【実施例】
【0039】
以下、実施例を介して本発明をより詳細に説明する。これら実施例は、単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれら実施例により制限されるものとして解釈されるわけではない。
【0040】
実施例1:トランスポゾンを用いたランダム突然変異ライブラリーの製作
リジン生産能を増加させる遺伝子を獲得するための目的で、下記の方法によりベクターライブラリーを製作した。まず、EZ-Tn5
TM<R6Kγori/KAN-2>Tnp Transposome
TM Kit(Epicentre)を用いて得られたプラスミドをKCCM11016P(前記微生物はKFCC10881として公開された後、ブダペスト条約下の国際寄託機関に再寄託されてKCCM11016Pと寄託番号を付与される、特許文献1)菌株を親菌株とし、形質転換してカナマイシン(25mg/l)が含まれた複合平板培地に塗抹し、約20,000個のコロニーを確保した。
【0041】
<複合平板培地(pH7.0)>
ブドウ糖10g、ペプトン 10g、肉抽出物 5g、酵母抽出物 5g、脳心臓浸出液 18.5g、NaCl 2.5g、尿素 2g、ソルビトール 91g、寒天 20g(蒸留水1リットル基準)
【0042】
実施例2:トランスポゾンを用いたランダム突然変異ライブラリーのスクリーニング
前記実施例1で確保した約20,000個のコロニーをそれそれ300μlの選別培地に接種して96ディープウェルプレートで32℃、1000rpmで約24時間培養した。培養液で生産されたL-リジンの生産量を分析するためにニンヒドリン法を利用した(非特許文献3)。培養が完了した後、培養上清液10μlとニンヒドリン反応溶液190μlとを65℃で30分間反応させた後、波長570nmで分光光度計で吸光度を測定し、対照区であるKCCM11016Pと比較して高い吸光度を示す変異菌株として約60種余りのコロニーを選別した。その他のコロニーは対照区として用いられたKCCM11016P菌株と類似するかまたは減少した吸光度を示した。
【0043】
前記選別された60種余りの菌株は、前記と同様の方法で培養した後、ニンヒドリン反応を繰り返し、結果的にKCCM11016P菌株対比L‐リジン生産能が向上された上位10種の菌株を選抜した。
【0044】
<選別培地(pH8.0)>
ブドウ糖10g、硫酸アンモニウム 5.5g、MgSO
4・7H
2O 1.2g、KH
2PO
4 0.8g、K
2HPO
4 16.4g、ビオチン 100μg、チアミン塩酸塩 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 2000μg(蒸留水1リットル基準)
【0045】
実施例3:選別されたランダム突然変異株のL‐リジン生産能の分析
前記実施例2で選抜された10種の菌株を対象にL‐リジン生産能が増加された菌株を最終選別するため、下記の培地を用いてフラスコにおける再現性テストを行った。前記10種の菌株と対照群とを下記の種培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに接種し、30℃で20時間、200rpmで振とう培養した。その後、1mlの種培養液を下記の生産培地24mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに接種して、37℃で96時間、200rpmで振とう培養した。前記種培地と生産培地との組成はそれぞれ下記のとおりである。培養が完了した後、HPLCを用いて培養液内のL‐リジン濃度を分析し、各突然変異株のL‐リジン生産濃度を下記表1に示した。
【0046】
<種培地(pH7.0)>
ブドウ糖20g、ペプトン 10g、酵母抽出物 5g、尿素 1.5g、KH
2PO
44g、K
2HPO
4 8g、MgSO
4・7H
2O 0.5g ビオチン 100μg、チアミン塩酸塩 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 2000μg(蒸留水1リットル基準)
【0047】
<生産培地(pH7.0)>
ブドウ糖100g、(NH
4)
2SO
4 40g、大豆タンパク質 2.5g、トウモロコシ浸漬固形分(Corn Steep Solids) 5g、尿素 3g、KH
2PO
4 1g、MgSO
4・7H
2O 0.5g ビオチン 100μg、チアミン塩酸塩 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 3000μg、 CaCO
3 30g(蒸留水1リットル基準)
【0048】
【表1】
【0049】
前記選抜された10種の変異株の中、L‐リジン生産能が有意に向上された菌株としてKCCM11016P/mt‐1及びKCCM11016P/mt‐8が最終選別された。
【0050】
実施例4:最終選別株におけるL‐リジン生産能関連遺伝子の確認及び追加候補遺伝子の選別
本実施例では、前記実施例3で最終選別された菌株を対象にトランスポゾンのランダム挿入により欠損された遺伝子を同定しようとした。KCCM11016P/mt‐1とKCCM11016P/mt‐8とのゲノムDNAを抽出して溶解した後、ライゲーションして大腸菌DH5αで形質転換し、カナマイシン(25mg/l)が含まれたLB固体培地に塗抹した。形質転換されたコロニー20種をそれぞれ選別した後、未知の遺伝子一部が含まれたプラスミドを獲得し、EZ-Tn5
TM<R6Kγori/KAN-2>Tnp Transposome
TM Kitに含まれている配列番号9及び配列番号10の配列を用いて塩基配列を分析した結果(表2)、突然変異株でそれぞれNCgl2108、NCgl2986遺伝子が不活性化されていたことが分かった。
【0051】
【表2】
【0052】
前記実施例3で選別された変異株において、欠損されたものとして同定されたNCgl2108、NCgl2986遺伝子はコリネバクテリウムに内在的に存在する遺伝子であって、細胞壁加水分解に関連するタンパク質として同定された。
【0053】
このような、トランスポゾンを用いたランダム突然変異株における2種の細胞壁加水分解に関連するタンパク質が選別された結果を基に、細胞壁加水分解に関連する遺伝子の欠損は、L‐リジン生産能の増加に効果的であると判断した。したがって、NCgl2108とNCgl2986以外の細胞壁加水分解に関連する遺伝子を米国国立生物情報センター(NCBI)で探索した。
【0054】
探索結果、コリネバクテリウムに内在的に存在するNCgl1480とNCgl2107遺伝子が細胞壁加水分解に関連するタンパク質としてさらに選別された。これにより、NCgl1480とNCgl2107遺伝子の欠損の時も、L‐リジン生産能に影響があるかどうかを確認するため、前記2つの遺伝子を追加欠損候補遺伝子として選別した。
【0055】
実施例5:NCgl1480、NCgl2107、NCgl2108及びNCgl2986遺伝子の不活性化のための組換えプラスミドの製作
本実験例では、NCgl1480、NCgl2107、NCgl2108及びNCgl2986遺伝子の不活性化とL‐リジン生産能との影響を確認するために、前記実施例4で選別されたNCgl1480、NCgl2107、NCgl2108及びNCgl2986遺伝子をコリネバクテリウムL‐リジン生産菌株の染色体上から欠損させるための組換えプラスミドを製作した。
【0056】
米国国立衛生研究所の遺伝子銀行(NIH Genbank)に報告された塩基配列に根拠して、NCgl1480、NCgl2107、NCgl2108及びNCgl2986の配列番号1,2,3、及び4のアミノ酸及びこれをそれぞれコードする配列番号5,6,7及び8のヌクレオチド配列を確保した。各NCgl1480、NCgl2107、NCgl2108及びNCgl2986のオープンリーディングフレーム(open reading frame)が内部的に喪失された遺伝子断片を製作するために、前記配列番号5,6,7及び8を基に、それぞれ配列番号11〜14、15〜18、19〜22、及び23〜26のプライマーを製作した。その配列を下記表3に示した。
【0057】
【表3】
【0058】
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032ゲノムDNAを鋳型とし、配列番号11及び配列番号12、配列番号13及び配列番号14、配列番号15及び配列番号16、配列番号17及び配列番号18、配列番号19及び配列番号20、配列番号21及び配列番号22、配列番号23及び配列番号24、配列番号25及び配列番号26をプライマーとして用い、PCR[Sambrook et al, Molecular Cloning, a Laboratory Manual (1989), Cold Spring Harbor Laboratories]を行った。PCR条件は変性95℃、30秒;アニリーング50℃、30秒;及び重合反応72℃、1分を30回繰り返した。
【0059】
その結果、NCgl1480遺伝子の上流と下流の部分、319bpと410bpが含まれた2対のDNA断片(NCgl1480‐A及びNCgl1480‐B)、NCgl2107遺伝子の上流と下流の部分、324bpと300bpが含まれた2対のDNA断片(NCgl2107‐A及びNCgl2107‐B)、NCgl2108遺伝子の上流と下流の部分、381bpと377bpが含まれた2対のDNA断片(NCgl2108‐A及びNCgl2108‐B)、そしてNCgl2986遺伝子の上流と下流の部分、356bpと374bpが含まれた2対のDNA断片(NCgl2986‐A及びNCgl2986‐B)を得た。PCRにより増幅された前記DNA断片は、インフュージョンクローニングキット(Invitrogen)を用いて、 pDZプラスミド(特許文献2)に接合した後、大腸菌DH5αで形質転換して、25mg/Lのカナマイシンが含まれたLB固体培地に塗抹した。PCRを通じて目的とした遺伝子が挿入されたプラスミドで形質転換されたコロニーを選別した後、通常に知られているプラスミド抽出法によりプラスミドを獲得した。前記プラスミドをそれぞれpDZ‐ΔNCgl1480、pDZ‐ΔNCgl2107、pDZ‐ΔNCgl2108及びpDZ‐ΔNCgl2986と命名した。pDZ‐ΔNCgl1480はNCgl1480の遺伝子1672bpが、pDZ‐ΔNCgl2107はNCgl2107の遺伝子1026bpが、pDZ‐ΔNCgl2108はNCgl2108の遺伝子576bpが、pDZ‐ΔNCgl2986はNCgl2986の遺伝子1092bpが喪失された。
【0060】
実施例6:リジン生産菌株であるKCCM11016P由来の細胞壁加水分解に関連するタンパク質遺伝子不活性化菌株の製作及び評価
代表的なL‐リジン生産コリネバクテリウム属菌株であるKCCM11016P菌株を基盤に、前記で選別した細胞壁加水分解関連タンパク質遺伝子の不活性化菌株を製作して、そのリジン生産能を評価しようとした。
【0061】
前記実施例5で製作した4種の組換えプラスミド(pDZ‐ΔNCgl1480、pDZ‐ΔNCgl2107、pDZ‐ΔNCgl2108及びpDZ‐ΔNCgl2986)を電気パルス法を利用してコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11016Pにそれぞれ形質転換させて、相同組換えにより染色体上の目的遺伝子が不活性化された菌株をPCR方法により製造した。製造された不活性化菌株をそれぞれKCCM11016P::ΔNCgl1480、KCCM11016P::ΔNCgl2107、 KCCM11016P::ΔNCgl2108、KCCM11016P::ΔNCgl2986と命名した。
【0062】
前記4種の菌株と対照群とを下記の種培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに接種して、30℃で20時間、200rpmで振とう培養した。その後、1ml種培養液を下記の生産培地24mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに接種して、37℃で96時間、200rpmで振とう培養した。前記種培地と生産培地との組成はそれぞれ下記のとおりである。
【0063】
<種培地(pH7.0)>
ブドウ糖20g、(NH
4)
2SO
4 10g、ペプトン 10g、酵母抽出物 5g、尿素 1.5g、KH
2PO
44g、K
2HPO
4 8g、MgSO
4・H
2O 0.5g ビオチン 100μg、チアミン塩酸塩 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 2000μg(蒸留水1リットル基準)
【0064】
<生産培地(pH7.0)>
ブドウ糖100g、(NH
4)
2SO
4 40g、大豆タンパク質 2.5g、トウモロコシ浸漬固形分(Corn Steep Solids) 5g、尿素 3g、KH
2PO
4 1g、MgSO
4・H
2O 0.5g ビオチン 100μg、チアミン塩酸塩 1000μg、パントテン酸カルシウム 2000μg、ニコチンアミド 3000μg、 CaCO
3 30g(蒸留水1リットル基準)
【0065】
培養を終了した後、HPLCを利用して分析したL‐リジン濃度を下記表4に示した。表4の結果は3回繰り返した実験結果値であり、平均値で生産能を評価した。
【0066】
【表4】
【0067】
その結果、前記表4で示したように、親菌株KCCM11016PからNCgl1480、NCgl2107、NCgl2108及びNCgl2986遺伝子が不活性化された菌株でリジン生産能がそれぞれ3.2%、5.4%、13%及び15%増加した。
【0068】
このような結果は、コリネバクテリウム属微生物で細胞溶解を起こすことができる細胞壁加水分解に関連するタンパク質を不活性化させることにより、L-リジン生産能を向上させうることを示唆する。
【0069】
そこで、さらに多様なコリネバクテリウム属微生物において前記細胞壁加水分解関連タンパク質を不活性化させた場合も、同様の効果があるかどうかを下記で実験した。
【0070】
実施例7:L‐リジン生産菌株であるKCCM10770P由来の細胞壁加水分解に関連するタンパク質不活性化菌株の製作及び評価
リジン生合成経路が強化されたL‐リジン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM10770P(特許文献2)で細胞壁加水分解に関連するタンパク質の不活性化効果が前記実施例6の実験結果と類似であるかを比較するため、4種の細胞壁加水分解に関連するタンパク質が不活性化された菌株を前記実施例6と同様の方法で製造して、KCCM10770P::ΔNCgl1480、KCCM10770P::ΔNCgl2107、 KCCM10770P::ΔNCgl2108、KCCM10770P::ΔNCgl2986と命名し、L‐リジン生産能を比較した。
【0071】
前記菌株のリジン生産能を比較するために、各対照群と共に実施例6と同様の方法で培養し、培養を終了した後、HPLCを利用して分析したL‐リジン濃度は下記表5で示した。表5の結果は3回繰り返した実験結果値であり、平均値で生産能を評価した。
【0072】
【表5】
【0073】
その結果、前記表5で示したように、親菌株KCCM10770PからNCgl1480、NCgl2107、NCgl2108及びNCgl2986遺伝子がそれぞれ不活性化された菌株でリジン生産能がそれぞれ2.2%、4.3%、12.1%及び14.2%増加した。
【0074】
したがって、コリネバクテリウム・グルタミカムKCCM10770P(特許文献2)においても前記実施例6のように細胞壁加水分解に関連するタンパク質を不活性化させることにより、L‐リジン生産能を向上させうることを確認した。
【0075】
実施例8:L‐リジン生産菌株であるKCCM11347P由来の細胞壁加水分解に関連するタンパク質不活性化菌株の製作及び評価
人工変異法により製作されたコリネバクテリウム・グルタミカムL‐リジン生産菌株であるKCCM11347P(前記微生物はKFCC10750として公開された後、ブダペスト条約下の国際寄託機関に再寄託されて、KCCM11347Pを付与された、特許文献3)でも細胞壁加水分解に関連するタンパク質の不活性化の効果を確認するために、4種の細胞壁加水分解に関連するタンパク質が不活性化された菌株を前記実施例6と同様の方法で製造して、KCCM11347P::ΔNCgl1480、KCCM11347P::ΔNCgl2107、 KCCM11347P::ΔNCgl2108、KCCM11347P::ΔNCgl2986と命名し、L‐リジン生産能を比較した。
【0076】
前記菌株のリジン生産能を比較するために、各対照群と共に実施例6と同様の方法で培養して、培養を終了した後、HPLCを利用して分析したL‐リジン濃度は下記表6で示した。表6の結果は3回繰り返した実験結果値であり、平均値で生産能を評価した。
【0077】
【表6】
【0078】
その結果、前記表6で示したように、親菌株KCCM11347PからNCgl1480、NCgl2107、NCgl2108及びNCgl2986遺伝子が不活性化された菌株でリジン生産能がそれぞれ2%、2.4%、11.7%及び14.4%増加した。
【0079】
したがって、コリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11347P(特許文献3)においても前記実施例6及び7のように細胞壁加水分解に関連するタンパク質を不活性化させることにより、L‐リジン生産能を向上させることを確認した。
【0080】
実施例9:L‐リジン生産菌株であるCJ3P由来の細胞壁加水分解に関連するタンパク質不活性化菌株の製作及び評価
コリネバクテリウム・グルタミカム野生株に3種の変異[pyc(P458S)、hom(V59A)、lysC(T311I)]を導入して、L‐リジン生産能を有することになったコリネバクテリウム・グルタミカムCJ3P(非特許文献4)においても前記実施例6,7,8と同様に細胞壁加水分解に関連するタンパク質の不活性化効果を調べるために、4種の細胞壁加水分解に関連するタンパク質が不活性化された菌株を前記実施例6と同様の方法で製造して、CJ3P::ΔNCgl1480、CJ3P::ΔNCgl2107、CJ3P::ΔNCgl2108、CJ3P::ΔNCgl2986と命名し、L‐リジン生産能を比較した。
【0081】
前記菌株のリジン生産能を比較するために、各対照群と共に実施例6と同様の方法で培養し、培養を終了した後、HPLCを利用して分析したL‐リジン濃度は下記表7で示した。表7の結果は3回繰り返した実験結果値であり、平均値で生産能を評価した。
【0082】
【表7】
【0083】
その結果、前記表7で示したように、親菌株CJ3PからNCgl1480、NCgl2107、NCgl2108及びNCgl2986遺伝子が不活性化された菌株でリジン生産能がそれぞれ3%、1.3%、12.7%及び16%増加した。
【0084】
したがって、コリネバクテリウム・グルタミカムCJ3Pにおいても前記実施例6,7,8の実験結果のように細胞壁加水分解に関連するタンパク質を不活性化させることにより、L‐リジン生産能を向上させることを確認した。
【0085】
実施例10:L‐リジン生産菌株であるKCCM11016P由来の細胞壁加水分解に関連するタンパク質の同時不活性化菌株の製作及び評価
前記実施例からL‐リジン生産菌株であるコリネバクテリウム属において細胞壁加水分解関連タンパク質をそれぞれ不活性化させた場合、L‐リジン生産能が増加されること確認した後、関連タンパク質を2種以上同時に不活性化させる場合もL‐リジン生産能が増加されるかを確認しようとした。
【0086】
そこで、L‐リジン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11016Pで細胞壁加水分解に関連するタンパク質の同時不活性化による効果を確認するために次の実験を行った。単独欠損の場合、L‐リジン生産能向上に効果が高い2種の細胞壁加水分解に関連するタンパク質遺伝子(NCgl2108とNCgl2986)が同時に不活性化された菌株を前記実施例6と同様の方法で製造して得られた菌株をKCCM11016P::ΔNCgl2108/ΔNCgl2986と命名し、L‐リジン生産能を比較した。
【0087】
前記菌株のリジン生産能を比較するために、対照群と共に実施例6と同様な方法で培養し、培養を終了した後、HPLCを利用して分析したL‐リジン濃度は下記表8に示した。表8の結果は3回繰り返した実験結果値であり、平均値で生産能を評価した。
【0088】
【表8】
【0089】
その結果、前記表8で示したように、親菌株KCCM11016PからNCgl2108及びNCgl2986遺伝子が同時不活性化された菌株でリジン生産能が約21.6%増加した。
【0090】
このような結果は、細胞壁加水分解に関連するタンパク質を1種だけでなく、2種以上同時にコリネバクテリウム属微生物で不活性化させた場合も、L‐リジン生産能を向上させうることを示唆する。
【0091】
そこで、前記菌株、KCCM11016P‐ΔNCgl2986をCA01‐2292と命名し、CA01‐2292は2014年12月5日付でブダペスト条約下、国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に国際寄託しKCCM11627Pと寄託番号を付与された。
【0092】
前記の結果から、L‐リジン生産菌株における細胞壁加水分解に関連するタンパク質の内在的活性に比べて、不活性化は発酵中に発生する細胞溶解を制御することによりL‐リジン生産能を増加させるのに効果があったことを確認した。また、このような細胞壁加水分解に関連するタンパク質は1種だけでなく、2種以上の同時不活性化もL‐リジン生産能を増加させることを確認し、新規のL‐リジン生産菌株を提供することができた。
【0093】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形で実施されることができることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解するべきである。本発明の範囲は、前記の詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0094】