(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、入隅部における止水性を確保するため、入隅部に45度の角度でアンカボルトを設置し、そのアンカボルトを用いてコーナ押え部材を固定している。しかしながら、アンカボルトを45度の角度で正確に設置することは、困難でありかつ手間が掛かる。
【0005】
また、入隅部における止水性を考慮すると、止水部材を入隅部で分割(縁切り)することなく、一体的に連続した1つの止水部材で目地部を止水することが好ましい。しかし、所定の厚みおよび強度を有する止水部材を、入隅部に沿うように屈曲させて設置することは難しい。すなわち、入隅部と止水部材との間には、隙間が生じ易く、コーナ押え部材で押え付けるだけでは、確実な止水性能を発揮できない恐れがある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、目地止水構造を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、入隅部における止水性を向上させて、目地部からの水漏れを確実に防止できる、目地止水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、入隅部を有するコンクリート構造物である水路の目地部を止水する目地止水構造であって、目地部を跨ぐように設けられて、両側端部が水路の内面に固定される、可撓性を有する止水部材、および止水部材と入隅部との間に生じる隙間に設けられて、外側面が止水部材の裏面と入隅部を形成する面とに密着して隙間を閉塞させるコーナ閉塞部材を備え
、コーナ閉塞部材は、コーナ閉塞部材本体と、コーナ閉塞部材本体よりも軟質な材料で形成されて、入隅部との接地部分に設けられるコーナ凹凸吸収部とを有する、目地止水構造である。
【0009】
第1の発明では、目地止水構造は、止水部材およびコーナ閉塞部材を含み、入隅部を有するコンクリート構造物である水路の目地部を止水する。止水部材は、目地部を跨ぐように目地部の長手方向に沿って設けられて、その両側端部がアンカボルト等によって水路の内面に固定される。また、コーナ閉塞部材は、止水部材の両側端部において、入隅部と止水部材との間に設けられる。
このコーナ閉塞部材は、コーナ閉塞部材本体と、入隅部との接地部分に設けられるコーナ凹凸吸収部とを備える。そして、コーナ閉塞部材は、その外側面が止水部材の裏面と入隅部を形成する面とに密着して、止水部材と入隅部との間に生じる隙間を閉塞させる。
また、コーナ凹凸吸収部は、コーナ閉塞部材本体よりも軟質な未加硫ブチル等によって形成され、入隅部の凹凸に追従して変形する。
【0010】
第1の発明によれば、止水部材と入隅部との間に生じる隙間を閉塞させるコーナ閉塞部材を備えるので、入隅部における止水性が向上する。したがって、目地部からの水漏れを確実に防止できる。
また、止水部材が凹凸吸収部を有するので、止水部材と水路の内面とがより適切に密着され、止水性が向上する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、コーナ閉塞部材は、軟質な材料で形成されて、圧縮変形した状態で、止水部材および入隅部に密着されている。
【0012】
第2の発明では、コーナ閉塞部材は、ゴム材などの軟質な材料によって形成される。そして、入隅部と止水部材との間で圧縮変形されることで、外側面が止水部材の裏面と入隅部を形成する面とに密着して、入隅部と止水部材との間の隙間を閉塞させる。
【0013】
第2の発明によれば、コーナ閉塞部材が圧縮変形されるので、コーナ閉塞部材と止水部材および入隅部とをより適切に密着させることができる。
【0017】
第
3の発明は、第1
または第2の発明に従属し、止水部材は、止水部材本体と、止水部材本体よりも軟質な材料で形成されて、水路との接地部分に設けられる凹凸吸収部とを有する。
【0018】
第
3の発明では、止水部材は、止水部材本体と、水路との接地部分に設けられる凹凸吸収部とを備える。凹凸吸収部は、止水部材本体よりも軟質な未加硫ブチル等によって形成され、水路の凹凸に追従して変形する。
【0019】
第
3の発明によれば、止水部材が凹凸吸収部を有するので、止水部材と水路の内面とがより適切に密着され、止水性が向上する。
【0020】
第
4の発明は、第1
から第3のいずれかの発明に従属し、コーナ閉塞部材に止水部材を押し付けるコーナ押え部材をさらに備える。
【0021】
第
4の発明では、入隅部において止水部材を押え付けるコーナ押え部材をさらに備える。コーナ押え部材が止水部材をコーナ閉塞部材に押し付けることによって、コーナ閉塞部材と止水部材および入隅部とがより適切かつ均等に密着され、止水性が向上する。
【0022】
第
5の発明は、第
4の発明に従属し、コーナ押え部材は、止水部材に食い込むスパイク部を有する。
【0023】
第
5の発明では、コーナ押え部材は、スパイク部を有する。このスパイク部が止水部材に食い込むことによって、コーナ押え部材の位置ずれが防止される。
【0024】
第
6の発明は、
第4または第5の発明に従属し、コーナ押え部材は、ばね鋼によって形成される。
【0025】
第
6の発明では、コーナ押え部材は、ばね鋼によって形成される。このため、90度以外の屈曲角度を有する入隅部においても、止水部材をコーナ閉塞部材に適切に押し付けることができる。
【0026】
第
7の発明は、
第4から第6のいずれかの発明に従属し、水路の内面に止水部材の側端部を押し付ける押え部材をさらに備え、コーナ押え部材の両端部を押え部材で押え付けて固定する。
【0027】
第
7の発明では、止水部材の側端部を表面側から押え付ける押え部材をさらに備える。また、コーナ押え部材の両端部は、押え部材と止水部材との間に挟み込まれた状態で固定される。
【0028】
第
8の発明は、第
7の発明に従属し、押え部材は、板状の押え部と、押え部の側縁部から水路の内面側に突出する突起部とを有し、突起部は、押え部によって止水部材を圧縮するときの圧縮状態を示す目安となるように、突出長さが設定される。
【0029】
第
8の発明では、押え部材は、板状の押え部の側縁部から水路の内面側に突出する突起部(第1突条)を有する。この突起部の突出長さは、たとえば、押え部材を用いて水路の内面に止水部材の側端部を押し付ける際、止水部材の側端部が所定の圧縮状態になったときに、突起部の先端が水路の内面に当接ないし近接する長さに設定される。
【0030】
第
8の発明によれば、作業者は、止水部材を水路の内面に固定するときに、突起部の先端が水路の内面に当接ないし近接していることを確認することで、止水部材の側端部が水路の内面に対して適切な圧接状態で固定されたことを知ることができる。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、止水部材と入隅部との間に生じる隙間を閉塞させるコーナ閉塞部材を備えるので、入隅部における止水性が向上する。したがって、目地部からの水漏れを確実に防止できる。
【0032】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1−
図4を参照して、この発明の一実施例である目地止水構造10は、止水部材12およびコーナ閉塞部材16などを含み、入隅部102を有するコンクリート構造物である溝渠および用水路などの水路100の目地部104を止水する。
【0035】
図1−
図4に示すように、水路(コンクリート構造物)100は、コンクリート製の構造部材を連ねて構成されるものであり、構造部材同士の接合部分が目地部104である。一例として、水路100は、新幹線高架橋の床部に設けられて、除雪用のスプリンクラから散水された水、雪解け水および雨水などが流れる水路(側溝)である。そして、目地止水構造10は、老朽化した水路100の目地部104を補修するために施工されて、目地部104からの水漏れを防止する。
【0036】
具体的には、水路100は、底壁106と、底壁106の両側端部から立ち上がる側壁108とを有する開渠であって、90度の角度で屈曲する入隅部102を有する。水路100の幅は、たとえば1030mmであり、側壁108の高さは、たとえば300mmである。また、目地部104の幅(構造部材の接合部分における隙間の大きさ)は、構造部材の長手方向における伸縮などを吸収できるように設定されており、たとえば0〜30mmの間で変動する。ただし、目地止水構造10が適用される水路100の種類、用途および大きさ等は、これに限定されず、目地止水構造10は、入隅部102を有する各種の水路100に適用可能である。
【0037】
続いて、目地止水構造10の構成について説明する。目地止水構造10は、目地部104を跨ぐように設けられる止水部材12、止水部材12の側端部を押え付ける押え部材14、止水部材12と入隅部102との間に生じる隙間を閉塞させるコーナ閉塞部材16、および、入隅部102において止水部材12の側端部およびコーナ閉塞部材16を押え付けるコーナ押え部材18などを備える。以下、具体的に説明する。
【0038】
図1−
図4と共に
図5を参照して、止水部材12は、可撓性および止水性を有するシート状の部材であって、シート状の止水部材本体20と、その両側端部(接地部分)に設けられる矩形板状の凹凸吸収部22とを備える。
【0039】
止水部材本体20は、たとえば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)およびCR(クロロプレンゴム)等の弾性部材によって形成される。この実施例では、止水部材本体20は、JIS−K6253に準拠する硬度がA50(硬度50)のEPDMによって形成される。止水部材本体20の大きさは、止水する目地部104の大きさに応じて適宜設定され、この実施例では、その長さはたとえば1450mmであり、その幅はたとえば300mmである。また、止水部材本体20の両側端部20bは、中央部20aよりも厚肉とされ、止水部材本体20の両側端部20bの裏面(接地面側)には、長手方向に延びる溝部24が形成される。さらに、止水部材本体20の両側端部20bの表面には、溝部24の幅方向中央部に沿って長手方向に延びる小溝部26が形成される。この小溝部26は、止水部材12をアンカ止めする際の目印として利用される。
【0040】
止水部材本体20の溝部24には、止水部材本体20の長手方向の全長に亘って、水路100の内面との接地部分となる凹凸吸収部22が設けられる。凹凸吸収部22は、止水部材本体20よりも軟質な材料で形成され、この実施例では、粘着材料である未加硫ブチルゴムによって形成される。
【0041】
このような止水部材12は、目地部104を跨ぐように、また、目地部104の長手方向に沿って延びて、水路100の底壁106および両側壁108の内面に沿ったU字状に設置される。つまり、止水部材12は、入隅部102で分割(縁切り)されることなく、水路100の底壁106および両側壁108に亘って、一体的に連続した状態で目地部104を止水する。なお、止水部材12は、水路100の少なくとも水に浸かる部分において、目地部104を跨ぐように設置されればよい。
【0042】
また、止水部材12は、気温差などによる目地部104の幅の変動に対応できるように、その幅方向中央部分を少し撓ませた状態で設置される。そして、止水部材12の側端部(止水部材本体20の側端部20bおよび凹凸吸収部22)のそれぞれは、アンカボルト60および押え部材14などを用いて、圧縮変形されつつ水路100の内面に固定される。
【0043】
この際、水路100の内面に押し付けられる凹凸吸収部22は、水路100の内面の凹凸に追従して変形することによって、水路100の内面の凹凸を吸収し、止水部材12と水路100の内面とを隙間なく密着させる。すなわち、止水部材本体20よりも軟質な材料で形成される凹凸吸収部22を有することによって、水路100の内面に凹凸がある場合であっても、止水部材12による止水を確実なものとすることができる。特に、粘着性を有する未加硫ブチルゴムで凹凸吸収部22を形成することによって、水路100の内面に対する凹凸吸収部22の密着性が高まり、止水部材12による止水がより確実なものとなる。また、未加硫ブチルゴムで凹凸吸収部22を形成することによって、止水部材12の側端部を貫くようにアンカボルト60を設置しても、アンカボルト60の外周面に凹凸吸収部22が密着するので、この部分に隙間が生じない。
【0044】
図1−
図4と共に
図6を参照して、押え部材14は、入隅部102を除く平面部分、つまり底壁106および両側壁108のそれぞれにおいて、水路100の内面に止水部材12の側端部を押し付けるための板状の部材である。
【0045】
具体的には、押え部材14は、アルミ合金およびステンレス等の金属、または合成樹脂などの硬質な材料によって形成され、矩形長板状の押え部30を有する。押え部30の長さは、水路100の幅または側壁108の高さ等に応じて適宜設定される。
【0046】
押え部30には、長手方向に適宜の間隔で並ぶ複数の長孔状のボルト挿通孔38が形成される。また、押え部30の裏面には、その一方側縁部から水路100の内面側に向かって突出する第1突条(突起部)32と、他方側縁部から水路100の内面側に向かって突出する第2突条34とが形成される。さらに、押え部30の表面には、押え部30の幅方向に所定の間隔を隔てて2つの第3突条36が形成される。
【0047】
各突条32,34,36は、押え部30の長手方向の全長に亘って延びるように形成され、これら突条32,34,36によって押え部材14の剛性が高められる。また、第1突条32および第2突条34によって形成される溝部に対して止水部材本体20の側端部20bが嵌め込まれ(
図3参照)、第1突条32および第2突条34は、押え部材14がその幅方向にずれることを防止する規制部として機能する。さらに、第1突条32と第2突条34とは、その突出高さが異なるように形成され、これによって押え部材14が誤った方向に取り付けられることが防止される。
【0048】
さらにまた、第1突条32の突出長さは、押え部30によって止水部材12の側端部を圧縮するときの圧縮状態を示す目安となるように設定される。たとえば、第1突条32の突出長さは、押え部材14を用いて水路100の内面に止水部材12の側端部を押し付ける際、止水部材12の側端部が所定の圧縮状態になったときに、第1突条32の先端が水路100の内面に当接ないし近接する長さに設定される。作業者は、止水部材12の側端部を水路100の内面に固定するときに、第1突条32の先端が水路100の内面に当接ないし近接していることを確認することで、止水部材12の側端部が所定の圧縮状態になったこと、つまり止水部材12の側端部が水路100の内面に対して止水性を発揮する状態で適切に固定されたことを知ることができる。
【0049】
このような押え部材14は、止水部材12の両側端部のそれぞれの表面側に設置され、アンカボルト60等によって固定される。具体的には、水路100の壁面に固定されたアンカボルト60が、押え部材14のボルト挿通孔38および止水部材12の側端部に形成した孔に通される。そして、押え部材14の第1突条32の先端が水路100の内面に当接ないし近接するまで、押え部材14の表面側からナット62が締め付けられる。これによって、押え部材14と水路100の内面との間に挟まれた止水部材12の側端部が、水路100の内面に押し付けられて、所定の圧縮状態で固定される。このような押え部材14を用いることで、水路100の内面に対して止水部材12の側端部の全体を略均一に押し付けることができる。
【0050】
ここで、上述のように、止水部材12は、目地部104の長手方向に沿うように設置されるが、入隅部102では水路100の内面が90度で屈曲しているので、所定の厚みおよび強度を有する止水部材12を、入隅部102に沿うように屈曲させて設置することは難しい。すなわち、入隅部102においては、水路100の内面に止水部材12の側端部を密着させることが難しいので、入隅部102と止水部材12との間に生じた隙間から漏水してしまう恐れがある。そこで、この実施例では、コーナ閉塞部材16およびコーナ押え部材18を用いることによって、入隅部102における止水性を向上させている。
【0051】
図1−
図4と共に
図7を参照して、コーナ閉塞部材16は、止水部材12と入隅部102との間に生じる隙間を閉塞させるための部材であって、軟質な材料によって略三角柱状に形成される。具体的には、コーナ閉塞部材16は、入隅部102を形成する面に沿うように直角三角柱状に形成されるコーナ閉塞部材本体40と、入隅部102との接地部分に設けられるコーナ凹凸吸収部42とを備える。
【0052】
コーナ閉塞部材本体40は、発泡ゴムまたは発泡樹脂などの軟質な材料によって形成され、この実施例では、独立気泡型のEPDM発泡ゴムによって形成される。コーナ閉塞部材本体40の大きさは、止水部材12と入隅部102との間に生じる隙間の大きさに応じて適宜設定され、この実施例では、その高さおよび幅(直角2辺の長さ)のそれぞれが、たとえば40mmであり、その奥行き(止水部材12の幅方向における長さ)が、たとえば60mmである。
【0053】
コーナ凹凸吸収部42は、コーナ閉塞部材本体40の外側面のうち、入隅部102を形成する面と対向する2面の、両端部を除く略全面に設けられる。ただし、この2面に設けるコーナ凹凸吸収部42の範囲は、コーナ凹凸吸収部42の変形量などに応じて適宜変更可能であり、たとえばこの2面の全面に設けることもできる。コーナ凹凸吸収部42は、コーナ閉塞部材本体40よりも軟質な(つまり柔軟性を有する)材料、たとえば未加硫ブチルゴムまたは半独立(半連続)気泡型のEPDM発泡ゴム等によって形成される。この実施例では、コーナ凹凸吸収部42は、粘着材料である未加硫ブチルゴムによって形成される。コーナ凹凸吸収部42の厚さは、たとえば5mmである。
【0054】
このようなコーナ閉塞部材16は、止水部材12の両側端部において、入隅部102と止水部材12との間に設置される。そして、コーナ押え部材18などを用いて、入隅部102と止水部材12との間で圧縮変形されることで、外側面が止水部材12の裏面と入隅部102を形成する2面とに密着して、入隅部102と止水部材12との間の隙間を閉塞させる。
【0055】
この際、入隅部102に押し付けられるコーナ凹凸吸収部42は、入隅部102を形成する面の凹凸に追従して変形することによって、入隅部102の凹凸を吸収し、コーナ閉塞部材16の外側面と入隅部102とを隙間なく密着させる。すなわち、コーナ閉塞部材本体40よりも軟質な材料で形成されるコーナ凹凸吸収部42を有することによって、入隅部102を形成する面に凹凸がある場合であっても、コーナ閉塞部材16による止水を確実なものとすることができる。特に、粘着性を有する未加硫ブチルゴムでコーナ凹凸吸収部42を形成することによって、入隅部102に対するコーナ凹凸吸収部42の密着性が高まり、コーナ閉塞部材16による止水がより確実なものとなる。
【0056】
また、コーナ閉塞部材本体40が止水部材12の湾曲部に沿うように圧縮変形され、その上、コーナ閉塞部材16と止水部材12との当接部には凹凸吸収部22が介在することから、コーナ閉塞部材16の傾斜面(表面)と止水部材12の裏面とは、隙間なく適切に密着される。
【0057】
図1−
図4と共に
図8を参照して、コーナ押え部材18は、止水部材12をコーナ閉塞部材16に押し付けて、コーナ閉塞部材16と止水部材12および入隅部102とを密着させるための板状の部材である。
【0058】
コーナ押え部材18は、アルミ合金およびステンレス等の金属、または合成樹脂などの硬質な材料によって形成される。この実施例では、コーナ押え部材18は、ステンレス製のばね鋼によって形成され、矩形長板状のコーナ押え部50を有する。コーナ押え部50の長さは、たとえば230mmであり、その幅は、たとえば38mmである。
【0059】
コーナ押え部50の両端部には、先端側が開放された長孔であるボルト挿通孔52が形成される。また、コーナ押え部50長手方向中央部の一方側縁には、裏面側(止水部材12側)に突出する2つの三角板状のスパイク部54が形成される。スパイク部54は、止水部材12を押え付けるときに、止水部材12に食い込むことによって、コーナ押え部材18が所定位置からずれてしまうことを防止する。
【0060】
このようなコーナ押え部材18は、止水部材12の入隅部102部分の両側端部において、湾曲した状態で、止水部材12の表面側に設置される。そして、コーナ押え部材18の両端部は、止水部材12と押え部材14との間に挟み込まれ、押え部材14によって押え付けられた状態で、ボルト挿通孔52に通したアンカボルト60等によって固定される。これによって、コーナ押え部材18と入隅部102との間に挟まれた止水部材12およびコーナ閉塞部材16が圧縮変形されて、コーナ閉塞部材16の外側面が止水部材12の裏面と入隅部102を形成する2面とに密着する。
【0061】
このようなコーナ押え部材18を用いることで、コーナ閉塞部材16の傾斜面全体に止水部材12を略均一に押し付けることができ、コーナ閉塞部材16と止水部材12および入隅部102とをより適切かつ均等に密着させることができる。また、コーナ押え部材18を固定する際、アンカボルト60に対するナット62の締め付けは、コーナ押え部材18の片側から順に行うが、コーナ押え部材18に形成するボルト挿通孔52を長孔としておくことにより、止水部材12およびコーナ閉塞部材16の圧縮増加に伴ってコーナ押え部材18が追従し、押圧力を増すことが可能となる。
【0062】
続いて、
図9および
図10を参照して、目地止水構造10の施工方法の一例について説明する。
【0063】
水路100の目地部104に目地止水構造10を施工する際には、先ず、
図9(A)に示すように、止水部材12を所定位置に仮設置する。すなわち、目地部104を跨ぐように、目地部104の長手方向に沿って止水部材12を仮設置する。また、止水部材12の一方側端部の長手方向中央部において、止水部材12および水路100の底壁106を穿孔して、アンカボルト60を設置するための孔を形成する。そして、その孔にアンカボルト60を差し込んで設置する。
【0064】
次に、
図9(B)に示すように、コーナ閉塞部材16を入隅部102に押し付けるように設置する。そして、その上から止水部材12を被せて、止水部材12でコーナ閉塞部材16をさらに押え付ける。
【0065】
また、
図9(C)に示すように、コーナ押え部材18を湾曲させつつ止水部材12の表面側に設置する。そして、コーナ押え部材18の長手方向中央部を押圧して、コーナ閉塞部材16に止水部材12を押し付け、コーナ閉塞部材16の外側面と止水部材12の裏面および入隅部102を形成する2面とを密着させる。この際、コーナ押え部材18のスパイク部54が止水部材12に食い込む(突き刺さる)ことによって、コーナ押え部材18の位置ずれが防止される。
【0066】
続いて、
図10(D)に示すように、コーナ押え部材18の端部を止水部材12と押え部材14の端部との間に挟み込むようにして、底壁106用の押え部材14を止水部材12の側端部の表面側に設置する。そして、止水部材12の長手方向中央部に設置したアンカボルト60にナット62を取り付け、ナット62を締め込んで仮固定する。また、押え部材14の端部においても、止水部材12および水路100の底壁106を穿孔してアンカボルト60を設置し、そのアンカボルト60にナット62を取り付けて仮固定する。
【0067】
同様に、
図10(E)に示すように、側壁108用の押え部材14を止水部材12の側端部の表面側に設置し、アンカボルト60およびナット62を用いて仮固定する。この際、コーナ押え部材18のボルト挿通孔52が長孔であることから、止水部材12およびコーナ閉塞部材16の圧縮増加に伴ってコーナ押え部材18が追従し、コーナ押え部材18による押圧力を増すことが可能となる。
【0068】
続いて、
図10(F)に示すように、止水部材12の他方側端部にも、上述と同様の作業を繰り返して、コーナ閉塞部材16、コーナ押え部材18および押え部材14等を順次設置する。最後に、全箇所のナット62を十分に締め込み、各部材が確実に固定されたことを確認する。これによって、目地止水構造10の施工作業が終了する。
【0069】
なお、図示は省略するが、止水部材12の表面側は、塩ビシートなどの遮光シートで覆っておくとよい。これによって、止水部材12の劣化が抑制され、目地止水構造10の寿命を延ばすことができる。
【0070】
以上のように、この実施例によれば、止水部材12と入隅部102との間に生じる隙間を閉塞させるコーナ閉塞部材16を備えるので、入隅部102における止水性が向上する。したがって、目地部104からの水漏れを確実に防止できる。また、コーナ閉塞部材16は、止水部材12と入隅部102との間に生じる隙間を閉塞させるときに、圧縮変形されるので、コーナ閉塞部材16の外側面と止水部材12の裏面および入隅部102を形成する面とをより適切に密着させることができる。
【0071】
また、コーナ閉塞部材16がコーナ凹凸吸収部42を有するので、水路100(入隅部102)の内面に凹凸がある場合にも、コーナ凹凸吸収部42がその凹凸に追従して、コーナ閉塞部材16と入隅部102とがより適切に密着される。したがって、コーキング等の止水処理を別途施すことなく、簡単に入隅部102を止水できる。
【0072】
さらに、入隅部102の屈曲角度は、必ずしも90度とは限らないが、この実施例によれば、コーナ閉塞部材16は圧縮変形されるので、90度以外(たとえば100度)の屈曲角度を有する入隅部102にも対応可能である。また、コーナ押え部材18をばね鋼によって形成しておくことで、90度以外の屈曲角度を有する入隅部102においても、止水部材12をコーナ閉塞部材16に適切に押し付けることができる。
【0073】
同様に、この実施例によれば、入隅部102に小さなハンチがある場合にも、コーナ閉塞部材16がハンチに沿って圧縮変形されるので、対応可能である。なお、入隅部102に大きなハンチがある場合には、1つのコーナに2つの入隅部102があるものとして、入隅部102のそれぞれにコーナ閉塞部材16を設けるようにするとよい。
【0074】
なお、上述の実施例では、目地止水構造10は、老朽化した水路100の補修時に施工するようにしたが、水路100の新設時に施工することもできる。
【0075】
また、上述の実施例では、底壁106と側壁108とを有する開渠に目地止水構造10を適用したが、水路100は、さらに天壁を有するボックス型の暗渠等であってもよく、コーナ閉塞部材16を用いて側壁と天壁とによって形成される入隅部を止水することもできる。
【0076】
さらに、上述の実施例では、目地止水構造10によって目地部104からの水漏れを防止するようにしたが、目地止水構造10は、外部から水路100内への水の浸入を防止することもできる。
【0077】
さらにまた、上述の実施例では、止水部材12の両側端部を水路100の内面にアンカボルト60等を用いて固定するようにしたが、止水部材12は、接着剤などを用いて水路100の内面に固定することもできる。
【0078】
また、上述の実施例では、入隅部102との接地部分にコーナ凹凸吸収部42を有するコーナ閉塞部材16を用いるようにしたが、これに限定されず、コーナ閉塞部材16の具体的な構成ないし形状については適宜変更可能である。たとえば、新設の水路100に目地止水構造10を適用する場合には、水路100の内面は平滑であり、凹凸がない或いは凹凸が少ないので、
図11(A)に示すように、発泡ゴム等の軟質な材料によって形成されるコーナ閉塞部材本体40のみでコーナ閉塞部材16を構成してもよい。
【0079】
また、たとえば、
図11(B)に示すように、コーナ閉塞部材本体40の外側面全体にコーナ凹凸吸収部42を設けることもできる。外側面全体にコーナ凹凸吸収部42を設ける場合には、コーナ閉塞部材本体40は、圧縮変形され難い硬質な材料で形成することも可能である。
【0080】
さらに、たとえば、
図11(C)に示すように、コーナ閉塞部材本体40を硬質な材料で形成する場合には、コーナ閉塞部材本体40の傾斜面(止水部材12の裏面と対向する面)を入隅部102側に向かって窪む円弧面とすることもできる。
【0081】
さらにまた、たとえば、
図11(D)に示すように、コーナ閉塞部材本体40を軟質な材料で形成する場合には、コーナ閉塞部材本体40の傾斜面を入隅部102と反対側に向かって膨らむ円弧面とすることもできる。これによって、止水部材12と入隅部102との間でコーナ閉塞部材16を圧縮変形する際に、その圧縮度が大きくなるので、止水性がより向上する。
【0082】
また、たとえば、
図11(E)に示すように、コーナ閉塞部材本体40の入隅部102と対向する2面の角度は、必ずしも直角である必要はなく、入隅部102の屈曲角度に応じて変更されてもよい。一例として、120度の屈曲角度を有する入隅部102に設けるコーナ閉塞部材16の場合には、それに合わせて、入隅部102と対向する2面が120度の角度で屈曲するように、コーナ閉塞部材本体40を予め形成しておくとよい。
【0083】
また、上述の実施例では、止水部材12の止水部材本体20をゴム材によって形成しているが、可撓性を有するように(つまり水路100の内面に沿って湾曲できるように)形成できれば、止水部材本体20は、合成樹脂または金属などによって形成してもよい。この場合には、止水部材本体20が幅方向に伸縮し易いように、その幅方向中央部分において、幅方向に凹凸(山谷)を繰り返す波形部を形成しておくとよい。
【0084】
さらに、上述の実施例では、未加硫ブチルゴムによって形成される凹凸吸収部22を有する止水部材12を用いるようにしたが、止水部材12の接地部分の構成は、適宜変更可能である。たとえば、
図12(A)に示すように、凹凸吸収部22を半独立(半連続)気泡型のEPDM発泡ゴムによって形成し、止水部材本体20の両側端部20bに対して、幅方向に所定の間隔を隔てて並ぶように凹凸吸収部22を形成することもできる。また、たとえば、止水部材本体20とは別材料によって形成される凹凸吸収部22を設ける代わりに、
図12(B)に示すように、止水部材12の長手方向に延びる断面半円状の突条28を止水部材本体20の両側端部20bに一体成形することもできる。
【0085】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。