特許第6646103号(P6646103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646103
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 16/26 20060101AFI20200203BHJP
   G11C 16/04 20060101ALI20200203BHJP
   G06F 21/73 20130101ALI20200203BHJP
【FI】
   G11C16/26 100
   G11C16/04 170
   G06F21/73
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-103157(P2018-103157)
(22)【出願日】2018年5月30日
(65)【公開番号】特開2019-207743(P2019-207743A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2018年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】511062254
【氏名又は名称】ウィンボンド エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】岡部 翔
【審査官】 堀田 和義
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0278551(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0055417(US,A1)
【文献】 特開2017−216030(JP,A)
【文献】 特開2017−169049(JP,A)
【文献】 特開2017−41295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/26
G11C 16/04
G06F 21/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロックを含み、各ブロックがNAND型ストリングを含むメモリセルアレイと、
各ブロックのNANDストリングに接続された複数のビット線と、
前記複数のビット線の各々に接続された複数のページバッファ/センス回路と、
前記メモリセルアレイの特定のブロックを選択する選択手段と、
前記選択手段により特定のブロックが選択されたとき、選択された特定のブロックの全ワード線に、メモリセルの記憶状態にかかわらずメモリセルがオンする電圧を印加し、前記複数のページバッファ/センス回路により特定のブロックに接続されたビット線の読出しを行う読出し手段と、
前記読出し手段により読み出された特定のブロックのビット線対の電位差を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき半導体装置の固有データを生成する生成手段と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記特定のブロックは、前記ページバッファ/センス回路から物理的に最遠端のブロックである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記特定のブロックは、ユーザーによってアクセスすることができない領域である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記複数のページバッファ/センス回路の各センスノードに電気的に接続され、前記検出手段は、複数対のセンスノードの電位差をそれぞれ検出するための複数の差動センスアンプを含む、請求項1ないしいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記検出手段は、隣接するビット線に対応するセンスノードの電位差を検出する、請求項1ないしいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記読出し手段が偶数ビット線または奇数ビット線の読出しを行う場合、前記隣接するビット線は、偶数ビット線または奇数ビット線である、請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記検出手段の検出結果を表すデータを演算する演算回路を含み、前記生成手段は、当該演算回路の演算結果を固有データとして出力する、請求項1ないしいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体装置はさらに、固有データの生成を制御する制御手段を含み、
前記制御手段は、パワーオンシーケンス時あるいは外部からの要求に応答して前記選択手段、前記読出し手段、前記検出手段および前記生成手段を制御し、前記固有データを生成させる、請求項1ないしいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固有情報を生成する機能を備えた半導体装置に関し、特にNAND型フラッシュメモリを利用した固有情報の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスや電子装置のセキュリティの強化に伴い、そこに実装される半導体装置の偽造や模倣の対策が求められている。ある方法では、半導体装置に固有情報を与えておき、固有情報が認証された場合には、当該半導体装置が真正なものとして使用を許可している。固有情報は、例えば、半導体装置の不揮発性メモリ等に格納することが可能であるが、このような方法は、半導体装置を解析することで固有情報が読み取られたり、あるいは外部から半導体装置を不正にアクセスすることで固有情報が読み取られてしまうリスクがある。
【0003】
近年、物理的にクローンの作製をすることができないPUF(Physical Unclonable Function)が注目されている。PUFは、予測不可能であり、秘匿性が高くかつ恒久性のある物理的情報を固有データとして用いるものである。例えば、アービタ回路を利用したPUF、リングオシレータを利用したPUF、SRAMを利用したPUFなどが提案されている。また、NAND型フラッシュメモリでは、消去ベリファイを利用したPUF(特許文献1)や電圧調整ユニットを利用したPUF(特許文献2)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開2015/0007337A1号公報
【特許文献2】米国特許公開2015/0055417A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置の設計/製造では、回路素子や配線等のバラツキ(変動)を抑制すること、あるいはバラツキを最小化することで、再現性、信頼性の高い半導体装置を提供している。他方、回路素子や配線等のバラツキを最小化することは、回路素子や配線に均一性をもたらすことであり、PUFまたは固有データのランダム性(非予測性)の低下になり得る。それ故、再現性、信頼性を維持しつつ、固有データのランダム性を確保できるPUF技術が望まれる。
【0006】
本発明は、新規な方法により固有データを生成する機能を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体装置は、NAND型ストリングを含むメモリセルアレイと、前記メモリアレイの特定の領域を選択する選択手段と、前記選択手段により選択された特定の領域を読み出す読出し手段と、前記読出し手段により読み出された特定の領域のビット線対の電位差を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づき半導体装置の固有データを生成する生成手段とを有する。
【0008】
ある実施態様では、前記特定の領域は、前記読出し手段から物理的に最遠端のブロックである。ある実施態様では、前記特定の領域は、前記読出し手段から物理的に最遠端のブロックに含まれるページである。ある実施態様では、前記特定の領域は、ユーザーによってアクセスすることができない領域である。ある実施態様では、前記特定の領域は、NAND型ストリングに接続されたMOSトランジスタである。ある実施態様では、前記選択手段は、メモリセルの記憶状態にかかわらずメモリセルが導通する電圧を選択されたブロック内の全ワード線に印加する。ある実施態様では、前記検出手段は、前記読出し手段のセンスノードに電気的に接続され、前記検出手段は、前記センスノードの電位差を検出するための差動センスアンプを含む。ある実施態様では、前記ビット線対は、読出し動作時に隣接するビット線である。ある実施態様では、前記読出し手段が偶数ビット線または奇数ビット線の読出しを行う場合、前記ビット線対は、隣接する偶数ビット線または奇数ビット線である。ある実施態様では、前記ビット線対は、予め決められた規則に従い選択されたビット線である。ある実施態様では、前記生成手段は、前記検出手段の検出結果を表すデータを演算する演算回路を含み、前記生成手段は、当該演算回路の演算結果を固有データとして出力する。ある実施態様では、半導体装置はさらに、固有データの生成を制御する制御手段を含み、前記制御手段は、パワーオンシーケンス時あるいは外部からの要求に応答して前記選択手段、前記読出し手段、前記検出手段および前記生成手段を制御し、前記固有データを生成させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メモリセルアレイから読み出された特定の領域のビット線対の電位差を検出し、当該検出結果に基づき固有データを出力するようにしたので、半導体装置の再現性や信頼性を保ちつつ、固有データのランダム性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係るNAND型フラッシュメモリの構成を示す図である。
図2】本発明の実施例に係るメモリセルアレイのNANDストリングの構成を示す図である。
図3】本発明の実施例に係るビット線選択回路の一例を示す図である。
図4】本発明の実施例に係るページバッファ/センス回路の一例を示す図である。
図5】本発明の実施例に係る固有データ生成回路の一例を示す図である。
図6】NAND型フラシュメモリの動作時に印加されるバイアス電圧を示すテーブルである。
図7】本発明の実施例に係る固有データ生成の動作を説明するフローチャートである。
図8】本発明の実施例に係るダミーアレイの選択例を説明する図である。
図9】ダミーアレイに印加されるワード線電圧の例を説明する図である。
図10】本発明の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の半導体装置は、半導体装置に固有の固有データを生成し、これを外部に出力する機能を有する。ある実施態様では、本発明の半導体装置は、NAND型フラッシュメモリを含み、NAND型フラッシュメモリを利用して固有データを生成し、これを外部に出力する。本発明の半導体装置は、NAND型フラッシュメモリそれ自身であってもよいし、これ以外の機能を有する半導体回路を備えていても良い。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例に係るNAND型フラッシュメモリの構成を示す図である。本実施例のフラッシュメモリ100は、複数のメモリセルが行列状に配列されたメモリアレイ110と、外部入出力端子I/Oに接続され入出力データ等を保持する入出力バッファ120と、入出力バッファ120からのアドレスデータを受け取るアドレスレジスタ130と、入出力バッファ120から受け取ったコマンドや外部制御信号(CLE、ALE等)に基づき各部を制御するコントローラ140と、アドレスレジスタ130からの行アドレス情報Axに基づきブロックの選択およびページの選択等を行うワード線選択回路150と、選択ページから読み出されたデータを保持したり、選択ページにプログラムすべきデータを保持するページバッファ/センス回路160と、アドレスレジスタ130からの列アドレス情報Ayに基づきページバッファ/センス回路160内のデータの選択等を行う列選択回路170と、データの読出し、プログラムおよび消去等のために必要な種々の電圧(書込み電圧Vpgm、パス電圧Vpass、消去電圧Vers、読出し電圧Vreadなど)を生成する内部電圧発生回路180とを含んで構成される。
【0013】
メモリアレイ110は、列方向にm個のメモリブロックBLK(0)、BLK(1)、・・・、BLK(m−1)を有する。1つのメモリブロックには、図2に示すように複数のNANDストリングが形成される。1つのNANDストリングは、直列に接続された複数のメモリセルMCi(i=0、1、・・・、62、63)と、メモリセルMC63のドレイン側に接続されたビット線側選択トランジスタTR1と、メモリセルMC0のソース側に接続されたソース線側選択トランジスタTR2とを含んで構成される。メモリセルMCiのコントロールゲートは、対応するワード線WLiに接続され、ビット線側選択トランジスタTR1のゲートは選択ゲート線SGDに接続され、ソース線側選択トランジスタTR2のゲートは選択ゲート線SGSに接続される。ワード線選択回路150は、各動作状態時に、行アドレスAxに基づき選択ゲート信号SGD、SGSを介して選択トランジスタTR1、TR2を選択的に駆動する。
【0014】
NANDストリングは、基板表面に形成された2次元アレイ状であってもよいし、基板表面上に形成された半導体層を利用する3次元アレイ状であってもよい。また、1つのメモリセルは、1ビット(2値データ)を記憶するSLCタイプでもよいし、多ビットを記憶するMLCタイプであってもよい。
【0015】
各ブロックの各NANDストリングは、ビット線選択トランジスタTR1を介してグローバルビット線GBL0、GBL1、…、GBLnに接続され、グローバルビット線GBL0、GBL1、…、GBLnは、ページバッファ/センス回路160に接続される。各グローバルビット線は、例えば、金属配線から構成され、メモリセルアレイ110のブロック(0)からブロック(m−1)に向けて延在する。
【0016】
次に、ページバッファ160について説明する。ページバッファ160は、図3に示すように、偶数のグローバルビット線または奇数のグローバルビット線を選択するためのビット線選択回路200を含む。図3には、1つのNANDストリングNUに接続された偶数ビット線GBL_eと、1つのNANDストリングNUに接続された奇数ビット線GBL_oとを含む一対のグローバルビット線が例示されている。ビット線選択回路200は、読出し時またはプログラム時に、偶数ビット線GBL_eまたは奇数ビット線GBL_oを選択し、選択された偶数ビット線GBL_eまたは奇数ビット線GBL_oをページバッファ/センス回路160のセンス回路(センスノードSNS)に電気的に接続する。つまり、ページバッファ/センス回路160は、1ページ分用意されるが、1つのページバッファ/センス回路160は、一対の偶数ビット線GBL_eおよび奇数ビット線GBL_oに共有される。
【0017】
ビット線選択回路200は、読出し時にセンスノードSNSに電気的に結合されるビット線選択トランジスタBLSと、ビット線選択トランジスタBLSのノードN1と偶数ビット線GBL_eとの間に直列に接続された偶数選択トランジスタSEL_eと、ビット線選択トランジスタBLSのノードN1と奇数ビット線GBL_oとの間に直列に接続された奇数選択トランジスタSEL_oと、偶数ビット線GBL_eと仮想電位VPREとの間に接続された偶数バイアス選択トランジスタYSEL_eと、奇数ビット線GBL_oと仮想電位VPREとの間に接続された奇数バイアス選択トランジスタYSEL_oとを含んで構成される。
【0018】
ビット線選択トランジスタBLS、偶数選択トランジスタSEL_e、奇数選択トランジスタSEL_o、偶数バイアス選択トランジスタYSEL_e、奇数バイアス選択トランジスタYSEL_oは、NMOSトランジスタから構成され、各ゲートには、コントローラ140からの制御信号が印加される。また、仮想電位VPREには、コントローラ140の制御により、内部電圧発生回路180から動作状態に応じた種々のバイアス電圧またはプリチャージ電圧が供給される。
【0019】
例えば、読出し動作において、偶数ページの読出しが行われるとき、偶数選択トランジスタSEL_e、ビット線選択トランジスタBLSがオンされ、奇数選択トランジスタSEL_oがオフされ、偶数ビット線GBL_eが選択され、奇数ビット線GBL_oが非選択される。また、偶数バイアストランジスタYSEL_eがオフされ、奇数バイアストランジスタYSEL_oがオンされ、非選択の奇数ビット線GBL_oには、仮想電位VPREからGNDが供給される。他方、奇数ページの読出しが行われるとき、奇数選択トランジスタSEL_o、ビット線選択トランジスタBLSがオンされ、偶数選択トランジスタSEL_eがオフされ、奇数ビット線GBL_oが選択され、偶数ビット線GBL_eが非選択される。また、奇数バイアストランジスタYSEL_oがオフされ、偶数バイアストランジスタYSEL_eがオンされ、非選択の偶数ビット線GBL_eには、仮想電位VPREからGNDが供給される。こうして、偶数ページおよび奇数ページのビット線シールド読出しが行われる。
【0020】
また、プログラム時にも、偶数ページと奇数ページのプログラムが交互に行われ、非選択のページには、プログラムディスターブを抑制するための電圧が仮想電位VPREから供給される。
【0021】
図4は、1つのページバッファ/センス回路160の一例である。ページバッファ/センス回路160は、電圧供給部V1から供給された電圧をビット線にプリチャージするためのトランジスタBLPRE、ビット線をクランプするためのトランジスタBLCLAMP、センスノードSNS、センスノードSNSとラッチノードN2間の電荷を転送するトランジスタBLCD、ラッチノードN2に接続されたラッチ回路LATなどを含んで構成される。トランジスタBLCLAMPは、ビット線選択回路200のビット線選択トランジスタBLSに接続される。
【0022】
読出し動作時、電圧供給部V1から供給されたプリチャージ電圧は、トランジスタBLPRE、BLCLAMPを介して、ビット線選択回路200によって選択された偶数ビット線GBL_eまたは奇数ビット線GBL_oに印加される。その後、選択ワード線に読出し電圧が印加され、非選択ワード線に読出しパス電圧が印加され、選択ワード線のメモリセルがオンすれば、グローバルビット線のプリチャージ電圧がソース線SLに放電され、センスノードSNSがGNDレベルとなる。メモリセルがオフであれば、グローバルビット線はソース線SLから隔離され、センスノードSNSにはプリチャージ電圧が保持される。センスノードSNSの電荷は、トランジスタBLCDを介してノードN2に転送され、ラッチ回路LATは、ノードN2の電位によりHまたはLレベルを保持する。
【0023】
図5に、本実施例による固有データ生成回路の一例を示す。固有データ生成回路300は、ページバッファ/センス回路160に接続され、メモリセルアレイ110の特定の領域が読出されたとき、隣接する一対のグローバルビット線に接続されたセンスノードの電位差を検出し、その検出結果を利用して固有データを生成し、これを出力する。
【0024】
具体的には、固有データ生成回路300は、隣接するページバッファPB_0、PB−1に接続された差動センスアンプ310_0、隣接するページバッファPB_2、PB_3に接続された差動センスアンプ310_1、…、隣接するページバッファPB_n−1、PB_nに接続された差動センスアンプ310_n−1/2を含む(差動センスアンプを総称するとき、差動センスアンプ310という)。ページバッファ/センス回路160の数が1ページであれば、差動センスアンプ310の数は、1/2ページである。
【0025】
差動センスアンプ310_0は、ページバッファPB_0のセンスノードSNS_0と、これに隣接するページバッファPB_1のセンスノードSNS_1の電位差を検出し、その検出結果を表すデータDout_0を出力する。他の差動センスアンプ310も同様に、隣接するページバッファのセンスノードの電位差を検出し、その検出結果を表すデータDout_1、…、Dout_n−1/2を出力する。ビット線選択回路200によって偶数ビット線が選択された場合、差動センスアンプ310は、隣接する偶数ビット線に接続されたセンスノードの電位差を検出し、また、ビット線選択回路200によって奇数ビット線が選択されて場合、差動センスアンプ310は、隣接する奇数ビット線に接続されたセンスノードの電位差を検出する。差動センスアンプ310は、固有データの生成が行われるときコントローラ140によって活性化される。
【0026】
図6は、フラッシュメモリの各動作時に印加されるバイアス電圧の一例を示したテーブルである。読出し動作では、ビット線に或る正の電圧を印加し、選択ワード線に或る読み出し電圧(例えば0V)を印加し、非選択ワード線に読み出しパス電圧Vpass(例えば4.5V)を印加し、選択ゲート線SGD、SGSに正の電圧(例えば4.5V)を印加し、NANDストリングのビット線側選択トランジスタ、ソース線側選択トランジスタをオンし、共通ソース線に0Vを印加する。プログラム(書込み)動作では、選択されたワード線に高電圧のプログラム電圧Vpgm(15〜20V)を印加し、非選択のワード線に中間電位(例えば10V)を印加し、ビット線側選択トランジスタをオンさせ、ソース線側選択トランジスタをオフさせ、「0」または「1」のデータに応じた電位をビット線に供給する。消去動作では、ブロック内の選択されたワード線に0Vを印加し、Pウエルに高電圧(例えば20V)を印加し、フローティングゲートの電子を基板に引き抜くことで、ブロック単位でデータを消去する。固有データを生成する時のバイアスについては後述する。
【0027】
次に、本実施例のNAND型フラッシュメモリにおける固有データの生成動作について説明する。図7は、固有データの生成動作を説明するためのフローチャートである。コントローラ140は、例えば、ソフトウエアプログラムを実行可能なマイクロコンピュータまたはステートマシンにより構成される。コントローラ140は、外部制御信号や外部からのコマンドに基づき、通常の読出し動作、プログラム動作、消去動作の制御に加えて、固有データの生成を制御する。
【0028】
ある実施態様では、コントローラ140は、固有データの生成を実行するか否かを判定する機能を有する(S100)。例えば、コントローラ140は、外部から固有データの生成を指示するコマンドを受け取ったとき、固有データの生成を実行する。あるいは、コントローラ140は、電源投入時のパワーオンシーケンスを実行するとき、あるいは予め決められた動作を実行するとき、固有データの生成を実行する。
【0029】
コントローラ140は、固有データの生成を実行すると判定した場合、ワード線選択回路150を介してメモリセルアレイ110のダミーアレイの読出しを開始する(S110)。ダミーアレイは、固有データの生成に適したメモリセルアレイ上の特定の領域であり、予めダミーアレイを選択するためのアドレス情報がコントローラ140のメモリ等の格納される。ある実施態様では、ダミーアレイは、図8に示すように、ページバッファ/センス回路160から最遠端のブロックBLK(m−1)またはその近傍のブロックに設定される。言い換えれば、ダミーアレイDAは、ブロックとページバッファ/センス回路160とを接続するグローバルビット線の配線長が最も長くなる領域である。また、ダミーアレイDAは、ユーザーによってアクセスすることができない領域であってもよいし、あるいはユーザーによってアクセス可能なメモリとして利用できる領域であってもよい。
【0030】
最遠端のブロックBLK(m−1)は、他のブロックよりもグローバルビット線の配線が長くなるため、配線のバラツキ(例えば、線幅、膜厚、ピッチなど)が配線のRC(時定数)に大きく影響する。そのため、隣接するビット線間において、充放電の特性に大きな差異が生じ易くなる。
【0031】
ダミーアレイDAの読出しは、通常の読出しと同様に、ビット線選択回路200によって選択された偶数ビット線または奇数ビット線がプリチャージされ、非選択の奇数ビット線または偶数ビット線にGNDが供給される。プリチャージ後、ワード線選択回路150は、ダミーアレイDAとして選択されたブロックの全ワード線に、メモリセルの記憶状態にかかわらずメモリセルがオンするパス電圧Vpufを印加する。つまり、パス電圧Vpufは、図9に示すように、消去セル(データ「1」)およびプログラムセル(データ「0」)が導通するときの閾値よりも十分高い電圧である。なお、パス電圧Vpufは、読出し動作時に非選択ワード線に印加するパス電圧と同じレベルであってもよい(図6を参照)。
【0032】
ダミーアレイDAにはパス電圧Vpufが印加されるため、ダミーアレイDAの全てのメモリセルがオンし、グローバルビット線のプリチャージ電圧、つまりセンスノードSNSの電圧は、NANDストリングを介してGNDレベルのソース線SLに放電される。このセンシングと同時に、センスノードSNSに接続された差動センスアンプ300によって、隣接するビット線対の電位差が検出される(S120)。例えば、差動センスアンプ300は、SNSk>SNSk+1であれば、Dout_kとして「0」を出力し、SNSk≦SNSk+1であれば、Dout_kとして「1」を出力する。
【0033】
コントローラ140は、ダミーアレイDAの読出しによりビット線対の電位差を検出した後、その検出結果に基づき固有データを外部に出力する(S130)。固有データを生成するとき、ダミーアレイDAの読出しは、偶数ビット線または奇数ビット線のいずれかであってもよいし、偶数ビット線と奇数ビット線の双方であってもよい。固有データの出力方法は任意であり、例えば、検出された全てのデータを出力するようにしてもよいし、列選択回路170によって予め決められたビット線またはビット数のデータを出力するようにしてもよい。また、NAND型フラッシュメモリの入出力端子数に応じて、出力する固有データのビット数を調整してもよい。さらに、NAND型フラッシュメモリがSPI(Serial Peripheral Interface)機能を搭載している場合には、外部シリアルクロックに同期して固有データを出力するようにしてもよい。
【0034】
本実施例によれば、ダミーアレイの読出し時にビット線対の電位差を検出し、半導体装置の固有データを生成するようにしたので、比較的簡易な構成により再現性の高い非予測性の固有データを得ることができる。
【0035】
次に、本発明の他の実施例について説明する。図10に、他の実施例による固有データ生成回路300Aの構成を示す。本実施例では、固有データ生成回路300Aは、複数の差動センスアンプ310_0、310_1、…、300_n−1/2の出力データDout_0、Dout_1、…、Doutn−1/2を受け取り、これらのデータを演算処理する演算回路320を備えている。演算回路320は、例えば、差動センスアンプ310の出力データの一部をマスクし、あるいは出力データをコード化(圧縮)し、あるいは偶数ビットの出力データと奇数ビットの出力データとを論理演算し、その結果を固有データDout_xとして出力するものであってもよい。
【0036】
上記実施例では、固有データを生成するときダミーアレイDAの全ワード線にパス電圧Vpufを印加して読み出しを行ったが、ダミーアレイDAの特定のページを読出しようにしてもよい。特定のページは、WL0〜WL63の任意のページを設定することができ、特定のページの選択ワード線には、通常の読出しのとき同様に読出し電圧(例えば、0V)が印加され、それ以外の非選択ワード線には、パス電圧Vpuf(例えば、4.5V)が印加される。この場合、特定のページのメモリセルは、データ「1」が記憶された消去セルに設定されている必要がある。これにより、通常の読出し動作と同じバイアス条件で固有データの生成のための読出しを行うことができる。
【0037】
上記実施例では、差動センスアンプ310は、読出し時に隣接するビット線間の電位差を検出するようにしたが、これは一例であり、他の態様であってもよい。例えば、差動センスアンプ310は、偶数番目のページバッファ/センス回路の各センスノード、奇数番目のページバッファ/センス回路の各センスノードの電位差を検出するものであってもよいし、これ以外にも予め決められた規則に従い選択されたページバッファ/センス回路の各センスノードの電位差を検出するものであってもよい。
【0038】
さらに上記実施例では、ページバッファ/センス回路が1ページ分用意され、差動センスアンプ310が1/2ページ分用意される例を示したが、差動センスアンプ310の数は任意であり、固有データとしての非予測性(ランダム性)が得られるのであれば、1/2ページよりも少ない数であってもよい。
【0039】
さらに上記実施例では、ビット線選択回路により選択された偶数ビット線または奇数ビット線のシールド読出しを例示したが、本発明においてシールド読出しは必須ではない。その場合、選択ページの読出しは、オールビット線で行われ、差動センスアンプは、物理的に隣接する偶数ビット線と奇数ビット線の電位差を検出するようにしてもよい。
【0040】
さらに上記実施例では、ダミーアレイDAのワード線に接続されたセルとしてメモリセルを例示したが、本発明においてメモリセルの代わりに通常のMOSトランジスタを用いても良い。つまり、ダミーアレイDAを構成するNANDストリングの一部または全部のメモリセルが通常のMOSトランジスタに置換される。ここで通常のMOSトランジスタとは、プログラムや消去によって、導通する際の閾値が変動しないMOSトランジスタを示す。代表的なMOSトランジスタとして、ディプリッション型やエンハンスメント型、イントリンシック型があるが、いずれのMOSトランジスタをメモリセルの代わりに使用しても、固有データの生成のための読み出しを行うことができる。
【0041】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
100:フラッシュメモリ 110:メモリアレイ
120:入出力バッファ 130:アドレスレジスタ
140:コントローラ 150:ワード線選択回路
160:ページバッファ/センス回路 170:列選択回路
180:内部電圧発生正回路 200:ビット線選択回路
300:固有データ生成回路 310:差動センスアンプ
図1
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