特許第6645885号(P6645885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6645885定着ベルト用ポリイミド溶液、定着ベルトの製造方法および定着ベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645885
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】定着ベルト用ポリイミド溶液、定着ベルトの製造方法および定着ベルト
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20200203BHJP
   B29C 41/22 20060101ALI20200203BHJP
   B29C 41/36 20060101ALI20200203BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20200203BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20200203BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20200203BHJP
   B29K 79/00 20060101ALN20200203BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20200203BHJP
【FI】
   G03G15/20 515
   B29C41/22
   B29C41/36
   B32B5/18
   B32B27/34
   C08G73/10
   B29K79:00
   B29L23:00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-56997(P2016-56997)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-173422(P2017-173422A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 耕
(72)【発明者】
【氏名】吉野 文子
(72)【発明者】
【氏名】松下 睦
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗紀
(72)【発明者】
【氏名】繁田 朗
(72)【発明者】
【氏名】越後 良彰
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−064122(JP,A)
【文献】 特開2007−292849(JP,A)
【文献】 特開2004−204119(JP,A)
【文献】 特開2009−091457(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/073766(WO,A1)
【文献】 特開2010−238562(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0146542(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
B29C 41/22
B29C 41/36
B32B 5/18
B32B 27/34
C08G 73/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドに対する良溶媒と貧溶媒とを含有するポリイミド溶液であって、前記ポリイミドが、主鎖中にオキシアルキレンユニットおよび/またはシロキサンユニットを含むことを特徴とする定着ベルト用ポリイミド溶液。
【請求項2】
請求項1記載のポリイミド溶液を、基材表面に塗布後、乾燥することにより多孔質ポリイミド被膜を形成する工程を含む定着ベルトの製造方法。
【請求項3】
基材表面に多孔質ポリイミド被膜が積層一体化されている定着ベルトであって、以下の特徴を有する定着ベルト。
1) 前記ポリイミドの主鎖中に、オキシアルキレンユニットおよび/またはシロキサンユニットを含む。
2) 前記多孔質被膜の平均気孔径が10nm以上、2000nm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置において転写紙への画像定着に用いる定着ベルト用ポリイミド(PI)溶液、これを用いた定着ベルトの製造方法、および定着ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置における転写紙への画像定着法として、ベルト定着方式が知られている。ベルト定着方式に用いる定着ベルトとしては、耐熱性や機械強度に優れたPI樹脂や金属等からなる単層のベルト、あるいは、これらの単層ベルトを内層として、これにフッ素樹脂製の外層を積層した多層ベルトが知られているが、PI樹脂等剛性の高い材料を用いたベルトはベルト全体としてのクッション性に劣るためトナー定着性が不十分となり、鮮明なトナー画像を得難いという問題があった。 このような問題を解決するため、PI樹脂ベルト等の基材の外周面に、シリコーンゴム又はフッ素ゴム製の外層を設けた多層定着ベルトが実用化されている。 これらの積層ベルトでは、ベルト表面のクッション性が向上してトナー定着性が良好になるものの、使用しているシリコーンゴム又はフッ素ゴムの耐熱性が充分ではないため、定着ベルトとして長期間使用した場合にシリコーンゴムまたはフッ素ゴムの熱劣化が起こり、トナー定着性が低下するという問題があった。そこで、特許文献1には、シリコーンゴムまたはフッ素ゴムに替えて、特定のPI溶液を基材の外周面に塗布、乾燥、イミド化することにより、基材上に耐熱性の高い多孔質PI被膜を形成し、これをクッション層として用いる定着ベルトが提案されている。この方法により、簡単に多孔質PI被膜を得ることはできるが、形成された多孔質PI被膜の平均気孔径は2000nm超と大きいため、表面の平滑性が損なわれることがあり、均一なクッション性を確保することは容易ではなかった。このような問題を解決するため、特許文献2〜4には、特定のPI溶液を基材の外周面に塗布、乾燥後、超臨界二酸化炭素等の抽出溶媒を用いて、塗膜中に含まれる溶媒を抽出除去することにより、平均気孔径が2000nm以下の微細な気孔が形成された多孔質PI被膜からなる定着ベルトが提案されている。しかしながら、この方法では、超臨界二酸化炭素のような抽出溶媒を使用する必要があり、工程が複雑となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5191634号公報
【特許文献2】特開2014−123119号公報
【特許文献3】特開2014−123121号公報
【特許文献4】特開2014−215610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、耐熱性に優れ、かつ良好な表面平滑性を有する多孔質PI被膜が簡単に形成できる定着ベルト用PI溶液、これを用いた定着ベルトの製造方法、および定着ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
PI溶液の化学構造および組成を特定のものとすることで、上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
本発明は下記を趣旨とするものである。
<1> アミド系溶媒とエーテル系溶媒とを含有するポリイミド前駆体溶液であって、前記ポリイミドが、主鎖中にオキシアルキレンユニットおよび/またはシロキサンユニットを含むことを特徴とする定着ベルト用PI溶液。
<2> 前記PI溶液を、基材表面に塗布後、乾燥することにより多孔質PI被膜を形成する工程を含む定着ベルトの製造方法。
<3> 基材表面に多孔質PI被膜が積層一体化されている定着ベルトであって、以下の特徴を有する定着ベルト。
1) 前記PIの主鎖中に、オキシアルキレンユニットおよび/またはシロキサンユニットを含む。
2) 前記多孔質被膜の平均気孔径が10nm以上、2000nm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のPI溶液を基材上に塗布、乾燥することにより得られる多孔質PI被膜は、微細な気孔が多数形成されているため、クッション性が良好であり、かつ表面の平滑性が優れている。この多孔質PI被膜を、基材上に積層一体化することにより、複写機用の定着ベルトとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明では、PI溶液を用いる。ここで、PIは、主鎖にイミド結合を有する耐熱性高分子またはその前駆体であり、通常、モノマ成分であるジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを重縮合することにより得られる。 これらのPIには、通常のPI(可溶性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、非熱可塑性ポリイミド等)以外に、PI変性体であるポリアミドイミド、ポリエステルイミド、PI前駆体等が含まれ、PI前駆体が好ましく用いられる。
【0010】
PI前駆体とは、100℃以上の温度で加熱することによりイミド結合を生成するものであり、本発明においては、ポリアミック酸(以下「PAA」と略記することがある)が好ましく用いられる。 PAAは、溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるものである。 なお、PAAは、部分的にイミド化されていてもよい。
【0011】
PI前駆体(例えばPAA)は、主鎖中にオキシアルキレンユニットおよび/またはシロキサンユニットを含む。このようにすることにより、熱イミド化して得られるPIの主鎖中に、オキシアルキレンユニットおよび/またはシロキサンユニットを含ませることができる。
【0012】
オキシアルキレンユニットとしては、具体的には、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、オキシブチレンユニット等が挙げられる。 オキシアルキレンユニットを含むPAAは、例えば、オキシアルキレンユニットを有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「TA−1」と略記することがある)やオキシアルキレンユニットを有するジアミン(以下、「DA−1」と略記することがある)と、他のオキシアルキレンユニットを有しないテトラカルボン酸二無水物(以下、「TA」と略記することがある)やジアミン(以下、「DA」と略記することがある)とを共重合させることにより得られる共重合PAA(以下、「PAA−1」と略記することがある)である。
【0013】
シロキサンユニット含むPAAは、例えば、シロキサンユニットを有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「TA−2」と略記することがある)やシロキサンユニットを有するジアミン(以下、「DA−2」と略記することがある)と、TAやDAとを共重合させることにより得られる共重合PAA(以下、「PAA−2」と略記することがある)である。
【0014】
PAA−1とPAA−2とは、混合して用いることもできる。
【0015】
PAA溶液には、溶質であるPAAを溶解する良溶媒と、溶質には貧溶媒となる溶媒とを混合した混合溶媒が含有されている。ここで、良溶媒とは、25℃において、PAAに対する溶解度が1質量%以上の溶媒をいい、貧溶媒とは、25℃において、PAAに対する溶解度が1質量%未満の溶媒をいう。貧溶媒は、良溶媒よりも高沸点であることが好ましい。また、その沸点差は、5℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。
【0016】
良溶媒としては、アミド系溶媒や尿素系溶媒が好ましく用いられる。アミド系溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP 沸点:202℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF 沸点:153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc 沸点:166℃)等が挙げられる。また、尿素系溶媒としては、例えば、テトラメチル尿素(TMU 沸点:177℃)、ジメチルエチレン尿素(沸点:220℃)が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、NMPおよびDMAcが好ましい。
【0017】
貧溶媒としては、エーテル系溶媒が好ましく用いられる。エーテル系溶媒の具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:162℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:216℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:275℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、トリエチレングリコール(沸点:287℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:215℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:175℃)等の溶媒を挙げることができる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
【0018】
混合溶媒中における貧溶媒の配合量としては、混合溶媒質量に対し、30〜95質量%とすることが好ましく、50〜90質量%とすることがより好ましい。このようにすることにより、基材への塗布後の乾燥工程において、効率よく相分離が起こり、高い気孔率を有する多孔質PI被膜を得ることができる。
【0019】
PAA−1溶液としては、モノマであるテトラカルボン酸二無水物(TA−1およびTAの混合物、またはTAのみ)とジアミン(DA−1およびDAの混合物、またはDAのみ)とを略等モルで配合し、それを前記混合溶媒中、10〜70℃の温度で重合反応させて得られる溶液を用いることができる。ここで、TA−1またはDA−1の使用量としては、0.5〜20モル%とすることが好ましく、1〜10モル%とすることがより好ましい。前記モル%は、以下の式に従って算出された値をいう。
TA−1の使用量(モル%)=(TA−1のモル数/(TA−1のモル数+TAのモル数))*100
DA−1の使用量(モル%)=(DA−1のモル数/(DA−1のモル数+DAのモル数))*100
【0020】
TA−1の具体例としては、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)、ジエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、トリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、テトラエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリットアミド、ジエチレングリコールビスアンヒドロトリメリットアミド、トリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリットアミド、テトラエチレングリコールビスアンヒドロトリメリットアミド、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリットアミド、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ジプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、トリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、テトラプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリットアミド、ジプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリットアミド、トリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリットアミド、テトラプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリットアミド、ポリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリットアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、TMEGが好ましい。
【0021】
TAの具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、及び3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、PMDAおよびBPDAが好ましい。
【0022】
DA−1の具体例としては、エチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、プロピレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、ジプロピレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、トリプロピレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、テトラプロピレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、ポリエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテルが好ましい。これらの化合物は市販品を利用することができる。
【0023】
DAの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。 これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、DADE、BAPPが好ましい。
【0024】
PAA−2溶液としては、モノマであるテトラカルボン酸二無水物(TA−2およびTAの混合物、またはTAのみ)とジアミン(DA−2およびDAの混合物、またはDAのみ)とを略等モルで配合し、それを前記混合溶媒中、10〜70℃の温度で重合反応させて得られる溶液を用いることができる。ここで、TA−2またはDA−2の使用量としては、0.5〜20モル%とすることが好ましく、1〜10モル%とすることがより好ましい。前記モル%は、以下の式に従って算出された値をいう。
TA−2の使用量(モル%)=(TA−1のモル数/(TA−2のモル数+TAのモル数))*100
DA−2の使用量(モル%)=(DA−1のモル数/(DA−2のモル数+DAのモル数))*100
【0025】
TA−2の具体例としては、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルシロキサン二無水物、ポリ(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルシロキサン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラエチルシロキサン二無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
DA−2の具体例としては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等、および下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかで、下記一般式(1)において、R1およびR2がトリメチレン基、R3、R4、R5およびR6がメチル基、nは3〜100であるもの(以下、「DASM」と略記することがある)が好ましく、これらの中で、数平均分子量が、300〜5000のものがより好ましい。 これらのDASMは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、DASMは市販品を用いることができる。
【0027】
【化1】

(ただし、式中nは1以上の整数を示す。また、R1およびR2は、それぞれ同一または異なった、低級アルキレン基またはフェニレン基を示し、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ同一または異なった、低級アルキル基、フェニル基またはフェノキシ基を示す。)
【0028】
以上、PAAの例について述べたが、PAA以外のPI、例えば可溶性PIやポリアミドイミド等についても、PAAと同様の方法を用いることができる。
【0029】
PI溶液は、良溶媒中で重合反応して溶液を得た後、これに貧溶媒を加える方法や、貧溶媒中で重合反応して懸濁液を得た後、これに良溶媒を加える方法で得ることもできる。
【0030】
PI溶液におけるPIの濃度は、3〜45質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0031】
PI溶液の30℃における粘度は0.01〜100Pa・sの範囲が好ましく、0.1〜50Pa・sがより好ましい。
【0032】
PI溶液には、必要に応じて、各種界面活性剤やシランカップリング剤のような公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。また、必要に応じて、PI溶液に、PI以外の他の高分子を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0033】
PI溶液を、基材の表面に塗布し、乾燥することにより、多孔質PI被膜を形成させ、本発明の定着ベルトを得ることができる。 ここで、基材の材質としては、PI樹脂等の耐熱性樹脂やステンレス、ニッケル等の金属を用いることができる。また、基材の形状に制限はないが、シームレスのベルト状(円筒状)とすることが好ましい。これらのベルト状基材は市販品を用いることもできる。 これら基材の厚みに制限はないが、通常、50〜200μm程度である。なお、基材としてPI樹脂製のベルトを用いる場合は、例えば、特許第5191634号公報等に開示されているように、PI樹脂製ベルトを成形する工程において、基材PI樹脂を未硬化の状態とし、この表面に、本発明のPIワニスを塗布、乾燥して塗膜を形成させた後、基材である未硬化のPI樹脂製ベルトと一括して熱硬化することが好ましい。 このようにすることにより、多孔質PI被膜と基材であるPI樹脂製ベルト間の良好な密着性を確保することができる。
【0034】
基材へのPI溶液の塗布方法としては、ディップコータ、バーコータ、フローコータ、スプレーコータ、ディスペンサ等を用いる公知の方法で行うことができる。
【0035】
前記乾燥工程には、塗膜に含まれる溶媒を揮発させることにより相分離を誘起させて多孔質PAA被膜を形成させる工程1と前記多孔質PAA被膜を熱イミド化して多孔質PI被膜とする工程2とが含まれる。 工程1の温度としては、100〜200℃程度が好ましく、工程2の温度としては、350℃未満の温度、例えば250〜320℃で行うことが好ましい。
【0036】
前記のようにして得られた多孔質PI被膜は、その平均気孔径が10nm以上、2000nm以下である。
平均気孔径をこのような範囲とすることにより、平滑な多孔質PI被膜とすることができ、良好かつ均一なクッション性を確保することができる。ここで、平均気孔径は、PI被膜の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を倍率5000〜20000倍で取得し、市販の画像処理ソフトにより、気孔部とPI部分とに分離して解析することにより確認することができる。
【0037】
多孔質PI被膜の平滑性は、JIS−B0601に基づくRzを測定することにより評価することができる。 本発明の多孔質PI被膜のRzは、1000nm以下とすることが好ましい。このようにすることにより、多孔質PI被膜表面の良好な平滑性を確保することができる。
【0038】
多孔質PI被膜の厚みに制限はないが、通常50〜500μm程度である。
【0039】
多孔質PI被膜の気孔率は20〜95体積%が好ましく、40〜80体積%がより好ましい。PI被膜の気孔率は、PI被膜の見掛け密度と、被膜を構成するPIの真密度(比重)とから算出される値である。詳細には、気孔率(体積%)は、PI被膜の見掛け密度がA(g/cm)、PIの真密度がB(g/cm)の場合、次式により算出される。
気孔率(体積%) = 100−A*(100/B)
【0040】
多孔質PI被膜を形成するPIのTg(ガラス転移温度)は180℃以上であることが好ましく、200℃以上がより好ましい。このようにすることにより、良好な耐熱性を確保することができる。 ここで、Tgは、DSC(示差熱分析)で測定した値を用いることができる。
【0041】
本発明の定着ベルトにおいては、定着ベルトとしての離形性を向上させるために多孔質PI被膜の表面にPTFE、PFA等のフッ素樹脂被膜を積層することもできる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
得た。
【0043】
<実施例1>
ガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、DADE:0.97モル、PPGME:0.03モル (分子量2000)、DMAcおよびテトラエチレングリコールジメチルエーテルからなる混合溶媒(DMAc/テトラエチレングリコールジメチルエーテルの混合比率は質量比で2/8)を投入して攪拌し、ジアミン成分を溶解した。この溶液をジャケットで30℃以下に冷却しながら、PMDA:1.01モルを徐々に加えた後、40℃で5時間重合反応させ、オキシプロピレンユニットを導入した固形分濃度が15質量%の共重合PAA溶液(S−1)を得た。
【0044】
<実施例2>
ジアミンとして、「DADE:0.97モル、DASM:0.03モル (分子量860)」を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、シロキサンユニットを導入した固形分濃度が12質量%の共重合PAA溶液(S−2)を得た。
【0045】
<実施例3>
「PMDA:1.01モル」を「BPDA:1.01モル」としたこと以外は、実施例1と同様にして、オキシプロピレンユニットを導入した固形分濃度が15質量%の共重合PAA溶液(S−3)を得た。
【0046】
<比較例1>
「DADE:0.94モル、PPGME:0.06モル」を、「DADE:1.00モル」としたこと以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度が15質量%のPAA溶液(S−4)を得た。
【0047】
<実施例4>
円筒状金型にPI溶液(ユニチカ社製UイミドワニスAR)を塗布し、100℃のオーブンの中で60分保持し、未硬化PI基材を得た。この表面に、実施例1〜3および比較例1で得られたPI溶液S1〜4を硬化後の溶液を塗布して、130℃の乾燥機の中で20分保持し乾燥することにより、PI多孔質形成用塗膜を形成した。しかる後、350℃まで60分間で昇温し、同温度で30分間保持させることにより、未硬化PI基材とPI多孔質形成用塗膜の熱硬化(イミド化)を一括して行った。 室温まで自然冷却させた後、金型より脱型を行うことにより、PI樹脂基材層(厚み:90μm)と多孔質PI層(厚み:150μm)とが積層一体化された総厚240μmの定着ベルト(P1〜P4)を得た。 得られた定着ベルトは、いずれも良好なクッション性を有していた。 P1〜P4における多孔質PI被膜の気孔率および平均気孔径を前記した方法で測定した結果を表1に示す。また、この多孔質PI被膜の平滑性を、JIS−B0601に基づくRzを測定することにより評価した結果を表1に示す。 なお、表1では、Rzが、1000nm以下の場合、「○」、1000nm超の場合、「×」、と表記した。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例で示した様に、本発明の定着ベルトにおける多孔質PI被膜は、平均気孔径が2000nm以下の微細な気孔が形成されており、そのため、多孔質PI被膜の平滑性に優れることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のPI溶液を用いて、基材ベルト表面に微細な気孔が多数形成されたPI被膜が積層された定着ベルトが得られる。本発明の定着ベルトは、複写機用の定着ベルトとして好適に用いることができる。