【文献】
Chemical and Pharmaceutical Bulletin,1990年,Vol.38, No.10,p.2775-2779
【文献】
The New England Journal of Medicine,1997年,Vol.336, No.2,p.86-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2のアジュバント中の少量が、第1のアジュバント中より2〜20分の1など2〜50分の1、例えば2〜10分の1など2〜15分の1、例えば4〜6分の1など3〜7分の1の量である、請求項1又は2記載の組合せ物。
第1のアジュバントが、50μgなど25〜75μgの3D-MPL及び50μgなど25〜75μgのQS21を含み、且つ、第2のアジュバントが、10μgなど5〜15μgの3D-MPL及び10μgなど5〜15μgのQS21を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の組合せ物。
第1のアジュバントが、25μgなど12.5〜37.5μgの3D-MPL及び25μgなど12.5〜37.5μgのQS21を含み、且つ、第2のアジュバントが、5μgなど2.5〜7.5μgの3D-MPL及び5μgなど2.5〜7.5μgのQS21を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の組合せ物。
第2の組成物中のより少量の共通の抗原が、第1の組成物中より2〜20分の1など2〜50分の1、例えば2〜10分の1など2〜15分の1、例えば4〜6分の1など3〜7分の1の抗原の量である、請求項1〜6のいずれか1項記載の組合せ物。
前記方法において、第1の組成物の投与と第2の組成物の投与との時間間隔が、1〜24カ月間、例えば1〜12カ月間など1〜18カ月間、例えば2〜24カ月間、例えば2〜12カ月間など2〜18カ月間、3〜9カ月間など2〜10カ月間、例えば7〜8カ月間など4〜8カ月間である、請求項1〜10のいずれか1項記載の組合せ物。
前記方法において、第2の組成物が、第2の組成物の投与後少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、若しくは少なくとも20カ月又はそれ以上の時間間隔で1回以上の更なる回数投与される、請求項1〜12のいずれか1項記載の組合せ物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
配列識別子の簡単な説明
配列番号1 本明細書の他の場所に記述される、RTS,Sのアミノ酸配列。
配列番号2 本明細書の他の場所に記述される、VZVのアミノ酸配列。
配列番号3 本明細書の他の場所に記述される、M72のアミノ酸配列。
配列番号4 本明細書の他の場所に記述される、N末端His残基を2つ持つM72タンパク質のアミノ酸配列。
【0012】
詳細な説明
上記の通り、第1の態様において、本発明は、ヒト対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象に1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象に1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、ここで
・第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の共通の成分を含有し、及び/又は
・共通の抗原がRTS,Sであり、第2の組成物が第1の組成物中より少量のRTS,Sを含有し、
ただし第1及び第2の組成物の両方が、RTS,S並びに水中油型エマルジョン製剤と会合したQS21及び3D-MPLを含まない、方法に関する。
【0013】
本明細書では、第1の組成物の投与「に続く」第2の組成物の投与とは、第1の組成物の投与と第2の組成物の投与の間に時間間隔が経過したことを示す。
【0014】
同様に、ヒト対象において免疫応答を誘導する方法に使用する第1の免疫原性組成物であって、その方法が、対象に1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象に1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、ここで
・第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の共通の成分を含有し、及び/又は
・共通の抗原がRTS,Sであり、第2の組成物が第1の組成物中より少量のRTS,Sを含有し、
ただし第1及び第2の組成物の両方が、RTS,S並びに水中油型エマルジョン製剤と会合したQS21及び3D-MPLを含まない、組成物が提供される。
【0015】
同様に、ヒト対象において免疫応答を誘導する方法に使用する第2の免疫原性組成物であって、その方法が、対象に1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象に1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、ここで
・第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の共通の成分を含有し、及び/又は
・共通の抗原がRTS,Sであり、第2の組成物が第1の組成物中より少量のRTS,Sを含有し、
ただし第1及び第2の組成物の両方が、RTS,S並びに水中油型エマルジョン製剤と会合したQS21及び3D-MPLを含まない、組成物が提供される。
【0016】
更なる態様において、本発明は、ヒト対象において免疫応答を誘導する医薬の製造における1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物の使用であって、その対象が、これまでに1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を受けたことがあり、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、ここで
・第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の共通の成分を含有し、及び/又は
・共通の抗原がRTS,Sであり、第2の組成物が第1の組成物中より少量のRTS,Sを含有し、
ただし第1及び第2の組成物の両方が、RTS,S並びに水中油型エマルジョン製剤と会合したQS21及び3D-MPLを含まない、組成物の使用に関する。
【0017】
更なる態様において、本発明は、ヒト対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象にRTS,S及びアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象にRTS,Sを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、アジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、第2の免疫原性組成物がアジュバントを含まない方法に関する。本方法の一実施形態において、第2の組成物は、第1の組成物中より少量のRTS,Sを含有する。本方法の一実施形態において、第2の組成物は、第1及び第2の組成物中に等量のRTS,Sを含有する。本方法の一実施形態において、第1及び第2の組成物の両方がRTS,S 25μgを含むか、又は両方がRTS,S 50μgを含む。
【0018】
上記の通り、更なる態様において、本発明は、対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象に1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象に1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、ここで
・第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の共通の成分を含有し、及び/又は
・共通の抗原がRTS,Sでなく、第2の組成物が第1の組成物中より少量の共通の抗原を含有する方法に関する。
【0019】
一態様において、対象はヒト対象である。
【0020】
同様に、ヒト対象において免疫応答を誘導する方法に使用する第1の免疫原性組成物であって、その方法が、対象に1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象に1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、ここで
・第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の共通の成分を含有し、及び/又は
・共通の抗原がRTS,Sでなく、第2の組成物が第1の組成物中より少量の共通の抗原を含有する組成物が提供される。
【0021】
一態様において、対象はヒト対象である。
【0022】
同様に、対象において免疫応答を誘導する方法に使用する第2の免疫原性組成物であって、その方法が、対象に1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象に1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、ここで
・第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の共通の成分を含有し、及び/又は
・共通の抗原がRTS,Sでなく、第2の組成物が第1の組成物中より少量の共通の抗原を含有する組成物が提供される。
【0023】
一態様において、対象はヒト対象である。
【0024】
更なる態様において、本発明は、ヒト対象において免疫応答を誘導する医薬の製造における1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物の使用であって、その対象が、これまでに1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を受けたことがあり、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、ここで
・第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の共通の成分を含有し、及び/又は
・共通の抗原が、RTS,Sでなく、第2の組成物が、第1の組成物中より少量の共通の抗原を含有する組成物の使用に関する。
【0025】
一態様において、対象はヒト対象である。
【0026】
更なる態様において、本発明は、対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象に抗原及びアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象に第1の組成物と共通の抗原を少なくとも1つ含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、アジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、第2の免疫原性組成物がアジュバントを含まない方法に関する。
【0027】
一態様において、対象はヒト対象である。
【0028】
典型的に、本発明の方法の目的は、防御免疫応答を誘導する、即ち抗原が由来する病原体に対して対象を免疫化又は予防接種することである。一実施形態において、本発明の方法のワクチン効力は、第1の組成物と第2の組成物が同一である治療計画と比較して改善される。例えば、本明細書の実施例により決定されるように、ワクチン効力は、25%など少なくとも10%改善され得る。一実施形態において、本明細書の実施例により決定されるように、90%以上など80%以上のワクチン効力が達成される。従って、本方法は、感染症の防止(即ち予防)に使用することができる。別法として、本方法は、免疫療法、即ち免疫応答を誘導又は強化することによる癌などの疾患の治療に使用することができる。
【0029】
本発明の方法に使用するアジュバント
上記の通り、本発明の一態様において、第1のアジュバント及び第2のアジュバントは、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有する。
【0030】
従って、一実施形態において、第1のアジュバント及び第2のアジュバントの両方が、TLRアゴニストを含む。別の実施形態において、第1のアジュバント及び第2のアジュバントの両方が、免疫学的に活性なサポニンを含む。更に別の実施形態において、第1のアジュバント及び第2のアジュバントの両方が、TLRアゴニスト及び免疫学的に活性なサポニンを含む。
【0031】
一実施形態において、第1のアジュバント及び第2のアジュバントが、同じ成分からなる。従って、そのような実施形態において、両方のアジュバントの成分は、必ずしも同じ相対的割合ではないが同じである。例えば、第1のアジュバント及び第2のアジュバントの両方が、TLRアゴニスト並びにリポソーム製剤中のサポニンからなり得るが、サポニンに対するTLRアゴニストの比は、第1のアジュバントにおいて5:1、第2のアジュバントにおいて1:1であり得る。別法として、サポニンに対するTLRアゴニストの比は、第1のアジュバントにおいて4:1及び第2のアジュバントにおいて1:1、第1のアジュバントにおいて3:1及び第2のアジュバントにおいて2:1、第1のアジュバントにおいて1:1及び第2のアジュバントにおいて1:1であり得る。
【0032】
別の実施形態において、第1のアジュバント及び第2のアジュバントは同じ成分からなり、これら成分の相対的割合は同じである。しかしながら、そのような実施形態において、アジュバント成分の相対的割合は同じであるが、これら成分の絶対量は、第1と第2の免疫原性組成物との間で異なり得る。例えば、第2のアジュバント中の全ての成分の絶対量は、第1のアジュバント中の全ての成分の絶対量の例えば1/5であることができる。
【0033】
上記の通り、一実施形態において、第2のアジュバントは、第1のアジュバント中より少量の共通の成分(即ちより少量のTLRアゴニスト若しくはより少量のサポニン又はより少量の両方)を含有する。
【0034】
一実施形態において、第2のアジュバント中のより少量の共通の成分は、第1のアジュバント中より少なくとも25%少ないなど少なくとも10%少ない、例えば少なくとも3分の1など少なくとも2分の1、例えば少なくとも5分の1など少なくとも4分の1、例えば少なくとも7分の1など少なくとも6分の1、例えば少なくとも9分の1など少なくとも8分の1、例えば少なくとも15分の1など少なくとも10分の1、例えば少なくとも20分の1の量である。
【0035】
別の実施形態において、第2のアジュバント中のより少量の共通の成分は、第1のアジュバント中より2〜20分の1など2〜50分の1、例えば2〜10分の1など2〜15分の1など、例えば4〜6分の1など3〜7分の1などの量である。
【0036】
上記の通り、一実施形態において、第1のアジュバント及び第2のアジュバントは、TLR(トール様受容体)アゴニストを含む。アジュバントにおけるTLRアゴニストの使用は、当技術分野において周知であり、例えばLahiriら、(2008年) Vaccine 26:6777頁によって概説されている。刺激されてアジュバント効果を達成することができるTLRには、TLR2、TLR4、TLR5、TLR7、TLR8及びTLR9がある。TLR2、TLR4、TLR7及びTLR8アゴニスト、特にTLR4アゴニストが、好ましい。
【0037】
適切なTLR4アゴニストには、モノホスホリル脂質A(MPL)及び3-O-脱アシル化モノホスホリル脂質A(3D-MPL)などのリポ多糖がある。米国特許第4,436,727号は、MPL及びその製造について開示している。米国特許第4,912,094号及び再審査証明書B1第4,912,094号は、3D-MPL及びその製造方法について開示している。別のTLR4アゴニストは、合成脂質A様分子のグルコピラノシル脂質アジュバント(GLA)である(例えばFoxら、(2012年) Clin. Vaccine Immunol 19:1633頁を参照のこと)。更なる実施形態において、TLR4アゴニストは、MPL及び3D-MPLに構造が類似している合成二糖分子などの合成TLR4アゴニストであることができ、又は例えばWO9850399、WO0134617、WO0212258、W03065806、WO04062599、WO06016997、WO0612425、WO03066065並びにWO0190129に開示されているアミノアルキルグルコサミニドリン酸(AGP)化合物などの合成単糖分子であることもできる。そのような分子は、脂質A模倣体として科学及び特許文献にも記述されている。脂質A模倣体は、適切には脂質Aといくつかの機能的及び/又は構造的活性を共有しており、一態様においてTLR4受容体により認識される。本明細書に記載の通り、AGPは、当技術分野において脂質A模倣体と時々称される。好ましい実施形態において、TLR4アゴニストは、3D-MPLである。3-O-脱アシル化モノホスホリル脂質A(3D-MPL)などのTLR4アゴニスト、及びワクチン中のアジュバントとしてのその使用については、例えばWO96/33739及びWO2007/068907に記述されており、Alvingら、(2012年) Curr Opin in Immunol 24:310頁に概説されている。
【0038】
本発明の方法の更なる実施形態において、第1のアジュバント及び第2のアジュバントは、QS21のような免疫学的に活性なサポニン画分など免疫学的に活性なサポニンを含む。
【0039】
サポニンを含むアジュバントについては、当技術分野に記述されている。サポニンについては、Lacaille-Dubois及びWagner (1996年) A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine第2巻:363頁に記述されている。サポニンは、ワクチンのアジュバントとして公知である。例えば、Quil A(南米の樹木シャボンノキ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から得られる)がアジュバント活性を有することは、1974年にDalsgaardらにより記述されている(「Saponin adjuvants」、Archiv. fur die gesamte Virusforschung、第44巻、Springer Verlag, Berlin, 243)。Quil Aと関連する毒性を持たずにアジュバント活性を保持するQuil Aの精製画分が、HPLCにより単離された(Kensilら、(1991年) J. Immunol. 146:431頁)。Quil A画分については、米国特許第5,057,540号及び「Saponins as vaccine adjuvants」Kensil、C. R.、Crit Rev Ther Drug Carrier Syst、1996年、12 (1-2): 1〜55頁にも記述されている。
【0040】
本発明に使用するのに適するそのような画分の2つは、QS7及びQS21(別名QA-7及びQA-21)である。QS21は、本発明に使用するのに好ましい免疫学的に活性なサポニン画分である。QS21については、Kensil (2000年)、O'Hagan: Vaccine Adjuvants: preparation methods and research protocols、Homana Press、Totowa、New Jersey、第15章に概説されている。QS21及びQS7などQuil Aの画分を含む粒状アジュバント系については、例えばWO96/33739、WO96/11711並びにWO2007/068907に記述されている。
【0041】
他の成分に加えて、アジュバントは、好ましくはステロールを含む。ステロールの存在は、サポニンを含む組成物の反応原性を更に減少させることができる、例えば欧州特許第0822831号を参照のこと。適切なステロールには、β-シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロール及びコレステロールがある。コレステロールは、特に適している。適切には、免疫学的に活性なサポニン画分はQS21であり、QS21:ステロールの比は、1:10〜1:1w/wなど1:100〜1:1w/wであり、例えば1:5〜1:1w/wである。
【0042】
本発明の方法の好ましい実施形態において、TLR4アゴニストは3D-MPLであり、免疫学的に活性なサポニンはQS21である。
【0043】
いくつかの実施形態において、アジュバントは、例えばスクアレン、α-トコフェロール及び界面活性剤を含む水中油型エマルジョンの形態(例えばW095/17210を参照のこと)又はリポソームの形態で存在する。リポソームでの提示が好ましい。
【0044】
本明細書において使用される場合、用語「リポソーム」とは、水性内部を封入している単層又は多層(特に形成される脂質膜の数に応じて2、3、4、5、6、7、8、9又は10層)脂質構造のことを指す。リポソーム及びリポソーム製剤は、当技術分野において周知である。リポソームでの提示については、例えばWO96/33739及びWO2007/068907に記述されている。リポソームを形成することができる脂質には、脂肪又は脂肪様特性を有する全ての物質がある。リポソームにおいて脂質を整えることができる脂質は、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロホスフィノ脂質、グリセロホスホノ脂質、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド(isoprenolides)、ステロイド、ステアリン、ステロール、アルケオリピド(archeolipids)、合成陽イオン性脂質及び炭水化物含有脂質を含む群から選択することができる。本発明の特定の実施形態において、リポソームはリン脂質を含む。適切なリン脂質には(それだけには限らないが)、ホスファチジルコリンの合成の中間生成物であるホスホコリン(PC);天然のリン脂質誘導体:天然リン脂質である卵ホスホコリン、卵ホスホコリン、大豆ホスホコリン、水素化大豆ホスホコリン、スフィンゴミエリン;及び合成リン脂質誘導体:ホスホコリン(ジデカノイル-L-a-ホスファチジルコリン[DDPC]、ジラウロイルホスファチジルコリン[DLPC]、ジミリストイルホスファチジルコリン[DMPC]、ジパルミトイルホスファチジルコリン[DPPC]、ジステアロイルホスファチジルコリン[DSPC]、ジオレオイルホスファチジルコリン[DOPC]、1-パルミトイル,2-オレオイルホスファチジルコリン[POPC]、ジエライドイルホスファチジルコリン[DEPC])、ホスホグリセロール(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[DMPG]、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[DPPG]、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[DSPG]、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール[POPG])、ホスファチジン酸(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジン酸[DMPA]、ジパルミトイルホスファチジン酸[DPPA]、ジステアロイル-ホスファチジン酸[DSPA])、ホスホエタノールアミン(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DMPE]、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DPPE]、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DSPE]、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン[DOPE])、ホスホセリン、ポリエチレングリコール[PEG]リン脂質がある。
【0045】
リポソームのサイズは、リン脂質組成物及び調製に使用する方法に応じて30nm〜数μmまで様々であってもよい。本発明の特定の実施形態において、リポソームのサイズは、50nm〜500nm、更なる実施形態において50nm〜200nmになる。動的レーザー光散乱は、リポソームのサイズを測定するために使用される当業者に周知の方法である。
【0046】
特に適切な実施形態において、本発明において使用されるリポソームは、DOPC及びステロール、特にコレステロールを含む。従って、特定の実施形態において、本発明の組成物は、リポソームの形態で本明細書に記述されるQS21を任意の量で含み、前記リポソームは、DOPC及びステロール、特にコレステロールを含む。
【0047】
好ましくは、第1のアジュバント及び第2のアジュバントは、リポソーム製剤中に3D-MPL並びにQS21を含む。
【0048】
一実施形態において、第1のアジュバントは、リポソーム製剤中に50μgなど25〜75μgの3D-MPL及び50μgなど25〜75μgのQS21を含み、第2のアジュバントは、リポソーム製剤中に10μgなど5〜15μgの3D-MPL及び10μgなど5〜15μgのQS21を含む。
【0049】
別の実施形態において、第1のアジュバントは、リポソーム製剤中に25μgなど12.5〜37.5μgの3D-MPL及び25μgなど12.5〜37.5μgのQS21を含み、第2のアジュバントは、リポソーム製剤中に5μgなど2.5〜7.5μgの3D-MPL及び5μgなど2.5〜7.5μgのQS21を含む。
【0050】
別の実施形態において、第1のアジュバントは、リポソーム製剤中に20〜30μgなど12.5〜37.5μg(例えば約又は正確に25μg)の3D-MPL及び20〜30μgなど12.5〜37.5μg(例えば約又は正確に25μg)のQS21を含み、第2のアジュバントは、リポソーム製剤中に少ない量の3D-MPL又はQS21、2.5〜20μgなど、2.5μg〜10μgなど(例えば約又は正確に5μg)の3D-MPL及び2.5〜20μgなど、2.5〜10μgなど(例えば約又は正確に5μg)のQS21を含む。適切には、第1及び第2のアジュバントにおいて3D-MPLの量は、QS21と同量である。
【0051】
非経口投与の場合、溶液が、細胞の変形又は溶解を回避するために生理的に等張である(即ち、薬学的に許容できる浸透圧を有する)べきことは周知である。薬学的に許容できる浸透圧とは、溶液が、およそ等張又はやや高張の浸透圧を有することになることを一般に意味することになる。適切には、本発明の免疫原性組成物は、250〜750mOsm/kgの範囲の浸透圧を有することになり、例えば浸透圧は、280〜500mOsm/kgの範囲など250〜550mOsm/kgの範囲であることができる。浸透圧は、市販されている浸透圧計、例えばAdvanced Instruments Inc.(USA)から利用可能なAdvanced(登録商標) Model 2020の使用によるなど当技術分野において公知の技術によって測定することができる。「等張剤」は、生理的に寛容される化合物であり、製剤(例えば本発明の免疫原性組成物)に適切な張性を与えて、製剤と接触している細胞膜を通る正味の水の流れを防止する。100mM塩化ナトリウムその他を含有する水性アジュバント組成物、例えばWO2005/112991及びWO2008/142133に開示されているアジュバント系A(ASA)又はWO2007/068907に開示されているリポソームアジュバントが公知である。
【0052】
いくつかの実施形態において、組成物に使用する等張剤は塩である。しかしながら、他の実施形態において、組成物は、非イオン性等張剤を含み、組成物中の塩化ナトリウム濃度又はイオン強度は、80mM未満など100mM未満であり、例えば10mM未満若しくは5mM未満など30mM未満である。好ましい実施形態において、非イオン性等張剤は、ソルビトールなど多価アルコールである。ソルビトールの濃度は、約4%〜約10%(w/v)など、例えば約3%〜約15%(w/v)であることができる。等張剤が塩又は多価アルコールである免疫学的に活性なサポニン画分及びTLR4アゴニストを含むアジュバントについては、WO2010142685に記述されており、例えばWO2010142685中の実施例1及び2を参照のこと。
【0053】
更なる実施形態において、第1のアジュバント及び/又は第2のアジュバントは、アルミニウムを含まない。
【0054】
本発明の方法に使用する抗原
本発明の方法の一実施形態において、第2の組成物は、第1の組成物中より少量の共通の抗原を含有する。
【0055】
一実施形態において、第2の組成物中にあるより少量の共通の抗原は、第1の組成物中より少なくとも25%少ないなど少なくとも10%少ない、例えば少なくとも3分の1など少なくとも2分の1、例えば少なくとも5分の1など少なくとも4分の1、例えば少なくとも7分の1など少なくとも6分の1、例えば少なくとも9分の1など少なくとも8分の1、例えば少なくとも15分の1など少なくとも10分の1、例えば少なくとも20分の1の抗原の量である。
【0056】
別の実施形態において、第2の組成物中の少量の共通の抗原は、第1の組成物中より2〜20分の1など2〜50分の1、例えば2〜15分の1など、2〜10分の1など、例えば3〜7分の1など、4〜6分の1などの抗原の量である。
【0057】
上記の通り、第1の免疫原性組成物及び第2の免疫原性組成物は、少なくとも1つの抗原を共通して有する。いくつかの実施形態において、第1及び第2の組成物中の全ての抗原が同一である。
【0058】
一実施形態において、共通の抗原は、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)又は三日熱マラリア原虫(P. vivax)抗原など、マラリア原虫抗原である。一実施形態において、共通の抗原は、熱帯熱マラリア原虫のCSタンパク質又はその免疫原性断片若しくはバリアント或いは三日熱マラリア原虫のCSタンパク質又はその免疫原性断片若しくはバリアントなど、スポロゾイト周囲(CS)タンパク質又はその免疫原性断片若しくはバリアントである。
【0059】
別の実施形態において、共通の抗原は、CelTOS(Genbank受託番号Q8I5P1:熱帯熱マラリア原虫3D7 CelTOS、またGenBank:AAN36249)、TRAP(Genbank受託番号:CAD52497.1 GI:23615505)若しくはPfs25(Genbank受託番号:AAN35500.1 GI:23495169)或いはCelTOS、TRAP及び/又はPfs25の免疫原性断片若しくはバリアントである。
【0060】
更なる実施形態において、共通の抗原は、B型肝炎由来表面抗原S(HBsAg)若しくはその免疫原性断片又はHBsAgを含む免疫原性タンパク質若しくはその免疫原性断片、例えば異なる抗原とHBsAgの融合タンパク質からなる免疫原性タンパク質である。
【0061】
更なる実施形態において、共通の抗原はVZV(水痘帯状疱疹ウイルス)抗原である。VZV抗原の例は、VZV糖タンパク質gE(別名gp1)又はこの免疫原性誘導体である。野生型又は完全長gEタンパク質は、シグナルペプチド、タンパク質の主要部、疎水性アンカー領域(残基546〜558)及びC末端尾部を含む623アミノ酸からなる。一態様において、gEのC末端短縮体(短縮gE又はgE短縮体とも称される)が使用され、その短縮は、カルボキシ末端部で全アミノ酸残基の4〜20%を除去する。更なる態様において、短縮gEは、カルボキシ末端アンカー領域(最適には野生型配列のアミノ酸およそ547〜623)を欠く。更なる態様において、gEは配列番号2の配列を有する短縮gEである。
【0062】
gE抗原、アンカーがないその誘導体(同様に免疫原性誘導体である)及びその産生については、欧州特許第0405867号及びその中の参照文献に記述されている(Vafai (1994年) Vaccine 12:1265頁も参照のこと)。欧州特許第192902号も、gE及びその産生について開示している。配列番号2に示される配列を有する短縮gEは、HaumontらVirus Research (1996年) 40:199頁によっても開示されており、参照により本明細書に完全に組み込む。
【0063】
更なる実施形態において、共通の抗原は、gB又はその免疫原性断片若しくはバリアントなどサイトメガロウイルス(CMV)抗原である。適切なgB由来抗原については、WO2012/049317に記述されており、その特許は米国特許第2,013,216,613号として米国において公開されており、本発明に使用する適切なタンパク質を記述する目的で参照により組み込む。
【0064】
更なる実施形態において、共通の抗原は、RSウイルス(RSV)のFタンパク質又はその免疫原性断片若しくはバリアントなどRSV抗原である。適切なFタンパク質由来抗原については、WO2010149745に記述されており、例えばWO2010149745中の配列番号18、配列番号20及び配列番号22に示されるFタンパク質バリアントである。他の適切なRSV抗原については、WO2011008974及びWO2012158613に記述されている。
【0065】
更なる実施形態において、共通の抗原は、不活性化又は弱毒化したデング熱ウイルス全体などデング熱ウイルス抗原である。組成物は多価であることができ、例えば4つ以上のデング熱系を含有することができる。
【0066】
更なる実施形態において、共通の抗原は、例えばWO2012139225に記述されているタンパク質E及び/若しくはピリンA又はその免疫原性断片若しくはバリアントなどインフルエンザ(Haemophilus influenzae)抗原である。
【0067】
更なる実施形態において、共通の抗原は、M72抗原、例えばWO2006/117240に記述されている抗原など結核菌(M. tuberculosis)抗原であり、その抗原は米国特許第8,470,338号として取得されており、本発明に使用する適切なタンパク質を記述する目的で参照により組み込む。
【0068】
対象とする結核菌抗原は、
- WO2010010177の配列番号20又は21に記載のRv0125、別名Mtb32a、
- WO2010010177の配列番号14に記載のRv0915、別名MTCC2又はMtb41、
- WO2010010177の配列番号8に記載のRv1174、別名DPV、
- WO2010010177の配列番号13に記載のRv1196、別名Mtb39又はTbH9、
- WO2010010180の配列番号1及び2〜7に記載のRv1753、
- WO2010010177の配列番号10に記載のRv1793、別名MTI又はMtb9.9、
- WO2010010177の配列番号9に記載のRv2087、別名MSL又はMtb9.8、
- WO2010010179の配列番号1及び2〜7に記載のRv2386、
- WO2010010177の配列番号1及び2〜7又はWO2011092253の配列番号161〜169、179若しくは180に記載のRv3616、別名HTCC1若しくはMtb40
を含む(又はそれからなる)、
或いは上記いずれかの配列の少なくとも20個の残基(少なくとも50など)の免疫原性断片を含む(又はそれからなる)又は上記いずれかの配列の少なくとも90%(少なくとも95%又は98%など)の同一性を有するバリアントを含む(又はそれからなる)配列を含む。
【0069】
対象とする結核菌融合抗原には、WO2010010177の配列番号23に記載のMtb72f又は本明細書の配列番号3に記載のM72から得られるものがある。特に興味深いM72抗原は、配列番号3の残基2〜723を含む配列(例えば本明細書の配列番号4)など、本明細書の配列番号3と少なくとも90%(少なくとも95%又は98%など)の同一性を有するアミノ酸配列を含む(又はそれからなる)ものである。
【0070】
対象とする他の結核菌抗原は、
- ESAT-6(別名esxA及びRv3875)、そのポリペプチド配列は、WO97/09428の配列番号103(配列番号104のcDNA)及びSorensenら、Infection and Immunity 1995年63(5):1710〜1717頁に記述される。ESAT-6の全長ポリペプチド配列は、WO10010180の配列番号16に示される;
- Ag85複合体抗原(例えばAg85A、別名fbpA及びRv3804c;又はAg85B、別名fbpB及びRv1886c)、それについては例えば、Contentら、Infection and Immunity 1991年59:3205〜3212頁及びHuygenら、Nature Medicine 1996年2(8):893〜898頁において論議されている。Ag85Aの全長ポリペプチド配列は、WO10010180の配列番号17に示される(残基43〜338の成熟タンパク質、即ちシグナルペプチドを欠くそれは、特に興味深いものである)。Ag85Bの全長ポリペプチド配列は、WO10010180の配列番号18に示される(残基41〜325の成熟タンパク質、即ちシグナルペプチドを欠くそれは、特に興味深いものである);
- α-クリスタリン(別名hspX及びRv2031c)(特に興味深いものは、残基71〜91、21〜40、91〜110及び111〜130に対応する断片である)、それについてはVerbonら、Journal of Bacteriology 1992年174:1352〜1359頁及びFrisciaら、Clinical and Experimental Immunology 1995年102:53〜57頁に記述される。α-クリスタリンの全長ポリペプチド配列は、WO10010180の配列番号19に示される;
- Mpt64(別名Rv1980c)、それについてはRocheら、Scandinavian Journal of Immunology 1996年43:662〜670頁に記述される。MPT64の全長ポリペプチド配列は、WO10010180の配列番号20に示される(残基24〜228の成熟タンパク質、即ちシグナルペプチドを欠くそれは、特に興味深いものである);
- TB10.4、TB10.4の全長ポリペプチド配列は、WO10010180の配列番号23に示される;
を含み(又はそれからなり)、又は上記いずれかの配列の少なくとも20個の残基(少なくとも50個など)の免疫原性断片を含む(又はそれからなる)若しくは上記いずれかの配列の少なくとも90%(少なくとも95%又は98%など)の同一性を有するバリアントを含む(又はそれからなる)配列を含む。
【0071】
免疫原性断片は、免疫特性を保持する限り任意の長さであり得る。例えば、断片は、該当するタンパク質の10個以上の連続したアミノ酸など5個以上の連続したアミノ酸、例えば50個以上の連続したアミノ酸など20個以上の連続したアミノ酸、例えば100個以上の連続したアミノ酸を含むことができる。
【0072】
更なる実施形態において、共通の抗原は該当するタンパク質のバリアントを含む又はそれからなる。
【0073】
バリアントポリペプチドは、参照配列と比較した際にいくつかの置換、好ましくは保存的置換を含有することができる(例えば、1〜25個など1〜50個、特に1〜10個、とりわけ1個のアミノ酸残基を改変することができる)。適切にはそのような置換はエピトープの領域内で起こらず、従って抗原の免疫特性に著しい影響はない。
【0074】
タンパク質バリアントは、参照配列と比較して追加のアミノ酸が挿入され、例えば、そのような挿入は1〜10個所(1〜5個所、適切には1又は2個所、特に1個所など)に存在することができ、例えば各位置で50アミノ酸以下(20以下、特に10以下、とりわけ5以下など)の追加を含むことができるバリアントも含み得る。適切にはそのような挿入はエピトープの領域内で起こらず、従って抗原の免疫特性に著しい影響はない。挿入の一例には、問題とする抗原の発現及び/又は精製を補助するための短い長さ(例えば2〜6残基)のヒスチジン残基がある。
【0075】
バリアントは、参照配列と比較してアミノ酸が欠失しており、例えば、そのような欠失は1〜10個所(1〜5個所、適切には1又は2個所、特に1個所など)に存在することができ、例えば各位置で50アミノ酸以下(20以下、特に10以下、とりわけ5以下など)の欠失を含むことができるバリアントも含む。適切にはそのような欠失はエピトープの領域内で起こらず、従って抗原の免疫特性に著しい影響はない。
【0076】
当業者は、特定のタンパク質バリアントが、置換、欠失及び付加(又は、その任意の組合せ)を含み得ることを認識できる。
【0077】
好ましくは、バリアントは、関連する参照配列に対して少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性及び最も好ましくは少なくとも約90%の同一性(少なくとも約95%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%など)を呈する。
【0078】
パーセント配列同一性並びに配列類似性を決定するのに適切なアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、それらはAltschulら、Nuc. Acids Res. 25:3389〜3402頁(1977年)及びAltschulら、J. Mol. Biol. 215:403〜410 (1990年)にそれぞれ記述されている。
【0079】
CSタンパク質の適切なバリアントは、CSタンパク質の部分がB型肝炎由来表面抗原S(HBsAg)を持つハイブリッドタンパク質の形態であるバリアントであることができる。CSバリアント抗原は、例えば、CSタンパク質のC末端部分の実質的に全て、CSタンパク質免疫優性領域の4つ以上のタンデムリピート、及びHBsAgを含むハイブリッドタンパク質の形態であることができる。ハイブリッドタンパク質は、少なくとも160個のアミノ酸を含有し、CSタンパク質のC末端部分に実質的に相同であるが疎水性アンカー配列がない配列を含むことができる。CSタンパク質は、C末端から最後の12個のアミノ酸がなくてもよい。更に、それは4個以上、例えば10個以上のAsn-Ala-Asn-Proテトラペプチド(NANP)反復モチーフを含有することができる。
【0080】
本発明に使用するハイブリッドタンパク質は、HBsAgのN末端への直鎖リンカーを介してインフレームで融合したNF54系由来の熱帯熱マラリア原虫のクローン3D7のアミノ酸207〜395に実質的に相当する熱帯熱マラリア原虫のCSタンパク質の一部を含むタンパク質であることができる。リンカーは、HBsAg由来preS2の一部を含むことができる。本発明に使用するのに適切なCS構築物については、WO93/10152に概要が述べられており、それは米国特許第5,928,902号及び第6,169,171号として米国において取得されており、その両方を本発明に使用する適切なタンパク質を記述する目的で参照により組み込む。
【0081】
本発明に使用する特定のハイブリッドタンパク質は、RTSとして公知のハイブリッドタンパク質(
図2及び配列番号1)(WO93/10152(RTS
*と表示される)及びWO98/05355に記述されている)であり、
- メチオニン残基
- 3個のアミノ酸残基、Met Ala Pro
- 熱帯熱マラリア原虫系3D7のCSタンパク質のアミノ酸207〜395を表す189アミノ酸の範囲
- グリシン残基
- B型肝炎ウイルス(adw血清型)preS2タンパク質の4個のカルボキシ末端残基を表す4個のアミノ酸残基、Pro Val Thr Asn及び
- ヌクレオチド1653〜2330にコードされ、B型肝炎ウイルス(adw血清型)のSタンパク質を指定する226アミノ酸の範囲からなる。
【0082】
RTSは、RTS,S混合粒子の形態であってもよい。RTS,S粒子は、2つのポリペプチド、RTS及びSを含み、それらポリペプチドは同時に合成され、複合粒状構造(RTS,S)を自発的に形成することができる。
【0083】
RTSタンパク質は、酵母、例えば出芽酵母(S. cerevisiae)において発現させることができる。そのような宿主において、RTSはリポタンパク質粒子として発現されることになる。受容酵母系は、そのゲノム中にB型肝炎S発現カセットのいくつかの統合されたコピーを既に保有することができる。従って、得られた系は、2つのポリペプチド、S及びRTSを合成し、それらは混合(RTS,S)リポタンパク質粒子へと自発的に共集合する。これらの粒子は、その表面にハイブリッドのCSタンパク質配列を提示することができる。これらの混合粒子中のRTS及びSは、特定の比率、例えば1:4で存在することができる。
【0084】
RTS,Sについては、例えばVekemansら、(2009年) Vaccine 275:G67及びRegulesら、(2011年) Expert Rev. Vaccines 10:589頁に概説されている。
【0085】
一実施形態において、第1の免疫原性組成物は、50μgなど25〜75μgのRTS,Sを含み、第2の免疫原性組成物は、10μgなど5〜15μgのRTS,Sを含む。
【0086】
別の実施形態において、第1の免疫原性組成物は、25μgなど12.5〜37.5μgのRTS,Sを含み、第2の免疫原性組成物は、5μgなど2.5〜7.5μgのRTS,Sを含む。
【0087】
更なる実施形態において、共通の抗原は、三日熱マラリア原虫のCSタンパク質から得られる。適切な三日熱マラリア原虫CSタンパク質バリアントについて記述されている。例えば、WO2008009652は、a.三日熱マラリア原虫のI型スポロゾイト周囲タンパクの反復領域から得られる少なくとも1つの繰り返し単位、b.三日熱マラリア原虫のII型スポロゾイト周囲タンパクの反復領域から得られる少なくとも1つの繰り返し単位、及びc. B型肝炎ウイルスから得られる表面抗原S又はその断片を含む免疫原性ハイブリッド融合タンパク質について記述しており、その特許は米国特許出願公開第2010/0150998号として米国において公開されており、本発明に使用する適切なタンパク質を記述する目的で参照により組み込む。WO2008009652の配列番号17は、CSV-Sと称される特異的ハイブリッド融合タンパク質について記述している。B型肝炎ウイルスから得られる表面抗原Sと共発現されると、CSV-S,S粒子が形成される(WO2008009652)。そのような粒子も、本発明において使用することができる。
【0088】
更なる実施形態において、共通の抗原はRTS及びCSV-Sを含む混合粒子である。そのような粒子については、WO2008009650に記述されており、米国特許出願公開第2010/0062028号として米国において公開されており、本発明に使用する適切なタンパク質を記述する目的で参照により組み込む。
【0089】
免疫化体制、標的集団及び投与の様式
上記の通り、本発明の方法は、1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含む。
【0090】
一実施形態において、第1の組成物の初回投与と第2の組成物の投与との時間間隔は、1〜24カ月間、例えば1〜12カ月間など1〜18カ月間、例えば2〜24カ月間、例えば2〜14カ月間など、2〜12カ月間など2〜18カ月間、3〜9カ月間など2〜10カ月間、例えば7〜8カ月間など4〜8カ月間である。
【0091】
別の実施形態において、第1の組成物の初回投与と第2の組成物の投与との時間間隔が、1〜28日間、例えば1〜21日間、例えば1〜14日間、例えば1〜7日間になるように、第1の組成物の初回投与と第2の組成物の投与との時間間隔は加速される。
【0092】
本発明の方法は、第1の組成物の初回投与及び第2の組成物の投与に加えて免疫原性組成物の更なる投与を1回以上含むことができる。例えば、対象は第2の組成物の投与前に、第1の組成物の複数回用量を受けることができる。従って、例えば、一実施形態において、第1の組成物は、第2の組成物の投与前に2回投与される。別法として又は加えて、対象は、第2の組成物の初回投与後に、第2の組成物の更に複数の用量を受けることができる。従って、本発明の方法の一実施形態において、第2の組成物は、1回以上の更なる回数投与される。従って考え得る治療計画には、それだけには限らないが以下:
a.第1の組成物次いで第2の組成物
b.第1の組成物、次いで第1の組成物、その次に第2の組成物
c.第1の組成物、次いで第2の組成物、その次に第2の組成物
d.第1の組成物、次いで第1の組成物、その次に第1の組成物、その後第2の組成物
e.第1の組成物、次いで第1の組成物、その次に第2の組成物、その後第2の組成物
f.第1の組成物、次いで第2の組成物、その次に第2の組成物、その後第2の組成物
がある。
【0093】
治療計画b.の時間間隔は、例えば0、1、5(即ち0カ月、1カ月、5カ月目)又は0、1、6若しくは0、1、7若しくは0、1、8若しくは0、1、12であることができる。同様に、治療計画c.の時間間隔は、例えば0、1、5又は0、1、6若しくは0、1、7若しくは0、1、8若しくは0、1、12であることができる。治療計画b.及びc.の加速した間隔は、例えば0日、7日、14日目であることができる。
【0094】
更なる実施形態において、第2の組成物は、例えば繰り返し毎年、例えば1〜5年以上追加免疫で与えることができる。一実施形態において、第2の組成物は、第2の組成物の投与後少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、若しくは少なくとも20カ月又はそれ以上の時間間隔で1回以上の更なる回数投与される。一実施形態において、第2の組成物は、第2の組成物の投与後少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5年間の時間間隔で1回以上の更なる回数投与される。
【0095】
本発明の方法を使用して治療しようとする対象は、任意の年齢であり得る。本発明の一態様において、対象はヒトである。本発明の方法は、マラリアに対する除去プログラムの一部として使用することができ、その場合基本的に全集団、即ち年齢群の全員又は大多数の免疫化が有用である可能性がある。しかしながら、一実施形態において、第1の組成物が投与されるとき、ヒト対象は18歳以上である。別の実施形態において、第1の組成物が投与されるとき、ヒト対象は5歳未満である。更なる実施形態において、対象は週齢6〜12週又は月齢5〜17カ月である。更に特に適切な標的集団には、マラリアが風土病である領域への旅行者がある。
【0096】
第1及び第2の組成物は、筋肉内又は皮下投与など非経口を含めた様々な適切な経路によって投与することができる。
【0097】
特定の一実施形態において、第2の組成物は皮内に投与される。本明細書では皮内にという用語は、ヒト皮膚の真皮及び/又は表皮への抗原の適用を指すものとする。免疫原性組成物の皮内適用は、短い注射針装置(長さ約0.2〜約0.6mmの極微針を含む装置)を使用する送達又は皮膚パッチを使用する送達を含むがこれに限定されない当業者に公知の任意の皮膚方法を使用することにより実行できる。本明細書に記述される皮膚ワクチンで使用するのに適切な装置には、米国特許第4,886,499号、第5,190,521号、第5,328,483号、第5,527,288号、第4,270,537号、第5,015,235号、第5,141,496号、第5,417,662号及び欧州特許第1092444号に記述されるものなど、短い注射針装置がある。皮膚ワクチンは、WO99/34850に記述されるものなど、皮膚への注射針の有効な穿通長を制限する装置によって投与することもできる。液体噴射式注射器によって又は注射針によって真皮に液体ワクチンを送達する噴射式注射装置も適切である。圧縮ガスを使用して皮膚の外層を貫いて真皮へ粉剤形態のワクチンを加速する衝撃粉剤/粒剤送達装置も適切である。皮膚パッチは、固体基板を含む裏板を一般に含むことになる。パッチは、本発明に使用される抗原及びアジュバントを真皮又は表皮に送達する。特定の実施形態において、本発明に有用なパッチは、複数のマイクロプロジェクションを含む。マイクロプロジェクションは、表皮若しくは真皮へ角質層、表皮及び/又は真皮並びに送達及び抗原及びアジュバントを貫通させるのに適切な任意の形状のものであることができる。特定の実施形態において、マイクロプロジェクションは生分解性であり、生分解性ポリマーを含む。
【0098】
本発明に使用する免疫原性組成物は、抗原及びアジュバントを混ぜることによって作ることができる。抗原は、凍結乾燥形態又は液状製剤で提供され得る。各組成物について、抗原を含む第1の容器及びアジュバントを含む第2の容器を含むキットを提供することができる。
【0099】
適切には、本発明による免疫原性組成物は、0.1〜0.5mlなど0.05ml〜1mlのヒト用量体積、特に約0.5ml又は0.7mlの用量体積を有する。第2の免疫原性組成物の体積を減少させ、例えば0.1〜0.2mlなど0.05ml〜0.5mlにすることができる。使用される組成物の体積は、送達経路によって決まり、皮内経路によって用量を少なくできる。
【0100】
典型的にヒトに対する投与の場合、第1及び第2の免疫原性組成物は、1μg〜50μgなど1μg〜100μgの結核菌抗原(例えば配列番号3を含むポリペプチド)を含むことになる。適切には、第1の免疫原性組成物は、1μg〜50μg(5μg〜50μgなど)、とりわけ1μg〜20μg(5μg〜20μgなど)特におよそ又は正確に10μgのM72関連抗原を含有することになる。
【0101】
いくつかの実施形態において、第2の免疫原性組成物は、第1の免疫原性組成物と同量のM72関連抗原を含有することになる。例えば、第2の免疫原性組成物は、1μg〜50μg(5μg〜50μgなど)、とりわけ1μg〜20μg(5μg〜20μgなど)特におよそ又は正確に10μgのM72関連抗原を含有することになる。
【0102】
他の実施形態において、第2の免疫原性組成物は、第1の免疫原性組成物に対して減じられた量のM72関連抗原を含有することになる。例えば、第2の免疫原性組成物は、1μg〜40μg(2μg〜40μgなど)、とりわけ1μg〜16μg(2μg〜16μgなど)特に10μg未満(1〜8μgなど)のM72関連抗原を含有することになる。
【0103】
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)ヒト対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象に1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象に1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、
第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の少なくとも1つの共通の成分を含有し、及び/又は
共通の抗原が、RTS,Sであり、第2の組成物が、第1の組成物中より少量のRTS,Sを含有し、
ただし、第1及び第2の組成物の両方が、RTS,S並びに水中油型エマルジョン製剤と会合したQS21及び3D-MPLを含まない、
前記方法。
(2)第1のアジュバント及び第2のアジュバントが、同じ成分から成る、(1)に記載の方法。
(3)第1及び第2のアジュバントが、同じ相対的割合で同じ成分から成る、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の少なくとも1つの共通の成分を含有する、(1)〜(3)のいずれか1に記載の方法。
(5)第2のアジュバント中の少量が、第1のアジュバント中より少なくとも25%少ないなど少なくとも10%少ない、例えば少なくとも3分の1など少なくとも2分の1、例えば少なくとも5分の1など少なくとも4分の1、例えば少なくとも7分の1など少なくとも6分の1、例えば少なくとも9分の1など少なくとも8分の1、例えば少なくとも15分の1など少なくとも10分の1、例えば少なくとも20分の1の量である、(1)〜(4)のいずれか1に記載の方法。
(6)第2のアジュバント中の少量が、第1のアジュバント中より2〜20分の1など2〜50分の1、例えば2〜10分の1など2〜15分の1、例えば4〜6分の1など3〜7分の1の量である、(1)〜(5)のいずれか1に記載の方法。
(7)第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニストを含み、TLRアゴニストが、3D-MPLなどTLR4アゴニストである、(1)〜(6)のいずれか1に記載の方法。
(8)第1及び第2のアジュバントが、QS21など免疫学的に活性なサポニンを含み、任意選択でステロールを更に含む、(1)〜(7)のいずれか1に記載の方法。
(9)第1及び第2のアジュバントが、リポソーム製剤中に3D-MPL及びQS21を含む、(1)〜(8)のいずれか1に記載の方法。
(10)第1のアジュバントが、50μgなど25〜75μgの3D-MPL及び50μgなど25〜75μgのQS21を含み、第2のアジュバントが、10μgなど5〜15μgの3D-MPL及び10μgなど5〜15μgのQS21を含む、(9)に記載の方法。
(11)第1のアジュバントが、25μgなど12.5〜37.5μgの3D-MPL及び25μgなど12.5〜37.5μgのQS21を含み、第2のアジュバントが、5μgなど2.5〜7.5μgの3D-MPL及び5μgなど2.5〜7.5μgのQS21を含む、(9)に記載の方法。
(12)第1のアジュバント及び/又は第2のアジュバントが、アルミニウムを含まない、(1)〜(11)のいずれか1に記載の方法。
(13)第2の組成物が、第1の組成物中より少量の共通の抗原を含有する、(1)〜(12)のいずれか1に記載の方法。
(14)第2の組成物中のより少量の共通の抗原が、第1の組成物中より少なくとも25%少ないなど少なくとも10%少ない、例えば少なくとも3分の1など少なくとも2分の1、例えば少なくとも5分の1など少なくとも4分の1、例えば少なくとも7分の1など少なくとも6分の1、例えば少なくとも9分の1など少なくとも8分の1、例えば少なくとも15分の1など少なくとも10分の1、例えば少なくとも20分の1の抗原の量である、(1)〜(13)のいずれか1に記載の方法。
(15)第2の組成物中のより少量の共通の抗原が、第1の組成物中より2〜20分の1など2〜50分の1、例えば2〜10分の1など2〜15分の1、例えば4〜6分の1など3〜7分の1の抗原の量である、(1)〜(14)のいずれか1に記載の方法。
(16)第1及び第2の組成物中の全ての抗原が同一である、(1)〜(15)のいずれか1に記載の方法。
(17)共通の抗原が、熱帯熱マラリア原虫又は三日熱マラリア原虫抗原などマラリア原虫抗原である、(1)〜(16)のいずれか1に記載の方法。
(18)共通の抗原が、スポロゾイト周囲タンパク質又はそのバリアントの免疫原性断片である、(1)〜(17)のいずれか1に記載の方法。
(19)共通の抗原が、RTS、CSV-S、RTS,S及びCSV-S,S並びにRTS及びCSV-Sを含む混合粒子から成る群から選択される、(1)〜(18)のいずれか1に記載の方法。
(20)第1の組成物の投与と第2の組成物の投与との時間間隔が、1〜24カ月間、例えば1〜12カ月間など1〜18カ月間、例えば2〜24カ月間、例えば2〜12カ月間など2〜18カ月間、3〜9カ月間など2〜10カ月間、例えば7〜8カ月間など4〜8カ月間である、(1)〜(19)のいずれか1に記載の方法。
(21)第1の免疫原性組成物が、第2の免疫原性組成物の投与前に2回投与される、(1)〜(20)のいずれか1に記載の方法。
(22)第2の組成物が、第2の組成物の投与後少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、若しくは少なくとも20カ月又はそれ以上の時間間隔で1回以上の更なる回数投与される、(1)〜(21)のいずれか1に記載の方法。
(23)第1の組成物が投与されるとき、ヒト対象が18歳以上である、(1)〜(22)のいずれか1に記載の方法。
(24)第1の組成物が投与されるとき、ヒト対象が5歳未満である、(1)〜(21)のいずれか1に記載の方法。
(25)2回目の投与が、皮内に与えられる、(1)〜(24)のいずれか1に記載の方法。
(26)ヒト対象において免疫応答を誘導する方法に使用する免疫原性組成物であって、前記方法が、対象に1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象に1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、
第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の少なくとも1つの共通の成分を含有し、及び/又は
共通の抗原がRTS,Sであり、第2の組成物が第1の組成物中より少量のRTS,Sを含有し、
ただし、第1及び第2の組成物の両方が、RTS,S並びに水中油型エマルジョン製剤と会合したQS21及び3D-MPLを含まない、
前記免疫原性組成物。
(27)(2)〜(25)のいずれか1以上に記載の更なる特徴を1つ以上含む、(26)に記載の免疫原性組成物。
(28)ヒト対象において免疫応答を誘導する医薬の製造における1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物の使用であって、対象が、これまでに1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を受けたことがあり、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、これらの2つの成分のうちの少なくとも1つを共通して有し、
第2のアジュバントが、第1のアジュバント中より少量の少なくとも1つの共通の成分を含有し、及び/又は
共通の抗原がRTS,Sであり、第2の組成物が第1の組成物中より少量のRTS,Sを含有し、
ただし、第1及び第2の組成物の両方が、RTS,S並びに水中油型エマルジョン製剤と会合したQS21及び3D-MPLを含まない、
前記使用。
(29)(2)〜(25)のいずれか1以上に記載の更なる特徴を1つ以上含む、(28)に記載の使用。
(30)ヒト対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象に1つ以上の抗原及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象に1つ以上の抗原及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2の組成物が、少なくとも1つの抗原を共通して有し、第1及び第2のアジュバントが、リポソーム製剤中で同じ相対的割合の3D-MPL及びQS21から成り、第2の組成物が、第1の組成物中より少量の抗原及び/又はより少量のアジュバントを含有する、前記方法。
(31)(2)〜(25)のいずれか1以上に記載の更なる特徴を1つ以上含む、(30)に記載の方法。
(32)ヒト対象においてマラリアに対する免疫応答を誘導する方法であって、対象にRTS,S及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象にRTS,S及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2のアジュバントが、同じ相対的割合でTLR4アゴニスト並びに/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、第2の組成物が、第1の組成物中より少量のアジュバントを含有し、ただし第1の組成物が、RTS,S並びに水中油型エマルジョン製剤と会合したQS21及び3D-MPLを含む組成物でない、前記方法。
(33)(2)〜(25)のいずれか1以上に記載の更なる特徴を1つ以上含む、(32)に記載の方法。
(34)ヒト対象においてマラリアに対する免疫応答を誘導する方法であって、対象にRTS,S及び第1のアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象にRTS,S及び第2のアジュバントを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、第1及び第2のアジュバントが、リポソーム製剤中で同じ相対的割合の3D-MPL及びQS21から成り、第2の組成物が、第1の組成物中より少量の抗原及び/又はより少量のアジュバントを含有する、前記方法。
(35)(2)〜(25)のいずれか1以上に記載の更なる特徴を1つ以上含む、(34)に記載の方法。
(36)ヒト対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象にRTS,S及びアジュバントを含む第1の免疫原性組成物を投与し、続けて対象にRTS,Sを含む第2の免疫原性組成物を投与することを含み、アジュバントが、TLRアゴニスト及び/又は免疫学的に活性なサポニンを含み、第2の免疫原性組成物がアジュバントを含まない、前記方法。
(37)アジュバントが、(7)〜(9)又は(12)のいずれか1以上に記載の更なる特徴を1つ以上含む、(36)に記載の方法。
(38)(13)〜(25)のいずれか1以上に記載の更なる特徴を1つ以上含む、(36)又は(37)に記載の方法。
(39)第1及び第2の組成物の両方がRTS,S 25μgを含むか、又は両方がRTS,S 50μgを含む、(36)〜(38)のいずれか1に記載の方法。
特許出願及び取得特許を含めた本出願の全ての参照文献の教示は、参照により本明細書に完全に組み込む。特定の要素を「含む」と定義された組成物又は方法若しくは過程は、その要素からなる組成物、方法若しくは過程(それぞれ)を包含するものと理解される。本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することにより更に記述されることになる。
【実施例】
【0104】
[実施例1] RTS,S及びアジュバントAS01を使用するワクチン接種並びに実験的マラリア抗原投与
本研究に使用したワクチン
RTS,Sを、基本的にWO 93/10152に記載の通り酵母(出芽酵母)で産生した。
【0105】
RTS,S/AS01の「標準」用量は、リポソームを含む製剤中に免疫賦活薬3D-MPL(登録商標)(GlaxoSmithKline Biologicals、Montana、USA)及びQS21(それぞれ50μg)を含有するAS01アジュバント500μLに再構成された凍結乾燥RTS,S抗原50μgを含有する。
【0106】
RTS,S/AS01の「分割」用量は、上記の溶液100μLであり、即ち凍結乾燥RTS,S抗原10μg並びにリポソームによる3D-MPL及びQS21をそれぞれ10μg含有する。
【0107】
用語
本明細書において、RTS,S/AS01の標準用量は、「R」と称され、分割用量は「r」と称される。標準用量3回の標準的な治療計画は「RRR」と称され、3回目の用量が分割である治療計画は「RRr」と称される。標準用量2回とそれに続く分割用量2回の治療計画は、「RRrr」になるなどである。
【0108】
方法
年齢18〜50歳の健常なマラリアナイーブ志願者の筋肉内に投与された、AS01でアジュバント添加された抗原RTS,Sを含有するマラリアワクチンのスポロゾイト抗原投与に対する安全性、反応原性及び効力を評価するために臨床試験を実行した。「遅延分割用量」群には、0及び1カ月目に標準用量を2回並びに7カ月目に分割用量(標準用量の5分の1(1/5)を与えた。(「0、1、2カ月」群)には、1カ月間隔で標準用量を3回与えた。
【0109】
46人の対象を2つのコホートに採用し、上で称される「遅延分割用量」(対象30人)及び「0、1、2カ月」群(対象16人)にランダム化した。更に12人の対象は、「感染性」対照の部分、即ちどんな免疫処置も受けないが、スポロゾイト抗原投与を受けた志願者であった。
【0110】
各コホートについて、上記いずれかの群の3回目の用量後に、志願者は、「スポロゾイト抗原投与」として一般にも公知である標準化した一次マラリア抗原投与を約3週間受けることを要求された(Chulayら、(1986年)Am J Trop Med Hyg. 35:66頁)。一次抗原投与は、5匹の熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト感染ハマダラカ(Anophelese stevensi)が各抗原投与志願者を5分間捕食できるようにすることを含んでいた。
【0111】
抗原投与後、対象を、少なくとも30日間毎日追跡して、マラリアに感染したかどうか判定した。感染を検出する原理方法は、光学顕微鏡により無性生殖期寄生虫を検出するためのギムザ染色した末梢血液塗沫標本の評価である。無性生殖期寄生虫の存在は、対象が、肝臓から放たれ赤血球期まで進行した寄生虫による増殖性感染を受け、従って抗原投与に対する無菌保護が達成されなかったことを示す。
【0112】
感染の初発症候において、対象は、マラリアに陽性であることを宣告され、治効用量のクロロキンを受けた。一次効力読み出しは、無菌保護であり、即ち対象は無性生殖期寄生虫血症を全く発症しなかった。加えて、完全には保護されなかった対象において抗原投与と寄生虫血症出現の間の時間を記録した。保護を、スポロゾイト抗原投与後に熱帯熱マラリア原虫感染がないままである免疫した参加者の割合及び感染に至る検出潜伏期の遅延によって評価した。
【0113】
ワクチン効力(VE)を、100
*(1-危険率)と定義した。フィッシャーの正確確率検定を使用して、「遅延分割用量」と「0、1、2カ月」ワクチン群と「感染性」対照それぞれの間でマラリア発生率を比較した。
【0114】
結果
【0115】
【表1】
【0116】
本研究は、0、1、2カ月群に対する遅延分割用量群の優位性を検出するために提供されたのではなく、2つの群間の差異は、統計的に全く有意でなかった(RRRに対するFxのVE増加= 57.0%、[-7.9〜88.3]、p=0.0741、フィッシャーの正確検定)。しかしながら、遅延分割用量群において感染するまでの時間の遅延を考慮した0、1、2カ月群に対する遅延分割用量群の生存時間の差異の分析は、統計的有意性に達し(p=0.0455、ログランク)、RRr群における4/30人の対象が寄生虫血症を発症し(VE = 87%[95%CI:67、95])、RRR群の6/16人の対象が寄生虫血症を発症した(VE = 63%[95%CI 20、80])。
図4a。更に、現在までに完了した5回の0、1、2カ月間のRTS,S/AS01臨床試験において研究した95人の対象についてプールされたデータに対する本研究の遅延分割用量治療群の結果を比較した分析は、この結果が偶然に起こった可能性は極めて低いことを示した(p=0.0045、フィッシャーの正確検定)。
図4b。
【0117】
研究延長
本研究は延長され、何人かの対象は、最後の用量の6カ月後に分割追加免疫を受け、続いて1カ月後にスポロゾイト抗原投与された。1回目の抗原投与後に保護されなかった対象には、分割追加免疫を与えた。1回目の抗原投与後に保護されていた対象は、分割追加免疫を受ける又は受けないようにランダム化し、続いて1カ月後にスポロゾイト抗原を投与した。結果を表2並びに
図5a及び5bに要約する。NPは、1回目の抗原投与の間に保護されなかったことを表し、Pは、1回目の抗原投与の間に保護されたことを表す。全ての追加免疫は、分割であった(RTS,S/AS01Bの1/5用量)。
【0118】
【表2】
【0119】
Fx治療計画(n=2)又はRTS,Sの標準用量治療計画(n=3)のいずれかの後に保護されなかった大多数の対象は、以降の追加免疫用量(1/5用量)により保護することができた(データ不掲載)。
【0120】
抗CS抗体価
抗CS抗体価を、GSK Biologicalsにより開発された標準的な酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定した。Clementら、(2012年) Malar J、11:384頁。抗体価を、参照標準曲線を使用して算出し、記述の通りELISA単位(EU)で表した。結果を表3に要約する。
【0121】
【表3】
【0122】
結合力(親和性)アッセイ
CSPの反復領域に対する抗CS抗体の結合力指数(AI)を判定した。IgGの結合力の測定の場合、サンプルを、Olotuら、(2014年) PLoS One 15;9(12):e115126. doi:10.1371/journal.pone.0115126に記載の通り2枚の異なるELISAプレート、1枚はカオトロピック剤で処理し1枚は無処理のプレート、を使用して評価した。カオトロピック剤として1Mチオシアン酸アンモニウム(NH4SCN)溶液を処理プレートに添加し、一方でPBS中の0.05%Tween-20を無処理プレートに添加し、両方のELISAプレートを更に洗浄し、記述の通り現像した。結合力指数(AI)を、NH4SCNによる処理後にコーティングした抗原に結合したままの抗CSP IgGの濃度(EU/ml)を無処理プレートにおいてコーティングした抗原に結合したままのIgGの濃度(EU/ml)で割った比率として算出した。結果を表4に要約する。
【0123】
【表4】
【0124】
AIは、治療計画の比較に利用できるが、個体レベルでの保護を説明しない。
【0125】
[実施例2] M72及びアジュバントAS01を使用するワクチン接種
結核抗原M72 2-his(配列番号4)の遅延及び減少させた投薬の影響を、マウスモデルにおいて調査した。
【0126】
材料及び方法
動物モデル
下記の表に指示する通り0〜14及び28又は98日目に雌マウスC57BL/6JOlaHsd-6週齢-群当たり12匹のマウスに、50μlを筋肉内経路によって注射した。
【0127】
【表5】
【0128】
AS01Eアジュバントは、リポソームを含む製剤中に免疫賦活薬3D-MPL(登録商標)(GlaxoSmithKline Biologicals、Montana、USA)及びQS21(それぞれ2.5μg)を含有した。アジュバント緩衝液を使用して希釈を実行した。
【0129】
読み出し:
21日目 - II後7日目(G1-7)
35日目 - III後7日目(G1-3)
105日目 - III後77日目(G1-3)及びIII後7日目(G4-7)
における全血ICS
28日目 - II後14日目(G1-7)
42日目 - III後14日目(G1-3)
112日目 - III後84日目(G1-3)及びIII後14日目(G4-7)
における血清学抗M72 IgTot
【0130】
十分な体積を得るために、群につき3匹のマウスの4つのプールの全血を21、35及び105日目に採集した。個々の血清を28、42及び112日目に採集した。ICS及び血清学についてPIIとPIIIの結果を連結するために、マウスを個々に識別した。
【0131】
読み出し記述
細胞免疫応答-細胞内サイトカイン染色(ICS)
白血球単離
各時点において、血液を各マウスから採集し、順次プールした(3匹のマウスの5つのプール)。血液を、ヘパリン(1/10)を含有するRPMI/添加物(グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸及び2-メルカプトエタノールで補充したRPMI 1640)を含有するチューブに採集した。溶解緩衝液10倍体積を全血に添加し、チューブを室温(RT)で10分間インキュベートした。遠心分離(RTで335g、10分間)後に、ペレットをRPMI/添加物中に採取し、濾過した(細胞濾過器100μm)。細胞を、再ペレット化し(RTで335g、10分間)、完全培地(グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸及び2-メルカプトエタノール、並びに5%加熱不活性化ウシ胎仔血清で補充したRPMI 1640)に再懸濁した。
【0132】
新鮮な白血球のin vitro刺激
白血球を、1ウェル当たりおよそ1,000,000個細胞で丸底96ウェルプレートに播種した。次いで白血球を、M72配列を網羅するペプチド1μg/mlを含む又は含まない1μg/ml抗CD28(クローン9C10(MFR4.B))及び抗CD49d(クローン37.51)で6時間(37℃、5%CO2)刺激した。刺激の2時間後に、完全培地に1/200に希釈したブレフェルジンAを更に4時間添加した。次いでプレートを4℃に終夜移した。
【0133】
ICS
細胞を染色し、5色ICSアッセイを使用して分析した。
【0134】
細胞を、V底96ウェルプレートへ移し、189g、4℃で5分間遠心分離し、フロー緩衝液(PBS 1×、1%FCS)200μlで洗浄した後、細胞を、1/50に希釈した抗CD16/32(クローン2.4G2)を含有するフロー緩衝液50μlに4℃で10分間再懸濁した。次いで、抗CD4-V450(クローンRM4-5、1/50希釈)及び抗CD8-PerCp-Cy5.5(クローン53-6.7、1/50希釈)抗体並びにLive&Death PO(1/500希釈)を含有するフロー緩衝液50μlを、4℃で30分間添加した。細胞を遠心分離し(189g、4℃で5分間)、フロー緩衝液200μlで洗浄した。
【0135】
白血球をCytofix/Cytoperm溶液(Becton Dickinsonの市販の緩衝液)200μlを4℃で20分間添加することにより固定し、透過化処理した。細胞を遠心分離し(189g、4℃で5分間)、Perm/Wash緩衝液(Becton Dickinsonの市販の緩衝液、蒸留水に1:10に希釈した)200μlで洗浄した。追加の遠心分離工程の後、細胞を、抗IL2-FITC(クローンJES6-5H4、1/400希釈)、抗IFNγ-APC(クローンXMG1.2、1/50希釈)及び抗TNFα-PE(クローンMP6-XT22、1/700希釈)抗体を含むPerm/Wash緩衝液50μl中で、4℃で1時間染色した。細胞をPerm/Wash緩衝液で2回洗浄し、BD Stabilizing Fixative溶液220μlに再懸濁した。染色した細胞を、LSRII及びFlowJoソフトウェアを使用してフローサイトメトリーによって分析した。
【0136】
体液応答-Elisaによる抗M72 Ig tot血清学
96ウェルElisaプレートを、PBS中に0.25μg/mlの組換え抗原M72でコーティングし、4℃で終夜インキュベートした。II後及びIII後に予防接種したマウス由来の血清を、PBS(0.2%)-BSA中に1/10000で希釈し、次いでウェル1〜12に2倍の段階希釈を実行し、インキュベートした。標準及び対照材料の段階希釈を使用して、試験した血清の抗M72抗体標準力価を算出し、試験の有効性を確認した。各インキュベーション工程後に、プレートを、PBS 0.1% Tween20緩衝液で洗浄した。次いでマウスIgに特異的なビオチン化ヤギ抗体を添加し、抗原-抗体複合体を、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ複合体及びペルオキシダーゼ基質オルトフェニレンジアミン二塩酸塩/H2O2とのインキュベーションにより明らかにした。光学密度(O.D.)を、490〜620nmで記録した。個々のマウス血清の抗M72抗体価を、回帰モデルを使用してELISAの標準曲線から決定し、ELISA単位(EU)/mlで表した。次いで幾何平均抗体価(GMT)を、各群のマウスについて算出した。
【0137】
結果
T細胞応答
A. M72特異的CD4 T及びCD8 T細胞応答の動力学
CD4 T及びCD8 T細胞応答に対する分割及び/又は遅延させた3回目の用量の潜在的利点を評価するために、マウスを、本研究において最大用量のM72 0.25μgで免疫し、CD4 T細胞応答はダイナミックレンジ内であり、一方で検出可能なCD8 T細胞応答を誘導した。
【0138】
図6に示すように、同程度の追加免疫が、全用量、1/5及び1/25用量を受けた群において7PII〜7PIIIで観察されたので、標準予定(D0-D14-D28)で分割の3回目の用量を与えることは、CD4 T細胞応答を改善しなかった。
【0139】
しかしながら、プール間でM72特異的CD4 T細胞応答に多少の変動があるにもかかわらず、M72 0.25μgの遅延させた3回目の用量の7日後に、標準予定と比較してより大きな追加免疫が観察された。更に、遅延させ分割した3回目の用量又は遅延させアジュバント添加されていない3回目の用量を受けたマウスにおけるM72特異的CD4 T細胞応答のレベルは、標準予定で、全用量で免疫した群において観察されるレベルと同等であった。これは、CD4 T細胞応答のレベルに対する遅延予定の利点を示唆している。
【0140】
標準予定でM72 0.25μg用量を受けたマウスにおいて低レベルのM72特異的CD8 T細胞応答が検出され、3回目の免疫化用量は、M72特異的CD8 T細胞応答を追加免疫できなかった(
図8)。
【0141】
標準予定で分割の3回目の用量を受けたマウスにおいてM72特異的CD8 T細胞応答の減少が観察された。これは、CD8 T細胞応答が、マウスを免疫するために使用したM72タンパク質の用量範囲に大きく影響を受け、高用量のM72(1μg又は8μg)が、0.1μg又は0.25μgのM72より高レベルの応答を誘導したというこれまでのデータ(不掲載)と一致する。
【0142】
M72 0.25μgの遅延させた3回目の用量を受けたマウスにおいて、M72特異的CD8 T細胞応答の追加免疫が、試験したプール全てにおいて7PII〜7PIIIで見られた。しかしながら、全ての群がM72/AS01E 0.25μgの用量を2回受けたという事実にもかかわらず、CD8 T細胞応答の中央値は7PIIにおいて群間で変動を示した(0.231〜0.817)。
【0143】
B. M72特異的CD4及びCD8 T細胞応答のサイトカインプロファイル
類似のCD4 Tサイトカイン発現プロファイルが、標準予定で全用量、1/5並びに1/25用量を受けた群において7PII及び7PIIIの両方で観察された。2回の免疫化後にM72特異的CD4 T細胞応答には、3種類(IL2/IFNg/TNFa)及び2種類(IFNg/TNFa)があった。3回目の免疫化用量は、多機能性CD4 Th1細胞の発達を支持できなかったが、その代わりに2種類(IL2/IFNg)及び1種(IFNgだけ)産生するCD4 T細胞を増加させた(
図7)。
【0144】
M72特異的CD4 T細胞応答は、IL2/IFNg/TNFa及びIFNg/TNFa産生CD4 T細胞で主に構成されるので、遅延させた3回目の用量を与えることは、多機能性CD4 Th1細胞の発達を支持するように思われる(
図7)。遅延させアジュバント添加されていない3回目の用量を受けたマウスにおいてレベルが減少したIL2/IFNg/TNFa及びIFNg/TNFa並びにレベルが増加したIFNgのみ産生するCD4 T細胞が観察されたので、AS01は、多機能性T細胞の発達を更に高めた。
【0145】
遅延した分割の3回目の用量を受けたマウスにおけるM72特異的CD4 T細胞応答のレベルが、ベンチマークで観察されるものと類似であっても、サイトカインプロファイルはわずかに異なり、これらのデータ全体は、遅延させた免疫化予定において多機能性CD4 Th1細胞の発達が改善されることを示唆する。
【0146】
多機能CD4 T細胞の規模及び品質は、マウスにおける保護と相関すると示された(Derrickら、2011年 Vaccine 29:2902〜2909頁)。
【0147】
類似のM72特異的CD8 T細胞サイトカインプロファイルが、7PII及び7PIII両方で全群にわたって観察された(
図8)。M72特異的CD8 T細胞応答は、2種類(IFNg/TNFa)及び1種類(IFNgのみ)産生するCD8 T細胞で主に構成された。非常に低レベルのIL2/INFg/TNFa及びTNFa産生CD8 T細胞も検出された。
【0148】
抗体応答
A. 抗M72 Ig tot血清学
図10に示すように、抗M72血清学応答の追加免疫が、標準予定で全用量、1/5及び1/25用量を受けた群において14PIIと14PIIIの間に観察された。用量-変域効果の傾向を、最高のM72特異的血清学応答を与える最高の用量で観察した。84PIIIにおけるより低い血清学応答に示されるように、応答の持続は経時的に減少した。
【0149】
遅延させた3回目の免疫化を受けたマウスにおいて、より高い規模の応答が観察された。類似レベルのM72特異的Igが、AS01Eの存在及び非存在下で見られたことは、M72単独が、遅延させた3回目の免疫化後に高い血清学応答を誘導するのに十分であることを示唆した。