(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記臨時停止制御部は、前記故障列車が連結されている前記相対連結位置が前記基礎列車の前方の場合には、前記故障列車長情報が示す列車長分、前記駅停止位置より後方の位置を前記臨時停止位置として算出し、前記故障列車が連結されている前記相対連結位置が前記基礎列車の後方の場合には、前記基礎列車長情報が示す列車長分、前記駅停止位置より前方の位置を前記臨時停止位置として算出する、
請求項2に記載の車上装置。
前記基礎列車長情報と、前記故障列車長情報と、前記相対連結位置とを含む、連結後の一連の列車の列車構成情報を設定する列車構成情報設定部を備えた請求項1に記載の車上装置から前記列車構成情報を取得し、前記車上装置に前記走行制御情報を送信する地上システムであって、
前記故障列車に乗車している旅客を降車させる所与の駅に前記列車を停車させるために、当該駅に定められた所定の駅停止位置と、前記列車構成情報とを用いて、前記故障列車の旅客が当該駅で降車可能となる臨時停止位置を算出する臨時停止位置算出部と、
前記臨時停止位置の情報を前記走行制御情報に含めて送信する送信制御部と、
を備えた地上システム。
前記臨時停止位置算出部は、前記列車構成情報に含まれる前記相対連結位置が前記基礎列車の前方の場合には、前記故障列車長情報が示す列車長分、前記駅停止位置より後方の位置を前記臨時停止位置として算出し、前記相対連結位置が前記基礎列車の後方の場合には、前記基礎列車長情報が示す列車長分、前記駅停止位置より前方の位置を前記臨時停止位置として算出する、
請求項5に記載の地上システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。
【0019】
図1は、本実施形態における在線管理システムの全体構成例を示す図である。
図1に示すように、在線管理システムは、所定線区の軌道1を走行する列車(基礎列車)2に搭載された車上装置20と、車上装置20との間で無線通信を行う複数の地上装置50(50a,50b)と、地上装置50の各々とデータを送受可能に通信接続された指令装置90と、各地上装置50間および各地上装置50と指令装置90とを通信接続するためのネットワークNとを含む。
【0020】
この在線管理システムでは、一次局である地上装置50が、二次局である列車2(実際には車上装置20)とポーリング方式で無線通信を行う(ポーリング通信)。ポーリング通信は、一次局が二次局のリスト(ポーリングリスト)を用いて全ての二次局に対し順番に問合せを行い、この問合せに二次局が応答することで必要なデータ(送信データ)を送受する無線通信のことをいう。本実施形態では、地上装置50は、管理対象の列車2の列車IDを設定した列車リストをポーリングリストとして用い、ポーリング通信によって進入許容範囲等を含む地上情報を車上装置20に送信する。そして、この地上装置50からのポーリングに対し、車上装置20は、列車位置情報や列車速度情報、列車占有範囲情報等を含む列車情報を返信する。
【0021】
車上装置20は、例えば、速度発電機の検出信号に基づく車軸の回転数を用いて軌道1上の自列車の位置(走行位置)や速度(走行速度)を計測する。そして、地上装置50から受信した進入許容範囲に従い、自列車の位置等に基づき速度照査パターンを作成して、自列車の走行制御を行う。また、車上装置20は、車上に設けられたアンテナを通じて、軌道1に沿って設置された位置補正用の地上子の近接位置を通行する度に当該地上子と近距離無線通信を行う。そして、予め定められている当該地上子の設置位置(絶対位置)で、自列車の位置を補正する。
【0022】
地上装置50は、軌道1を所定の境界位置で区切った制御区間10毎に配置されて地上システム30を構成し、列車2から受信した列車位置情報をもとに自装置が配置された制御区間10内に在線している列車(1台の場合もあれば複数台の場合もある)を管理して、鉄道運行を制御する。
【0023】
各地上装置50は無線基地局51を備えており、無線基地局51の各々は、軌道1上に通信空白地帯が生じないよう、軌道1に沿って適所に設置される。本実施形態では、説明の簡明化のため、各地上装置50が備える無線基地局51は1台とする。無線基地局51は、その無線通信制御領域70が当該地上装置50の配置された制御区間(以下、適宜「対応制御区間」という)10の全域を含み、且つ、隣接する制御区間10との境界部分で互いの無線通信制御領域70同士が一部重なるように設置されている。
【0024】
なお、地上装置50が備える無線基地局51は1台に限らず、2台以上としてもよい。1つの地上装置50が所掌する制御区間10を、地上装置50が備えるX台(X≧1)の無線基地局51による無線通信制御領域70でカバーできればよい。また、無線基地局51を設置する場合に限らず、軌道1に沿って敷設されたループアンテナや漏洩同軸ケーブル(LCX)を用いて無線通信制御領域70を形成してもよい。
【0025】
ここで、地上装置50bは、対応制御区間10内に駅100(詳細には、当該駅100のホーム11に沿った軌道1の部分)を含む。この地上装置50bは、ホームドア111を開閉制御するホームドア制御装置60とデータを送受可能に通信接続されており、地上装置50aの機能である在線検知機能に加えて、ドア制御用データを中継するドア制御用データ中継機能を有する。すなわち、対応制御区間10内に駅100を含む地上装置50bは、該当する駅100への列車2の着発時に当該列車2の車両ドアをホームドア111と連動して開閉させるため、ホームドア制御装置60と列車2側との間のドア制御用データの送受を中継する。なお、図面では、図示の都合上、ホームドア111の数を1つとしているが、実際には、ホーム長手方向に沿って多数のホームドア111が設置されている。以下、地上装置50bを適宜「駅地上装置50b」ともいう。
【0026】
指令装置90は、各地上装置50に対し、該当する地上装置50が管理対象としている列車2の運行に係る運行指令情報を随時通知する。その1つとして、指令装置90は、軌道1上の列車2に障害が発生した場合に、救援指令情報の通知を行う。具体的には、列車2に障害が発生すると、指令員が、当該障害の発生した列車(故障列車)2の軌道1上の位置等をもとに救援に向かわせる列車(救援列車)2を決定して指令装置90に対して救援列車2を指示する操作入力を行う。これを受けて、指令装置90は、救援列車2が位置する無線通信制御領域70に係る地上装置50に救援指令情報を通知する。障害の内容は特に限定されるものではないが、以下では、モーター等の車両の駆動系故障が発生し、自力での走行が不能となった場合を例示する。故障発生時、故障列車2に搭載された車上装置20と地上装置50との通信は可能な状態とする。また、当該障害は運行中に発生し、故障列車2には旅客が乗車しているものとする。
【0027】
[原理]
1.列車の在線検知(ポーリング通信)
図2は、隣接する2つの制御区間10(10−1,2)における列車2の在線状況の一例を示す図である。また、
図3は、ポーリング通信を説明する図であり、
図2の在線状況において制御区間10−1の地上装置50−1が一次局として行うポーリング通信を示している。
【0028】
地上システム30を構成する各地上装置50は、自装置が現時点で管理対象としている列車2の列車ID(列車識別情報)を設定した列車リストを保持している。詳細には、各地上装置50は、ポーリング通信が可能な列車2、すなわち、その無線通信制御領域70内に存在している列車2を管理対象としており、当該無線通信制御領域70に列車2が進入するとその列車IDが列車リストに追加され、当該無線通信制御領域70から列車2が進出するとその列車IDが列車リストから削除されるようになっている。例えば、地上装置50−1の列車リストL1には、無線通信制御領域70−1内の3つの列車2の列車ID「17」「11」「75」が設定されている。
【0029】
そして、各地上装置50は、列車リストを用い、所定の問合せ周期で管理対象の列車2と周期的にポーリング通信を行って、対応制御区間10における列車2の在線(位置)を検知する。例えば地上装置50−1は、
図3に示すように、列車リストL1(
図2を参照)に設定されている列車ID「17」「11」「75」の列車2をそれぞれ宛先とする地上情報を順次送信することで問合せを行う。そして、問合せに応答して列車ID「17」「11」「75」の各列車2においてその車上装置20が送信した列車情報を取得(受信)する。列車情報を取得できたならば、その列車情報に係る列車2の存在を確認でき、その列車情報に含まれる列車位置情報によって当該列車2の位置を把握できる。
【0030】
問合せ周期は、在線検知に要求される通信頻度(在線検知時頻度)に基づき予め定められ、例えば1秒毎や5秒毎等、適宜設定してよい。ただし、ドア制御用データの送受には、在線検知時頻度よりも高い通信頻度(中継時頻度)が要求される。例えば、ドア制御用データの送受は、50[ms]〜300[ms]間隔で行う。そのため、駅地上装置50bは、地上装置50aよりも短い問合せ周期(中継時頻度に応じた周期)でポーリング通信を行う。
【0031】
1−1.地上情報
図4は、ポーリング通信に際し、地上装置50が送信する地上情報のフォーマット例を示す図である。
図4に示すように、地上情報は、当該地上情報の宛先列車IDと、当該地上情報の送信元地上装置IDと、進入許容範囲と、ホームドア情報と、救援指令情報とを含む。
【0032】
進入許容範囲は、列車2に対して許容される軌道1上の進入可能範囲を示し、当該列車2の管理主体の地上装置50によって、例えば当該列車2の位置からの距離等として算出される。すなわち、地上装置50は、管理対象の列車2毎に当該列車2や先行する列車2の列車占有範囲情報等に基づき進入許容範囲を随時算出しており、ポーリング通信に際し、該当する列車2を宛先とする地上情報にそれを含める。
【0033】
ホームドア情報は、駅地上装置50bが列車2側に宛てて送信するドア制御用データである。このホームドア情報は、駅地上装置50bが生成する地上情報に設定され、地上装置50aが生成する地上情報ではブランク(空)とされる。
【0034】
救援指令情報には、指令装置90から通知された救援指令情報が設定される。この救援指令情報は、救援列車IDや故障列車ID、故障列車位置、故障列車車両数、故障列車連結位置、臨時停車駅等を含む。地上装置50は、指令装置90から救援指令情報の通知を受けると、その救援列車IDの列車2を宛先とした地上情報に当該救援指令情報を含める。救援指令情報の通知がなければブランク(空)とされる。
【0035】
1−2.列車情報
図5は、地上装置50からのポーリングに対して車上装置20が返信する列車情報のフォーマット例を示す図である。
図5に示すように、列車情報は、当該列車情報の宛先地上装置IDと、当該列車情報の送信元列車IDと、列車長情報と、列車位置情報と、列車速度情報と、列車占有範囲情報と、車両ドア情報と、救援情報とを含む。
【0036】
列車長情報は、自列車の列車長(全長)を表し、当該列車2を構成する車両編成の情報として設定される。実際の長さが設定されるのでもよいが、本実施形態では、列車長は、当該列車2の車両数によって定められるものとし、通常の運行時は、列車長情報には、車上装置20が保持している車両数223(
図11を参照)が設定される。ただし、自列車が救援列車2とされ、故障列車2を連結した場合には、列車長情報は、連結後の全体を1つの列車とした車両数、すなわち、車両数223に故障列車2の車両数を加えた車両数として算出される。
【0037】
列車位置情報は軌道1上の自列車の走行位置を表し、列車速度情報は自列車の走行速度を表す。なお、自列車の走行位置は、本実施形態では例えば先頭位置とするが、後端位置(最後尾位置)としてもよい。速度発電機の設置位置と自列車の先端位置および後端位置との相対距離は一定であることから、先頭位置とする場合および後端位置とする場合の何れの場合も、速度発電機による計測位置と前述の相対距離とから求めることができる。
【0038】
列車占有範囲情報は、速度発電機を用いた位置の計測誤差を見込んで自列車の先頭位置および後端位置に余裕距離を付加した範囲として算出される。具体的には、列車占有範囲情報には、進行方向前方の先頭位置から先頭余裕距離だけ前方の位置と、進行方向後方の後端位置から後端余裕距離だけ後方の位置とが設定される。先頭余裕距離および後端余裕距離は予め定められる。
【0039】
車両ドア情報は、列車2が駅地上装置50bに宛てて送信するドア制御用データである。この車両ドア情報は、宛先地上装置IDの地上装置50が駅地上装置50bである場合に設定され、地上装置50aの場合にはブランク(空)とされる。
【0040】
救援情報は、故障列車IDと、相対連結位置と、救援列車車両数と、故障列車車両数と、臨時停車駅と、臨時停止位置とを含む。この救援情報は、自列車が救援列車2として運行し、故障列車2を連結した場合に設定される。
【0041】
なお、地上情報および列車情報には、図示したデータの他にも、例えば送信時刻や誤り検出用のCRC(Cyclic Redundancy Checking)符号等、必要なデータが適宜設定される。送信データとして地上情報や列車情報に含めるデータについても、適宜設定される。例えば地上情報には、進入許容範囲以外にも、列車2が自列車の走行を制御するのに必要な走行制御情報等が適宜含められ、列車情報には、地上装置50が走行制御情報を生成するために列車2から取得すべき走行情報等が適宜含められる。また、地上情報には、当該地上情報に係る列車2に対するものとして指令装置90から通知された運行指令情報等が適宜含められる。
【0042】
2.ドア制御用データの中継
駅地上装置50bは、対応制御区間10内の駅100に到着してホーム11に入線した列車2や、ホームドア制御装置60等とともにドア開閉システムを構成する。このドア開閉システムにより、駅100への列車2の発着に合わせたホームドア111と車両ドアの連動開閉制御が実現される。ここで、ホームドア111は、ホーム11に入線した列車2が予め定められている駅停止位置で停止したときに当該列車2の車両ドアと対向するように位置決めされて、ホーム11上に設置されている。
【0043】
このドア開閉システムでは、駅100に到着した列車2が前述の駅停止位置で停止したか否かの判定を行う。本実施形態では、車上装置20において自列車の走行位置および走行速度を計測していることから、それらをもとに自列車が停止したことやその停止位置を特定することが可能である。この停止位置判定は、例えば車上装置20が行う。すなわち、車上装置20は、計測している自列車の走行位置と走行速度とをもとに当該列車2が駅停止位置に停止したか否かの判定を行う。ただし、救援列車2の駅到着時は、停止位置判定として、当該救援列車2が臨時停止位置に停止したか否かの判定を行う。なお、この停止位置判定は、ポーリング通信によって列車2から随時取得している列車位置情報と列車速度情報とをもとに、駅地上装置50bが行うようにしてもよい。
【0044】
また、列車位置情報のみを用いて停止位置判定を行ってもよい。例えば、走行位置の現在値と、直前に計測した走行位置の前回値との差(位置ズレ)が所定の位置ズレ許容距離(例えば、10〜50cm、或いは、ゼロでもよい)以内の状態が所定秒(例えば、1〜3秒)継続した場合に停止したと判断し、また、現在値と駅停止位置又は臨時停止位置とのズレが許容範囲(例えば、10〜50cm程度の距離)以内の状態が所定秒(例えば、1〜3秒)継続した場合に、駅停止位置等に位置すると判断して、最終的に駅停止位置等で停止したことを判定する。
【0045】
この停止位置判定により列車2が駅停止位置又は臨時停止位置で停止したと判定できたならば、ホームドア制御装置60がホームドア111を開動作させる。このホームドア111の開動作は、列車2が駅停止位置等で停止したことを受けて自動的に開始することとしてもよいし、係員の操作入力を受け付けてから開始することとしてもよい。その後は、例えば、ホームドア111が完全に開いたことを受けて、車両ドア制御装置28(
図11を参照)が車両ドアを開動作させる。一方、旅客の乗降が終了すると、車両ドア制御装置28が車両ドアを閉動作させる。この車両ドアの閉動作は、列車2が駅100を出発する出発時刻になったときに自動的に開始することとしてもよいし、係員の操作入力を受け付けてから開始することとしてもよい。そして、例えば、車両ドアが完全に閉じると、ホームドア制御装置60がホームドア111を閉動作させる。
【0046】
このように、ホームドア111と車両ドアを連動して開閉させるためには、列車2側では、例えばホームドア111の開閉状態や、ホームドア111の開扉に伴う車両ドアの開扉指示等をホームドア制御装置60から取得する必要があるし、ホームドア制御装置60においては、例えば車両ドアの開閉状態や、車両ドアの閉扉に伴うホームドア111の閉扉指示等を列車2側から取得する必要がある。また、ホームドア制御装置60は、ホームドア111の開動作を開始するにあたり、列車2が駅停止位置又は臨時停止位置で停止したかどうかを知る必要がある。
【0047】
ドア制御用データ中継機能は、そのために必要なドア制御用データをホームドア制御装置60と列車2側との間で中継する機能であり、在線検知機能で行うポーリング通信を利用する。すなわち、駅地上装置50bは、ポーリング通信に際し、列車2側に宛てたドア制御用データであるホームドア情報を地上情報に設定する。ここで、ホームドア情報は、ホームドア111の開閉状態や車両ドアの開扉指示の他、対象の列車IDや着発番線情報等、上記連動開閉制御のために車両ドア制御装置28がホームドア制御装置60から取得すべきデータを含む。例えば、ホームドア制御装置60は、中継時頻度と同等の頻度でホームドア情報を駅地上装置50bに送信するようになっており、駅地上装置50bは、これを該当する列車2宛ての地上情報に含めることで、ホームドア制御装置60からのホームドア情報を車上装置20に送信する。そして、車上装置20では、ポーリング通信により受信したホームドア情報を随時車両ドア制御装置28に転送する。
【0048】
一方、車上装置20は、駅地上装置50bからのポーリングに対し、駅地上装置50bに宛てたドア制御用データである車両ドア情報を列車情報に設定する。車両ドア情報は、車両ドアの開閉状態やホームドア111の閉扉指示の他、着発番線情報等、ホームドア制御装置60がホームドア111の開閉制御を行うために車両ドア制御装置28から取得すべきデータと、停止位置判定の結果とを含む。例えば、車両ドア制御装置28は、中継時頻度と同等の頻度で車両ドア情報を車上装置20に送信するようになっており、車上装置20は、これに停止位置判定の結果を含めて列車情報に設定し、駅地上装置50bに送信する。そして、駅地上装置50bでは、ポーリング通信により受信した車両ドア情報を随時ホームドア制御装置60に転送する。
【0049】
3.救援列車の運行
列車2に車両故障等の何らかの障害が発生し、その結果列車2が自力走行不能等となった場合には、旅客を所定の駅100で降車させた上で、車両基地へと移動させる等の対策が必要となる。
図6は、そのための救援列車2の運行を説明する図である。
図6において、向かって左方向を上り方(軌道1の起点側)とし、右方向を下り方とする。
【0050】
軌道1を走行する列車2に障害が発生すると、先ず指令装置90が、救援列車2を決定する。具体的には、障害が発生した列車2(故障列車2)に最寄りの駅100や車両基地に留置されている列車2等、故障列車2と位置が近く旅客を乗せていない列車2を救援列車とする。例えば、
図6においてハッチングを付した列車ID「92」の列車2−3に障害が発生し、駅100−3に停車している列車ID「61」の列車2−4を救援列車に選んだとする。
【0051】
救援列車2−4を決定したならば、指令装置90は、その管理主体の地上装置50(
図6では駅地上装置50b)に対し、救援列車ID(ここでは救援列車2−4の列車ID)、故障列車ID(ここでは故障列車2−3の列車ID)、故障列車位置、故障列車車両数、故障列車連結位置、臨時停車駅等を設定した救援指令情報を通知する。
【0052】
故障列車位置は、故障列車2の軌道1上の位置を表し、故障列車車両数は、故障列車2の車両数を表す。故障列車位置は、故障列車2の現在位置を示すが、位置不定の場合は、故障列車2を管理している地上装置50において、故障列車2から最後に(つまり障害が発生する直前に)受信した列車情報の列車位置情報に進入許容範囲を加味した値を用いることもできる。同様に、故障列車車両数は、当該故障列車2から受信した列車情報の列車長情報を用いることができる。指令装置90は、該当する地上装置50からこれらを取得して救援指令情報に設定する。
【0053】
故障列車連結位置は、救援列車2に対する故障列車2の相対連結位置を表し、救援列車2と故障列車2との位置関係から定めることができる。例えば、救援列車2が故障列車2の上り方に位置している場合は、上り方から故障列車2に接近して救援列車2の下り方末端車両に故障列車2の上り方末端車両を連結することとなるが、その場合の故障列車連結位置は「下り方」とされる。逆に、救援列車2が故障列車2の下り方に位置している場合は、下り方から故障列車2に接近して救援列車2の上り方末端車両に故障列車2の下り方末端車両を連結することとなり、その場合の故障列車連結位置は「上り方」とされる。
図6の例は前者であり、故障列車連結位置には「下り方」が設定される。
【0054】
臨時停車駅は、救援列車2が故障列車2を連結した後に停車する所与の駅100であり、救援列車2は、故障列車2の旅客を降車させるために臨時停車駅で停車する。例えば、
図6の例で臨時停車駅が駅100−3の場合には、救援列車2−4は、故障列車2−3を連結した後、駅100−3に戻って故障列車2の旅客を降車させる。
【0055】
この救援指令情報の通知を受けた地上装置50は、当該救援指令情報に従い、進入許容範囲等を算出して走行制御情報を生成する。そして、生成した走行制御情報を救援指令情報と併せて救援列車2宛ての地上情報に設定し、救援列車2に送信する。一方、救援列車2−4の車上装置20では、受信した進入許容範囲等の走行制御情報に基づき自列車の走行および停止を制御する。これにより、故障列車2の救援に係る救援列車2の運行が実現される。
【0056】
例えば
図6の場合では、救援列車2−4は先ず、故障列車2の位置まで走行する(矢印A4)。そして、救援列車2−4が故障列車2の位置まで移動すると、救援列車2−4に故障列車2−3を連結する作業が実施される。この作業の間、救援列車2−4の車上装置20は、上り方末端車両又は下り方末端車両に対する車両の連結を検知するまで待機状態となる。
【0057】
図7は、救援列車2−4と故障列車2−3との連結を説明する図である。本例では、故障列車連結位置は「下り方」であるから、救援列車2−4の下り方末端車両に対し、故障列車2−3の上り方末端車両が、互いの車両の連結器29(
図11を参照)によって連結される。
【0058】
連結器29を介した車両間の連結が完了すると、連結器29から車上装置20に連結信号が出力される。救援列車2の車上装置20は、この連結信号の入力をもって、故障列車2の連結および相対連結位置を検知する。具体的には、下り末端車両の連結器29から連結信号が入力された場合は故障列車2が「下り方」に連結されたことを検知し、上り方末端車両の連結器29から連結信号が入力されたのであれば故障列車2が「上り方」に連結されたことを検知する。
図7の場合は、前者である。ここで検知した故障列車連結位置は、救援指令情報に従った連結が行われていれば、救援指令情報の故障列車連結位置と一致するはずである。
【0059】
故障列車2−3の連結および相対連結位置を検知したならば、救援列車2−4の車上装置20は、連結した故障列車2−3の車両数をもとに、連結後の一連の列車の列車長情報を算出する。自列車である救援列車2−4の車両数223に、取得した故障列車2−3の車両数を加えた車両数として求めることができる。故障列車2−3の車両数は、救援指令情報に含まれる故障列車車両数を用いる。
【0060】
この列車長情報は、その後のポーリング通信で地上情報に含める列車占有範囲情報の算出に用いられる。列車占有範囲情報の算出に際しては先ず、救援列車2−4の進行方向と、検知した相対連結位置とから、故障列車2が進行方向前方に連結されているのか進行方向後方に連結されているのかを判定する。そして、進行方向前方に連結されている場合は、救援列車2−4の先頭位置である走行位置から故障列車2−3の車両数分の長さだけ前方の位置を連結後の一連の列車の先頭位置として求め、求めた一連の列車の先頭位置に先頭余裕距離を付加するとともに、救援列車2−4の後端位置に後端余裕距離を付加して列車占有範囲情報を算出する。一方、進行方向後方に連結されているのであれば、救援列車2−4の後端位置から故障列車2−3の車両数分の長さだけ後方の位置を連結後の一連の列車の後端位置として求め、先頭位置(走行位置)に先頭余裕距離を付加するとともに、求めた一連の列車の後端位置に後端余裕距離を付加して列車占有範囲情報を算出する。実際の処理では、前者の場合は、走行位置から求まる後端位置を終端とする一連の列車の車両数(列車長情報)分の範囲に余裕距離を付加することで求めることができる。後者の場合は、走行位置である先頭位置を始端とする一連の列車の車両数分の範囲に余裕距離を付加することで算出できる。
【0061】
また、臨時停車駅における救援列車2−4の臨時停止位置を算出する。
図8および
図9は、臨時停止位置の算出を説明する図である。
図8では、列車ID「39」の救援列車2の進行方向前方に列車ID「55」の故障列車2が連結されている場合(推進走行の場合)の臨時停止位置P53を示し、
図9では、列車ID「54」の救援列車2の進行方向後方に列車ID「33」の故障列車2が連結されている場合(けん引走行の場合)の臨時停止位置P55を示している。
【0062】
救援列車2は、故障列車2から旅客を降車させるために臨時停車駅に停車することから、当該停車にあたり、故障列車2をその車両ドアが該当する駅100のホームドア111と対向するような位置に停止する必要がある。一方で、軌道1上の各駅100には、予め駅停止位置(
図8、9の駅停止位置P51)が定められている。
【0063】
そこで、
図8に示すように、臨時停車駅へと向かう進行方向前方に列車ID「55」の故障列車2が連結されている推進走行の場合には、列車ID「39」の救援列車2の車上装置20は、列車ID「55」の故障列車2の列車長の分だけ当該駅100の駅停止位置P51より進行方向後
方の位置P53を、臨時停止位置として算出する。一方、
図9に示すように、進行方向後方に列車ID「33」の故障列車2が連結されているけん引走行の場合には、列車ID「54」の救援列車2の車上装置20は、自列車の列車長の分だけ駅停止位置P51より進行方向前
方の位置P55を、臨時停止位置として算出する。これにより、何れの場合も、故障列車2が駅100において駅停止位置P51で停止した状態となるように停止することができる。
【0064】
図6に戻る。故障列車2−3の列車IDや車両数、連結後の一連の列車の列車長情報、臨時停車駅における救援列車2−4の臨時停止位置を取得すると、救援列車2−4の車上装置20がそれらを含めた地上情報を地上装置50(
図6では駅地上装置50b)に送信する。これを受けた地上装置50が走行制御情報を生成する。そして、車上装置20は、生成された走行制御情報を地上装置50から受信すると、受信した走行制御情報に従って自列車の走行および停止を制御する。このときの自列車とは、救援列車2−4に故障列車2−3を連結した一連の列車である。これにより、救援列車2−4は、故障列車2−3をけん引或いは推進して臨時停車駅まで走行し、臨時停止位置で停止することとなる。なお、救援列車2−4の運行においては、救援列車2−4の車上装置20が代表してポーリング通信を行い、故障列車2の車上装置20は地上装置50とのポーリング通信を行わない。そのために、地上装置50(
図6では駅地上装置50b)は、故障列車2の列車ID「92」を削除した列車リストL4を用い、ポーリング通信の対象から故障列車2−3を除外する。
【0065】
ところで、救援列車2の臨時停車駅での停車は、故障列車2の旅客を降車させることを目的としているため、当該停車時におけるホームドア111の開閉は、故障列車2の範囲内のホームドア111のみを対象とするとよい。それ以外のホームドア111については旅客の乗降に無関係だからである。
【0066】
そこで、車上装置20は、故障列車2の車両数(故障列車車両数)を列車情報内の救援情報に含め(
図5参照)、地上装置50に送信する。一方、これを受けた地上装置50、正確には、臨時停車駅を対応制御区間10内に含む駅地上装置50bが、故障列車車両数を用いてホームドア111の開閉対象範囲を指示するホームドア開閉指示情報を生成し、ホームドア制御装置60に送信する。例えば、
図8の例では、ホーム11において駅停止位置P51から列車ID「55」の故障列車2の列車長分の範囲B51を開閉対象範囲とする。或いは、
図9に示す例では、駅停止位置P51から列車ID「33」の故障列車2の列車長分の範囲B53を開閉対象範囲とする。そして、ホームドア制御装置60は、救援列車2が臨時停止位置に停止した場合に、ホームドア開閉指示情報で指定された開閉対象範囲のホームドア111を開閉制御する。以上のようにして臨時停止位置を求め、開閉対象範囲のホームドア111のみを対象に開閉制御することで、臨時停車駅で故障列車2の旅客を確実且つ安全に降車させることができる。
【0067】
[機能構成]
1.地上装置
図10は、地上装置50の機能構成例を示すブロック図である。
図10に示すように、地上装置50は、軌道1の近傍適所に設置された無線基地局51と、地上制御部52と、地上通信部53と、地上記憶部54とを備えた一種のコンピュータ制御装置である。
【0068】
地上制御部52は、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の演算装置や演算回路を有して構成され、地上記憶部54に記憶されたプログラムやデータ、車上装置20(列車2)や他の地上装置50、指令装置90から受信したデータ等をもとに地上装置50を構成する各部への指示やデータの転送を行って、地上装置50の動作を統括的に制御する。この地上制御部52は、在線検知処理部521と、地上側中継処理部522と、ドア範囲算出部523とを含む。地上制御部52が有する各機能部は、個別の演算回路で実現することとしてもよいし、1つの演算回路がソフトウェア的な演算処理で個別に実現することとしてもよい。
【0069】
在線検知処理部521は、列車リスト543を用い、所定の問合せ周期で管理対象の列車2とポーリング通信を行って、対応制御区間10における列車2の在線を検知する。
【0070】
地上側中継処理部522は、当該地上装置50が駅地上装置50bの場合に処理を行う機能部である。地上装置50aは地上側中継処理部522は備えていない構成でもよいし、地上側中継処理部522を機能させない状態としてもよい。地上側中継処理部522は、ポーリング通信により列車2から受信した車両ドア情報をその都度送信元列車IDとともにホームドア制御装置60に転送する。
【0071】
ドア範囲算出部523は、管理対象の列車2が救援列車として運行している場合であって、当該救援列車2から救援情報を受信した場合に、その故障列車車両数を用いてホームドア111の開閉対象範囲を特定し、ホームドア開閉指示情報としてホームドア制御装置60に送信する。
【0072】
地上通信部53は、例えば無線通信モジュールやルータ、モデム、TA、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等で実現される有線或いは無線の通信装置であり、外部装置(本実施形態では他の地上装置50や指令装置90)との間で通信を行う。
【0073】
地上記憶部54は、ICメモリやハードディスク、光学ディスク等の記憶媒体により実現されるものである。この地上記憶部54には、地上装置50を動作させ、地上装置50が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、当該プログラムの実行中に使用されるデータ等が記憶される。本実施形態では、地上記憶部54には、地上側プログラム541と、自装置ID542と、列車リストデータ(列車リスト)543と、管理対象列車情報544とが記憶される。
【0074】
地上制御部52は、地上記憶部54から地上側プログラム541を読み出して実行することにより、在線検知処理部521や地上側中継処理部522、ドア範囲算出部523等の機能を実現する。自装置ID542には、自装置の地上装置IDが設定される。列車リスト543には、管理対象の列車2の列車IDが設定される。
【0075】
管理対象列車情報544は、ポーリング通信の結果把握した管理対象の列車2の位置や速度等を記憶する。例えば、管理対象列車情報544は、管理対象の列車2の列車ID毎に用意され、前回のポーリング通信までに該当する列車2から受信した列車情報に含まれる列車長情報、列車位置情報、列車速度情報、列車占有範囲情報等の受信履歴として設定される。車両ドア情報や救援情報を受信している場合には、それも含めて受信履歴に保存しておく。
【0076】
2.車上装置
図11は、車上装置20の機能構成例を示すブロック図である。
図11に示すように、車上装置20は、車上制御部21と、車上記憶部22とを備えて構成される一種のコンピュータ制御装置であり、入力装置23や表示装置24、音出力装置25、車上無線機26、ブレーキ機構(制動装置)27、車両ドア制御装置28、自列車を構成する各車両の連結器29等と接続されている。
【0077】
車上制御部21は、例えばCPU、FPGA等の演算装置や演算回路を有して構成され、車上記憶部22に記憶されたプログラムやデータ、地上装置50から受信したデータ等をもとに車上装置20を構成する各部への指示やデータの転送を行って、車上装置20の動作を統括的に制御する。この車上制御部21は、走行情報計測部211と、地上間データ送受処理部212と、走行制御部214と、連結検知部216と、自列車長更新部217と、臨時停止位置算出部218と、車上側中継処理部219とを含む。車上制御部21が有する各機能部は、個別の演算回路で実現することとしてもよいし、1つの演算回路がソフトウェア的な演算処理で個別に実現することとしてもよい。
【0078】
走行情報計測部211は、車軸の回転数を検出する速度発電機の検出信号に基づいて自列車の走行位置(キロ程で表される走行距離)および走行速度を随時計測する。また、速度発電機の検出信号に基づく位置計測に置き換えて、或いは、速度発電機の検出信号に基づく位置計測と併用して、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムによる計測値を用いて、自列車の走行位置や走行速度を計測することとしてもよい。
【0079】
地上間データ送受処理部212は、ポーリング通信により地上装置50が送信した地上情報であって、宛先列車IDが自列車ID222である地上情報を車上無線機26を介して受信する制御を行う。そして、受信した場合に、その送信元地上装置IDを宛先地上装置IDとして列車情報を生成し、車上無線機26を介して送信する制御を行う。
【0080】
この地上間データ送受処理部212は、列車占有範囲算出部213を備える。列車占有範囲算出部213は、列車長情報227をもとに、走行情報計測部211が計測している自列車の走行位置に従って列車占有範囲情報を算出する。具体的には、通常走行時は、自列車の車両数223が設定される列車長情報227を基準に列車占有範囲情報を算出する。一方、自列車が救援列車2として故障列車2を連結しており、自列車長更新部217が列車長情報227を更新したときには、更新後の列車長情報227、すなわち、故障列車2を連結した一連の列車の車両数を基準に列車占有範囲情報を算出する。
【0081】
走行制御部214は、自列車が位置する制御区間10の地上装置(相手地上装置)50から受信した地上情報(送信元地上装置IDが相手地上装置ID225である地上情報)の進入許容範囲を用い、随時自列車の走行制御を行う。走行制御自体は公知技術を用いて実現でき、例えば、進入許容範囲によって定められる進入限界位置で停止するような速度照査パターンに従って自列車の走行を制御する。この走行制御部214は、臨時停止制御部215を備える。
【0082】
臨時停止制御部215は、自列車が救援列車2として運行している際、臨時停車駅に到着したときに、自列車の停止位置が臨時停止位置236となるようにブレーキ機構27を駆動して自列車を臨時停車駅に停車させる。
【0083】
連結検知部216は、自列車の先頭車両または最後尾車両に対する故障列車2の連結を検知する。その際、下り方末端車両の連結器29からの連結信号の入力を受けたのであれば相対連結位置232を「下り方」、当該連結信号が上り方末端車両の連結器29から入力されたのであれば、相対連結位置232を「上り方」として、救援情報230に設定する。
【0084】
自列車長更新部217は、連結検知部216が故障列車2の連結を検知した場合に、ポーリング通信で受信した救援指令情報の故障列車車両数を自列車の車両数223に加えた車両数を算出し、列車長情報227を更新する。
【0085】
臨時停止位置算出部218は、連結検知部216が検知した相対連結位置に応じて臨時停車駅での臨時停止位置を算出する。そして、算出した臨時停止位置236を救援情報230に設定する。
【0086】
車上側中継処理部219は、相手地上装置50が駅地上装置50bである場合に処理を行う機能部である。すなわち、車上側中継処理部219は、ポーリング通信により駅地上装置50bから受信したホームドア情報をその都度送信元地上装置IDとともに車両ドア制御装置28に転送する。
【0087】
車上記憶部22は、ICメモリやハードディスク、光学ディスク等の記憶媒体により実現されるものである。この車上記憶部22には、車上装置20を動作させ、車上装置20が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、当該プログラムの実行中に使用されるデータ等が予め記憶され、或いは処理の都度一時的に記憶される。本実施形態では、車上記憶部22には、車上側プログラム221と、自列車ID222と、車両数223と、地上装置情報224と、相手地上装置ID225と、走行情報226と、列車長情報227と、救援情報230とが記憶される。
【0088】
車上制御部21は、車上記憶部22から車上側プログラム221を読み出して実行することにより、走行情報計測部211や、地上間データ送受処理部212、走行制御部214、連結検知部216、自列車長更新部217、臨時停止位置算出部218、車上側中継処理部219等の機能を実現する。自列車ID222には、自列車の列車IDが設定される。車両数223には、自列車を構成する車両数が設定される。
【0089】
地上装置情報224は、軌道1に沿って配置された地上装置50の一覧であり、車上装置20が相手地上装置50を特定する等のために参照される。例えば、地上装置IDと対応付けて、対応制御区間10の範囲(隣接する制御区間10との境界位置)や、該当する地上装置50の無線通信制御領域70の範囲等が設定される。また、当該地上装置50が地上装置50aなのか駅地上装置50bなのかの情報や、駅地上装置50bの場合にその対応制御区間10内の駅100に定められる駅停止位置の情報等が含められる。
【0090】
相手地上装置ID225には、自列車が位置する制御区間10の地上装置50である相手地上装置50の地上装置IDが設定される。この相手地上装置ID225は、自列車が制御区間10の境界位置に到達するたびに書き換えられる。次の制御区間10との境界位置や、新たに相手地上装置50となる次の地上装置50の地上装置IDは、地上装置情報224から特定できる。
【0091】
走行情報226は、自列車の走行位置および走行速度を含み、走行情報計測部211によって随時計測される最新の走行位置および走行速度で随時書き換えられる。列車長情報227には、初期値として車両数223が設定され、故障列車2の連結検知後に当該故障列車2の車両数を加えた車両数に更新される。
【0092】
救援情報230は、救援列車2が故障列車2を連結した後のポーリング通信に際し、
図5に示した救援情報として列車情報に設定される。この救援情報230は、故障列車ID231と、相対連結位置232と、救援列車車両数233と、故障列車車両数234と、臨時停車駅235と、臨時停止位置236とを含む。救援列車車両数233は自列車の車両数であり、車両数223が設定される。故障列車ID231にはポーリング通信で受信した救援指令情報の故障列車IDが設定され、故障列車車両数234には当該救援指令情報の故障列車車両数が設定され、臨時停車駅235には当該救援指令情報の臨時停車駅が設定される。
【0093】
[処理の流れ]
以下、本実施形態における地上装置50および車上装置20の処理の流れを説明する。なお、以下説明する処理は、地上装置50において地上制御部52が地上記憶部54から地上側プログラム541を読み出して実行し、車上装置20において車上制御部21が車上記憶部22から車上側プログラム221を読み出して実行することによって実現される。
【0094】
先ず、各地上装置50が行う在線検知処理およびこれに伴う車上装置20の列車情報返信処理の流れについて、
図12を参照して説明する。在線検知処理は、各地上装置50において、当該地上装置50が地上装置50aの場合は在線検知時頻度に応じた問合せ周期で、駅地上装置50bの場合は中継時頻度に応じた問合せ周期で繰り返される。
【0095】
在線検知処理では、在線検知処理部521が、列車リスト543に設定されている全ての列車IDを順次処理対象IDとしてループAの処理を繰り返し、1回のポーリング通信を行う(ステップa1〜ステップa7)。すなわち、在線検知処理部521は、処理対象IDを宛先列車IDとし、自装置ID542を送信元地上装置IDとして、処理対象IDの列車2に送信する地上情報を生成する(ステップa3)。その際、当該地上装置50が駅地上装置50bの場合は、ホームドア制御装置60から随時送信されるホームドア情報を地上情報に設定する。また、指令装置90から処理対象IDを救援列車IDとした救援指令情報が通知されている場合には、当該救援指令情報を地上情報に設定する。そして、在線検知処理部521は、無線基地局51を介して生成した地上情報を送信することで、処理対象IDの列車2に問合せを行う(ステップa5)。
【0096】
この問合せがあるたびに、車上装置20では、地上間データ送受処理部212が、列車情報返信処理を行う。すなわち、地上間データ送受処理部212は、地上装置50からの自列車宛ての地上情報を受信する制御を行う。送信元の地上装置50は原則相手地上装置50であるが、自列車が無線通信制御領域70同士の重複領域を通行中の場合は、例外的に次の地上装置50からの地上情報も受信し得る。
【0097】
そして、地上装置50によるポーリング通信があり、自列車宛ての地上情報を受信した場合は(ステップb1:YES)、列車占有範囲算出部213が、列車占有範囲情報を算出する(ステップb3)。そして、地上間データ送受処理部212が、受信した地上情報の送信元地上装置IDを宛先地上装置IDとし、自列車ID222を送信元列車IDとして、返信する列車情報を生成する(ステップb5)。その際、相手地上装置50が駅地上装置50bの場合は、車両ドア制御装置28から随時送信される車両ドア情報を列車情報に設定する。また、救援情報230が設定されている場合には、これを列車情報に設定する。そして、地上間データ送受処理部212は、生成した列車情報を車上無線機26を介して送信する(ステップb7)。
【0098】
その後、相手地上装置50が駅地上装置50bであり、ステップb1で受信した地上情報にホームドア情報が設定されている場合は(ステップb9:YES)、車上側中継処理部219が、ホームドア情報を送信元地上装置IDとともに車両ドア制御装置28に転送する(ステップb11)。
【0099】
一方、地上装置50では、在線検知処理部521は、自装置宛ての列車情報を受信する制御を行う(ステップa9)。そして、当該地上装置50が駅地上装置50bであり、ステップa9で受信した列車情報に車両ドア情報が設定されている場合は(ステップa11:YES)、地上側中継処理部522が、車両ドア情報を送信元列車IDとともにホームドア制御装置60に転送する(ステップa13)。
【0100】
また、ステップa9で受信した列車情報に救援情報が設定されている場合は(ステップa15:YES)、ドア範囲算出部523が、故障列車車両数を用いてホームドア111の開閉対象範囲を特定する(ステップa17)。そして、ドア範囲算出部523は、特定した開閉対象範囲を設定したホームドア開閉指示情報をホームドア制御装置60に送信する(ステップa19)。
【0101】
次に、車上装置20が行う全体処理の流れについて、
図13を参照して説明する。
図13に示すように、車上装置20では先ず、地上間データ送受処理部212が、列車情報送信処理を開始する(ステップc1)。そして、走行制御部214が、自列車の走行制御を開始する(ステップc3)。ここで開始する走行制御は、ポーリング通信で受信した進入許容範囲等の走行制御情報を用いて行われる。その過程で、自列車が救援列車2として運行し、臨時停車駅に到着した際は、臨時停止制御部215が、ステップc11で算出される臨時停止位置で自列車を停止させる。
【0102】
その後は、連結検知部216が、故障列車2の連結を監視する。そして、故障列車2の連結および相対連結位置を検知したならば(ステップc5:YES)、自列車長更新部217が、救援指令情報の故障列車車両数を用いて列車長情報227を更新する(ステップc9)。また、臨時停止位置算出部218が、臨時停止位置を算出する(ステップc11)。
【0103】
そして、シャットダウン時等、本処理を終了するまでの間は(ステップc13:NO)、ステップc5に戻って上記した処理を繰り返す。
【0104】
以上説明したように、本実施形態によれば、自列車が救援列車2として運行し、故障列車2が連結された場合であっても、けん引走行および推進走行の何れの場合であっても連結後の一連の列車が存在し得る軌道上の範囲を適正に把握することができ、列車の安全な走行制御を実現することが可能となる。
【0105】
なお、上記した実施形態では、救援列車2の車上装置20が臨時停車駅における臨時停止位置を算出することとしたが、地上装置50、例えば臨時停車駅を対応制御区間10内に含む駅地上装置50bが算出するようにしてもよい。
図14は、本変形例における地上装置500の機能構成例を示すブロック図である。なお、
図14において、上記した実施形態と同様の構成には同一の符号を付している。
【0106】
図14に示すように、本変形例の地上装置500では、地上制御部520は、在線検知処理部521と、地上側中継処理部522と、ドア範囲算出部523と、臨時停止位置算出部524とを含む。また、地上装置500において、地上記憶部540には、地上側プログラム545と、自装置ID542と、列車リストデータ543と、管理対象列車情報544とが記憶される。地上制御部520は、地上記憶部540から地上側プログラム545を読み出して実行することにより、在線検知処理部521や地上側中継処理部522、ドア範囲算出部523、臨時停止位置算出部524等の機能を実現する。そのうちの臨時停止位置算出部524は、臨時停車駅の駅停止位置と、ポーリング通信で受信した救援情報の救援列車車両数や故障列車車両数とから、上記した実施形態と同様の要領で臨時停止位置を算出する。
【0107】
また、上記した実施形態では、救援列車2が臨時停車駅で停車する際、連結している故障列車2が該当する駅100に定められた駅停止位置で停止した状態となるように救援列車2の臨時停止位置を算出することとした。これに対し、必ずしも故障列車2が駅停止位置に停止するように臨時停止位置を定める必要はなく、故障列車2の旅客が臨時停車駅で降車可能となる位置、具体的には、入線したホーム11の範囲内に故障列車2がおさまり、且つ、故障列車2の車両ドアがホームドア111と対向するように位置付けられればよい。そのための救援列車2の臨時停止位置は、相対連結位置と、救援列車車両数と、故障列車車両数とによって定まる連結後の一連の列車の車両編成情報と、駅停止位置とから求めることができる。また、その場合のホームドア111の開閉対象範囲は、上記一連の列車の車両編成情報と、臨時停止位置とから算出できる。