特許第6646041号(P6646041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6646041人間の被検者の眼の網膜組織の光干渉断層像データを取得するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646041
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】人間の被検者の眼の網膜組織の光干渉断層像データを取得するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   A61B3/10 100
   A61B3/10ZDM
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-510711(P2017-510711)
(86)(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公表番号】特表2017-514660(P2017-514660A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】CH2015000069
(87)【国際公開番号】WO2015168813
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2018年4月11日
(31)【優先権主張番号】699/14
(32)【優先日】2014年5月8日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】516302731
【氏名又は名称】ミーモ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mimo AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス コヴァール
(72)【発明者】
【氏名】グウェノーレ ケレク
(72)【発明者】
【氏名】ペーター マロカ
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−208316(JP,A)
【文献】 特開2012−223428(JP,A)
【文献】 特開2013−248376(JP,A)
【文献】 特開2014−045907(JP,A)
【文献】 特表2014−527434(JP,A)
【文献】 特表2010−528758(JP,A)
【文献】 特表2014−514950(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/117386(WO,A1)
【文献】 米国特許第05644642(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像光学系を備えた取得装置を用いて人間の被検者の眼の網膜組織の光干渉断層像データを取得するための方法であって、
a)第1の時点において、前記結像光学系に対する人間の被検者の眼のベースライン相対位置決めに関連付けて、第1の像を取得するステップと、
b)前記ベースライン相対位置決めを記憶するステップと、
c)前記第1の時点とは異なる第2の時点において、前記結像光学系に対する同一人間の被検者の同一の眼のベースライン相対位置決めを再確立し、第2の像を取得するステップと、
を有し、
d)前記位置決めを再確立するため、前記結像光学系に対する前記人間の被検者の前記眼の現在の相対位置決めを、前記眼の虹彩領域の映像に基づいて求め
e)前記再確立するステップは、前記人間の被検者がとるべき見通し線の方向を示すターゲット像を、前記人間の被検者に対して表示することを含み、
f)前記結像光学系に対する前記人間の被検者の前記眼の現在の相対位置決めと、記憶された前記ベースライン相対位置決めと、を比較し、
前記現在の相対位置決めが、前記記憶されたベースライン相対位置決めと一致しない場合には、表示されている前記ターゲット像を操作し、
前記現在の相対位置決めが前記ベースライン相対位置決めと一致する場合には、前記第2の像を取得する、
方法。
【請求項2】
前記再確立するステップは、前記結像光学系の自動的な再位置決めを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記人間の被検者の頭部を、前記取得装置のベースに対して固定位置に保持し、
再位置決めを行うため、前記結像光学系を前記ベースに対して移動させる、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記映像内における角膜縁の位置を求め、前記眼の現在の相対位置決めの参照として使用する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記結像光学系に対する前記眼の現在の相対位置決めを求めることは、前記眼の3次元の位置および向きを求めるステップを含む、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記眼の3次元の位置および向きは、
a)前記眼の回転中心と、
b)角膜縁平面に対する法線ベクトルと、
を特定することにより求められる、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記結像光学系に対する前記眼の現在の相対位置決めを求めることは、前記眼を照明する少なくとも2つの互いに離隔された光源の反射された光線に基づいて、角膜の曲率中心を求めるステップを含む、
請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記人間の被検者の前記眼の角膜の曲率半径を求めるために、
前記角膜の映像を記録すると同時に前記角膜のOCT像を取得することによって、前記角膜と前記結像光学系との距離を求め、
距離値を前記映像の位置に対応付け、
数値最適化アルゴリズムによって前記曲率半径を求める、
ステップを含む、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記人間の被検者の前記眼の回転中心と前記眼の角膜の曲率中心との距離を求めるステップを含む、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
人間の被検者の眼の網膜組織の光干渉断層像データを取得するための装置であって、
a)結像光学系と、
b)人間の被検者の頭部分が接触するヘッドサポートであって、前記人間の被検者の眼に入射するサンプルビームの入射位置を定めるヘッドサポートと、
c)眼の虹彩領域の映像を取得するためのカメラと、
d)人間の被検者がとるべき見通し線の方向を示すターゲット像を、前記人間の被検者に対して表示するための表示部と、
e)前記結像光学系に対する前記人間の被検者の前記眼の現在の相対位置決めを前記映像に基づいて求め、前記結像光学系に対する前記人間の被検者の前記眼の現在の相対位置決めと、記憶されたベースライン相対位置決めと、を比較するためのプロセッサと、
を備えており、
前記装置は、
a)第1の時点において、前記結像光学系に対する人間の被検者の眼のベースライン相対位置決めに関連付けて、第1の像を取得し、
b)前記ベースライン相対位置決めを記憶し、
c)前記第1の時点とは異なる第2の時点において、前記結像光学系に対する同一人間の被検者の同一の眼のベースライン相対位置決めを再確立し、第2の像を取得する、
ように構成され、
前記ベースライン相対位置決めを再確立するため、前記結像光学系に対する前記人間の被検者の前記眼の現在の相対位置決めを、前記眼の前記虹彩領域の映像に基づいて求め、
前記現在の相対位置決めが、前記記憶されたベースライン相対位置決めと一致しない場合には、前記ターゲット像を操作し、前記現在の相対位置決めが前記ベースライン相対位置決めと一致する場合には、像データの取得をトリガする、
装置。
【請求項11】
前記装置は、ベースを備えており、
前記ヘッドサポートは、前記ベースに固定されており、
前記結像光学系は、前記ベースに対して可動である、
請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記ベースに対して前記結像光学系の位置を3次元で自動調整するための調整機構を備えている、
請求項11記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像光学系を備えた取得装置を用いて人間の被検者の眼の網膜組織の光干渉断層像データを取得するための方法に関する。本発明はさらに、人間の被検者の眼の網膜組織の光干渉断層像データを取得するための装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
加齢性黄斑変性症(AMD)や、特に血管新生AMD(nAMD)は、先進諸国において50歳以上の人達の失明の主な原因となっている。血管透過性が増大すると、網膜内または網膜下において異常な流体集合が生じ、これが黄斑の中心を巻き込むと、視覚障害を引き起こす。これは視力の急速な低下、色素上皮層の瘢痕化、および永久的な視機能障害または失明の原因となる。
【0003】
しかし、ラニビズマブ(販売名「ルセンティス」(登録商標)、ノバルティス社、スイス、バーゼル)を含めた血管新生抑制剤の硝子体内注射が、nAMDの進行を有意に改善することが明らかとなっている。硝子体内注射の負担を低減してリスク/メリットプロファイルを最適化するため、光干渉断層撮影法(OCT)によってnAMD特徴の進行を非侵襲でモニタリングすることができる。顕著なnAMD特徴は、網膜構造の厚さの増大を含む。それぞれ異なる時点で取得された、網膜の同一領域の2つのOCT像を目視により比較すると、かかる増大を特定することができる。その時間間隔は、数日から数ヶ月である。
【0004】
たとえば、ラニビズマブを用いて処置がなされている患者に対し、OCT検査を毎月行う。nAMD特徴の有意な増大が観察された場合には、その日、1ヶ月後および2ヶ月後に患者はラニビズマブ注射を受けるとの処置判断を下す(処置期)。nAMD特徴が完全に縮小しなかった場合には、1ヶ月後に再処置を適用することができる。そうでない場合には、患者はその日に注射を受けないが、指示された維持注射を定期的に受けることとなる(維持期)。
【0005】
OCT取得のためには、通常は高性能であるゆえ高価な従来技術のOCTが用いられる。OCTは、診察室または病院の専用のユニットに配されている。かかる装置は、専門技術を有する作業員によって動作する。このことは、OCTを取得しなければならない度に、モニタリングされる患者に対し、診察室または病院の専用のユニットに来院することが要求されることを意味する。これは、患者に相当の負担を課すこととなる。さらに、OCT取得の頻度(たとえば1月)は既に、nAMDの進行を密にモニタリングすることと、患者にかかるコストおよび負担と、の間を調整する一種の妥協案となっている。
【0006】
第一に、OCT像取得装置が患者により近傍に配されると、とりわけ、モニタリング対象の患者が自宅においてOCT撮像装置にアクセスすることができると、上述の問題は多少は解消され得る。このことは、OCT装置がコンパクトであり、比較的低コストであり、実質的に誰でも動作させることができ、最も有利には患者自身によって動作できる場合にのみ現実的となる。かかる観点において解決すべき1つの問題として、人間の被検者の網膜の関心領域全部をカバーする像データの取得の問題がある。関心領域全部をカバーする取得を行うためには、検査対象の眼の位置および向きが、取得装置の光学系に対して特定の位置および向きになっていることを要する。さらに、特にOCT取得の自動解析が予定されている場合、複数の異なる時点で取得された像を比較するためには、この比較を容易化しまたは可能とすべく、これらの像が示す検査対象の眼の観察面は、実質的に同一でなければならない。
【0007】
しかし従来技術のOCT装置においては、通常は専門技術を有するオペレータが、人間の被検者の頭部の位置と、検査対象の眼がとる見通し線の位置と、を変化させるために、当該人間の被検者の向きを調整する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、冒頭に述べた技術分野に属するOCT像データの取得方法およびOCT撮像装置であって、低コストであり、かつ検査対象の眼の高信頼性の位置決めを可能にする取得方法およびOCT撮像装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決手段は、請求項1の特徴によって特定される。本発明によれば、方法は以下のステップを含む:
a)第1の時点において、結像光学系に対する人間の被検者の眼のベースライン相対位置決めに関連付けて、第1のOCT像を取得するステップ。
b)ベースライン相対位置決めを記憶するステップ。
c)第1の時点とは異なる第2の時点において、結像光学系に対する同一人間の被検者の同一の眼のベースライン相対位置決めを再確立し、第2のOCT像を取得するステップ。
ここで、
d)前記位置決めを再確立するため、結像光学系に対する人間の被検者の眼の現在の相対位置決めを、当該眼の虹彩領域の映像に基づいて求める。
【0010】
本願において「映像」とは、視覚的な像を表現する1つまたは複数のフレームをいい、たとえば、通常の能動的な画素センサを備えたカメラを用いて取得されたフレームをいう。とりわけ、特定の一時点における相対位置決めを求めるためには、1つのフレームが用いられる。しかし原則として、関心対象の近似的に同一の時点における連続する複数のフレームを考慮することも可能である。
【0011】
眼の虹彩領域すなわち眼の前眼部(特に角膜と、瞳孔と、虹彩と、強膜の隣接領域と、を含む部分)の映像は、低コストのハードウェアを用いて、非常に短時間で容易に取得することができる。かかる映像は、容易に使用可能な画像処理手法や画像処理ソフトウェアによって処理することができる。よって、専門技術を有するオペレータを必要とすることなく動作できる、対応する撮像装置のコストは、最小限になり得る。映像は高速レート(たとえば25fpsまたは50fps以上)で取得することができる。これにより、現在の状況を示すごく最新の映像であって、これにより眼の位置の準リアルタイムの追跡を可能とする映像が、常に得られる。近赤外線照明を用いることにより、患者に及ぼされる悪影響を最小限にすることができる。
【0012】
ベースライン相対位置決めは、取得装置のローカル記憶装置または取得装置に接続された装置のローカル記憶装置に記憶することができる。また、データ媒体に記憶すること、または、ネットワークを介して伝送してサーバに記憶することも可能である。ベースライン相対位置決めは、以下に示す量の複数の異なるセットによって定義することができる。
【0013】
本発明の方法は、上掲のステップに限定されることはない。特に、本発明の方法はさらに、OCT像データを最新で取得するステップも含むことができる。
【0014】
有利には再確立ステップは、結像光学系の自動的な再位置決めを含む。この再位置決めは、1つまたは複数の軸に沿って行うことができ、この軸は直進軸および/または回転軸とすることができる。かかる再位置決めは、結像光学系と眼との相対位置決めを、および/または、これらの要素の相対的向きを操作することができる。
【0015】
有利には、人間の被検者の頭部を、取得装置のベースに対して固定位置に保持し、再位置決めを行うためには、結像光学系を当該ベースに対して移動させる。とりわけ、結像光学系は、ベースに対して可動なユニットに保持され、再位置決めは、当該ユニットを所望の位置に移動させるステップモータによって行われる。有利な一実施形態では再位置決めは、2つの回転軸と、結像光学系と検査対象の眼との間の距離を設定するためのデカルト軸と、に沿って行われる。これに代えて、再位置決めを3つのデカルト軸において行うこともでき、これにより、眼の位置に対して所定の位置に結像光学系を移動させることができる。
【0016】
有利には再確立ステップは、人間の被検者がとるべき見通し線の方向を示すターゲット像を、当該人間の被検者に対して表示することを含む。このターゲット像は、人間の被検者の所望の見通し線に対応するターゲットを直接示すことができるが、有利なのは、ターゲット像が、とるべき見通し線に一致させるために見通し線をどのように変化させるべきかについての情報を人間の被検者に提供する相対的な表示であることである。よってターゲット像は、たとえば十字線の形態で特定の位置を示す通常のターゲット、および/または、1つまたは複数の矢印等の方向表示から成ることができる。
【0017】
有利には、結像光学系に対する人間の被検者の眼の現在の相対位置決めを、記憶されたベースライン相対位置決めと比較する。現在の相対位置決めが、記憶されたベースライン相対位置決めと一致しない場合には、表示されるターゲット像を変化させる。すなわち、現在の見通し線を、ベースラインの位置決めに従ってとるべき見通し線の方向に変化させるように、人間の被検者を動かすため、像の位置および/またはその形状またはサイズを変化させる。最終的に現在の見通し線がベースライン相対位置決めに一致した場合、第2のOCT像を取得する。
【0018】
有利には、映像内における角膜縁の位置を求め、眼の現在の相対位置決めの参照として使用する。角膜縁の位置は、UV照明を用いる必要なく、特に近赤外線域の照明を用いることにより高信頼性で求めることができることが判明している。さらに、角膜縁位置は良好に定義されており(well-defined)、角膜縁の外観は安定的であり、とりわけ、角膜形状の日内変動または瞳孔拡大によって影響を受けるものではない。よって角膜縁位置は、OCTにより撮像すべき網膜組織の位置を求めることを可能にする有用な情報を提供するものである。
【0019】
映像から他の位置情報を得て(たとえば瞳孔の中心位置、角膜の3次元表面、虹彩特徴、または強膜における血管等)、角膜縁位置に代えて、または角膜縁位置と共に使用することができる。
【0020】
有利には、結像光学系に対する眼の現在の相対位置決めを求めることは、眼の3次元位置および向きを求めるステップを含む。
【0021】
有利な一実施形態では、上記にて説明した結像光学系の自動的な再位置決めは、眼に対する結像光学系の相対位置決めを取り扱うのに対し、人間の被検者と取得装置とのインタラクションは、ターゲット像による制御下で、眼に対する結像光学系の相対的向きを取り扱う。
【0022】
向きは、3つのオイラー角によって完全に記述される。眼の光軸を、対応する座標系の1軸として使用することにより、オイラー角は「ねじれ角」(眼の光軸まわりの回転)、「方位角」および「仰角」と称し得る。人間の被検者の頭部が結像光学系に対して再現可能に、たとえばヘッドサポートを使用して位置決めされる場合、ねじれは重大なものとはならず、無視できるものとなることが判明している。よって原則的には、眼の向きを示すためには2つの角(方位角および仰角)で十分である。
【0023】
有利には、眼の3次元位置および向きは、以下の量を特定することにより求められる:
a)眼の回転中心
b)角膜縁平面に対する法線ベクトル
【0024】
組み合わせで、これら2つの量は3つのデカルト座標(すなわち距離ベクトルの成分)および上述の2つの角の双方を提供するものである。さらに、これらは網膜すなわち撮像対象の組織の向きおよび位置も表す。これらの量が分かれば、現在の相対位置決めがベースライン相対位置決めと一致するか否かを確認するために複雑な計算は不要となる。
【0025】
有利には、結像光学系に対する眼の現在の相対位置決めを求めることは、眼に照射する少なくとも2つの互いに離隔された光源の反射された光線に基づいて角膜曲率中心を求めるステップを含む。
【0026】
角膜曲率中心は、角膜縁の(2次元の)映像に基づいて角膜縁を3次元で再構成するための有用な開始点となる。2つの光源の反射された光線を用いて求めることは、低コスト、高速かつ高信頼性である。
【0027】
有利には本発明の方法は、人間の被検者の眼の角膜曲率半径を求めるために、角膜の映像を記録すると同時に当該角膜のOCT像を取得することによって、角膜と結像光学系との距離を求め、距離値を映像の位置に対応付け、数値最適化アルゴリズムによって角膜曲率半径を求めるステップを含む。角膜曲率半径は、角膜曲率中心を得るために、少なくとも2つの光源の反射された光線から得られたデータを処理するときに使用できる量である。
【0028】
上記半径は、時間と共に有意に変化することのない安定的な量であることが分かっているため、上述の手順をOCT像の取得の度にその前に繰り返す必要はない。よって、角膜曲率中心を求めることとは異なり、角膜曲率半径を求めることは基本的に、1回だけ、とりわけ最初の(ベースライン)像を取得するときに行うことが可能な較正ステップである。上述のようにして得られた値(ρ)は、ベースライン相対位置決めと共に記憶することができ、また、後の取得のために使用することもできる。
【0029】
有利には本方法は、人間の被検者の眼の回転中心と当該眼の角膜曲率中心との距離を求めるステップを含む。この量は、角膜縁の3次元再構成に基づいて眼の回転中心を発見するときに用いることができる。
【0030】
この量も安定的であり、時間と共に有意に変化するものではない。よって、較正ステップとして1回だけ実施することが可能である。
【0031】
したがって有利な一実施形態では、眼の3次元位置および向きを特定する量は、以下のようにして求められる:
A.被検者固有の較正(ベースライン像データの取得時に1回だけ):
a)角膜曲率半径(ρ)を求める;
b)眼の回転中心と角膜曲率中心(r)との距離を求める;
B.現在の相対位置決めの特定(現在のOCT取得プロセスの直前):
c)ρの値を用いて、少なくとも2つの光源の反射された光線に基づき、角膜曲率中心(C)を求める;
d)位置Cを使用して、虹彩領域の映像に基づき、角膜縁を3次元で再構成する;
e)角膜縁再構成に基づき、角膜縁境界によって定義される平面に対する法線ベクトル(n)を求める;
f)ベクトルnおよびrの値を用いて、角膜縁再構成に基づき、眼の回転中心(E)を求める。
【0032】
人間の被検者の眼の網膜組織の光干渉断層像データを取得するための装置であって、本発明の方法を実施するために適した装置は、
a)結像光学系と、
b)人間の被検者の頭部分が接触するヘッドサポートであって、人間の被検者の眼に入射するサンプルビームの入射位置を定めるヘッドサポートと、
c)眼の虹彩領域の映像を取得するためのカメラと、
d)人間の被検者がとるべき見通し線の方向を示すターゲット像を、当該人間の被検者に対して表示するための表示部と、
e)結像光学系に対する人間の被検者の眼の現在の相対位置決めを前記映像に基づいて求め、結像光学系に対する人間の被検者の眼の現在の相対位置決めと、記憶されたベースライン相対位置決めと、を比較し、現在の相対位置決めが、記憶されたベースライン相対位置決めと一致しない場合には、ターゲット像を操作し、現在の相対位置決めがベースライン相対位置決めと一致する場合には、像データの取得をトリガするためのプロセッサと
を備えている。
【0033】
有利には、上記装置はベースを備えており、ヘッドサポートはベースに固定されており、結像光学系はベースに対して可動である。
【0034】
有利には上記装置は、ベースに対して結像光学系の位置を3次元で自動調整するための調整機構を備えている。
【0035】
他の有利な実施形態および構成の組み合わせは、以下の詳細な説明と、特許請求の範囲の全体とから明らかである。
【0036】
実施形態を説明するために使用される図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の方法を実施するために構成されたOCT装置の連結図である。
図2】OCT装置の正面図である。
図3】OCT装置の側面図である。
図4】yz平面におけるOCT装置の断面図である。
図5】xz’平面におけるOCT装置の断面図である。
図6】眼の位置および向きを求めるための装置の光学的構成を示す図である。
図7】ミラーを計算により削除することによって得られた仮想シーンを示す図である。
図8】角膜の曲率半径を求めるための光学的構成を示す図である。
図9】眼の回転中心の推定を示す図である。
図10】眼の位置および向きを求めるための幾何学的条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面中、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0039】
図1は、本発明の方法を実施するために構成されたOCT装置の連結図である。図2はOCT装置の正面図であり、図3は、OCT装置を右手側から見た側面図である。図4は、OCT装置を図2のA‐Aにて切断した、yz平面における断面図であり、図5は、OCT装置を図3のB‐Bにて切断した、xz’平面における断面を背面から見た図である。簡素化して見やすくするため、主要な光学ユニットおよび分光計を包囲するハウジングは、図中では省略されている。
【0040】
OCT装置1の主要な構成要素は、ベースプレート10、ベースプレート10の上表面に可動に取り付けられた光学ユニット30、および、光学ユニット30の上方に配置されたヘッドサポート80である。
【0041】
ベースプレート10は方形であり、均一な厚さを有する。そのサイズは約40cm×40cmである。ベースプレート10は、OCT装置1の支持面である下表面11と、光学ユニット30およびヘッドサポート80が取り付けられる上表面12と、を有し、下表面11は、たとえば卓上等の平坦な表面上に載置される。ヘッドサポート80はマスク状であり、頭部の一部を収容し、顔のうち眼の周辺領域に接触するように構成されている。図中、ヘッドサポート80の取り付けは示されていないが、基本的には、光学ユニット30を包囲するハウジングの上端部にヘッドサポート80を取り付けることができる。
【0042】
ベースプレート10の上表面12上に、光学ユニット30の足部31を支持する旋回機構13が取り付けられている。旋回機構13は、水平方向の2つの旋回軸まわりで光学ユニット30を旋回させるためのものであり、両軸はx方向およびy方向において延在し、かつ、両軸ともベースプレート10の下表面11および上表面12に対して平行である。図1図3から分かるように、旋回機構13は、y方向に延在する下部旋回軸14を備えており、この下部旋回軸14は、光学ユニット30により放出されるサンプルビームの方向に相当する当該光学ユニット30のz’軸と、x軸との角度βを調整するためのものである。下部旋回軸14はベースプレート10の上表面12と下部支持板15との間に配置されている。x方向すなわち下部旋回軸14に対して垂直方向に延在する上部旋回軸16が、下部支持板15と上部支持板17との間に配置されている。これは、光学ユニット30のz’軸とy軸との角度αを調整するためのものである。光学ユニット30の足部31は、上部支持板17に固定的に取り付けられている。
【0043】
両旋回軸14,16は、その長手軸まわりに回転可能なシャフトを有し、これらのシャフトは、2つの隣接する要素を連結する。旋回角は、ばねに抗するステップモータにより設定される。
【0044】
光学ユニット30の足部31は、ベースプレート10に対して平行に延在する第1の脚辺31aと、当該第1の脚辺31aに接続されている第2の脚辺31bと、を有する、実質的にL字形であり、第1の脚辺31aと第2の脚辺31bとは約82°の角度αを成しており、上部旋回軸16の位置に依存して、以下説明するようにベース10に対する測定ビームの軸の角度を決定する。第2の脚辺31bの上端部にリニアガイド32が取り付けられている。リニアガイド32は2つのねじ付きバー32a,32bを備えており、これらのねじ付きバー32a,32bは第2の脚辺31bに対して平行に延在し、かつ第2の脚辺31bに相対回動不能に結合されている。ねじ付きバー32a,32bは、光学ユニット30の上部分40に回転可能に取り付けられたねじ付きナットと協働する。第2の脚辺31bの上表面に、ねじ付きスピンドル33aを駆動するモータ33が取り付けられている。このねじ付きスピンドル33aは、光学ユニット30の上部分40に固定的に取り付けられたねじ付きナット41と協働する(図4参照)。足部31に取り付けられたモータ33を使用して、z’軸に対する光学ユニット30の上部分40の相対位置を調整することができる。
【0045】
光学ユニット30の上部分40は、OCT装置1の主要な光学的要素を収容している。約835nm以上の波長を有するビームを生成するレーザ光源42が、上部分40の正面領域において、z’移動のためにモータ33によって駆動されるねじ付きスピンドル33aに対する案内通路およびねじ付きナット41より手前に収容されている。レーザ光源42の出力部には、光ファイバが接続されている。このファイバは光結合器(図示されていない)に接続されており、この光結合器において、入射した光ビームは測定ビームと参照ビームとに分割される。光結合器は、光学ユニット30の上部分40の右側に配置することができる。測定ビームは、別の光ファイバ43に入射する。後者の一部区間はコイル巻きされており、上部分40の側壁に取り付けられたコイルハウジング44内に収容されており、そのコイル軸はyz平面内に位置し、z’軸に対して垂直である。かかる構成により、測定ビームの偏光を制御することができる。光ファイバ43の出力は、コリメータレンズを含むコリメータ45内に入射する。図示の実施形態では、コリメータレンズは単色光用に構成されており、5.1mmの焦点距離を有する。光ファイバ43の端部とコリメータレンズとの間の距離は調整可能である。これにより、視準の調整を行うことができ、とりわけ、検査対象の眼の遠視または近視をそれぞれ容易に補償するため、僅かに過剰または僅かに不足するように視準を選択することができる。
【0046】
視準された光ビーム46は、光学ユニット30の上部分40のV字形部材48の第1の脚辺に配置されたミラー47によって反射される(図5参照)。次に光ビーム46は、V字形部材48の第2の脚辺にある4象限MEMSミラー49に当たる。MEMSミラー49は±5°の走査角を有し、x方向およびy方向において光ビーム46の方向を調整するためのものである。次に光ビーム46は、当該光ビーム46を検査対象の眼99の瞳孔に投射するための、2つのレンズパッケージ51,52を有するテレスコープ50を通過する。この2つのレンズパッケージ51,52はそれぞれ2つのレンズを含む。図示の実施形態では、全てのレンズの直径が30mmとなっており、各レンズの有効焦点距離は100mm(第1のレンズパッケージ51の第1のレンズ、および、第2のレンズパッケージ52の両レンズ)および200mm(第1のレンズパッケージ51の第2のレンズ)である。ダイクロイックミラー53(ロングパス、760nm)を通過した後、集束された光ビーム46は眼99の入射位置にて入射する。
【0047】
上記の実施例では、MEMSミラー49の中心と第1のレンズパッケージ51の第1のレンズとの間の距離は23mmであり、レンズパッケージ51,52間の距離は75mmであり、第2のレンズパッケージ52とダイクロイックミラー53との間の距離は約25mmであり、ダイクロイックミラー53の中心と入射位置との間の距離は約43mmである。テレスコープ50の領域に、アルミニウムから成る板状の遮断部材54が可動に取り付けられており、この遮断部材54は、対応する駆動装置を作動させることにより、光路を遮断するように挿入することができ、また同一の駆動装置によって、光路を開放するように引っ込めることもできる。光路を遮断することにより、較正のための参照測定を行うことができる。
【0048】
集束された光ビーム46の後方散乱した光は、同一の光路を戻って進行する。すなわち、ダイクロイックミラー53を通過し、MEMSミラー49およびミラー47によって反射され、光ファイバ43に戻って入射し、光結合器へ導光されて戻る。
【0049】
上述の光結合器において、参照ビームが別の光ファイバに結合され、この別の光ファイバは別のコリメータ61に接続されている。コリメートされた参照ビーム62は、光学ユニット30の上部分40の右側に配置された、調整可能な参照アームユニット63に入射する。参照アームユニット63は、参照ビーム62に対して平行に延在するリニアガイド64を備えており、このリニアガイド64上にてキャリッジ65が案内され、ガイド64に沿った方向におけるキャリッジ65の位置は、リニアモータによって精確に調整することができる。キャリッジ65には、入射した光を180°偏向させるための2つのプリズム65a,65bが取り付けられている。参照アームユニット63に、第3のプリズム66が固定的に取り付けられている。最後に、参照アームユニット63にはミラー67も、固定的に取り付けられている。入射した参照ビーム62がキャリッジ65の第1のプリズム65aと、参照アームユニット63に固定的に取り付けられた第3のプリズム66と、キャリッジ65の第2のプリズム65bと、によって偏向され、次にミラー67によって反射されて同一の光路を通って戻るように、上述の3つのプリズム65a,65b,66とミラー67とは配置されている。最後に、反射された参照ビームは各光ファイバに戻って入射し、光結合器へ導光されて戻る。参照ビームの経路全長は、リニアガイド64に対するキャリッジ65の位置を調整することによって調整することができる。これにより、頭部の前後の動きとヘッドレストの公差とを補償することができる。とりわけ、参照アームにおいて必要な経路長は約230mmとすることができ、その際には調整範囲は約185〜280mmとなる。
【0050】
光結合器では、反射された参照ビームと測定ビームの後方散乱した光とが再結合されて、別の光ファイバへ入射する。このファイバは、信号を自明の手法で分析するための分光計に接続されている。適した分光計は市場において入手可能であり、ベースにおいて旋回機構13の隣に取り付けられる。
【0051】
光学ユニット30はさらに、上部分40内に収容されたカメラ71と、表示部75と、これに関連する光学部品すなわちレンズパッケージ76およびダイクロイックミラー72と、を備えている。その光学的構成は、図6に概略的に示されている。表示部75上に表示される像は、患者が知覚できるようにレンズパッケージ76によって結像される。この像はダイクロイックミラー72(ショートパス、700nm)内を、実質的に影響を受けずに通過し、ダイクロイックミラー53によって反射されて眼99に入射する。合焦のためには、リニアガイド77に対する表示部75の位置を設定するスピンドルを回転させる調整ねじ78を用いて、表示部75の位置をリニアガイド77に沿って調整することができる。
【0052】
眼99はカメラ71によって撮像される。眼は、ダイクロイックミラー53のフレーム上のそれぞれ異なる位置に配置された2つのLED光源73(赤色、750nm)と、カメラ光学系の開口の周囲に配置された2つのLED光源74(赤色、750nm)と、によって照明することができる。眼99の像はダイクロイックミラー53,72によって反射されて、カメラ71によって受容される。不所望の像成分、とりわけ表示部75に由来し眼99によって反射された像成分をフィルタリングにより除去するため、フィルタをカメラ71の入光部に配置することができる。図6中、OCTは概略的にのみ示されている(符号2)。
【0053】
以下、人間の被検者の眼の網膜組織の光干渉断層像データを取得するための方法の、本発明の一実施例を説明する。
【0054】
以下の計算を行うために有利なのは、眼99から来た光をカメラ71に到達する前に反射させるミラーを除くことである。こうするためには、いかなるミラーも存在せずに、同一の映像を生成する仮想シーンを形成する。かかる仮想シーンでは、眼は右側に、y軸に沿って存在する。図7を参照されたい。眼は最初の2つのLED73によって直接照明されるので、これらのLED73も反射する必要があり、以下の数式に使用する:
【数1】
mirrorはミラー上の1点であり、nmirrorはミラー平面に対する法線である。第2のミラー72を扱うためにも、同様の変換を行う。他方、最後の2つのLED74は眼を直接照明しないが、これらのLED74の光は両ミラーによって反射される。よって仮想シーンでは、これら2つのLED74が眼を直接照明することとなり、これらはそのままにしておくことができる。
【0055】
第一に、カメラを較正しなければならない。具体的には、カメラによって生成された映像中の画素位置を1つの3次元位置に関連付けなければならない、ということである。このことにより、物標(角膜反射、角膜縁の点等)と像面の位置とを関連付けることができる。カメラ較正は、
・焦点距離f(節点と像面との間の距離)、
・径方向および接線方向のひずみ係数、
・3D物標(x,y,z’)の正規化された位置(x=x/y,z’=z’/y)
を測定する。
【0056】
シーンの(0,0,0)位置をカメラの節点として定義した後は、像面に投影された物標の3次元位置は、
(−x/f,−f,−z’/f)
によって与えられる。
【0057】
原則的には、カメラは公知のアルゴリズムや手法によって較正することができる。一例として、周知のオープンソースソフトウェアライブラリ OpenCV が、たとえば小さなチェッカー盤等の、定義されたテストパターンの1つまたは複数の像に基づき、上述の量を求めるための機能を提供している。
【0058】
OCTの光軸とカメラの光軸との間にはシフトが生じ得る。かかるシフトは、カメラに設けられた近赤外線フィルタを除去することにより(および、カメラの光軸とOCT測定ビームとの間の距離を測定することにより)測定することができる。
【0059】
簡素化のため、カメラの節点を、後続のステップについてシーンの(0,0,0)位置として定義する。LEDの3次元位置およびミラーの3次元位置は固定されているので、これらも既知である。
【0060】
時間間隔をおいて連続して行われる複数の取得の開始時に、参照(またはベースライン)像が得られる。かかるベースライン取得において、患者固有の較正を行う。通常、この較正によって得られたデータは、上述の連続して行われる複数の取得全部において使用することができる。すなわち、患者固有の較正は、後続の像取得において行う必要はない。
【0061】
患者固有の較正は、角膜の(1つまたは複数の)曲率半径(ρ)、および、人間の被検者の検査対象の(片方または両方の)眼の回転中心と角膜の曲率中心との距離(r)を求めることを目的としている。
【0062】
上述の2つのステップは一緒に行うことができない。というのも、以下に示すように、一方のステップでは眼を固定しなければならず、他方のステップでは眼が動く必要があるからである。
【0063】
患者固有の較正において角膜の曲率半径を求めるためには、OCTが角膜をトラッキングして眼表面までの距離dの測定結果を送信する間に、映像を記録する。その構成は図8に示されている。角膜が発見された後は、眼は、OCTが角膜信号を失ってしまうほど過度に動いてはならない。
【0064】
十分な数の像が取得されると、角膜の寸法の推定を開始することができる。各像Iに対して距離測定結果dを関連付ける。これらの距離測定結果に基づき、各像Iにおける角膜上の、dが最小である1点(cI0)の座標が分かる。擬似コードで与えられる以下のアルゴリズムを用いて、角膜の曲率半径ρを発見することができる:
【0065】
【数2】
【0066】
角膜の曲率中心Cは、図10に示されている。
【0067】
実用的には、cI0がカメラと角膜の曲率中心との間に位置することを保証すべく、ソフト制約も追加する必要がある。かかる単体法は、最小化のために用いることができるが、より簡単な解法も良好に機能するはずである。
【0068】
次に、眼の回転中心Eを推定するために、患者に対して、頭部を動かさずに眼を周回するようにお願いする。像Iにおける眼の光軸であるCEは、nと同一直線上であると仮定する。よってEは、最小二乗法においてnによって指し示されてCを通過する全ての線が交差する点として定義される(「F. S. Hill Jr. “The pleasures of ‘Perp Dot’products. Ch. II.5 in Graphics Gems IV”(Ed. P. S. Heckbert). San Diego: Academic Press, pp. 138-148, 1994」を参照のこと)。これは、図9に概略的に示されている。眼が動いてしまった場合、アウトライヤが生じることとなる。かかる場合には、このアウトライヤを除去して、2回目に推定プロセスを実行する。
【0069】
角膜の曲率中心Cの位置と眼の回転中心Eの位置との双方が分かると、距離rも分かる。このようにして、患者固有の較正が完了する。
【0070】
全部の各取得プロセスを行っている間、ベースラインおよび後続の取得のいずれにおいても、結像光学系に対する眼の位置(3つのデカルト座標)および結像軸に対する見通し線の向きの双方を、連続的に求める(すなわち、定期的または不定期的に確認する)。上記にて述べた較正目的で使用される手法は、眼の位置および向きをトラッキングするためには適していない。しかし、患者固有の較正中における量は、以下説明するトラッキング手法において使用される。
【0071】
ここで説明する手法では、見通し線の向きは2つの角度のみによって与えられ、ねじれは無視する。というのも、上記にて説明した取得装置を使用する場合に生じる通常のねじれ角は、深刻なAスキャンミスアライメントを導入するものではないからである。以下詳細に説明するように、これらの量は、角膜縁平面に対して垂直な法線ベクトルnと眼の回転中心Eの位置とによって得られる。ここで留意すべき点は、nは視軸(FC軸、ここでFは中心窩を表す)と同一直線上にはなく、むしろ光軸(EC軸、角膜の曲率中心Cと眼の回転中心Eとを結ぶ軸)と同一直線上にあることである。
【0072】
対応する測定は、角膜縁をセグメンテーションすることにより開始する。こうするためには、周知の画像処理アルゴリズムによって瞳孔を検出し、ここで瞳孔は、睫毛の除去後の最も暗い領域として定義される。本当に瞳孔が検出されることを保証するためには、ラジアル像において瞳孔境界をセグメンテーションする。かかる境界は、丸くて鮮鋭であるはずである。さらに、連続する各像間において瞳孔は過度に動いてはならない。瞳孔検出は、サブサンプリングされた像において行われる。
【0073】
次に、瞳孔にセンタリングされたラジアル像であって、サブサンプリングされたラジアル像において、角膜縁を低精度で検出する。虹彩と強膜との間の移行部を強調するため、大きい勾配フィルタを用いる。この時点において、角膜縁の右側と左側とが別個にセグメンテーションされる。その後、これら2つのラジアル方向の各セグメンテーションそれぞれに対し、線を当てはめる。当てはめ誤差が大きい場合には誤差を向上させることにより、新規の映像が得られる。
【0074】
次に、フル分解能像において角膜縁を高精度で検出する。同一の解析を再度行うが、これは、より小さい関心領域内で行われる。さらに今度は、得られた2つのラジアルセグメンテーション、すなわち角膜縁の両側の各セグメンテーションが整合することも検査する。デカルト座標系において、両セグメンテーションの統合したものに楕円形を当てはめる試行を行う。当てはめ誤差が大きい場合には誤差を向上することにより、ここでも新規の映像が得られる。最良当てはめ楕円形から偏差する点は、全て破棄される。
【0075】
次に、角膜の曲率中心(C)の現在位置を求める。上記にて述べた4つの赤色発光LED73,74(図6参照)によって眼を照明する。取得光学系に対する4つの赤色発光LED73,74の位置は、既知である。最初の2つのLED73は、眼を直接(すなわち、ミラー上で反射することなく)照明する。最後の2つのLED74は、眼に到達する前に両ダイクロイックミラー上にて反射される(直接光路は遮断される)。原則的には、トラッキングに必要なLEDは2つだけである。重要なのは、より大きい反射を生じさせるので比較的検出しやすい最初の2つのLEDを用いることである。他のLEDは、最初の2つのLEDのうち一方または双方が見えない場合(たとえば眼が半分閉じている場合)のバックアップ用である。
【0076】
上記にて説明した仮想シーンについては、通常の眼のトラッキング数式のうち一部の数式(「E.D. Guestrin and M. Eizenman.“General theory of remote gaze estimation using the pupil center and corneal reflections.”IEEE Trans Biomed Eng 2006;53(6):1124-33」)を適用することができる。
【0077】
2つの見えるLEDを取り上げ、角膜の曲率中心を推定するために以下の数式を使用する。これらの数式は、上掲のGuestrin/Eizenmanの刊行物を翻案したものである。これらの数式は、多次元(11次元)の求根アルゴリズムを用いて、すなわち、GSLライブラリからの内部スケーリングを用いたハイブリッドアルゴリズムを使用して解かれる。この多次元求根法は、Guestrin/Eizenmanによって提唱された多次元最小化より高信頼性であること(悪い初期化による影響を受けにくいこと)が判明した。ここで留意すべき点は、これらの数式は、角膜の曲率半径(ρ)が既知であることを要することであり、このパラメータは、上記の患者固有較正で得られたものである。
【0078】
以下の数式は、角膜曲率中心の探索に関するものであり、その幾何学的形態は図10に示されている。
【数3】
【0079】
Cは角膜曲率中心を表し、Oはカメラの節点を表し、L・・・Lは光源を表し、R・・・Rは、各対応する角膜反射を表し、I・・・Iは、角膜反射の各対応する像を表す。ここで、4N+3個の未知数、すなわちC(3成分)、R(N×3成分)およびk(N個の値)が存在する。全ての未知数を一義的に定義するためには、方程式は6N個となるので、少なくともN=2個の光源が必要となる。
【0080】
次に、角膜縁を3次元再構成する。
【0081】
角膜曲率中心の位置が既知となったところで、角膜縁を3次元再構成することが可能となる。以下の数式に基づき、上記のようにして得られた2次元の角膜縁セグメンテーションの各画素を、実際の角膜縁上の1つの3次元位置にマッピングすることができる。この再構成は、角膜縁が角膜球上の何処かに存在するという事実を利用する。角膜縁を再構成するために、同一の多次元(本実施例では4次元)の求根アルゴリズムを使用した。
【0082】
以下の方程式は、各角膜縁点の探索に関するものである(4個の方程式、4個の未知数)。
【数4】
ここで、B・・・Bは角膜縁上の点を表し、b・・・bは各角膜縁点の像を表し、ρは角膜曲率半径を表す。
【0083】
角膜縁が3次元再構成されると、次のステップは、「角膜縁平面」に対する法線nを発見するステップである。このステップは、角膜縁3D点群(B,B・・・B)に平面を当てはめることにより行うことができる。こうするためには、以下の行列の3次元特異値分解を実施する:
【数5】
【0084】
最良当てはめ平面に対する法線は、Xの第3固有ベクトルによって、すなわち最小固有値に関連する固有ベクトルによって与えられる。単位ベクトルnはこの法線であると定義されるか、またはその逆であると定義され、乗算記号(1または−1)は、nの方向が角膜曲率中心Cに向かう方向になるように、すなわちn・C>0となるように選択される。
【0085】
最後に、眼の回転中心Eは以下の数式によって推定される:
E=C+rn
【0086】
角膜曲率中心Cと眼の回転中心Eとの間の距離rは、上記の患者固有較正中に既に算出されている。ECおよびnは同一直線上にあるとみなされる点に留意すべきである。このことは通常は合理的ではあるが、常に真であるとは限らない。
【0087】
参照像(またはベースライン像)の取得中に、結像光学系に対する眼の相対位置決めを、撮像装置上に、外部データ媒体上に、または、撮像装置に接続された中央サーバ上に記憶する。さらに像を取得するときには、眼と結像光学系との相対位置決めは同一でなければならない。2つの像を比較すると、1つの特定の相対位置決めに起因する種々の光学的作用を無視することができる。特に像が、対応するアルゴリズムによって自動解析される場合、通常は、相互比較される像が、組織の同一領域の同一の観察面を示すことを要する。このことはたとえば、両観察面が同一の観察角度および同一寸法を有することを含む。原則的にこのことは、取得された像の少なくとも1つを後処理することによって達成することができる。しかし、かかる後処理によってある程度の誤差が導入されてしまい、著しい量の処理能力を要することとなる。本発明では、2つの像が常に同一の観察面を示すことにより、かかる後処理を最小限にするか、または省略することもできる。
【0088】
このことを達成するためには、上述のようにして求められた現在の相対位置および向きを、記憶された相対位置決めと常時比較する。これら2つの間の差が狭幅の範囲内になった場合には直ちに、OCTスキャンの取得がトリガされる。
【0089】
ここで記載した実施形態では、相対位置決めに対する、記憶された相対位置決めに達するまで、光学ユニットをx軸およびy軸まわりで適切に旋回させ、かつ、z’軸に沿って光学ユニットを直線移動させることにより、空間における正確な相対位置決めを求めることができる。記憶されたデータに基づき、ヘッドサポートの位置が装置のベースに対して実質的に固定されているとの事実により、大まかな開始位置を設定することができる。その高精度の位置決めは、記憶された値と眼の回転中心Eの値との比較、および、これに対応する調整に基づく。患者の眼が動いた場合、光学ユニットの位置決めは自動的に再調整される。
【0090】
ここで残るのは相対的向きである。これは、人間の被検者が相応に、自己の見通し線を変化させることにより達成される。人間の被検者に、当該被検者の眼を動かすように仕向けるため、当該人間の被検者がとるべき見通し線の方向を示すターゲット像を、当該人間の被検者に対して表示する。一例として、(単位ベクトルnによって与えられる)向きが、記憶された値に一致しない場合、ターゲット像は、所望の方向を指し示す矢印群とすることができる。値が一致すると直ちに取得をトリガし、それと同時に矢印をたとえば円または十字に、すなわち、特定の方向を標識しない形状に置き換える。
【0091】
本発明は上述の方法に限定されることはなく、本発明の方法は、上述の装置とは異なる装置上で実行することができる。
【0092】
まとめると、本発明は、冒頭に述べた技術分野に属するOCT像データの取得方法およびOCT撮像装置であって、低コストであり、かつ検査対象の眼の高信頼性の位置決めを可能にする取得方法およびOCT撮像装置を実現するものであることに留意すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10