特許第6646066号(P6646066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6646066三相送電系統における地絡の検知のための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646066
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】三相送電系統における地絡の検知のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/50 20200101AFI20200203BHJP
【FI】
   G01R31/02
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-555822(P2017-555822)
(86)(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公表番号】特表2018-503837(P2018-503837A)
(43)【公表日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】CH2015000152
(87)【国際公開番号】WO2016112470
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】15000088.3
(32)【優先日】2015年1月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517249370
【氏名又は名称】エヌエスイー アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】NSE AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】エーバーゾルド, アンドレアス
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−294806(JP,A)
【文献】 特開2003−319549(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/090816(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補償されて稼働される三相送電系統における地絡および地絡方向の検出のための方法であって、
a)零相電圧と零相電流の値の組が続いて所定のサンプリングレートで測定されるステップであって、当該値の組は、それぞれ1つの測定時刻に対応しており、そして、検出された値の組およびこれに対応する測定時刻の格納が行われるステップと、
b)各々の測定時刻に対してそれぞれ測定された零相電圧および測定された零相電流の積の生成によって有効電力量が続いて計算され、そして続いて当該積の総和が生成されるステップであって、当該総和は、最も新しい測定時刻のものに対応する積および当該積に先行する複数の積から形成されるステップと、
c)最も新しい測定点に対し、当該測定点に対応する零相電圧が第1の閾値より大きい場合には、電圧フラグが1に設定され、そうでなければ0に設定され、そして対応する零相電流が第2の閾値よりも大きい場合には電流フラグが1に設定され、そうでなけれな0に設定されるステップと、
d)前記電圧フラグと前記電流フラグとのブール結合ANDが、それぞれ前記最も新しい測定時刻に対して形成されるステップであって、前記ブール結合ANDの結果が第1の時間区間だけオン遅延されかつ第2の時間区間だけオフ遅延され、前記結果が0である場合は地絡は無く、そして結果が1である場合は、地絡が存在しているとするステップと、
地絡が存在する場合は、
e)前記ステップa)〜d)がさらに実行され、そして前記最も新しい測定時刻に対して計算された有効電力量の符号が確認され、当該確認の結果は、第3の時間区間だけオン遅延され、そして第4の時間区間だけオフ遅延されるステップと、
f)少なくとも前記有効電力量の符号に基づいて、符号が正の場合には、前記地絡方向が進み方向であるとして、または符号が負の場合には、遅れ方向であるとして決定して通知するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
絶縁されて稼働される三相送電系統における地絡および地絡方向の検出のための方法であって、
a)零相電圧と零相電流の値の組が続いて所定のサンプリングレートで測定されるステップであって、当該値の組は、それぞれ1つの測定時刻に対応しており、そして、検出された値の組およびこれに対応する測定時刻の格納が行われるステップと、
b)各々の測定時刻に対してそれぞれ測定された零相電圧および測定された零相電流の積の生成によって無効電力量が続いて計算され、そして続いて当該積の総和が生成されるステップであって、当該総和は、最も新しい測定時刻のものに対応する積および当該積に先行する複数の積から形成されるステップと、
c)前記最も新しい測定時刻に対し、当該測定時刻に対応する零相電圧が第1の閾値より大きい場合には、電圧フラグが1に設定され、そうでなければ0に設定され、そして対応する零相電流が第2の閾値よりも大きい場合には電流フラグが1に設定され、そうでなければ0に設定されるステップと、
d)前記電圧フラグと前記電流フラグとのブール結合ANDが、それぞれ前記最も新しい測定時刻に対して形成されるステップであって、前記ブール結合ANDの結果が第1の時間区間だけオン遅延されかつ第2の時間区間だけオフ遅延され、前記結果が0である場合は地絡は無く、そして結果が1である場合は、地絡が存在しているとするステップと、
地絡が存在する場合は、
e)前記ステップa)〜d)がさらに実行され、そして前記最も新しい測定時刻までに計算された無効電力量の符号が確認され、当該確認の結果は、第3の時間区間だけオン遅延され、そして第4の時間区間だけオフ遅延されるステップと、
f)少なくとも前記無効電力量の符号に基づいて、符号が正の場合には、前記地絡方向が進み方向であるとして、または符号が負の場合には、遅れ方向であるとして決定して通知するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
前記有効電力量の符号に基づく決定に加えて、前記有効電力の符号の確認が、上記の零相電圧と零相電流との積が送電系統の1周期に渡って積分されることによって行われ、当該周期は前記最も新しい測定時刻を含み、前記有効電力量と前記電力との符号が一致する場合、上記の地絡方向が確定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無効電力量の符号に基づく決定に加えて、前記無効電力の符号の確認が、上記の零相電圧と零相電流との積が送電系統の1周期に渡って積分されることによって行われ、当該周期は前記最も新しい測定時刻を含み、前記無効電力量と前記電力との符号が一致する場合、上記の地絡方向が確定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第3の時間区間および/または前記第4の時間区間は、零相電流および零相電圧の最初の測定の前に設定され、具体的には当該第3および第4の時間区間は、30ms〜2000msの範囲で選択され、具体的には300msの値が前記補償されて稼働される三相送電系統に好適であることを特徴とする、請求項1または3に記載の方法。
【請求項6】
前記第3の時間区間および/または前記第4の時間区間は、零相電流および零相電圧の最初の測定の前に設定され、具体的には当該第3および第4の時間区間は、30ms〜2000msの範囲で選択され、具体的には50msの値が前記絶縁されて稼働される三相送電系統に好適であることを特徴とする、請求項2または4に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップb)の総和は、毎回の前記最も新しい測定時刻に対応して前記積が毎回計算されて、当該総和に集計され、そして当該総和の最も古い積が減算されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記総和は、設定可能な、一定の数の値の組から形成されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプリングレートは、前記零相電流および前記零相電圧の最初の測定の前に設定され、具体的にはサンプリングレートとして1ミリ秒が選択されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の時間区間および/または前記第2の時間区間は、前記零相電流および前記零相電圧の最初の測定の前に設定され、具体的には当該第1および第2の時間区間は15msとなっていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の閾値および/または前記第2の閾値は、前記零相電流および前記零相電圧の最初の測定の前に設定されることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記通知は、メモリにおける進み方向フラグあるいは遅れ方向フラグの設定または非設定によって行われることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
補償されて稼働される三相送電系統における地絡および地絡方向の検出のための装置であって、当該装置は、
零相電圧と零相電流の値の組を続いて所定のサンプリングレートで測定するための少なくとも1つの測定装置を備え、当該値の組は、それぞれ1つの測定時刻に対応するように構成されており、
検出された値の組およびこれに対応する測定時刻の格納のためのメモリと、
計算ユニットと、
を備え、
前記計算ユニットは、
各々の測定時刻に対してそれぞれ測定された零相電圧および測定された零相電流の積の生成によって有効電力量を続いて計算し、そして続いて当該積の総和を生成するために構成されており、当該総和は、最も新しい測定時刻のものに対応する積および当該積に先行する複数の積から形成されており、
前記最も新しい測定時刻に対し、当該測定時刻に対応する零相電圧が第1の閾値より大きい場合には、電圧フラグが1に設定され、そうでなければ0に設定され、そして対応する零相電流が第2の閾値よりも大きい場合には電流フラグが1に設定され、そうでなければ0に設定されるように構成されており、
前記電圧フラグと前記電流フラグとのブール結合ANDが、それぞれ前記最も新しい測定時刻に対して形成され、前記ブール結合ANDの結果が第1の時間区間だけオン遅延されかつ第2の時間区間だけオフ遅延され、前記結果が0である場合は地絡は無く、そして結果が1である場合は、地絡が存在しているとするように構成されており、
地絡が存在する場合は、
前記最も新しい測定時刻までに計算された有効電力量の符号を確認し、当該確認の結果は、第3の時間区間だけオン遅延され、そして第4の時間区間だけオフ遅延されるように構成されており、
少なくとも前記有効電力量の符号に基づいて、符号が正の場合には、前記地絡方向が進み方向であるとして、または符号が負の場合には、遅れ方向であるとして決定して通知できるように構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項14】
絶縁されて稼働される三相送電系統における地絡および地絡方向の検出のための装置であって、当該装置は、
零相電圧と零相電流の値の組を続いて所定のサンプリングレートで測定するための少なくとも1つの測定装置を備え、当該値の組は、それぞれ1つの測定時刻に対応するように構成されており、
検出された値の組およびこれに対応する測定時刻の格納のためのメモリと、
計算ユニットと、
を備え、
前記計算ユニットは、
各々の測定時刻に対してそれぞれ測定された零相電圧および測定された零相電流の積の生成によって無効電力量を続いて計算し、そして続いて当該積の総和を生成するために構成されており、当該総和は、最も新しい測定時刻のものに対応する積および当該積に先行する複数の積から形成されており、
前記最も新しい測定時刻に対し、当該測定時刻に対応する零相電圧が第1の閾値より大きい場合には、電圧フラグが1に設定され、そうでなければ0に設定され、そして対応する零相電流が第2の閾値よりも大きい場合には電流フラグが1に設定され、そうでなければ0に設定されるように構成されており、
前記電圧フラグと前記電流フラグとのブール結合ANDが、それぞれ前記最も新しい測定時刻に対して形成され、前記ブール結合ANDの結果が第1の時間区間だけオン遅延されかつ第2の時間区間だけオフ遅延され、前記結果が0である場合は地絡は無く、そして結果が1である場合は、地絡が存在しているとするように構成されており、
地絡が存在する場合は、
前記最も新しい測定時刻までに計算された無効電力量の符号を確認し、当該確認の結果は、第3の時間区間だけオン遅延され、そして第4の時間区間だけオフ遅延されるように構成されており、
少なくとも前記無効電力量の符号に基づいて、符号が正の場合には、前記地絡方向が進み方向であるとして、または符号が負の場合には、遅れ方向であるとして決定して通知できるように構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項15】
間欠的または高オーミック抵抗の地絡の検出、および補償されて稼働される三相送電系統における地絡方向の検出のための、請求項13に記載の装置を使用する方法
【請求項16】
間欠的または高オーミック抵抗の地絡の検出、および絶縁されて稼働される三相送電系統における地絡方向の検出のための、請求項14に記載の装置を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願について]
本願は、2015年1月15日に出願された欧州特許出願第15000988.3号に基づく優先権を主張するものであり、この欧州特許出願の全ての内容は本願に組み込まれるものである。
【0002】
[技術分野]
本発明は、補償されて稼働するあるいは非接地で稼働する三相送電系統(elektrisches Drehstromnetz)における地絡の検知のための方法に関する。
さらに本発明は、本方法のいずれにもそれぞれ使用される、三相送電系統における地絡の検知のための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー供給者の電力供給送電系統の稼働の障害の大部分は、1極故障、具体的には地絡によって発生する。これらの障害は、たとえば空中電線への木の成長または倒伏によって、あるいは絶縁不具合によって発生し得る。いわゆる地絡方向継電器は、原理的に、網目状の送電系統においても地絡による漏電を選択的に通知する。ここで測定基準としては、零相電流(Summennullstrom)および零相電圧(Verlagerungsspannung)が用いられ、これらから地絡が検出される。この電力計を用いるような地絡の検知では、非接地で稼働する送電系統においては、この検知は、補償されて稼働する(sinφ継電器を用いた)電源とは異なり(cosφ継電器を用いて)行われる。しかしながら間欠的な地絡の場合には、簡単な地絡方向継電器は正常に機能しない。これは再点弧した場合にはその方向が信頼性よく認識されないからである。
【0004】
中性点処理のために、一般的に以下のことが実施される。1つの送電線とグラウンドとの間の電気的に導通した接続が生成される場合には、この中性点処理の方式がこの送電系統の特性を決定する。この際、この中性点がトランスであるかまたは発電機であるかは問題ではない。原則として、中性点接地(SPE;Sternpunkterdung)には5つの方式があり、これらは送電系統の基本構成に異なる条件を課している。
【0005】
(1)直接接地
中性点は、大がかりな接地装置を介して、出来る限りインピーダンスの少ない接続を介して、接地電位と接続される。この利点としては、関係しない電線上には過電圧を全く生成しないこと、そして適合した過電流保護を用いて故障位置特定が容易であることである。欠点としては、この地絡が接地短絡となることであり、接地短絡電流による電線の大きな熱的負荷を生じ、そしてこの故障部位で大きな接触電圧が起こり得ることである。さらなる欠点は、この接地装置の高いコストであり、そして稼働停止による電源供給中断である。
【0006】
(2)中性点非接地
ここでは、電源中性点は大地と接続されない。利点としては、コストが低いこと、そして容量性地絡電流による電線の負荷が小さいこと、および故障部位での接触電圧が小さいことである。送電系統はこの地絡の場合でも、続けて稼働することができ、アーク放電故障は自然消弧し得る。欠点としては、故障が起こっていない電線上に√3倍の過電圧が生じることであり、そして大きな送電線網では、地絡電流がさらに大ききなり得ることである。方向検知には、さらに特別な地絡方向継電器が必要である。
【0007】
(3)低抵抗接地
ここでは、電源中性点は、1つの規定された抵抗性インピーダンスを介して接地電位と接続される。この変形例は、直接接地が許容できない地絡電流をもたらす場合に使用され、ただし上記の非接地で稼働する送電系統の過電圧が受け入れ難い場合である。利点としては、地絡電流および発生する過電圧が制限されることである。さらに適合した過電流保護を用いて故障位置特定が容易であることである。欠点としては、故障が起こっていない電線上に過電圧が生じることであり、そしてこの地絡が接地短絡となることであり、こうして接地短絡電流による電線の熱的負荷が生じることである。さらに故障部位で大きな接触電圧となり得ることである。さらに、この接地装置の高いコスト、および稼働停止による電源供給中断が生じることである。
【0008】
(4)短時間低抵抗接地
ここでは電源中性点は通常稼働時は絶縁されている。方向検出のために、一時的にオーミック抵抗がこの中性点に接続され、そして地絡は接地短絡に移行される。方向検知および関連した範囲の稼働停止の後、送電系統は再び絶縁されて稼働する。利点としては、地絡電流が制限されること、そして適合した過電流保護を用いた容易な故障位置特定が可能であることである。欠点としては、故障が起こっていない電線上に√3倍の過電圧が生じることであり、そして地絡が接地短絡となることである。以上のように接地短絡による電線の熱的負荷が生じ、そして故障個所で大きな接触電圧となり得る。さらに、この接地装置の高いコストが発生し、そして稼働停止による電源供給中断が発生する。
【0009】
(5)補償された/消弧された共振中性点接地
ここでは電源中性点は、1つの調整可変なインダクタンスを介して接地電位に接続されている。このインダクタンスあるいは地絡消弧コイル(発明者に因んでペテルゼンコイルとも呼ばれている)の大きさは、補償電流を規定する。利点としては、最も小さな地絡電流および故障個所での最も小さな接触電圧を生じることである。送電系統はこの地絡の場合でも、続けて稼働することができ、アーク放電故障は自然消弧し得る。欠点としては、地絡コイルの大きな初期費用およびメンテナンス費用、この接地装置の大きな費用であり、故障が起こっていない電線上での√3倍の過電圧が挙げられる。さらに小さな電流ならびにとりわけ間欠的な地絡故障のために、地絡故障方向検知のための費用が高くなる。
【0010】
以下では補償された送電系統における地絡を詳細に説明する。図2に概略的に示すように、補償された送電系統における1つの健全な三相電圧システム(図1)が、電線1上の1つの地絡によって障害を受けると、電圧三角形(図3)のシフトが起こる。ここでこの零相電圧(中性点の対地電圧)
は、この電圧三角形の中央からの地絡の方向を示す(図3においては、見易さのために原点からのベクトルで示す)。ここで以下の式が成り立つ。
(1)
【0011】
ここで上記の健全な電線の対地電圧は、連結された電圧の値まで上昇し、これは丁度√3倍の値に対応する。過度に高くなった電線の対地電圧は、電線の漏電抵抗および静電容量を介して大地に電流を送り出し、その故障部位における合計は故障電流IFとしてこの故障した電線に還流する(図4)。電線電流が図5に示されており、そして故障電流が図6に示されている。ここで、図6においては、零相電流はまだゼロである。さらなる漏電が加わることによって、零相電流は測定可能となり、この零相電流は、他の漏電(複数)の還流する電流から成っており、そしてIEで示されている。すなわち測定された零相電流の大きさは、上記の故障電流に対応しているのではなく、むしろ隣接した支線によって漸く定義されるものである。これに対応した図示はここでは省略している。
【0012】
さてここで上記の補償された送電系統においては、上記のペテルゼンコイルすなわち地絡消弧コイルからの電流が上記の故障部位に加えられる。
この電流は電圧によって引き起こされ、その90%は遅れて印加される。図7,8,9はこの状況を示している。この補償電流の大きさに依存して、上記の故障部位に流れる充電電流は多少補償される。理想的な補償では、有効整定電流(Wirkreststrom)IWRのみが、この故障部位における電流として残る。よく知られているように、地絡においては、検知装置あるいは保護装置(地絡継電器)によって方向検知が以下のように行われる。
【0013】
このために図10および11に示す方向の特徴は、以下の簡単な式で記述される。
正弦波回路に対しては以下のようになる。
=>進み方向 (2)
=>遅れ方向 (3)
余弦波回路に対しては以下のようになる。
=>進み方向 (4)
=>遅れ方向 (5)
【0014】
位相角φは、零相電圧UNEと接地電流Iとの間の角度であり、上記の方向検知のために極めて重要な役割を果たす。しかしながら従来技術に基づくこのようなやり方を用いると、間欠的な地絡の場合には方向検知が可能ではない。したがってこのような間欠的な地絡は問題となる。絶縁された送電系統および補償された送電系統は、特定の条件下では、地絡が起こった場合、続けて長期間稼働することができる。故障部位を速やかに特定できるためには、たとえばNSE GmbH,スイスのDIGISAVE RDのような、市販の地絡方向継電器が使用される。地絡継電器は、上述したように、零相電圧UNEと地絡電流Iとの間の位相角での故障の方向を検知し、これは補償された送電系統においてはいわゆる余弦回路によって、絶縁された送電系統においては正弦回路によって実現される。補償された送電系統においてはしかしながら、上記の故障アーク放電が瞬時に再び消弧するように、地絡電流を小さくすることができる。以上によりこの故障した電線の電線電圧は再び回復し、そしてこの電線電圧が臨界値を越えると直ぐに再点弧が発生する。この過程は、間欠地絡と呼ばれている。この従来技術による地絡方向検知の問題は、再点弧の瞬間に充電電流Iが2つの健全な電線に流れ込むことである。このインパルス電流は上記の零相電圧UNEに対し逆の方向を有している。
(6)
【0015】
ここでこの式は1つの有効電流を表している。これはコンデンサに蓄積される電力量は、まず送電系統から印加されなければならないからである。図12は、点弧過程のベクトル図を示す。間欠的な地絡故障での状況を見易くするために、零相における電力の振舞いが図13にUNEおよびIを用いて示されている。点弧インパルスごとに有効電力PNEの符号が交代することが見て取れる。ここで無効電力QNEは、鋸波状の振舞いを示す。この有効電流が、繰り返しその符号が交代することにより、間欠的地絡故障の抑圧の無い地絡方向保護も同様に、繰り返しその方向を交代する。
【0016】
地絡故障、特に間欠的な地絡故障の方向を検出するための有効電力量あるいは無効電力量の計算を以下に説明する。これはこの計算方法が本発明の基礎となるものであるからである。
【0017】
ここで、消費される零相有効電力量の符号を用いて方向が検出される。すなわち上記の間欠的故障の点弧過程では、その電流フロー方向は誤った地絡故障方向を意味するが、しかしながら平均的電力は進み方向となり、こうして消費される零相有効電力量が正の符号の場合には、地絡の進み方向が示され、負の符号の場合には地絡の遅れ方向が示される。
【0018】
この零相有効電力量は以下のように計算される。
(7)
【0019】
ここで使用されている記号の意味は以下の通りである。
0 零相有効電力量
0(n) 零相電圧
0(n) 零相電流
nFE サンプリング点における、設定された積分時間ウィンドウ
nX 現在の時刻
【0020】
本発明によれば、非接地で稼働される三相送電系統における地絡方向の検出のために、ここで入れ替えられた零相無効電力量の符号を用いてこの方向が検出される。すなわち上記の間欠的故障の点弧過程では、その電流フロー方向は誤った地絡故障方向を意味するが、しかしながら進み方向の入れ替えが生じ、こうして使用される零相無効電力量が正の符号の場合には、地絡の進み方向が示され、負の符号の場合には地絡の遅れ方向が示される。
【0021】
零相無効電力量は以下のように求められる。
(8)
【0022】
ここで上記の記号ならびに追加的な以下の記号が適用される。
Eb0 零相無効電力量
N 電源周期当たりのサンプリング点の数
(f=50Hz → N=20)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって本発明の課題は、間欠的な地絡故障での地絡方向の検出を信頼性に関してさらに改善することである。
【0024】
この課題は、補償されて稼働する三相送電系統、あるいは非接地で稼働する三相送電系統用のそれぞれの独立請求項の特徴を有する、本願の最初に記載された方法によって解決される。本願の最初に記載された装置では、上記の課題は、補償されて稼働する三相送電系統、あるいは非接地で稼働する三相送電系統用のそれぞれ対応する独立請求項の特徴を用いて解決される。
【0025】
本発明は、地絡およびその方向の検出の信頼性の改善をもたらすことが判明した。さらに、故障発生の正確な時刻を知らなくとも、地絡を確認して位置特定することが可能である。
【0026】
本方法および本装置の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されており、そしてこれらの実施形態およびさらなる実施形態が以下の記載を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下では従来技術および本発明の実施形態が図を参照して詳細に説明される。
図1】健全な送電系統のベクトル図を示す。
図2】地絡を有する送電系統モデルを示す。
図3】地絡故障を有する送電系統のベクトル図を示す。
図4】補償電流の無い電流分布を有する送電系統モデルを示す。
図5図4に対する電線電流をベクトル図で示す。
図6】故障電流をベクトル図で示す。
図7】補償電流を有する送電系統モデルを示す。
図8図7に対する電線電流をベクトル図で示す。
図9】故障電流をベクトル図で示す。
図10】正弦回路に対するベクトル図を示す。
図11】余弦回路に対するベクトル図を示す。
図12】間欠的地絡での点弧過程のベクトル図を示す。
図13】零相電力を示す。
図14】地絡故障のシミュレーションでの関連する変数の時間的振舞いのグラフを示す。
図15】本発明を使用しない、図14のシミュレーションでの関連する変数の振舞いのグラフを示す。
図16】本発明を使用する、図14のシミュレーションでの関連する変数の振舞いのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、図14〜16に関して詳細に説明する。図1〜13は、従来技術を説明するものであり、それぞれ対応する段落で説明されている。
【0029】
図14は、補償されて稼働する三相送電系統における、進み方向の地絡故障のシミュレーションでの関連する変数の時間的振舞いのグラフを示す。これらのグラフには、特に注意を要するこれらの曲線の部位が、矢印または円でマーキングされている。参照記号a1は、漏電(1線地絡故障)における地絡故障の開始からその終了までの時間ウィンドウを表し、これは以降の図にも適用される。ここでこれらの図では、それぞれ対応する信号の振幅が時間(秒)に対して示されている。
【0030】
図14のグラフの上側の2つの部分には、零相電圧u0(n)および零相電流i0(n)の振舞いが示されており、ここでn個の離散的な時刻が示されている。零相電流では、上記のペテルゼンコイルによってもたらされる次第に消失する直流成分i0も考慮されている。
【0031】
このグラフの3番目の部分は、電力P0(n)あるいは電荷Q0(n)の振舞いを示す。矢印b1は、電力P0が地絡故障の開始の際に正しく正に立上り、しかしながらその後の振舞いにおいては振動が次第に消失し(矢印c1)、ここでこの電力P0の符号は、この振動過程の間でしばしば最大で約10msの間、負になる。続いてこの電力は1つの小さな正の値に収束する。地絡が終了した後、この電力P0の値は次第に小さくなり、しかしながらその符号はずっと交代してゆく(矢印d1)。
【0032】
これらのグラフの最も下の部分は、有効電力量E0の振舞いを示す。この電力量E0の振舞いは、上記の電力P0の振舞いに追従し、したがって短時間の符号交代を有する(矢印e1)。この電力量E0もまた負になるが、ただし上記のP0の場合のように、この例では最大でも約10msである。約100ms後(矢印f1)、この電力量は安定して正しい正の値となる。地絡終了後約100msで、この電力量E0は、非常に小さな値まで低下する(矢印g1)。
【0033】
なお、図14に示す無効電力Q0および無効電力量Eb0cは、絶縁された中性点に関連するものである。
【0034】
図15は、本発明を使用しない、図14のシミュレーションでの関連する変数の振舞いのグラフを示す。ここで全ての値はバイナリ値で表されている。
【0035】
図15のグラフの上側の2つの部分は、零相電圧U0および零相電流I0に対する指標(フラグ)を示している(U0Start、I0Start)。図14に対応して、上記の零相電圧U0は、地絡終了後約100msでもまだ印加されている(円A)。この零相電流の測定は、電力P0(円D)に対応して不安定さを示し、これは零相電流フラグの交代によって見ることができる。
【0036】
図14に対応して、電力P0は、この振動収束過程の間にも負の値となる(円C)。地洛が終了した後、電力P0はまず100Hzでその符号を交代する。これはこの電力の周期が100Hzとなっているからである(たとえばグラフの0.7秒の所で分る)。そしてその後直流での零相電流の50Hz周期のため50Hzでその符号を交代する。
【0037】
図15のグラフの第4の部分は、上記の電力量E0の振舞いを示す。図14に対応して、図15では、この電力量は、約100ms後、1つの負の値をとり(円E)、そして上記の地絡終了後、電力P0の振舞いに追従する(円F)。
【0038】
図15のグラフの第5の部分(vw)は、進み方向の方向決定を示す。ここで地絡の開始領域における進み方向の方向決定は不安定であることが明瞭である(円G)。この原因は電力P0の符号の交代であり、ここで上記の決定の不安定性がグラフの0.2秒の領域に示されている。第2の原因は、約0.26秒での電力量E0の符号交代である。さらに、零相電流I0の後退のために(I0開始フラグ参照)、地絡の終了後での進み方向決定も不安定である(円H)。
【0039】
図15のグラフの第6の部分(rw)は、遅れ方向の方向決定を示す。この遅れ方向の方向決定は、地絡の終了後の領域においては、電力P0あるいは電力量E0の符号の交代のため、そしてフラグU0がこの時点でまだオンとなっているので、時々誤ったものとなっている(円I)。この原因は、地絡後の零相電圧および零相電流のゆっくりとした消失であり、ここで上記の方向決定に対して関与する電力P0あるいは電力量E0を何ら生じないからである。
【0040】
本発明は、上述の故障評価の不確定性を解消し、これが図16に示されている。
【0041】
図16は、本発明を使用する、図14のシミュレーションでの関連する変数の振舞いのグラフを示す。
【0042】
これらのグラフの上の3つの部分は、既に説明した、電流フラグ、あるいは電圧フラグ、および電力P0に対応する。これらのグラフの下側の2つの部分は、それぞれ進み方向(vw)および遅れ方向(rw)の方向決定を示す。これらから分るように、この進み方向の方向決定の本発明による例では、故障の始まりの振動収束期間においても、そしてこの故障の終了直後の時刻においても、地絡方向の正しい決定が行われる。
【0043】
以下では、図を参照して、本発明を詳細に説明する。ここでは例として、再び上記の補償された三相送電系統のみを用いる。これはこの補償された三相送電系統に関する考察が、絶縁された送電系統に対して、その無効電力の観点で、同様に適用できるからである。
【0044】
補償されて稼働される三相送電系統における地絡および地絡方向の検出のための本方法は、以下に記載するステップを備える。
【0045】
第1のステップにおいては、a)零相電圧U0と零相電流I0の値の組が続いて測定され、ここでこの値の組は、それぞれ1つの測定時刻に対応している。この測定は、所定のサンプリングレートで行われる。このサンプリングレートは好ましくはこの零相電流および零相電圧の最初の測定の前に設定され、好ましくは1ミリ秒となっている。ナイキスト−シャノンのサンプリング定理に対応して、サンプリングの前に、高い信号周波数成分による悪影響を避けるためのローパスフィルタが使用されるが、これについてはここではこれ以上言及しない。
【0046】
このステップa)においては、検出された値の組およびこれに対応する測定時刻の格納も一緒に行われる。
【0047】
ステップb)においては、まず各々の測定時刻に対して測定された零相電圧および測定された零相電流の積が続いて計算され、そして続いてこれらの積の積算が行われる。ここでこの総和は、最も新しい測定時刻のものに対応する積から、そしてこれに先行する複数の積から形成される。なおこの観点から、総和を求める際には、こうして上記の最も新しい測定時刻に対応する変数値が常に含まれていることになる。
【0048】
この総和の生成のために、ステップb)の総和は、上記の最も新しい測定時刻に対応して、上記の積が毎回計算されて、当該総和に集計され、そして当該総和の最も古い積が減算される。この総和は、設定可能な、一定の数の値の組から形成される。換言すれば、幅nFEの一定の積分ウィンドウが横軸上で右側に移動する(図16参照)。この結果この総和に対しては最も古いとみなされる測定点はnx−nFEであり、ここでnXが最も新しい測定点である。この結果この総和は、時刻nx−nFE〜nxまでの範囲に渡るもので形成される(式(7)参照)。
【0049】
ステップc)において、上記の最も新しい測定時刻に対し、この測定時刻に対応する零相電圧U0が第1の閾値より大きい場合には、電圧フラグU0Startが1に設定され、そうでなければ0に設定され、そして対応する零相電流I0が第2の閾値よりも大きい場合には電流フラグI0Startが1に設定され、そうでなければ0に設定される。この第1および/または第2の閾値は、好ましくは零相電流I0および零相電圧U0の最初の測定の前に設定される。
【0050】
ステップd)において、電圧フラグU0Startと電流フラグI0Startとのブール結合ANDが、それぞれ最も新しい測定点に対して形成される。ここで地絡が存在するかどうか決定される。結果が0である場合は地絡は無く、そして結果が1である場合は、地絡が存在している。しかしながらこの電力量基準の評価の初期条件には、以下の理由から1つの不確定性が隠れている。地絡開始の際には、この初期条件は、使用される電力のため、約5〜10msで繰り返し当てはまらなくなる(図15、円Cを円Gと共に参照)。地絡終了の際には、積分ウィンドウを通過したのちこの初期条件は漸く完全に消失し、そしてこのウィンドウ期間の間は、50または100Hzの周波数を有する周期的な応答となる(図15、円Dを円Hと共に参照)。
【0051】
地絡開始時の問題を処理するために、ブール結合ANDの結果が第1の時間区間だけオン遅延される。この第1の時間区間は、零相電流および零相電圧の最初の測定の前に設定される。好ましくはこの第1の時間区間は15msとなっている。以上により、図15を参照して説明した、上記の振動収束の間の符号交代による上記の決定の不確定性を克服することができる。これは「1」の結果(地絡有り)は、この第1の時間区間が終了した場合にのみ採用されるからであり、この時間の間に再度0に戻るような結果を用いないからである。後者の場合、上記の第1の時間区間は新たに開始され、そして結果が0である通常の場合のように、地絡は全く存在しないと仮定される。
【0052】
地絡終了時の問題を処理するために、上記の結果は第2の時間区間だけオフ遅延される。この第2の時間区間は、零相電流および零相電圧の最初の測定の前に設定される。好ましくはこの時間区間は15msとなっている。上記のオン遅延の場合と同様に、図15を参照して説明した、上記の振動収束の間の符号交代による上記の決定の不確定性を克服することができる。これは「0」の結果(地絡無し)は、この第2の時間区間が終了した場合にのみ採用されるからであり、この時間の間に再度1に戻るような結果を用いないからである。後者の場合、上記の第2の時間区間は新たに開始され、そして結果が1である通常の場合のように、地絡はまだ存在していると仮定される。
【0053】
さて地絡が存在するという決定が確定的になされた場合、ステップe)において、上記のステップa)〜d)がさらに実行され、そして上記の最も新しい測定時刻までに計算された有効電力量の符号が確認される。なおこの観点から、これらのステップa)〜d)は、地絡の有無に関わらず、そして地絡終了が確定されたかに関わらず、常に実行されることになる。上記の確認の結果は、第3の時間区間だけオン遅延され、そして第4の時間区間だけオフ遅延される。この第3の時間区間および/または第4の時間区間は、零相電流および零相電圧の最初の測定の前に設定される。好ましくは、これら2つの時間区間は、30ms〜2000msの範囲で選択され、ここで300msの値が上記の補償された三相送電系統に好適であり、そして50msの値が絶縁された三相送電系統に好適である。この時間区間の長さは、間欠的な故障の発生の可能性に基づいている。
【0054】
間欠的な故障の場合には、補償された送電系統においては、アーク放電の消弧の後での再度の電圧上昇に対応する、前後に続いた地絡の間での長い停止期間(たとえば100msのオーダー)が発生する。この不調が小さいほど、この電圧の回帰は長く続く。
【0055】
間欠的な故障の場合には、補償された送電系統においては、上記の前後に続いた地絡の間の停止期間(複数)は大抵は短く(たとえば10msのオーダー)、これは電圧が直ぐに復帰し、そしてこれにより直ぐにアーク放電の再点火が起こるからである。
【0056】
このため上記の方向決定は、オフ遅延されて出され、上述のように、送電系統に依存して30〜2000msの範囲である。
【0057】
したがって上記の方向決定の第3および第4の時間区間は、間欠的な故障に対しては、好ましくはパラメータ化されて設定される。代替として、これらの時間区間は絶縁された設定かあるいは補償された設定かに依存して選択される。ここで上記の第3および第4の時間区間は、地絡の無い停止期間の長さに対応して設定される。
【0058】
最後のステップf)として、少なくとも上記の有効電力量の符号に基づいて、符号が正の場合には、上記の地絡方向が進み方向であるとして、または符号が負の場合には、遅れ方向であるとして通知することを決定する。なお、符号が負の場合においては「進み方向」として、および符号が正の場合においては「遅れ方向」とする、上記の地絡方向の通知は、この異なる符号が電圧ベクトルの方向の観点からのみ与えられるのであれば、等価なものである。
【0059】
上記の有効電力量または無効電力量の符号に基づく決定に加えて、上記の電力P0の符号が、上記の零相電圧と零相電流との積が、送電系統周波数の1周期に渡って積分されることによって、上記の電力P0の符号の確認が行われることが好ましい。この周期は最も新しい測定時刻を含む。ここで、上記の有効電力量または無効電力量と上記の電力P0との符号が一致する場合、上記の地絡方向が確定される。これは、多くの場合この電力がその方向を約100Hzの周波数で変化するからである。したがってこの電力方向は、たとえばこの電力が次第にその方向を変え、なおその積分電力量が低下しない場合、上記の電力量基準を適用することを許可するために使用することができる。
【0060】
上記の地絡方向の通知は、好ましくはメモリにおける進み方向フラグあるいは遅れ方向フラグの設定または非設定によって行われる。これらのフラグに基づいて、たとえば1つの地絡の確定に対する反応として、たとえば1つの進み方向の地絡であるここでの例では、たとえば1つの電力回路ブレーカへの対応する命令によって、該当する送電系統部分が他の送電系統から分離される。
【0061】
上記の通知が、補償された送電系統における有効整定電流IWEの1つの最小値(第1の閾値)でのみ行われる場合、あるいは絶縁された送電系統における容量性地絡電流ICEの1つの最小値(第2の閾値)でのみ行われる場合、上記の実施形態は有利であることが判明した。この最小値は、選択可能で設定することができなければならない。好ましくはこれらの値IWEあるいはICEは、以下のようにEあるいはEb0から求められる。
(9)
(10)
(11)
【0062】
これらの値の論理結合は、以下のようになり、ここでは地絡が存在すること、そして零相電圧が上記の第1の閾値より大きいことが常に成り立っている。好ましくは上記の通知は、進み方向フラグあるいは遅れ方向フラグとしてメモリに設定される。
【0063】
こうして上記の補償された送電系統に対して以下のことが成り立つ。
WE > 第1の閾値、E0 > 0 → 進み方向フラグ設定
WE > 第1の閾値、E0 < 0 → 遅れ方向フラグ設定
WE < 第1の閾値 → 方向フラグ設定無し
【0064】
以上に対応して、絶縁された送電系統に対しては以下のようになる。
CE > 第2の閾値、Eb0 > 0 → 進み方向フラグ設定
CE > 第2の閾値、Eb0 < 0 → 遅れ方向フラグ設定
CE < 第2の閾値 → 方向フラグ設定無し
【0065】
好ましくは、「進み方向」、「遅れ方向」、または「方向無し」に対する方向指標として、以上のようにフラグが設定され、これらのフラグの設定は、1つのメモリ、具体的には、長さtflagを備える1つのリングバッファメモリにおいて行われる。各々のサンプリング時刻nxに対して、上記の方向指標が求められ、そしてそれぞれ対応するフラグがこのリングバッファメモリに格納される。次にこの送電系統の保護のために求められた地絡故障方向は、好ましくは1つの第2のメモリに記録される。各々の時刻に対して、このメモリは、上記の方法を用いて更新され、ここで第1のメモリすなわち上記のリングバッファメモリにおける全ての方向通知あるいは方向指標が同じ方向を示すかどうか検査される。もし同じ方向である場合、この方向は上記の第2のメモリすなわち表示メモリに引き渡され、もしそうでなければこの第2のメモリは変更されず、そして古い値が保持される。通常この第2のメモリは、「方向無し」で初期化される。
【0066】
上記の積分ウィンドウnFEは、実際に保護される送電系統上で調整されるが、これは試験的に、あるいは1つの基準値から開始されて動作中における最適化として行われる。好ましくは適合した積分ウィンドウの推定は、送電系統の分析に基づいて、そして特に現在得られる地絡の記録に基づいて行われる。
【0067】
本方法および本装置は、非接地で稼働する送電系統における、そして補償されて稼働する送電系統における、間欠的な地絡故障を正しく検知する可能性を与える。これらの間欠的な地絡故障では、簡単な地絡方向継電器が誤作動するが、これは再点弧の際に方向が誤って表示されるからである。他方、零相における有効電力量および無効電力量を観察することにより、これらの効果を抑圧することが可能である。
【0068】
最初に述べたように、故障機能の振舞いは、フィルタあるいは積分のアルゴリズムに強く依存し、こうして場合によっては、誤った方向決定が出される。以下では、本発明が上述の方法に基づいて記述される。
【0069】
なお本願には本発明の好ましい実施形態が記載されているが、本発明はこれらに限定されるものでなく、そしてむしろ本発明は以下の特許請求の範囲で、他の多様な形態で実施することができる。この結果、「好ましくは」、「特に」、「具体的には」、「有利に」のような用語は、単に可能性および例として理解されるべきものである。
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図16