の部位に固定されている。
配管21,22が振動していないとき、保持部31,32は、容器20Aの底部23から同等の高さに位置している。
なお、保持部31,32の高さが若干相違していることも許容される。
【0038】
連結部33は、保持部31と保持部32との間を延在している。
連結部33は上下方向に沿って配置されており、連結部33の上下方向における剛性が高いので、上下方向への振動時に連結部33が変形することによる振動減衰効果が高い。
【0039】
保持部31は、例えば保持部31の内側に直進部21Aが圧入されていることで、直進部21Aの外周部に密着した状態で固定されていることが好ましい。
そうすると、保持部31と直進部21Aとの摩擦が増大し、ブラケット30による振動減衰の効果が向上する。
保持部31と直進部21Aとを直接密着させる代わりに、保持部31の内周部と直進部21Aの外周部との間に弾性部材を介在させ、保持部31の内周部、弾性部材、および直進部21Aの外周部を相互に密着させてもよい。
以上は、保持部32および直進部22Aについても同様である。
【0040】
本実施形態に示すブラケット30の形態は一例に過ぎず、容器20A内で配管21,22同士を容器20Aから離れた状態で拘束する限りにおいて、適宜な形態のブラケット30を採用することができる。
【0041】
保持部31を直進部21Aの所定の部位に留め、保持部32を直進部22Aの所定の部位に留めるため、直進部21A,22Aのそれぞれの外周部に、
図3(a)に二点鎖線で示すようなリング部材34を設けることができる。リング部材34,34により保持部31,32が支持されるので、保持部31,32がずり落ちるのを防止できる。
【0042】
圧縮機10から振動が伝わることで配管21,22が長さ方向に沿って振動すると、例えば、
図4(a)に示すように、配管21の直進部21Aが下方に、配管22の直進部22Aが上方にといったように、直進部21A,22Aが長さ方向において相対的に変位する。
直進部21A,22Aはブラケット30により互いに拘束されているので、直進部21A,22Aが保持部31,32の内側をそれぞれ滑るようにして、
図4(b)に示すように直進部21A,22Aおよびブラケット30が変形する。直進部21A,22Aおよびブラケット30の変形、そして、直進部21Aと保持部31、直進部22Aと保持部32の摩擦によって、配管21,22の振動が減衰される。
【0043】
ここで、ブラケット30が容器20Aから離れているため、ブラケット30が容器20Aに接触している場合とは異なり、容器20A内における配管21,22の振動がブラケット30により容器20Aに直接的に入力されることがない。つまり、容器20A内の配管21,22の振動により容器20Aが加振されるのを避け、容器20Aを含めたアキュムレータ20全体が振動するのを防ぐことができる。
【0044】
したがって、本実施形態によれば、容器20Aから離れた状態で配管21,22同士を拘束するブラケット30を備えていることにより、アキュムレータ20の振動を低減することができる。それにより、アキュムレータ20から放射される音圧のレベルが下がるので、騒音を抑制することができる。
【0045】
アキュムレータ20の配管21,22同士を拘束する本実施形態の振動減衰構造によれば、加振源である圧縮機10からアキュムレータ20へと振動を伝搬する系を容器20A内の配管21,22に留め、配管21,22の振動を容器20Aや容器20Aの外側には極力伝えないようにすることができる。
【0046】
配管21,22の振動を確実に減衰させて、振動伝搬の系を容器20A内の配管21,22に留めるため、配管21,22の相対的な振動による相対変位の距離が大きい配管21,22の部位同士をブラケット30により拘束することが好ましい。
【0047】
配管21,22の振動を減衰させるため、容器20A内で延びている配管21,22の外周部を覆い尽くすようにゴム等の弾性体を設けることも考えられるが、そうするとアキュムレータ20の重量が増加する上、十分な振動減衰には必ずしも繋がらない。
本実施形態では、容器20Aから離れたブラケット30により、容器20A内で配管21,22の部位同士を拘束することにより、効率よく振動減衰を図ることができる。
【0048】
本実施形態のブラケット30に代えて、
図3(b)や
図3(c)に示すブラケットを用いることができる。
図3(b)に示すブラケット35は、上下方向から見たときにC字状を呈する保持部351,352と、保持部351,352を連結する連結部33とを備えている。
ブラケット35は、板金材料を打ち抜いて両端を点対称のC字形状に曲げることによって形成されている。連結部33の両端で曲げられた部分が保持部351,352に相当する。
【0049】
保持部351、352は、C字状であり、連結部33と隣り合う部分に隙間Spがあいている。そのため、保持する配管21,22が振動した際に保持部351,352は開閉可能である。
図3(b)のブラケット35は、製作が容易であり、しかも、保持部351,352が開閉して変形するので振動減衰の効果が高い。
【0050】
図3(c)に示すブラケット36は、水平方向に沿って配置される連結部361と、連結部361により連結される保持部31,32とを有している。
連結部361の水平方向の剛性が高いため、ブラケット36は、
図2(b)に示すような配管21,22の水平方向への振動を減衰させるために有効である。また、水平方向の剛性向上により、共振回避の観点から固有振動数を調整できる。
【0051】
図5(a)〜(c)に示すブラケット37〜39は、
図3(a)〜(c)に示すブラケット30,35,36にそれぞれバネ部を持たせたものである。
図5(a)に示すブラケット37および
図5(b)に示すブラケット38にそれぞれ備えられたバネ部101は、折り曲げ加工により、連結部33に蛇腹状に形成されている。
バネ部101が弾性変形することで、ブラケット37,38による振動減衰効果が向上する。
【0052】
図5(c)に示すブラケット39に備えられたバネ部102も、折り曲げ加工により、連結部361に蛇腹状に形成されている。バネ部102が弾性変形することで、ブラケット39による振動減衰効果が向上する。
【0053】
〔第2実施形態〕
図6〜
図9を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、アキュムレータ
40の配管21,22同士を拘束するブラケットを使用し、振動の減衰効果をより一層向上させることのできる構造について説明する。
図6に示すように、第2実施形態のアキュムレータ40は、配管21,22の直進部21A,22Aの長さ方向における2つの異なる箇所にブラケット41,42を備えている。
ブラケット41,42は、いずれも、第1実施形態で説明したブラケット30(
図3(a))と同様に構成することができる。
ブラケット41,42が、
図3(b)および(c)、図
5(a)〜(c)に示すブラケット
37〜39と同様に構成されていてもよい。
【0054】
本実施形態では、振動減衰効果をより十分に得るため、ブラケット41,42を所定の高さに配置している。
ここで、配管21,22の各々の下端部21L,22Lのうち最も上方にある基準下端部21Lの位置P1(基端位置)から、配管21,22の各々の上端部21U,22Uが並ぶ位置P2(先端位置)までの高さを「1」とすると、ブラケット41は約0.5の高さ(第1高さH1)に位置し、ブラケット42は約0.8の高さ(第2高さH2)に位置している。
ブラケット41は、配管21の第1部位211と、配管22の第1部位221とを拘束している。第1部位211と第1部位221とは同じ高さにある。
ブラケット42は、配管21の第2部位212と、配管22の第2部位222とを拘束している。第2部位212と第2部位222とは同じ高さにある。
上下方向におけるブラケット41,42の各々の寸法は、配管21,22に拘束力を働かせるため、1mm以上の適宜な寸法に定めることができる。
【0055】
基端位置P1は、より具体的には、
図6に一点鎖線で示すように、配管21,22の下端部21L,22Lのうち上方にある基準下端部21Lを有する配管21(基準配管)の湾曲部21Bの上端である。ここから高さを起算すると、「1」の高さ全体に亘り配管21,22が平行に延びているので、後述する梁の振動モデル(
図8、
図9)によく適合する。
【0056】
ブラケット41は、基端位置P1から先端位置P2までの高さを「1」としたとき、0.5の高さH1および高さH1近傍を含む範囲に亘り配置されている。
同様に、ブラケット42は、基端位置P1から先端位置P2までの高さを「1」としたとき、0.8の高さH2および高さH2近傍を含む範囲に亘り配置されている。
より具体的に、ブラケット41,42の寸法を用いて言えば、ブラケット41に関しては、直進部21Aが延びている上下方向D1におけるブラケット41の中心部が、約0.5の高さH1にあることが好ましい。ブラケット42に関しては、上下方向D1におけるブラケット42の中心部が、約0.8の高さH2にあることが好ましい。
【0057】
以下、ブラケット41,42を所定の高さに配置している理由を説明する。
図7(a)〜(c)は、ロータリー圧縮機に接続された既存(配管のブラケットなし)のアキュムレータの配管91,92の振動解析結果を示している。
図7(a)は1次の振動モード成分を示し、
図7(b)は2次の振動モード成分を示し、
図7(c)は3次の振動モード成分を示している。
4次以上の振動モード成分も存在するが、配管91,92の振動全体の中で、周波数が低くかつ音圧レベルが高いため騒音に繋がる1次から3次までの振動を重点的に減衰させたい。
【0058】
振動減衰効果を向上させるためには、上述したように、配管21,22の相対的な振動による相対変位の距離が大きくなる配管21,22の部位同士をブラケット30により拘束することが好ましい。
これについて
図8(a)〜(c)を参照して説明する。
配管21,22は、それぞれ、容器20Aの底部23(
図6)にかしめられている固定端201と、自由端202とを有している。
図8(a)〜(c)は、それぞれ、1次、2次、3次の各振動モード成分を示している。
図8(a)に示す1次の振動モードでは、自由端202に近づくにつれて漸次振幅が増加し、振幅の増加に伴って、固定端201からの高さが同じ配管21の部位と配管22の部位との相対変位が増加する。
【0059】
図8(b)に示す2次振動モードでは、振幅が最大となる腹Aと、振幅が最小となる節Bとが存在する。ここで、固定端201からの高さが同じ配管21の部位と配管22の部位との相対変位が最大となるのは、腹Aの位置ではなく、節Bの位置である。腹Aの位置では、高さが同じ配管21の部位と配管22の部位との相対変位が最小となる。
図8(b)に示す矢印は、ブラケット(二点鎖線)により拘束された配管21,22の部位について、配管21の節Bの部位を基準として配管22の節Bの部位が相対的に変位する向きを示している。
図8(b)に二点鎖線で示すように節Bに対応する箇所でブラケットにより配管21,22同士が拘束されていると、2次モードに関して配管21,22およびブラケットの変形や摩擦による振動減衰効果が最も高い。
【0060】
図8(c)に示す3次振動モードにおいては、2つの節B1,B2と、2つの腹A1,A2が存在するが、2次振動モードと同様に、固定端201からの高さが同じ配管21の部位と配管22の部位との相対変位が最大となるのは、節B1,B2の位置である。
図8(c)に示す矢印は、ブラケット(二点鎖線)により拘束された配管21,22の部位について、配管21の節B1,B2の部位を基準として配管22の節B1,B2の部位が相対的に変位する向きを示している。
図8(c)に二点鎖線で示すように第1の節B1に対応する箇所と、第2の節B2に対応する箇所との2箇所でブラケットにより配管21,22同士が拘束されていると、3次モードに関して配管21,22およびブラケットの変形や摩擦による振動減衰効果が最も高い。
【0061】
配管21,22の振動の位相が同じであっても、位相差があっても、あるいは一方のみが共振しているような場合であっても、節の位置では配管21,22の相対変位が最大であるためブラケットが最大に傾き、腹の位置では相対変位が最小なのでブラケットが傾かないという関係が成り立つ。そのため、配管21,22の振動の位相によらず、
図8(b)および(c)に示すように振動減衰効果が最も高いブラケットの位置が決まる。
【0062】
以上に基づいて、拘束される配管21,22の部位を定めるにあたり、2次振動モードの節Bの位置と、3次振動モードの節B1,B2の位置とを基本式に基づいて算出する。
図9(a)〜(c)は、それぞれ、1次、2次、3次の各振動モード成分を示している。
図9(b)に、固定端および自由端を有する梁の振動公式から算出された数値の例を示すように、2次振動モードの節Bは、固定端201から自由端202までの長さを「1」とすると、「0.774」の位置にある。
同様に、
図9(c)に、固定端および自由端を有する梁の振動公式から算出された数値の例を示すように、固定端201から自由端202までの長さを「1」とすると、3次振動モードの節B1は、「0.500」に位置にあり、3次振動モードの節B2は、「0.868」の位置にある。
図9(a)に示すように1次振動モードでは、自由端202、つまり「1」の位置で振幅が最大となり、それに伴い配管21,22の相対変位も最大となることも考慮するとよい。
【0063】
以上より、1次〜3次の振動モードをバランスよく十分に減衰させるために、本実施形態では、配管21,22同士を拘束する箇所として、
図6に示すように0.5の高さH1および0.8の高さH2の2箇所を選定する。これらの高さH1,H2を基準として、高さH1,H2にブラケット41,42を1つずつ配置するとよい。
ブラケット41,42により、0.8の高さH2から少し外れた位置、例えば、1次モードの振幅が大きい配管21,22の上端部21U,22Uの近傍や、3次モードの節B2の位置にも、ブラケット41,42による拘束力が及ぶので、配管21,22の振動を効率よく減衰させることができる。
【0064】
第2実施形態によれば、同じ高さにおける配管21,22の相対変位量が最大となる節の位置を含む高さで当該部位同士がブラケット41,42により拘束されているので、第1実施形態で説明した振動減衰効果をより十分に得ることができる。
【0065】
第2実施形態のアキュムレータ40が、ブラケット41,42に加えて、配管21,22同士を容器20A内で拘束する他のブラケットを備えていてもよい。
【0066】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
例えば、
図10に示すように、0.5の高さH1および0.8の高さH2の両方を含む範囲に亘り、配管21,22を1つのブラケット45により拘束することもできる。この場合も、第2実施形態と同様に、振動をより十分に減衰させることができる。
【0067】
本発明の基本コンセプトは、第1実施形態の欄で説明したように、容器20Aから離れているブラケットにより2以上の配管同士を容器20A内で拘束することにあり、その限りにおいて、ブラケットの位置や数は限定されない。
したがって、
図11に示すように、上下方向に離れた3箇所に位置し、容器20Aから離れている3つのブラケット46〜48により、配管21,22を容器20A内で拘束することもできる。
【0068】
本発明は、上記の各実施形態のように、ツインロータリー式圧縮機構11の2つのシリンダ113,123に対応する2つの配管21,22を備えるアキュムレータ20,40に好適であるが、必ずしもこの構成には限定されない。アキュムレータ20,40の2本の配管21,22から、1つのシリンダ内に冷媒が吸入されていれば、1つのシリンダおよび1つのピストンロータを備えたロータリー圧縮機にも本発明を適用可能である。
【0069】
また、本発明のアキュムレータは、ロータリー式圧縮機には限らず、スクロール圧縮機等の他の圧縮機にも適用することができる。
さらに、本発明のアキュムレータは、必ずしも、圧縮機のハウジング13に支持されている必要はない。本発明のアキュムレータの振動減衰構造によれば、容器20A内の配管21,22に何らかの加振源から伝わる振動を減衰させることで、アキュムレータの振動を低減することができる。
【0070】
本発明のアキュムレータの配管21,22の形状、特に、容器20Aの外における形状や取り回しは、適宜に定めることができる。配管21,22は必ずしも湾曲部21B,22Bを備えていなくてもよい。
配管21,22の形状等に応じて、拘束する配管の部位を定めるための高さの基準を適宜に定めることができる。