(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本実施の形態における油圧制御装置が搭載された油圧ショベル(建設機機械)の外観を示す図である。
【0012】
図1において、油圧ショベルは下部走行体100と上部旋回体101とフロント作業機102を備えている。下部走行体100は左右のクローラ式走行装置103a,103bを有し、左右の走行モータ104a,104bにより駆動される。上部旋回体101は下部走行体100上に旋回可能に搭載され、旋回モータ(図示せず)により旋回駆動される。フロント作業機102は上部旋回体101の前部に上下方向に回動可能に取り付けられている。上部旋回体101にはエンジンルーム106及びキャビン(運転室)107が備えられ、エンジンルーム106内にはエンジン(原動機)6や油圧ポンプ4、パイロットポンプ9等の油圧機器が配置され、キャビン107内には操作レバー装置13,24,27(
図2参照)、操作ペダル装置(図示せず)等の操作装置が配置されている。
【0013】
フロント作業機102はブーム111、アーム112及びバケット113を有する多関節構造である。ブーム111はブームシリンダ8の伸縮により上下方向に回動する。アーム112はアームシリンダ60の伸縮により上下、前後方向に回動する。バケット113はバケットシリンダ80の伸縮により上下、前後方向に回動する。
【0014】
図2は本実施の形態における油圧制御装置の全体構成図である。
図2では、説明の簡略化のため、
図1に示した左右の走行モータ104a,104b、アームシリンダ60、バケットシリンダ80等の油圧アクチュエータに係わる部分を省略している。
【0015】
図2において、本実施の形態における油圧制御装置は、エンジン6によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ(メインポンプ)4及び固定容量型のパイロットポンプ9と、油圧ポンプ4から吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータ8,60,80と、油圧ポンプ4から油圧アクチュエータ8,60,80に供給される圧油の流れ方向及び流量を制御するパイロット式の方向流量制御弁1,20,21を内蔵したコントロールバルブ装置11とを備えている。
【0016】
油圧ポンプ4の吐出油路はメインリリーフ弁22を介して作動油タンクTに接続されており、メインリリーフ弁22は油圧ポンプ4の吐出圧力が最大吐出圧に達すると開弁し、作動油タンクTに圧油を排出する。また、パイロットポンプ9の吐出油路はパイロットリリーフ弁23を介して作動油タンクTに接続されており、パイロットリリーフ弁23はパイロットポンプ9の吐出圧力が最大吐出圧力に達すると開弁し、作動油タンクTに圧油を排出する。
【0017】
方向流量制御弁1,20,21はセンタバイパス型であり、油圧ポンプ4の吐出油路につながるセンタバイパスライン12上に配置されている。すなわち、センタバイパスライン12は方向流量制御弁1,20,21を貫通して伸びている。センタバイパスライン12の上流側は油圧ポンプ4の吐出油路に接続され、下流側は作動油タンクTに接続されている。
【0018】
油圧アクチュエータ8はブーム111を上下させる油圧シリンダ(ブームシリンダ)であり、方向流量制御弁1はブーム制御用の第1方向流量制御弁である。油圧アクチュエータ60はアーム112を押し引きする油圧シリンダ(アームシリンダ)であり、方向流量制御弁20はアーム制御用の第2方向流量制御弁である。油圧アクチュエータ80はバケット113を押し引きする油圧シリンダ(バケットシリンダ)であり、方向流量制御弁21はバケット制御用の第3方向流量制御弁である。
【0019】
ブームシリンダ8は方向流量制御弁1にアクチュエータライン16,17を介して接続されている。ブームシリンダ8はボトム側シリンダ室8a及びロッド側シリンダ室8bを有し、ボトム側シリンダ室8aはアクチュエータライン16に接続され、ロッド側シリンダ室8bはアクチュエータライン17に接続されている。これによりブームシリンダ8には方向流量制御弁1を介して油圧ポンプ4の吐出油が供給される。アームシリンダ60及びバケットシリンダ80についても同様であるため、説明は省略する。
【0020】
操作レバー装置13はブーム操作用の第1操作レバー装置であり、パイロットポンプ9の吐出圧力に基づいて操作レバー13aの操作方向に応じたブーム上げ指令としての操作パイロット圧力(以下「ブーム上げ操作パイロット圧力」という。)Pp1又はブーム下げ指令としての操作パイロット圧力(以下「ブーム下げ操作パイロット圧力」という。)Pp2を生成する減圧弁を有しており、生成された操作パイロット圧力Pp1又はPp2は方向流量制御弁1の対応する受圧部に導かれ、方向流量制御弁1はその操作パイロット圧力Pp1又はPp2によりブーム上げ方向(図示左方向)又はブーム下げ方向(図示右方向)に切り換えられる。
【0021】
操作レバー装置24はアーム操作用の第2操作レバー装置であり、パイロットポンプ9の吐出圧力に基づいて操作レバー24aの操作方向に応じたアームクラウド(アーム引き)指令としての操作パイロット圧力(以下「アーム引き操作パイロット圧力」という。)Pp3又はアームダンプ(アーム押し)指令としての操作パイロット圧力(以下「アーム押し操作パイロット圧力」という。)Pp4を生成する減圧弁を有しており、生成された操作パイロット圧力Pp3又はPp4は方向流量制御弁20の対応する受圧部に導かれ、方向流量制御弁20はその操作パイロット圧力Pp3又はPp4によりアームクラウド方向(図示左方向)又はアームダンプ方向(図示右方向)に切り換えられる。
【0022】
操作レバー装置27はバケット操作用の第3操作レバー装置であり、パイロットポンプ9の吐出圧力に基づいて操作レバー27aの操作方向に応じたバケットクラウド(バケット引き)指令としての操作パイロット圧力(以下「バケット引き操作パイロット圧力」という。)Pp5又はバケットダンプ(バケット押し)指令としての操作パイロット圧力(以下「バケット押し操作パイロット圧力」という。)Pp6を生成する減圧弁を有しており、生成された操作パイロット圧力Pp5又はPp6は方向流量制御弁21の対応する受圧部に導かれ、方向流量制御弁21はその操作パイロット圧力Pp5又はPp6によりバケットクラウド方向(図示左方向)又はバケットダンプ方向(図示右方向)に切り換えられる。
【0023】
図3Aは方向流量制御弁1,20,21の図記号を拡大して示す図である。
【0024】
図3Aにおいて、センタバイパス型の方向流量制御弁1,20,21は、センタバイパス通路部Rb、メータイン通路部Ri及びメータアウト通路部Roを有し、センタバイパス通路部Rbはセンタバイパスライン12上に位置し、メータイン通路部Riは油圧ポンプ4の吐出油路につながる圧油供給ライン18をアクチュエータライン16又は17に連通させる油路上に位置し、メータアウト通路部Roはアクチュエータライン16又は17を作動油タンクTに連通させる油路上に位置している。圧油供給ライン18には油圧アクチュエータ側からの圧油の逆流を防止するためのロードチェック弁15が設けられている。方向流量制御弁1,20,21は、その切換量(ストローク)に応じて3つの通路部Rb,Ri,Roの開口面積を調整することで油圧ポンプ4の吐出流量を分配し、油圧アクチュエータ8,60,80に圧油を供給するものである。
【0025】
図3Bは方向流量制御弁1,20,21の開口面積特性を示す図である。
【0026】
図3Bにおいて、センタバイパス通路部Rbは、A1に示すような開口面積特性を有し、メータイン通路部Ri及びメータアウト通路部Roは、A2に示すような開口面積特性を有している。
図3Bの横軸は対応する操作装置により生成される操作パイロット圧力であり、操作レバーの操作量(以下「レバー操作量」という。)又は方向流量制御弁1,20,21のスプールストロークに概ね対応している。
図3Bの縦軸はセンタバイパス通路部Rb、メータイン通路部Ri又はメータアウト通路部Roの開口面積である。
【0027】
操作装置の操作レバーが操作され、操作パイロット圧力が上昇するにしたがって(レバー操作量又は方向流量制御弁のスプールストロークが増大するにしたがって)、センタバイパス通路部Rbの開口面積A1は減少し、メータイン通路部Ri及びメータアウト通路部Roの開口面積A2は増大する。すなわち、センタバイパス型の方向流量制御弁では、方向流量制御弁のストロークが小さいあるストローク以下では、メータイン通路部Riの開口面積A1が小さく、センタバイパス通路部Rbの開口面積A2が大きいため、油圧ポンプの吐出圧力が油圧アクチュエータの負荷圧よりも高くならず、油圧ポンプの吐出流量はその全量がセンタバイパス通路部Rbを介して作動油タンクTに流出する。方向流量制御弁のストロークが増大するに従ってメータイン通路部Riの開口面積A2が増大し、センタバイパス通路部Rbの開口面積A1が減少するため、油圧ポンプ4の吐出圧力が油圧アクチュエータの負荷圧よりも高くなり、油圧ポンプ4の吐出油の一部がメータイン通路部Riを介して油圧アクチュエータに流入し、油圧アクチュエータが動き始める。方向流量制御弁のストロークが更に増大すると、それに応じてメータイン通路部Riの開口面積A2が増大し、センタバイパス通路部Rbの開口面積A1が減少するため、メータイン通路部Riを介して油圧アクチュエータに供給される圧油の流量が増大し、油圧アクチュエータ速度も増大する。また、
図3Bに示す開口面積特性は、油圧アクチュエータの容量や操作レバーの操作性に応じて方向流量制御弁1,20,21ごとに最適化されている。
【0028】
図2に戻り、油圧ポンプ4はレギュレータ5を備えている。レギュレータ5はポンプ制御圧力Ppcと自身が係わる油圧ポンプ4の吐出圧力を入力し、ポジコン制御と入力トルク制限制御を行う。
【0029】
本実施の形態の油圧制御装置は、その特徴的構成として、更に、センタバイパスライン12の方向流量制御弁1,20,21よりも下流側に配置されたセンタバイパス制御弁2と、ブーム上げ操作パイロット圧力Pp1を検出する圧力センサ(第1圧力センサ)7と、アーム引き操作パイロット圧力Pp3を検出する圧力センサ(第2圧力センサ)25と、アーム押し操作パイロット圧力Pp4を検出する圧力センサ(第3圧力センサ)26と、バケット引き操作パイロット圧力Pp5を検出する圧力センサ(第4圧力センサ)28と、バケット押し操作パイロット圧力Pp6を検出する圧力センサ(第5圧力センサ)29と、エンジン6の回転数を検出する回転数センサ(回転数検出装置)19と、コントローラ(制御装置)10と、コントローラ10からの制御信号により動作し、パイロットポンプ9の吐出圧力に基づいて制御圧力Pcbを生成する電磁比例弁3とを備えている。電磁比例弁3により生成された制御圧力Pcbは、センタバイパス制御弁2に印加され、センタバイパス制御弁41の開口を制御する。
【0030】
図4はコントローラ10の処理内容を示すフローチャートである。
【0031】
図4において、まず、コントローラ10は圧力センサ7,25,26,28,29の検出信号より、ブーム上げ操作パイロット圧力Pp1、アーム引き操作パイロット圧力Pp3、アーム押し操作パイロット圧力Pp4、バケット引き操作パイロット圧力Pp5及びバケット押し操作パイロット圧力Pp6のいずれかが所定の値Ppminよりも大きいか否かを判定する(ステップS1)。ここで、所定の値Ppminは操作装置13,24,27により生成される操作パイロット圧力の最小値であり、操作パイロット圧力が所定の値Ppminよりも大きいことは操作レバーが操作されたことを意味する。操作パイロット圧力Pp1〜Pp6は方向流量制御弁1,20,21の操作量に対応しており、圧力センサ7,25,26,28,29は方向流量制御弁1,20,21の操作量を検出する操作量検出装置を構成している。
【0032】
ステップS1で操作パイロット圧力Pp1〜Pp5のいずれかが所定の値Ppminよりも大きい(YES)と判定した場合は、コントローラ10は更に回転数センサ19の検出信号より、エンジン6の回転数Nが所定の値Nmaxよりも小さいか否かを判定する(ステップS2)。
【0033】
ステップS2でエンジン6の回転数Nが所定の値Nmaxよりも小さい(NO)と判定した場合は、センタバイパス制御弁2の開口面積Acbを演算する(ステップS3)。開口面積Acbの演算方法については後述する。
【0034】
一方、ステップS1でブーム上げ操作パイロット圧力Pp1が所定の値Ppminよりも大きくない(NO)と判定した場合又はステップS2でエンジン回転数Nが所定の値Nmaxよりも小さくない(NO)と判定した場合は、センタバイパス制御弁2の開口面積Acbを最大値(全開)に設定する(ステップS4)。
【0035】
ステップS3又はS4に続いて、コントローラ10はセンタバイパス制御弁2の開口面積AcbがステップS3又はS4で設定された開口面積と一致するように電磁比例弁3を制御する(ステップS5)。具体的には、コントローラ10は、
図5に示す変換テーブルに基づいて、
図4のステップS3又はS4で設定された開口面積に対応する制御圧力Pcbを計算し、この制御圧力Pcbが電磁比例弁3により生成されるように電磁比例弁3を励磁する。以上の処理により、センタバイパス制御弁2の開口面積Acbが制御される。
【0036】
図6は
図4のステップS3におけるセンタバイパス開口面積の演算処理を示すブロック図である。
【0037】
図6において、ステップS3は演算ブロックB1〜B8で構成されており、操作パイロット圧力Pp1,Pp3〜Pp6及びエンジン回転数Nに基づいてセンタバイパス制御弁2の開口面積Acbを計算する。
【0038】
演算ブロックB1では、変換テーブルT1に基づいて、ブーム上げ操作パイロット圧力Pp1に対応する方向流量制御弁1のセンタバイパス通路部Rbの開口面積を計算する。ここで、変換テーブルT1には方向流量制御弁20のセンタバイパス通路部Rbの開口面積特性A1(
図3A参照)が設定されている。
【0039】
演算ブロックB2では、変換テーブルT2に基づいて、アーム引き操作パイロット圧力Pp2に対応する方向流量制御弁20のセンタバイパス通路部Rbの開口面積を計算する。ここで、変換テーブルT2には方向流量制御弁20のセンタバイパス通路部Rbの開口面積特性が設定されている。
【0040】
演算ブロックB3では、変換テーブルT3に基づいて、アーム押し操作パイロット圧力Pp3に対応する方向流量制御弁20のセンタバイパス通路部Rbの開口面積を計算する。ここで、変換テーブルT3には方向流量制御弁20のセンタバイパス通路部Rbの開口面積特性が設定されている。
【0041】
演算ブロックB4では、変換テーブルT4に基づいて、バケット引き操作パイロット圧力Pp4に対応する方向流量制御弁21のセンタバイパス通路部Rbの開口面積を計算する。ここで、変換テーブルT4には方向流量制御弁21のセンタバイパス通路部Rbの開口面積特性が設定されている。
【0042】
演算ブロックB5では、変換テーブルT5に基づいて、バケット押し操作パイロット圧力Pp5に対応する方向流量制御弁21のセンタバイパス通路部Rbの開口面積を出力する。ここで、変換テーブルT5には方向流量制御弁21のセンタバイパス通路部Rbの開口面積特性が設定されている。
【0043】
演算ブロックB6では、演算ブロックB1〜B5で計算した開口面積(方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス流路部Rbの開口面積)のうちの最小値を選択する。この最小値の選択は、方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス流路部Rbの合成開口面積を求めることに相当する。方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス流路部Rb(センタバイパス絞り)はセンタバイパスライン12上で直列に接続されており、直列絞りにおいては開口面積が小さい方の絞りが支配的に効く。そのため、本実施の形態では、方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス流路部Rbの合成開口面積をセンタバイパス流路部Rbの開口面積のうちの最小値で近似することにより、計算を簡易化している。なお、本実施の形態では微速操作作業としてクレーン作業を想定しており、ブーム下げ方向の負荷が生じないため、演算ブロックB6ではブーム下げ操作圧力Pp2を考慮していないが、ブーム下げ方向の負荷が生じる場合はブーム下げ操作圧力Pp2も含めて最小値を選択する必要がある。
【0044】
演算ブロックB7では、回転数センサ19で検出したエンジン回転数Nの定格回転数Nmaxに対する比率(=N/Nmax)を補正係数(0〜1)として計算する。ここで、定格回転数Nmaxは通常作業時のエンジン回転数である。
【0045】
演算ブロックB8では、演算ブロックB6で計算した合成開口面積に演算ブロックB7で計算した補正係数(0〜1)を掛けることにより、センタバイパス制御弁2の開口面積Acbを計算する。この計算は、方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbとセンタバイパス制御弁2との合成開口面積が、方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbの合成開口面積に上記補正係数(0〜1)を掛けた値となるときのセンタバイパス制御弁2の開口面積Acbを求めることに相当する。センタバイパス制御弁2の開口面積Acbを方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbの合成開口面積よりも小さくしたときは、センタバイパスライン12においてセンタバイパス制御弁2の絞りが支配的となり、方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbとセンタバイパス制御弁2との合成開口面積はセンタバイパス制御弁2と開口面積とほぼ一致する。そのため、センタバイパス制御弁2の開口面積Acbを方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbの合成開口面積に補正係数(0〜1)を掛けた値とすることにより、方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbとセンタバイパス制御弁2との合成開口面積を方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbの合成開口面積に補正係数(0〜1)を掛けた値とほぼ一致させることができる。
【0046】
図7は方向流量制御弁1,20,21の操作パイロット圧力Pp1,Pp3〜Pp6とセンタバイパス制御弁2の開口面積Acbとの関係(センタバイパス制御弁2の制御特性)を示す図である。
【0047】
図7において、C0はエンジン回転数Nを定格回転数Nmaxに設定した場合の制御特性であり、操作パイロット圧力に関わらずセンタバイパス制御弁2の開口面積Acbは最大値(全開)となる。C1は、エンジン回転数Nを定格回転数N0よりも低いN1に設定した場合の制御特性であり、C2はエンジン回転数NをN1よりも低いN2に設定した場合の制御特性であり、それぞれ、方向流量制御弁1,20,21の合成開口面積(図中、破線で示す)にエンジン回転数N1,N2の定格回転数Nmaxに対する比率(補正係数)を掛けたものとほぼ一致している。
【0048】
以上のように構成した油圧ショベルの動作を説明する。
【0049】
図1に戻り、バケット113の背部には格納式のフック130が装着されている。フック130はクレーン作業用であり、図示の如く、バケット背部に取り付けたフック130にワイヤーを掛けて吊り荷131を吊り上げる。このクレーン作業では、ブーム111の上げ下げ(ブーム上げ及びブーム下げ)により吊り荷131の上下方向(高さ方向)の移動(位置調整)を行い、アーム112の押し引き(アームダンプ及びアームクラウド)又は旋回により吊り荷131の前後及び横方向(水平方向)の移動(位置調整)を行う。ブーム上げでは、ブームシリンダ8のボトム側シリンダ室8aが負荷保持側となり、ボトム側シリンダ室8aに高圧の保持圧が発生する。また、クレーン作業は重負荷で微速操作が要求される作業であるため、エンジン回転数Nは定格回転数Nmaxよりも低く設定されている。
【0050】
クレーン作業として、
図1に示すように、吊り荷131を空中に保持した状態でブーム上げにより吊り荷131の上方への移動を行う場合を考える。
【0051】
オペレータが、クレーン作業でブーム上げにより吊り荷131の上方への移動を行うことを意図してブーム用の操作レバー装置13の操作レバー13aをブーム上げ方向に操作すると、ブーム上げ指令の操作パイロット圧力Pp1がブーム用の方向流量制御弁1の受圧部に導かれ、方向流量制御弁1はブーム上げ方向(図示左方向)に切り換え操作される。
【0052】
一方、ブーム上げ指令の操作パイロット圧力Pp1は圧力センサ7により検出され、圧力センサ7の検出信号は、エンジン6の回転数を検出する回転数センサ19の検出信号と共にコントローラ10に入力される。コントローラ10は、これらの検出信号に基づいて
図4に示したフローチャートの処理を行う。このとき、操作パイロット圧力Pp1はPp1>Ppminでかつエンジン回転数NがN<Nmaxであるため、ステップS1及びS2でいずれもYESと判定され、ステップS3及びS5の処理により電磁比例弁3に制御信号が出力される。これにより、センタバイパスライン12の合成開口面積がエンジン回転数Nの低下に応じて縮小するようにセンタバイパス制御弁2の開口面積が制御される。これにより、油圧ポンプ4の吐出圧力は定格回転数Nmax設定時と同様にレバー操作量の増加に応じて上昇し、油圧ポンプ4の吐出圧力がブームシリンダ8のボトム側シリンダ室8aに高圧の保持圧を上回ると、油圧ポンプ4の吐出油がブームシリンダ8の負荷保持側であるボトム側シリンダ室8aに流入してブームシリンダ8が伸展し、ブーム111が上方に回動する。
【0053】
本実施の形態の効果を従来技術と比較して説明する。
【0054】
図8は従来技術におけるレバー操作量とアクチュエータ供給流量との関係を示す図であり、F1はエンジン回転数Nを定格回転数Nmaxに設定した場合の関係を示しており、F2はエンジン回転数Nを定格回転数Nmaxよりも低く設定した場合の関係を示している。
【0055】
図8において、エンジン回転数Nを定格回転数Nmaxに設定した状態でレバー操作量がS1に達すると、
図7において操作パイロット圧力がPS1に達し、方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbの合成開口面積がA11まで縮小する。これにより、油圧ポンプ4の吐出圧力が油圧アクチュエータの負荷圧を上回り、油圧アクチュエータの負荷保持側に圧油が流入し始める。その結果、レバー操作量S1までのレバー操作域が不感帯となり、レバー操作量S1から油圧アクチュエータへの供給流量が最大となるレバー操作量Smaxまでの間が油圧アクチュエータへの供給流量を可変とするレバー操作域X1となる。
【0056】
一方、クレーン作業等の微速操作作業においてエンジン回転数Nを定格回転数Nmaxよりも低いN1に設定すると、油圧ポンプ4の吐出流量がエンジン回転数Nに比例して低下し、油圧ポンプ4の吐出圧力も同様に低下する。この状態でレバー操作量がS1に達すると、
図7において操作パイロット圧力PS1に達し、方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbの合成開口面積がA11まで縮小するが、油圧ポンプ4の吐出流量が低下したことで油圧ポンプ4の吐出圧力は油圧アクチュエータの負荷圧を上回らず、油圧アクチュエータの負荷保持側に圧油は流入しない。操作レバーを更に操作してレバー操作量がS2に達すると、
図7において操作パイロット圧力PS2に達し、方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbの合成開口面積がA12(
図7参照)まで縮小する。このとき、油圧ポンプ4の吐出圧力は油圧アクチュエータの負荷圧を上回り、油圧アクチュエータの負荷保持側に圧油が流入し始める。その結果、レバー操作量S2までのレバー操作域が不感帯となり、油圧アクチュエータへの供給流量を可変とするレバー操作域がX1からX2まで縮小し、微速操作作業における操作性が悪化する。
【0057】
図9は本実施の形態におけるレバー操作量とアクチュエータ供給流量との関係を示す図であり、F3はエンジン回転数Nを定格回転数Nmaxに設定した場合の関係を示しており、F4はエンジン回転数Nを定格回転数Nmaxよりも低く設定した場合の関係を示している。
【0058】
本実施の形態において、エンジン回転数Nを定格回転数Nmax以上に設定した場合は、
図4のステップS2でNOと判定され、ステップS4でセンタバイパス制御弁2の開口面積が最大値(全開)に設定されるため、センタバイパスライン12の合成開口面積はセンタバイパス制御弁2の影響を受けない。従って、F3は従来技術における特性F1(
図8参照)と一致し、油圧ショベルは従来技術と同様に動作する。
【0059】
一方、クレーン作業等の微速操作作業においてエンジン回転数Nを定格回転数Nmaxよりも低いN1に設定した場合は、油圧ポンプ4の吐出流量がエンジン回転数Nに比例して低下し、油圧ポンプ4の吐出圧力も同様に低下する。このとき、センタバイパス制御弁2の開口面積Acbは、エンジン回転数Nの低下に比例して方向流量制御弁1,20,21のセンタバイパス通路部Rbの合成開口面積よりも小さくなるように制御される。これにより、レバー操作量がS1に達すると、センタバイパス制御弁2の開口面積がA12まで縮小して油圧ポンプ4の吐出圧力が油圧アクチュエータの負荷圧を上回り、油圧アクチュエータの負荷保持側に圧油が流入し始める。
【0060】
本実施の形態によれば、微速操作作業においてエンジン回転数Nを定格回転数Nmaxよりも低く設定して油圧ポンプ4の吐出流量を低下させた場合に、定格回転数Nmax設定時に油圧アクチュエータの負荷保持側に圧油が流入し始めるとき(油圧アクチュエータが動き始めるとき)のレバー操作量S1で油圧アクチュエータの負荷保持側に圧油が流入し始める。これにより、油圧アクチュエータへの供給流量を可変とするレバー操作域X1が定格回転数Nmax設定時と同様に広く保たれるため、微速操作作業における操作性の悪化を防止できる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は、本発明を油圧ショベルに適用したものであるが、本発明はこれに限られず、クレーン等の建設機械にも適用できる。また、上記した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。