(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645852
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】遺体用衣料
(51)【国際特許分類】
A61G 17/06 20060101AFI20200203BHJP
A01N 1/00 20060101ALI20200203BHJP
A61G 17/04 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
A61G17/06
A01N1/00
A61G17/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-17068(P2016-17068)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-136107(P2017-136107A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】516033189
【氏名又は名称】梶間 信明
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】梶間 信明
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−053401(JP,A)
【文献】
特開2000−095601(JP,A)
【文献】
特開2009−256368(JP,A)
【文献】
特開2005−290566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 17/00−17/08
A01N 1/00− 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺体(20)の頭部(21)に着用される布製の烏帽子(11)と、
該烏帽子(11)の両側に連続して延び、遺体頭部(21)から遺体腹部(23)まで伸びる長さでかつ遺体(20)の耳(24)を覆い得る横幅の帯状をなし、ドライアイス(30)が収納される袋部分(12A)を有する布製の両帯(12)と、
を備えたことを特徴とする遺体用衣料。
【請求項2】
両帯(12)は遺体(20)の耳(24)に対応する部位に四角形の布製目隠し布(13)を有する請求項1記載の遺体用衣料。
【請求項3】
両帯(12)の遺体(20)の耳(24)に対応する部位の内側には綿帯(12B)を有する請求項1記載の遺体用衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺体用衣料に関し、特に顔両側のドライアイスが外から見えず、又ドライアイスを容易に交換できるようにした遺体用衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
死亡直後の遺体はそのまま室温などに放置しておくと、腐敗が進行する。特に、臓器等は腐敗しやすく、臓器などの腐敗が進行すると、腐敗ガスや悪臭が発生し、腐敗ガスによって腐敗した内臓や血液が遺体の口から飛び出るおそれがあるので、内臓などの腐敗を防ぐことが大切である。
【0003】
内臓などの腐敗を防ぐ方法が種々提案されているが(特許文献1、特許文献2、特許文献3)、特別な処置を必要としており、多くの場合にはドライアイスを使用して内蔵などの腐敗を防止することが行われている。
【0004】
通常、ドライアイスを使用する場合、遺体の湯灌を行い、装束を着せた後、遺体を敷布団に安置して肘関節を曲げて手を腹部の上に配置させ、顔の両側にドライアイスを置き、胸部及び腹部にドライアイスをT字状になるように置き、さらに腹部両側にドライアイスを置き、掛布団を掛け、遺体を冷やして内臓の腐敗を抑制することが行われている(特許文献4)。
【0005】
かかる方法では胸部や腹部は掛布団で覆われているものの、顔は外から見れる状態となっており、顔両側のドライアイスがそのまま通夜式や告別式の参列者に見えるのは遺族にとって心情的に好ましくない。
そこで、ドライアイスを綿帯で包んでドライアイスが外側から見えないようにすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002―53401号
【特許文献2】特開2000―95601号
【特許文献3】特開2000―95601号
【特許文献4】特開2009−256368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ドライアイスはある程度の時間が経過すると、昇華して少なくなり、そのまま放置すると、顔が変色し耳が腫れてくることがあるので、交換する必要があるが、綿帯がドライアイスによって冷却されて顔や耳にくっついてしまい、綿帯を顔や耳から剥がすのに手間がかかって煩わしい一方、綿帯を乱暴に剥がすと顔の皮膚や耳が損傷を受けることがあった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、顔両側のドライアイスが外から見えず、又ドライアイスを容易に交換できるようにした遺体用衣料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係る遺体用衣料は、遺体の頭部に着用される布製の烏帽子と、該烏帽子の両側に連続して延び、遺体頭部から遺体腹部まで伸びる長さでかつ遺体の耳を覆い得る横幅の帯状をなし、ドライアイスが収納される袋部分を有する布製の両帯と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の特徴の1つは烏帽子に両帯を延設させ、両帯の袋部分にドライアイスを収納できるようにした点にある。
これにより、両帯のドライアイスによって遺体の顔、遺体胸部及び腹部を冷却することができ、又遺体の顔両側に綿帯で包んだドライアイスを置く場合にも綿帯が顔や耳に触れないので、綿帯が顔や耳にくっついてしまうことがなく、ドライアイスを交換する時に綿帯を顔や耳から剥がす手間を必要とせず、顔の皮膚や耳が損傷を受けるおそれもない。
【0011】
綿帯に包んだドライアイスを遺体の顔両側に置いた場合、ドライアイスを支えるものがないと、ドライアイスが滑ってしまうが、かかる支えや綿帯がそのまま見えると見栄えが損なわれるおそれがある。そこで、両帯に顔両側を覆う目隠し布を設けて、ドライアイスの綿帯や支えを隠すようにするのがよい。
【0012】
また、ドライアイスが両帯の布を通して顔の皮膚や耳に触れると、顔の皮膚や耳が冷えすぎ、皮膚や耳が凍結するおそれがある。そこで、両帯の内側に綿帯を設けて、皮膚や耳が冷えすぎるのを抑制することもできる。
【0013】
また、両帯を遺体の胸部で交叉するようにすると、胸部及び腹部を効率よく冷却することができるが、腹部両側が冷却され難くなる。そこで、両側に袋部分を有する布製の腹帯をさらに組み合わせるようにするのがよい。
また、死亡してから時間が経過すると、遺体の口が開くことがあり、見栄えがよくない。通常、ゴムバンドなどを頭頂と顎との間に掛けわたして遺体の口が開くのを防ぐようにしているが、本発明の場合には烏帽子を使用しているので、烏帽子に左右のゴム帯の一端部を縫合し、ゴム帯を顎に引っ掛けて他端部を面ファスナーで締着することによって遺体の口が開くのを防ぐようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る遺体用衣料の好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1及び
図2は本発明に係る遺体用衣料の好ましい実施形態を示す。図において、遺体用衣料10は布製の烏帽子11、布製の両帯12、布製の目隠し布13及び布製の腹帯14から構成されている。
【0016】
烏帽子11は天冠の代用をなすものであって、遺体20の頭部21に着用される。布製の帯12は烏帽子11の両側に連続して設けられ、両帯12は帯状の布を、遺体20の頭部21から遺体腹部23まで伸びる長さでかつ遺体20の耳24を覆い得る横幅の帯袋状に縫製して製作され、帯12の一端は烏帽子11に縫合され、他端は開放され、袋部分にはドライアイス30が収納されるようになっている。
【0017】
両帯12の遺体20の耳24に対応する部位には四角形の布製目隠し布13の前端縁が縫合され、又両帯12の遺体20の耳24に対応する部位の内側には耳24を保護する綿帯12Bが配置されて固着されている。
【0018】
他方、腹帯14は四角形帯状の布の両側部分を折り返して縫合して袋部分14Aが形成されてドライアイス30が収納できるようになっている。
【0019】
本例の遺体用衣料10を使用する場合、
図2に示されるように、烏帽子11を湯灌の済んだ遺体20の頭部に烏帽子11を被せ、両帯12の袋部分12Aにドライアイス10を収納して胸部22の前で交叉させ、袋部分14Aにドライアイス30を収納した腹帯14を遺体20の腹部23に被せてドライアイス30を腹部23の両側に置き、遺体20の肘関節25を曲げて手を腹部23の上に配置させ、顔26の両側に、綿帯で包んだドライアイス30を置いて目隠し13で隠した後、掛布団を掛け、遺体を冷やす。
【0020】
以上のように、両帯12のドライアイス30によって遺体20の顔26、遺体胸部22及び腹部23を冷却することができ、又遺体20の顔両側のドライアイス30の綿帯が顔26や耳24に触れないので、綿帯が顔26や耳24にくっついてしまうことがなく、ドライアイス30を交換するときに綿帯を顔26や耳24から剥がす手間を必要とせず、又顔26の皮膚や耳24が損傷を受けるおそれもない。
【0021】
また、両帯12に顔両側を覆う目隠し布13を設けて、ドライアイス30の綿帯や支えを隠すようにしているので、見栄えが悪くなることがない。
【0022】
なお、烏帽子、両帯、目隠し布及び腹帯は白い布を用いるが、装飾を施した布を用いることもできる。
また、烏帽子に左右のゴム帯の一端部を固着し、ゴム帯を顎に引っ掛けて他端部を面ファスナーで締着することによって遺体の口が開くのを防ぐようにすることもできる。
【符号の説明】
【0023】
10 遺体用衣料
11 烏帽子
12 両帯
12A 袋部分
13 目隠し布
14 腹帯
14A 袋部分
20 遺体
21 頭部
22 胸部
23 腹部
24 耳
25 肘関節
26 顔
30 ドライアイス