【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主面と、前記主面と反対側に位置する反対面であって、前記反対面の中心を含む第1の領域および前記第1の領域を囲む第2の領域を有する反対面とを備え、炭化珪素半導体の結晶を含む炭化珪素半導体基板を準備する第1の工程と、
前記第2の領域を部分的に機械的に加工する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記炭化珪素半導体基板の前記主面上に半導体エピタキシャル層を形成する第3の工程と、を含み、
前記第2の工程の後において、
前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さは、前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さよりも大きく、かつ前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さおよび前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さは、いずれも前記主面の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さよりも大きく、
前記第3の工程による前記炭化珪素半導体基板のSORIの変化量が正である、
炭化珪素半導体基板の製造方法。
主面と、前記主面と反対側に位置する反対面であって、前記反対面の中心を含む第1の領域および前記第1の領域を囲む第2の領域を有する反対面とを備え、炭化珪素半導体の結晶を含む炭化珪素半導体基板を準備する第1の工程と、
前記第2の領域を部分的に機械的に加工する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記炭化珪素半導体基板の前記主面上に半導体エピタキシャル層を形成する第3の工程と、を含み、
前記第2の工程の後において、
前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度は、前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度よりも大きく、かつ
前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度および前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度は、いずれも前記主面の表面部分における前記結晶の乱れの線密度よりも大きく、
前記第3の工程による前記炭化珪素半導体基板のSORIの変化量が正である、炭化珪素半導体基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ワイドバンドギャップ半導体は、パワー素子(パワーデバイスともいう)、耐環境素子、高温動作素子、高周波素子等の種々の半導体装置に応用されている。なかでも、スイッチング素子及び整流素子などのパワーデバイスへの応用が注目されている。
【0003】
ワイドバンドギャップ半導体のなかでも炭化珪素(シリコンカーバイド:SiC)は、基板の製造が比較的容易であり、また、良質のゲート絶縁膜である酸化珪素(SiO
2)膜を熱酸化により形成することが可能な半導体材料である。このことから、SiCを用いたパワーデバイスの開発が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
SiCを用いたパワーデバイスの代表的なスイッチング素子として、金属−絶縁体−半導体電界効果トランジスタ(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor、以下「MISFET」)、金属−半導体電界効果トランジスタ(Metal Semiconductor Field Effect Transistor、以下「MESFET」)などがある。
【0005】
SiCは、Siよりも高い絶縁破壊電界および熱伝導度を有するので、SiCを用いたパワーデバイス(SiCパワーデバイス)では、Siパワーデバイスよりも高耐圧化、低損失化が容易である。このため、Siパワーデバイスと同一性能を実現させる場合、Siパワーデバイスよりも面積および厚さを大幅に縮小することが可能となる。
【0006】
これに伴い基板に対するゲート電極の寄生容量が減少すること、さらにSiと比較して高い電子飽和速度を有するため、Siパワーデバイスよりも大幅に高速なスイッチング動作を実現することができる。
【0007】
SiCは、不純物の熱拡散係数が小さいためSi等で用いられている熱拡散による不純物制御方法の適用が困難である。比較的浅い不純物層の形成にはイオン注入法が用いられるが、深い不純物層、例えば縦型MISFETのドリフト層等に対するキャリア濃度制御方法としては、結晶成長としてのエピタキシャル成長中にドーパントを添加する気相ドーピングが有効である。この気相ドーピングの手法としては、一般的に化学気相堆積法(CVD)が用いられている。CVD法は、不純物濃度及びpn接合界面などの制御が可能であり、また、大型基板にも適用できる点で有用である。
【0008】
従来、このようなSiCの結晶成長は、下記特許文献2に記載されるような、横型CVD装置が用いられている。しかしながら、SiCのエピタキシャル成長ではウェハ内での温度分布により界面転位が発生することがXuan Zhang等によりMaterials Science Forum, Vols. 679-680(2011), pp. 306-309に報告されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明者は、界面転位の発生を検討するため、上記特許文献2に開示されるように、
図1に示す横型ホットウォールCVD装置を用いてSiC層をエピタキシャル成長させる実験を行った。このような装置として、例えば、東京エレクトロン社製のProbus−SiCを用いることができる。ガス系にはシランおよびプロパンを原料ガスとし、水素をキャリアガスとして使用した。本装置は、石英からなる成長室2の中に、グラファイトからなる固定サセプタ3と、固定サセプタ3内に位置し、ウェハ6を支持する回転サセプタ5とを備える。ウェハ6は、回転サセプタ5のポケット7内に配置される。回転サセプタ5は回転機構により60rpmで回転する。固定サセプタ3は、誘導コイル4に高周波電力を印加することにより、ウェハ6の表面を1700℃程度まで加熱する。実験には、4°オフの4H−SiCウェハを用い、主面をSi面、反対面をC面とした。
【0015】
まず、ウェハ6の直径による界面転位の発生状況の違いを検証するために、150mmウェハと3インチウェハとを比較した。
図2Aおよび
図2Bに、150mmウェハおよび3インチウェハの回転サセプタ5上における配置を示す。回転サセプタ5における位置の依存性をなくすために、3インチウェハ上にSiC層をエピタキシャル成長させる際には、
図2Bに示すように、2枚の3インチウェハを用いた。
【0016】
図3Aおよび
図3Bは、150mmおよび3インチウェハにおける界面転位の分布を示す。界面転位の発生確認は、エピタキシャルウェハ表面を溶融KOHに浸けることにより界面転位に特徴的なピットを形成後、顕微鏡を用いてピットの数を計測することにより行った。3インチウェハを用いた場合、2枚の3インチウェハの全領域において界面転位の発生は確認されなかった。一方、150mmウェハを用いた場合、ウェハの中央付近に多くの界面転位が発生していることがわかった。150mmウェハ上に発生した界面転位の数は450本であった。これらの検証により、界面転位の発生は大口径化に伴う新たな課題であることを本願発明者は新規に見出した。
【0017】
次に、ウェハのSORI量と界面転位との関係を調べた。
図4を参照しながら、SORIの定義を説明する。まず、ウェハの主面または反対面の表面粗さ、すなわちウェハの主面または反対面内における表面の高さの分布を測定し、最小二乗法によって、基準平面Rを求める。次に、基準平面Rから最高点までの距離Pおよび最低点までの距離Qを求める。最後に、距離Pの絶対値と距離Qの絶対値との和をSORIとして定義する。ウェハの湾曲度合いを示す指標としてはBow及びWARP等も用いられるが、ウェハが比較的単純な形状である場合、いずれの指標でもその傾向に差はない。
【0018】
SORI量と界面転位の発生との関係を調べるために、エピタキシャル成長前のSORI量が異なる4種類のウェハを準備した。
図5はエピタキシャル成長前のSORI量である初期SORI量とエピタキシャル後に観察された界面転位の本数との関係を示す。
図6は、エピタキシャル成長の前後でSORIを測定することによって求めたSORIの変化量と界面転位本数との関係を示す。それぞれの図において、初期SORI量およびSORI変化量が正である場合、ウェハの反対面に凸部を有するようにウェハが反っていることを示している。SORI変化量が正の値である場合、ウェハの反り度合いが増大したことを示す。また、SORI変化量が負の値である場合、ウェハの反りが減少し、ウェハの表面が平坦に近づいたことを示している。
【0019】
図5から明らかなように、初期のSORI量と界面転位の発生量との間に相関関係は認められない。一方、
図6から、SORI変化量と界面転位本数との間には相関関係が認められる。SORI変化量が正、すなわちウェハの反対面にある凸部が高くなるようにウェハの反り度合いが大きくなることにより、界面転位の発生数が減少していることが分かる。この現象は本願発明者により初めて見出されたものである。したがって、SORI変化量を正の値とし、その大きさを大きくすることにより界面転位の発生を抑制することができる。
【0020】
次にSORIの変化量が異なる原因を明らかにするために、ウェハA、B、Cについて主面および反対面の表面を観察した。ウェハA、B、Cの主面の表面状態には差が無いことを確認した。一方、ウェハA、B、Cの反対面の表面状態には大きな差が存在する。
図7に、SORI変化量が異なるウェハA、B、Cの反対面を、共焦点微分干渉顕微鏡(Lasertec社製SICA−6X)を用いて検査した結果を示す。
図7は、検査結果のうち、粗さマップと、ウェハ中心付近およびウェハ周辺の顕微鏡写真とを示す。粗さマップにおいて、白い部分は表面の粗さが大きく、黒い部分は表面が平坦であることを示している。
図7から、ウェハA、B、CにおいてSORI変化量が異なるのは、反対面の粗さに依存していることが分かる。具体的には、SORI変化量が正方向に大きいウェハCの反対面は、全面において粗さが大きい。顕微鏡写真から、ウェハCの反対面には傷状の構造が多いことが分かった。また、SORI変化量が小さいウェハBの反対面は全面において平坦であることが分かった。一方、SORI変化量が負方向に大きいウェハAの反対面には、ウェハ面内で、粗さに分布が見られる。より具体的には、ウェハの周辺部は平坦であるが、ウェハの中心付近は粗さの大きいことが分かった。
図7から分かるように、ウェハAの反対面の中央付近には、ウェハCの中央付近と異なり、比較的滑らかに見える凹凸が多いことが分かる。
【0021】
ウェハA、B、Cの反対面における形状およびSORI変化量の差異はウェハの加工方法に依存している。ウェハAは、ブールから切り出した後、主面および反対面を比較的小さな研削量で研削することにより製造されている。主面に関しては、主面上にデバイスを形成するため、十分に研磨することにより平坦性を向上させた。一方、反対面に関しては最小限の研磨量とした。ウェハAは膜厚分布が大きく、周辺部が厚く、中心部が薄い膜厚分布を有している。このため、ウェハAの反対面の中心部分には、化学的機械研磨(CMP)を行う際に研磨布が接触しておらず、反対面における中心部分の加工は、化学的反応による変質層のエッチングが支配的である。その結果、ウェハAの反対面の中央部分では、大きな凹凸形状を有しているが、変質層の厚さは小さい。さらに主面側と比較した場合に、主面はCMPによるわずかな変質層が残留しているが、反対面の中心部分は化学的反応のみであり新たな変質層を与えることなくすでに存在する変質層を除去しているため、主面よりも変質層が小さい。
【0022】
ウェハBはブールから切り出した後に、主面および反対面を研削により十分平坦化し、十分なCMPを施している。このため、ウェハBの主面および反対面の全面において平坦な表面が得られている。なお、CMPにおいてもウェハには若干の変質層が形成されている。
【0023】
ウェハCはブールから切り出した後に研削により十分平坦化しているが、反対面におけるCMPによる研磨量を小さくしている。したがって、ウェハCの反対面では、研削時に生じた変質層が多く残っている。
【0024】
次に、反対面の形状および加工状態の差異によってSORI変化量が変動する原因について説明する。まず
図8Aおよび
図8Bを参照して、ウェハの各部の定義を説明する。
図8Aおよび
図8Bは炭化珪素半導体基板11の底面図および断面図である。説明を簡単にするため、
図7ではエピタキシャル成長前のSORIが小さい、言い換えると平坦なウェハを用いた場合について記載した。
図5および
図6に示した実際のウェハ形状は上述のようにエピタキシャル前に下に凸の形状を有している。炭化珪素半導体基板11は主面12および主面12と反対側に位置する反対面13を備える。反対面13は、反対面13の中心を含む第1の領域14と第1の領域14を囲む第2の領域15とを有している。炭化珪素半導体基板11の主面12および反対面13には、炭化珪素半導体基板11の製造工程で生成する変質層16が位置している。
図9A、
図9Bおよび
図9Cは、それぞれ
図7で示したウェハAからCのエピタキシャル成長後の断面模式図である。なお、これらの図には示していないが、半導体エピタキシャル層が主面12上に形成されている。
【0025】
炭化珪素半導体基板11の主面12および反対面13に変質層が存在すると、その厚さ等のバランスにより、主面12側および反対面13側のどちらかが凸となるように、炭化珪素半導体基板11が反る。この変質層が炭化珪素半導体基板の形状変化に与える影響をトワイマン効果と言う。トワイマン効果は炭化珪素半導体基板の加工ダメージが大きいほど、大きな影響を炭化珪素半導体基板に与える。つまり、炭化珪素半導体基板11の両面における変質層16が引き起こす応力のバランスで炭化珪素半導体基板11の形状が決定される。
【0026】
変質層は、炭化珪素半導体基板を構成する炭化珪素半導体の結晶に生じた歪み等の結晶の乱れを有する部分である。炭化珪素半導体基板11の主面12および反対面13を研削あるいは研磨する際に、定盤および研磨パッドから受ける力によって、結晶の乱れが生じる。一般に、変質層は、炭化珪素半導体基板の主面および反対面の表面粗さと関連があり、表面が粗いほど、変質層も厚い。
【0027】
図9Aに示すウェハAは、負方向に大きいSORI変化量を示している。
図9Aに示すウェハAにおいて、第1の領域14に位置する第1の変質層19の厚さは、主面12の変質層17および第2の領域15に位置する第2の変質層20の厚さよりも小さい厚さを有する、または、第1の変質層19における結晶の乱れの線密度は、主面12の変質層17および第2の変質層20における結晶の乱れの線密度よりも小さい。
【0028】
主面12の変質層17と第2の変質層20とにおいて、厚さあるいは結晶の乱れの線密度はほぼ等しいため、第2の領域15と、主面12における第2の領域15と対向する部分とでは、加工変異質層による応力のバランスが取れている。一方、第1の領域14と、主面12における第1の領域14と対向する部分とでは、第1の変質層19は、主面12の変質層17よりも小さい厚さを有する、または、結晶の乱れの線密度が小さい。このため、
図9Aに示すように、炭化珪素半導体基板11の第1の領域14に圧縮応力が生じ、炭化珪素半導体基板11のSORI変化量は負の値となる。
【0029】
次に、
図9Bに示すウェハBは小さいSORI変化量を示す。
図9Bに示すウェハBにおいて、主面12の全面および反対面13の全面において、主面12の変質層17と反対面13の変質層18とは、厚さおよび結晶の乱れの線密度が同等である。このため、
図9Bに示すウェハBは小さいSORI変化量を示す。
【0030】
図9Cに示すウェハCは、正方向の大きなSORI変化量を示す。
図9Cに示すウェハCにおいて、反対面13の変質層18の厚さは、主面12の変質層17の厚さよりも大きい。この結果、第1の領域14に引張り応力が生じ、ウェハCは正のSORI変化量を示す。
【0031】
図10は、ウェハCにおける反対面13の変質層18の透過電子顕微鏡像の一例を示す。反対面13の表面から最大で390nmの深さまで結晶の乱れが観察される。この結晶の乱れを有する部分が変質層である。特に変質層のうち、反対面13の表面から深い部分は、200本/mmの線密度で結晶の乱れが存在していた。
【0032】
以上説明したように、本願発明者の検討結果から、主面および反対面における変質層の厚さおよび結晶の乱れの線密度のバランスを変化させることでSORI変化量を変動させることができることが明らかとなった。一方で、エピタキシャル成長後に大きなSORIが残留していると、その後の製造工程において装置の搬送等に問題が生じ得る。このため、炭化珪素半導体基板のSORI量を低減させてもよい。
図11は、エピタキシャル成長後のSORI量と、反対面にCMPを施し、変質層の少なくとも一部を除去した後のSORI量とを示す。除去した反対面の変質層の厚さは5μmである。エピタキシャル成長後にSORI量が大きい炭化珪素半導体基板であっても、反対面側の変質層を除去することによりSORI量を小さくすることができることが分かる。
【0033】
これらの結果から、主面および反対面の変質層により生じる応力のバランスを変化させることによってエピタキシャル成長時のSORI変化量を制御することができる。また、エピタキシャル成長後の炭化珪素半導体基板に対して、反対面の変質層を除去することにより、SORI量を低減することができる。
【0034】
このような界面転位とSORI変化量との関係は、本願発明者によって初めて見出された。本願発明者はこの関係を用いて、界面転位の発生を抑制し得る炭化珪素半導体基板および炭化珪素半導体基板の製造方法を想到した。
【0035】
本開示の炭化珪素半導体基板およびその製造方法の概要は以下の通りである。
【0036】
[項目1]
主面と、前記主面と反対側に位置する反対面とを備え、炭化珪素半導体の結晶を含み、前記反対面は、前記反対面の中心を含む第1の領域と、前記第1の領域を囲む第2の領域とを有し、前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さは、前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さよりも大きく、かつ前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さおよび前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さは、いずれも前記主面の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さよりも大きい、または前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度は、前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度よりも大きく、かつ前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度および前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度は、いずれも前記主面の表面部分における前記結晶の乱れの線密度よりも大きい炭化珪素半導体基板。
【0037】
この構成によれば、主面に半導体エピタキシャル層を形成すると、主面が凹の形状に変形し、主面において、正方向に大きいSORI変化量が生じる。よって半導体エピタキシャル層において界面転位の発生が抑制される。
【0038】
[項目2]
主面と、前記主面と反対側に位置する反対面とを備える炭化珪素半導体基板であって、前記反対面は、前記反対面の中心を含む第1の領域と、前記第1の領域を囲む凹部により定義される第2の領域とを有し、前記第2の領域における前記炭化珪素半導体基板の厚さは、前記第1の領域における前記炭化珪素半導体基板の厚さよりも小さい炭化珪素半導体基板。
【0039】
この構成によれば、主面に半導体エピタキシャル層を形成すると、主として反対面の第1の領域が凸の形状に変形し、主面において正方向に大きいSORI変化量が生じる。よって半導体エピタキシャル層において界面転位の発生が抑制される。
【0040】
[項目3]
前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さが390nm以上である、項目1に記載の炭化珪素半導体基板。
【0041】
この構成によれば、半導体エピタキシャル層の形成により、主面において、より確実に正方向に大きいSORI変化量が生じる。よって半導体エピタキシャル層30において界面転位の発生が更に抑制される。
【0042】
[項目4]
前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度が200本/mm以上である、
項目1に記載の炭化珪素半導体基板。
【0043】
この構成によれば、半導体エピタキシャル層の形成により、主面において、より確実に正方向に大きいSORI変化量が生じる。よって半導体エピタキシャル層30において界面転位の発生が更に抑制される。
【0044】
[項目5]
前記炭化珪素半導体基板は炭化珪素半導体の結晶を含み、前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さは、前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さよりも大きく、かつ前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さおよび前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さは、いずれも前記主面の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さよりも大きい、または前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度は、前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度よりも大きく、かつ前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度および前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度は、いずれも前記主面の表面部分における前記結晶の乱れの線密度よりも大きい、項目2に記載の炭化珪素半導体基板。
【0045】
[項目6]
前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さが390nm以上である、項目5に記載の炭化珪素半導体基板。
【0046】
この構成によれば、半導体エピタキシャル層の形成により、主面において、より確実に正方向に大きいSORI変化量が生じる。よって半導体エピタキシャル層30において界面転位の発生が更に抑制される。
【0047】
[項目7]
前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度が200本/mm以上である、項目5に記載の炭化珪素半導体基板。
【0048】
この構成によれば、半導体エピタキシャル層の形成により、主面において、より確実に正方向に大きいSORI変化量が生じる。よって半導体エピタキシャル層30において界面転位の発生が更に抑制される。
【0049】
[項目8]
主面と、前記主面と反対側に位置する反対面であって、前記反対面の中心を含む第1の領域および前記第1の領域を囲む第2の領域を有する反対面とを備え、炭化珪素半導体の結晶を含む炭化珪素半導体基板を準備する工程と、前記第2の領域を部分的に機械的に加工する工程とを含み、前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さは、前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さよりも大きく、かつ前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さおよび前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さは、いずれも前記主面の表面部分における前記結晶の乱れた部分の厚さよりも大きい、または前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度は、前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度よりも大きく、かつ前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度および前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れの線密度は、いずれも前記主面の表面部分における前記結晶の乱れの線密度よりも大きい、炭化珪素半導体基板の製造方法。
【0050】
この構成によれば、主面に半導体エピタキシャル層を形成すると、主面が凹の形状に変形し、主面において、正方向に大きいSORI変化量が生じる。よって、主面に形成する半導体エピタキシャル層における界面転位の発生を抑制し得る炭化珪素半導体基板が提供される。
【0051】
[項目9]
主面と、前記主面と反対側に位置する反対面であって、前記反対面の中心を含む第1の領域および前記第1の領域を囲む第2の領域を有する反対面とを備え、炭化珪素半導体の結晶を含む炭化珪素半導体基板を準備する工程、前記第2の領域を研磨する工程を含み、前記第2の領域における前記炭化珪素半導体基板の厚さは、前記第1の領域における前記炭化珪素半導体基板の厚さよりも小さい、炭化珪素半導体基板の製造方法。
【0052】
この構成によれば、主面に半導体エピタキシャル層を形成すると、主として反対面の第1の領域が凸の形状に変形し、主面において正方向に大きいSORI変化量が生じる。よって、主面に形成する半導体エピタキシャル層における界面転位の発生を抑制し得る炭化珪素半導体基板が提供される。
【0053】
[項目10]
前記第1の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の少なくとも一部を除去する工程をさらに含む、項目9に記載の炭化珪素半導体基板の製造方法。
【0054】
[項目11]
前記炭化珪素半導体基板の前記主面上に半導体エピタキシャル層を形成する工程と、前記炭化珪素半導体基板の前記反対面の前記第1の領域及び前記第2の領域の表面部分における前記結晶の乱れた部分の少なくとも一部を除去する工程とをさらに含む、項目8または9に記載の炭化珪素半導体基板の製造方法。
【0055】
以下、本開示の炭化珪素半導体基板およびその製造方法の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、説明のための一例であって、本開示は以下の実施形態に限られない。
【0056】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示の第1の実施形態を説明する。
図12Aおよび
図12Bは、本開示の炭化珪素半導体基板11の底面図および断面図である。炭化珪素半導体基板11は、主面12および主面12と反対側に位置する反対面13を備える。反対面13は少なくとも2つの領域を含む。具体的には、反対面13は、反対面13の中心を含む第1の領域14と、第1の領域14を囲み、第1の領域の外側に配置される第2の領域15とを有する。
【0057】
第1の領域14の反対面13の内部には第1の変質層19が位置しており、第2の領域15の反対面13の内部には第2の変質層20が位置している。第2の変質層20の厚さは第1の変質層19の厚さよりも大きく、かつ第1の変質層19の厚さおよび第2の変質層20の厚さは、いずれも主面12の変質層17の厚さよりも大きい。または第2の変質層20の結晶の乱れの線密度は、第1の変質層19の結晶の乱れの線密度よりも大きく、かつ第1の変質層19の結晶の乱れの線密度および第2の変質層20の結晶の乱れの線密度は、いずれも主面12の変質層17の結晶の乱れの線密度よりも大きい。つまり、第2の領域15の表面部分における結晶の乱れた部分の厚さは、第1の領域14の表面部分における結晶の乱れた部分の厚さよりも大きく、かつ第1の領域14の表面部分における結晶の乱れた部分の厚さおよび第2の領域15の表面部分における結晶の乱れた部分の厚さは、いずれも主面12の表面部分における結晶の乱れた部分の厚さよりも大きい。または第2の領域15の表面部分における結晶の乱れの線密度は、第1の領域14の表面部分における結晶の乱れの線密度よりも大きく、かつ第1の領域14の表面部分における結晶の乱れの線密度および第2の領域15の表面部分における結晶の乱れの線密度は、いずれも主面12の表面部分における結晶の乱れの線密度よりも大きい。第2の変質層20の厚さは、例えば、390nm以上であり、結晶の乱れの線密度は、1mmあたり200本以上である。
【0058】
結晶の乱れた部分の厚さ、つまり変質層の厚さは、炭化珪素半導体基板の断面を、透過電子顕微鏡を用いて観察することにより求めることができる。変質層における結晶の乱れた部分の線密度は、炭化珪素半導体基板の断面を、透過電子顕微鏡を用いて観察し、観察された結晶の乱れの数を、観察した領域の幅で割ることにより求めることができる。
【0059】
図13は、
図12Aおよび
図12Bで示した本開示の炭化珪素半導体基板11に半導体エピタキシャル層30を形成した場合の形状変化を示す。一般的に、炭化珪素半導体基板の主面に残存している変質層の厚さは小さい。結晶の乱れによる、主面に形成される半導体素子の半導体特性の低下を抑制するためである。これに対し、上述したように、第2の変質層20の厚さは第1の変質層19の厚さよりも大きい。または第2の変質層20の結晶の乱れの線密度は、第1の変質層19の結晶の乱れの線密度よりも大きい。このため、主面12と反対面13との変質層の差によって生じる応力は、第1の領域14よりも第2の領域15において大きい。このため、主面12に半導体エピタキシャル層30が形成された場合に生じる応力は、第1の領域14よりも第2の領域15において大きい。この結果、炭化珪素半導体基板11は、半導体エピタキシャル層30が形成されることによって、
図13に示すように主面12が凹の形状に変形する。この形状変化は、
図6および
図7を参照して説明したように、主面12において、正方向に大きいSORI変化量を与える。したがって、主面12に形成される半導体エピタキシャル層30において、界面転位の発生が抑制される。
【0060】
半導体エピタキシャル層30が形成された炭化珪素半導体基板11のSORI量を低減したい場合には、半導体エピタキシャル層30を形成した後、反対面13に位置する第1の変質層19および第2の変質層20の少なくとも一部をCMP等の研磨方法を用いて除去してもよい。これにより、第1の変質層19および第2の変質層20により生じる応力を小さくすることができるため、SORI量を低減できる。よって、半導体エピタキシャル層30の表面の平坦度を高めることができる。半導体エピタキシャル層30の界面転位は、半導体エピタキシャル層30の形成時に発生するため、半導体エピタキシャル層30の形成後にSORI量を低減させても、新たに半導体エピタキシャル層30の界面転位が生成することはない。
【0061】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本開示の第2の実施形態を説明する。
図14Aおよび
図14Bは、本開示の炭化珪素半導体基板の底面図および断面図である。炭化珪素半導体基板11は、主面12および主面12と反対側に位置する反対面13を備える。反対面13は少なくとも2つの領域を含む。具体的には、反対面13は、反対面13の中心を含む第1の領域14と、第1の領域14を囲み、第1の領域の外側に配置される第2の領域15とを有する。本実施形態における第2の領域15は、凹部に相当する。
【0062】
第1の領域14における炭化珪素半導体基板11の厚さは、第2の領域15における炭化珪素半導体基板11の厚さより大きい。主面12は素子を形成するために平坦であることが望ましいため、第1の領域14および第2の領域15における炭化珪素半導体基板11の厚さを実現するため、反対面13は、第1の領域14と第2の領域15との境界に段差を有する。この段差は、反対面13を形成する際の研削または研磨の加工量を第1の領域14と第2の領域15とで異ならせることによって形成できる。第1の領域14の反対面13の内部には第1の変質層19が形成され、第2の領域の反対面13の内部には第2の変質層20が形成されている。
【0063】
第2の変質層20の厚さは第1の変質層19の厚さよりも大きく、かつ第1の変質層19の厚さおよび第2の変質層20の厚さは、いずれも主面12の変質層17の厚さよりも大きい。または第2の変質層20の結晶の乱れの線密度は、第1の変質層19の結晶の乱れの線密度よりも大きく、かつ第1の変質層19の結晶の乱れの線密度および第2の変質層20の結晶の乱れの線密度は、いずれも主面12の変質層17の結晶の乱れの線密度よりも大きい。つまり、第2の領域15の表面部分における結晶の乱れた部分の厚さは、第1の領域14の表面部分における結晶の乱れた部分の厚さよりも大きく、かつ第1の領域14の表面部分における結晶の乱れた部分の厚さおよび第2の領域15の表面部分における結晶の乱れた部分の厚さは、いずれも主面12の表面部分における結晶の乱れた部分の厚さよりも大きい。または第2の領域15の表面部分における結晶の乱れの線密度は、第1の領域14の表面部分における結晶の乱れの線密度よりも大きく、かつ第1の領域14の表面部分における結晶の乱れの線密度および第2の領域15の表面部分における結晶の乱れの線密度は、いずれも主面12の表面部分における結晶の乱れの線密度よりも大きい。第2の変質層20の厚さは、例えば、390nm以上であり、結晶の乱れの線密度は、1mmあたり200本以上である。
【0064】
図15は、
図14Aおよび
図14Bで示した本開示の炭化珪素半導体基板11に半導体エピタキシャル層を形成した場合の形状変化を示す。炭化珪素半導体基板11の厚さは、第2の領域15よりも、第1の領域14において大きい。このため、炭化珪素半導体基板11の厚さ方向の中点から、主面12および反対面13において働く応力までの距離も第1の領域14において長くなる。よって、同じ応力が働く場合における力のモーメントも第1の領域14においてより大きくなる。したがって、半導体エピタキシャル層30が形成されることによって、
図15に示すように炭化珪素半導体基板11は、主として第1の領域14が凸の形状に変形する。言い換えると、主面12が凹の形状に変形する。この形状変化は、
図6および
図7を参照して説明したように、主面12において、正方向に大きいSORI変化量を与える。したがって、主面12に形成される半導体エピタキシャル層30において、界面転位の発生が抑制される。
【0065】
また、上述したように、第2の変質層20の厚さは第1の変質層19の厚さよりも大きく、かつ第1の変質層19の厚さおよび第2の変質層20の厚さは、いずれも主面12の変質層17の厚さよりも大きい。または、第2の変質層20の結晶の乱れの線密度は、第1の変質層19の結晶の乱れの線密度よりも大きく、かつ第1の変質層19の結晶の乱れの線密度および第2の変質層20の結晶の乱れの線密度は、いずれも主面12の変質層17の結晶の乱れの線密度よりも大きい。このため、主面12と反対面13との変質層の差によって生じる応力は、第1の領域14よりも第2の領域15において大きい。このため、主面12に半導体エピタキシャル層30が形成された場合に生じる応力は、第1の領域14よりも第2の領域15において大きい。この結果、炭化珪素半導体基板11は、半導体エピタキシャル層30が形成されることによって、反対面13がさらに凸の形状に変形する。したがって、主面12に形成される半導体エピタキシャル層30において、界面転位の発生がさらに抑制される。
【0066】
第1の実施形態と同様、半導体エピタキシャル層30が形成された炭化珪素半導体基板11のSORI量を低減したい場合には、半導体エピタキシャル層30を形成した後、反対面13に位置する第1の変質層19および第2の変質層20の少なくとも一部をCMP等の研磨方法を用いて除去してもよい。
【0067】
本実施形態では、炭化珪素半導体基板11は、第1の領域14と第2の領域15との間に段差を有しているが、段差の代わりに、反対面13の高さが徐々に変化するテーパー面によって第1の領域14と第2の領域15とを接続してもよい。
【0068】
(製造方法)
図12B、
図14Bおよび
図16を用いて、本開示の炭化珪素半導体基板の製造方法を説明する。炭化珪素半導体基板11をブールから切り出し、主面12と反対面13とを研削および研磨する工程は通常の炭化珪素半導体基板の製造工程と同じである。この時、反対面13の変質層を主面12の変質層よりも厚くするため、主面よりも粗い研磨剤もしくは硬い研磨布を用いて反対面13の研磨を行う。
【0069】
第1の実施形態の炭化珪素半導体基板11を製造する場合、
図16に示すように、反対面13が上に面するように炭化珪素半導体基板11を定盤100に配置する。研磨治具110が、反対面13の第2の領域15のみに接するように、炭化珪素半導体基板11の反対面13に研磨治具110を押し付ける。研磨治具110の炭化珪素半導体基板11と接する面には研磨布(図示せず)が配置されている。
【0070】
定盤100を回転させることにより、炭化珪素半導体基板11を回転させ、スラリー(図示せず)を流しながら研磨治具110を回転させる。研磨布の硬さ、スラリーの粗さ、および研磨治具110を炭化珪素半導体基板11に押し付ける圧力等を変化させることにより、炭化珪素半導体基板11の第2の領域15に第1の領域14と異なる加工を行う。
【0071】
第1の実施形態の炭化珪素半導体基板11を製造するには、第1の領域14よりも第2の領域15の変質層を厚くすればよい。このために、粗いスラリーで研磨する、硬い研磨布を使用する、研磨治具110の押し付け圧力を大きくする、等のいずれかの条件、もしくは2以上の条件の組み合わせにより、第2の領域15を加工する。これにより、第2の領域15の反対面13の表面粗さが大きくなるので、第1の領域14よりも第2の領域15の変質層の厚さを大きくし、かつ第2の領域15における結晶の乱れの線密度を増大させることができる。
【0072】
第2の実施形態の炭化珪素半導体基板11を製造するには、炭化珪素半導体基板11の厚さを、第1の領域14において厚くする。このために、第1の実施形態の炭化珪素半導体基板11を製造する場合と比べて、より粗いスラリーを使用する、より硬い研磨布を使用する、研磨治具110の押し付け圧力をより大きくする、等のいずれかの条件、もしくは2以上の条件の組み合わせにより、炭化珪素半導体基板11の第2の領域15を研磨する。例えばスラリーとしてダイヤモンド粉末等を使用することにより、容易に、第2の領域15における炭化珪素半導体基板11の厚さを小さくすることができる。その後、第1の領域14の変質層を薄くするために、細かいスラリーを使用する、軟らかい研磨布を使用する、研磨治具110の押し付け圧力を小さくする、等のいずれかの条件、もしくは2以上の条件の組み合わせにより第1の領域14の変質層の少なくとも一部を除去する。例えばスラリーとして酸化ケイ素粉末を使用することができる。これにより、第1の領域14における炭化珪素半導体基板11の厚さが第2の領域15よりも大きく、かつ、第1の領域14よりも第2の領域15における変質層の厚さが大きい、または、第1の領域14よりも第2の領域15における変質層の結晶の乱れの線密度を大きくすることができる。
【0073】
炭化珪素半導体基板11を製造した後、
図13または
図15に示すように、半導体エピタキシャル層30を炭化珪素半導体基板11の主面12上に形成することができる。炭化珪素半導体基板11の上述した構造により、この半導体エピタキシャル層30における界面転位の発生が抑制される。
【0074】
さらに、半導体エピタキシャル層30が形成された炭化珪素半導体基板11のSORI量を低減したい場合には、半導体エピタキシャル層30を形成した後、反対面13に位置する第1の変質層19および第2の変質層20の少なくとも一部をCMP等の研磨方法を用いて除去してもよい。これにより、半導体エピタキシャル層30の表面の平坦度を高めることができる。
【0075】
なお、本実施形態の炭化珪素半導体基板の製造方法において、研磨布、スラリーおよび押し付け圧力等の条件は広い範囲で選択可能である。また、第1および第2の実施形態では、反対面は第1の領域および第2の領域を有していたが、変質層の厚さまたは結晶の乱れの線密度が異なる3つ以上の領域を有していてもよい。さらに、第1の領域は円形を有しているが、円形である必要は無く、例えば楕円形であってもよい。第1の領域は反対面の中心を含んでいればいずれかの方向に偏っていてもよい。
【0076】
上記実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。