(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センサシートは、更に、前記第1外側電極層の前記第1誘電層側と反対側に積層された第1保護層、及び、前記第2外側電極層の前記第2誘電層側と反対側に積層された第2保護層のうちの少なくとも1つを含む請求項1又は2に記載に静電容量型センサ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の実施形態に係る静電容量型センサは、中央電極層と、上記中央電極層の上面に積層された第1誘電層と、上記中央電極層の下面に積層された第2外側電極層と、上記第1誘電層の上記中央電極層側と反対側の面に形成された第1外側電極層と、上記第2誘電層の上記中央電極層側と反対側の面に形成された第2外側電極層とを含み、
上記第1誘電層及び上記第2誘電層は、エラストマー製であり、
上記中央電極層及び上記第1外側電極層の対向する部分を第1検出部、上記中央電極層及び上記第2外側電極層の対向する部分を第2検出部とし、
可逆的に変形可能で、かつ、変形に応じて上記第1検出部及び上記第2検出部の静電容量が変化するセンサシートと、
上記中央電極層、上記第1外側電極層及び上記第2外側電極層に接続され、上記第1検出部及び上記第2検出部の静電容量を測定する計測器と、を備え、
上記第1検出部の静電容量と上記第2検出部の静電容量とを加算した合計静電容量に基づいて上記センサシートの変形状態を計測するものである。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る静電容量型センサの一例を示す概略図である。
図2(a)は、本発明の実施形態に係る静電容量型センサを構成するセンサシートの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る静電容量型センサ1は、
図1に示すように、静電容量を検出するセンサシート2と、センサシート2と外部配線(リード線等)を介して電気的に接続された計測器3と、計測器3での計測結果を表示するための表示器4とを備えている。
計測器3は、静電容量Cを周波数信号Fに変換するためのシュミットトリガ発振回路3a、周波数信号Fを電圧信号Vに変換するF/V変換回路3b、電源回路(図示せず)を備えている。計測器3は、センサシート2の検出部で検出された静電容量Cを周波数信号Fに変換した後、更に電圧信号Vに変換し、表示器4に送信する。なお、後述するように、計測器3の構成はこのような構成に限定されるわけではない。
表示器4は、モニター4a、演算回路4b、記憶部4cを備えている。表示器4は、計測器3で測定された上記静電容量Cの変化をモニター4aに表示させるとともに、上記静電容量Cの変化を記録データとして記憶する。
【0019】
センサシート2は、エラストマー製でシート状の裏側誘電層(第2誘電層)11Bと、裏側誘電層11Bの表面(おもて面)に形成された中央電極層12Aと、裏側誘電層11Bの裏面に形成された裏側電極層(第2外側電極層)12Cと、中央電極層12Aの表側(
図2中、上側)に積層された表側誘電層(第1誘電層)11Aと、表側誘電層11Aの表面に形成された表側電極層(第1外側電極層)12Bとを備える。よって、センサシート2では、中央電極層12Aの上面に表側誘電層11Aが積層され、中央電極層12Aの下面に裏側誘電層11Bが積層されている。
更に、センサシート2は、中央電極層12Aに連結された中央配線13Aと、表側電極層12Bに連結された表側配線13Bと、裏側電極層12Cに連結された裏側配線13Cと、中央配線13Aの中央電極層12Aと反対側の端部に取り付けられた中央接続部14Aと、表側配線13Bの表側電極層12Bと反対側の端部に取り付けられた表側接続部14Bと、裏側配線13Cの裏側電極層12Cと反対側の端部に取り付けられた裏側接続部14Cとを備える。
また、センサシート2では、表側誘電層11Aの表側に表側保護層(第1保護層)15Aが設けられ、裏側誘電層11Bの裏側に裏側保護層(第2保護層)15Bが設けられている。
【0020】
中央電極層12A、表側電極層12B及び裏側電極層12Cは、同一の平面視形状を有している。中央電極層12Aと表側電極層12Bとは表側誘電層11Aを挟んで全体が対向しており、中央電極層12Aと裏側電極層12Cとは裏側誘電層11Bを挟んで全体が対向している。センサシート2では、中央電極層12Aと表側電極層12Bとの対向した部分が表側検出部(第1検出部)となり、中央電極層12Aと裏側電極層12Cとの対向した部分が裏側検出部(第2検出部)となる。
なお、上記センサシートにおいて、上記中央電極層及び上記表側電極層は、必ずしも誘電層を挟んでその全体が対向している必要はなく、少なくともその一部が対向していればよい。また、上記中央電極層及び上記裏側電極層も、必ずしも誘電層を挟んでその全体が対向している必要はなく、少なくともその一部が対向していればよい。
【0021】
センサシート2では、上記第1検出部の静電容量と上記第2検出部の静電容量とを加算した合計静電容量をセンサシート2の検出部の静電容量とする。
そのため、センサシート2では、表側電極層12B(表側接続部14B)と裏側電極層12C(裏側接続部14C)とが電気的に接続した状態(短絡した状態)でリード線等を介して計測器3の端子に接続され、中央電極層12A(中央接続部14A)がリード等を介して計測器3の別の端子に接続される。
【0022】
また、センサシート2では、図示していないが、センサシート2の表側及び/又は裏側の最外層に粘着層が形成されていてもよい。
上記粘着層を形成することにより、センサシートを測定対象物に貼り付けて使用することができる。
【0023】
センサシート2では、表側誘電層11A及び裏側誘電層11Bがともにエラストマー製であるため、面方向に変形(伸縮)可能である。また、誘電層11(表側誘電層11A及び裏側誘電層11B)が面方向に変形した際には、その変形に追従して各電極層(中央電極層12A、表側電極層12B及び裏側電極層12C)、並びに、表側保護層15A及び裏側保護層15B(以下、両者を合わせて単に保護層ともいう)が変形する。
そして、センサシート2の変形に伴い、各検出部の静電容量が誘電層(表側誘電層11A及び裏側誘電層11B)の変形量と相関をもって変化する。よって、静電容量の変化を検出することで、センサシート2の変形量を検出することができる。
【0024】
センサシート2を備えた静電容量型センサは、ノイズによる静電容量の測定値の変動を抑えることができ、ノイズが存在する状況下や、測定時にノイズが変動する状況下でも正確にセンサシートの変形状態を計測することができる。
静電容量型センサを使用する場合、上述したように電磁ノイズや電源ノイズが入りやすい場所や、センサシートの電極層が導体と接触又は近接する環境で使用すると、使用状況によって検出部の静電容量の測定値が変動することがある。
例えば、特許文献1に開示されたような、1層の誘電層とその表面及び裏面のそれぞれに形成された電極層とを備えたセンサシートでは、表側からノイズが入りこむか(表側がノイズ源に近接するか)、又は、裏側からノイズが入りこむか(裏側がノイズ源に近接するか)によって、静電容量の測定値が異なることがある。
更に、表側の電極層及び裏側の電極層の両方に導体が近接し、表側の導体層に近接した導体と裏側の導体層に近接した導体とが電気的に接続されている場合(例えば、電極層上に保護層が積層されたセンサシートの両側を水や身体で触れる場合や、電極層上に保護層が積層されたセンサシートの両側を電気的に接続された金属板で挟む場合等)にも、静電容量の測定値が異なることがある。この場合では、表側の電極層とこれに近接した導体との間の静電容量、及び、裏側の電極層とこれに近接した導体との間の静電容量が、直列で接続された2つの静電容量の合成静電容量として、センサシートの本来の検出部の静電容量に加算されて測定されることとなる。
【0025】
これに対して、上記静電容量型センサでは、センサシートが上述した構成を備え、第1検出部の静電容量と第2検出部の静電容量とを加算した合計静電容量を測定する。即ち、上記センサシートでは、検出部の構造(第1検出部及び第2検出部の構造)を2つのコンデンサが並列に配置された構造とみなして静電容量の測定を行う。そのため、例えば、上記静電容量型センサでは、表側電極層(第1外側電極層)と裏側電極層(第2外側電極層)とを両者が電気的に接続された状態(短絡した状態)で計測器に接続する。この場合、表側(上面側)からノイズが入りこむ(表側がノイズ源に近接する)場合も、裏側(下面側)からノイズが入りこむ(裏側がノイズ源に近接する)場合も、各電極層を所定の向きで計測器に接続している限り、静電容量の測定値は略同一の値となる。
また、センサシートの表側及び裏側の両側から、第1外側電極層及び第2外側電極層のそれぞれに、互いに電気的に接続された導体が近接した場合(例えば、水に浸かる、身体で保護層が積層されたセンサシートの両側を触れる、接続された2枚の金属板で保護層が積層されたセンサシートを挟む)でも、各電極層を所定の向きで計測器に接続している限り静電容量の測定値は略同一の値となる。この場合、第1外側電極層と第2外側電極層とは、同一の電位となるため、それぞれの外側電極層と近接した導体との間の静電容量が介入する経路が形成されず、近接する導体と各外側電極層との間の静電容量が加算されて測定されることがないからである。
よって、上述した通り、本実施形態に係る静電容量型センサシートでは、ノイズによる静電容量の測定値の変動を抑えることができる。
なお、本発明において、外側電極層に導体が近接するとは、金属部材等の導電性の部材が近接する場合は勿論のこと、生体表面が近接する場合や、水や汗、体液等の導電性を有する液体が外側電極層に付着する場合等を含む概念である。
【0026】
以下、上記静電容量型センサが備える各部材について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、第1誘電層及び第2誘電層の説明に関して特に両者を区別する必要がない場合は、単に「誘電層」と表記することがあり、中央電極層、第1外側電極層(表側電極層)及び第2外側電極層(裏側電極層)の説明に関して特に各電極層を区別する必要がない場合は、単に「電極層」と表記することがある。
【0027】
<センサシート>
<<誘電層(第1誘電層及び第2誘電層)>>
上記センサシートは、エラストマー製の第1誘電層及び第2誘電層を備える。上記第1誘電層及び上記第2誘電層は、エラストマー組成物を用いて形成することができる。第1誘電層と第2誘電層とは、同一のエラストマー組成物を用いて形成されていても良いし、異なるエラストー組成物を用いて形成されていても良い。上記第1誘電層及び上記第2誘電層は、同一のエラストマー組成物を用いて形成されていることが好ましい。誘電層が変形する際に同様の挙動を示すからである。
【0028】
上記誘電層は、エラストマー組成物を用いて形成されたシート状物であり、その表裏面の面積が変化するように可逆的に変形することができる。なお、誘電層の表裏面とは、誘電層の表(おもて)面及び裏面を意味する。
【0029】
上記エラストマー組成物としては、エラストマーと、必要に応じて他の任意成分とを含有する組成物が挙げられる。
上記エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
これらのなかでは、ウレタンゴム、シリコーンゴムが好ましい。永久歪み(または永久伸び)が小さいからである。更に、シリコーンゴムに比べてカーボンナノチューブとの密着性に優れるため、電極層がカーボンナノチューブを含有する場合にはウレタンゴムが特に好ましい。
【0030】
上記ウレタンゴムは、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とが反応してなるものである。上記ウレタンゴムの具体例としては、例えば、オレフィン系ポリオールをポリオール成分とするオレフィン系ウレタンゴム、エステル系ポリオールをポリオール成分とするエステル系ウレタンゴム、エーテル系ポリオールをポリオール成分とするエーテル系ウレタンゴム、カーボネート系ポリオールをポリオール成分とするカーボネート系ウレタンゴム、ひまし油系ポリオールをポリオール成分とするひまし油系ウレタンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。また、上記ウレタンゴムは、2種以上の上記ポリオール成分を併用したものであってもよい。
【0031】
上記オレフィン系ポリオールとしては、例えば、エポール(出光興産社製)等が挙げられる。
また、上記エステル系ポリオールとしては、例えば、ポリライト8651(DIC社製)等が挙げられる。
また、上記エーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、PTG−2000SN(保土谷化学工業社製)、ポリプロピレングリコール、プレミノールS3003(旭硝子社製)、パンデックスGCB−41(DIC社製)等が挙げられる。
【0032】
上記イソシアネート成分としては特に限定されず、従来公知のイソシアネート成分を用いることができる。
また、上記ウレタンゴムを合成する際には、その反応系中に必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、触媒、加硫促進剤等を加えても良い。
【0033】
また、上記エラストマー組成物は、エラストマー以外に、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤、誘電性フィラー等を含有してもよい。
【0034】
上記誘電層の平均厚さ(表側誘電層及び裏側誘電層のそれぞれの平均厚さ)は、静電容量Cを大きくして検出感度の向上を図る観点、及び、測定対象物への追従性の向上を図る観点から、10〜1000μmであることが好ましく、30〜200μmであることがより好ましい。
なお、上記表側誘電層及び上記裏側誘電層のそれぞれの厚さは、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0035】
上記誘電層は、変形時に面積(表側誘電層の表面の面積及び裏側誘電層の裏面の面積)が無伸長状態から30%以上増大するように変形可能であることが好ましい。このような特性を有すると、上記センサシートを測定対象物に貼り付けて使用する場合に、測定対象物の変形等に追従して変形するのに適しているからである。
ここで、面積が30%以上増大するように変形可能であるとは、上記誘電層が、荷重を掛けて面積を30%増大させても破断することがなく、かつ、荷重を解放すると元の状態に復元する(即ち、弾性変形範囲にある)ことを意味する。上記誘電層の面積の変形可能な範囲は、50%以上増大するように変形可能であることがより好ましく、100%以上増大するように変形可能であることが更に好ましく、200%以上増大するように変形可能であることが特に好ましい。
上記誘電層の面方向の変形可能な範囲は、誘電層の設計(材質や形状等)により制御することができる。
【0036】
上記誘電層の常温における比誘電率は、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。誘電層の比誘電率が2未満であると、検出部の静電容量が小さくなり、センサシートとして充分な感度が得られないことがある。
【0037】
上記誘電層のヤング率は、0.1〜10MPaであることが好ましい。ヤング率が0.1MPa未満であると、誘電層が軟らかすぎ、高品質な加工が難しく、充分な測定精度が得られないことがある。一方、ヤング率が10MPaを超えると、誘電層が硬すぎ、測定対象物が変形しようとした際に、その変形を阻害するおそれがある。
【0038】
上記誘電層の硬さは、JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータを用いた硬さ(JIS A硬さ)で、0〜30°であるか、又は、JIS K 7321に準拠したタイプCデュロメータを用いた硬さ(JIS C硬さ)で10〜55°が好ましい。
上記誘電層が軟らかすぎると高品質な加工が難しく、充分な測定精度を確保することができない場合がある。一方、上記誘電層が硬すぎると、測定対象物の変形を阻害する恐れがある。
【0039】
<<電極層(中央電極層、第1外側電極層(表側電極層)及び第2外側電極層(裏側電極層))>>
上記電極層(中央電極層、第1外側電極層及び第2外側電極層)は、いずれも導電材料を含有する導電性組成物からなる。
ここで、各電極層のそれぞれは、同一組成の導電性組成物から構成されていてもよいし、異なる組成の導電性組成物から構成されていてもよい。
【0040】
上記導電材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、導電性カーボンブラック、グラファイト、金属ナノワイヤー、金属ナノ粒子、導電性高分子等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
上記導電材料としては、カーボンナノチューブが好ましい。誘電層の変形に追従して変形する電極層の形成に適しているからである。
【0041】
上記カーボンナノチューブとしては公知のカーボンナノチューブを使用することができる。上記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)であってもよいし、また、2層カーボンナノチューブ(DWNT)又は3層以上の多層カーボンナノチューブ(MWNT)であってもよい(本明細書では、両者を合わせて単に多層カーボンナノチューブと称する)。上記カーボンナノチューブとしては、層数の異なるカーボンナノチューブを2種以上併用してもよい。
上記カーボンナノチューブの形状(平均長さや繊維径、アスペクト比)も特には限定されず、静電容量型センサの使用目的や、センサシートに要求される導電性や耐久性、更には電極層を形成するための処理や費用を総合的に判断して適宜選択すればよい。
【0042】
上記カーボンナノチューブの平均長さは、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。このような繊維長さが長いカーボンナノチューブを用いて形成された電極層は、導電性に優れ、誘電層の変形に追従して変形した際(特に伸長した際)に電気抵抗がほとんど増大せず、更に、繰り返し伸縮しても電気抵抗のバラツキが小さい、との優れた特性を有するからである。
これに対し、上記カーボンナノチューブの平均長さが10μm未満では、電極層の変形に伴って電気抵抗が増大したり、電極層を繰返し伸縮させた際に電気抵抗のバラツキが大きくなったりする場合がある。特に、センサシート(誘電層)の変形量が大きくなった場合にこのような不都合が発生しやすくなる。
【0043】
上記カーボンナノチューブの平均長さの好ましい上限は1000μmである。平均長さが1000μmを超えるカーボンナノチューブは、現時点では、その製造、入手が困難である。また、後述するように、カーボンナノチューブの分散液を塗布して電極層を形成する場合に、カーボンナノチューブの分散性が不充分なため導電パスが形成されにくく、結果的に電極層の導電性が不充分となることが懸念されるからである。
【0044】
上記カーボンナノチューブの平均長さの下限は100μmがさらに好ましく、上限は600μmがさらに好ましい。上記カーボンナノチューブの平均長さが上記範囲内にあると、導電性に優れ、伸長時に電極層の電気抵抗がほとんど増大せず、繰り返し伸縮時に電気抵抗のバラツキが小さい、との優れた特性を高いレベルでより確実に確保することができる。
【0045】
上記カーボンナノチューブの繊維長さは、カーボンナノチューブを電子顕微鏡で観察し、その観察画像から測定すればよい。
上記カーボンナノチューブの平均長さは、例えば、カーボンナノチューブの観察画像から無作為に選んだ10箇所のカーボンナノチューブの繊維長さに基づき平均値を算出すればよい。
【0046】
上記カーボンナノチューブの平均繊維径は特に限定されないが、0.5〜30nmが好ましい。
上記繊維径が0.5nm未満では、カーボンナノチューブの分散が悪くなり、その結果、導電パスが広がらず、電極層の導電性が不充分になることがある。一方、上記繊維径が30nmを超えると、同じ重量でもカーボンナノチューブの本数が少なくなり、導電性が不充分になることがある。上記カーボンナノチューブの平均繊維径は5〜20nmがより好ましい。
【0047】
上記カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブよりも好ましい。
単層カーボンナノチューブを用いた場合、上述した好ましい範囲の平均長さを有するカーボンナノチューブを用いた場合でも、電気抵抗が高くなったり、伸長時に電気抵抗が大きく増大したり、繰り返し伸縮時に電気抵抗が大きくばらついたりすることがある。
この理由については次のように推測している。単層カーボンナノチューブは、通常、金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブとの混合物として合成されるため、この半導体性カーボンナノチューブの存在が、電気抵抗が高くなったり、伸長時に電気抵抗が大きく増大したり、繰り返し伸縮時に電気抵抗が大きくばらついたりする原因となっていると推測している。
なお、金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブとを分離し、平均長さの長い金属性の単層カーボンナノチューブを用いれば、平均長さの長い多層カーボンナノチューブを用いた場合と同様の電気特性を備えた電極層を形成することができる可能性がある。しかし、金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブとの分離は容易ではなく(特に、繊維長さの長いカーボンナノチューブにおいて)、両者の分離には煩雑な作業が必要となるため、電極層を形成する際の作業容易性、及び、経済性の観点からも上述した通り、上記カーボンナノチューブとしては多層カーボンナノチューブが好ましい。
【0048】
上記カーボンナノチューブは、炭素純度が99重量%以上であることが好ましい。カーボンナノチューブは、その製造工程において、触媒金属や分散剤等が含まれることがあり、このようなカーボンナノチューブ以外の成分(不純物)を多量に含有するカーボンナノチューブを用いた場合、導電性の低下や、電気抵抗のバラツキを引き起こすことがある。
【0049】
上記カーボンナノチューブの製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法で製造されたものであればよいが、基板成長法により製造されたものが好ましい。
基板成長法は、CVD法の1種であり、基板上に塗布した金属触媒に炭素源を供給することで成長させてカーボンナノチューブを製造する方法である。基板成長法は、比較的繊維長さが長く、かつ、繊維長さの揃ったカーボンナノチューブを製造するのに適した製造方法であるため、上記電極層に使用するカーボンナノチューブとして適している。
上記カーボンナノチューブが基板製造法により製造されたものである場合、カーボンナノチューブの繊維長さは、CNTフォレストの成長長さと実質的に同一である。そのため、電子顕微鏡を用いてカーボンナノチューブの繊維長さを測定する場合は、CNTフォレストの成長長さを測定すればよい。
【0050】
上記導電性組成物は、カーボンナノチューブ等の導電材料以外に、例えば、バインダー成分を含有していてもよい。
上記バインダー成分はつなぎ材料として機能する。そのため、上記バインダー成分を含有させることにより、電極層と誘電層との密着性、及び、電極層自体の強度を向上させることができる。更に、後述の方法で電極層を形成する際に、カーボンナノチューブ等の導電材料の飛散を抑制することができるため、電極層形成時の安全性も高めることができる。
【0051】
上記バインダー成分としては、例えば、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等が挙げられる。
また、上記バインダー成分としては、生ゴム(天然ゴム及び合成ゴムの加硫させていない状態のもの)も使用することができる。生ゴムのような比較的弾性の弱い材料を用いることで、誘電層の変形に対する電極層の追従性も高めることができる。
上記バインダー成分は、特に誘電層を構成するエラストマーと同種のものが好ましい。誘電層と電極層との密着性を顕著に向上させることができるからである。
【0052】
上記導電性組成物は、カーボンナノチューブ等の導電材料及びバインダー成分以外に、更に各種添加剤を含有してもよい。
上記添加剤としては、例えば、導電材料の分散性を高めるための分散剤、バインダー成分のための架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、着色剤等が挙げられる。
上記センサシートでは、上記導電材料がカーボンナノチューブである場合、電極層が実質的にカーボンナノチューブのみで形成されていてもよい。この場合も電極層と誘電層との間で充分な密着性を確保することができる。カーボンナノチューブと誘電層とはファンデルワールス力等により強固に密着する。
【0053】
上記電極層中のカーボンナノチューブの含有量は導電性が発現する濃度であれば特に限定されず、バインダー成分を含有する場合にはバインダー成分の種類によっても異なるが、電極層の全固形成分に対して0.1〜100重量%であることが好ましい。
また、カーボンナノチューブの含有量を高めれば、電極層の導電性を向上させることができる。そのため、電極層を薄くしても要求される導電性を確保することができ、その結果、電極層を薄くしたり、電極層の柔軟性を確保したりすることがより容易になる。
【0054】
上記電極層の平均厚さ(各電極層のそれぞれの平均厚さ)は、0.1〜10μmであることが好ましい。電極層の平均厚さが上記範囲にあることで、電極層が誘電層の変形に対してより優れた追従性を発揮することができる。
一方、上記平均厚さが0.1μm未満では、導電性が不足し、センサシートとしての測定精度が低下するおそれがある。一方、10μmを超えるとカーボンナノチューブ等の導電材料の補強効果によりセンサシートが硬くなり、センサシートの伸縮性が低下し、測定対象物の変形や動きに追従した変形が阻害されることがある。また、センサシートが硬くなると、測定対象物自体の変形等を阻害することがある。
【0055】
上記電極層の平均厚さは、例えば、レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製、VK−9510)を用いて測定することができる。具体的には、誘電層の表面に形成された電極層の厚さ方向を0.01μm刻みでスキャンし、誘電層の表面の3D形状を測定した後、誘電層上の電極層が積層されている領域及び積層されていない領域において、それぞれ縦200×横200μmの矩形領域の平均高さを計測し、その平均高さの段差を電極層の平均厚さとすればよい。
【0056】
上記センサシートを構成する、中央電極層、表側電極層及び裏側電極層のそれぞれの導電性は特に限定されない。
【0057】
<<保護層>>
上記センサシートは、
図2に示した例のように、保護層(表側保護層及び裏側保護層)が積層されていることが好ましい。上記保護層を設けることにより、表側電極層及び裏側電極層等を外部から電気的に絶縁することができる。また、上記保護層を設けることにより、センサシートの強度や耐久性を高めることができる。
上記保護層の材質は特に限定されず、その要求特性に応じて適宜選択すればよい。上記保護層の材質の具体例としては、例えば、上記誘電層の材質と同様のエラストマー組成物等が挙げられる。
【0058】
<<その他>>
上記センサシートは、
図2に示した例のように、通常、各電極層と接続された中央配線、表側配線、裏側配線が形成されている。
これらの各配線は、誘電層の変形を阻害せず、かつ、誘電層が変形しても導電性が維持されるものであればよい。各配線の具体例としては、例えば、上記電極層と同様の導電性組成物からなる導体が挙げられる。
また、上記の各配線は必要とされる導電性が確保される範囲でその幅が狭いことが好ましい。
【0059】
更に、上述した各配線それぞれの電極層と反対側の端部には、
図2に示した例のように、通常、外部配線と接続するための接続部(中央接続部、表側接続部及び裏側接続部)が形成されている。これらの各接続部としては、例えば、銅箔等を用いて形成されたものが挙げられる。
【0060】
上記センサシートは、上述したように、センサシートの裏側の最外層に粘着層が形成されていてもよい。これにより、粘着層を介して上記センサシートを測定対象物に貼り付けることができる。
上記粘着層としては特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等からなる層が挙げられる。
ここで、各粘着剤は、溶剤型であってもよいし、エマルジョン型であってもよいし、ホットメルト型でもよい。上記粘着剤は、静電容量型センサの使用態様等に応じて適宜選択して用いればよい。ただし、上記粘着層は、上記誘電層の伸縮を阻害しない柔軟性が必要である。
上記粘着層は、センサシートの表側の最外層にも形成されていてもよい。
【0061】
上記センサシートは、無伸長状態から一軸方向に100%伸長させた後、無伸長状態に戻すサイクルを1サイクルとする伸縮を1000サイクル繰返した際に、2サイクル目の100%伸長時の上記電極層の電気抵抗に対する、1000サイクル目の100%伸長時の上記電極層の電気抵抗の変化率([1000サイクル目、100%伸長時の電気抵抗値]−[2サイクル目、100%伸長時の電気抵抗値]の絶対値〕/[2サイクル目、100%伸長時の電気抵抗値]×100)が小さいことが好ましい。具体的には、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0062】
ここで、1サイクル目ではなく、2サイクル目の以降の電極層の電気抵抗を評価対象としている理由は、未伸長状態から伸長させた1回目(1サイクル目)の伸長時には、伸長時の電極層の挙動(電気抵抗の変動の仕方)が2回目(2サイクル目)以降の伸縮時と大きく異なるからである。この原因については、センサシートを作製した後、1回伸長させることによって初めて電極層を構成するカーボンナノチューブの等の導電材料の状態が安定化するためと推測している。
【0063】
次に、上記センサシートを製造する方法について説明する。ここでは、
図2(a)、(b)に示した構造のセンサシート2を例に、センサシートを製造する方法について説明する。
(1)エラストマー組成物からなるシート状の誘電層2枚と、エラストマー組成物からなるシート状の保護層2枚とを作製する。上記誘電層と上記保護層とは、同様の方法により作製することができる。ここでは、誘電層の作製方法として、その作製方法を説明する。
【0064】
まず、原料組成物としてエラストマー(又はその原料)に、必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、加硫促進剤、触媒、誘電フィラー、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤を配合した原料組成物を調製する。次に、この原料組成物を成形することにより誘電層を作製する。上記原料組成物を成形する方法としては従来公知の手法を採用することができる。
【0065】
具体的には、例えば、ウレタンゴムを含む誘電層を成形する場合には下記の方法等を用いることができる。
まず、ポリオール成分、可塑剤及び酸化防止剤を計量し、加熱、減圧下において一定時間撹拌混合し、混合液を調製する。次に、この混合液を計量し、温度を調整した後、触媒を添加しアジター等で撹拌する。その後、所定量のイソシアネート成分を添加し、アジター等で撹拌後、即座に混合液を
図3に示す成形装置に注入し、保護フィルムでサンドイッチ状にして搬送しつつ架橋硬化させ、保護フィルム付きの所定厚みのシートを得る。その後、必要に応じて一定時間後架橋させ、最後に、所定の形状に裁断することで、誘電層を作製することができる。
【0066】
図3は、誘電層の作製に使用する成形装置の一例を説明するための模式図である。
図3に示した成形装置30では、原料組成物33を、離間して配置された一対のロール32、32から連続的に送り出されるポリエチレンテレフタレート(PET)製の保護フィルム31の間隙に流し込み、その間隙に原料組成物33を保持した状態で硬化反応(架橋反応)を進行させつつ、加熱装置34内に導入し、原料組成物33を一対の保護フィルム31間で保持した状態で熱硬化させ、誘電層となるシート状物35を成形する。
【0067】
上記誘電層は、原料組成物を調製した後、各種コーティング装置、バーコート、ドクターブレードなどの汎用の成膜装置や成膜方法を用いて作製してもよい。
上述した通り、保護層は、誘電層の作製と同様の方法で作製すればよい。
【0068】
(2)次に、上記(1)の工程とは別に、電極層を形成するための塗布液を調製する。
ここでは、上記塗布液として、カーボンナノチューブ等の導電材料及び分散媒を含む組成物を調製する。
具体的には、まず、カーボンナノチューブ等の導電材料を分散媒に添加する。このとき、必要に応じて、バインダー成分(又は、バインダー成分の原料)等の上述した他の成分や分散剤を更に添加してもよい。
次に、導電材料を含む各成分を湿式分散機で分散媒中に分散(又は溶解)させることより電極層の形成に用いる塗布液を調製する。ここでは、例えば、超音波分散機、ジェットミル、ビーズミルなどの既存の分散機を用いて分散させればよい。
【0069】
上記分散媒としては、例えば、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アルコール類、水等が挙げられる。これらの分散媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0070】
上記塗布液において、導電材料がカーボンナノチューブである場合、上記カーボンナノチューブの濃度は、0.01〜10重量%が好ましい。上記濃度が0.01重量%未満では、カーボンナノチューブの濃度が薄すぎて繰返し塗布する必要が生じる場合がある。一方、上記濃度が10重量%を超えると、塗布液の粘度が高くなりすぎ、また再凝集によりカーボンナノチューブの分散性が低下し、均一な電極層を形成することが困難となる場合がある。
【0071】
(3)次に、誘電層及び保護層を重ね合わせつつ、適時、電極層等を形成してセンサシートを作製する。本工程については、
図4を参照しながら説明する。
図4(a)〜(d)は、センサシートの作製工程を説明するための斜視図である。
【0072】
(a)まず、上記(1)の工程で作製した1枚の保護層(裏側保護層15B)の片面(表面)の所定の位置に、上記(2)の工程で調製した塗布液をスプレーコート等により塗布し、乾燥させる(
図4(a)参照)。これにより、裏側保護層15B上に、裏側電極層12Cと裏側配線13Cとを形成する。
ここで、上記塗布液の乾燥条件は特に限定されず、分散媒の種類やエラストマー組成物の組成等に応じて適宜選択すればよい。
また、上記塗布液を塗布する方法は、スプレーコートに限定されるわけではなく、その他、例えば、スクリーン印刷法、インクジエット印刷法等も採用することができる。
更に、上記塗布液を塗布する際には、電極層を形成しない位置をマスキングしてから上記塗布液を塗布してもよい。
【0073】
(b)次に、裏側電極層12Cの全体及び裏側配線13Cの一部を被覆するように、上記(1)の工程で作製した1枚の誘電層(裏側誘電層11B)を裏側保護層15B上に貼り合わせることにより積層する。その後、上記(a)と同様の手法を用いて、裏側誘電層11Bの上面の所定の位置に中央電極層12Aと中央配線13Aとを形成する(
図4(b)参照)。
【0074】
(c)次に、中央電極層12Aの全体及び中央配線13Aの一部を被覆するように、上記(1)の工程で作製したもう1枚の誘電層(表側誘電層11A)を裏側誘電層11B上に貼り合わせることにより積層する。その後、上記(a)と同様の手法を用いて、表側誘電層11Aの上面の所定の位置に表側電極層12Bと表側配線13Bとを形成する(
図4(c)参照)。
【0075】
(d)次に、表側電極層12Bの全体及び表側配線13Bの一部を被覆するように、上記(1)の工程で作製したもう1枚の保護層(表側保護層15A)を積層する。
その後、中央配線13A、表側配線13B及び裏側配線13Cのそれぞれの端部に銅箔を取り付けて、中央接続部14A、表側接続部14B及び裏側接続部14Cとする(
図4(d)参照)。
このような方法を採用することにより、上記センサシートを作製することができる。
【0076】
図2(a)、(b)に示したセンサシートは、検出部を1箇所備えたものであるが、本発明の実施形態において、センサシートの検出部の数は1箇所に限定されるわけではなく、センサシートは、複数箇所の検出部を備えていてもよい。ここでは、第1検出部と第2検出部とを合わせて1箇所の検出部という。
複数の検出部を備えたセンサシートの具体例としては、例えば、
図5(a)、(b)に示したセンサシートが挙げられる。
図5(a)は、本発明の実施形態に係る静電容量型センサを構成するセンサシートの別の一例を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のB−B線断面図である。
【0077】
図5(a)、(b)に示すように、複数箇所の検出部を備えるセンサシート2′は、エラストマー製でシート状の裏側誘電層(第2誘電層)130と、裏側誘電層130の表面(おもて面)に形成された複数本の中央電極層101A〜116Aと、裏側誘電層130の裏面に形成された複数本の裏側電極層(第2外側電極層)101C〜116Cと、中央電極層101A〜116Aの表側(
図5(b)中、上側)に積層された表側誘電層(第1誘電層)120と、表側誘電層120の表面に形成された複数本の表側電極層(第1外側電極層)101B〜116Bとを備える。
更に、センサシート2′は、中央電極層101A〜116A、裏側電極層101C〜116C、及び、表側電極層101B〜116Bのそれぞれの一方に端部に取り付けられた外部配線と接続するための接続部(
図5(a)中、101A1〜116A1、101B1〜116B1等)を備える。
また、センサシート2′では、表側誘電層120の表側に表側保護層(第1保護層)140が設けられ、裏側誘電層130の裏側に裏側保護層(第2保護層)150が設けられている。
【0078】
中央電極層101A〜116Aのそれぞれは帯状を呈しており、センサシート2′は、合計16本の中央電極層を有している。
中央電極層101A〜116Aは、それぞれX方向(
図5(a)中、左右方向)に延在している。中央電極層101A〜116Aは、それぞれY方向(
図5(a)中、上下方向)に所定間隔ごとに離間して、互いに略平行となるようにそれぞれ配置されている。
【0079】
表側電極層101B〜116Bはそれぞれ帯状を呈しており、センサシート2′は、合計16本の表側電極層を有している。
表側電極層101B〜116Bは、それぞれ中央電極層101A〜116Aと表裏方向(誘電層の厚さ方向)から見て略直角で交差するように配置されている。即ち、表側電極層101B〜116Bは、それぞれY方向に延在している。また、表側電極層101B〜116Bは、X方向に所定間隔ごとに離間して、互いに略平行となるようにそれぞれ配置されている。
【0080】
裏側電極層101C〜116Cはそれぞれ帯状を呈しており、センサシート2′は、合計16本の裏側電極層を有している。
裏側電極層101C〜116Cは、それぞれ表裏方向から見て表側電極層101B〜116Bと重なるように配置されている。従って、裏側電極層101C〜116Cは、それぞれ中央電極層101A〜116Aと表裏方向から見て略直角で交差するように配置されている。
【0081】
センサシート2′では、表裏方向から見て、中央電極層101A〜116A、表側電極層101B〜116B及び裏側電極層101C〜116Cの対向しているそれぞれの箇所(
図5(a)に示すように、センサシート2′では256箇所)が検出部Cとなる。
各検出部Cは、中央電極層と表側電極層との対向した部分が表側検出部(第1検出部)となり、中央電極層と裏側電極層との対向した部分が裏側検出部(第2検出部)となる。
【0082】
センサシート2′を備えた静電容量型センサでは、256箇所の検出部Cを1箇所ずつ切り替えながら各検出部の静電容量を測定することができ、その結果、各検出部の歪み量や、静電容量型センサシート内の歪みの位置情報を検知することができる。
【0083】
<計測器>
上記計測器は、上記センサシートと電気的に接続されている。上記計測器は、上記誘電層の変形に応じて変化する上記検出部(第1検出部及び第2検出部)の静電容量を測定する機能を有する。
このとき、上記センサシートの検出部の構造(第1検出部及び第2検出部の構造)を2つのコンデンサが並列に配置された構造とみなし、表側電極層(表側接続部)及び裏側電極層(裏側接続部)を計測器の同一の端子に接続し、中央電極層(中央接続部)を計測器の表側電極層及び裏側電極層を接続する端子とは異なる端子に接続して静電容量の測定を行う。
加えて、センサシートが、
図5に示したセンサシート2′のように複数の検出部を備える場合には、測定対象となっている検出部に位置する中央電極層(中央接続部)以外の中央電極層を接地した状態として、上記測定対象となっている検出部の静電容量の測定を行う。
そのため、上記静電容量型センサシートにおいて、検出部の静電容量は、上記第1検出部の静電容量C1と上記第2検出部の静電容量C2とを加算した合計静電容量Ct(Ct=C1+C2)として計測される。上記静電容量型センサシートでは、この合計静電容量Ctに基づいて上記センサシートの変形状態を計測する。
【0084】
即ち、上記静電容量型センサでは、表側電極層と裏側電極層とが電気的に接続された状態(短絡した状態)とし、この状態で、上記第1検出部及び上記第2検出部のそれぞれの静電容量を測定することが好ましい。これにより、より正確に静電容量の変化を測定することができる。
ここで、上記表側電極層と裏側電極層とを電気的に接続する手法としては特に限定されず、例えば、以下の手法を採用することができる。即ち、(1)両者(表側電極層及び裏側電極層)をセンサシート内で電気的に接続する(例えば、表側配線と裏側配線とを接続する配線を形成する)手法、(2)両者をセンサシートと計測器との間で接続する(例えば、表側配線に接続された外部配線と裏側配線に接続された外部配線とを結線した後、計測器に接続する)手法、(3)両者を計測器内(例えば、静電容量測定回路内)で接続する手法、等を採用することができる。
【0085】
上記静電容量Ctを測定する方法は特に限定されないが、交流インピーダンスを用いた方法が好ましい。交流インピーダンスを用いた測定方法は、高い周波数信号を用いた測定でも繰返し精度に優れ、高い周波数信号を用いることで、インピーダンスが大きくなり過ぎないため計測精度をより高めることができる。また、静電容量計測に要する時間を短縮することができるため、センサとしては時間あたりの計測回数を増加させることが可能となる。
【0086】
上記計測器は、静電容量の測定に必要となる静電容量測定回路、演算回路、増幅回路、電源回路等を備えている。
上記静電容量Ctを測定する方法(回路)の具体例は、
図1に示したシュミットトリガ発振回路とF/V変換回路を組み合わせて用いる方法に限定されない。例えば、自動平衡ブリッジ回路を利用したCV変換回路(LCRメータなど)、反転増幅回路を利用したCV変換回路、半波倍電圧整流回路を利用したCV変換回路、シュミットトリガ発振回路を用いたCF発振回路等を採用することもできる。
【0087】
ここで、検出部の静電容量をより正確に測定するために、(1)計測器がシュミットトリガ発振回路のようなCF変換回路を備える場合は、上記中央電極層が、CF変換回路側に接続され、かつ、上記表側電極層と上記裏側電極層とが電気的に接続された状態で接地されることが好ましい。また、(2)計測器が、半波倍電圧整流回路や反転増幅回路、自動平衡ブリッジ回路を備える場合は、上記中央電極層が、半波倍電圧整流回路、反転増幅回路又は自動平衡ブリッジ回路側に接続され、かつ、上記表側電極層と上記裏側電極層とが電気的に接続された状態で上記計測器の交流信号生成側に接続されることが好ましい。
【0088】
さらに、センサシートが、
図5に示したセンサシート2′のように複数の検出部を備える場合には、下記の接続状態(1)や(2)となるように回路を切り替えながら測定対象となっている検出部の静電容量を測定することが好ましい。即ち、
(1)計測器がシュミットトリガ発振回路のようなCF変換回路を備える場合:
測定対象となっている検出部に位置する中央電極層がCF変換回路側に接続され、他の中央電極層が接地され、さらに、表裏方向に互いに対向する表側電極層と裏側電極層とがそれぞれ電気的に接続されつつ、測定対象となっている検出部に位置する一対の表側電極層及び裏側電極層が電気的に接続された状態で接地されている。
(2)計測器が、半波倍電圧整流回路や反転増幅回路、自動平衡ブリッジ回路を備える場合:
測定対象となっている検出部に位置する中央電極層が半波倍電圧整流回路、反転増幅回路又は自動平衡ブリッジ回路側に接続され、他の中央電極層が接地され、さらに、表裏方向に互いに対向する表側電極層と裏側電極層とがそれぞれ電気的に接続されつつ、測定対象となっている検出部に位置する一対の表側電極層及び裏側電極層が電気的に接続された状態で上記計測器の交流信号生成側に接続されている。
【0089】
なお、本発明の実施形態において、接地するとは、単に大地とアースをとるということばかりではなく、所定の電位(例えば、0V)に固定する場合も包含する概念である。
各電極層を接地する場合には、例えば、計測器のGND端子等に接続すればよい。
【0090】
<表示器>
上記静電容量型センサは、
図1に示した例のように表示器を備えていてもよい。これにより上記静電容量型センサの使用者は、静電容量Ctの変化に基づく情報をリアルタイムで確認することができる。上記表示器は、そのために必要となるモニター、演算回路、増幅回路、電源回路等を備えている。
【0091】
また、上記表示器は、
図1に示した例のように静電容量Ctの測定結果を記憶するために、RAM、ROM、HDD等の記憶部を備えていてもよい。なお、上記記憶部は、上記計測器が備えていてもよい。
上記表示器としては、パソコン、スマートフォン、タブレット等の端末機器を利用してもよい。
【0092】
また、
図1に示した静電容量型センサ1において、測定器3と表示器4との接続は有線で行われているが、上記静電容量型センサにおいてこれらの接続は必ずしも有線で行われている必要はなく、無線で接続されていてもよい。静電容量型センサの使用態様によっては、測定器と表示器とが物理的に分離されている方が使用しやすい場合もある。
【0093】
本発明の実施形態に係る静電容量型センサは、上記センサシートの誘電層(表側誘電層及び裏側誘電層)が変形する際に、変形前後で静電容量(第1検出部及び第2検出部の合計静電容量Ct)を測定し、その測定結果から変形前後の合計静電容量Ctの変化量ΔCtを算出することで、変形時のセンサシートの変形量を計測することができる。そのため、上記静電容量センサは、例えば、測定対象物の変形量を求めるためのセンサとして用いることができる。
また、上記センサシートが複数の検出部を備える場合には、測定対象物の変形歪み分布を求めるためのセンサとして用いることもできる。
【0094】
上記静電容量型センサは、例えば、エキスパンダーやリハビリチューブ、ゴムボール、ゴム風船、エアバック等の伸縮物や、クッションや靴底インナー等の柔軟物などを測定対象物とし、この測定対象物に上記センサシートを貼り付けて、測定対象物の変形を計測するためのセンサとして使用することができる。
【0095】
また、上記静電容量型センサは、例えば、人等の動物を測定対象物とし、その動きを計測するセンサ等として使用することができる。具体的には、例えば、関節、橈骨動脈や頚動脈等の脈が触れるところ、手の平や手の甲、足の裏や足の甲、胸部や腹部、頬や口の周囲など身体表面の任意の箇所にセンサシートを貼り付けて使用することで、身体表面の変形(動き)を計測するためのセンサとして使用することができる。
また、上記静電容量型センサは、例えば、衣服を着用して、その衣服の表面にセンサシートを貼り付けて使用することで、身体の運動に応じた衣服の変形(伸縮)の仕方や、衣服の身体に対する追従性を計測するためのセンサとして使用することもできる。
【0096】
また、上記静電容量型センサでは、例えば、ユーザーが能動的に上記センサシートを変形させてもよい。その場合、上記静電容量型センサは、ユーザーの意志を反映した情報を静電容量の変化に基づいて作製し、その情報を発信するためのユーザーインターフェース装置に使用することもできる。
また、上記静電容量型センサでは、上記センサシートを電動義手義足の筋電センサのインターフェイスの代替品として利用することができる。
また、上記静電容量型センサでは、上記センサシートが、重度心身障害者の入力インターフェイスの入力端末としても使用することができる。
【0097】
また、上記静電容量型センサにおいて、センサシートが多数の検出部を備える場合、上記静電容量型センサは、測定対象物がセンサシートに接触した状態で移動した際の位置情報を検出するためのセンサとして使用することができる。更に、例えば、タッチパネル用の入力インターフェイスとしても使用することができる。
なお、上記静電容量型センサは、既存のセンサである光学式のモーションキャプチャーでは測定できない光の遮蔽部位での測定にも利用することが可能である。
【0098】
このように、本発明の実施形態に係る静電容量型センサは、様々な利用分野及び使用環境で使用することができる。そして、上述した通り、上記静電容量型センサは利用分野、使用環境ごとに、電磁ノイズや電源ノイズ、センサシートの片面又は両面が導体(例えば、身体や汗等)に触れる等、種々の測定ノイズに晒されることとなる。
これに対して、上記静電容量型センサは、静電容量の測定時に静電容量型センサのまわりのノイズ状況が変化しても静電容量の測定値の変動を小さく抑えることができる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明の実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明の実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0100】
<センサシートAの作製>
(1)誘電層(表側誘電層及び裏側誘電層)の作製
ポリオール(パンデックスGCB−41、DIC社製)100質量部に対して、可塑剤(ジオクチルスルホネート)40重量部と、イソシアネート(パンデックスGCA−11、DIC社製)17.62重量部とを添加し、アジターで90秒間撹拌混合し、誘電層用の原料組成物を調製した。次に、原料組成物を
図3に示した成形装置30に注入し、保護フィルム31でサンドイッチ状にして搬送しつつ、炉内温度70℃、炉内時間30分間の条件で架橋硬化させ、保護フィルム付きの所定厚みのロール巻シートを得た。その後、70℃に調節した炉で12時間後架橋させ、ポリエーテル系ウレタンゴムからなるシートを作製した。得られたウレタンシートを裁断し、14mm×74mm×厚さ50μmのシートを2枚作製した。更に、裁断されたシートの1枚について、角部の一か所を5mm×7mm×厚さ50μmのサイズで切り落として表側誘電層を作製した。また、裁断されたシートのもう1枚について、角部の一か所を9mm×7mm×厚さ50μmのサイズで切り落として裏側誘電層を作製した。
【0101】
また、作製した誘電層について、破断時伸び(%)及び比誘電率を測定したところ、破断時伸び(%)は505%、比誘電率は5.7であった。
ここで、上記破断時伸びは、JIS K 6251に準拠して測定した。
また、上記比誘電率は、20mmΦの電極で誘電層を挟み、LCRハイテスタ(日置電機社製、3522−50)を用いて計測周波数1kHzで静電容量を測定し、電極面積と測定資料の厚さから比誘電率を算出した。
【0102】
(2)電極層材料の調製
基板成長法により製造した多層カーボンナノチューブである、大陽日酸社製の高配向カーボンナノチューブ(層数4〜12層、繊維径5〜20nm、繊維長さ150〜300μm、炭素純度99.5%)30mgを2−プロパノール30gに添加し、ジェットミル(ナノジェットパル JN10−SP003、常光社製)を用いて湿式分散処理を施し、10倍に希釈して濃度0.01重量%のカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0103】
(3)保護層(表側保護層及び裏側保護層)の作製
上述した(1)誘電層の作製、と同様の方法を用いてポリエーテル系ウレタンゴム製で、14mm×74mm×厚さ50μmの裏側保護層と、14mm×67mm×厚さ50μmの表側保護層とを作製した。
【0104】
(4)センサシートAの作製
下記の作製工程を経てセンサシートを作製した(
図4及び
図6参照)。
(a)上記(3)の工程で作製した裏側保護層15Bの片面(表面)に、離型処理されたPETフィルムに所定の形状の開口部が形成されたマスク(図示せず)を貼り付けた。
上記マスクには、裏側電極層及び裏側配線に相当する開口部が形成されており、開口部のサイズは、裏側電極層に相当する部分が、幅10mm×長さ50mm、裏側配線に相当する部分が幅2mm×長さ10mmである。
【0105】
次に、上記(2)の工程で調製したカーボンナノチューブ分散液7.2gを10cmの距離からエアブラシを用いて塗布し、続いて、100℃で10分間乾燥させ、裏側電極層12C及び裏側配線13Cを形成した。その後、マスクを剥離した(
図4(a)参照)。
【0106】
(b)次に、裏側電極層12Cの全体及び裏側配線13Cの一部を被覆するように、上記(1)の工程で作製した裏側誘電層11Bを裏側保護層15B上に貼り合わせることにより積層した。
更に、裏側誘電層11Bの表側に、上記工程(a)における裏側電極層12C及び裏側配線13Cの形成と同様の手法を用いて、所定の位置(裏側電極層12C及び中央電極層12Aを平面視した際に、両者が重なる位置)に中央電極層12A及び中央配線13Aを形成した(
図4(b)参照)。
【0107】
(c)次に、中央電極層12Aの全体及び中央配線13Aの一部を被覆するように、上記(1)の工程で作製した表側誘電層11Aを裏側誘電層11B上に貼り合わせることにより積層した。
更に、表側誘電層11Aに表側に、上記工程(a)における裏側電極層12C及び裏側配線13Cの形成と同様の手法を用いて、所定の位置(中央電極層12A及び表側電極層12Bを平面視した際に、両者が重なる位置)に表側電極層12B及び表側配線13Bを形成した(
図4(c)参照)。
【0108】
(d)次に、表側電極層12B及び表側配線13Bを形成した表側誘電層11Aの表側に、表側電極層12Bの全体及び表側配線13Bの一部を被覆するように、上記(3)の工程で作製した表側保護層15Aを積層した(
図4(d)参照)。
【0109】
(e)その後、中央配線13A、表側配線13B及び裏側配線13Cのそれぞれの端部に銅箔を取り付けて、中央接続部14A、表側接続部14B及び裏側接続部14Cとした。
次に、中央接続部14A、表側接続部14B及び裏側接続部14Cのそれぞれに外部配線となるリード線19(19a〜19c)を半田で固定した。
更に、中央接続部14A、表側接続部14B及び裏側接続部14Cの裏側保護層15B上に位置する部分に、厚さ100μmのPETフィルム17をアクリル粘着テープ(3M社製、Y−4905(厚さ0.5mm))16を介して貼り付けて補強し、センサシートAを完成した(
図6参照)。
センサシートAは、中央電極層、上記中央電極層を挟むように形成された表側誘電層及び裏側誘電層、並びに、表側誘電層及び裏側誘電層のぞれぞれの反対側に形成された表側電極層及び裏側電極層を備える。
【0110】
<センサシートBの作製>
(1)誘電層の作製
センサシートAの作製の場合と同様にして、14mm×74mm×厚さ50μmのポリエーテル系ウレタンゴム製のシートを作製した後、角部の一か所を7mm×7mm×厚さ50μmのサイズで切り落として誘電層を作製した。
【0111】
(2)電極層材料の調製
センサシートAの作製の場合と同様にして、カーボンナノチューブ分散液を調製した。
(3)保護層(表側保護層及び裏側保護層)の作製
センサシートAの作製の場合と同様にして、ポリエーテル系ウレタンゴム製で、14mm×74mm×厚さ50μmの裏側保護層と、14mm×67mm×厚さ50μmの表側保護層とを作製した。
【0112】
(4)センサシートB(
図7参照)の作製
(a)上記(3)の工程で作製した裏側保護層25Bの片面(表面)に、離型処理されたPETフィルムに所定の形状の開口部が形成されたマスクを貼り付けた後、上記(2)の工程で調製したカーボンナノチューブ分散液をエアブラシを用いて塗布し、乾燥させ、その後マスクを剥離することにより、裏側電極層22B及び裏側配線23Bを形成した。
本工程の具体的な方法としては、センサシートAの作製における(4)の工程(a)と同様の方法を採用した。但し、マスクの開口部のサイズは、裏側電極層に相当する部分が幅10mm×長さ50mm、裏側配線に相当する部分が幅2mm×長さ10mmとした。
【0113】
(b)次に、裏側電極層22Bの全体及び裏側配線23Bの一部を被覆するように、上記(1)の工程で作製した誘電層21を裏側保護層25B上に貼り合わせることにより積層した。
更に、誘電層21の表側に、上記工程(a)における裏側電極層22B及び裏側配線23Bの形成と同様の手法を用いて、所定の位置(裏側電極層22Bと表側電極層22Aとが平面視時に重なる位置)に表側電極層22A及び表側配線23Aを形成した。
【0114】
(c)次に、表側電極層22A及び表側配線23Aを形成した誘電層21の表側に、表側電極層22Aの全体及び表側配線23Aの一部を被覆するように、上記(3)の工程で作製した表側保護層25Aを積層した。
【0115】
(d)その後、表側配線23A及び裏側配線23Bのそれぞれの端部に銅箔を取り付けて、表側接続部24A及び裏側接続部24Bとした。その後、表側接続部24A及び裏側接続部24Bに外部配線となるリード線29を半田で固定した(
図7参照)。
最後に、センサシートAの作製の場合と同様にして、表側接続部24A及び裏側接続部24Bの裏側保護層25B上に位置する部分に、厚さ100μmのPETフィルムをアクリル粘着テープ(3M社製、Y−4905(厚さ0.5mm))を介して貼り付けて補強し、センサシートBを完成した。
センサシートBは、1層の誘電層とその両面に形成された電極層とを備える。
【0116】
<センサシートA及びBの初期性能の確認>
上述した方法で作製したセンサシートA及びセンサシートBのそれぞれを下記のようにしてリード線を介してLCRメータ(日置電機社製、LCRハイテスタ3522−50)と接続し、無伸長状態で静電容量を計測した。結果を表1に示した。
(接続状態)
A:センサシートAとLCRメータとを接続した。このとき、中央電極層及び裏側電極層はそれぞれLCRメータの異なる端子に接続し、表側電極層はLCRメータに接続しなかった。即ち、
図6におけるリード線19a、19bをそれぞれ別々にLCRメータに接続し、リード線19cはLCRメータに接続しなかった。
B:センサシートAとLCRメータとを接続した。このとき、表側電極層及び裏側電極層を電気的に接続して(表側電極層と裏側電極層とが短絡した状態として)、これをLCRメータの接続し、中央電極層はLCRメータの表側電極層及び裏側電極層を接続した端子とは別の端子に接続した。即ち、
図6におけるリード線19b及び19cを1本のリード線にまとめてこれをLCRメータに接続するとともに、リード線19aをLCRメータの別の端子に接続した。
C:センサシートBをLCRメータと接続した。このとき、表側電極層及び裏側電極層はそれぞれLCRメータの異なる端子に接続した。
【0117】
【表1】
【0118】
表1に示したように、センサシートAにおいて、表側電極層及び裏側電極層をリード線で電気的に接続し(表側電極層及び裏側電極層が短絡した状態とし)、このリード線をLCRメータの一方の端子に接続し、中央電極層をリード線を介して別に端子に接続することで、センサシートAの第1検出部の静電容量C1と第2検出部の静電容量C2との合計静電容量Ctを測定することができる。
そして、その合計静電容量Ctは、第2検出部の静電容量C2の約2倍となることが明らかとなった。なお、合計静電容量Ctが正確に静電容量C2の2倍にならなかった理由は、各電極層の寸法誤差によるものと推測している。
【0119】
<静電容量型センサとノイズとの関係:実施例1〜3、比較例1〜3>
ここでは、(i)センサシートの両面にノイズ源を設置しない状態、(ii)センサシートの片側にのみノイズ源を設置した状態、及び、(iii)センサシートの両側にノイズ源を設置した状態、のいずれかの状態にしたセンサシートと、計測器とを接続し、各センサシートの検出部の静電容量を測定した。
このとき、計測器の電源としてはDC電源(定電圧電源)を使用し、アースから、DC電源、及び、ノイズ源であるファンクションジェネレータへ、何らかのノイズが侵入する影響を避けるため、同じACコンセントから供給されるACを使用した。
【0120】
ここで、上記(i)及び(ii)の場合は、まず、ポリプロピレン製の作業台の上に銅箔を載置し、更に、この銅箔上にセンサシートを裏側にして、銅箔とセンサシートとの間に気泡が入らないように載置した。その後、ファンクションジェネレータ(Tektronix社製、AFG3021)を銅箔に接続した。
そして、上記(ii)の場合には、所定のノイズ信号(60Hz,−2.5V〜2.5V、又は、10kHz,−1.0V〜1.0V)を銅箔に印加した。
一方、上記(i)の場合には、ファンクションジェネレータをOFFのままとした。
【0121】
また、上記(iii)の場合は、上記(ii)の場合と同様、センサシートを銅箔上に両者の間に気泡が入らないように載置した後、センサシートの上面に厚さ1mmの真鍮板を載せた。その後、ファンクションジェネレータ(AFG3021)を銅箔及び真鍮板に接続し、所定のノイズ信号(60Hz,−2.5V〜2.5、又は、10kHz,−1.0V〜1.0V)を銅箔及び真鍮板のそれぞれに印加した。
【0122】
(実施例1)
計測器として、
図8に示したような反転増幅回路300を使用し、これをセンサシートA(
図8中、310)と接続して合計静電容量Ctを測定した。反転増幅回路300において、交流印可装置311の発振周波数は5kHz、帰還キャパシタ313の静電容量は1000pF、帰還抵抗314の抵抗値は4.7MΩとした。また、
図8中、315はBEF(バンドエリミネーションフィルタ)である。
このとき、中央電極層を演算増幅器312に接続し、表側電極層及び裏側電極層を短絡した状態で交流印可装置311に接続した配線条件を正接続とした。逆に、中央電極層を交流印可装置311に接続し、表側電極層及び裏側電極層を短絡した状態で演算増幅器312に接続した配線条件を逆接続とした。それぞれの配線条件において、上記(i)〜(iii)のノイズ状態での測定を行った。結果を表2に示した。
なお、各実施例における電極層の接続方法の説明において、電極層同士が短絡した状態とは、電極層同士が電気的に接続された状態にあることを意味する。
【0123】
(比較例1)
計測器として、実施例1と同様の反転増幅回路300を使用し、これをセンサシートBと接続して、検出部の静電容量を測定した。
このとき、表側電極層を演算増幅器312に接続し、裏側電極層を交流印可装置311に接続した配線条件を正接続とした。逆に、表側電極層を交流印可装置311に接続し、裏側電極層を演算増幅器312に接続した配線条件を逆接続とした。それぞれの配線条件において、上記(i)又は(ii)のノイズ状態での測定を行った。結果を表2に示した。
【0124】
(実施例2)
計測器として、
図9に示したようなシュミットトリガ発振回路400を使用し、これをセンサシートA(
図9中、410)と接続してシュミットトリガ412からの出力周波数より合計静電容量Ctを測定した。シュミットトリガ発振回路400において、可変抵抗413は、通常測定の正接続において発振周波数が5kHzになるように抵抗値を調節した。
このとき、中央電極層をシュミットトリガ412側に接続し、表側電極層及び裏側電極層を短絡した状態で接地した配線条件を正接続とした。逆に、中央電極層を接地し、表側電極層及び裏側電極層を短絡した状態でシュミットトリガ412側に接続した配線条件を逆接続とした。それぞれの配線条件において、上記(i)〜(iii)のノイズ状態での測定を行った。結果を表2に示した。
【0125】
(比較例2)
計測器として、実施例2と同様のシュミットトリガ発振回路400を使用し、これをセンサシートBと接続して、検出部の静電容量を測定した。
このとき、表側電極層をシュミットトリガ412側に接続し、裏側電極層を接地した配線条件を正接続とした。逆に、表側電極層を接地し、裏側電極層をシュミットトリガ412側に接続した配線条件を逆接続とした。それぞれの配線条件において、上記(i)又は(ii)のノイズ状態での測定を行った。結果を表2に示した。
【0126】
(実施例3)
計測器として、
図10に示したような半波倍電圧整流回路500を使用し、これをセンサシートA(
図10中、510)と接続して出力される電圧を測定した。半波倍電圧整流回路500において、交流印可装置511の発振周波数は5kHz、コンデンサ512の静電容量は0.1μF、抵抗513の抵抗値は33kΩ又は470kΩとした。また、ダイオード514、515としては、ショットキーダイオードを使用した。
このとき、中央電極層をOUTPUT側に接続し、表側電極層及び裏側電極層を短絡した状態で交流印可装置511に接続した配線条件を正接続とした。逆に、中央電極層を交流印可装置511に接続し、表側電極層及び裏側電極層を短絡した状態でOUTPUT側に接続した配線条件を逆接続とした。それぞれの配線条件において、上記(i)〜(iii)のノイズ状態での測定を行った。結果を表2に示した。
【0127】
(比較例3)
計測器として、実施例3と同様の半波倍電圧整流回路500を使用し、これをセンサシートBと接続して出力される電圧を測定した。
このとき、表側電極層をOUTPUT側に接続し、裏側電極層を交流印可装置511に接続した配線条件を正接続とした。逆に、表側電極層を交流印可装置511に接続し、裏側電極層をOUTPUT側に接続した配線条件を逆接続とした。それぞれの配線条件において、上記(i)又は(ii)のノイズ状態での測定を行った。結果を表2に示した。
【0128】
【表2】
【0129】
表2に示した結果より、センサシートAを備えた静電容量型センサでは、正接続であれば、ノイズ源が片側のみにあるか、または、両側にあるかを問わず計測値が影響を受けないことが明らかとなった。
一方、センサシートBを備えた静電容量型センサでは、正接続となる片側からのノイズに対しては計測値が影響を受けないが、反対側の片側からのノイズに対しては測定値が大きく影響を受けることが明らかとなった。当然、センサシートBでは、ノイズ源が両側にある場合にも同様に測定値が大きく影響を受ける。
【0130】
(実施例4/比較例4)
センサシートA(実施例4)及びセンサシートB(比較例4)のそれぞれについて、平面視時にセンサシートの検出部全体が覆われるように、センサシートの両面に銅箔を設置するとともに、両面の銅箔を電気接続した状態とし、この状態で上記初期性能の確認と同様、LCRメータを用いて静電容量を測定した。
このとき、LCRメータの測定周波数は5kHzとし、センサシートAとLCRメータとの接続は上記接続状態Bで行い、センサシートBとLCRメータとの接続は上記接続状態Cで行った。
なお、銅箔へのノイズの印加は行わなかった。
【0131】
その結果、センサシートAの静電容量は502.7pFであり、銅箔を設置することなく測定した初期性能の静電容量(501.7pF(表1参照))に比べて、1.0pF変化していた。
一方、センサシートBの静電容量は370.9pFであり、銅箔を設置することなく測定した初期性能の静電容量(252.7pF(表1参照))に比べて、118.2pF変化していた。
このように、センサシートBは、その両側から電気的に接続された導体で挟まれた場合、静電容量が大きく変化するのに対し、センサシートAは、その両側から電気的に接続された導体で挟まれた場合でも静電容量が殆ど変化しないことが明らかとなった。
【0132】
この理由について、センサシートBでは、表側電極層とこの表側電極層に近接した銅箔との間の静電容量、及び、裏側電極層とこの裏側電極層に近接した銅箔との間との静電容量の2つが直列で接続した合成静電容量が、センサシートの本来の検出部の静電容量と並列に繋がり、静電容量が加算されて測定されたと考えられる。上記センサシートBの構成からすると、加算により静電容量の測定値が1.50倍に増加する計算となるところ、測定値で1.47倍となっていることからも上記考察が正しいことが明らかとなった。
一方、センサシートAでは、表側電極層と裏側電極層とが短絡した状態で、計測器(LCRメータ)に接続されており、両電極層は同電位であるため、センサシートBのように、表側電極層や裏側電極層と銅箔との間の静電容量が介入する経路が存在せず、検出部で測定される静電容量の測定値が加算されることはない。
以上のことから、センサシートAを備えた静電容量型センサは計測環境の影響を受けにくいことが明らかとなった。
【0133】
(実施例5)
センサシートAの外部に露出した導電性部位(各配線部や各接続部、リード線の端部等)全体を絶縁性の電気部品用接着剤(セメダイン株式会社、SX720B)で被覆して、導電性の部材が外部に露出しないようにした後、センサシートAをLCRメータと接続した。センサシートAとLCRメータとの接続は、上述した初期性能の確認における接続状態Bと同様にして行った(周波数は、5kHz)。
まず、センサシートAの空気中での合計静電容量Ctを測定した。その結果、合計静電容量Ctは、497.5pFであった。
次に、センサシートA全体をイオン交換水中に沈め、1分間経過後、合計静電容量Ctを測定した。その結果、合計静電容量Ctは、525.7pFであり、28.2pF増加していた。
【0134】
(比較例5)
センサシートBの外部に露出した導電性部位(各配線部や各接続部、リード線の端部等)全体を絶縁性の接着剤で被覆して、導電性の部材が外部に露出しないようにした後、センサシートBをLCRメータと接続した。センサシートBとLCRメータとの接続は、上述した初期性能の確認における接続状態Cと同様にして行った(周波数は、5kHz)。
まず、センサシートBの空気中での静電容量を測定した。その結果、静電容量は、248.2pFであった。
次に、センサシートB全体をイオン交換水中に沈め、1分間経過後、静電容量を測定した。その結果、静電容量は、405.6pFであり、157.4pF増加していた。
【0135】
実施例5及び比較例5の結果より、センサシートAを備えた静電容量型センサでは、センサシートBを備えた静電容量型センサに比べて、表面が濡れた状態で使用しても検出部における静電容量の変化が小さいことが明らかとなった。
このことから、上記静電容量型センサは、センサシートが汗等で濡れるような環境での使用、例えば、運動時に生体に貼りつけて使用などの使用環境でも好適に使用することができると考えられた。