(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記3Dプリンターが、粉末層3Dプリンター、インクジェット3Dプリンター、押出成形3Dプリンター、光重合化3Dプリンター、又はこれらの組み合わせの群から選択される、請求項1に記載の方法。
前記エネルギー源が、紫外線、赤外線、可視光線、X線、γ線、又は電子ビームのうちの少なくとも1つ、あるいは少なくとも紫外線を放出する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用する用語「約(about)」は、機器分析によって測定された数値のわずかな変動、又は試料の取扱いの結果による数値のわずかな変動を、合理的に包含又は記述するためのものである。このようなわずかな変動は、数値の±0%〜10%、±0%〜5%、又は±0%〜1%の程度である。
【0012】
本明細書で使用する用語「実質的に」は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%又は少なくとも約99.999%又はそれ以上といった、大半又はほとんどを指す。
【0013】
本明細書で使用する用語「分枝」は、末端基を2つより多く有するポリマーを示す。
【0014】
本明細書で使用する用語「含む(comprising)」は、その広い意味で、「含む(include)」、及び「〜からなる(consist of)」を包含する。
【0015】
用語「周囲温度」又は「室温」は、約20℃〜約30℃の温度を指す。通常、室温は約20℃〜約25℃である。
【0016】
説明的な例を列挙するための「例えば(for example)」又は「等の(such as)」の使用によって、列挙された例だけに限定するものではない。したがって、「例えば(for example)」又は「等の(such as)」は、「例えば...だが、...に限定されない(for example, but not limited to)」又は「...等の...だが、...に限定されない(such as, but not limited to)」という意味であり、他の同様又は同等の例を包含する。
【0017】
用語「置換された」は、別の基、例えば炭化水素基に関して使用するとき、別途記載のない限り、炭化水素基中の1個以上の水素原子が別の置換基により置き換えられているという意味である。このような置換基の例としては、例えば、塩素、フッ素、臭素、及びヨウ素等のハロゲン原子、クロロメチル基、ペルフルオロブチル基、トリフルオロエチル基、及びノナフルオロヘキシル基等のハロゲン原子含有基、酸素原子、(メタ)アクリレート基及びカルボキシル基等の酸素原子含有基、窒素原子、アミン、アミノ官能基、アミド官能基、及びシアノ官能基等の窒素原子含有基、硫黄原子、並びにメルカプト基等の硫黄原子含有基が挙げられる。
【0018】
本明細書で言及される全ての粘度測定値は、別途記載のない限り25℃で測定された。
【0019】
「オルガノポリシロキサン」は、1分子当たりに複数のオルガノシロキサン基若しくはポリオルガノシロキサン基を含むポリマー又は樹脂である。オルガノポリシロキサンは、ポリマー鎖中にオルガノシロキサン基又はポリオルガノシロキサン基のみを実質的に含有するポリマーを包含することを意図しており、主鎖は、ポリマー鎖中にオルガノシロキサン基及び/又はポリオルガノシロキサン基の両方、並びに有機ポリマー基を含有する。このようなポリマーは、例えば、ブロック共重合体及びランダム共重合体等の同種重合体又は共重合体であってもよい。オルガノポリシロキサンもまた、3次元の架橋ネットワークを有する樹脂を包含することを意図している。
【0020】
開示するのは、3次元(3D)物品を形成する方法(「方法」)である。3D物品は、3D物品に関する様々な態様と共に下記にも記載する、独立して選択された光硬化性シリコーン組成物(「組成物」)から形成される。
【0021】
方法
この方法は、I)第1の光硬化性シリコーン組成物を3Dプリンターによってプリントし、層を形成する工程を含む。下記に詳述するとおり、各種の3Dプリンター及び/又は3Dプリンティングの方法論(すなわち、「3Dプリンティングプロセス」)を、用いることができる。更に下記に記載のとおり、各種の光硬化性シリコーン組成物を本発明の方法に用いることができる。
【0022】
第1の光硬化性シリコーン組成物は、概して層が基材上に形成されるように、基材上にプリントされる。基材は限定されず、任意の基材であってもよい。基材は、典型的には、形成の方法の実施中、3D物品を支持することができる。もっとも、基材自体が剛性でなくてもよいように、例えばテーブル又はベッドによって基材自体が支持されてもよい。基材は剛性又は可撓性であってもよく、少なくとも1つの厚さ及び組成物において不連続性又は連続性であってもよい。基材は、例えば剥離可能で3D物品から基材を取り外せるように、コーティング又は他の被膜を含んでもよい。あるいは、3D物品と基材が合体するように、3D物品を物理的かつ/又は化学的に基材に接着させてもよい。一実施形態において、基材が3D物品と一体化するように、基材は、例えば既に硬化されたシリコーン等のシリコーンを含んでもよい。基材は成形型、又は任意の他の対象物若しくは物品であってもよい。
【0023】
第1の光硬化性シリコーン組成物をプリントすることによって形成される層は、任意の形状及び寸法であってもよい。例えば、層は、従来の層とは異なり、連続性である必要はない。層は、一貫した厚さである必要はない。本方法によって形成される3D物品の所望の形状に応じ、層は任意の形状をとってもよい。
【0024】
本方法は、II)層をエネルギー源によって放射線照射し、少なくとも部分的に硬化された層を形成する工程を更に含む。本明細書で使用する「少なくとも部分的に硬化された」とは、シリコーン組成物、この場合には第1の光硬化性シリコーン組成物の硬化が開始され、例えば構成成分の架橋が始まったという意味である。第1の光硬化性シリコーン組成物は、概して放射線(例えば可視光線、紫外線、赤外線、X線、γ線、又は電子ビーム)の適用によって始まり、これが第1の光硬化性シリコーン組成物の硬化条件となる。当該技術分野において理解されているとおり、第1の光硬化性シリコーン組成物が硬化する速度及び機序は、構成成分自体、構成成分の官能基、硬化条件のパラメータ等の、様々な要因によって左右される。「少なくとも部分的に硬化された」は、硬化条件の適用に際しての、単一の架橋の形成から完全に架橋された状態までの、任意の量の硬化を包含する。一旦放射線照射されると、層は概して硬化し始める。発熱及び/又は熱を加えることによって、層の硬化を加速することができる。
【0025】
層の少なくとも部分的な固化によって、概して硬化していることが示唆されるが、硬化は他の方法で示してもよい。例えば、硬化は粘度の増加、例えば、層の粘性の増大、層の温度上昇、層の透明性/不透明性の変化等によって示されることがある。得られた3D物品は、最終の硬化状態では概して固体であり得るが、3D物品はまた、最終の硬化状態でエラストマー又はゲル状態等の、固体未満の状態でもあり得る。硬化は概して光硬化性シリコーン組成物中の反応性構成成分の架橋によって推進される。
【0026】
特定の実施形態において、少なくとも部分的に硬化された層は、周囲条件に暴露されてもその形状を実質的に保持する。周囲条件は、少なくとも温度、圧力、相対湿度、及び少なくとも部分的に硬化された層の形状又は寸法に影響を及ぼし得る、任意の他の条件を指す。例えば、周囲温度は室温である。
【0027】
「実質的にその形状を保持する」ことにより、少なくとも部分的に硬化された層の大半は、その形状を保持し、例えば、少なくとも部分的に硬化された層は、周囲条件に暴露されても流動又は変形しない。「実質的に」は、少なくとも部分的に硬化された層の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、若しくは少なくとも約99.999%又はより多くの体積が、例えば1分後、5分後、10分後、30分後、1時間後、4時間後、8時間後、12時間後、1日後、1週間後、1ヶ月後等の期間にわたり、同じ形状及び寸法に維持されるという意味であり得る。換言すれば、実質的に形状を維持するとは、周囲条件への暴露に際し、重力が少なくとも部分的に硬化された層の形状に実質的に影響を及ぼさないという意味である。少なくとも部分的に硬化された層の形状もまた、少なくとも部分的に硬化された層がその形状を維持するか否かに対して影響を及ぼす。例えば、少なくとも部分的に硬化された層が長方形であるか、又は別の単純化された形状であるとき、少なくとも部分的に硬化された層は、硬化の度合がより低い場合であっても、より複雑な形状の少なくとも部分的に硬化された層よりも、変形に対し、より抵抗性があり得る。
【0028】
より具体的には、放射線照射に先立ち、第1の光硬化性シリコーン組成物は、概して流動性であり、液体、スラリー、若しくはゲル、あるいは液体若しくはスラリー、あるいは液体の形態であり得る。第1の光硬化性シリコーン組成物の粘度は、3Dプリンターの種類及び3Dプリンターの吐出(dispensing)技術、並びに他の検討要件に応じて調整することができる。粘度の調整は、例えば、第1の光硬化性シリコーン組成物の加熱若しくは冷却、光硬化性シリコーン組成物の1つ以上の構成成分の分子量の調整、溶媒、担体、及び/若しくは希釈剤の添加若しくは除去、充填剤若しくはチキソトロープ剤等の添加等によって実施することができる。
【0029】
この方法は、III)第2の光硬化性シリコーン組成物を少なくとも部分的に硬化された層上に3Dプリンターによってプリントし、後続の層を形成する工程を更に含む。3Dプリンターは工程I)で用いた3Dプリンターと同一であるか、又は異なってもよい。下記に説明するとおり、第2の光硬化性シリコーン組成物は、第1の光硬化性シリコーン組成物と同一であるか、又は異なってもよい。層(又は第1の、前の、若しくは先の層)、後続の層(又は第2の若しくは後の層)、及び、下記に説明するとおり、任意選択的に存在する任意の追加の層(複数可)は、本願明細書において、まとめて「層」と呼ぶ。本明細書において複数形で使用する「層」は、例えば、未硬化の状態、部分的に硬化された状態、最終の硬化した状態等の、本発明の方法の任意の段階における層に関連し得る。本明細書において単数形で使用する用語「層」は、第1の光硬化性シリコーン組成物によってプリントされた第1の層を示す。
【0030】
第1の層と同様に、第2の光硬化性シリコーン組成物をプリントすることによって形成される後続の層は、任意の形状及び寸法であってもよい。例えば、後続の層は、連続性である必要も、一貫した厚さである必要もない。更に、後続の層は、形状、寸法、大きさ等に関して、第1の層と異なる。後続の層は、少なくとも部分的に硬化された層の露出面の一部とのみ接触することができる。例えば、3D物品の所望の形状に応じて、後続の層は、第1の層上に選択的に構築される。
【0031】
特定の実施形態において、後続の層のプリントは、少なくとも部分的に硬化された層が最終の硬化状態に到達する前、すなわち、少なくとも部分的に硬化された層がまだ「未熟(green)」であるうちに実施される。本明細書で使用する「未熟(green)」は、部分的な硬化を包含するが、最終の硬化状態は包含しない。部分的な硬化と最終硬化状態との区別は、部分的に硬化された層は、更に硬化又は架橋を受けられるか否かということである。官能基は、最終硬化状態においても存在し得るが、立体障害又は他の要因のため、未反応のままであり得る。これらの実施形態において、層のプリントは、隣接した層が互いに、少なくとも物理的に結合するか、かつ化学的にも結合し得る、「ウェットオンウェット」であるとみなすことができる。例えば、層のそれぞれの構成成分が、プリントラインを超えて化学的に架橋/硬化することが可能である。プリントラインを超えて伸長する架橋ネットワークを有することには、3D物品の長寿命、持続性、及び外観等に関してある程度の利点があり得る。層はまた、3D物品の支持又は別の機能を提供する、1つ以上の下部構造の周囲に形成される。
【0032】
層は、それぞれが、厚さ及び幅等の、様々な寸法のものであってもよい。層の厚さ及び/又は幅の許容度は、用いられる3Dプリンティングプロセスに左右し、あるプリンティングプロセスは高解像度を有し、その他は低解像度を有する。層の厚さは均一であってもよいか、又は一様でなくてもよく、層の平均厚さは、同一又は異なってもよい。平均厚さは、概してプリント直後の層の厚さに関連する。様々な実施形態において、層は、約1〜10,000、約2〜約1,000、約5〜約750、約10〜約500、約25〜約250、又は約50〜約100μmの平均厚さを独立して有する。より薄い厚さ及びより厚い厚さもまた、企図される。本開示は、いずれかの層の、任意の特定の寸法に限定されない。
【0033】
本方法はまた、IV)後続の層をエネルギー源によって放射線照射し、少なくとも部分的に硬化された後続の層を形成する工程を更に含む。後続の層に放射線照射する工程IV)は、硬化条件及び適用される関連のパラメータに関し、第1の層に放射線照射する工程II)と同一であるか、又は異なってもよい。更に、後続の層に放射線照射する工程IV)は、用いられる放射線の供給源に関し、第1の層に放射線照射する工程II)と同一であるか、又は異なってもよい。
【0034】
工程II)及び/又は工程IV)に独立して用いられるエネルギー源は、電磁スペクトル全域の様々な波長を放出することができる。様々な実施形態において、エネルギー源は、紫外線(UV)、赤外線(IR)、可視光線、X線、γ線、又は電子ビーム(eビーム)のうちの少なくとも1つを放出する。1つ以上のエネルギー源を用いてもよい。
【0035】
特定の実施形態において、エネルギー源は、少なくとも紫外線を放出する。物理学では、紫外線は伝統的に4つの領域、すなわち、近紫外線(400〜300nm)、中間紫外線(300〜200nm)、遠紫外線(200〜100nm)、及び極紫外線(100nm未満)に区分される。生物学では、3つの伝統的な区分、すなわち、近紫外線(400〜315nm)、化学線(315〜200nm)、及び真空紫外線(200nm未満)が遵守されてきた。特定の実施形態において、エネルギー源は、紫外線、あるいは化学線を放出する。用語UVA、UVB、及びUVCもまた、紫外線の異なる波長範囲を説明することで、業界においてよく知られている。
【0036】
ある実施形態において、層(複数可)を硬化させるのに用いられる放射線は、紫外線の範囲外の波長であってもよい。例えば、波長が400nm〜800nmの可視光線を用いることができる。別の例としては、800nmを超える波長の赤外線を用いることができる。
【0037】
他の実施形態において、電子ビームを層(複数可)の硬化に用いることができる。これらの実施形態において、加速電圧は約2E−17〜約2E−14ジュール(約0.1〜約100keV)とすることができ、真空度は約10〜約10
−3Paとすることができ、電子流は約0.0001〜約1アンペア、かつ電力は約0.1ワット〜約1キロワットの範囲とすることができる。線量は、典型的には約100μクーロン/cm
2〜約100クーロン/cm
2、あるいは約1〜約10クーロン/cm
2である。電圧に応じ、暴露の時間は典型的には、約10秒〜1時間であるが、更に短いか又は更に長い暴露時間もまた用いることができる。
【0038】
任意選択的に、工程III)及びIV)を任意の追加の層(複数可)に対して反復し、3D物品を形成することができる。工程III)及びIV)を反復する場合、それぞれの後続の層に関連して独立して選択された光硬化性シリコーン組成物を用いてもよく、この選択された光硬化性シリコーン組成物は、下記に示すとおり、第1及び/又は第2の光硬化性シリコーン組成物と同一又は異なってもよい。必要な層の総数は、例えば、3D物品の大きさ及び形状、並びに個々の層及び全体的な層の寸法によって異なる。当業者であれば、3Dスキャン、レンダリング、モデリング(例えばパラメトリック及び/又はベクトルに基づくモデリング)、彫刻、設計、スライシング、製造及び/又はプリンティングソフトウェア等の従来技術を用い、必要又は所望の層の数を容易に決定することができる。特定の実施形態において、一旦3D物品が最終硬化状態になると、個々の層は概して識別できず、3D物品は連続性の所望の美的特徴を有する。
【0039】
層をウェットオンウェットに適用し、かつ/又は層を部分的にのみ硬化させるとき、工程IV)の放射線照射は、後続でプリントされた層以外の硬化にも影響を及ぼすことができる。上述のように、硬化はプリントラインを超え、又は横断して伸長できるため、並びに様々な層を含む複合体が典型的に硬化条件に暴露されるため、後続の放射線照射の工程に際し、任意の他の部分的に硬化された層もまた、更に、あるいは完全に硬化する場合がある。
【0040】
所望により、本発明の方法中に、様々な形状、寸法を有し、任意の好適なマテリアルからなる挿入物を、任意の層上に又は任意の層中に部分的に、配置又は定置してもよい。例えば、挿入物は後続のプリンティング工程の間で用いられ、3D物品が形成される際に、挿入物は3D物品と一体化する。あるいは、挿入物は、本発明の方法の間の任意の工程において、例えば空洞を残したり、又は他の機能性若しくは美的目的のために、取り除くことができる。このような挿入物の使用により、プリント単独に頼るよりも、より優れた美的特徴及び経済性をもたらす。
【0041】
更に、所望により、層の全て又は一部を含む複合体を最終硬化工程に暴露してもよい。例えば、3D物品を確実に所望の硬化状態とするため、プリント及び層を少なくとも部分的に硬化することによって形成された複合体を、更に放射線照射工程に暴露してもよい。最終硬化工程は、所望により、硬化条件、関連のパラメータ、及び用いられる放射線の供給源に関し、工程II)又はIV)と同一であるか、又は異なってもよい。
【0042】
様々な実施形態において、3Dプリンターは、熱溶解フィラメント製造プリンター(a fused filament fabrication printer)、選択的レーザー焼結プリンター(a selective laser sintering printer)、選択的レーザー溶融プリンター(a selective laser melting printer)、ステレオリソグラフィプリンター、粉末層(バインダージェット)プリンター(a powder−bed(binder jet)printer)、マテリアルジェットプリンター(a material jet printer)、直接金属レーザー焼結プリンター(a direct metal laser sintering printer)、電子ビーム溶融プリンター(an electron beam melting printer)、積層対象物製造積層プリンター(a laminated object manufacturing deposition printer)、指向性エネルギー積層プリンター(a directed energy deposition printer)、レーザー粉末形成プリンター(a laser powder forming printer)、ポリジェットプリンター(a polyjet printer)、インクジェットプリンター(an ink−jetting printer)、マテリアルジェッティングプリンター(a material jetting printer)、及びシリンジ押出成形プリンター(a syringe extrusion printer)から選択される。3Dプリンターは、本発明の方法に関連する各プリンティング工程中に独立して選択してもよい。換言すれば、所望により、各プリンティング工程では、異なる3Dプリンターを用いてもよい。異なる3Dプリンターを用い、層に関して異なる特徴を付与することができ、異なる3Dプリンターが、異なる種類の光硬化性シリコーン組成物に特に好適である場合がある。
【0043】
様々な実施形態において、3Dプリンターは、粉末層3Dプリンター(powder−bed 3D printers)、インクジェット3Dプリンター、押出成形3Dプリンター(extrusion 3D printers)、光重合化3Dプリンター(light−polymerized 3D printers)、又はこれらの組み合わせの群から選択される。例えば、3Dプリンターは、粉末層3Dプリンター及びインクジェット3Dプリンターとすることができる。ある実施形態において、3Dプリンターは、粉末層3Dプリンター、押出成形3Dプリンター、又は光重合化3Dプリンターのうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態において、3Dプリンターは、粉末層3Dプリンター及びインクジェット3Dプリンター、又は押出成形3Dプリンターである。前者のタイプのプリンターは、通常バインダージェッティングプロセスに関連しており、後者のタイプのプリンターは、通常マテリアルの押出成形プロセスに関連する。光重合化3Dプリンターは、本明細書にいくつか記載されている、利用可能なマテリアルプリンティング技術のいずれかを、光硬化性組成物と組み合わせることができる。これらは、組成物の光硬化性挙動を用い、マテリアルの層を積層させる、SLA、すなわちステレオリソグラフィ等の、任意の他の形態とすることができる。
【0044】
本開示は、概してASTM Designation F2792−12a,”Standard Terminology for Additive Manufacturing Technologies,”の全体を、参照により援用する。このASTM規格によると、「3Dプリンター」は「3Dプリンティングのために使用される機械」と定義され、「3Dプリンティング」は「プリントヘッド、ノズル、又は他のプリンター技術を用いてマテリアルを積層させることによる、対象物の製造」と定義される。「アディティブマニファクチャリング」は、「サブトラクティブマニファクチャリング方法論とは対照的に、マテリアルを結合させて3Dモデルデータから対象物を作製するプロセスで、通常は層の上に層を結合させる。3Dプリンティングに関連し、かつ包含される同義語としては、アディティブファブリケーション(additive fabrication)、アディティブプロセス(additive processes)、アディティブテクニック(additive techniques)、アディティブレイヤマニファクチャリング(additive layer manufacturing)、レイヤマニファクチャリング(layer manufacturing)、及びフリーフォームファブリケーション(freeform fabrication)が挙げられる。」と定義される。AMはまた、ラビッドプロトタイピング(rapid prototyping、RP)とも呼ばれる。本明細書で使用する「3Dプリンティング」は、概して「アディティブマニファクチャリング」と互換可能であり、逆もまた同様である。
【0045】
ASTM規格に記載の様々な3Dプリンティングプロセスに関し、「バインダージェッティング」は、「液体接着剤を選択的に積層させて粉末マテリアルを結合させるアクティブマニファクチャリングプロセス」と定義される。「マテリアル押出成形(Material extrusion)」は、「マテリアルを選択的にノズル又は流出口から吐出する、アディティブマニファクチャリングプロセス」と定義される。「マテリアルジェッティング」は、「構築マテリアルの液滴を選択的に積層させる、アディティブマニファクチャリングプロセス」と定義される。「バット重合」は、「バットに入れた液体フォトポリマーを光活性化重合によって選択的に硬化させる、アディティブマニファクチャリングプロセス」と定義される。「ステレオリソグラフィ(Stereolithography、SL)」は、「液体状態のフォトポリマーマテリアルからパーツを作製するために用いられるバット光重合プロセスで、1種以上のレーザーを使用して選択的に所定の厚さまで硬化させ、マテリアルを固化させて層上に層を造形する」と定義される。
【0046】
本開示の方法は、前述の3Dプリンティングプロセスのいずれか1つ、又は当該技術分野において理解される他の3Dプリンティングプロセスを模倣してもよい。好適な3Dプリンティングプロセスの具体例はまた、米国特許第5,204,055号及び同第5,387,380号に記載されており、これらの開示は、参照により援用される。
【0047】
3Dプリンティングは一般に、コンピュータが生成した物理的対象物の製造に用いられる関連技術のホスト、例えばコンピュータ援用設計(computer−aided design、CAD)、データソースと関連している。これらの特定のプロセスのいくつかは、特定の3Dプリンターに関して、上記に含まれる。これらに含まれるのは、ステレオリソグラフィ(stereolithography、SLAはstereolithography apparatusの略)、選択的レーザー焼結(selective laser sintering、SLS)、熱溶解積層法(fused deposition modeling、FDM)、インクジェットに基づくシステム(inkjet−based systems)、及び3次元プリンティング(three dimensional printing、3DP)である。更に、これらのプロセスのいくつか、及びその他については、下記により詳細に説明する。
【0048】
一般に、全ての3Dプリンティングプロセスには、共通の出発点があり、それは、対象物を記述することができるコンピュータ生成データソース又はプログラムである。コンピュータ生成データソース又はプログラムは、実物又は仮想対象物に基づくことができる。例えば、実物は、3Dスキャナーを使用してスキャンすることができ、スキャンデータを、コンピュータ生成データソース又はプログラムの作成に使用することができる。あるいは、コンピュータ生成データソース又はプログラムは、白紙の状態から設計してもよい。
【0049】
コンピュータ生成データソース又はプログラムは、典型的にはスタンダードテセレーションランゲージ(standard tessellation language、STL)形式に変換されるが、他のファイル形式を使用することも、又は追加的に使用することもできる。このファイルは一般に3Dプリンティングソフトウェアに読み込まれ、ソフトウェアは、ファイル及び任意選択的にユーザーの入力を取り込み、数百、数千、又は数百万もの「スライス」に分離する。3Dプリンティングソフトウェアは、典型的には、Gコードの形態とすることができる機械命令を出力し、この命令は3Dプリンターによって読み込まれ、それぞれのスライスを構築する。機械命令は3Dプリンターに転送され、続いて3Dプリンターが、機械命令の形態のこのスライスの情報に基づき、1層ずつ対象物を構築する。これらのスライスの厚さは一様でなくてもよい。
【0050】
本方法で用いられる特定の3Dプリンター及び3Dプリンティングプロセスに関わらず、周囲条件を調節又は制御してもよい。例えば、所望により、プリンティング工程の前、最中、及び/又は後に、基材を加熱し、硬化を促進してもよい。更に、任意のプリンティング工程中に、基材を例えば回転する等して動かしてもよい。典型的には、3Dプリンターは、特定の光硬化性シリコーン組成物をプリントするために、例えばノズル又はプリントヘッド等のディスペンサーを使用する。任意選択的に、特定の光硬化性シリコーン組成物を吐出する前、最中、及び後に、ディスペンサーを加熱してもよい。1つ以上のディスペンサーを、独立して選択された特性を有する各ディスペンサーと共に用いてもよい。本方法は、硬化が各プリンティング工程の後に開始するように、放射線照射環境下で実施してもよい。あるいは、又は追加的に、放射線の供給源は、3Dプリンターに対して静止していても、又は可動性であってもよい。
【0051】
バインダージェッティング
様々な実施形態において、本開示の方法は、従来のバインダージェッティングプロセスを模倣する。バインダージェッティングは「インクジェット粉末プリンティング」又は「ドロップオンパウダー(drop−on−powder)」とも呼ばれ、概して、液体の結合剤を粉末の層の上に噴霧して固化し、横断面とすることによって機能する。本方法では、従来のプロセスとは異なり、液体の結合剤は、本開示の第1及び/又は第2の光硬化性シリコーン組成物(複数可)を含む。
【0052】
プリントは、典型的には自動化されたローラーを用いて開始され、粉末の第1の層を、構築チャンバに関連付けられた構築プラットフォーム上に延展する。粉末は一般的にはピストンから送り込まれ、粉末層が確実に高密度で圧縮され、過剰の粉末は側方に払いのけられる。セラミック粉末、金属粉末、プラスチック粉末等の各種の粉末を使用することができるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、粉末はセラミック粉末である。
【0053】
プリントヘッドは、液体の結合剤を、対象物の横断面に適用する。液体の結合剤は、プリントヘッドによって、選択的に積層させることができる。液体の結合剤は、顔料又は染料(カラープリンティング用)等の1種以上の添加剤、及び/又は粘度、表面張力等を調整するための添加剤(プリントヘッドの仕様に適合するため)を含んでもよい。続いてエネルギー源、例えば紫外線が、プリンティングによって形成された層の上方を通過するか、又はこの層に隣接することができ、層の硬化を開始し、かつ/又は層を更に硬化し、少なくとも部分的に硬化された層を形成する。エネルギー源は、例えば近接/同時放射線照射のため、積層後直ちに追従するようにプリントヘッドに直接装着させてもよく、又は例えば遅延型の放射線照射のため、プリントヘッドから独立していてもよい。
【0054】
続いてプロセスはそれ自体を反復し、構築プラットフォーム上に延展された粉末の次の層へと続く。このプロセスを反復することによって、1回につき1層ずつ、対象物を構築する。粉末の各層は、液体の結合剤により、結合剤が硬化する際に、その前の層に付着する。この種の3Dプリンティングでは、それぞれの水平のスライスが、下方の過剰の粉末マテリアルによって支持されているため、サポート材が必要となることはほとんどない。
【0055】
プリントが終了すると、ゆるい/未結合の粉末が、概して構築チャンバ内で対象物を取り囲み、支持する。完成した対象物から最初に粉末を除去した後、任意の過剰粉末を、圧縮空気を用いて吹き飛ばすことができる。これは典型的には「脱粉末(de−powdering)」と呼ばれ、対象物は典型的には、結合剤の硬化が完了するまでは、まだ「未熟」である。余剰の粉末は、別の対象物の形成に再利用してもよい。
【0056】
粉末マテリアルとバイダーの組み合わせには、異なる組み合わせが利用可能であり、広範なマテリアルの特性が利用可能となる。更に、バインダージェッティングは、一般的に層の境界の区別がより目立たないため、最終用途製品の製造には理想的な選択となる。
【0057】
マテリアル押出成形
様々な実施形態において、本開示の方法は、従来のマテリアル押出成形プロセスを模倣する。マテリアル押出成形は、マテリアルをノズルを通して押出し、対象物の1つの横断面をプリントすることによって機能し、これを各後続の層に対して反復してもよい。本方法では、従来のプロセスとは異なり、マテリアルは、本開示の第1及び/又は第2の光硬化性シリコーン組成物(複数可)を含む。ノズルを加熱し、特定の光硬化性シリコーン組成物の吐出を促進してもよい。更に、続いてエネルギー源、例えば紫外線が、プリンティングによって形成された層の上方を通過するか、又はこの層に隣接してもよく、層の硬化を開始し、かつ/又は層を更に硬化し、少なくとも部分的に硬化された層を形成する。エネルギー源は、例えば近接/同時放射線照射のため、積層後直ちに追従するようにノズルに直接装着させてもよく、又は例えば遅延型の放射線照射のため、ノズルから離れていてもよい。
【0058】
このプロセスによって、マテリアル、すなわち、第1及び/又は第2の光硬化性シリコーン組成物(複数可)は、押出の間、典型的にはスラリー、ゲル、又はペーストの形態である。押出されたマテリアルは、マテリアルの硬化中に、マテリアルの下方の層に結合する。このプロセスを反復することによって、対象物に1回につき1つの層を積層させ、最終的に3D物品を形成する。ある実施形態において、より薄い横断面を用いることにより、3D物品に関して美的かつ/又は特性的な利点がもたらされる。
【0059】
ノズル及び/又は構築プラットフォームは、概してX−Y(水平)平面方向に移動し、次いで、一旦各層が完成すると、Z軸(垂直)平面方向に移動する。このように、3D物品となる対象物は、1回につき1層ずつ、底部から上方へと形成される。本プロセスでは、マテリアルを2つの異なる目的、すなわち、対象物の構築と、マテリアルを押出して消失するのを防止するために突出部を支持する目的で使用することができる。
【0060】
対象物がサポート材又はラフトを使用してプリントされた場合、プリンティングプロセス完了後に、サポート材又はラフトは典型的には取り除かれ、完成した対象物が残される。任意選択的に、後処理工程によって、低解像度でプリントされた対象物でさえも、その表面品質をはるかに向上させることができる。研磨は、視覚的に目立つ層をモデルから低減又は除去するための通常の方法である。
【0061】
マテリアルジェッティング
様々な実施形態において、本開示の方法は、従来のマテリアルジェッティングプロセスを模倣する。マテリアルジェッティングは、従来のペーパープリンター、例えばインクジェットプリンターに類似していることが多い。マテリアルジェッティングにおいて、プリントヘッドはプリント領域を動き回り、特定の光硬化性シリコーン組成物を噴出する。光硬化性シリコーン組成物が構築領域に噴出された後に、プリントヘッドを囲むエネルギー源、例えば紫外線が光硬化性シリコーン組成物の上方を通過するか、又は光硬化性シリコーン組成物に隣接して光硬化性シリコーン組成物を硬化し、適所に固化する。このプロセスを反復することによって、1回につき1層ずつ、対象物を構築する。本方法では、従来のプロセスとは異なり、光硬化性マテリアルは、第1及び/又は第2の光硬化性シリコーン組成物(複数可)を含む。
【0062】
ステレオリソグラフィ
様々な実施形態において、本開示の方法は、従来のステレオリソグラフィプロセスを模倣する。様々な実施形態において、可動テーブル、すなわち昇降機を、まず液体フォトポリマー樹脂で満たしたバットの表面のすぐ下の位置に置く。本方法では、従来のプロセスとは異なり、液体フォトポリマー樹脂は、第1及び/又は第2の光硬化性シリコーン組成物(複数可)を含む。
【0063】
レーザービームを液体フォトポリマー樹脂の表面の上方で移動させ、対象物の横断面の形状をトレースする。これによって、樹脂のレーザーが当たった領域を硬化/固化させる。レーザービームは、スキャナーシステムにより、概してX−Y(水平)平面方向に移動する。これらは、レーザービームを表面上に「ペイントする」ミラーを駆動する、典型的には非常に速く、高度に制御可能なモーターである。これらのモーターは、概してコンピュータ生成データソース又は作製される対象物の横断面を記述したデータからの情報によって誘導される。
【0064】
層を完全にトレースし、実質的にほとんどの部分をレーザービームによって硬化した後、テーブルを1つの層の厚さと同じ長さだけ、バット中に引き下げる。しかしながら、樹脂は典型的にはかなり粘性が高い。この塗り重ねのプロセスを速めるため、初期のステレオリソグラフィシステムは、表面上でナイフの刃を引き、表面を滑らかにした。ポンプ駆動の塗り重ねシステムは、より高速かつより信頼性の高い操作として、今日ではより一般的である。対象物が完全に作製され、バット内のテーブル上に定置するまで、トレース及び塗り重ね工程を反復する。デザインプロセス中にサポート構造体を手動で追加してもよいが、通常はシステムのソフトウェアによって、自動的に追加される。
【0065】
作製プロセスが完了した後、対象物をバットから引き上げ、廃液にできる。過剰の樹脂は、洗い流すことができる。任意選択的に、対象物をポストキューリングアッパレータス(post−curing apparatus、PCA)と呼ばれるオーブンに似た箱の中の強い光の中に暴露することにより、最終硬化を施すことが多い。最終硬化後、典型的にはサポート構造体を除去し、表面を研磨するか、表面仕上げを施す。
【0066】
ステレオリソグラフィに関連するプロセスは、デジタル光処理(digital light processing、DLP)である。DLPは当該技術分野において理解され、本開示の本方法では、第1及び/又は第2の光硬化性シリコーン組成物(複数可)を従来の樹脂の代わりに使用して、DLPを模倣することができる。
【0067】
後処理オプション
任意選択的に、得られた対象物に、更なる放射線照射、浸潤、焼き出し、及び/又は焼成等の、別の後処理工程を施してもよい。これは、例えば、任意の結合剤の硬化の促進、3D物品の強化、任意の硬化/硬化した結合剤の除去(例えば分解による)、コアマテリアルの強化(例えば焼結/溶融による)、及び/又は複合体マテリアルの形成による粉末及び結合剤の特性の融合を目的として行う場合がある。これらの工程のいくつかは、バインダージェッティングプロセスに特に有用であり、当業者によって理解される。
【0068】
様々な実施形態において、本方法は、少なくとも部分的に硬化された層を含む複合体を加熱する工程を更に含む。加熱は、硬化を促進するために用いることができる。様々な実施形態において、本方法は、少なくとも部分的に硬化された層を含む複合体に更に放射線照射する工程を更に含む。更なる放射線照射は、硬化を促進するために用いることができる。様々な実施形態において、本方法は、光硬化性シリコーン組成物の反応生成物中に分散されたセラミック粉末を含む複合体を焼成する工程を更に含む。焼成は、当技術分野において理解される様々な温度及び様々な時間で実施することができる。
【0069】
組成物
第1及び第2の光硬化性シリコーン組成物は、互いに同一であっても、又は異なってもよく、工程III)及びIV)を反復する際、独立して選択された光硬化性シリコーン組成物を用いてもよい。簡略化のため、第1及び第2の光硬化性シリコーン組成物は、工程III)及びIV)を反復する際に任意選択的に用いられる任意の他の光硬化性シリコーン組成物と共に、下記においてまとめて単に「光硬化性シリコーン組成物」、「光硬化性シリコーン組成物のそれぞれ」、「少なくとも1つの光硬化性シリコーン組成物」、又は簡潔に、「組成物」若しくは「組成物(複数)」と呼ぶ。このような用語又は表現の言及により、本方法で用いられる光硬化性シリコーン組成物のいずれかを言及することができ、まとめて言及されてはいるものの、光硬化性シリコーン組成物のそれぞれを独立して選択することができる。
【0070】
様々な光硬化性シリコーン組成物について、下記に記載する。第1及び第2の光硬化性シリコーン組成物は、工程III)及びIV)を任意選択的に反復する際に追加の層を形成するために用いられる任意の独立して選択された光硬化性シリコーン組成物と共に、硬化条件、すなわち放射線の存在下で硬化する任意のシリコーン組成物とすることができる。本発明の方法に好適な光硬化性シリコーン組成物の具体例を、下記に開示する。様々な実施形態において、光硬化性シリコーン組成物のそれぞれが、下記に記載したものから選択される。
【0071】
ある実施形態において、光硬化性シリコーン組成物のそれぞれが、ヒドロシリル化硬化性又は付加硬化性シリコーン組成物から独立して選択される。追加の独立して選択された光硬化性シリコーン組成物が本方法で用いられる場合、このような光硬化性シリコーン組成物は、典型的には、上述のものから独立して選択される。特に、第1及び第2の光硬化性シリコーン組成物は、硬化条件、すなわち放射線を適用する際、同一の硬化機序を有してもよいが、更に互いに独立して選択されてもよい。例えば、光硬化性シリコーン組成物は、例えば構成成分、相対量等が、互いに異なってもよい。
【0072】
ある実施形態において、光硬化性シリコーン組成物は、互いに同一である。他の実施形態において、光硬化性シリコーン組成物は、互いに異なっている。
【0073】
ある実施形態において、本方法で用いられる光硬化性シリコーン組成物のそれぞれは、硬化条件、すなわち放射線の適用に際し、同一の硬化機序によって硬化する。これらの実施形態では、硬化条件、すなわち放射線の適用に際して同一の硬化機序を有することを考慮すると、光硬化性シリコーン組成物中のそれぞれの構成成分が互いに容易に反応するため、所望により、プリントの境界を越えて硬化することも容易に可能となる。これらの実施形態において、光硬化性シリコーン組成物のそれぞれは更に、硬化機序が光硬化性シリコーン組成物のそれぞれにおいて同一であっても、用いられる実際の構成成分及びそれらの相対量に関して互いに異なってもよい。
【0074】
ある実施形態において、それぞれの層における光活性化硬化機序は異なる。例えば、1つの層ではヒドロシリル化反応が硬化機序であるのに対し、別の層ではチオールエン反応が硬化機序である。
【0075】
様々な実施形態において、光硬化性シリコーン組成物のうちの少なくとも1つが、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を含む。これらの実施形態において、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基又はケイ素結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、(B)オルガノポリシロキサン(A)中のケイ素結合エチレン性不飽和基又はケイ素結合水素原子と反応することができる、ケイ素結合水素原子又はケイ素結合エチレン性不飽和基を1分子当たり平均して少なくとも2つ有する有機ケイ素化合物と、成分(C)は、光活性化ヒドロシリル化触媒と、を含む。オルガノポリシロキサン(A)がケイ素結合エチレン性不飽和基を含むとき、有機ケイ素化合物(B)は1分子当たり少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含み、オルガノポリシロキサン(A)がケイ素結合水素原子を含むとき、有機ケイ素化合物(B)は1分子当たり少なくとも2個のケイ素結合エチレン性不飽和基を含む。典型的には、ケイ素結合エチレン性不飽和基はアルケニル基、例えばビニル基である。有機ケイ素化合物(B)は、クロスリンカー(cross−linker)又は架橋剤(cross−linking agent)と呼ばれる場合がある。
【0076】
オルガノポリシロキサン(A)及び有機ケイ素化合物(B)は、独立して直鎖、分枝鎖、環状又は樹脂性であってもよい。特に、オルガノポリシロキサン(A)及び有機ケイ素化合物(B)は、M単位、D単位、T単位、及びQ単位の任意の組み合わせを含んでもよい。記号M、D、T、及びQは、オルガノポリシロキサンの構造単位の官能基を表す。Mは、1官能性単位R
03SiO
1/2を表す。Dは、2官能性単位R
02SiO
2/2を表す。Tは、3官能性単位R
0SiO
3/2を表す。Qは、4官能性単位SiO
4/2を表す。これらの単位の一般的構造式を下記に示す。
【0079】
これらの構造/式において、R
0は任意の炭化水素基、芳香族基、脂肪族基、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基とすることができる。
【0080】
特定のオルガノポリシロキサン(A)及び有機ケイ素化合物(B)は、本発明の方法中の3D物品及び層の所望の特性に基づいて選択することができる。例えば、層はエラストマー、ゲル、樹脂等の形態が望ましく、光硬化性シリコーン組成物の構成成分を選択することにより、当業者は様々な望ましい特性を確保することができる。
【0081】
例えば、ある実施形態において、オルガノポリシロキサン(A)及び有機ケイ素化合物(B)のうちの1つは、典型的にはT単位及び/又はQ単位を、M単位及び/又はD単位と組み合わせて含む、シリコーン樹脂を含む。オルガノポリシロキサン(A)及び/又は有機ケイ素化合物(B)がシリコーン樹脂を含むとき、シリコーン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂とすることができる。概して、ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が樹脂を含むとき、層(複数可)及び得られる3D物品は、剛性が上がる。
【0082】
あるいは、他の実施形態において、オルガノポリシロキサン(A)及び/又は有機ケイ素化合物(B)は、繰り返しD単位を含むオルガノポリシロキサンである。このようなオルガノポリシロキサンは実質的に直鎖であるが、T単位及び/又はQ単位に起因する若干の分枝を含むことがある。あるいは、このようなオルガノポリシロキサンは直鎖である。これらの実施形態において、層(複数可)及び得られる3D物品は、エラストマーである。
【0083】
オルガノポリシロキサン(A)及び有機ケイ素化合物(B)のケイ素結合エチレン性不飽和基及びケイ素結合水素原子は、それぞれ、独立してペンダント、末端、又は両方の位置に存在し得る。
【0084】
特定の実施形態において、オルガノポリシロキサン(A)は、一般式:
(R
1R
22SiO
1/2)
w(R
22SiO
2/2)
x(R
2SiO
3/2)y(SiO
4/2)
z (I)
(式中、各R
1は独立して選択されるヒドロカルビル基で、置換又は非置換であってもよく、各R
2はR
1及びエチレン性不飽和基から独立して選択され、ただし、R
2のうち少なくとも2つはエチレン性不飽和基であり、かつw、x、y、及びzは、w+x+y+z=1となるモル分率である)を有する。当該技術分野において理解されるとおり、直鎖オルガノポリシロキサンでは、下付き文字y及びzは一般に0であり、樹脂では、下付き文字y及び/又はz>0。w、x、y、及びzに関し、様々な代替実施形態について下記に記載する。これらの実施形態において、下付き文字wは、0〜0.9999、あるいは0〜0.999、あるいは0〜0.99、あるいは0〜0.9、あるいは0.9〜0.999、あるいは0.9〜0.999、あるいは0.8〜0.99、あるいは0.6〜0.99の値であり得る。下付き文字xは、典型的には0〜0.9、あるいは0〜0.45、あるいは0〜0.25の値である。下付き文字yは、典型的には0〜0.99、あるいは0.25〜0.8、あるいは0.5〜0.8の値である。下付き文字zは、典型的には0〜0.99、あるいは0〜0.85、あるいは0.85〜0.95、あるいは0.6〜0.85、あるいは0.4〜0.65、あるいは0.2〜0.5、あるいは0.1〜0.45、あるいは0〜0.25、あるいは0〜0.15の値である。
【0085】
ある実施形態において、各R
1はC
1〜C
10ヒドロカルビル基であり、置換又は非置換であってもよく、ヒドロカルビル基内に酸素、窒素、硫黄等のへテロ原子を含んでもよい。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環状ヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分枝構造又は非分枝構造を有することができる。R
1で表されるヒドロカルビル基の例としては、これらに限定されるものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びメチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基及びナフチル基等のアリール基、トリル基及びキシリル基等のアルカリール基、並びにベンジル基及びフェネチル基等のアラルキル基が挙げられる。R
1で表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例としては、これらに限定されるものではないが、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、及び2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基が挙げられる。
【0086】
R
2で表されるエチレン性不飽和基はオルガノポリシロキサン(A)内で同一又は異なってもよく、典型的には2〜10個の炭素原子、あるいは2〜6個の炭素原子を有し、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、及びオクテニル基等のアルケニル基によって例示される。
【0087】
これらの実施形態において、有機ケイ素化合物(B)は、オルガノハイドロジェンシラン オルガノポリシロキサン オルガノハイドロジェンシロキサン、又はこれらの組み合わせとして更に定義することができる。有機ケイ素化合物(B)の構造は、直鎖、分枝鎖、環状、又は樹脂性とすることができる。非環式ポリシラン及びポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は、末端、ペンダント、又は末端及びペンダントの両方の位置に位置することができる。シクロシラン及びシクロシロキサンは、典型的には、3〜12個のケイ素原子、あるいは3〜10個のケイ素原子、あるいは3〜4個のケイ素原子を有する。オルガノハイドロジェンシランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、又はポリシランとすることができる。
【0088】
光硬化性シリコーン組成物は、放射線照射に暴露するとき硬化する、任意のシリコーン組成物とすることができる。エネルギー源について上記で紹介したとおり、放射線は、紫外線、X線、γ線、電子ビーム、可視光線、赤外線等の、任意の種類の電磁放射線とすることができる。当該技術分野において理解されるとおり、これらの種類の電磁放射線は、少なくとも波長については一様でない。ある実施形態において、組成物は、少なくとも0.001mJ/cm
2の線量、あるいは0.01〜2,000mJ/cm
2、0.1〜1,000mJ/cm
2、1〜1,000mJ/cm
2、又は10〜500mJ/cm
2の線量で放射線を放出することができるランプからの放射線照射に際し、硬化することができる。
【0089】
組成物の第1の実施形態において、組成物はオルガノシロキサンを含む。オルガノシロキサンは、概して1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合放射線感受性基を含む。本明細書で使用する用語「放射線感受性基」とは、放射線照射に暴露するとき、任意選択的に光開始剤存在下で、反応性種、例えばフリーラジカル又はカチオンを形成する基という意味である。放射線感受性基は、組成物のオルガノシロキサンの単一分子内において又は異なる分子の間で、同一又は異なってもよい。
【0090】
第1の実施形態において、組成物は、オルガノシロキサンに対して反応性のある化合物、例えば、ケイ素結合放射線感受性基に対して反応性のある官能性を任意選択的に有する別のオルガノシロキサン等の有機ケイ素化合物を更に含んでもよい。あるいは、ケイ素結合放射線感受性基は、自己反応性であってもよい。これらの実施形態において、隣接した分子のケイ素結合放射線感受性基は、放射線照射に暴露するとき反応及び架橋することができる。
【0091】
第1の実施形態において、組成物は、当該技術分野において既知の、放射線照射による硬化を触媒するための光開始剤を更に含んでもよい。光開始剤は、例えば、組成物の他の構成成分によって、フリーラジカル又はカチオン性光開始剤とすることができる。
【0092】
第1の実施形態において、組成物は、オルガノシロキサン以外の反応性化合物、例えば、多官能性アクリル酸等のアクリル酸化合物を更に含んでもよい。
【0093】
第1の実施形態において、組成物は担体媒体若しくは溶媒を含むことができ、又は反応性希釈剤、例えば低分子量反応性構成成分を含んでもよい。
【0094】
第1の実施形態において、組成物は充填剤を含んでもよく、充填剤は有機又は無機であってもよく、様々な形状及び大きさであってもよい。充填剤はまた、有機粒状充填剤又は無機粒状充填剤とも呼ばれることがある。
【0095】
放射線感受性基の具体例としては、これらに限定されるものではないが、アクリロイルオキシアルキル基、置換アクリロイルオキシアルキル基、アルケニルエーテル基、アルケニル基、アクリレート官能基、エポキシ官能基、アルキニル基、チオール置換有機基、水素化ケイ素基、及びエポキシ置換有機基が挙げられる。下記に更に記載する様々な実施形態において、組成物は、アクリレート官能基又はエポキシ官能基を含まない。
【0096】
好適なアクリロイルオキシアルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、アクリロイルオキシメチル基、2−アクリロイルオキシエチル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、及び4−アクリロイルオキシブチル基が挙げられる。好適な置換アクリロイルオキシアルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、メタクリロイルオキシメチル基、2−メタクリロイルオキシエチル基、及び3−メタクリロイルオキシプロピル基が挙げられる。
【0097】
好適なアルケニルエーテル基の例としては、これらに限定されるものではないが、式及び−O−R−O−CH=CH
2(式中、RはC
1〜C
10ヒドロカルビレン基又はC
1〜C
10ハロゲン置換ヒドロカルビレン基である)を有するビニルエーテル基が挙げられる。
【0098】
Rで表わされるヒドロカルビレン基は、典型的には、1〜10個の炭素原子、あるいは1〜6個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子を有する。ヒドロカルビレン基の例としては、これらに限定されるものではないが、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ペンタン−1,5,−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、及びデカン−1,10−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のシクロアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基が挙げられる。ハロゲン置換ヒドロカルビレン基の例としては、これらに限定されるものではないが、−CH
2CH
2CF
2CF
2CH
2CH
2−のように、1つ以上の水素原子がフッ素、塩素、及び臭素等のハロゲンによって置換された、2価の炭化水素基が挙げられる。
【0099】
好適なエチレン性不飽和基の具体例としては、2〜10個の炭素原子、あるいは2〜6個の炭素原子を有するものが挙げられる。これらのエチレン性不飽和基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、及びオクテニル基等のアルケニル基によって例示される。特定の実施形態において、アルケニル基はビニル基又はアリル基、あるいはビニル基である。
【0100】
「チオール置換有機基」は、概してチオール基を反応性部位とする1価の有機基である。例としては、これらに限定されるものではないが、チオールプロピル基、チオールブチル基、チオシクロブチル基、及びチオペンチル基が挙げられる。
【0101】
用語「エポキシ置換有機基」は、概してエポキシ置換基である酸素原子が炭素鎖又は環系の2個の隣接する炭素原子に直接結合される、1価の有機基である。エポキシ置換有機基の例としては、これらに限定されるものではないが、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、2−(3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシル)−2−メチルエチル基、2−(2,3−エポキシシクロペンチル)エチル基、及び3−(2,3−エポキシシクロペンチル)プロピル基が挙げられる。
【0102】
上記で紹介したとおり、オルガノシロキサンは、典型的には、1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合放射線感受性基を含有する。概して、オルガノシロキサン中の少なくとも1、あるいは少なくとも10、あるいは少なくとも20モル%のケイ素結合基が、放射線感受性基である。用語「オルガノシロキサン中のケイ素結合基のモル%が放射線感受性基である」は、オルガノシロキサン中のケイ素結合放射線感受性基のモル数の、オルガノシロキサン中のケイ素結合基の総モル数に対する比を100倍したものとして定義される。
【0103】
好適なオルガノシロキサンの具体例としては、下記の式:
(MeSiO
3/2)
0.25(CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.75、(MeSiO
3/2)
0.5(CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.5、
(MeSiO
3/2)
0.67(CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.33、
(PhSiO
3/2)
0.25(CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.75、(PhSiO
3/2)
0.5(CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.5、
(PhSiO
3/2)
0.67(CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.33、
(MeSiO
3/2)
0.25(CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.72(Me
3SiO
1/2)
0.03、(MeSiO
3/2)
0.5(CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.47(Me
3SiO
1/2)
0.03、
(MeSiO
3/2)
0.67(CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.30(Me
3SiO
1/2)
0.03、
(MeSiO
3/2)
0.67(CH
2=CHCOO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.33、
(PhSiO
3/2)
0.67(CH
2=CHCOO(CH
2)
3SiO
3/2)
0.33、
【0113】
(MeSiO
3/2)
0.485(HSiO
3/2)
0.485(ViSiO
3/2)
0.3、
(Me
3SiO
1/2)
5(HSCH
2CH
2CH
2Me
2SiO)
35(Me
2SiO)
60、及び、
(HS(CH
2)
4Me
2SiO
1/2)
15(Me
2SiO)
85、
(式中、Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、Viはビニル基であり、丸括弧の外側の下付き数字はモル分率又は総シロキシ単位を表す)を有するものが挙げられる。また、前述の式中では、特定のオルガノシロキサン中の単位の順序は特定されていない。いくつかの実施形態において、シリコーン結合放射線感受性基を有するオルガノシロキサンは,アクリレート基又はエポキシ基を含有しない。
【0114】
ケイ素結合放射線感受性基を有するオルガノシロキサンの調製方法は、当該技術分野において理解される。例えば、ケイ素結合アクリロイルオキシアルキル基又は置換アクリロイルオキシアルキル基は、米国特許第5,738,976号及び同第5,959,038号に例示されているように、アクリロイルオキシアルキル−又は置換−アクリロイルオキシアルキルアルコキシシランと、アルコキシシランとを、酸性又は塩基性触媒の存在下で共加水分解することによって調製することができる。あるいは、このようなオルガノシロキサンは、米国特許第4,568,566号に説明されているように、アクリロイルオキシアルキル−又は置換−アクリロイルオキシアルキルクロロシランと、少なくとも1つのクロロシランとを共加水分解することによって、製造することができる。
【0115】
組成物のいずれかは、任意選択的かつ独立して追加成分又は構成成分(「添加剤」)を、特に、これらの成分又は構成成分が組成物のオルガノシロキサンの硬化を妨害しない場合に、更に含む。追加成分の例としては、これらに限定されるものではないが、接着促進剤、染料、顔料、抗酸化剤、担体媒体、熱安定剤、難燃剤、チキソトロープ剤、流動制御剤、阻害剤、増量充填剤及び補強充填剤を含む充填剤、並びに架橋剤が挙げられる。様々な実施形態において、組成物は、セラミック粉末を更に含む。セラミック粉末の量は一様でない場合があり、用いられる3Dプリンティングプロセスによって異なる場合がある。
【0116】
添加剤のうちの1つ以上が、組成物の任意の好適な重量%、例えば、組成物の約0.1重量%〜約15重量%、約0.5重量%〜約5重量%、又は約0.1重量%以下、約1重量%、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は約15重量%以上で存在することができる。
【0117】
上記で紹介したとおり、組成物は、光開始剤を更に含んでもよく、光開始剤は、オルガノシロキサンの放射線感受性基に応じ、カチオン性フリーラジカル光開始剤、又はキレート金属化合物であってもよい。例えば、オルガノシロキサンがケイ素結合アルケニルエーテル基又はエポキシ置換有機基を含むとき、組成物は、少なくとも1つのカチオン性光開始剤を更に含むことができる。カチオン性光開始剤は、放射線照射に暴露するとき、オルガノシロキサンの硬化(架橋)を開始することができる、任意の光開始剤とすることができる。カチオン性光開始剤の例としては、これらに限定されるものではないが、オニウム塩、スルホン酸のジアリールヨードニウム塩、スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ボロン酸のジアリールヨードニウム塩、及びボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。
【0118】
光開始剤は、組成物の任意の好適な重量%、例えば、組成物の約0.1重量%〜約15重量%、約0.5重量%〜約5重量%、又は約0.1重量%以下、約1重量%、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は約15重量%以上で存在することができる。
【0119】
好適なオニウム塩は、R
*2I
+MX
z−、R
*3S
+MX
z−、R
*3Se
+MX
z−、R
*4P
+MX
z−、及びR
*4N
+MX
z−(式中、各R
*は独立して1〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、Mは遷移金属、希土類金属、ランタニド金属、メタロイド、リン、及び硫黄から選択される元素であり、Xはハロ(例えばクロロ、ブロモ、ヨード)であり、かつzは、積(Xの電荷z倍)+Mの酸化数=−1となるような値を有する)から選択される式を有する塩を含む。炭化水素基の置換基の例としては、これらに限定されるものではないが、C
1〜C
8アルコキシ基、C
1〜C
16アルキル基、ニトロ基、クロロ、ブロモ、シアノ基、カルボキシル基、メルカプト基、並びに、ピリジル基、チオフェニル基、及びピラニル基等の複素環式芳香族基が挙げられる。Mで表される金属の例としては、これらに限定されるものではないが、Fe、Ti、Zr、Sc、V、Cr、及びMn等の遷移金属、Pr、及びNd等のランタニド金属、Cs、Sb、Sn、Bi、Al、Ga、及びIn等の他の金属、B、及びAs等のメタロイドが挙げられる。式MX
z−は、非塩基性非求核性アニオンを表す。式MX
z−を有するアニオンの例としては、これらに限定されるものではないが、BF
4−、PF
6−、AsF
6−、SbF
6−、SbCl
6−、及びSnCl
6−が挙げられる。
【0120】
オニウム塩の例としては、これらに限定されるものではないが、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びジアルキルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のビスジアリールヨードニウム塩が挙げられる。
【0121】
スルホン酸のジアリールヨードニウム塩の例としては、これらに限定されるものではないが、ペルフルオロブタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ペルフルオロエタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、及びトリフルオロメタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩等のペルフルオロアルキルスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、並びにパラ−トルエンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、及び3−ニトロベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩等のアリールスルホン酸のジアリールヨードニウム塩が挙げられる。
【0122】
スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩の例としては、これらに限定されるものではないが、ペルフルオロブタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ペルフルオロエタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、及びトリフルオロメタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩等のペルフルオロアルキルスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、並びにパラ−トルエンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、及び3−ニトロベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩等のアリールスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。
【0123】
ボロン酸のジアリールヨードニウム塩の例としては、これらに限定されるものではないが、ペルハロアリールボロン酸のジアリールヨードニウム塩が挙げられる。ボロン酸のトリアリールスルホニウム塩の例としては、これらに限定されるものではないが、ペルハロアリールボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。ボロン酸のジアリールヨードニウム塩及びボロン酸のトリアリールスルホニウム塩は、欧州特許出願第0562922号に例示されているように、当該技術分野において理解される。
【0124】
カチオン性光開始剤は、単一のカチオン性光開始剤、又はそれぞれ上記のような2種以上の異なるカチオン性光開始剤を含む混合物とすることができる。カチオン性光開始剤の濃度は、組成物のオルガノシロキサンの重量を基準として、典型的には0.01〜20重量%、あるいは0.1〜20重量%、あるいは0.1〜5重量%である。
【0125】
オルガノシロキサンがアクリロイルオキシアルキル基、置換アクリロイルオキシアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はチオール置換有機基を含有するとき、組成物は、少なくとも1種のフリーラジカル光開始剤を更に含むことができる。フリーラジカル光開始剤は、放射線照射に暴露するとき、オルガノシロキサンの硬化(架橋)を開始することができる、任意のフリーラジカル光開始剤とすることができる。
【0126】
フリーラジカル光開始剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ベンゾフェノン;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;ハロゲン化ベンゾフェノン;アセトフェノン;α−ヒドロキシアセトフェノン;ジクロロアセトフェノン及びトリクロロアセトフェノン等のクロロアセトフェノン;2,2−ジエトキシアセトフェノン等のジアルコキシアセトフェノン;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン;2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリニオプロピオフェノン等のα−アミノアルキルフェノン;ベンゾイン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のベンジルケタール;ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド;キサントン誘導体;チオキサントン誘導体;フルオレノン誘導体;メチルフェニルグリオキシレート;アセトナフトン;アントラキノン誘導体;芳香族化合物のスルホニルクロリド;並びに1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等のO−アシルα−オキシイミノケトンが挙げられる。
【0127】
フリーラジカル光開始剤は追加的に又は代替的に、参照により本明細書に援用される米国特許第4,260,780号においてWestにより規定されているフェニルメチルポリシラン等のポリシラン、参照により本明細書に援用される米国特許第4,314,956号においてBaney等により規定されているアミノ化メチルポリシラン;参照により本明細書に援用される米国特許第4,276,424号におけるPeterson等のメチルポリシラン;並びに参照により本明細書に援用される米国特許第4,324,901号においてWest等によって規定されているポリシラスチレンが挙げられる。
【0128】
フリーラジカル光開始剤は、単一のフリーラジカル光開始剤又は2種以上の異なるフリーラジカル光開始剤を含む混合物とすることができる。フリーラジカル光開始剤の濃度は、組成物のオルガノシロキサンの重量を基準として、典型的には0.1〜20重量%、あるいは1〜10重量%、あるいは0.1〜5重量%である。
【0129】
組成物の第2の実施形態によると、組成物は、A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を有する有機ケイ素化合物を含む。組成物は、B)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する、組成物を硬化させるのに十分な量の有機ケイ素化合物を更に含む。組成物はまた、C)触媒量の光活性化ヒドロシリル化触媒を更に含む。任意選択的に、組成物はD)充填剤を更に含むことができる。組成物の反応生成物は、構成成分A)、B)、及びC)の反応生成物を含む。任意選択的に、反応生成物は、構成成分D)の存在下で生成される。反応生成物はまた、充填剤としての1種以上のセラミック粉末の存在下で生成することもできる。特定の実施形態において、この第2の実施形態は、粉末層(すなわちバインダージェット)プリンターと共に用いられる。
【0130】
組成物の第3の実施形態によると、組成物は、A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を有する有機ケイ素化合物を含む。組成物は、B)1分子当たり平均して少なくとも2個の硫黄結合水素原子を有する、組成物を硬化させるのに十分な量の有機ケイ素化合物を更に含む。組成物はまた、C)触媒量の光活性化フリーラジカル開始剤を更に含む。任意選択的に、組成物はD)充填剤を更に含むことができる。組成物の反応生成物は、構成成分A)、B)、及びC)の反応生成物を含む。任意選択的に、反応生成物は、構成成分D)の存在下で生成される。反応生成物はまた、充填剤としての1種以上のセラミック粉末の存在下でも生成することができる。特定の実施形態において、この第3の実施形態は、SLA(すなわちステレオリソグラフィプリンター)、あるいは粉末層(すなわちバインダージェット)プリンターと共に用いられる。
【0131】
前述の構成成分の更なる実施形態について、下記に記載する。本発明の構成成分に関する上述及び下記に記載の構成成分の様々な組み合わせが、企図される。
【0132】
構成成分A)
様々な実施形態において、構成成分A)は、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリカルボシロキサン、又はこれらの組み合わせの群から選択される。好適なエチレン性不飽和基は、上述のとおりである。特定の実施形態において、構成成分A)のケイ素結合エチレン性不飽和基は、ビニル基又はアリル基、あるいはビニル基である。構成成分A)のケイ素結合エチレン性不飽和基は、典型的にはアルケニル基である。
【0133】
ある実施形態において、ケイ素結合エチレン性不飽和基のエチレン性不飽和部分は、少なくとも原子4個分、あるいは少なくとも原子5個分、あるいは少なくとも原子6個分、あるいは少なくとも原子7個分、あるいは少なくとも原子8個分、あるいは少なくとも原子9個分、あるいは少なくとも原子10個分以上隔離されている。
【0134】
驚くべきことに、ケイ素結合エチレン性不飽和基のエチレン性不飽和部分のスペーシングにより、ケイ素結合エチレン性不飽和基の、隣接したケイ素原子に結合したエチレン性不飽和部分を有する類似の組成物と比較して、硬化速度に著しい向上を示すことがわかった。このようなスペーシングにより、組成物の硬化の妨げとなる、光活性化ヒドロシリル化触媒との望ましくない複合体の形成を防止することができるのではないかと考えられる。30秒以下、20秒以下、又は10秒以下の硬化時間が可能であり、実施例の項を参照することによって理解することができる。
【0137】
(式中、各
*は独立して選択されたケイ素結合エチレン性不飽和基であり、かつ0≦sである)の単純化したポリシロキサンi)及びポリシランii)において例証される。
【0138】
ポリシロキサンi)中のケイ素結合エチレン性不飽和基がビニル基である場合、エチレン性不飽和部分を隔離する少なくとも原子4個の条件を満たすためには、例えば−Si−O−Si−O−Si−(原子5個分の隔離)のように、sは少なくとも1でなくてはならない。仮にsが0であるとすると、例えば−Si−O−Si−(原子3個分の隔離)のように、条件は満たされなくなってしまう。あるいは、ポリシロキサンi)のケイ素結合エチレン性不飽和基がアリル基である場合、エチレン性不飽和部分を隔離する少なくとも原子4個の条件は、たとえsが0であってもなお、例えば−C−Si−O−Si−C−(原子5個分の隔離)のように、満たすことができる。ある実施形態において、エチレン性不飽和部分を隔離する少なくとも4個の原子は、ケイ素原子及び酸素原子から選択される。
【0139】
ポリシランii)中のケイ素結合エチレン性不飽和基がビニル基である場合、エチレン性不飽和部分を隔離する少なくとも原子4個の条件を満たすためには、例えば−Si−Si−Si−Si−(原子4個分の隔離)のように、sは少なくとも2でなくてはならない。仮にsが0又は1であるとすると、例えば−Si−Si−(原子2個分の隔離)又は−Si−Si−Si−(原子3個分の隔離)のように、条件は満たされなくなってしまう。あるいは、ポリシランii)のケイ素結合エチレン性不飽和基がアリル基である場合、エチレン性不飽和部分を隔離する少なくとも原子4個の条件は、たとえsが0であってもなお、例えば−C−Si−Si−C−(原子4個分の隔離)のように、満たすことができる。上ではi)及びii)について直鎖構造を示しているが、分枝もまた、例えばT単位及び/又はQ単位を介し、エチレン性不飽和部分の原子による隔離を付与できることを理解されるものとする。
【0140】
当該技術分野において一般に理解されているとおり、従来のポリマー組成物の放射線硬化は、放射線の侵入深さに左右される。放射線に対して不透明な充填剤が従来型の組成物に存在すると、侵入の深さは充填剤によって著しく制限され、深い硬化は妨げられる。驚くべきことに、上述及び下記のA1)で言及する迅速な硬化条件を満たす、充填されたヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物では、表面を紫外線等の放射線に暴露すると、少なくとも20mmの深さを瞬時に硬化することが可能であることが判明した。
【0141】
本明細書で使用する用語「不透明」とは、概して、可視光線の少なくとも約60%が組成物を透過し、又は可視光線の約55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2%未満、若しくは約1%以下が組成物を透過するという意味である。
【0142】
ある実施形態において、構成成分A)は、平均式A1):
(R
1R
22SiO
1/2)
a(R
32SiO
2/2)
b(R
4SiO
3/2)
c(SiO
4/2)
d A1)、
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4のそれぞれは独立して選択された置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、0≦a≦0.80、0≦b≦1.00、0≦c≦0.85、かつ0≦d≦0.85であり、ただし、a、b、c、及びdは同時に0ではなく、かつa+b+c+d=1である)のポリシロキサンである。丸括弧の外側の下付き数字は、モル分率を表す。また、前述の式中では、特定のポリシロキサン中の単位の順序は特定されていない。
【0143】
「置換」により、炭化水素の1つ以上の水素原子が水素以外の原子(例えばハロゲン原子)で置き換え可能であること、又は鎖内の炭素原子が炭素以外の原子によって置き換え可能であること、すなわち、炭化水素がその鎖内に酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を1つ以上含むことができることを意図する。好適なヒドロカルビル基の例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルカリール基、及びアラルキル基が挙げられる。好適な基は、組成物の第1の実施形態におけるRについて、上で説明及び例示したとおりである。
【0144】
様々な実施形態において、R
1はビニル基又はアリル基、あるいはビニル基等のアルケニル基である。様々な実施形態において、R
2はメチル基等のアルキル基である。様々な実施形態において、R
4はフェニル基等のアリール基である。
【0145】
ある実施形態において、有機ケイ素化合物は、1分子当たり少なくとも1つのケイ素結合フェニル基を有する。更に、エチレン性不飽和基を有するケイ素原子と、フェニル基を有するケイ素原子とは、酸素原子1個分のみ隔離される。驚くべきことに、構成成分A)が、ビニル基を有する別のケイ素原子から、酸素原子1個分のみ隔離されたフェニル基を有するケイ素原子を含む場合、硬化速度を向上できることが判明した。典型的には、フェニル基はT単位の一部である。ある実施形態において、構成成分A)は、PhSi(OSiMe
2Vi)
3を含む。
【0146】
ある実施形態において、0.10≦a≦0.80、あるいは0.20≦a≦0.70、あるいは0.25≦a≦0.50、あるいは0.35≦a≦0.70である。特定の実施形態において、a=0.75又は0.67である。ある実施形態において、0≦b≦1.00、あるいは0≦b≦0.80、あるいは0.25≦b≦0.75、あるいは0.30≦b≦0.60である。特定の実施形態において、b=0又は0.33である。ある実施形態において、0<c≦0.75、あるいは0<c≦0.50、あるいは0.25<c≦0.75、あるいは0.25<c≦0.50である。特定の実施形態において、c=0.25又は0である。ある実施形態において、0≦d≦0.50、あるいは0≦d≦0.40、あるいは0≦d≦0.30、あるいは0≦d≦0.20である。特定の実施形態において、d=0である。
【0147】
構成成分A)は、単一の有機ケイ素化合物、又はそれぞれ上記の2つ以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物とすることができる。ケイ素結合エチレン性不飽和原子を含有する有機ケイ素化合物の調製方法は、当該技術分野において理解される。例えば、式A1)のポリシロキサンは、例えば、D4、D6等の環状ポリシロキサンの開環重合によって調製することができる。他の好適な方法は当該技術分野において理解される。
【0148】
構成成分A)は様々な粘度とすることができる。ある実施形態において、構成成分A)は、25℃で1,000,000mm
2/s(1,000,000センチストークス)未満の粘度、あるいは25℃で1〜100,000mm
2/s(1〜100,000センチストークス)、あるいは25℃で1〜10,000mm
2/s(1〜10,000センチストークス)、あるいは25℃で1〜100mm
2/s(1〜100センチストークス)の粘度を有する。
【0149】
構成成分(B)
有機ケイ素化合物は、平均して1分子当たり少なくとも2個のケイ素結合水素原子、あるいは1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する。成分A)中の1分子当たりのエチレン性不飽和基の平均数と、成分B)中の1分子当たりのケイ素結合水素原子の平均数との和が4を超える場合に架橋が生じることが、一般に理解されている。様々な実施形態において、構成成分B)は、オルガノハイドロジェンシロキサン、オルガノハイドロジェンシラン、又はこれらの組み合わせの群から選択される。
【0150】
オルガノハイドロジェンシランは、モノシラン、ジシラン、トリシラン、又はポリシランとすることができる。同様に、オルガノハイドロジェンシロキサンは、ジシロキサン、トリシロキサン、又はポリシロキサンとすることができる。有機ケイ素化合物の構造は、直鎖、分枝鎖、環状、又は樹脂性とすることができる。シクロシラン及びシクロシロキサンは、典型的には、3〜12個のケイ素原子、あるいは3〜10個のケイ素原子、あるいは3〜4個のケイ素原子を有する。非環式ポリシラン及びポリシロキサンにおいて、ケイ素結合水素原子は、末端、ペンダント、又は末端及びペンダントの両方の位置に位置することができる。
【0151】
オルガノハイドロジェンシランの例としては、これらに限定されるものではないが、ジフェニルシラン、2−クロロエチルシラン、ビス[(p−ジメチルシリル)フェニル]エーテル、1,4−ジメチルジシリルエタン、1,3,5−トリス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリシラン、ポリ(メチルシリレン)フェニレン、及びポリ(メチルシリレン)メチレンが挙げられる。
【0152】
オルガノハイドロジェンシランはまた、式HR
12Si−R
3−SiR
12H[式中、R
1はC
1〜C
10ヒドロカルビル又はC
1〜C
10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両者とも脂肪族不飽和を含まず、かつR
3は
【0154】
(式中、gは1〜6である)から選択される式を有する脂肪族不飽和を含まないヒドロカルビレン基である]も有することができる。R
1で表されるヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、組成物の第1の実施形態においてRに関して上で説明及び例示したとおりである。
【0155】
式HR
12Si−R
3−SiR
12H(式中、R
1及びR
3は上で説明及び例示したとおりである)を有するオルガノハイドロジェンシランの例としては、これらに限定されるものではないが、下記の式:
【0158】
オルガノハイドロジェンシロキサンの例としては、これらに限定されるものではないが、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、フェニルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、並びにHMe
2SiO
1/2単位、Me
3SiO
1/2単位、及びSiO
4/2単位から本質的になるシロキサンが挙げられる。
【0159】
オルガノハイドロジェンシロキサンはまた、式(II):
(R
1R
42SiO
1/2)
w(R
42SiO
2/2)
x(R
1SiO
3/2)y(SiO
4/2)
z (I)
(式中、R
1は、C
1〜C
10ヒドロカルビル又はC
1〜C
10ハロゲン置換ヒドロカルビルであり、両者とも脂肪族不飽和を含まず、R
4はR
1又は少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノシリルアルキル基であり、wは0〜0.8であり、xは0〜0.6であり、yは0〜0.99であり、zは0〜0.35であり、w+x+y+z=1、y+z/(w+x+y+z)は0.2〜0.99であり、w+x/(w+x+y+z)は0.01〜0.8であり、ただし、基R
4の少なくとも50モル%はオルガノシリルアルキル基である)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂とすることもできる。
【0160】
R
1で表されるヒドロカルビル基及びハロゲン置換ヒドロカルビル基は、組成物の第1の実施形態においてRに関して上で説明及び例示したとおりである。R
4で表わされるオルガノシリルアルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、下記の式:
【0162】
−CH
2CH
2SiMe
2H、−CH
2CH
2SiMe
2C
nH
2nSiMe
2H、−CH
2CH
2SiMe
2C
nH
2nSiMePhH、
−CH
2CH
2SiMePhH、−CH
2CH
2SiPh
2H、−CH
2CH
2SiMePhC
nH
2nSiPh
2H、
−CH
2CH
2SiMePhC
nH
2nSiMe
2H、−CH
2CH
2SiMePhOSiMePhH、及び
−CH
2CH
2SiMePhOSiPh(OSiMePhH)
2
(式中、下付き文字nは、2〜10の値である)を有する基が挙げられる。
【0163】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂の式(II)において、下付き文字w、x、y、及びzはモル分率である。下付き文字wは、典型的には0〜0.8、あるいは0.02〜0.75、あるいは0.05〜0.3の値であり、下付き文字xは、典型的には0〜0.6、あるいは0〜0.45、あるいは0〜0.25の値であり、下付き文字yは、典型的には0〜0.99、あるいは0.25〜0.8、あるいは0.5〜0.8の値であり、下付き文字zは、典型的には0〜0.35、あるいは0〜0.25、あるいは0〜0.15の値である。また、y+z/(w+x+y+z)の比は、典型的には0.2〜0.99、あるいは0.5〜0.95、あるいは0.65〜0.9である。更に、w+x/(w+x+y+z)の比は、典型的には0.01〜0.80、あるいは0.05〜0.5、あるいは0.1〜0.35である。
【0164】
典型的には、オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂中の基R
4の少なくとも20モル%、あるいは少なくとも35モル%、あるいは少なくとも50モル%は、少なくとも1個のケイ素結合水素原子を有するオルガノシリルアルキル基である。
【0165】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、典型的には500〜50,000、あるいは500〜10,000、あるいは1,000〜3,000の数平均分子量(Mn)を有し、ここでこの分子量は、低角レーザー光散乱検出器又は屈折率検出器及びシリコーン樹脂(MQ)標準物質を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるものである。
【0166】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、29Si NMRよって測定するとき、典型的には、10重量%未満、あるいは5重量%未満、あるいは2重量%未満のケイ素結合ヒドロキシ基を含有する。
【0167】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、R
1SiO
3/2単位(すなわち、T単位)及び/又はSiO
4/2単位(すなわち、Q単位)を、R
1R
42SiO
1/2単位(すなわち、M単位)及び/又はR
42SiO
2/2単位(すなわち、D単位)(式中、R
1及びR
4は上で説明及び例示したとおりである)と組み合わせて含有する。例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は、DT樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、DTQ樹脂、及びMTQ樹脂、並びにMDTQ樹脂、DQ樹脂、MQ樹脂、DTQ樹脂、MTQ樹脂、又はMDQ樹脂とすることができる。
【0168】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂の例としては、これらに限定されるものではないが、下記の式:
((HMe
2SiC
6H
4SiMe
2CH
2CH
2)
2MeSiO
1/2)
0.12(PhSiO
3/2)
0.88、
((HMe
2SiC
6H
4SiMe
2CH
2CH
2)
2MeSiO
1/2)
0.17(PhSiO
3/2)
0.83、
((HMe
2SiC
6H
4SiMe
2CH
2CH
2)
2MeSiO
1/2)
0.17(MeSiO
3/2)
0.17(PhSiO
3/2)
0.66、((HMe
2SiC
6H
4SiMe
2CH
2CH
2)
2MeSiO
1/2)
0.15(PhSiO
3/2)
0.75(SiO
4/2)
0.10、及び((HMe
2SiC
6H
4SiMe
2CH
2CH
2)
2MeSiO
1/2)
0.08((HMe
2SiC
6H
4SiMe
2CH
2CH
2)−(Me
2SiO
1/2)
0.06(PhSiO
3/2)
0.86
(式中、C
6H
4はパラ−フェニレン基を表し、丸括弧の外側の下付き数字はモル分率を示す)を有する樹脂が挙げられる。また、前述の式中では、単位の順序は特定されていない。
【0169】
構成成分B)は、単一の有機ケイ素化合物、又はそれぞれ上記の2つ以上の異なる有機ケイ素化合物を含む混合物とすることができる。例えば、構成成分B)は、単一のオルガノハイドロジェンシラン、2つの異なるオルガノハイドロジェンシランの混合物、単一のオルガノハイドロジェンシロキサン、2つの異なるオルガノハイドロジェンシロキサンの混合物、又はオルガノハイドロジェンシランとオルガノハイドロジェンシロキサンとの混合物とすることができる。特に、構成成分B)は、構成成分B)の総重量を基準として、少なくとも0.5重量%、あるいは少なくとも25重量%、あるいは少なくとも50重量%の、式(II)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂と、オルガノハイドロジェンシラン及び/又はオルガノハイドロジェンシロキサンと、を含む混合物とすることができ、なお、最後のオルガノハイドロジェンシロキサンは、オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂とは異なる。
【0170】
構成成分B)の濃度は、構成成分A)を硬化(架橋)するのに十分である。構成成分B)の正確な量は、所望の硬化の程度に左右し、概して、構成成分A)中のエチレン性不飽和基のモル数に対する構成成分B)中のケイ素結合水素原子のモル数の比が増大するにつれて、この硬化の程度が増大する。構成成分B)の濃度は、典型的には、構成成分A)中のエチレン性不飽和基の1モル当り、0.4〜2モルのケイ素結合水素原子、あるいは0.8〜1.5モルのケイ素結合水素原子、あるいは0.9〜1.1モルのケイ素結合水素原子をもたらすのに十分である。
【0171】
ケイ素結合水素原子を含有する有機ケイ素化合物の調製方法は、当該技術分野において理解される。例えば、オルガノハイドロジェンシランは、グリニャール試薬をハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリールと反応させることによって調製することができる。特に、式HR
12Si−R
3−SiR
12Hを有するオルガノハイドロジェンシランは、エーテル中で式R
3X
2を有するジハロゲン化アリールをマグネシウムで処理して対応するグリニャール試薬を生成し、次いで式HR
12SiCl(式中、R
1及びR
3は、上で説明及び例示したとおりである)を有するクロロシランでこのグリニャール試薬を処理することによって、調製することができる。オルガノハイドロジェンシロキサンの調製方法、例えばオルガノハロシランの加水分解及び縮合もまた、当該技術分野において理解される。
【0172】
他の実施形態において、構成成分B)は(SiH官能性ポリオルガノシロキサンというよりも)メルカプト官能性ポリオルガノシロキサンである。SH官能性ポリオルガノシロキサンとSiH官能性ポリオルガノシロキサンの組み合わせもまた、用いることができる。チオールは、炭素結合スルフヒドリル(−C−SH又はR−SH)基(式中、Rは概してアルカン、アルケン、又は他の炭素を含有する原子の基である)を含有する有機硫黄化合物である。
【0173】
様々な実施形態において、好適なメルカプト官能性化合物は、SiH官能性化合物に関して上で説明したものに類似の構造を有するが、これらの実施形態における有機ケイ素化合物は、平均して1分子当たり少なくとも2個の硫黄結合水素原子、あるいは1分子当たり少なくとも3個の硫黄結合水素原子を有する。例えば、それぞれの化合物の残りを維持しながら、2個以上のSiH基が、2個以上のSH基で置換される場合がある。
【0174】
ある実施形態において、メルカプト官能性ポリオルガノシロキサンは、平均単位式:[(CH
3)
3SiO
1/2]
x[(CH
3)
2SiO]
y[R(CH
3)SiO]
z(式中、Rは独立してメルカプト(C
1−30)ヒドロカルビル基である)を有することができる。下付き文字x、r、及びzは、組成物が本明細書に記載の特性を有するような、任意の好適な値を有することができる。例えば、xは約0.02〜約0.05、又は約0.025〜約0.04、又は約0.02以下、又は約0.022、0.024、0.026、0.028、0.030、0.032、0.034、0.036、0.038、0.040、0.042、0.044、0.046、0.048、又は約0.05以上とすることができる。例えば、yは約0〜約0.9、又は約0.4〜約0.8、又は約0、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、又は約0.9以上とすることができる。例えば、zは約0.08〜約0.98、又は約0.2〜約0.4、又は約0.08以下、又は約0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、又は約0.98以上とすることができる。
【0175】
いくつかの実施形態において、メルカプト官能性ポリオルガノシロキサンは、単位式:
[(CH
3)
3Si0
1/2]
0.03[(CH
3)
2SiO]
0.64[R(CH
3)SiO]
0.33
を有する。
【0176】
Rは、任意の好適なメルカプト(C
1−30)ヒドロカルビル基とすることができる。いくつかの実施形態において、その都度Rは独立してメルカプト(C
1−30)アルキル基である。その都度、Rは独立してメルカプト(C
1−10)アルキル基とすることができる。いくつかの実施形態において、Rはメルカプトプロピル基、HS−(CH
2)
3−とすることができる。
【0177】
本明細書に記載の構成成分B)として又は構成成分B)と共に使用するための好適なメルカプト官能性ポリオルガノシロキサンの追加例は、Clapp等への国際公開第2015/069454(A1)に開示されており、この開示は参照により援用される。
【0178】
構成成分B)は様々な粘度とすることができる。ある実施形態において、構成成分B)は、25℃で1,000,000mm
2/s(1,000,000センチストークス)未満の粘度、あるいは25℃で1〜100,000mm
2/s(1〜100,000センチストークス)、あるいは25℃で1〜10,000mm
2/s(1〜10,000センチストークス)、あるいは25℃で1〜100mm
2/s(1〜100センチストークス)の粘度を有する。
【0179】
構成成分C)
ある実施形態において、構成成分C)は光活性化ヒドロシリル化触媒(例えばヒドロシリル化反応用)である。光活性化ヒドロシリル化触媒は、放射線照射に暴露するとき、構成成分A)と構成成分B)とのヒドロシリル化反応を触媒することができる、任意のヒドロシリル化触媒とすることができる。光活性化ヒドロシリル化触媒は、白金族金属、又は白金族金属を含有する化合物を含む、周知のヒドロシリル化触媒の任意のものとすることができる。白金族金属としては、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムが挙げられる。典型的には、白金族金属は、ヒドロシリル化反応におけるその高い活性に基づき、白金である。組成物中で使用するための特定の光活性化ヒドロシリル化触媒の好適性は、下記の実施例の項における方法を用いた通常の実験によって、容易に判定することができる。
【0180】
光活性化ヒドロシリル化触媒の例としては、これらに限定されるものではないが、白金(II)ビス(2,4−ペンタンジオアート)、白金(II)ビス(2,4−ヘキサンジオアート)、白金(II)ビス(2,4−ヘプタンジオアート)、白金(II)ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオアート)、白金(II)ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオアート)、白金(II)ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオアート)等の白金(II)β−ジケトナート錯体、(Cp)トリメチル白金、(Me−Cp)トリメチル白金、(Cp)エチルジメチル白金、(Cp)トリエチル白金、(クロロ−Cp)トリメチル白金、及び(トリメチルシリル−Cp)トリメチル白金等の、Cpがシクロペンタジエニル基を表す、(η−シクロペンタジエニル)トリアルキル白金錯体、[Pt[C
6H
5NNNOCH
3]
4、Pt[p−CN−C
6H
4NNNOC
6H
11]
4、Pt[p−H
3COC
6H
4NNNOC
6H
11]
4、Pt[p−CH
3(CH
2)
x−C
6H
4NNNOCH
3]
4、1,5−シクロオクタジエンPt[p−CN−C
6H
4NNNOC
6H
11]
2、1,5−シクロオクタジエンPt[p−CH
3O−C
6H
4NNNOCH
3]
2、[(C
6H
5)
3P]
3Rh[p−CN−C
6H
4NNNOC
6H
11]、及びPd[p−CH
3(CH
2)
x−C
6H
4NNNOCH
3]
2(式中、xは1、3、5、11、又は17である)等のトリアゼンオキシド−遷移金属錯体;(η4−1,5−シクロオクタジエニル)ジフェニル白金、(η4−1,3,5,7−シクロオクタテトラエニル)ジフェニル白金、(η4−2,5−ノルボラジエニル)ジフェニル白金、(η4−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−ジメチルアミノフェニル)白金、(η4−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−アセチルフェニル)白金、及び(η4−1,5−シクロオクタジエニル)ビス−(4−トリフルオロメチルフェニル)白金等の、(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体が挙げられる。ある実施形態において、光活性化ヒドロシリル化触媒は、Pt(II)β−ジケトナート錯体とすることができ、かつ更なる実施形態において、光活性化ヒドロシリル化触媒は、白金(II)ビス(2,4−ペンタンジオアート)である。
【0181】
成分(C)は、単一の光活性化ヒドロシリル化触媒、又は2つ以上の異なる光活性化ヒドロシリル化触媒を含む組み合わせとすることができる。
【0182】
構成成分C)の濃度は、上述の方法において説明したとおり、放射線に暴露するとき、構成成分A)と構成成分B)との付加反応を触媒するのに十分なものである。構成成分C)の濃度は、構成成分A)と構成成分B)とを合わせた重量を基準として、典型的には0.1〜1000ppmの白金族金属、あるいは0.5〜200ppmの白金族金属、あるいは0.5〜100ppmの白金族金属、あるいは1〜25ppmの白金族金属、あるいは1〜20ppmの白金族金属を提供するのに十分なものである。
【0183】
光活性化ヒドロシリル化触媒の調製方法は、当該技術分野において理解される。例えば、白金(II)β−ジケトナートの調製方法は、Guo等によって報告されている(Chemistry of Materials,1998,10,531−536)。(η−シクロペンタジエニル)−トリアルキル白金錯体の調製方法は、米国特許第4,510,094号に開示されている。トリアゼンオキシド−遷移金属錯体の調製方法は、米国特許第5,496,961号に開示されている。(η−ジオレフィン)(σ−アリール)白金錯体の調製方法は、米国特許第4,530,879号に説明されている。
【0184】
他の実施形態において、構成成分C)は光活性化フリーラジカル開始剤(例えばチオール−エン反応用)である。好適な開始剤及び量は、上記のとおりである。
【0185】
構成成分D)
組成物は、任意選択的に、D)充填剤を更に含んでもよい。充填剤は、例えば、有機充填剤、無機充填剤、セラミック粉末、又はこれらの組み合わせであってもよい。有機充填剤は、これらに限定されるものではないが、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン等のポリマーであってもよい。有機充填剤はまた、より低分子の本質的に非晶質又は結晶性とすることができ、様々な形状及び大きさとすることができる。無機充填剤又はセラミック粉末は、硬化化学と適合性のある任意の無機化合物とすることができる。例としては、これらに限定されるものではないが、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。1つ以上の無機充填剤又は有機充填剤と無機充填剤との混合物もまた好適である。
【0186】
充填剤を含む実施形態において、充填剤は組成物の任意の重量%、例えば、約0.01重量%〜約90重量%、約1重量%〜約80重量%、約5重量%〜約80重量%、約10重量%〜約80重量%、約15重量%〜約80重量%、約25重量%〜約80重量%、約30重量%〜約80重量%、約40重量%〜約80重量%、約50重量%〜約75重量%、約55重量%〜約75重量%、約60重量%〜約70重量%、あるいは約0.1重量%、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、又は約70重量%以上で存在することができる。ある実施形態において、充填剤を、構成成分A)と構成成分B)と構成成分C)とを合わせた100重量部と等しいか又はそれより大きい量で用いることができることが理解されるものとする。例えば、充填剤は、構成成分A)と構成成分B)と構成成分C)とを合わせた100重量部を基準として、約100重量部より大きい、約200重量部より大きい、約300重量部より大きい、又は約400重量部より大きい量で存在することができる。驚くべきことに、従来の組成物と比較して、本発明の組成物では、充填剤の大量添加が可能であることが判明した。
【0187】
充填剤は、任意の好適な粒径、例えば、平均最長寸法のような、粒子の最長寸法を有することができる。例えば、充填剤の一次粒径は、約5〜約100、約10〜約90、約20〜約80、約30〜約70、約40〜約60、又は約50マイクロメートル、あるいは5マイクロメートル以下、あるいは100マイクロメートル以上であり得る。本明細書で使用する「一次」粒径は、非集塊状態の実際の粒子を指し、この粒子は任意選択的に集塊して、より大きな「二次」粒子を形成できる。
【0188】
組成物のいずれかは、任意選択的かつ独立して追加成分又は構成成分(「添加剤」)を、特に、これらの成分又は構成成分が組成物のオルガノシロキサンの硬化を妨害しない場合に、更に含む。追加成分の例としては、これらに限定されるものではないが、接着促進剤、染料、顔料、抗酸化剤、担体媒体、熱安定剤、難燃剤、チキソトロープ剤、流動制御剤、阻害剤、増量充填剤及び補強充填剤を含む充填剤(構成成分D)とは異なる)、並びに架橋剤が挙げられる。様々な実施形態において、組成物はセラミック粉末を更に含む。セラミック粉末の量は一様でない場合があり、用いられる3Dプリンティングプロセスに左右される場合がある。
【0189】
添加剤のうちの1つ以上が、組成物の任意の好適な重量%、例えば、組成物の約0.1重量%〜約15重量%、約0.5重量%〜約5重量%、又は約0.1重量%以下、約1重量%、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は約15重量%以上で存在することができる。
【0190】
ある実施形態において、組成物は、アクリレート官能性及び/又はエポキシ官能性を持たない。これらの実施形態において、構成成分A)及び構成成分B)のそれぞれには、放射線感受性基としてのアクリレート官能基又はエポキシ官能基がない。更に、組成物中には、概して、このような官能基を有する他の構成成分は存在しない。これらの実施形態は、少なくとも組成物の、放射線感受性基が概してエチレン性不飽和基、より一般的にはアルケニル基である第2の実施形態については典型的である。
【0191】
少なくとも構成成分A)、B)、及びC)を含む組成物は、様々な粘度とすることができる。ある実施形態において、組成物の粘度は、25℃で500mm
2/s未満、250mm
2/s未満、又は100mm
2/s未満(500センチストークス未満、250センチストークス未満、又は100センチストークス未満)、あるいは25℃で1〜1,000,000mm
2/s(1〜1,000,000センチストークス)、あるいは25℃で1〜100,000mm
2/s(1〜100,000センチストークス)、あるいは25℃で1〜10,000mm
2/s(1〜10,000センチストークス)である。組成物の粘度は、1つ以上の構成成分の量及び/又は分子量を変えることによって変更することができる。具体的には、粘度を調整し、3Dプリンターの構成要素、特に、任意のノズル又は吐出メカニズムに適合させ、熱又は速度又は3Dプリンティングに関連する他のパラメーターを制御することができる。当該技術分野において容易に理解されるとおり、運動粘度は、ASTM D−445(2011)、表題「Standard Test Method for Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids(and Calculation of Dynamic Viscosity).」に従って測定することができる。
【0192】
マルチパート組成物
組成物は、単一のパートに構成成分A)、B)、及びC)を含むワンパート組成物とするか、あるいは、これらの構成成分を2つ以上のパートに含み、ただし構成成分A)、B)、及びC)は同一のパートには存在しないマルチパート組成物とすることができる。例えば、マルチパート組成物は、構成成分A)の一部分及び構成成分C)の全てを含有する第1のパートと、構成成分A)の残余部分及び構成成分B)の全てを含有する第2のパートとを含むことができる。ある実施形態において、構成成分A)は第1のパートに存在し、構成成分B)は、第1のパートとは別の第2のパートに存在し、かつ構成成分C)は第1のパート、第2のパート、及び/又は、第1及び第2のパートとは別の第3のパートに存在する。構成成分D)が用いられる場合、構成成分D)は、構成成分A)、B)、又はC)の少なくとも1つと共にそれぞれのパート(又はパート(複数))に存在するか、かつ/又は別のパート(又はパート(複数))に存在することができる。更に、ある特定のプリンターには充填剤が既に存在する場合があり、組成物自体の一部である必要がないことが理解される。例えば、充填材は、粉末層プリンターの層に存在する。
【0193】
ワンパート組成物は、典型的には、主構成成分といずれかの任意選択成分とを、規定の割合で周囲温度において、溶媒の補助により又は補助なしで、組み合わせることによって調製される。様々な実施形態において、組成物は溶媒を含まない。組成物を直ちに使用する場合には、様々な成分の添加の順序は重要でないが、組成物の尚早の硬化を防止するため、ヒドロシリル化触媒は、典型的には約30℃未満の温度で最後に添加される。また、マルチパート組成物は、各パートの構成成分を組み合わせることによって調製することができる。
【0194】
混合は、バッチプロセス又は連続プロセスのいずれかで、粉砕、ブレンド、及び撹拌等の当該技術分野で理解される手法のいずれかによって実施することができる。構成成分の粘度及び最終組成物の粘度によって、特定の装置を決定する。
【0195】
ある実施形態において、光硬化性シリコーン組成物がマルチパート光硬化性シリコーン組成物である場合、マルチパート光硬化性シリコーン組成物の別のパートは、プリント前及び/又はプリント中に吐出プリンティングノズル、例えば二重吐出プリンティングノズル中で混合してもよい。あるいは、別のパートは、プリント直前に組み合わせてもよい。あるいはまた、別のパートは、吐出プリンティングノズルから吐出された後に、例えばプリンティングの細流(printing streams)を交差させるか、又は層の形成中に別のパートを混合することによって組み合わせてもよい。
【0196】
硬化条件
組成物は、組成物を放射線照射、例えば150〜800nm、あるいは200〜400nmの波長を有し、組成物を硬化(架橋)するのに十分な線量の放射線に暴露することによって、硬化することができる。光源は、典型的には中圧水銀アークランプである。放射線の線量は、典型的には10〜20,000mJ/cm
2、あるいは100〜2,000mJ/cm
2である。更に、組成物は、放射線への暴露中又は暴露後に外部から加熱して、硬化の速度及び/又は程度を高めることができる。
【0197】
3D物品
3D物品は、本方法に従って形成することができる。具体的には、3D物品は、本方法について上で説明したとおり、第1及び第2の光硬化性シリコーン組成物をプリントすることによって形成することができる。3D物品は、組成物の反応生成物、すなわち、構成成分A)、B)、及びC)の反応生成物を含む。様々な実施形態において、反応生成物は、構成成分D)の存在下で生成される。ある実施形態において、3D物品は、組成物の反応生成物中に分散されたセラミック粉末を含む。3D物品は、様々な大きさ及び形状とすることができる。本開示は、特定の種類の3D物品に限定されない。
【0198】
産業上の適用可能性及び利点
本開示を限定することなく、本開示の組成物は、3Dプリンティング、特に高充填マテリアルのプリンティングの厳格な要求事項に適合する。これらの要求事項のいくつかは、3Dプリンティングプロセスの種類に左右されるが、低粘度、低表面張力、例えば紫外線への暴露後10秒以内といった迅速な硬化、溶媒を含まないこと、未充填だけでなく、高充填マテリアルについても深部の硬化が可能となる暗硬化能、非常に高い炭化率及び良好な炭化機械的完全性、並びに良好な未熟部分及び焼成部分の強度を含むことができる。
【0199】
様々な実施形態において、本開示の組成物により、3Dプリンティングプロセス、例えばバインダージェッティングを用い、セラミックスの低収縮加工が可能となる。組成物によってもたらされる1つの利点は、プリント中並びに後続加工中の、寸法の変化がより低いことであるが;より短い乾燥/硬化時間;より速い固化、及びそれによって減少又は消失する「汚れ」の特徴;より高い表面品質;並びに比較的低い焼成温度におけるより良好な機械的特性等の、他の利点もまた可能である。
【0200】
本開示の組成物は、セラミック粉末と組み合わせ、セラミック粉末が不透明であり、それによって紫外線に対して不透明であっても、紫外線に曝露することによって硬化することができる。組成物の急速かつ発熱性の紫外線開始ヒドロシリル化硬化によって発生する熱が、マテリアル全体に渡り、紫外線に対して不透過な領域においても、硬化を維持するものと考えられる。その結果、本開示の組成物は、3Dプリンティングによる充填パート又はセラミックパートの製造に特に適している。このようなパートは一般に、変形せずに焼成温度に耐える必要があるが、例えば、化学エッチングによってエッチングを施す必要がある場合がある。組成物は優れた純度を有しながらも、このような特性を提供する。
【0201】
本開示の組成物により配合の自由度がもたらされ、3D物品の所望の最終特性、3Dプリンティング性能等が達成される。これは、例えば、SiH、SH、及びSi−エチレン性不飽和基(例えばSi−アルケニル基)の種類の適切な組み合わせ、構成成分A)及びB)の分子骨格鎖と分子量、構成成分C)の適切な触媒及び濃度、架橋密度及び架橋密度の分布、並びに/又は組成物の単位質量当たりのヒドロシリル化反応からの熱放出を選択することによって達成することができる。
【0202】
組成物及びその反応生成物を例証する下記の実施例は、本発明の例証を意図するものであり、本発明の限定を意図するものではない。
【0203】
組成物は、従来の実験室手法を用いて調製し、紫外線によって光活性化する。様々な組成物の調製に用いられる構成成分A〜Qを、下記の表1に示す。
【0205】
上記の表1において、「Vi」はビニル基を表し、「Me」はメチル基を表し、かつ「Ph」はフェニル基を表す。構成成分A〜F、J及びOはそれぞれ、A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基、具体的にはアルケニル基を有する有機ケイ素化合物を含む。構成成分G及びHはそれぞれ、B)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を含む。構成成分Iは、C)光活性化ヒドロシリル化触媒、具体的にはアセチルアセトン酸白金(II)を含む。構成成分K及びMはそれぞれ、B)1分子当たり平均して少なくとも2個の硫黄結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を含む。構成成分Lは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを含むDAROCURE(登録商標)1173である。下付き文字nにより、構成成分Mの粘度は約100mm
2/s(約100センチストークス)となる。構成成分Nは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドを含むIRGACURE(登録商標)819の10重量%トルエン溶液である。構成成分Qの平均直径は50マイクロメートルである。
【0206】
様々な構成成分を混合することによって組成物を調製した後、次のように、各組成物に対して硬化時間を設定する。Dymax紫外線硬化チャンバを部品番号38560の紫外線電球と共に使用し、380nmから可視光の波長の光を放出し、組成物の試料が定置される表面における強度350mJ/cm
2で測定する。液体試料2gをアルミニウム又は直径5cmのポリエチレン皿に定置する。それぞれの試料を紫外線に1回につき2秒間暴露し、液体が固化するのに必要な暴露時間を測定する。固化時間を硬化時間とする。下記のとおり、23の異なる実施例を調製し、試験する。
【0207】
実施例1:H4g及びA3.083gを混合し、続いてI0.016gを混合し、Pt20ppmの配合物とする。試料は紫外線に10分間暴露した後液体のままであり、すなわち、硬化しない。
【0208】
実施例2:H4g及びB3.127gを混合し、続いてI0.016gを混合し、Pt20ppmの配合物とする。試料は紫外線に10分間暴露した後液体のままであり、すなわち、硬化しない。
【0209】
実施例3:H2g及びB1.564gを混合し、続いてI0.076gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は290秒である。
【0210】
実施例4:H1g及びF3.2gを混合し、続いてI0.129gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は7秒である。
【0211】
実施例5:H0.5g及びD2.32gを混合し、続いてI0.032gを混合し、Pt100ppmの配合物とする。硬化時間は10秒である。
【0212】
実施例6:H0.8g及びD2.83gを混合し、続いてI0.099gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は10秒である。
【0213】
実施例7:H3.2g及びE3.44gを混合し、続いてI0.151gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は5秒である。
【0214】
実施例8:G4g及びB5.504gを混合し、続いてI0.22gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は120秒である。
【0215】
実施例9:G4g及びB5.504gを混合し、続いてI0.22gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は120秒である。
【0216】
実施例10:G1g及びD2.07gを混合し、続いてI0.007gを混合し、Pt20ppmの配合物とする。硬化時間は87秒である。
【0217】
実施例11:G1g及びD2.07gを混合し、続いてI0.07gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は37秒である。
【0218】
実施例12:G0.4g及びD2.25gを混合し、続いてI0.084gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は10秒である。
【0219】
実施例13:G3.2g及びE3.3gを混合し、続いてI0.149gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は4秒である。
【0220】
実施例14:G2.3g及びE4.35gを混合し、続いてI0.152gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は6秒である。
【0221】
実施例15:G2.3g及びE4.35gを混合し、続いてI0.152gを混合し、Pt200ppmの配合物とする。硬化時間は6秒である。
【0222】
実施例16:G1.6g及びE3.03gを混合し、続いてP0.028gを混合し、Pt30ppmの配合物とする。硬化時間は8秒である。
【0223】
実施例17:G16g及びE30.3gを混合し、続いてP0.093gを混合し、Pt10ppmの配合物とする。硬化時間は9秒である。
【0224】
実施例18:実施例17の未硬化混合物3gをQ7gと混合し、テフロンバー製の長方形成形型に流し込む。成形型の大きさ(又は寸法)は、造形物の深さが約2cmとなる程度である。成形型中の造形物を同一の紫外線源に9秒間暴露し、造形物を実験台の上に10秒間放置してから成形型から取り外し、頂部及び底部について硬化の状態を調べる。得られた造形バーは、厚さ全体に渡り、十分に固化している。
【0225】
実施例19:実施例15の未硬化混合物をQ15.9gと混合する。混合物を(上記実施例18と)同様にテフロン製成形型に流し込み、約2cmの深さの造形物を形成する。成形型中の造形物を同一の紫外線源に9秒間暴露し、造形物を実験台の上に10秒間放置してから成形型から取り外し、頂部及び底部について硬化の状態を調べる。得られた造形バーは、厚さ全体に渡り、十分に固化している。
【0226】
実施例20:J2.0g及びK2.5gを混合し、続いてL0.045gを入れて混合し、光開始剤Lを1重量%含有する配合物とする。硬化時間は1秒未満である。
【0227】
実施例21:K3.0g及びE0.64gを混合し、続いてN0.036gを入れて混合し、光開始剤Nを0.1重量%含有する配合物とする。硬化時間は、410nm LEDアレイ搭載のBelle DR−618 LED Nail Lamp下で10秒である。
【0228】
実施例22:K2.0g及びM0.36gを混合し、続いてN0.031gを入れて混合し、光開始剤Nを0.1重量%含有する配合物とする。硬化時間は、410nm LEDアレイ搭載のBelle DR−618 LED Nail Lamp下で15秒である。
【0229】
実施例23:K10.0g及びE2.12gを混合し、続いてN0.606gを入れて混合し、光開始剤Nを0.5重量%含有する配合物とする。硬化時間は、410nm LEDアレイ搭載のBelle DR−618 LED Nail Lamp下で1秒未満である。
【0230】
硬化がなかったこと、又は硬化するのに紫外線への長い暴露時間を要したことから、実施例1、2、3、8、及び9は概して比較例とみなされる。実施例4〜7、及び10〜23は概して発明実施例とみなされる。
【0231】
発明実施例は、様々な3Dプリンティングプロセスで3D物品を形成するのに用いることができる。好適な3Dプリンティングプロセスについては上の「発明を実施するための形態」の項に記載し、バインダージェッティング及びマテリアル押出成形を含む。硬化時間が10秒以下の実施例は、紫外線硬化による3Dプリンティングに特に好適であるとみなされる。
【0232】
下記に追加の実施形態を提供するが、その付番は、重要度を指定するものと解釈されるものではない。
【0233】
実施形態1は、i)3Dプリンターが粉末層及びインクジェット3Dプリンターであり、かつエネルギー源が少なくとも紫外線を放出する方法と、ii)3D物品が光硬化性シリコーン組成物の反応生成物中に分散されたセラミック粉末を含む方法と、又はiii)i)及びii)の両方の方法と、に関する。
【0234】
実施形態2は、i)3Dプリンターが押出成形3Dプリンターであり、かつエネルギー源が少なくとも紫外線を放出する方法と、ii)光硬化性シリコーン組成物がセラミック粉末を更に含み、かつ光硬化性シリコーン組成物がスラリーの形態である方法と、又はiii)i)及びii)の両方の方法と、に関する。
【0235】
実施形態3は、実施形態1又は2の方法に関し、条件iii)は同じであり、かつi)少なくとも部分的に硬化された層を含む複合体を加熱かつ/又は更に放射線照射する工程と、ii)光硬化性シリコーン組成物の反応生成物中に分散されたセラミック粉末を含む複合体を焼成する工程と、又はiii)i)及びii)の両方の工程と、を更に含む。
【0236】
実施形態4は、本発明の光硬化性シリコーン組成物をプリントすることによって形成される3D物品に関する。3D物品は、A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を有する有機ケイ素化合物であって、上記のケイ素結合エチレン性不飽和基のエチレン性不飽和部分は少なくとも原子4個分隔離されている、有機ケイ素化合物と、B)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する、光硬化性シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量の有機ケイ素化合物と、C)触媒量の光活性化ヒドロシリル化触媒と、の反応生成物を含む。
【0237】
本発明の方法、その工程、発明の組成物、及びその構成成分は、概して上記のとおりである。前述の実施形態の全ての組み合わせが、本願明細書において明示的に企図される。
【0238】
添付の請求項が、発明を実施するための形態に記述された、明示かつ特定の化合物、組成物、又は方法に限定されることはなく、それらが添付の請求の範囲内に含まれる特定の実施形態間で変化できることを理解するべきである。様々な実施形態の具体的な特徴又は態様を説明するために本明細書において依拠されている任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果は、全ての他のマーカッシュ群の構成員から独立して、各マーカッシュ群のそれぞれの構成員から得られるものとする。マーカッシュ群の各要素は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が個別に及び/又は組み合わせて依拠することがあり、適切な根拠を提供する。
【0239】
更に、本発明の様々な実施形態を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は独立して及び総じて、添付の請求の範囲内に入り、たとえ、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。計数範囲及び部分範囲が、本発明の様々な実施態様を十分に記述しかつ可能にし、かかる範囲及び部分範囲が、更に、関連する2分の1、3分の1、4分の1、5分の1等に詳述されてよいことを当業者は容易に理解する。ほんの一例として、範囲「0.1〜0.9」は、下の方の3分の1、即ち、0.1〜0.3、中間の3分の1、即ち、0.4〜0.6、及び上の方の3分の1、すなわち、0.7〜0.9に更に詳述でき、これらは、個別的かつ集合的に添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供し得る。更に、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「以下」等の範囲を定義又は修飾する用語に関して、かかる用語が部分範囲及び/又は上限又は下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、本質的に、少なくとも10〜35の部分範囲、少なくとも10〜25の部分範囲、25〜35の部分範囲等を含み、各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供する。最終的には、開示された範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が依拠することがあり、適切な根拠を提供する。例えば、範囲「1〜9」は、様々な個々の整数、例えば、3、並びに小数点(又は分数)を含む個別の数、例えば、4.1を含み、これは添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が依拠することがあり、適切な根拠を提供する。
【0240】
本発明は、本明細書にて例示的な方法にて記述されており、使用された用語は限定よりもむしろ説明的な言葉の性質を持つことを意図していると理解すべきである。本発明の多くの修正及び変更が上記教示から可能である。本発明は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載されているものとは別の方法で実施されてもよい。独立請求項、並びに単一及び複数の従属の両方の従属請求項の全ての組み合わせの主題が、本明細書において明示的に企図される。
(態様)
(態様1)
3次元(3D)物品を形成する方法であって、前記方法は、
I)第1の光硬化性シリコーン組成物を3Dプリンターによってプリントし、層を形成する工程と、
II)前記層をエネルギー源によって放射線照射し、少なくとも部分的に硬化された層を形成する工程と、
III)第2の光硬化性シリコーン組成物を前記少なくとも部分的に硬化された層上に前記3Dプリンターによってプリントし、後続の層を形成する工程と、
IV)前記後続の層を前記エネルギー源によって放射線照射し、少なくとも部分的に硬化された後続の層を形成する工程と、
V)任意選択的に、任意の追加の層(複数可)のために独立して選択された光硬化性シリコーン組成物を用いて工程III)及びIV)を反復し、前記3D物品を形成する工程と、
を含み、
前記第1及び第2の光硬化性シリコーン組成物は、互いに同一であるか又は異なり、
単一又は複数の前記光硬化性シリコーン組成物は、アクリレート官能性又はエポキシ官能性をもたない、方法。
(態様2)
前記3Dプリンターが、粉末層3Dプリンター、インクジェット3Dプリンター、押出成形3Dプリンター、光重合化3Dプリンター、又はこれらの組み合わせの群から選択される、態様1に記載の方法。
(態様3)
3次元(3D)物品を形成する方法であって、前記方法は、
I)第1の光硬化性シリコーン組成物を3Dプリンターによってプリントし、層を形成する工程と、
II)前記層をエネルギー源によって放射線照射し、少なくとも部分的に硬化された層を形成する工程と、
III)第2の光硬化性シリコーン組成物を前記少なくとも部分的に硬化された層上に前記3Dプリンターによってプリントし、後続の層を形成する工程と、
IV)前記後続の層を前記エネルギー源によって放射線照射し、少なくとも部分的に硬化された後続の層を形成する工程と、
V)任意選択的に、任意の追加の層(複数可)のために独立して選択された光硬化性シリコーン組成物を用いて工程III)及びIV)を反復し、前記3D物品を形成する工程と、
を含み、
前記第1及び第2の光硬化性シリコーン組成物は、互いに同一であるか又は異なり、
前記3Dプリンターは、粉末層3Dプリンター、押出成形3Dプリンター、又は光重合化3Dプリンターのうちの少なくとも1つを含む、方法。
(態様4)
前記エネルギー源が、紫外線、赤外線、可視光線、X線、γ線、又は電子ビームのうちの少なくとも1つ、あるいは少なくとも紫外線を放出する、態様1〜3のいずれか一項に記載の方法。
(態様5)
前記光硬化性シリコーン組成物が、
A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を有する有機ケイ素化合物であって、前記ケイ素結合エチレン性不飽和基のエチレン性不飽和部分は、少なくとも原子4個分隔離されている、有機ケイ素化合物と、
B)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する、前記光硬化性シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量の有機ケイ素化合物と、
C)触媒量の光活性化ヒドロシリル化触媒と、
D)任意選択的に、充填剤と、
を含む、態様1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(態様6)
前記光硬化性シリコーン組成物が、
A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基及び少なくとも1つのケイ素結合フェニル基を有する有機ケイ素化合物であって、エチレン性不飽和基を有するケイ素原子とフェニル基を有するケイ素原子とは、酸素原子1個分のみ隔離されている、有機ケイ素化合物と、
B)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する、前記光硬化性シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量の有機ケイ素化合物と、
C)触媒量の光活性化ヒドロシリル化触媒と、
D)任意選択的に、充填剤と、
を含む、態様1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(態様7)
前記光硬化性シリコーン組成物が、
A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を有する有機ケイ素化合物と、
B)1分子当たり平均して少なくとも2個の硫黄結合水素原子を有する、前記光硬化性シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量の有機ケイ素化合物と、
C)触媒量の光活性化フリーラジカル開始剤と、
D)任意選択的に、充填剤と、
を含む、態様1〜4のいずれか一項に記載の方法。
(態様8)
構成成分D)が、前記光硬化性シリコーン組成物の100重量部を基準として、少なくとも約5、あるいは少なくとも約25、あるいは少なくとも約50、あるいは少なくとも約75重量部の量で存在する、態様5〜7のいずれか一項に記載の方法。
(態様9)
前記第1及び第2の光硬化性シリコーン組成物が同一である、態様1〜8のいずれか一項に記載の方法。
(態様10)
態様1〜9のいずれか一項に記載の方法に従って形成される、3D物品。
(態様11)
3次元(3D)プリンティングのための光硬化性シリコーン組成物であって、前記光硬化性シリコーン組成物は、
A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を有する有機ケイ素化合物であって、前記ケイ素結合エチレン性不飽和基のエチレン性不飽和部分は、少なくとも原子4個分隔離されている、有機ケイ素化合物と、
B)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する、前記光硬化性シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量の有機ケイ素化合物と、
C)触媒量の光活性化ヒドロシリル化触媒と、
D)任意選択的に、充填剤と、
を含む、光硬化性シリコーン組成物。
(態様12)
3次元(3D)プリンティングのための光硬化性シリコーン組成物であって、前記光硬化性シリコーン組成物は、
A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基及び少なくとも1つのケイ素結合フェニル基を有する有機ケイ素化合物と、
B)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する、前記光硬化性シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量の有機ケイ素化合物と、
C)触媒量の光活性化ヒドロシリル化触媒と、
D)任意選択的に、充填剤と、
を含む、光硬化性シリコーン組成物。
(態様13)
構成成分B)が、オルガノハイドロジェンシロキサン、オルガノハイドロジェンシラン、又はこれらの組み合わせの群から選択される、態様11又は12に記載の組成物。
(態様14)
3次元(3D)プリンティングのための光硬化性シリコーン組成物であって、前記光硬化性シリコーン組成物は、
A)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を有する有機ケイ素化合物と、
B)1分子当たり平均して少なくとも2個の硫黄結合水素原子を有する、前記光硬化性シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量の有機ケイ素化合物と、
C)触媒量の光活性化フリーラジカル開始剤と、
D)任意選択的に、充填剤と、
を含む、光硬化性シリコーン組成物。
(態様15)
構成成分B)がメルカプト官能性ポリオルガノシロキサンである、態様14に記載の組成物。
(態様16)
i)構成成分A)が、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリカルボシロキサン、又はこれらの組み合わせの群から選択され、
ii)構成成分A)の前記ケイ素結合エチレン性不飽和基がアルケニル基、あるいはビニル基であり、又は
iii)i)及びii)の両方である、態様11〜15のいずれか一項に記載の組成物。
(態様17)
構成成分A)が平均式A1):
(R1R22SiO1/2)a(R32SiO2/2)b(R4SiO3/2)c(SiO4/2)d A1)、
(式中、R1、R2、R3、及びR4のそれぞれは独立して選択された置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、0≦a≦0.80、0≦b≦1.00、0≦c≦0.85、かつ0≦d≦0.85であり、ただし、a、b、c、及びdは同時に0ではなく、かつa+b+c+d=1である)のポリシロキサンである、態様11〜16のいずれか一項に記載の組成物。
(態様18)
i)構成成分A)の粘度が25℃で1,000,000mm2/s(1,000,000センチストークス)未満であり、
ii)0.10≦a≦0.80、0≦b≦1.00、0<c≦0.75、かつ0≦d≦0.50であり、又は
iii)i)及びii)の両方である、態様17に記載の組成物。
(態様19)
i)R1がアルケニル基、あるいはビニル基であり、a=0.75若しくは0.67、c=0.25若しくは0、b=0若しくは0.33、かつd=0であり、並びに/又は
ii)R2がメチル基であり、並びに/又は
iii)R3がメチル基であり、並びに/又は
iv)R4がフェニル基である、態様17又は18に記載の組成物。
(態様20)
構成成分D)が、前記光硬化性シリコーン組成物の100重量部を基準として、少なくとも約5、あるいは少なくとも約25、あるいは少なくとも約50、あるいは少なくとも約75重量部の量で存在する、態様11〜19のいずれか一項に記載の方法。
(態様21)
構成成分A)が第1のパートに存在し、構成成分B)が、前記第1のパートとは別の第2のパートに存在し、かつ構成成分C)が、前記第1のパート、前記第2のパート、及び/又は、第1及び第2のパートとは別の第3のパートに存在する、マルチパート光硬化性シリコーン組成物として更に定義される、態様11〜20のいずれか一項に記載の組成物。
(態様22)
態様11〜21のいずれか一項に記載の前記組成物の反応生成物を含む、3D物品。
(態様23)
3Dプリンターに関する態様11〜21のいずれか一項に記載の、前記組成物の使用。