(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分散液又は懸濁液の形の水性組成物を用いて基材の金属表面を被覆する方法であって、前記水性組成物は、少なくとも1種の安定化された結合剤とゲル化剤とを含み、かつ前処理工程で及び/又は前記水性組成物と前記金属表面との接触の間に前記金属表面から溶け出すカチオンによって、イオノゲンゲルを基礎とする被覆が形成され、前記被覆は、
I. 清浄化された金属表面を備えた基材を準備し、
II. 前記金属表面を、分散液又は懸濁液の形の水性組成物と接触させ、かつ前記水性組成物で被覆し、
V. 工程IIで得られた層を、少なくとも2種の、前記水性組成物とは異なった別の被覆組成物で被覆する
ことにより行い、かつ
a) 完全脱塩水と、前記ゲル化剤0.2〜2質量%と、前記安定化された結合剤5〜20質量%とからなる水性混合物を、
b) 1〜7のpH値に調節し、
c) 清浄化された基材を、b)の混合物に室温で少なくとも1分間浸漬し、
d) 少なくとも1μmの被覆の堆積が行われているかどうか調査し、
g) c)及びd)に記載された試験を繰り返す、
前記方法。
前記安定化された結合剤は、非イオン性に安定化されたポリエポキシ分散液、非イオン性に安定化されたポリウレタン分散液及びイオン性に安定化されたポリアクリラート分散液からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
前記ゲル化剤は、a)グリコーゲン、アミロース、アミロペクチン、カロース、寒天、アルギン、アルギナート、ペクチン、カラーゲン、セルロース、キチン、キトサン、カードラン、デキストラン、フルクタン、コラーゲン、ジェランガム、アラビアガム、デンプン、キサンタン、トラガカント、カラヤガム、タラガム粉末及びグルコマンナンを基礎とする、少なくとも1種の多糖;b)ポリアミノ酸、コラーゲン、ポリペプチド、リグニンを基礎とする、少なくとも1種の天然由来のアニオン性高分子電解質;又はc)ポリアミノ酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸コポリマー、アクリルアミドコポリマー、リグニン、ポリビニルスルホン酸、ポリカルボン酸、ポリリン酸又はポリスチレンを基礎とする、少なくとも1種の合成アニオン性高分子電解質からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
前記アニオン性高分子電解質は、多官能性エポキシド、イソシアナート、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アミン、アミド、イミド、イミダゾール、ホルムアミド、マイケル反応生成物、カルボジイミド、カルベン、環状カルベン、シクロカルボナート、多官能性カルボン酸、アミノ酸、核酸、メタクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体、ポリビニルアルコール、ポリフェノール、少なくとも1つのアルキル基及び/又はアリール基を有するポリオール、カプロラクタム、リン酸、リン酸エステル、エポキシエステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、カテコール、シラン並びにこれらから形成されたシラノール及び/又はシロキサン、トリアジン、チアゾール、チアジン、ジチアジン、アセタール、ヘミアセタール、キノン、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、アルキド、エステル、ポリエステル、エーテル、グリコール、環状エーテル、クラウンエーテル、無水物、並びにアセチルアセトン及びベータ−ジケト基、カルボニル基及びヒドロキシ基の化学基からなる群から選択される付着基により変性されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を被覆する方法、相応する被覆並びにこの方法により被覆された物品の使用に関する。特に、浸漬法によって金属表面に均質な被覆を作製するためには、数多くの方法が存在する。この場合、特に、主に有機マトリックス並びに有機添加成分及び/又は無機添加成分からなる腐食防止被覆の作製のために、好ましくは次の技術が利用される。
【0002】
これらの従来の方法は、接合されたワークピースの全体の被覆を達成するために、使用される調製物のレオロジー特性の利用に基づいている。この方法では、当該ワークピースを浸漬過程の後に連続的に回転させることにより、被覆材料が臨界箇所(kritischen Stellen)に集まることを軽減できるにもかかわらず、完全に均一な被覆を達成することはできない。更に、被覆の割合が高い箇所では、乾燥過程及び/又は架橋過程の間に、ブリスター形成及びふくれ(Kocher)のような欠陥が生じることがあり、この欠陥は全体の被覆の品質を損なう。
【0003】
電気泳動法は、浸漬における均質な被覆を堆積させるために電流を使用することによりこれらの問題を回避している。この方法によって金属ワークピース上に広範囲に均質な被覆を作製することに成功している。この堆積された被覆は、金属の下地に対して湿った状態では極めて良好な付着を示し、これにより、被覆を剥離させずにこのワークピースを次の洗浄工程で処理することができる。これにより、ワークピースの上述の届きにくい箇所から余剰の塗料溶液が除去され、従って乾燥過程の間に欠陥箇所は生じることがなくなる。この技術は、必要量の電気エネルギー及び高コストを生じさせる適切な浸漬槽の他に、いわゆる角部の平滑化(Kantenfluchten)が生じるという欠点を有する、というのも静電気的な電場は巨視的な角部で不均一に構築され、かつこの角部は不均一に被覆されるか、場合によっては全く被覆されないためである。ワークピースの構造においては、更に中空を避けなければならない、というのも、この箇所ではファラデーケージ現象と同等の効果が生じるためである。この方法によれば、堆積のために必要な電場強度の低減によって、ワークピースのこのような領域では被覆が施されないか、又は著しく低減された被覆が施され(均一性の問題(Umgriffsproblematik))、これが被覆品質を損なうことになる。更に、この技術は、電着塗装(ETL)の場合に、例えば陰極電着塗装(KTL)の場合に、次の欠点を示す:相応する浸漬浴は、温度管理、電流供給及び電気絶縁の全ての電気及び機械装置、電解被覆の際に生じる陽極液−酸を廃棄するまでの循環装置及び添加装置、及び塗料リサイクルのための限外濾過及び制御装置と共に、その構築が極めて高価である。このプロセス管理は、大きな電流強度及びエネルギー量に基づき、並びに浴の容量にわたる電気パラメータの均等化及び全てのプロセスパラメータの正確な調整並びに装置の整備及び清浄化の際に、極めて高い技術的コストを必要とする。
【0004】
この場合に、公知のオートフォレティック法(autophoretischen Verfahren)は、使用される基材表面への腐食攻撃からなる無電流コンセプトに基づき、金属イオンが表面から溶け出し、かつ生じる界面での金属イオンの濃度に基づいてエマルションが凝固する。この方法は、電解法のファラデーケージ効果に関する上述の制限を有していないにもかかわらず、このプロセスの場合に生じる被覆は、最初の活性化工程の後に費用のかかる多工程の浸漬法で固定しなければならない。更に、この腐食攻撃は、金属イオンによる活性区域の不可避の汚染を引き起こすため、この金属イオンをこの区域から除去しなければならない。更に、この方法は、化学的堆積プロセスに基づいており、このプロセスは自己調節せず、かつ必要な場合に、例えば電解法の場合のように電流の遮断により中断することができない。従って、活性区域中での金属基材の比較的長い滞留時間で、厚すぎる層厚の形成は避けられない。
【0005】
ここから、できる限り閉鎖された、かつほぼ平坦な被覆を比較的厚い厚さで製造するために、均質な被覆を浸漬プロセスで効率的にかつ低コストで作製することは、長い間追い求められていた要望である。
【0006】
文献DE 102014213873 A1からは、基材を被覆する方法及びこの方法により被覆された物品が公知であり、この場合、基材の清浄化された表面を、分散液又は/及び懸濁液の形の水性組成物と接触させ、かつこの水性組成物で被覆し、かつ有機被覆の乾燥後に、同種の、又は別の被覆組成物による被覆を乾燥及び/又は焼き付けの前に行うことができる。この方法の本質的な特徴は、分散液又は/及び懸濁液の形の水性組成物による被覆の前に、基材を、多価金属カチオンが挿入されているコロイド状のケイ酸塩のゾル又はシラン変性された又はケイ酸塩変性されたポリマーで覆うという点である。
【0007】
本発明は、分散液及び/又は懸濁液の形の水性組成物(以後、被覆組成物とも言う)により基材の金属表面を被覆する方法に関するものであり、この水性組成物は、少なくとも1種の安定化された結合剤及びゲル化剤を含み、かつ前処理工程で、及び/又は接触の間に金属表面から溶け出したカチオンによって、イオノゲンゲルを基礎とする被覆を形成し、この際、この被覆は:
I. 清浄化された金属表面を備えた基材を準備する工程
II. この金属表面を、分散液及び/又は懸濁液の形の第1の水性組成物と接触させ、かつこの水性組成物で被覆する工程、
III. 場合により、この有機被覆を洗浄する工程、
IV. 場合により、この有機被覆を乾燥する工程及び
V. 施され全ての層の乾燥及び架橋の前に、少なくとも1種の別の被覆組成物で被覆する工程により行われ、この場合、安定化された結合剤は、
a) 完全脱塩水と、ゲル化剤0.2〜2質量%と、安定化された結合剤5〜20質量%とからなる水性混合物を;
b) 1〜7のpH値に調節する;
c) 清浄化された基材を、b)の混合物に室温で少なくとも1分間浸漬する、及び
d) 少なくとも1μmの有機被覆の堆積が行われているかどうか調査する、この場合、
e) 付加的にゲル化剤なしの試験を実施し、この試験では完全脱塩水と試験されるべき分散液5〜20質量%とからなる混合物を製造する;
f) e)で製造された混合物を、同様に1〜7のpH値に調節する、及び
g) c)及びd)に記載された試験を繰り返す
という条件を満たさなければならない。
【0008】
意外にも、金属表面を備えた基材は、本発明により選択された安定化された結合剤及びゲル化剤の水性組成物で処理する際に、接触の間に金属表面から溶け出したカチオンによりイオノゲンゲルを基礎とする被覆を形成し、かつこの基材上に堆積されたイオノゲンゲル層は、金属表面から更に溶け出したカチオンが通り抜けて拡散することを許容するので、更なる本発明による被覆組成物による被覆を更なる被覆浴/被覆工程で行うことができることが見出された。
【0009】
好ましくは、
a) 完全脱塩水と、ゲル化剤0.3〜1質量%と、安定化された結合剤7〜15質量%とからなる水性混合物を;
b) 鉱酸を用いて1.5〜5のpH値に調節する;
c) 清浄化された基材を、b)の混合物に室温で2〜15分間浸漬する、及び
d) 少なくとも2μmの有機被覆の堆積が行われているかどうか調査する、この場合、
e) 付加的にゲル化剤なしの試験を実施し、この試験では完全脱塩水と試験されるべき分散液7〜15質量%とからなる混合物を製造する;
f) e)で製造された混合物を、同様に鉱酸で1.5〜5のpH値に調節する、及び
g) c)及びd)に記載された試験を繰り返す
の条件を満たす安定化された結合剤が選択される。
【0010】
安定化された結合剤は、特に好ましくは、非イオン性に安定化されたポリエポキシ分散液、非イオン性に安定化されたポリウレタン分散液及びイオン性に安定化されたポリアクリラート分散液からなる群から選択される。
【0011】
好ましくは、この水性組成物は、固体含有率20〜90質量%、粘度100〜5000mPas、密度1.0〜1.2g/cm
3及び0.5〜10の範囲内のpH値の安定化された分散液を、生じる混合物の全質量を基準として0.01〜80.0質量%の量で、及び少なくとも1種のゲル化剤を、生じる混合物の全質量を基準として0.001〜20.0質量%の量で含む。
【0012】
特に好ましくは、この水性組成物は、更に、次の群:
a) 0.01g/L〜50g/Lの量の、シラン、シロキサン、フェノール樹脂タイプ又はアミンからなる群から選択される架橋剤、
b) 0.01g/L〜50g/Lの量の、錯体のフッ化チタン及び/又はフッ化ジルコニウム、
c) 少なくとも1種の消泡剤の含分及び
d) 顔料、殺生物剤、分散助剤、塗膜形成助剤、pH値を調節するための助剤、増粘剤及びレベリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加物
から選択される1種以上の代表物を含む。
【0013】
好ましくは、a)グリコーゲン、アミロース、アミロペクチン、カロース、寒天、アルギン、アルギナート、ペクチン、カラーゲン、セルロース、キチン、キトサン、カードラン、デキストラン、フルクタン、コラーゲン、ジェランガム、アラビアガム、デンプン、キサンタン、トラガカント、カラヤガム、タラガム粉末及びグルコマンナンを基礎とする、少なくとも1種の多糖;b)ポリアミノ酸、コラーゲン、ポリペプチド、リグニンを基礎とする、少なくとも1種の天然由来のアニオン性高分子電解質又はc)ポリアミノ酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸コポリマー、アクリルアミドコポリマー、リグニン、ポリビニルスルホン酸、ポリカルボン酸、ポリリン酸又はポリスチレンを基礎とする、少なくとも1種の合成アニオン性高分子電解質から選択されるゲル化剤を含むか、又はこのゲル化剤からなる。
【0014】
特に好ましくは、この水性組成物及びこの水性組成物から製造された有機被覆は、アルコール基及びカルボキシル基の全体数を基準として5〜75%の範囲内のカルボキシ官能基のエステル化度を有するアニオン性多糖から選択される、少なくとも1種のアニオン性多糖を含む。
【0015】
更に特に好ましくは、この水性組成物及びこの水性組成物から製造された有機被覆は、500〜1000000g/mol
-1の範囲内の分子量を有するアニオン性多糖又はアニオン性高分子電解質から選択される、少なくとも1種のアニオン性多糖又は少なくとも1種のアニオン性高分子電解質を含む。
【0016】
この水性組成物及びこの水性組成物から製造された有機被覆は、1〜50%の範囲内のカルボキシ官能基のアミド化度又は80%までのカルボキシ官能基のエポキシ化度を有するアニオン性多糖又はアニオン性高分子電解質から選択される、少なくとも1種のアニオン性多糖又は少なくとも1種のアニオン性高分子電解質を含む。
【0017】
好ましくは、アニオン性高分子電解質は、多官能性エポキシド、イソシアナート、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アミン、アミド、イミド、イミダゾール、ホルムアミド、マイケル反応生成物、カルボジイミド、カルベン、環式カルベン、シクロカルボナート、多官能性カルボン酸、アミノ酸、核酸、メタクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体、ポリビニルアルコール、ポリフェノール、少なくとも1つのアルキル基及び/又はアリール基を有するポリオール、カプロラクタム、リン酸、リン酸エステル、エポキシエステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、カテコール、シラン並びにこれらから形成されたシラノール及び/又はシロキサン、トリアジン、チアゾール、チアジン、ジチアジン、アセタール、ヘミアセタール、キノン、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、アルキド、エステル、ポリエステル、エーテル、グリコール、環式エーテル、クラウンエーテル、無水物、並びにアセチルアセトン、及びベータ−ジケト基、カルボニル基及びヒドロキシ基の化学基からなる群から選択される付着基で変性されている。
【0018】
特に好ましくは、この水性組成物及びこの水性組成物から製造された有機被覆は、金属カチオン用の少なくとも1種の錯生成剤又は金属カチオンが錯化して変性されているポリマーの含分を有する。
【0019】
更に特に好ましくは、この水性組成物及びこの水性組成物から製造された有機被覆は、マレイン酸、アレンドロン酸、イタコン酸、シトラコン酸又はメサコン酸又はこれらのカルボン酸の無水物又は半エステルを基礎とする錯生成剤から選択される少なくとも1種の錯生成剤の含分を有する。
【0020】
この水性組成物及びこの水性組成物から製造された有機被覆は、メラミン塩、ニトロソ塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩、第4級窒素カチオンを有する塩、アンモニウム誘導体の塩及びAg、Al、Ba、Ca、Co、Cu、Fe、In、Mg、Mn、Mo、Ni、Pb、Sn、Ta、Ti、V、W、Zn及び/又はZrの金属塩からなる群から選択されるカチオン性に作用する塩を基礎とするカチオンから選択される少なくとも1種のカチオンを含む。
【0021】
好ましくは、前記水性組成物は、シラン、シロキサン、フェノール樹脂タイプ又はアミンからなる群から選択される架橋剤を0.01g/L〜50g/Lの量で含む。
【0022】
特に好ましくは、前記水性組成物は、フッ化チタン錯体及び/又はフッ化ジルコニウム錯体を0.01g/L〜50g/Lの量で含む。
【0023】
特に好ましくは、前記水性組成物は、フッ化チタン錯体及び/又はフッ化ジルコニウム錯体を0.1g/L〜30g/Lの量で含む。
【0024】
前記水性組成物は、少なくとも1種の消泡剤の含分を有する。
【0025】
前記水性組成物は、更に、顔料、殺生物剤、分散助剤、塗膜形成助剤、pH値を調節するための助剤、増粘剤及びレベリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加物を含むことができる。
【0026】
好ましくは、方法工程IIにおいて金属表面を前記水性組成物と接触させ、かつ前記水性組成物で被覆する前に、金属表面を清浄化するか、酸洗いするか、又は前処理する。
【0027】
好ましくは、本発明による方法の場合に、水性組成物のいずれもが、イオノゲンゲルを基礎とする被覆を形成し、この場合、堆積された全ての被覆の層厚は、施された全ての層の乾燥及び架橋後に、3〜500μm、好ましくは5〜300μm、特に好ましくは8〜100μmの範囲内にあり、かつ2〜10の層、好ましくは3〜5の層が堆積される。
【0028】
個々の有機層は、浸漬浴中で0.05〜20分間で形成され、かつ乾燥後に、それぞれ1〜100μm、好ましくは3〜60μm及び特に好ましくは5〜30μmの範囲内の乾燥塗膜の厚さを示す。
【0029】
本発明は、本発明による方法で使用するための、それぞれ、生じる混合物の全質量を基準として0.01〜80.0質量%の量の、固体含有率30〜90質量%、粘度100〜5000mPas及び密度1.0〜1.2g/cm
3を示す少なくとも1種の安定化された分散液と、生じる混合物の全質量を基準として0.001〜20.0質量%の量のゲル化剤をとの混合物からなり、1〜7の範囲内のpH値を示す水性組成物にも関する。
【0030】
好ましくは、前記水性組成物は、更に次の群:
a) 0.01g/L〜50g/Lの量の、シラン、シロキサン、フェノール樹脂タイプ又はアミンからなる群から選択される架橋剤、
b) 0.01g/L〜50g/Lの量の、フッ化チタン錯体及び/又はフッ化ジルコニウム錯体、
c) 少なくとも1種の消泡剤の含分及び
d) 顔料、殺生物剤、分散助剤、塗膜形成助剤、pH値を調節するための助剤、増粘剤及びレベリング剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加物
から選択される1種以上の代表物を含む。
【0031】
本発明による被覆は、好ましくは、線材、ワイヤネット、帯材、板材、異形材、外装、車両又は飛行物体の部材、家庭用機器用の構成要素、建設における構成要素、フレーム、ガードレール構成要素、放熱器構成要素、フェンス構成要素、複雑な形状の成形品又は小型部材、例えばネジ、ナット、フランジ又はバネとしての被覆された基材用に使用することができる。特に好ましくは、本発明による被覆は、自動車製造において、建設において、機械製造用、家庭用機器用又は暖房装置製造において使用される。本発明による方法の使用は、特に、電着塗装による被覆の際に問題がある基材の被覆のために好ましい。
【0032】
次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、この実施例により本発明の請求項1に記載の一般的教示は制限されるものではない。
【0033】
実施例
使用した材料及び方法の実施の一般的記載を前置きする
A. 基材:
1: 5μmの亜鉛層被覆を備えた電気めっき鋼板、板の厚さは0.81mm、
2: 冷間圧延鋼、板の厚さ約0.8mm、
3: 品質等級AC170のアルミニウム合金、板の厚さ約1.0mm
【0034】
B. アルカリ性の清浄化:
1:Chemetall GmbH社のGardoclean(登録商標)S 5176 30g/L及びGardobond(登録商標)Additiv H 7406 4g/Lを、水道水(Stadtwasser)中で調合した。前記の板材を、60℃の噴霧浴中で180秒間清浄化し、引き続き浸漬浴中、水道水で120秒間、脱イオン水で120秒間、洗浄した。
【0035】
C. 前処理:
1: リン酸亜鉛ベース(Gardobond 26S、Chemetall GmbH社)の前処理
2:シランベース(Oxsilan 9810/2、Chemetall GmbH社)の前処理。
【0036】
有機被覆を形成するための本発明による調製物を用いた表面の被覆:
全ての混合物を、浸漬浴により室温で5分間、それぞれの基材に適用した。
【0037】
D. 調製物の成分
下記の表中の全ての表示は、それぞれの成分の供給形態の形での百分率の質量割合を表す。含まれる完全脱塩水の百分率の割合は、100質量パーセントからの、表中に示された含有率の合計の差分に相当する。
【0038】
a) 使用した結合剤(ポリマー分散液/懸濁液)
1: 分散液A
固体含有率45〜49%、pH値5.0〜6.0、粘度1000〜2000mPas、エポキシ当量2300〜2800及び密度1.1g/cm
3を示す非イオン性に安定化されたポリエポキシ分散液。
【0039】
2: 分散液B
固体含有率30%、pH値3.0〜6.0、粘度300〜2000mPas及び密度1.1g/cm
3を示す非イオン性に安定化されたポリウレタン分散液。
【0040】
3: 分散液C
固体含有率50%、pH値7.5〜8.5、粘度200mPas、密度1.05g/cm
3を示すイオン性に安定化されたポリアクリラート分散液。
【0041】
b) 使用したゲル化剤
1: ゲル化剤A
ゲル化剤として、分子量約70000g/mol、アミド化度11%、エステル化度10%、エポキシ化度0%、ガラクトウロン酸含有率88%を有する多糖と、分子量約70000g/mol、アミド化度0%、エステル化度38%、エポキシ化度0%、ガラクトウロン酸含有率85%を示す多糖との1:1混合物を使用した。調製物の製造のために、多糖類の2%水溶液を使用した。
【0042】
2: ゲル化剤B
ゲル化剤として、分子量約70000g/mol、アミド化度0%、エステル化度15%、エポキシ化度0%、ガラクトウロン酸含有率85%を示す多糖を使用した。調製物の製造のために、多糖類の2%水溶液を使用した。
【0043】
c) 顔料
1: 顔料含有率4%、充填材含有率50%、分散添加物の含有率10%を示し、生じる固体含有率約60%を示す、酸性領域のpH値を示す水性被覆系中での適用のための分散樹脂を基礎とするガスブラックRCC顔料ペースト
2: 二酸化チタン−ルチルを基礎とする、無機及び有機被覆された微粉化された白色顔料
3: pH値7〜10及び密度1.7〜1.9g/cm
3の、カラーインデックス顔料 レッド101/77 491を示す、水性分散液の形の、隠蔽性の、酸化鉄レッド
4: pH値7〜10及び密度1.1〜1.3の、顔料のカラーインデックス ブルー15:2/74 160を示す、水性分散液の形の、アルファ型の、Cuフタロシアニン
5: pH値7〜10及び密度1.3〜1.4の、顔料のカラーインデックス イエロー138/56 300を示す、良好に流動するペーストの、キノフタロンイエロー
【0044】
d) 添加物
1: フッ化物含有の前処理水溶液−前処理を行った基板(IIの点を参照)を使用する場合には使用しない。好ましくはアルミニウム基材上での堆積のために利用。
2: 水溶液(20%)としてのリン酸
3: 天然油、乳化剤を基礎とし、かつ水中で供給形態の1質量%の含有率を有する消泡剤。表の記載は、調製物1リットル当たりの溶液の量を基準とする。
【0045】
添加物は、好ましくは、調製物を規定のpH値に適合させなければならないか、又は発泡が形成される場合に適用される。
【0046】
例示的に用いられた調製物の一覧
【表1-1】
【表1-2】
表1: 本発明による被覆及び被覆順序のための調製物例
【0047】
E: 有機被覆の洗浄:
有機被覆後の洗浄は、調製物の付着していない成分及び調製物の付着物を除去しかつ工業的適用のためにできるだけ実際に近い通常の方法工程を再現するために用いる。
【0048】
F: 被覆の乾燥及び架橋:
乾燥又は塗膜形成下での乾燥、この場合、塗膜形成とは、本発明の意味範囲で、被覆の、特に有機ポリマー成分の焼き付け又は架橋であるとも解釈される:
1: 20分間で200℃
【0049】
被覆順序の例
ここでは、これらの実施例に限定されずに、基材2上での次の被覆順序を例示的に挙げる:
実施例1
工程I
工程II 調製物番号9を用いて120s(乾燥塗膜の厚さ15μm)
工程III 15s
工程II 調製物番号1を用いて60s(乾燥塗膜の厚さ5μm)
工程III 15s
工程II 調製物番号10を用いて80s(乾燥塗膜の厚さ10μm)
工程III 15s
工程II 調製物番号4を用いて60s(乾燥塗膜の厚さ5μm)
工程III 15s
工程II 調製物番号11で60s(乾燥塗膜の厚さ5μm)
工程III 15s
170℃で10分間の被覆の乾燥及び塗膜形成。多様な層中で3つの例示的に使用した結合剤の使用下で、顔料添加物により光学的に明らかに識別可能な5層の被覆が得られる。
【0050】
実施例2
工程I
工程II 調製物番号15で180s(乾燥塗膜の厚さ20μm)
工程III 15s
工程II 調製物番号7で60s(乾燥塗膜の厚さ20μm)
工程III 15s
工程II 調製物番号16で80s(乾燥塗膜の厚さ20μm)
工程III 15s
170℃で10分間の被覆の乾燥及び塗膜形成。顔料添加物により光学的に明らかに認識可能な3層の被覆が得られる。
【0051】
実施例3
工程I
工程II 調製物番号3で180s(乾燥塗膜の厚さ20μm)
工程III 15s
工程II 調製物番号11で60s(乾燥塗膜の厚さ20μm)
工程III 15s
工程II 調製物番号3で80s(乾燥塗膜の厚さ20μm)
工程III 15s
170℃で10分間の被覆の乾燥及び塗膜形成。顔料添加物により光学的に明らかに認識可能な、約60μmの3層の被覆が得られる。