【実施例1】
【0018】
実施例1に係る運搬用台車につき、
図1から
図6を参照して説明する。以下、
図2の紙面左側を運搬用台車の正面側(前方側)として説明する。また、
図2の紙面左右方向を運搬用台車の長手方向として説明する。また、
図3の紙面左右方向を運搬用台車の左右方向(短手方向)として説明する。
【0019】
図1を参照して、運搬用台車1は、前車輪2,2と、後車輪3,3と、中間車輪4,4と、前車輪2,2が取りけられた前車輪側支持部材5、後車輪3,3及び中間車輪4,4が取り付けられた連結フレーム6、連結フレーム6上に支持され荷物が載置される載置体8、連結フレーム6を上下に昇降させる昇降機構9とから主に構成されている。
前車輪2,2及び後車輪3,3は、前車輪側支持部材5及び連結フレーム6にそれぞれ略水平方向に旋回可能に軸支された旋回車輪(
図3参照。)であり、中間車輪4,4は長手方向に向いて連結フレーム6に固定的に取り付けられた中間車輪である。
【0020】
前車輪側支持部材5は、下方に前車輪2,2が取り付けられ、左右方向に延在する前車輪プレート51と、前車輪プレート51にネジ締結等により固着され上方に延びる断面角形状の支柱52と、支柱52の上方にネジ締結等により取り付けられた把持フレーム53により主に構成されている。なお、支柱52の断面形状は、角形状に限定されず、例えば円形状であってもよい。但し、後述するように、回動プレート82,82を2枚のプレートで構成する場合には、当該回動プレート82,82の配置・取付、回動のためのガイドが容易となるから、当該支柱52は、断面の左右が平面である形状であることが好ましい。
【0021】
連結フレーム6は、下方に後車輪3,3が取り付けられ、左右方向に延在する後車輪プレート61と、前車輪プレート51にネジ締結等により固着され上方に延びる断面角形状の支柱62と、支柱62の上方にネジ締結等により取り付けられた把持フレーム63、下方に中間車輪4,4が取り付けられ、左右方向に延在する中間車輪プレート64と、前車輪プレート51、後車輪プレート61及び中間車輪プレート64を連結する連結杆65、連結杆65の前方に固設された断面ロ字状の筒状部66、後方に固設された断面ロ字状の筒状部により主に構成されている。後方の筒状部は、後方の筒状部を中心として連結杆65が回動可能に支柱62に取り付けられている。また、中間車輪プレート64は連結杆65に相対移動不能に固着されている。
【0022】
図4を参照し、前方の筒状部66(案内部)は支柱52に対して上下方向に相対移動可能に取り付けられている。筒状部66には後述する枢動ピン54に干渉しないように上下方向に延びる長孔68が形成されている。なお、筒状部66は、断面コ字状の部材と平板状の部材を組み合わせて断面ロ字状としてもよいし、一部材の角筒から構成してもよい。前者は、支柱52に後付できることから好ましく、後者は、強度や製造を簡略化できることから好ましい。また、筒状部66は、周方向に連続する筒でなくとも、上下方向にスリットが形成された断面略C字状であってもよく、例えばリップ溝形鋼(C形鋼)により構成してもよい。さらに、筒状部66と支柱52との間に樹脂等からなるスライドブッシュを介装してもよい。スライドブッシュを用いることで筒状部66と支柱52との相対移動が円滑となる。
【0023】
載置体8は、略矩形の平板状の台板81と、台板81の前方先端側に取り付けられ台板81を枢支するための一対の回動プレート82,82により主に構成されている。一対の回動プレート82,82は、略L字形に形成されており、L字の短手側に後述する開口83,83等が形成されており、L字の長手側は締結等により台板81に固定されている。また、回動プレート82,82は筒状部66の左右の面に沿って当該左右の面に略面接した状態で配置されている(
図3、
図4参照。)。なお、
図4、
図5では、台板81は切断面により示している。
【0024】
また、台板81が略水平状態のときには、台板81の下部は、前車輪プレート51、後車輪プレート61、中間車輪プレート64に当接する位置関係とされており、台板81の荷重は、前車輪プレート51、後車輪プレート61、中間車輪プレート64により支持されている。また、台板81が略鉛直状態のときに、台板81が倒れないように、把持フレーム53と台板81との相対移動を防止する機構を設けることが望ましい。例えば、把持フレーム53にフック部、台板81に被フック部を設けておき、フック部と被フック部とを係合させるようにすればよい。
【0025】
昇降機構9は、支柱52の左右方向から僅かに突出する枢動ピン54と、回動プレート82,82に設けられ枢動ピン54を軸支する円形の開口83,83(被枢動部)と、筒状部66の後方側かつ連結杆65の上方側で両者の交わる位置近傍で、筒状部66あるいは連結杆65の少なくとも何れか一方に固設され支柱52の左右方向から僅かに突出するガイドピン67と、回動プレート82,82に設けられガイドピン67をガイドする下方に凸状とされた湾曲形状の長孔84,84(ガイド溝)とから主に構成されている。
図4に示されるように、台板81が略水平状態のときに、長孔84,84は略水平方向に延在するように配置されかつ略鉛直軸に対して略線対称な配置・形状とされている。
【0026】
ここで、枢動ピン54及びガイドピン67におけるピンは少なくとも位置を定める機能を有するものを意味する。また、ガイド溝の一例として長孔84,84を例示しているが、ガイド溝は溝状の形状によりガイドする機能を有するものを意味し、孔形状に限られない。また、ガイドピン67の外径は長孔84,84の幅と略等しく形成され、ガイドピン67が長孔84,84の内壁に沿って移動する例について説明するが、ガイドピンはガイド溝の壁に沿ってガイドされるものであればよい。
【0027】
次いで、主に
図2、
図5を参照して動作について説明する。
図2(A)、
図5(A)に示される荷物等を載置する運搬用台車1の使用状態では、載置体8は地面に略平行状態とされている。この状態では、前車輪2,2は地面から僅かに離間し、後車輪3,3と中間車輪4,4とが地面に接地する。言い換えると、後車輪3,3の下と中間車輪4,4の下とを結ぶ線よりも前車輪2,2の下が上方に位置することを意味する。以下、単に、地面との接地乃至離間として説明する。また、前方側に荷物が多く載置されたときには、前車輪2,2と中間車輪4,4とが地面に接地している。いずれのときにも、固定的に取り付けられた中間車輪4,4が接地しているため、運搬用台車1の直進性が担保されている。このときガイドピン67は長孔84の後端に位置している。また、枢動ピン54は長孔68の上端に位置している。
【0028】
運搬用台車1を
図2(A)、
図5(A)に示される使用状態から、台板81を回動させることにより、ガイドピン67が長孔84にガイドされ筒状部66及び連結杆65の前方側は支柱52に対して上方に持ち上げられる。この動作に伴い、中間車輪プレート64及び中間車輪4,4は上方に持ち上げられ、
図2(C)、
図5(C)の状態において前車輪2,2、中間車輪4,4、後車輪3,3の下端が略同一平面上に位置し、
図2(D)、
図5(D)の状態において、中間車輪4,4は地面から僅かに離間し、前車輪2,2と後車輪3,3とが地面に接地している。
図2(D)、
図5(D)の状態では、旋回車輪である前車輪2,2と後車輪3,3が接地しているため旋回性が高く、かつ、台板81が略鉛直状態とされているため、複数の運搬用台車1の互いの一部を重ねて収容するネスティング、具体的には隣接する運搬用台車1,1・・の前車輪プレート51,51・・、後車輪プレート61,61・・、中間車輪プレート64,64・・を前後方向に並べて配置・収容するネスティングを行うことができる(
図6を参照。)。
一方、運搬用台車1を収容した状態から載置体8を略鉛直状態から略水平状態に回動させることにより運搬用台車1を使用状態とすることができる。この載置体8を略鉛直状態から略水平状態に回動させる動作に応じて中間車輪4,4を、前車輪2,2よりも下方に位置させることができる。
【0029】
このように、回動プレート82,82は、回動時に、支柱52の枢動ピン54に対して相対的に枢動させられるとともに、回動プレート82,82は、連結フレーム6のガイドピン67にガイドされるため、長孔84の形状を変えることで載置体8の回動に伴う連結フレーム6の上下動の移動軌跡を変えることができ、載置体8の持ち上げ動作に伴う連結フレーム6の上下動の設計自由度が高い。
また、長孔84とガイドピン67によるガイドであるため、リンク機構のように、回動時に外部に露出して移動する部位がほとんどないため、回動時に昇降機構9に他の物を巻き込む虞がない。さらに、昇降機構9は台板81の前方側の切り欠き凹部81Aの壁が左右両側に対向しているため、回動時に昇降機構9が他の物を巻き込む虞を少なくしている。
【0030】
また、長孔84は、載置体8が略水平状態において略水平方向に延在するように設けられている。載置体8を回動させる際に、載置体8を略鉛直状態に近づけると長孔84も略鉛直方向に延在することとなり、この状態では、載置体8の回動量に対する連結フレーム6の上方への移動量が小さくなる。そのため、略鉛直状態において載置体8の転倒を弱い力で防ぐことができる、さらに、載置体8を略鉛直状態まで回動させる際に、前車輪側支持部材5の把持フレーム53に急激に衝突することを抑制することが容易である。
【0031】
さらに、長孔84は、湾曲形状であるため、載置体8の回動に伴う連結フレーム6の移動を円滑に行うことができる。さらに、長孔84は、枢動ピン54からの距離が連続的に変化する湾曲形状としているため、載置体8の回動量と連結フレーム6の上下移動量との関係を非線形にしつつ、載置体8の回動に伴う連結フレーム6の移動を円滑に行うことができる。
【0032】
また、長孔84は、載置体8が略水平状態において略水平方向に延在するとともに下方に凸の湾曲形状であるため、同略水平方向に延在するとともに直線形状のものに比較し、載置体8を略水平状態から回動させる直後には、ガイドピン67が長孔84に落ち込むようになり、載置体8の回動量に対する連結フレーム6の上方への移動量が比較的小さく、連結フレーム6の上方への移動量が小さい分、高さの低い位置にある荷重の大きな状態の載置体8を簡単に持ち上げることができる。
さらに、長孔84の湾曲形状は、載置体8が略水平状態において下方に凸であるため、載置体8が略鉛直状態において、ガイドピン67の上方の部位67aが長孔84の斜め下方と接するため、略鉛直状態において載置体8の位置が安定する(
図5(D)参照。)。
【0033】
支柱52に遊嵌された筒状部66には枢動ピン54が貫通する長孔68が形成されているため、枢動ピン54とガイドピン67とを近くに配置でき、昇降機構9をコンパクトにすることができる。結果として、昇降機構9が他の物を巻き込む虞を少なくしている。さらに、載置体8が略水平状態において、長孔84と長孔68とが一部重複する配置関係としているので、運搬用台車1の使用時に、当該長孔84と長孔68との重なりを確認することで、昇降機構9が正しい位置(筒状部66が所定の下方位置)にあるのかを確認することができる。
【0034】
また、回動プレート82,82はプレート状の部材であるため、開口83,長孔84を設けることが簡単であり、結果として、昇降機構9をコンパクトに構成できる。また、一対の回動プレート82,82を枢動ピン54及びガイドピン67の左右方向から配置・取付すればよいため、組み立てが簡単である。
【0035】
変形例1−1
実施例1では、枢動ピン54が支柱52に設けられ、かつ、枢動ピン54を軸支する開口83,83が回動プレート82,82に設けられる例について説明したが、枢動ピンが回動プレート82,82間を左右方向に連結して設けられ、かつ、該枢動ピンを軸支する開口が支柱52の左右の壁部に設けられるものであってもよい。
【0036】
変形例1−2
実施例1では、ガイドピン67が連結フレーム6に設けられ、かつ、長孔84,84が回動プレート82,82に設けられる例について説明したが、ガイドピンが回動プレート82,82間を左右方向に連結して設けられ、かつ、長孔が連結フレーム6(例えば連結杆65)の左右の壁部に設けられるものであってもよい。
【実施例2】
【0037】
次に、実施例2に係る運搬用台車につき、
図7を参照して説明する。実施例2は実施例1と昇降機構9’の構成が主に異なっている。なお、実施例1と同一構成で重複する構成を省略する。
【0038】
昇降機構9’は、筒状部70に固設され筒状部70の左右方向から僅かに突出する枢動ピン71,71と、回動プレート85,85に設けられ枢動ピン71,71を軸支する円形の開口83,83(被枢動部)と、前輪側支持部材5’の支柱52の左右方向から僅かに突出する長さのガイドピン57と、回動プレート85,85に設けられガイドピン57をガイドする台板81が略水平状態のときに左斜め下方に凸状とされた湾曲形状の長孔87,87(ガイド溝)とから主に構成されている。
図7に示されるように、台板81が略水平状態のときに、長孔87,87は略水平方向に延在するように配置され、
図7の紙面において枢動ピン71を基準として、第三象限に位置円弧が延在する形状とされている。また、長孔87,87の前方先端側の端部は曲線状の部位から直線状の平坦部87aが連なっており、この平坦部87aは、台板81が略鉛直状態のときに、長孔87,87の下方側には略水平方向に延びる位置関係とされている。また、筒状部70の左右下方には、ガイドピン57との干渉を防ぐ長孔72,72が形成されている。
【0039】
載置体8’を
図7(A)に示される略水平状態から回動させることにより、ガイド溝である長孔87,87にガイドピン57がガイドされ、ガイドピン57と枢動ピン71との距離が徐々に離れ、この動作に伴って、支柱52が徐々に下方に移動させられることとなる(
図7(B)を参照。)。載置体8’を
図7(C)に示される略鉛直状態まで、回動させると、中間車輪4,4が地面から離れ、運搬用台車1は旋回性に優れ、ネスティグ可能となる。このとき、ガイドピン57が長孔87,87の略水平状態とされた平坦部87a,87aの上部に下方から当接し載置体8’の荷重を支持するため、載置体8’が略鉛直状態において安定する。
【0040】
また、回動プレート85,85を略L字形状として、載置体8’が略水平状態のときに、その内側の角部が支柱52の近傍かつ略鉛直、長孔87,87が支柱52よりも前方に突出する配置構成としているため、台板81の先端側に突出する部位が少なく、載置面を広く確保できる。
【0041】
また、載置体8’を
図7(A)に示される略水平状態から回動させることにより、回動プレート85,85及び連結杆65も僅かに上方に持ち上げられる構造であるため、連結フレーム6’の後車輪3,3側の筒状部における回動角が小さくできる。
【0042】
変形例2−1
実施例2では、枢動ピン71,71が筒状部70に設けられ、かつ、枢動ピン71,71を軸支する開口86,86が回動プレート85,85に設けられる例について説明したが、枢動ピンが回動プレート82,82間を左右方向に連結して設けられ、かつ、該枢動ピンを軸支する開口が筒状部70の左右の壁部に設けられるものであってもよい。なお、この場合には、枢動ピンが支柱に干渉しないように配置構成する必要があることは言うまでもない。
【0043】
変形例2−2
実施例2では、ガイドピン57が支柱52に設けられ、かつ、長孔87,87が回動プレート85,85に設けられる例について説明したが、ガイドピンが回動プレート82,82間を左右方向に連結して設けられ、かつ、長孔が支柱52の左右の壁部に設けられるものであってもよい。この場合には、ガイドピンが支柱に干渉しないように配置構成する必要があることは言うまでもない。
【0044】
なお、載置体8が略水平状態のときに、長孔87,87を略水平状態となるように配置した作用効果、長孔87,87を湾曲形状とした作用効果、一対の回動プレート85,85を設けた作用効果は実施例1と同様である。
【0045】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0046】
例えば、実施例では、前車輪2,2、後車輪3,3、中間車輪4,4が各2輪である例について説明したが、前車輪、後車輪、中間車輪はそれぞれ少なくとも1輪あればよい。
また、運搬用台車1の使用時に前車輪2,2が地面から僅かに離れる例について説明したが、少なくとも載置体8を略鉛直状態としたときに中間車輪4,4が地面から僅かに離れるものであればよく、載置体8を略水平態とした時に前車輪2,2、後車輪3,3、中間車輪4,4の全てが接地するものであってもよい。