(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645986
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】複合ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/34 20060101AFI20200203BHJP
F04D 29/32 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
F04D29/34 M
F04D29/32 C
【請求項の数】46
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-565664(P2016-565664)
(86)(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公表番号】特表2017-517670(P2017-517670A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】US2015028733
(87)【国際公開番号】WO2015171446
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2018年4月27日
(31)【優先権主張番号】61/988,582
(32)【優先日】2014年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506038235
【氏名又は名称】ホートン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】カーヒル, ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ストラウス, エリック
(72)【発明者】
【氏名】バーチェット, ダグ
(72)【発明者】
【氏名】ディダンデ, フーシャン
(72)【発明者】
【氏名】シューグレン, シャルレス マーク
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−000125(JP,U)
【文献】
米国特許第02396232(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0049297(US,A1)
【文献】
実開昭62−150598(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/34
F04D 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央ハブアセンブリであって、
外縁を有する第1プレート、及び、
外縁を有する第2プレート
を有する中央ハブアセンブリと、
前記中央ハブアセンブリに取り付けられた第1ブレードであって、
取り付けパッド及び仕事部を有し、
前記取り付けパッドが前記第1プレートと前記第2プレートに接触して位置付けられ、
前記仕事部が前記中央ハブアセンブリにおける前記第1及び第2プレートの前記外縁を超えて延び、
前記第1ブレードの厚さが前記取り付けパッドの処よりも前記第1プレートの前記外縁に近接する処で小さく、前記第1プレートの外縁にて前記第1ブレードと前記第1プレートとの間に第1ギャップを生起させる、第1ブレードと
を具備するモジュール式ファンアセンブリ。
【請求項2】
複数の付加的ブレードを更に含み、これら付加的ブレードの各々が前記第1ブレードと実質的に同一に構成されている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記取り付けパッドは平坦な構成及び一様な厚さを有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記第2プレートの前記外縁にて、前記第1ブレードと前記第2プレートとの間に第2ギャップを更に含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記第1及び第2ギャップは実質的に同一である、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記第1ブレードは根元端から先端に至る厚さプロファイルを有し、該厚さプロファイルは前記取り付けパッドにて最大厚さを有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記厚さプロファイルは前記先端にて最小厚さを有し、前記先端は前記仕事部の一部である、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記第1ブレードは厚さプロファイルを有し、
前記厚さプロファイルは、第1領域、狭い移行領域、第2領域及び前記仕事部に対応した更なる領域を含み、
前記第1領域は一様な厚さを有して前記取り付けパッドに対応し、
前記狭い移行領域及び前記第2領域は、前記取り付けパッドと前記仕事部との間における移行ゾーンの一部であり、
前記第1ブレードは、前記第1プレートの前記外縁に近接した前記狭い移行領域及び前記第2領域の少なくとも一方において小さな厚さを有する、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記第1ブレードは根元端から先端に亘る厚さプロファイルを有し、
前記厚さプロファイルは一様な厚さの2つの領域間に階段状の狭い部位を有し、
一様な厚さの前記2つの領域は前記仕事部から径方向内側に位置付けられ、
一様な厚さの一方の領域は前記取り付けパッドを取り囲んでいる、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記仕事部の厚さは先端に向けて減少している、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記仕事部の厚さは前記先端に向けて非線形にして減少している、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記仕事部の厚さは前記先端に向けて減退率でもって減少している、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記仕事部の厚さは前記先端にて実質的に一定の厚さを含む、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記第1ブレードは複合材料からなる、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記ブレードは短ストランド繊維強化熱硬化性材料からなる、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記第1ブレードの根元端回りに局所的に設けられた補強薄膜を更に含み、
前記補強薄膜は前記取り付けパッドを通じて前記仕事部内に延びている、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記補強薄膜は短ストランド繊維の補強マットを含む、請求項16に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記補強薄膜は、前記第1ブレードの前記仕事部に沿う段階的領域を含む、請求項16に記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記第1ブレードは作動中、一般的に軸線方向の流体の流れを発生すべく構成されている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項20】
前記取り付けパッドは複数の固定開口を含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項21】
前記仕事部は前記取り付け部及び移行ゾーンの両者よりも薄い、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項22】
請求項1に記載の前記モジュール式ファンアセンブリを製造する方法において、
前記中央ハブアセンブリの前記第1及び第2プレート間に前記第1ブレードの前記取り付けパッドを位置付け、
前記取り付けパッドが前記第1プレートの前記外縁より径方向内側に位置付けられるように前記第1ブレードを位置調整し、
前記第1プレートの外縁を該外縁にて前記第1ブレードから離す、方法。
【請求項23】
前記2つのプレート及び前記第1ブレードに固定具を取り付け、該固定具が前記取り付けパッドの開口を貫通する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1ブレードの前記取り付けパッド内に補強マットを成形する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
強化熱硬化性材料からなるブランク回りに強化熱硬化性材料のシートからなる補強マットが前記ブランクの長さに沿い部分的にだけ延びるように補強マットを巻き付け、
前記補強マッド及び前記ブランクを型内にて圧縮する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
中央ハブアセンブリであって、
外縁を有する第1プレート、及び
外縁を有する第2プレート
を含む、中央ハブアセンブリと、
乱雑に方向付けされた短ストランド繊維で強化された熱硬化性複合材料からなり且つ前記中央ハブアセンブリに取り付けられた第1ブレードであって
先端と、
前記先端とは反対側の根元端であって、該根元端と前記先端との間にてブレード長が規定される、根元端と、
前記根元端に隣接して位置付けられた取り付けパッドと、
前記先端に隣接する仕事部であって、空気力学プロファイルを規定する仕事部と、
前記取り付けパッドと前記仕事部との間の移行ゾーンであって、前記取り付けパッド及び前記仕事部よりも更に捩られている、移行ゾーンと、
前記ブレード長に沿い前記根元端に沿って局所的に設けられた補強薄膜であって、該補強薄膜が前記中央ハブアセンブリの第1プレートの外縁を超えて延び、該補強薄膜は前記取り付けパッド及び前記移行ゾーンを通じて前記仕事部内に延び、該補強薄膜は乱雑に方向付けされた短ストランド繊維の補強マットを含む、補強薄膜とを含む、第1ブレードと
を具備するモジュール式ファン。
【請求項27】
前記補強薄膜は前記中央ハブアセンブリの前記第2プレートの外縁を超えて延びる、請求項26に記載のモジュール式ファン。
【請求項28】
前記補強薄膜は、前記第1ブレードの両面にてプレート長に沿い実質的に等しく延びる、請求項26に記載のモジュール式ファン。
【請求項29】
前記補強薄膜は段階的な領域を含む、請求項26に記載のモジュール式ファン。
【請求項30】
前記第1ブレードは作動中、軸線方向の流体の流れを発生すべく構成されている、請求項26に記載のモジュール式ファン。
【請求項31】
前記仕事部は、前記取り付けパッド及び前記移行ゾーンの両者よりも薄い、請求項26に記載のモジュール式ファン。
【請求項32】
前記根元端と前記先端と間での最大厚さは前記取り付けパッドに位置付けられている、請求項26に記載のモジュール式ファン。
【請求項33】
前記仕事部の厚さは前記先端に向けて減少し、前記根元端と前記先端との間での最小厚さは前記先端に位置付けられている、請求項26に記載のモジュール式ファン。
【請求項34】
前記取り付けパッドは複数の固定開口を含む、請求項26に記載のモジュール式ファン。
【請求項35】
複数の付加的ブレードを更に含み、該複数の付加的プレートの各々が前記第1ブレードの実質的に同一に構成されている、請求項26に記載のモジュール式ファン。
【請求項36】
前記第1ブレードの厚さは、前記根元端に隣接した処よりも前記第1プレートの前記外縁に近接した処で小さく、第1プレートの前記外縁にて前記第1ブレードと前記第1プレートとの間に第1ギャップを生起する、請求項26に記載のモジュール式ファン。
【請求項37】
前記第2プレートの前記外縁にて前記第1ブレードと前記第2プレートとの間の第2ギャップを更に含む、請求項36に記載のモジュール式ファン。
【請求項38】
軸流ファンの複合ブレードにおいて、
先端と、
前記先端とは反対側の根元端であって、該根元端と前記先端との間にてブレード長が規定される、根元端と、
前記根元端に隣接して位置付けられた取り付けパッドと、
前記先端に隣接する仕事部であって、空気力学プロファイルを規定する仕事部と、
前記取り付けパッドと前記仕事部との間の移行ゾーンであって、前記取り付けパッド及び前記仕事部よりも更に捩られている、移行ゾーンと、
前記ブレード長に沿い前記根元端に沿って局所的に設けられ、前記取り付けパッド及び前記移行ゾーンを通じて前記仕事部内に延びる補強薄膜であって、該補強薄膜は乱雑に方向付けされた短ストランド繊維の補強マットを含む、補強薄膜と
を具備する複合ブレード。
【請求項39】
前記取り付けパッドは実質的に一様な第1厚さを有し、前記移行ゾーンは狭い移行領域と、実質的に一様な第2厚さの領域とを含み、該第2厚さは前記第1厚さよりも小さい、請求項38に記載の複合ブレード。
【請求項40】
前記補強薄膜は前記移行ゾーンの前記狭い移行領域全体に延びている、請求項39に記載の複合ブレード。
【請求項41】
前記補強薄膜は段階的な領域を含む、請求項38に記載の複合ブレード。
【請求項42】
前記仕事部は前記取り付けパッド及び前記移行ゾーンの両者よりも薄い、請求項38に記載の複合ブレード。
【請求項43】
前記根元端と前記先端との間での最大厚さは前記取り付けパッドに位置付けられている、請求項38に記載の複合ブレード。
【請求項44】
前記仕事部の厚さは前記先端に向けて減少し、前記根元端と前記先端との間での最小厚さは前記先端に位置付けられている、請求項38に記載の複合ブレード。
【請求項45】
前記取り付けパッドは複数の固定開口を含む、請求項38に記載の複合ブレード。
【請求項46】
前記ブレードは短ストランド繊維強化熱硬化性材料からなる、請求項38に記載の複合ブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ファンブレード、該ブレードを用いたファン及び関連の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンは、自動車や専業(例えば、農業、工業)への適用等、様々な適用分野で使用される。このようなファンは、ファン動作を制御する好適なクラッチと係合可能であり、回転速度やこれに関係した空気流出力の選択的な制御を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術のファンは屡々、型成形材料からなっている。しかしながら、一体のファン設計は、所定のデザインのサイズ変更に関して制約を受ける。提案された各サイズのファンのためには、新たな成形型/鋳型や機器設備が開発されなければならず、これは難儀且つ高価になる。また、モジュール式のファンも公知であり、該ファンは共通のハブ構造に取り付けられた個々のブレードを用いている。個々のブレードが複合材料からなっているとき、厳しい長期の使用のための十分な強度及び耐久性の維持に関して、多数の制限が生じる。連続した強化繊維(例えば、織り込まれた繊維強化予備成形品)を使用した複合ブレードを製造する技術が公知である。しかし、多くの従来技術の構成は複雑な製造方法を要求し、これは所望よりもサイズの変更性に乏しい(例えば、連続した繊維予備成形品はブレードのサイズ毎に設計され且つ提供される)。
【0004】
それ故、大幅な設計の自由度を提供する一方、製造の容易性を維持し且つ適切な強度且つ耐久性を有した代替のファンの提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの局面において、本発明のモジュール式ファンアセンブリは、中央ハブアセンブリと、該中央ハブアセンブリに取り付けられた第1ブレードとを含む。中央ハブアセンブリは外縁を有する第1プレートと、外縁を有する第2プレートとを含む。第1ブレードは取り付けパッド及び仕事部を有する。取り付けパッドは第1プレートと第2プレートとの間に位置付けられている。仕事部は中央ハブアセンブリの第1及び第2プレートの外縁を超えて延びている。第1ブレードの厚さは取り付けパッドでの処よりも第1プレートの外縁での処が小さく、第1プレートの外縁にて第1ブレードと第1プレートとの間に第1ギャップを生起している。
【0006】
本発明の他の局面において、軸流ファンのための複合ブレードは、先端と、該先端と反対側の根元端と、該根元端に隣接して位置付けられた取り付けパッドと、先端に隣接した仕事部と、取り付けパッドと仕事部との間の移行ゾーンと、補強薄膜とを含む。根元端と先端との間にてブレード長が規定され、仕事部は空気力学プロファイルを規定する。補強薄膜はブレード長に沿い根元端の回りに局所的に設けられ、取り付けパッド及び移行ゾーンを通じて仕事部内に延びている。
【0007】
本概要は例示を提供するだけで、該例示に制約されるものではない。本発明の他の局面は、明細書全体、特許請求の範囲及び添付の図面を含む本開示の全体からみて認識される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ファンクラッチに取り付けられた状態で示された本発明の一実施形態に係るモジュール式ファの斜視図である。
【
図2A】
図1中、2-2線に沿うモジュール式ファンの部分断面図である。
【
図3A】分離した状態で示されたモジュール式ファンの一実施形態に係るブレードの正面図である。
【
図4】代替の実施形態に係るプレートの一部正面図である。
【
図5】ブレードの実施形態毎に、ブレード長の割合としての径方向位置に対して、最大厚さの割合としてのファン軸線から延びる径方向面の厚さグラフである。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る強化ファンブレードの正面図である。
【
図7】
図6の強化ファンブレードの一部断面図である。
【
図8】本発明に係るブレードワークピースアセンブリ及び型アセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述の図は本発明の実施形態を明らかにするが、検討の欄で述べるように他の実施形態もまた考えられる。全ての場合において、本開示は制約されない説明として本発明を提示する。本発明における本質の範囲及び趣旨の範囲内で、数多くの他の改良及び実施形態が当業者によって工夫される得ることを理解すべきである。図は一定の比率で描かれておらず、本発明の適用及び実施形態は、図面に明示されていない特徴、工程及び/又は構成要素を含む。
【0010】
一般的に、本発明はモジュール式ファンブレードに関わり、該ファンブレードは複合材料からなる。本発明のファンブレードは、従来技術の複合ファンブレードを超えて、構造的に応力の解放品質を改善した厚さプロファイルを提供する。付け加えて、又は、代替的に、本発明のファンブレードは、重量及び厚さに係る不利益を僅か又は皆無にして強度及び耐久性を改善した強化パターンを有する。更に、本発明は、本発明のブレード設計を組み込んだモジュール式ファン及びその製造方法をも含む。このようなファンはモジュール式構造を有し、該構造は広範に亘る再設計労力や製造設備等の入れ替えを必要とせず、ブレード数、ブレードのサイズ、及び/又はブレードにおける翼仕事領域幾何学(airfoil working area geometry)等を比較的容易に改良且つ調整できる特性を有する。従って、多様な用途に適し且つ多様な流体流れの能力プロファイルを実現する比較的に多様なファンの製造にとって、同一又は同様な製造方法及び設備が使用可能となる。本発明の数多くの利益及び利点は添付図面を含む本発明の開示全体からみて当業者により認識される。本発明は、2014年5月5日付け提出の米国予備特許出願第61/988,582に係る優先権を主張し、ここではその全体が参照として組み込まれる。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係るファン20の斜視図であり、該ファン20はファンクラッチ22に取り付けられた状態で示されている。
図2Aは、
図1中、2-2線(即ち、軸線Aを通過する径方向断面)に沿ったファン20の一部断面図であり、
図2Bは
図2A中のB部の拡大図である。図示の実施形態のファン20はモジュール式で設計され、中央ハブ(又はディスク)アセンブリ26に固定された多数(例えば、3〜15)のブレード24を個々に備えている。ファン20は軸線Aの回りに回転し、軸線方向に流体の流れを発生すべく構成される。幾つかの実施形態では送り出す流れのパターンが僅かに円錐形状であっても一般的には軸流ファンとして考慮される。
図1にて、ファン20におけるブレード24の数やブレードの剛率(solidity)は単なる例示であって制約されるものでなく、他の実施形態では特定の適用のために所望通りに変更可能である。
【0012】
ブレード24は個々に製作可能であって、中央ハブアセンブリ26に個々に固定可能である。各ブレード24は先端24-1、反対側の根元端(又はヒール)24-2、正圧面24-3、反対側の負圧面24-4、前縁24-5及び後縁24-6を有する。ブレード24のブレード長Lは先端24-1と根元端24-2との間の径方向(又は、差し渡し方向)にて規定されている。また、ブレードは変化する厚さを有し、(ブレード長さLに関して)最大厚さT
Mを備えている。ブレード24は繊維強化複合材料からなり、以下に詳述する。中央ハブアセンブリ26にブレード24を取り付けるため、ボルト、リベット又は他の適切な固定具を使用できる。代替の実施形態において、ブレードの保持又はその保持を助けるため、機械的な保持構造又はありつぎ等の特徴的な相互連結構造を提供できる。各ブレード24は同一又は実質的に同一の構成を有する。即ち、単一のブレード設計がファン20における全ブレード24の制作に使用可能である。単一のブレード設計は、異なるブレード数、異なる中央ハブアセンブリ、又は、特定の適用に適した改良を有する他のファン(図示しない)の製作にも用いることができる。このようにファン設計によれば、多様なファン構成を提供するために単一のファン設計を用いることができ、これにより、モジュール性及び設計の自由度が提供される。また、個々のファンブレード24はそのブレードの先端から材料を除去する等して、その長さを短くトリミングすることができ、これにより、単一のブレード設計を多様なファン直径を有するファンにも使用できる。例えば、ブレードのトリミングは約33%までのファン直径の可変を容易にする。ファン直径の付加的な変更は、多数の異なるブレード設計でも、異なる長さでのブレードの提供を可能にする。本発明に係る個々のブレードの更に詳細な実施形態を以下に記述する。
【0013】
中央ハブアセンブリ26は幾つかのディスクを含み、これらディスクは少なくとも部分的に平坦であって、ブレード24を「挟持」し、好適な固定具(例えばボルト又はリベット)を用いる等してプレート24を固定するために使用される。図示のアセンブリ26は第1プレート26-1及び第2プレート26-2を含み(例えば、
図2A参照)、これらプレートの各々は平坦であり、円形の外周を有する。他の実施形態において、プレート26-1,26-2はより複雑な三次元形状を有することもできる。更に、幾つかの実施形態において、ブレード24の片側の面又は両側の面に多数のプレートが一緒に重ね合わされてもよい。例えば、大きなファンサイズのためには、ブレード24の両側に多数の同一プレートが一緒に重ね合わされ、中央ハブアセンブリ26を形成する。第1及び第2プレート26-1,26-2の各々は鋼等の金属材料からなる。以下に説明されるように、ブレード24の幾つか又はその全てが第1及び第2プレート26-1,26-2間に位置付けられた部分を有し、これらブレードの残部は中央ハブアセンブリ26から外側に突出している。プレート26-1,26-2の各々には中央開口が備えられ、該中央開口はクラッチ22又は他の所望の取り付け位置に対するファン20の取り付けを容易にする。中央ハブアセンブリ26へのブレード24の取り付けや、クラッチ22又は他の構造への中央ハブアセンブリ26の取り付けのために、プレート26-1,26-2の各々には好適した固定開口が備えられている。別の実施形態において、プレート26-1,26-2の一方はクラッチ22と一体化することも可能である。
【0014】
中央ハブアセンブリ26の中央開口又はアセンブリ26の内径或いはその近傍にはスペーサ28が備えられ、該スペーサ28は第1及び第2プレート26-1,26-2間に位置付けられている。中央ハブアセンブリ26、又は、第1及び第2プレート26-1,26-2の外周部或いは該外周部の近傍にブレード24が取り付けられ実施形態において、クラッチ22(又は他の構造)にファン20を取り付けるとき、スペーサ28は剛性を提供するうえでの助けとなる。代替の実施形態において、クラッチ22にスペーサ28を不要する好適な取り付け構造が存在するとき、スペーサ28は省略できる。
【0015】
図3Aはファン20におけるブレード24の一実施形態の正面図であり、該正面図はブレード24を分離した状態で示している。
図3Bは,
図3Aのブレード24の側面図である。上述したように、ブレード24は先端24-1、根元端(ヒール)24-2、正圧面24-3、負圧面24-4(
図3A、3Bでは視認不能)、前縁24-5及び後縁24-6を含む。ブレード24は明確に区別可能な領域に区画することができ、これら領域は取り付けパッド30、移行ゾーン32及び仕事部34を含む。
【0016】
取り付けパッド30は根元端24-2に近接又は隣接して位置付けられ、中央ハブアセンブリ26への取り付け部を提供する機能を発揮する。図示の実施形態において、取り付けパッド30は多数の開口36(例えば並置配列又は千鳥配列の5つの孔)を有し、これら開口を通じて固定具が位置付けられ、ブレード24と中央ハブアセンブリ26との間の係合を容易にする。幾つかの実施形態において、取り付けパッド30は実質的に平坦であり(例えば平行且つ平坦な両面を有する)、平坦な第1及び第2プレート26-1,26-2間への組み込みを容易にする。
【0017】
仕事部34はブレード24の先端24-1に隣接し、ブレード24が作動中にあるとき、流体と相互作用する空気力学プロファイルの主要な仕事面を提供する。仕事部34における特定の形状は、ほぼ所望の空気力学的特性を提供すべく構成される。例えば、翼弦長さ(chord length)、径方向長さ(即ち、差し渡し長さ)、厚さ、捻り、キャンバ、スイープ(sweep)、リーン(lean)、ボウ(bow)、上反角(dihedral)等のパラメータは特定の適用のために所望の通りに調整可能である。例えば、仕事部34(例えば、前縁24-5及び/又は後縁24-6)は回転方向に対して内側又は外側に向けて偏向(sweep)でき、そして、仕事部34での捻り角(該捻り角は前縁24-5と後縁24-6との間を延びる翼弦線と軸線Aに対して直交する方向に向けられた面とのなす角度として測定できる)は径方法(差し渡し方向)に変更可能である。
【0018】
移行ゾーン32は取り付けパッド30と仕事部34との間に延び、比較的大きな捻り量を提供して、取り付けパッド30及び中央ハブアセンブリ26に対して仕事部34を所望の異なる方向に位置付ける。例えば、移行ゾーン32は仕事部34又は取り付けパッド30よりも更に捩られている。即ち、移行ゾーン32は、仕事部34又は取り付けパッド30の何れかよりも、捻り角でみて大きな変化を有する。一実施形態において、仕事部34は5〜30°の範囲に亘って変化する捻り角(例えば、移行ゾーン32に近接した処での約30°から先端24-1の処での20°)を有し、取り付けパッド30は捩られていない(即ち、取り付けパッド30は捻り角でみて変化しない)。移行ゾーン32は20°よりも大きな範囲で変化する捻り角を有する(例えば、約30°)。以下に詳述するように、取り付けパッド30及び移行ゾーン32の各々は仕事部34よりも十分に厚くでき、仕事部34に空気力学的且つ質量的な特性を提供する一方、中央ハブアセンブリ26に対する取り付け部及びその近傍での構造的な一体化及び剛性を提供する。ブレード24のブレード長Lに沿う幾つかの特定且つ有利な厚さ特性を以下に詳述する。
【0019】
幾つかの実施形態において、ブレード24は強化材の有無を問わずシート成形複合(SMC)材料からなり、強化材は、(例えば、中空のガラスビーズ、耐摩擦材料等の)充填剤、又は、(例えば、色付けや、耐電防止特性等のための)他の添加物である。充填物及び添加物はブレード24の全体に一様且つ均質的に分布されるか、又は、選択領域にて局所的に分布される。例えば、裁刻されたガラス繊維強化材を有したビニルエステル樹脂の熱硬化性SMC材料が使用できる。連続した繊維複合材料と対比して、複合材料と共に使用される裁刻強化繊維は短く且つ非連続の繊維を有し、これら繊維は本質的に、結合剤の母材中に乱雑に配置されている。付加的な強化材を備えた他の実施形態が以下に記述されるが、本質的に、裁刻強化繊維はSMC材料の全体に一様に分布されている。裁刻強化繊維はSMC材料の全体の30〜55%(重量)、好ましくは、34〜50%(重量)、更に好ましくは47%(重量)である。しかしながら、特定の適用に所望されるならば、使用される特定材料及び強化繊維の割合は変更可能である。
【0020】
図4は代替の実施形態に係るブレード24の一部正面図であり、該ブレード24は異なる構成の取り付けパッド30’を有する。
図4の実施形態に示されるように、取り付けパッド30’の側縁には該側縁に沿いノッチ40が品質測定のアライメント特徴(alignment feature)として備えられている。ノッチ40は根元端24-2まで延びている。ノッチ40の存在はブレード24の空気力学的又は構造的な設計に明確に関係しないが、製造性や寸法的な検証及び制御に有利となる。
【0021】
図5は、ファン軸線Aから延びる径方向面(
図1中の2−2断面に相当)での厚さプロファイルのグラフであって、該グラフは、ブレード24の幾つの実施形態のために、ブレード長L全体に対する割合としての径方向位置に対して、最大厚さT
Mに対する割合を示す。
図5のグラフ中、図示の各実施形態(全体で11)は対応するプロット線48-1〜48-12で表されている。
図5に示されているように、ブレード長Lの0%とは根元端24-2に対応し、ブレード長Lの100%とは先端24-1に対応する。最大厚さT
M及びブレード長Lに対応する実際の寸法は特定の適用に所望されるとき、変更可能である。例示的な実施形態において、最大厚さT
Mは11mm(0.433インチ)、ブレード長Lは400mm(15748インチ)である。
【0022】
図示の実施形態において、ブレード厚さは第1領域50、狭い移行領域52、第2領域54及び付加的領域34’を有し、該付加的領域は仕事部34’に対応する(ここでは単に仕事部領域34’として参照する)。仕事部領域34’はブレード長Lの100%まで延びている。図示の実施形態において、仕事部領域34’はブレード長Lの30%から始まり、ブレード長Lの100%で終わりとなる。これは仕事部34がブレード長Lの70%を占めることを意味する。第1領域50はブレード長Lの0%(即ち、根元端24-2)から始まる。図示の実施形態において、第1領域50はブレード長Lの10%で終わりとなり、これは第1領域50がブレード長Lの10%を占めることを意味する。狭い移行領域52は第1及び第2領域50,54間に位置付けられ、これら第1及び第2領域50,54を接続する。図示の実施形態において、狭い移行領域52はプレート長Lの10%から始まり、ブレード長Lの10.5%で終わりとなる。これは、狭い移行領域52がブレード長Lの1.5%を占めることを意味する。第2領域54は仕事部領域34’に隣接している。図示の実施形態において、第2領域54はブレード長Lの11.5%から始まり、ブレード長Lの30%で終わりとなる。これは、第2領域54がブレード長Lの18.5%を占めることを意味する。第1及び第2領域50,54の各々は図示の実施形態において、一定(即ち、一様)又は実質的に一定の厚さを有する。ブレード長Lに沿う最大厚さT
Mは第1領域50にて位置付けられている。即ち、第1領域50はT
Mの100%の厚さを有する。第2領域54は第1領域50よりも厚さが薄い(例えば、その厚さはT
Mの約91%)。図示のプロット線48-1〜48-12の各々は、ブレード長Lの100%(即ち、先端24-1)にて最小厚さを有する。狭い移行領域52での厚さは線形或いは実質的に線形に減少するか、又は、その他、ブレード長Lの関数として増加率又は減少率にて減少する。
【0023】
第1領域50は取り付けパッド30に対応し、一方、狭い移行領域52は移行ゾーン32内にある。他の実施形態においては、移行ゾーン32内に1つ以上の付加的な狭い移行領域を設けることができ(
図5には図示されていない)、これより、階段的な厚さの減少が生じる。更に別の実施形態において、第2領域54は、狭い移行領域52内での変化率よりも低く且つ徐々に厚さが変化するような不均一な厚さを有することができる。
【0024】
狭い移行領域52はブレード長Lに沿って位置付けられ、取り付けパッド30よりも薄い移行ゾーン32の一部が第1及び第2プレート26-1,26-2間に位置付けられている。
図2Bに最も良く示されているように、ブレード24は中央ハブアセンブリ26に固定でき、この際、移行ゾーン32は中央ハブアセンブリ26における第1及び第2プレート26-1,26-2の外径縁26-3よりも径方向内側から始まっている。狭い移行領域52によって生じるブレード24の厚さ減少は、移行ゾーン32にて、ブレード24の片側の面又は両側の面でブレード24と中央ハブアセンブリ26との間にギャップ60を作り出す。換言すれば、取り付けパッド30の処での厚さに比べて第1及び第2プレート26-1,26-2の外径縁26-3の少なくとも一方の処でのより小さいブレード24の厚さは1つ以上のギャップ60を作り出す。
図2Bの図示の実施形態においては、実質的に等しい2つのギャップ60が存在し、これらギャップはブレード24の両側の面にて、その一方が第1プレート26-1に隣接し、その他方が第2プレート26-2に隣接する。中央ハブアセンブリ26の外径縁26-3又はその近傍に1つ以上のギャップ60を有することは、ブレード24と中央ハブアセンブリ26との間の境界にて応力集中を低減する助けとなる。このような応力集中の低減は、ブレード24の最大厚さT
Mをより小さくした値で使用できることを容易にし、これにより、ファン20の質量が減少し、ブレード24が複合材料からなる状況では、連続的な撚り糸状の強化繊維や複雑な形状の強化材料の予備成形、又は、他の複雑且つ高価な製造技術の必要性を回避する一助となる。
【0025】
再度、
図5に戻れば、図示の実施形態は領域50,52,54にて共通のプロファイル、即ち、プロット線48-1〜48-12を有する。これらブロット線は領域50,52,54にて一致するものの、仕事部領域34’の厚さは
図5中、プロット線48-1〜48-12で図示された実施形態間にて変化している。一般的に、図示の実施形態の全てでは、仕事部領域34’の厚さはブレード長Lの100%に向けて(即ち、先端24-1に向けて)減少する。種々の実施形態(例えば、プロット線48-2)は実質的に線形の減少プロファイルを有する。プロット線48-1〜48-7で表される実施形態の各々はブレード長Lの100%にて、T
Mの90.9%〜31.8%まで減少する。更に、プロット線48-9〜48-12で表される実施形態は一般的に、或る点(例えばブレード長の約42%)に向けて厚さが比較的急激に減少し、この後、ブレード長Lの100%に向けて厚さが比較的緩やかに減少するか、又は、実質的に一定の厚さを維持する。例えば、プロット線48-11,48-12において、これら両者は仕事部領域34’の内側部分にて、ブレード長Lの37.5%に亘って実質的に線形又は減少変化率でもってT
Mの67.3%だけ減少し、この後、ブレード長Lの100%(即ち、先端24-1)に向けてブレード長Lの残りの32.5%に亘り、T
Mの0.9%だけ厚さが減少する。プロット線48-9〜48-12の各々はブレード長Lの100%に向けて、最も外側の或る部分、ブレード長Lの最も外側の7.5%に亘り均一な厚さを有する。仕事部領域34’での厚さ減少は種々の性能パラメータのために最適化可能である。例えば、上述した仕事部領域34’の厚さプロファイルは、最大のバースト速度能力での衝撃を無視できる一方、ブレード24における移行ゾーン32の外側の前縁24-5及び後縁24-6にて応力集中を減少する助けとなる。
【0026】
図5に表された実施形態及び上述の記載が単なる例示であって制約されるものでないことに留意すべきである。当業者は、本発明に従い他の実施形態が可能であることを認識するものである。
【0027】
図6は一実施形態に係る強化ブレード24’の正面図であり、
図7は強化ブレード24’の一部断面図である。ブレード24’はファン20の一部として用いられ、上述した実施例のブレード24と同様な構成を有するか、又は、所望の他の構成を有する。ブレード24’は強化材を含み、該強化材は耐久性及び強度を改善する。
【0028】
ブレード24’は、結合剤の母材(例えばビニルエステル)内に裁刻ガラス繊維強化材を有する熱硬化性SMC材料等のシート成形複合(SMC)材料からなり、1つ以上の選択領域に付加的な強化材を備えている。例えば、ブレード24’の取り付けパッド30、移行ゾーン32及び/又は仕事部34に補強マット70が組み込まれており、該補強マット70は局所的な補強薄膜を提供し、ブレード24’の残部に一体的に結合された付加的な強化繊維を備えている。補強マット70による薄膜は、
図7に示されるようにブレード24’の外面(例えば正圧面24-3及び負圧面24-4)又は該外面の近傍に局所的に位置付けられている。
図6,7には個々の強化繊維が示されていないが、代わりに補強マット70が点刻にて概略的に表示されていることに留意すべきである。
【0029】
幾つかの実施形態において、補強マット70は上述した非強化ブレード24に対して厚さを全体的に変更することなくブレード24’に組み込み可能である。他の実施形態において、補強マット70は根元端24-2又はその近傍で厚くした領域の提供を助ける。補強マット70は根元端24-2から取り付けパッド30を介して移行ゾーン32内(又は移行ゾーン32を通じて)延び、そして、随意的には仕事部34内に延びることができる。このようにして、上述の実施形態の厚さプロファイルに関し、補強マット70は移行ゾーン32の狭い移行領域52を完全に通じて延び、また、第2領域54を完全に通じて延びることができる。このようにブレード24’がファンアセンブリ20内で使用されたとき、補強マット70は、第1及び/又は第2プレート26-1,26-2の外縁26-3(
図6中、破線の参照円弧で示されている)を越えて外側に延びることができる。幾つかの実施形態において、補強マット70は第1領域70-1及び第2領域70-2を提供する。第1領域70-1は根元他24-2又はその近傍に位置付けることができ、取り付けパット30及び移行領域70を通じて仕事部34内にブレード24’の長さに沿いて外側に延びている。第1領域70-1において、マット70は比較的により密な補強を提供する。補強マット70は、幾つかの実施形態では少なくとも第1領域70-1での一様且つ均質な区域が有利であるものの、製造中の材料の流れに起因して第1領域70-1及び/又は第2領域70-2内で幾つかの制限又は中断した区域を有する。材料の流れに関しては後述する。第2領域70-2において、マット70はその補強が外側に向けて徐々に減少していくようにブレード24’の基材又は母材内で羽根状をなすか又は溶け込む。これにより、第2領域70-2における徐々の減少は補強マット70をブレード24’の母材に円滑に溶け込ませる。第2領域70-2はマット70の外側範囲に位置付けることができ、仕事部34(例えば、翼型仕事部の基部又は根元端近傍)に位置付け可能である。以下に説明する特定の実施形態での圧縮成形技術の使用は、第1及び第2領域70-1,70-2での補強マット70を用いた補強薄膜の製作を容易にする。
【0030】
補強マット70は、裁刻ガラス繊維強化SMC材料等のブレード24’における母材に相当する材料からなる。代替的には、補強マットは、織り込みマット(即ち、織り込みパターンでの連続的な撚り繊維)の形態等の母材とは異なる材料からなっていてもよく、織り込みマットは方向付けされた(即ち、非乱雑の)裁刻強化繊維を有し、母材等よりも高い割合の強化繊維を有する。
【0031】
補強マット70は特に、中央ハブアセンブリ26又はその近傍での比較的高応力領域に対し、ファン20に使用されるブレード24’の強度及び耐久性を改善する助けとなる。このような強度及び耐久性の改善は、改善しない場合にて可能な作動速度よりも高い作動速度(即ち、より高い回転速度)を許容する。本発明者等は実験的な試験を通じて、ブレード24’に関しては補強マット70の使用にて、ファン20の速度能力が約118%の増加可能であることを見出した。
【0032】
図8は、強化ブレード24’の製作に適したブレードワークピースアセンブリ124’及びダイアセンブリ180の概略図である。強化ブレード24’を製作するプロセスの一実施形態は以下の通りである。先ず、在庫のSMCシート材料(例えば、未処理の熱硬化性シート材料)は所望のサイズに大まかに裁断されて、「充電切断(charge cut)」ブランク182となり、該ブランクは先端124-1’及び反対側の根元端又はヒール端124-2’を有する。充電切断ブランク128はブレード24を製作するために代替的に使用されるブランクに相当し、完成した補強ブレード24’の母材を表す。典型的な実施形態において、ブランク182は細長い片又は他の簡単な形状をなす。この点において、複雑な予備切断や形どりは不要である。補強マット70もまた,在庫のSMCシート材料から大まかに切断されて所望のサイズとなり、ブランク182の根元124-2’回りに巻き付けられる。他の実施形態では多層の補強マットが使用されるが、図示の実施形態では、単一層の補強マット70のみが使用される。補強マット70はブランク182の回りに巻き付けられたとき、先端124-1’に向けて所望の距離を延びるサイズとなっている。圧縮成形前の補強マット70の切断長さは、完成されたときに補強マット70が移行ゾーン32を通じてブレード24’の仕事部34にどの程度延びるかを決定すべく調整可能である。図示の実施形態において、補強マット70はブランク182の両面に沿い対称にして延びているが、その代わりの代替の実施形態では非対称な配置を使用できる。ブランク182及び補強マット70は一緒にワークピースアセンブリ124’を形作る。
【0033】
ブランク182に対して所望の方向付けにて位置付けられた補強マット70を備えるワークピースアセンブリ124’は型アセンブリ180内に挿入される。このようにしてブランク182(即ち、母材)及び補強マット70の両者が型アセンブリ180内に同時に存在する。随意的には、添加物及び/又は他の材料を補強マット70及びブランク182とともに型アセンブリ180内に位置付け可能である。例えば、型アセンブリ180内に少なくとも1つのブランク182の選択部に沿ってガラスビーズを配置することができ、これにより、ブレード24’の少なくとも一部に沿い統語的材料(syntactic material)が発生される。ガラスビーズは付加的なSMCの一片内又はばらの状態で存在することができる。
【0034】
この後、型アセンブリ180を用い、ワークピースアセンブリ124’に対して適切な熱及び圧力を付与することで、圧縮成形が実行される。型アセンブリ180はワークピースアセンブリ124’の形状を変更し、適切な形状のブレード24’を製作する。圧縮成形プロセスの熱及び圧力は、熱硬化性SMC材料を「固める(set)」。このような材料が使用されるなら、「固め」は当業者にとって公知である。圧縮成形後、ばりを除去するためにトリミング作業が実行される。更に、上述したように付加的なトリミング作業は随意的にはブレード24’を所望の長さに短縮すべく実行される。補強マット70を省略しても関連した工程により、ブレード24が同様且つ簡単に製作可能であることに留意すべきである。
【0035】
上述の製作プロセスは、複雑な型又はより手の込んだ成形プロセスを必要とせず(例えば、複雑な連続ストランド複合成形技術又はその実行を必要とせず)、比較的効率的且つ経済的なブレード24’の製造を可能にし、一方、自動車や専用ファンへの適用に好適した軽量の複合材料からなる強度や耐久性のあるプレートを製作する。更にまた、上述の製作プロセスは、圧縮成形中の材料の流れに起因する強化繊維の方向付けに幾つかの変化性を含むが、ここでも強度や耐久性のある完成したブレード24’及びファン20を提供する。
【0037】
本発明における可能性のある非排他的な実施形態を以下に記載する。
【0038】
モジュール式ファンアセンブリは、外縁を有する第1プレート及び外縁を有する第2プレートを含む中央ハブアセンブリと、中央ハブアセンブリに取り付けられ、取り付けパッド及び仕事部を有する第1ブレードとを備え、取り付けパッドは第1プレートと第2プレートとの間に位置付けられ、仕事部は中央ハブアセンブリの第1及び第2プレートの外縁を超えて延び、第1ブレードの厚さは、取り付けパッドでの厚さよりも第1プレートの外縁の近傍でより小さく、第1プレートの外縁にて第1ブレードと第1プレートとの間に第1ギャップを作り出している。
【0039】
前記段落のモジュール式ファンアセンブリは随意的に、以下の特徴、構成及び/又は付加的な構成要素を1つ以上、付加的及び代替的に含む。
【0040】
複数の付加的ブレードであって、各々が第1ブレードと実質的に同一に構成されている。複数の付加的ブレード、平坦な構成で且つ一様な厚さを有する取り付けパッド、第2プレートの外縁での第1ブレードと第2プレートとの間の第2ギャップ、実質的に同一の第1及び第2ギャップ、根元端から先端に至る厚さプロファイルを有し、該厚さプロファイルが取り付けパッドにて最大厚さを有する、第1ブレード。
【0041】
先端にて最小値を有し、先端が仕事部の一部である厚さプロファイル、厚さプロファイルを有し、該厚さプロファイルが第1領域、狭い移行領域、第2領域及び仕事部に対応した他の領域を含み、第1領域が一様な厚さを有して取り付けパッドに対応し、狭い移行領域及び第2領域が取り付けパッドと仕事部との間の移行ゾーンの一部であり、第1プレートの外縁に近接した第1ブレードの処でのより小さい厚さが狭い移行領域及び第2領域の少なくとも一方にて備えられている、第1ブレード。
【0042】
根元端から先端に至る厚さプロファイルを有し、該厚さプロファイルが一様な厚さを有する2つの領域間に階段状の狭い部分を有し、一様な厚さの2つの領域が仕事部よりも径方向内側に位置付けられ、一様な厚さの2つの領域の一方が取り付けパッドを包含する第1ブレード。
【0043】
先端に向けて減少する仕事部の厚さ、先端に向けて線形的に減少する仕事部の厚さの変化率、先端に向けて減退率で減少する仕事部の厚さの変化率、先端にて実質的に一定の厚さ領域を含む仕事部、複合材料からなり、好ましくは、短ストラッド繊維の繊維強化熱硬化性樹脂からなる第1ブレード、第1ブレードの根元端回りの局所的な補強薄膜であって、取り付けパッドから仕事部内に延びる補強薄膜、短ストラッド繊維の補強マットを含む補強薄膜、第1ブレードの仕事部に沿い段階的な領域を含む補強薄膜。
【0044】
作動中、軸線方向又は一般的に軸線方向の流体の流れを発生すべく構成された第1ブレード、複数の固定開口を含む取り付けパッド、及び/又は、取り付けパッド及び移行ゾーンよりも薄い仕事部。
【0045】
軸線方向又は一般的に軸線方向の軸流ファンのブレードは、先端と、該先端とは反対側の根元端と、根元端と先端との間にて規定されたブレード長と、根元端に近接して位置付けられ、実質的に一様な第1厚さを有する取り付けパッドと、先端に隣接し、空気力学プロファイルを規定する仕事部と、取り付けパッドと仕事部との間の移行ゾーンであって、狭い移行領域及び実質的に一様な第2厚さの領域を含み、第2厚さが第1厚さよりも小さい、移行ゾーンとを備える。
【0046】
前記段落のブレードは随意的に、以下の特徴、構成及び/又は付加的な構成要素の1つ以上を付加的及び/又は代替的に含む。
【0047】
捩られた移行ゾーン、仕事部よりも更に捩られた移行ゾーン、取り付けパッド及び移行ゾーンの両者よりも薄い仕事部、根元端と先端との間で最大厚さとなる第1厚さ、先端に向けて減少し、根元端と先端との間での最小厚さが先端に位置付けられた仕事部の厚さ、先端に向けて線形的に減少する仕事部における厚さの変化率、先端に向けて減衰率で減少する仕事部における厚さの変化率。
【0048】
先端にて実質的に一定の厚さ領域を含む仕事部の厚さ、ファンノイズ又は効率的な特性を改善するために回転方向でみて内側又は外側に偏向した仕事部、強化複合材料、好ましくは短ストラッド繊維強化熱硬化性樹脂からなる第1ブレード、根元端の回りに局所的に設けられ、取り付けパッド及び移行ゾーンを通じて仕事部内に延びる補強薄膜、短ストラッド繊維の補強マットを含む補強薄膜、第1ブレードの仕事部に沿って段階的領域を含んだ補強薄膜、複数の取り付け開口を含む取り付けパッド、及び/又は、千鳥配列の取り付け開口。
【0049】
モジュール式のファンを製造する方法は、中央ハブアセンブリの2つのプレート間へのブレードの取り付けパッドの位置付け、取り付けパッドが2つのプレートの少なくとも一方の外縁よりも径方向内側に位置付けられるようにブレードの位置調整、ブレードの外縁にてブレードから2つのプレートの少なくとも一方の外縁を離すことを含む。
【0050】
前段落の方法は随意的に、以下の工程及び/又は局面の1つ以上を付加的及び/又は代替的に含む。
【0051】
2つのプレート及びブレードに対する固定具の取り付けであって、ここで、固定具が取り付けパッドの開口を貫通する、固定具の取り付け、ブレードの取り付けパッドにて補強マットの成形、及び/又は、強化熱可塑性材料からなるブランク回りに強化熱硬化性材料のシートからなる補強マットの巻き付けであって、補強マットがブランクの長さに沿い部分的にだけ延びる、補強マットの巻き付け、型内での補強マット及びブランクの圧縮。
【0052】
モジュール式ファンは、中央ハブアセンブリであって、外縁を有する第1プレート及び外縁を有する第2プレートを含む中央ハブアセンブリと、複合材料からなり、中央ハブアセンブリに取り付けられた第1ブレードであって、先端、該先端とは反対側の根元端、根元端と先端との間で規定されたブレード長を含む、第1ブレードと、ブレード長に沿って根元端回りに居所的に設けられ、中央ハブアセンブリにおける第1プレートの外縁を超えて延びる補強薄膜とを備える。
【0053】
前段落のモジュール式ファンは随意的に、以下の特徴、構成及び又は付加的な構成要素の1つ以上を付加的及び/又は代替的に含む。
【0054】
中央ハブアセンブリにおける第2プレートの外縁を超えて延びる補強薄膜、短ストランド繊維からなる補強マットを含む補強薄膜、段階的領域を含む補強薄膜、作動中、軸線方向又は一般的に軸線方向の流体の流れを発生すべく構成された第1ブレード、以下の構成を更に含む第1ブレード。
【0055】
根元端に隣接して位置付けられた取り付けパッド、先端に隣接し、空気力学プロファイルを規定する仕事部、取り付けパッドと仕事部との間に設けられた移行ゾーンで、補強薄膜が取り付けパッド及び移行ゾーンを通じて仕事部内に延びる、移行ゾーン、取り付けパッド及び移行ゾーンの両者よりも薄い仕事部、先端と根元端との間で、取り付けパッドに位置付けられた最大厚さ、先端と根元端との間にて先端に向けて減少し、最小厚さが先端に位置付けられた仕事部の厚さ、複数の固定開口を含む取り付けパッド、取り付けパッド及び仕事部よりも更に捩られた移行ゾーン、短ストラッド繊維強化熱硬化性材料からなる第1ブレード。
【0056】
複数の付加的ブレードであって、各々が第1ブレードと実質的に同一の付加的ブレード、第1プレートの外縁にて、第1ブレードと第1プレートとの間に第1のギャップを生起すべく、第1ブレードの厚さが根元端に近接する処よりも第1プレートに近接する処にて小さい第1ブレードの厚さ、及び/又は、第2プレートの外縁にて第1ブレードと第2プレートとの間の第2のギャップ。
【0057】
軸線方向又は一般的に軸線方向の軸流ファンの複合ブレードは、先端と、該先端とは反対側の根元端であって、ブレード長が先端と根元端との間で規定される、根元端と、根元端に隣接して位置付けられた取り付けパッドと、先端に隣接する仕事部であって、空気力学プロファイルを規定する仕事部と、取り付けパッドと仕事部との間の移行ゾーンと、ブレード長に沿い根元端回りに局所的に設けられ、取り付けパッド及び移行ゾーンを通じて仕事部内に延びる補強薄膜とを備える。
【0058】
前段落の複合ブレードは随意的に、以下の特徴、構成及び/又は構成要素の1つ以上を付加的及び/又は代替的に含む。
【0059】
実質的に一様な第1厚さを有した取り付けパッドであって、移行ゾーンが狭い移行領域及び実質的に一様な第2厚さを備えた領域を含み、第2厚さが第1厚さよりも小さい取り付けパッド、移行ゾーンの狭い移行領域全体を通じて延びる補強薄膜、短ストランド繊維の補強マットを含む補強薄膜、段階的領域を含む補強薄膜、取り付けパッド及び移行ゾーンの両者よりも薄い仕事部、根元端と先端との間で取り付けパッドに位置付けられた最大厚さ、先端に向けて減少し、根元端と先端との間での最小の厚さが先端に位置付けられた仕事部の厚さ、複数の固定開口を含む取り付けパッド、取り付けパッド及び仕事部の両者よりも更に捩られた移行ゾーン、及び/又は、短ストランド繊維強化熱硬化性材料からなるブレード。
【0060】
複合ファンブレードを製造する方法は、複合材料からなるブランク回りに補強マットをブランクの長さに沿い部分的にだけ延びるように巻き付け、型内で補強マット及びブランクを圧縮する。
【0061】
前段落の方法は随意的に、以下の工程及び/又は局面の1つ以上を付加的及び又は代替的に含む。
【0062】
在庫から熱硬化性成形シートからなる複合シートをブランクに切断、上述のファンブレードを製造する方法は、中央ハブアセンブリの2つのプレート間への複合ファンブレードにおける取り付けパッドの位置付け、2つのプレートの少なくとも一方の外縁よりも径方向内側に補強パッドを位置させる複合ファンブレードの位置調整、複合ファンブレードの外縁にて、2つのプレートの少なくとも一方の外縁を複合ファンブレードから離すことを含み、2つのプレート及びブレードへの取り付けパッドの開口を貫通する固定具の取り付け、ブランクの母材への段階的な補強マットの材料の分散、及び/又は
ブランクの少なくとも一部内へのガラスビーズの組み込み。
【0064】
ここで使用された「実質的」、「本質的」、「一般的」、「ほぼ」等の相対的又は程度の語句は、明確に記載された適用の定義又は制限に従い、且つ、これらの定義又は制限を条件として解釈されるべきである。全ての例において、ここでの使用された相対的又は程度の語句は、関連して開示された実施形態、範囲及び変形を広く包含するように解釈されるべきである。ここでは、熱や、回転又は振動の操作条件等によって誘起される通常の製造公差、偶発なアライメント変動、一時的なアライメント又は形状変化を含むことが本開示の全体からみて当業者に理解されるところである。更に、相対的又は程度の語句の制限が明細書にて使用されていないなら、ここでの使用された相対的又は程度の語句はばらつき無しに、品質、特性、パラメータ又は値を明確に含む範囲を包含するものと解釈されるべきである。
【0065】
本発明は好適な実施形態を参照して記載されているが、当業者は本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の変更が可能であることを認識している。例えば、開示された実施形態の特徴は、開示された他の実施形態の特徴と組み合わせて用いることができる。