(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、物性が良好なテリパラチド又はその塩を含有する液状医薬製剤を提供することである。より具体的には、本発明の課題は、1)テリパラチド又はその塩の脱アミド体の生成が抑制されている前記液状医薬製剤、2)テリパラチド又はその塩のアスパラギン酸残基異性化体の生成が抑制されている前記液状医薬製剤、3)長期に安定な前記液状医薬製剤、4)テリパラチド又はその塩の酸化体の生成が抑制されている前記液状医薬製剤を提供することである。また、本発明の課題は、5)テリパラチド類縁体、テリパラチド類縁体の存在等を指標とする検査方法、テリパラチド類縁体の含量が低減された高純度なテリパラチド又はその塩を含有する液状医薬製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1)「脱アミド体の生成抑制」
本発明の液状医薬製剤の一態様は、少なくとも1種の無機塩及び/又は有機塩を含有する。さらに、本発明の液状医薬製剤の一態様は、そのpHが所定範囲(例:3.0〜5.0)にある。このような液状医薬製剤では、テリパラチド又はその塩の脱アミド体の生成が抑制され得る。
【0007】
2)「アスパラギン酸残基異性化体の生成抑制」
本発明の液状医薬製剤の一態様は、少なくとも1種の無機塩及び/又は有機塩を含有する。また、本発明の液状医薬製剤の一態様は、そのpHが所定範囲(例:3.0〜5.0)にある。このような液状医薬製剤では、テリパラチド又はその塩のアスパラギン酸残基異性化体の生成が抑制され得る。
【0008】
3)「長期安定化」
本発明の液状医薬製剤の一態様は、そのpHが所定範囲(例:4.0〜5.0)にある。より具体的な態様は、ガラス製医療用容器に充填され、緩衝剤を実質的に含有せず、そのpHが所定範囲(例:4.0〜5.0)にある製剤である。また、より具体的な態様は、プラスチック製医療用容器に充填され、緩衝剤を実質的に含有し、さらに、D−マンニトールを含有し、そのpHが所定範囲(例:4.0〜5.0)にある。また、本発明の液状医薬製剤の一態様は、特定の添加剤(例:α−シクロデキストリン)を含有する。このような液状医薬製剤は、長期に安定であり得る。
【0009】
4)「酸化体の生成抑制」
本発明の液状医薬製剤の一態様は、所定量のメチオニン(例:テリパラチド又はその塩とメチオニンの質量比が、1:0.5〜1.0)を含有する。このような液状医薬製剤では、テリパラチド又はその塩の酸化体生成(例:テリパラチド又はその塩のN末端から8番目のメチオニン残基がスルホキシド化されたテリパラチド酸化体の生成)が抑制されている。本発明の液状医薬製剤の一態様は、マンニトールを含有する。このような液状医薬製剤では、テリパラチド又はその塩の酸化体生成(例:テリパラチド又はその塩における23位トリプトファン残基の酸化体の生成)が抑制され得る。
【0010】
5)「テリパラチド又はその塩の類縁体」
本発明の一態様は、特定のテリパラチド類縁体(例:脱アミド体、Asp異性化体)、同類縁体含有量が低減された高品質な液状医薬製剤、同類縁体の存在及び/又は存在量を指標とするテリパラチド又はその塩を含有する液状医薬製剤の検査方法である。
【0011】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]
成分1及び成分2を含有する液状医薬製剤。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分2)ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、及び/又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)。
[2]
pHが5.0未満である、前記[1]に記載の液状医薬製剤。
[3]
成分1及び成分2を含有する液状医薬製剤であって、緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含有する液状医薬製剤(ただし、pHは5.0未満である。)。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分2)ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、及び/又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)。
[4]
成分1及び成分2を含有する液状医薬製剤であって、緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含有しない液状医薬製剤(ただし、pHは5.0未満である。)。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分2)ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、及び/又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)。
[5]
成分1及び成分2を含有する液状医薬製剤であって、緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含有しない液状医薬製剤(ただし、pHは5.0以上である。)。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分2)ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、及び/又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)。
[6]
成分1と成分2との質量比が1:20又は20以上である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の液状医薬製剤。
[7]
成分1を含有する液状医薬製剤であって、pHが3.6〜4.1である、液状医薬製剤。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
[8]
成分1及び成分3を含有する液状医薬製剤であって、成分1と成分3との質量比が1:0.2〜1.0である、液状医薬製剤。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分3)メチオニン。
[9]
成分1及び成分4を含有する、液状医薬製剤。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分4)D−マンニトール。
[10]
ガラス製医療用容器に充填されている、成分1を含有する液状医薬製剤であって、緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含まず、かつ、pHが4.0を超え5.0以下である、液状医薬製剤;
・成分1)テリパラチド又はその塩。
[11]
プラスチック製医療用容器に充填されている、成分1を含有する液状医薬製剤であって、pHが4.0〜4.2であり、緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含み、さらに、成分4を含有する、液状医薬製剤;
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分4)D−マンニトール。
[12]
成分1及び成分5を含有する液状医薬製剤。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分5)L−プロリン、ベタイン、エクトイン、ヒドロキシエクトイン、L−アルギニン塩酸塩、L−ヒスチジン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、N−アセチル−アルギニン、L−リジン塩酸塩、及び、N−アセチル−DL−トリプトファンからなる群より選ばれる1以上の成分。
[13]
成分5が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、N−アセチル−アルギニン、L−プロリン、L−アルギニン塩酸塩、及び、L−リジン塩酸塩からなる群より選ばれる1以上の成分である、前記[12]に記載の液状医薬製剤。
[14]
成分2が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び炭酸ナトリウムから選択される1種以上の塩である、前記[1]〜[6]に記載の液状医薬製剤。
[15]
成分2が塩化ナトリウム及び/又はクエン酸三ナトリウムである、前記[14]に記載の液状医薬製剤。
[16]
pHが4.1以上4.6以下である、前記[3]又は[4]に記載の液状医薬製剤。
[17]
pHが5.0である、前記[5]に記載の液状医薬製剤。
[18]
成分1がテリパラチド酢酸塩である、前記[1]〜[17]のいずれかに記載の液状医薬製剤。
[19]
成分1含有量がテリパラチド換算で25〜30μgである、前記[1]〜[18]のいずれかに記載の液状医薬製剤。
[20]
ヒト皮下投与用である、前記[1]〜[19]のいずれかに記載の液状医薬製剤。
[21]
成分1を含む液状医薬製剤における成分1の脱アミド反応を抑制する方法であって、液状医薬製剤に更に成分2を含有せしめることを含む方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分2)ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、及び/又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)。
[22]
液状医薬製剤のpHが5.0未満である、前記[21]に記載の方法。
[23]
pH5.0未満の条件下、成分1を含む液状医薬製剤における成分1の脱アミド反応を抑制する方法であって、液状医薬製剤に更に成分2を含有せしめると共に、緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含有せしめることを含む方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分2)ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、及び/又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)。
[24]
pH5.0未満の条件下、成分1を含む液状医薬製剤における成分1の脱アミド反応を抑制する方法であって、液状医薬製剤に更に成分2を含有せしめると共に、緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含有せしめないことを含む方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分2)ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、及び/又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)。
[25]
pH5.0以上の条件下、成分1を含む液状医薬製剤における成分1の脱アミド反応を抑制する方法であって、液状医薬製剤に更に成分2を含有せしめると共に、緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含有せしめないことを含む方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分2)ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、及び/又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)。
[26]
脱アミド反応の抑制が、成分1のN末端から16番目に位置する成分1におけるアスパラギン残基がイソアスパラギン酸残基に変化してなる成分1の脱アミド体の生成の抑制である、前記[25]に記載の方法。
[27]
成分2が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び炭酸ナトリウムから選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)である、前記[21]〜[26]のいずれかに記載の方法。
[28]
成分1を含む液状医薬製剤における成分1の脱アミド反応を抑制する方法であって、液状医薬製剤のpHを3.6〜4.1とすることを手段とする方法;
・成分1)テリパラチド又はその塩。
[29]
成分1を含む液状医薬製剤における成分1のアスパラギン酸残基の異性化を抑制する方法であって、液状医薬製剤に更に成分2を含有せしめることを含む方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分2)ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、及び/又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)。
[30]
成分1を含む液状医薬製剤における成分1のアスパラギン酸残基の異性化を抑制する方法であって、液状医薬製剤に更に成分2を含有せしめると共に、緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含有せしめることを含む方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分2)ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、及び/又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)。
[31]
アスパラギン酸残基の異性化の抑制が、成分1のN末端から30番目に位置するアスパラギン酸残基がイソアスパラギン酸残基に変化してなる成分1のアスパラギン酸残基の異性化の抑制である、前記[30]に記載の方法。
[32]
成分2が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び炭酸ナトリウムから選択される1種以上の塩(ただし、成分2は成分1とは異なる成分である。)である、前記[29]〜[31]のいずれかに記載の方法。
[33]
成分1を含有する液状医薬製剤における成分1の酸化体生成を抑制する方法であって、液状医薬製剤に緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含有せしめず、且つ、液状医薬製剤のpHを4.0を超えかつ5.0以下とすると共に、液状医薬製剤に成分3を、成分1と成分3との質量比が1:0.2〜1.0となるように含有せしめることを含む方法であり、成分1の酸化体が、テリパラチドのN末端から8番目のメチオニン残基がスルホキシド化されたテリパラチド酸化体又はその塩である、方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分3)メチオニン。
[34]
成分1を含有する液状医薬製剤における成分1の酸化体生成を抑制する方法であって、液状医薬製剤に成分4を含有せしめることを含む方法であり、成分1の酸化体が、成分1のN末端から23番目に存在するトリプトファン残基が酸化している酸化体であって、その他の残基はテリパラチドの対応する残基と同一である、成分1の酸化体である、方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分4)D−マンニトール。
[35]
成分1を含有する液状医薬製剤を保存する方法であって、液状医薬製剤はガラス製医療容器に充填され、液状医薬製剤に緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含有せしめず、且つ、液状医薬製剤のpHを4.0を超えかつ5.0以下とすることを含む方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
[36]
成分1を含有する液状医薬製剤を保存する方法であって、液状医薬製剤はプラスチック製医療容器に充填され、液状医薬製剤に緩衝剤(ただし、成分1がテリパラチド塩である場合、成分1から脱離する塩は、ここでの緩衝剤には相当しない。)を実質的に含有せしめ、さらに、液状医薬製剤に成分4を含有せしめ、且つ、液状医薬製剤のpHを4.0を超えかつ5.0以下とすることを含む方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分4)マンニトール。
[37]
成分1を含有する液状医薬製剤を保存する方法であって、液状医薬製剤に成分5を含有せしめることを含む方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
・成分5)L−プロリン、ベタイン、エクトイン、ヒドロキシエクトイン、L−アルギニン塩酸塩、L−ヒスチジン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、N−アセチル−アルギニン、L−リジン塩酸塩、N−アセチル−DL−トリプトファンからなる群より選ばれる1以上の成分。
[38]
成分5が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、N−アセチル−アルギニン、L−プロリン、L−アルギニン塩酸塩、L−リジン塩酸塩からなる群より選ばれる1以上の成分である、[37]に記載の方法。
[39]
成分1のN末端から16番目に存在するアスパラギン残基がイソアスパラギン酸残基に変化した類縁体であって、その他の残基はテリパラチドの対応する残基と同一である、成分1の類縁体。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
[40]
成分1のN末端から16番目に存在するアスパラギン残基がアスパラギン酸残基に変化した類縁体であって、その他の残基はテリパラチドの対応する残基と同一である、成分1の類縁体。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
[41]
成分1のN末端から30番目に存在するアスパラギン酸残基がイソアスパラギン酸残基に変化した類縁体であって、その他の残基はテリパラチドの対応する残基と同一である、成分1の類縁体。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
[42]
成分1のN末端から10番目に存在するアスパラギン残基がアスパラギン酸残基又はイソアスパラギン酸残基に変化した類縁体であって、成分1のN末端から30番目に存在するアスパラギン酸残基がイソアスパラギン酸残基に変化した類縁体であり、その他の残基はテリパラチドの対応する残基と同一である、成分1の類縁体。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
[43]
前記[39]〜[42]のいずれかに記載の類縁体を検出及び/又は定量する工程を含む、成分1を含有する液状医薬製剤の品質検査方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
[44]
成分1を含有する液状医薬シリンジ製剤を遮光することにより、同製剤中の酸化体生成を抑制する方法であって、酸化体はテリパラチドのN末端から18番目のメチオニン残基がスルホキシド化されたテリパラチド酸化体又はその塩である、抑制方法。
・成分1)テリパラチド又はその塩。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、物性に優れたテリパラチド又はその塩を含有する液状医薬製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0014】
1.液状医薬製剤:
本発明は、一態様として、成分1)テリパラチド又はその塩、及び、成分2)少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩を含有する、液状医薬製剤を提供する。
【0015】
本発明は、一態様として、成分1)テリパラチド又はその塩を含有し、そのpHが所定範囲(例:3.0〜5.0)にある、液状医薬製剤を提供する。
【0016】
これらの態様に係る本発明のより好ましい具体的態様を以下に列挙する。
1)成分1)テリパラチド又はその塩、及び、成分2)少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩を含有し、さらに緩衝剤を実質的に含有し、そのpHが5.0未満である、液状医薬製剤。
2)成分1)テリパラチド又はその塩、及び、成分2)少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩を含有し、緩衝剤を実質的を含有せず、pHが5.0未満である、液状医薬製剤。
3)成分1)テリパラチド又はその塩、及び、成分2)少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩を含有し、緩衝剤を実質的を含有せず、pHが5.0以上である、液状医薬製剤。
4)成分1と成分2との質量比が1:20又は20以上である、前記液状医薬製剤。
5)成分1)テリパラチド又はその塩を含有し、そのpHが3.6〜4.1である、前記液状医薬製剤。
6)成分1)テリパラチド又はその塩を含有し、そのpHが4.0〜5.0であり、ガラス製医療用容器に充填され、緩衝剤を実質的に含有しない、前記液状医薬製剤。
7)成分1)テリパラチド又はその塩を含有し、そのpHが4.0〜5.0であり、プラスチック製医療用容器に充填され、緩衝剤を実質的に含有する、前記液状医薬製剤。
【0017】
本発明は、一態様として、成分1)テリパラチド又はその塩を含有し、特定の添加剤を含有する。
これらの態様に係る本発明のより好ましい具体的態様を以下に列挙する。
1)成分1)テリパラチド又はその塩、及び、成分3)メチオニンを含有し、成分1:成分3が1:0.2〜1.0である、液状医薬製剤。
2)成分1)テリパラチド又はその塩、及び、成分4)D−マンニトールを含有する、液状医薬製剤。
3)成分1)テリパラチド又はその塩、及び、成分5)L−プロリン、ベタイン、エクトイン、ヒドロキシエクトイン、L−アルギニン塩酸塩、L−ヒスチジン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、N−アセチル−アルギニン、L−リジン塩酸塩、N−アセチル−DL−トリプトファンからなる群より選ばれる1以上の成分を含有する、液状医薬製剤。
【0018】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0019】
(1)液状医薬製剤:
本発明の液状医薬製剤は、後述のテリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状の医薬製剤であれば、その形態は特に限定されない。例としては、経口投与用製剤(内服剤)又は非経口投与用製剤が挙げられるが、非経口投与用製剤が好ましい。非経口投与用製剤の例としては、外用剤等の局所投与用製剤や注射剤等の全身投与用製剤が挙げられるが、全身投与用製剤が好ましく、特に注射剤が好ましい。また、全身投与の具体的な投与経路としては、静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与用等が挙げられるが、皮下投与が好ましい。即ち、本発明の液状医薬製剤として、好ましくは皮下投与用液状医薬製剤又は注射用液状医薬製剤を例示でき、最も好ましくは皮下注射用液状医薬製剤を例示できる。
【0020】
本発明において、液状医薬製剤における「医薬」とは、哺乳動物(ヒト、サル、ラットなど)に対して任意の疾病の予防/治療/診断に用いられる薬剤を意味する。
【0021】
本発明の液状医薬製剤に用いる溶媒は特に限定されず、水性溶媒でも非水性溶媒でもよいが、水性溶媒であることが好ましい。即ち、本発明の液状医薬製剤は水性医薬製剤であることが好ましい。本発明の液状医薬製剤が、皮下投与用液状医薬製剤、注射用液状医薬製剤、又は、皮下投与用の注射用液状医薬製剤であるときには、とりわけ本発明の液状医薬製剤は水性医薬製剤であることが好ましく、例えば、注射用水又は生理食塩水などによって調製され得る。水性溶媒は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、後述する少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩(成分2)、緩衝剤、添加剤(成分3〜6)等の各種の成分を含有していてもよい。
【0022】
(2)テリパラチド又はその塩(成分1):
本発明において、ヒトPTH(1−34)は、ヒト副甲状腺ホルモンであるヒトPTH(1−84)のアミノ酸配列において、N末端側からみて第1番目から第34番目までのアミノ酸残基からなる部分アミノ酸配列で示されるペプチドである。
【0023】
本発明において、テリパラチドは、フリー体のヒトPTH(1−34)を意味する。テリパラチドは塩の形態であることもできる。
【0024】
本発明において、テリパラチドの塩としては、テリパラチドと1種又は2種以上の揮発性有機酸とによって形成される任意の塩が挙げられる。揮発性有機酸としては、トリフルオロ酢酸、蟻酸、酢酸などが例示される。フリー体のテリパラチドと揮発性有機酸とが塩を形成する際の両者の比率は、当該塩を形成する限りにおいて特に限定されない。中でも、揮発性有機酸としては、酢酸が好ましい。即ち、本発明におけるテリパラチドの塩としては、テリパラチド酢酸塩を好ましく例示できる。
【0025】
テリパラチド又はその塩(成分1)は、ペプチドであることから、その等電点(pI)を有する。pIの測定については、自体公知の方法(例えばHPLCや電気泳動などを用いた方法)により実施可能である。一般的に、テリパラチド又はその塩(成分1)のpIは、8.3〜8.4であることが知られている。
【0026】
本発明の液状医薬製剤に含有されるテリパラチド又はその塩(成分1)の量は特に限定されないが、好適には以下を例示できる。即ち、下限としては10μg以上であることが好ましく、20μg以上、25μg以上、27μg以上、更には28μg以上であることがより好ましい。また、上限としては100μg以下であることが好ましく、50μg以下、40μg以下、35μg以下、30μg以下、更には29μg以下であることがより好ましい。中でも、テリパラチドとして、成分1の含有量は、28.2μg又は29.2μgであることが好ましい。あるいは、成分1の含有量は、テリパラチド換算で56.5μgであることもできる。用いるテリパラチドが酢酸塩の場合は、酢酸量を加味した量が例示でき、テリパラチド五酢酸塩の場合は、テリパラチド酢酸塩として、成分1の含有量は30.3μg又は31.3μgであることが好ましい。あるいは、成分1の含有量は、テリパラチド酢酸塩として、60.6μgであることもできる。
【0027】
本発明の液状医薬製剤に含有されるテリパラチド又はその塩(成分1)の1回投与当たりの含有量は特に限定されないが、好適には以下を例示できる。即ち、下限としては25μg以上、27μg以上、更には28μg以上であることがより好ましい。また、上限としては35μg以下、30μg以下、更には29μg以下であることがより好ましい。中でも、成分1の1回投与当たりの投与量は、テリパラチドとして28.2μgを好ましく例示できる。用いるテリパラチドが酢酸塩の場合は、酢酸量を加味した量が例示でき、テリパラチド五酢酸塩の場合は、テリパラチド酢酸塩として、成分1の1回投与当たりの含有量は30.3μgであることが好ましい。
【0028】
本発明の液状医薬製剤に含有されるテリパラチド又はその塩(成分1)の濃度は特に限定されないが、好適には以下を例示できる。即ち、テリパラチドとして、下限としては50μg/mL以上であることが好ましく、70μg/mL以上、100μg/mL以上、100μg/mL超、110μg/mL以上、更には120μg/mL以上であることがより好ましい。また、上限としては500μg/mL以下であることが好ましく、250μg/mL以下、250μg/mL未満、200μg/mL以下、180μg/mL以下、更には160μg/mL以下であることがより好ましい。中でも、141μg/mLを最も好ましく例示できる。
【0029】
本発明の液状医薬製剤に含有されるテリパラチド又はその塩(成分1)は、自体公知の方法(例えば非特許文献3〜5等に記載の方法)により製造され得る。
【0030】
本発明に係る「テリパラチド又はその塩(成分1)」がテリパラチド塩である場合、本発明の液状医薬製剤においてテリパラチド塩が乖離して生成する塩は、本発明に係る緩衝剤と見做されない。さらに、同塩は、本発明に係る「少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩(成分2)」とも見做されない。
【0031】
(3)少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩(成分2):
本発明の液状医薬製剤において、少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩が含まれていることが好ましい。このような液状医薬製剤においては、好ましくは、成分1の脱アミド及びアスパラギン酸残基異性化が共に抑制され得る。
【0032】
本発明において、無機塩とは、無機酸が塩基と結合して形成される塩を意味する。無機塩として、塩酸塩、臭化水素酸塩、亜硫酸水素酸塩を例示でき、具体的には、無機塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、臭化ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムを例示でき、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化ナトリウムを最も好ましく例示できる。
【0033】
本発明において、有機塩とは、有機酸が塩基と結合して形成される塩を意味する。有機塩として、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩を挙げることができ、具体的には、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム(クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、及びクエン酸三ナトリウム)、炭酸ナトリウムを好ましく例示できる。
【0034】
本発明における無機塩及び有機塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩を好ましく例示できる。
【0035】
本発明における有機塩及び無機塩は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。例えば、塩化マグネシウムは通常6水和物として市販されており、これをそのまま本発明における無機塩として利用することもでき、あるいは、脱水処理を経て得られる塩化マグネシウム無水物を無機塩として利用することもできる。
【0036】
本願明細書において、「塩化マグネシウム水和物」及び「酢酸ナトリウム水和物」は、それぞれ「塩化マグネシウム6水和物」及び「酢酸ナトリウム3水和物」を意味する。
【0037】
本発明において、少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩とは、少なくとも1種以上の無機塩、少なくとも1種以上の無機塩及び少なくとも1種以上の有機塩、又は、少なくとも1種以上の有機塩を意味する。
【0038】
少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩として、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩、又は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及び炭酸塩から選択される1種以上の塩を好ましく挙げることができ、ナトリウム塩、及び/又は、クエン酸塩をより好ましく例示できる。さらに具体的には、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び炭酸ナトリウムから選択される1種以上の塩をさらに好ましく挙げることができる。
【0039】
例えば、非特許文献8において、小ペプチドのアスパラギン残基の脱アミド反応は、反応液のイオン強度に影響を受けないこと(Abstract)、また、反応液への塩化ナトリウム添加は脱アミド反応を抑制しないこと(Table III)が開示されている。また、非特許文献9が参照する文献において、塩化ナトリウム添加によるイオン強度増加は、脱アミド反応を加速させることも報告されている(McKerrow and Robinson, 1971; Scotchler and Robinson, 1974;22553頁左欄)。
【0040】
一方、本発明においては、1種以上の無機塩及び/又は有機塩を液状医薬製剤に添加することによって、液状医薬製剤中のテリパラチド又はその塩(成分1)の脱アミド体の生成が抑制され得る。また、本発明においては、1種以上の無機塩及び/又は有機塩を液状医薬製剤に添加することによって、液状医薬製剤中のテリパラチド又はその塩(成分1)のアスパラギン酸残基異性化体の生成が抑制され得る。
【0041】
本発明の液状医薬製剤に少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩が含有される場合、その濃度は特に限定されないが、下限としては250μg/mL以上、500μg/mL以上、1mg/mL以上、又は、2mg/mL以上であることが好ましく、3mg/mL以上であることがさらに好ましく、中でも5.5mg/mL以上であることがより好ましい。一方、上限としては250mg/mL以下、100mg/mL以下、又は25mg/mL以下であることが好ましく、中でも11mg/mL以下であることがより好ましい。
【0042】
本発明の液状医薬製剤に少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩(成分2)が含有される場合、そのテリパラチド又はその塩(成分1)に対する質量比(成分1:成分2の質量比)は特に限定されないが、下限としては例えば1:5以上であることが好ましく、1:10以上、1:15以上であることがさらに好ましく、中でも1:20以上であることがより好ましく、1:35以上であることが最も好ましい。一方、上限としては例えば1:500以下であることが好ましく、1:300以下であることがより好ましく、1:80以下であることが最も好ましい。1:20又はそれ以上の同塩を液状医薬製剤に含有させると、成分1の脱アミド及び成分1のアスパラギン酸残基の異性化が共に顕著に抑制され得る。
【0043】
本発明において「少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩(成分2)」は、後述する緩衝剤の成分とは同一成分であってもよく、異なる成分であってもよい。
【0044】
(4)緩衝剤:
本発明に係る緩衝剤は、水溶液のpHを安定化させることができる、医薬分野で一般的に使用されるものであれば特に限定されない。本発明に係る緩衝剤として、例えば、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、ホウ酸、リン酸、炭酸及びその塩を挙げることができる。より具体的には、酢酸及び酢酸ナトリウム、クエン酸及びクエン酸三ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを例示できる。このような緩衝剤が本発明の液状医薬製剤に含まれていてもよい。
【0045】
本発明の実質的に緩衝剤が含まれる液状医薬製剤であって、さらに、少なくとも1種の無機塩及び/又は有機塩が含まれる液状医薬製剤においては、製剤中のテリパラチド又はその塩(成分1)の脱アミド体の生成と成分1のアスパラギン酸残基異性化体の生成とが共に抑制され得る。
【0046】
本発明の液状医薬製剤は、実質的に緩衝剤が含まれない液状医薬製剤であり得て、中でも実質的に酢酸緩衝剤が含まれない液状医薬製剤が好ましい。
【0047】
ここで緩衝剤が「実質的に」含まれないとは、例えば、テリパラチド又はその塩(成分1)や他の添加物の分解、サルファー処理等のアルカリ対策してないガラス容器に入れた時のアルカリ溶出など、薬液の成分やその反応物、薬液を充填している容器や容器から薬液に溶出される成分、及び、保存時の外部環境が薬液に与える様々な影響などに起因する経時的なpH変動を抑制できない緩衝剤の含有を、含有とみなさないという意味である。
【0048】
緩衝剤が液状医薬製剤に「実質的に」含まれないとみなされる例として、極微量の緩衝剤が液状医薬製剤に含まれる場合を挙げることができる。その量は選択される緩衝剤によって異なり得るが、例えば1mM以下、好ましくは0.5mM以下、更に好ましくは0.1mM以下の濃度の緩衝剤が液状医薬製剤に含まれていたとしても、緩衝剤は液状医薬製剤に「実質的に」含まれないとみなされる。
【0049】
緩衝剤が液状医薬製剤に「実質的に」含まれないとみなされる別の例としては、pHが特定範囲又は特定値である本発明の液状医薬製剤の態様において、同範囲或いは値の下限及び上限からそれぞれ±1の範囲においては少なくとも緩衝能を有さない緩衝剤の含有を挙げることができる。例えば、pHが4〜5である本発明の液状医薬製剤の態様において、pHが3〜6の範囲においては少なくとも緩衝能を有さない緩衝剤が含有する場合や、pHが4.6である本発明の液状医薬製剤の態様において、pHが3.6〜5.6の範囲においては少なくとも緩衝能を有さない緩衝剤が含有する場合には、本発明の液状医薬製剤には緩衝剤が「実質的に」含まれないとみなされる。
【0050】
緩衝剤が液状医薬製剤に「実質的に」含まれないとみなされる別の例としては、pHが特定範囲又は特定値である本発明の液状医薬製剤の態様において、緩衝剤のpKa±1が同pH範囲又は値に含まれない又は重複しないような緩衝剤が液状医薬製剤に含まれる場合を挙げることができる。例えば、酢酸緩衝剤のpKa(実際には酢酸のpKaである。)は4.76であるから、この±1は3.76〜5.76となり、pHが3.76未満や5.76超を示す液状医薬製剤に酢酸緩衝剤が含まれていても、酢酸緩衝剤は液状医薬製剤に「実質的に」含まれないとみなされる。
【0051】
なお、リン酸は多価酸であって3種類のpKa(2.12、7.21、12.32)を有することになることから、H
3PO
4とNaH
2PO
4、NaH
2PO
4とNa
2HPO
4、Na
2HPO
4とNa
3PO
4のそれぞれの組み合わせは、個々のpH範囲における緩衝作用を有することになるが、その組み合わせが特に明示されていない場合、上記3つのpKaのうちいずれのpKaについてもその±1が特定されたpHの範囲に含まれない又は重複しないような液状医薬製剤にリン酸緩衝剤が含まれていてもリン酸緩衝剤は液状医薬製剤に「実質的に」含まれないとみなされる。
【0052】
なお、本発明の液状医薬製剤にある弱酸(例:酢酸)の共役塩基(例:酢酸ナトリウム)が含まれているが、その弱酸(例:酢酸)が前記製剤に含まれない場合、同共役塩基は、本発明に係る緩衝剤と見做されない。しかし、同共役塩基が前述の本発明に係る「少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩(成分2)」に相当する場合には、本発明に係る「少なくとも1種以上の無機塩及び/又は有機塩(成分2)」である。
【0053】
(5)添加剤(成分3〜6):
本発明の液状医薬製剤には、各種の添加物を含有せしめることもできる。添加物として、例えば、可溶化剤、安定化剤、等張化剤、pH調節剤、防腐剤(保存剤)などを挙げることができる。
【0054】
本発明に係る可溶化剤として、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル40、ポピドン、ポリソルベート80などを例示できる。
【0055】
本発明に係る等張化剤として、D−マンニトール、ソルビトール、グルコース、グリセリン、プロピレングリコール、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどを例示できる。
【0056】
本発明に係るpH調節剤として、希塩酸、硫酸、燐酸、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、などを例示できる。
【0057】
本発明に係る防腐剤(保存剤)として、パラオオキシ安息香酸メチル、パラオオキシ安息香酸エチル、パラオオキシ安息香酸プロピル、安息香酸ナトリウム、フェノール、クレゾール、ソルビン酸、ベンジルアルコールなどを例示できる。
【0058】
本発明に係る安定化剤として、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、スクロース、グルコース、トレハロース、マルトース、ラクトース、メチオニン、ヒスチジン、デキストラン40、メチルセルロース、ゼラチン、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、L−プロリン、ベタイン、エクトイン、ヒドロキシエクトイン、L−アルギニン或いはその塩酸塩、L−ヒスチジン或いはその塩酸塩、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロプル−β−シクロデキストリン、L−リジン或いはその塩酸塩、N−アセチル−DL−トリプトファンなどを例示できる。安定化剤として、L−プロリン、L−アルギニン或いはその塩酸塩、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、L−リジン或いはその塩酸塩、マンニトール及びメチオニンを好ましく例示でき、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、D−マンニトール及びL−メチオニンを最も好ましく例示できる。
【0059】
本発明に係る安定化剤の含有量は特に限定されないが、本発明の液状医薬製剤に含有されるテリパラチド又はその塩(成分1)の含有量の0.1〜1000倍程度(質量比)含まれることが好ましい。
【0060】
(5−1)メチオニン(成分3):
本発明の液状医薬製剤にメチオニンを含有せしめることができる。
【0061】
本発明の液状医薬製剤にメチオニンを添加する際には、テリパラチド又はその塩(成分1)の含有量の0.1倍(質量比)以上含まれることが好ましく、0.3倍以上、0.5倍以上、又は0.7倍以上含まれることが更に好ましい。メチオニン添加量の上限については、本発明の液状医薬製剤に溶解される範囲において特に限定されないが、例えば、10.0倍以下、又は5.0倍以下をそれぞれ好ましく例示でき、2.0倍以下を更に好ましく例示でき、1.0倍以下を最も好ましく例示できる。本発明の液状医薬製剤に対するメチオニン添加量として、0.5〜1.0倍程度(テリパラチド又は塩に対する質量比)を好ましく例示できる。
【0062】
本発明の液状医薬製剤にメチオニンを含有せしめると、テリパラチド又はその塩(成分1)の類縁体生成(例:テリパラチド又はその塩におけるメチオニン残基の酸化体の生成)が抑制され得る。
【0063】
(5−2)D−マンニトール(成分4):
本発明の液状医薬製剤にD−マンニトールを含有せしめることができる。
【0064】
D−マンニトールの含有量は、特に制限されないが、テリパラチド又はその塩(成分1)の含有量の10〜1000倍程度(質量比)含まれることが好ましい。
【0065】
本発明の液状医薬製剤にD−マンニトールを含有せしめると、テリパラチド又はその塩(成分1)の類縁体生成(例:テリパラチド又はその塩における23位トリプトファン残基の酸化体の生成)が抑制され得る。
【0066】
(5−3)特定の添加剤(成分5):
本発明の液状医薬製剤には、L−プロリン、ベタイン、エクトイン、ヒドロキシエクトイン、L−アルギニン或いはその塩酸塩、L−ヒスチジン或いはその塩酸塩、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、L−リジン或いはその塩酸塩、N−アセチル−DL−トリプトファン、及び、N−アセチル−アルギニンからなる群より選ばれる1以上の成分(成分5)を含ませることができる。成分5として、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、N−アセチル−アルギニン、L−リジン或いはその塩酸塩、L−プロリン、及び、L−アルギニン或いはその塩酸塩からなる群より選ばれる1以上の成分であることが好ましい。このような液状医薬製剤は、長期に安定であり得る。
【0067】
成分5を液状医薬製剤に含有せしめる場合には、液状医薬製剤に緩衝剤が含まれることが好ましく、例えば、酢酸緩衝剤が含まれることが好ましい。また、これらの添加剤を液状医薬製剤に含有せしめる場合には、液状医薬製剤のpHは特に限定されず、後記の好適な範囲にすることもできる。
【0068】
(6)pH:
本発明における液状医薬製剤のpHは特に限定されない。
【0069】
本発明の液状医薬製剤のpHは、好適には以下を例示できる。即ち、中性又は酸性(pHが8.0以下)であることができ、下限としては例えば3.0以上、3.6以上、3.8以上、4.0以上、4.0超、4.1以上、4.2以上、又は4.4以上とすることが好ましい。また、上限としては例えば7.0以下、7.0未満、6.0以下、5.0以下、5.0未満、4.9以下、4.8以下、又は4.6以下とすることが好ましい。中でも、5.0以下とすることが好ましく、更には、3.0以上かつ5.0未満、3.6以上かつ4.1以下、4.0以上かつ5.0未満、又は4.2以上かつ5.0未満とすることが好ましく、中でも、4.5〜4.7の範囲を最も好ましく例示できる。
【0070】
PTHや(テリパラチド等の)PTH断片を水溶液剤とした場合、その保存安定性が悪いことから、従来は凍結乾燥製剤としたり、ポリオールやm−クレゾール等の特定の安定化剤や保存剤を用いた水溶液剤とすることが行われてきた。また、ペプチドやタンパク質は一般に水溶液中で不安定であることから、それを液状医薬製剤とする際には、緩衝剤を製剤に添加してpH変動を小さくすることが一般的であった(非特許文献2、特許文献4等を参照)。
【0071】
一方、本発明の好ましい態様によれば、テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状医薬製剤において、そのpHの範囲を前記の好適な範囲に特定することで、前記製剤に緩衝剤を実質的に含有せしめることなく、長期安定性を示す液状医薬製剤とすることができる。なお、後述するように、本発明の液状医薬製剤を充填する容器として特定の容器を用いれば、更に安定性を向上させることが可能となる。
【0072】
本発明の液状医薬製剤のpHは、自体公知の方法により、例えば、緩衝剤やpH調節剤を用いて調整することができる。
【0073】
(7)液状医薬製剤の製法:
本発明の液状医薬製剤は、自体公知の種々の製法により製造可能である。通常は、本発明の液状医薬製剤を構成する前述の各種の成分を適宜選択し、適切な溶媒と混合して溶解させればよい。
【0074】
本発明の液状医薬製剤を、皮下投与用液状医薬製剤、注射用液状医薬製剤、又は皮下投与用の注射用液状医薬製剤として製造する場合には、水性液状医薬製剤とすることが好ましい。水性液状医薬製剤の場合、投与前に無菌処理されたものであることが好ましい。無菌処理として無菌操作法を採用する場合には、秤量した各原料を注射用水などに溶解させ、溶解液を濾過滅菌することにより液状医薬製剤を製造することができる。注射用水は、一般的に、発熱性物質(エンドトキシン)試験に適合した滅菌精製水として理解され、蒸留法により製造された注射用水は、注射用蒸留水と称呼される場合もある。
【0075】
この注射用液状医薬製剤を、更に洗浄・滅菌処理された容器に充填・密封し、検査・包装等を経て、注射用液状医薬製剤を充填してなる注射剤を製造することができる。ここで容器としては、例えば、アンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ、バックなどを例示できる。容器の材質は、特に限定されないが、ガラスやプラスチックを挙げることができる。強度、取扱い容易さ、安全性などの観点から、容器の材質としてプラスチックを好ましく例示できる。
【0076】
(8)凍結乾燥:
本発明の液状医薬製剤は、凍結乾燥製剤から再構成されてなる液状医薬製剤の態様を含んでもよい。また、本発明の液状医薬製剤は、凍結乾燥製剤から再構成されてなる液状医薬製剤ではなくてもよい。従来、テリパラチド又はその塩を含有する凍結乾燥製剤を用時に生理食塩水等に溶解させて液状医薬製剤とすることが知られているが、本発明の液状医薬製剤は、このような凍結乾燥製剤の再溶解品(用時調製品)であってもよく、このような凍結乾燥製剤を経ない製剤(予め液剤化された製剤)であってもよい。
【0077】
2.成分1の脱アミドを抑制する方法:
脱アミドは、対象となる有機化合物におけるアミドが非酵素的に取り除かれる反応を意味する。タンパク質やペプチド(以降、タンパク質等と称することもある。)には、アスパラギン残基やグルタミン残基を含むものもあるが、いずれの残基も側鎖にアミドを有しており、このアミドが取り除かれる反応も脱アミドに含まれる(非特許文献6)。タンパク質等の医薬製剤におけるタンパク質等の分解とそれに続く活性の低減は、医薬品産業において重要な課題を与え得る。
【0078】
タンパク質等はそれぞれ一次〜四次構造が相違する。そして、脱アミド反応はその対象となる個々のタンパク質等の一次〜四次構造に依存することも知られている(非特許文献6)。
【0079】
非特許文献8において、小ペプチドのアスパラギン残基の脱アミド反応は、反応液のイオン強度に影響を受けないこと(Abstract)、また、反応液への塩化ナトリウム添加は脱アミド反応を抑制しないこと(Table III)が開示されている。また、非特許文献8が参照する文献において、塩化ナトリウム添加によるイオン強度増加は、脱アミド反応を加速させることも報告されている(McKerrow and Robinson, 1971; Scotchler and Robinson, 1974;22553頁左欄)。一方、本発明においては、塩化ナトリウムなど1種以上の無機塩及び/又は有機塩(成分2)を液状医薬製剤に添加することによって液状医薬製剤中のテリパラチド酢酸塩の脱アミド反応が顕著に抑制され得る。
【0080】
テリパラチド又はその塩(成分1)の脱アミドとは、テリパラチド又はその塩が呈するあらゆる生化学的脱アミド反応を包含する。本発明における脱アミドとは、テリパラチド又はその塩のアミノ酸配列において、N末端から10、16、33番目のアスパラギン残基及び29番目のグルタミン残基のうち少なくとも1残基の側鎖におけるアミド官能基が取り除かれる反応であることができる。テリパラチドの一次構造において、アスパラギン残基のC末端側にくるアミノ酸残基として、リジン、セリン、フェニルアラニンがある。
【0081】
アスパラギン残基の側鎖における脱アミドとは、同アスパラギン残基と隣接する残基と形成されているペプチド結合の窒素と同アスパラギン残基の側鎖におけるアミドが反応し、スクシンイミド中間体を経て、アスパラギン酸残基又はイソアスパラギン酸残基に変化する反応を意味する。グルタミン残基の側鎖における脱アミドもアスパラギン残基の側鎖における脱アミドと同様である。
【0082】
成分1の脱アミドとして、例えば、成分1のN末端から16番目のアスパラギン残基がアスパギン酸残基に変化する脱アミド反応、成分1のN末端から16番目のアスパラギン残基がイソアスパギン酸残基に変化する脱アミド反応を好ましく例示することができる。
【0083】
テリパラチド又はその塩の脱アミドの抑制は、例えば、LC/MS/MS(液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析)による周知技術を用いて検出及び定量することができる。
【0084】
成分1の脱アミドを抑制するに好適な成分1と成分2の質量比は特に限定されないが、前記のとおり、下限としては例えば1:5以上であることが好ましく、1:10以上、1:15以上であることがさらに好ましく、中でも1:20以上であることがより好ましく、1:35以上であることが最も好ましい。一方、上限としては例えば1:500以下であることが好ましく、1:300以下であることがより好ましく、1:80以下であることが最も好ましい。1:20又はそれ以上の成分2を液状医薬製剤に含有させると、成分1の脱アミド反応が顕著に抑制され得る。
【0085】
成分1の脱アミドの抑制を目的に、液状医薬製剤に成分2を添加することもできるが、液状医薬製剤のpHを好適化することも好ましい。成分1の脱アミドを抑制するに好適なpHとして、前記の好適なpH範囲を例示することができる。液状医薬製剤に成分2を添加すると共にpHを好適化することはさらに好ましい。
【0086】
成分1の脱アミドを抑制するために、例えば、pHを4.6以下にすることが好ましく、4.4以下、又は4.1以下にすることがさらに好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、3.0以上にすることが好ましく、3.4、又は3.6以上にすることがより好ましい。例えば、pHを3.6〜4.1とすることで、液状医薬製剤に成分2を添加しなくとも、脱アミドが顕著に抑制され得る。
【0087】
成分1の脱アミドの抑制を目的に、液状医薬製剤に緩衝剤を実質的に含有せしめてもよく、含有させなくてもよい。ただし、液状医薬製剤に成分2を添加する場合には、さらに緩衝剤を実質的に含有せしめることが好ましい。とりわけ、液状医薬製剤のpHを5.0未満とする際、液状医薬製剤に成分2を添加すると共に、緩衝剤を実質的に含有せしめることが好ましい。
【0088】
本発明における1つの態様として、液状医薬製剤のpHを5.0未満とし、液状医薬製剤に成分2を添加する一方で、液状医薬製剤に緩衝剤を実質的に含有せしめないこともできる。このような態様において、例えば、成分2に起因する反応の特異性(例:成分1のN末端から30番目のアスパラギン酸残基がイソアスパラギン酸残基に変化する異性化反応への影響を抑制しつつ、成分1の脱アミド反応を抑制するなど)を向上させ得る。
【0089】
本発明における1つの態様として、液状医薬製剤のpHを5.0以上とし、液状医薬製剤に成分2を添加する一方で、液状医薬製剤に緩衝剤を実質的に含有せしめないこともできる。このような態様において、例えば、成分2に起因する反応の特異性を向上させ得る。ここで、反応の特異性として、例えば、成分1の異性化反応への影響を抑制しつつ、成分1の脱アミド反応を抑制するなどの特異性を挙げることができる。さらに、成分1の脱アミド反応を抑制する点に着目すれば、例えば、成分1のN末端から16番目のアスパラギン残基がアスパギン酸に変化する脱アミド反応への影響を抑制しつつ、成分1のN末端から16番目のアスパラギン残基がイソアスパギン酸に変化する脱アミド反応を抑制する特異性を好ましく例示することもできる。
【0090】
本方法は、本発明の液状医薬製剤を保存する際に特に有利であり、とりわけ3箇月間又はそれ以上の期間に渡って、室温下又は冷蔵下において、保存する際にその品質を維持する目的などで利用され得る。
【0091】
3.成分1のアスパラギン酸残基の異性化を抑制する方法:
テリパラチド又はその塩(成分1)のアスパラギン酸残基の異性化とは、テリパラチド又はその塩のアミノ酸配列において、N末端から30番目のアスパラギン酸残基がイソアスパラギン酸残基に変化する反応であることができる。アスパラギン酸残基からイソアスパラギン酸残基への構造変化は当業者であれば理解し得て(非特許文献8など)、周知技術を用いてその反応を検出及び定量することができる。
【0092】
成分1のアスパラギン酸残基の異性化を抑制するに好適な成分1と成分2の質量比(以下適宜(成分1):(成分2)の比で表記する。)は、特に限定されないが、前記のとおり、下限としては例えば1:5以上であることが好ましく、1:10以上、1:15以上であることがさらに好ましく、中でも1:20以上であることがより好ましく、1:35以上であることが最も好ましい。一方、上限としては例えば1:500以下であることが好ましく、1:300以下であることがより好ましく、1:80以下であることが最も好ましい。1:20又はそれ以上の成分2を液状医薬製剤に含有させると、成分1のアスパラギン酸残基の異性化反応が顕著に抑制され得る。
【0093】
成分1のアスパラギン酸残基の異性化の抑制を目的に、液状医薬製剤に成分2を添加することもできるが、液状医薬製剤のpHを好適化することも好ましい。成分1のアスパラギン酸残基の異性化を抑制するに好適なpHとして、前記の好適なpH範囲を例示することができる。液状医薬製剤に成分2を添加すると共にpHを好適化することはさらに好ましい。
【0094】
成分1のアスパラギン酸残基の異性化を抑制するために、例えば、pHを4.6以下にすることが好ましく、4.4以下、又は4.1以下にすることがさらに好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、3.0以上にすることが好ましく、3.4、又は3.6以上にすることがより好ましい。例えば、pHを3.6〜4.1とすることで、液状医薬製剤に成分2を添加しなくとも、アスパラギン酸残基の異性化が顕著に抑制され得る。
【0095】
成分1のアスパラギン酸残基の異性化抑制を目的に、液状医薬製剤に緩衝剤を実質的に含有せしめてもよく、含有させなくてもよい。ただし、液状医薬製剤に成分2を添加する場合には、さらに緩衝剤を実質的に含有せしめることが好ましい。とりわけ、液状医薬製剤のpHを5.0未満とする際、液状医薬製剤に成分2を添加すると共に、さらに緩衝剤を実質的に含有せしめることが好ましい。中でも、成分1のN末端から30番目のアスパラギン酸残基がイソアスパラギン酸残基に変化する異性化反応を抑制することを目的とした場合であって、pHを5.0未満とする際、液状医薬製剤に成分2を添加すると共に、さらに緩衝剤を実質的に含有せしめることが非常に好ましい。
【0096】
本方法は、本発明の液状医薬製剤を保存する際に特に有利であり、とりわけ3箇月間又はそれ以上の期間に渡って、室温下又は冷蔵下において、保存する際にその品質を維持する目的などで利用され得る。
【0097】
4.保存方法:
PTHを水溶液剤とした場合、その保存安定性は悪く、この問題点を回避することは肝要である(特許文献2)。また、タンパク質等の医薬製剤におけるタンパク質等の分解とそれに続く活性の低減は、医薬品産業において重要な課題を与え得る。
【0098】
本発明の液状医薬製剤の保存安定性を高めることを目的に、液状医薬製剤を保存する過程において発生又は増加する成分1の各種類縁体を抑制することが望ましい。例えば、本発明の液状医薬製剤の保存時において、成分1の脱アミド体、成分1の切断体、成分1のアスパラギン酸残基の異性化体、成分1の酸化体などの成分1の類縁体の発生又は増加を抑制することが好ましい。従って、本発明の液状医薬製剤の保存安定性を高めることを目的に、成分2〜5のうち少なくとも1成分の添加、pHの好適化、保存温度/湿度の管理といった手段を講じることが好ましい。
【0099】
中でも、本発明の液状医薬製剤の保存安定性を高めることを目的に、そのpHを好適化することが好ましい。例えば、そのpHを中性又は酸性(pHが8.0以下)とすることができ、下限としては、例えば3.0以上、3.6以上、3.8以上、4.0以上、4.0超、4.1以上、4.2以上、又は4.4以上とすることが好ましい。また、上限としては例えば7.0以下、7.0未満、6.0以下、5.0以下、5.0未満、4.9以下、4.8以下、又は4.6以下とすることが好ましい。好適な範囲として、例えば、3.0以上かつ5.0以下、又は4.0以上かつ5.0以下とすることができる。
【0100】
保存の際に液状医薬製剤を格納する容器は特に制限されないが、ガラス製医療容器(ガラス製アンプル、ガラス製バイアル、ガラス製シリンジ等)やプラスチック製医療容器(プラスチック製アンプル、プラスチック製バイアル、プラスチック製シリンジ等)に充填されて保存されることが好ましい。
【0101】
本発明の液状医薬製剤の保存安定性を高めることを目的に、緩衝剤を液状医薬製剤に実質的に含有せしめてもよく、実質的に含有せしめなくてもよい。本発明の液状医薬製剤をガラス製医療容器に充填する場合、緩衝剤を液状医薬製剤に実質的に含有せしめないことが好ましい。一方、本発明の液状医薬製剤をプラスチック製医療容器に充填する場合、緩衝剤を液状医薬製剤に実質的に含有せしめることが好ましい。これらの保存方法の態様においては、本発明の液状医薬製剤の保存開始時におけるpHを4.0以上かつ5.0以下とすることが好ましい。
【0102】
本発明の液状医薬製剤の保存安定性を高めることを目的に、成分2〜5の少なくとも1の成分を製剤に添加することが好ましく、中でも、少なくとも成分5を本発明の液状医薬製剤に含有せしめることが好ましい。
【0103】
成分5を本発明の液状医薬製剤に含有せしめる場合、本発明の液状医薬製剤の保存開始時におけるpHは特に限定されないが、例えば、4.0以上かつ5.2以下とすることが好ましい。成分5を本発明の液状医薬製剤に含有せしめる場合、本発明の液状医薬製剤の緩衝剤を実質的に含有せしめることが好ましく、酢酸緩衝剤を実質的に含有せしめることがより好ましい。
【0104】
成分5を本発明の液状医薬製剤に含有せしめる場合、成分5の添加量は特に限定されないが、成分1:成分5の質量比においては、1:1〜2000とすることが好ましい。
【0105】
本発明の液状医薬製剤の保存安定性の指標として、例えば、成分1含有量や成分1類縁物質総量を挙げることができ、一定期間保存後の成分1含有量(例:保存開始時の成分1含有量に対する相対量であってもよい)や成分1類縁物質総量を測定/定量等することによって、本発明の液状医薬製剤の保存安定性を評価することができる。本発明の液状医薬製剤中のテリパラチド又はその塩(成分1)の類縁物質総量や成分1量は、例えば、LC/MS/MS(液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析)による周知技術を用いて検出及び定量することができる。
【0106】
5.成分1の酸化体の生成を抑制する方法:
テリパラチド水溶液にメチオニンを添加するとテリパラチドが安定化することや放射線滅菌した樹脂製のプレフィルドシリンジに充填したテリパラチド水溶液が同液に含まれるメチオニンによって安定化されることも知られている(特許文献2〜3)。
【0107】
本発明の液状医薬製剤におけるテリパラチド又はその塩(成分1)の酸化体生成を抑制する方法において、成分1の酸化体とは、様々な種類の成分1酸化体のうち少なくとも1種類以上の酸化体を意味し、例えば、8酸化体、18酸化体、8−18酸化体、及び23酸化体を好ましく例示することができる。
【0108】
ここで、8酸化体とは、テリパラチド又はその塩(成分1)のN末端から8番目のメチオニン残基がスルホキシド化された酸化体を、18酸化体とは、成分1のN末端から18番目のメチオニン残基がスルホキシド化された酸化体を、8−18酸化体とは、成分1のN末端から8番目及び18番目のメチオニン残基が共にスルホキシド化された酸化体を、それぞれ、意味する。
【0109】
ここで、23酸化体とは、テリパラチド又はその塩(成分1)のN末端から23番目のトリプトファン残基が酸化されている酸化体を意味する。
【0110】
より具体的には、23酸化体として、特許文献5記載の類縁物質9’〜11’のいずれかを好ましく例示することができる。なお、特許文献5記載の類縁物質9’とは、テリパラチドの23位トリプトファンに対応する残基が下記(a)残基であり、その他の構造は元のテリパラチドと同一であるテリパラチド類縁体(ヒトPTH(1−34)−Trp23[二酸化])を意味する。類縁物質10’とは、テリパラチドの23位トリプトファンに対応する残基が下記(c)−1または下記(c)−2で示される残基であり、その他の構造は元のテリパラチドと同一であるテリパラチド類縁体(ヒトPTH(1−34)−Trp23[一酸化])を意味する。類縁物質11’とは、テリパラチドの23位トリプトファンに対応する残基が下記(b)残基であり、その他の構造は元のテリパラチドと同一であるテリパラチド類縁体(ヒトPTH(1−34)−Trp23[二酸化−ギ酸脱離])を意味する。
【0112】
本発明の液状医薬製剤における成分1の酸化体生成の抑制は、例えば、本発明の液状医薬製剤の製造時における製剤中の成分1の酸化体生成の抑制であってもよく、本発明の液状医薬製剤の運搬時/保存時における製剤中の成分1の酸化体生成の抑制であってもよい。
【0113】
本発明の液状医薬製剤における成分1の酸化体生成の抑制を目的に、メチオニン(成分3)及び/又はマンニトール(成分4)を製剤に添加することが好ましい。
【0114】
本発明の液状医薬製剤において、8酸化体、18酸化体、及び8−18酸化体のうち少なくとも1種類以上の酸化体の生成を抑制することを目的とする場合には、成分3を製剤に含有せしめることが好ましい。成分3含有量は特に限定されないが、成分1:成分3の質量比が、1:0.5又はそれ以上であることが好ましい。成分3の添加量の上限は特に限定されないが、好ましくは成分1の100倍以下、50倍以下、10倍以下、又は5倍以下であることができ、1倍以内であることが好ましい。すなわち、成分1:成分3の質量比が、1:0.2〜1.0となるように、成分1及び成分3を液状医薬製剤に含有せしめることが好ましい。
【0115】
本発明の液状医薬製剤における成分1の酸化体生成の抑制を高めることを目的に、そのpHを好適化することが好ましい。例えば、そのpHを中性又は酸性(pHが8.0以下)とすることができ、下限としては、例えば3.0以上、3.6以上、3.8以上、4.0以上、4.0超、4.1以上、4.2以上、又は4.4以上とすることが好ましい。また、上限としては例えば7.0以下、7.0未満、6.0以下、5.0以下、5.0未満、4.9以下、4.8以下、又は4.6以下とすることが好ましい。
【0116】
本発明の液状医薬製剤における成分1の酸化体生成の抑制を高めるために、製剤中に緩衝剤を実質的に含有せしめてもよく、含有せしめなくてもよい。本発明の液状医薬製剤における成分1の酸化体生成の抑制を高めるために、緩衝剤を実質的に含有せしめないことが好ましい。
【0117】
本発明の類縁体生成を抑制する方法において、テリパラチド又はその塩(成分1)の酸化体量は、例えば、LC/MS/MS(液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析)による周知技術を用いて検出及び定量することができる。
【0118】
本方法は、本発明の液状医薬製剤を保存する際に特に有利であり、とりわけ3箇月間又はそれ以上の期間に渡って、室温下又は冷蔵下において、保存する際にその品質を維持する目的などで利用され得る。
【0119】
6.成分1の類縁体、類縁体を指標とする検査法、類縁体量が低減されている製剤:
PTHを水溶液剤とした場合、その保存安定性は悪く、この問題点を回避することは肝要である(特許文献2)。したがって、テリパラチド又はその塩(成分1)を含有する液状医薬製剤の品質を管理する新たな方法の提供は有用である。
【0120】
本発明の一態様として、以下の類縁体(1)〜(4)、さらにそれらの少なくともいずれか1の類縁体の存在を検出又は定量する工程を含む、成分1を含有する液状医薬製剤の検査方法(例;品質検査方法)が提供される。
【0121】
(1)脱アミド体(N16→iso−D16):
脱アミド体(N16→iso−D16)とは、テリパラチドのN末端から16番目に存在するアスパラギン残基がイソアスパラギン酸残基に変化した脱アミド体であって、その他の残基はテリパラチドの対応する残基と同一である、脱アミド体を意味する。
【0123】
(2)脱アミド体(N16→D16):
脱アミド体(N16→D16)とは、テリパラチドのN末端から16番目に存在するアスパラギン残基がアスパラギン酸残基に変化した脱アミド体であって、その他の残基はテリパラチドの対応する残基と同一である、脱アミド体を意味する。
【0124】
(3)Asp異性化体(D30→iso−D30):
Asp異性化体(D30→iso−D30)とは、テリパラチドのN末端から30番目に存在するアスパラギン酸残基がイソアスパラギン酸残基に変化した異性化体であって、その他の残基はテリパラチドの対応する残基と同一である、異性化体を意味する。
【0125】
(4)脱アミド体(N10)−Asp異性化体(D30→iso−D30):
脱アミド体(N10)−Asp異性化体(D30→iso−D30)とは、テリパラチドのN末端から10番目に存在するアスパラギン残基が脱アミドされて生成された脱アミド体であって、その結果、同残基がアスパラギン酸残基又はイソアスパラギン酸残基に変化してなる脱アミド体であり、かつ、テリパラチドのN末端から30番目に存在するアスパラギン酸残基がイソアスパラギン酸残基に変化してなるアスパラギン酸残基異性化体を意味する。
【0126】
類縁体は、例えば、LC/MS/MS(液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析)による周知技術を用いて、検出又は定量され得る。本方法及び本類縁体は、例えば、成分1を含有する液状医薬製剤の品質を管理するために有用である。
【0127】
本発明の一態様として、上記の類縁体(1)〜(4)の少なくともいずれか1の類縁体の含有量が低減された成分1を含有する液状医薬製剤が提供される。各類縁体の含有量は特に限定されないが、テリパラチド及びその類縁物質の総質量を100とした場合の割合(%)として、5%以下、4%以下、3%以下、又は2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0128】
7.光安定化方法:
遮光保存を要する医療用医薬品は、少なくとも数千品目程度存在しており、医薬製剤の適正管理のために十分に光安定な条件の下で保存されることが好ましい。
【0129】
一般的に、ペプチドは、曝光されることで、分解や凝集する場合がある(非特許文献12)。また、光及び熱に対し安定なPTH水溶液が開示されている(特許文献2)。
【0130】
本発明の液状医薬製剤は、遮光されることで、例えば、箱で包装された状態で保存されることにより、その光安定性が向上し得る。ここで、包装に用いる箱の材質・構造・形状は特に限定されないが、箱は単数又は複数の液状医薬製剤を纏めて包装する医薬品個装箱であってもよく、単数又は複数の医薬品個装箱を包装する元梱ダンボールであってもよい。
【0131】
医薬品個装箱は、医薬品の破損等や異物の混入等を防ぎ、また、添付文書を内包する紙製の箱であり得る。その開封部にはミシン目やジッパー等を設けることが好ましい。医薬品個装箱の紙質はダンボールであってもよく、紙であってもよい。
【0132】
医薬品の破損等や異物の混入等の対策の一環として、液状医薬製剤にブリスター包装やピロー包装を施してから、医薬品個装箱に包装してもよい。また、ブリスター包装やピロー包装の材質は特に限定されないが、例としてプラスチック素材が挙げられる。
【0133】
元梱ダンボールの材質・構造・形状等は特に限定されないが、例えば、Aフルート(A/F)、Bフルート(B/F)、又はダブルフルート(AB/F)であることができる。表面ライナーは、例えば、C5、K5、K6、又は、K7であることができ、中芯は、S120、又は、S160でありえる。中芯の代わりに強化中芯(P160など)を用いてもよい。表面ライナーは、片面でもよく(片面ダンボール)、両面でもよい(両面ダンボール)。元梱ダンボールとして、Aフルート(K6×S120×K6)を好ましく例示可能である。
【0134】
本発明の光安定化方法や光安定な状態での保存方法において、液状医薬製剤には、メチオニンを含有せしめることが好ましく、さらに、塩化ナトリウムやマンニトールを含ませることが好ましい。両方法において、光安定性は、液状医薬製剤保存後に含まれる成分1の類縁体、とりわけ、8酸化体及び/又は18酸化体生成量を指標として測定することができる。すなわち、これらの酸化体の生成抑制を指標として、光安定化の度合いを測定することができる。液状医薬製剤は、プラスチック製又はガラス製のバイアルやプレフィルドシリンジに充填されている製剤であることが好ましい。
【実施例】
【0135】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例にも束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0136】
なお、以下の実施例において、「処方」及び「処方製剤」を本発明の「液状医薬製剤」に相当する文言として表記する場合もある。
【0137】
実施例1(液状医薬製剤の調製):
(1)脱アミド体及びアスパラギン酸残基異性化体の生成抑制試験に供した液状医薬製剤の調製:
(1−1)製造1:
下記表1に従って処方1〜11を調製した。
【0138】
各処方の具体的調製法は次の通りである。まず表中の「添加剤」欄に記載の各添加剤溶液を注射用水と共に混合し、その混合液に1mLのテリパラチド酢酸塩溶液(テリパラチドとして2820μg/mL)を添加し、約19mLの薬液aを調製した。さらに、その薬液aに対して、表中の「pH調整剤」欄に記載のpH調整剤を添加することで、表中の「pH」欄に記載のpHに調整し、20mLの各処方を調製した。
【0139】
各処方を濾過滅菌処理した後に、プラスチック製シリンジに0.2mLずつ充填することによって、各処方が充填されたプラスチック製シリンジ(処方製剤)を製造し、脱アミド体の生成抑制試験に供した。
【0140】
各処方の組成は表中の「最終含有量」欄に記載の通りである。
【表1-1】
【表1-2】
【0141】
(1−2)製造2:
下記表2に従って対照処方12〜対照処方17を調製した。
【0142】
各処方の具体的調製法は次の通りである。まず表中の「添加剤」欄に記載の各添加剤溶液を含む溶解液とテリパラチド酢酸塩(テリパラチドとして28.2mg)の溶解液による溶解物を混合し、全量175mLの薬液aを調製した。その後、薬液aに対して表中の「pH調整剤」欄に記載のpH調整剤を添加することで、表中の「pH」欄に記載のpHに調整し、全量200mLの各処方を調製した。
【0143】
各処方を濾過滅菌処理した後に、プラスチック製シリンジに0.2mLずつ充填することによって、各処方が充填されたプラスチック製シリンジ(処方製剤)を製造し、脱アミド体の生成抑制試験に供した。
【0144】
各処方の組成は表中の「最終含有量」欄に記載の通りである。
【表2】
【0145】
(1−3)製造3:
下記表3に従って処方18〜処方29を調製した。
【0146】
各処方の具体的調製法は次の通りである。まず表中の「添加剤」欄に記載の各添加剤溶液/添加剤を注射用水と共に混合し、その混合液に1mLのテリパラチド酢酸塩溶液(テリパラチドとして2820μg/mL)を添加し、約19mLの薬液aを調製した。さらに、その薬液aに対して、表中の「pH調整剤」欄に記載のpH調整剤を添加することで、表中の「pH」欄に記載のpHに調整し、20mLの各処方を調製した。
【0147】
各処方を濾過滅菌処理した後に、プラスチック製シリンジに0.2mLずつ充填することによって、各処方が充填されたプラスチック製シリンジ(処方製剤)を製造し、脱アミド体の生成抑制試験に供した。
【0148】
各処方の組成は表中の「最終含有量」欄に記載の通りである。
【表3-1】
【表3-2】
【0149】
(2)メチオニンの効果試験に供した液状医薬製剤の調製:
下記表4に従って処方30〜32を調製した。
【0150】
各処方の具体的調製法は次の通りである。まず表中の「添加剤」欄に記載の各添加剤とテリパラチド酢酸塩(テリパラチドとして141mg)を注射用水と共に混合し、溶解を確認後、注射用水を用いて全量980gの薬液aを調製した。その後、薬液aに対して塩酸を添加することで、表中の「pH」欄に記載のpHに調整後、注射用水を用いて全量1000gの処方を調製した。
【0151】
各処方を濾過滅菌処理した後に、プラスチック製シリンジに0.2mLずつ充填することによって、各処方が充填されたプラスチック製シリンジ(処方製剤)を製造し、メチオニンの効果試験に供した。
【0152】
各処方の組成は表中の「最終含有量」欄に記載の通りである。
【表4】
【0153】
(3)充填容器に関する安定性試験に供した液状医薬製剤の調製:
下記表5に従って処方33〜40を調製した。
【0154】
具体的な処方各調製法については次の通りである。まず表中の「添加剤」欄に記載の各添加剤を注射用水と共に混合し、全量3000mLの溶液aを調製した。1600mLの溶液aに対してテリパラチド酢酸塩(テリパラチドとして282mg)を溶解させて薬液aを調製した。その後、薬液aに対して希釈した塩酸を添加することで、表中の「pH」欄に記載のpHに調整後、前記の溶液aを用いて全量2000mLの処方を調製した。
【0155】
各処方を濾過滅菌処理した後に、2mLのアンプルに2mLずつ充填して、各処方が充填されたアンプル(処方アンプル製剤)を製造し、充填容器に関する安定性試験に供した。また、各処方を濾過滅菌処理した後に、プラスチック製シリンジに0.2mLずつ充填して、各処方が充填されたプラスチック製シリンジ(処方シリンジ製剤)を製造し、充填容器に関する安定性試験に供した。
【0156】
各処方の組成は表中の「最終含有量」欄に記載の通りである。
【表5】
【0157】
(4)対照比較に関する安定性試験に供した液状医薬製剤の調製:
下記表6に従って処方41及び処方42を調製した。
【0158】
各処方の具体的調製法は次の通りである。まず表中の「添加剤」欄に記載の各添加剤溶液/添加剤を注射用水と共に混合し、その混合液に表中の「テリパラチド添加量」欄に記載のテリパラチド酢酸塩を含む溶液(テリパラチドとして2820μg/mL)を添加し、約19mLの薬液aを調製した。薬液aのpHが表中の「pH」欄に記載のpHであったため、pH調整剤によるpH調整は行わず、さらに、その薬液aに対して、メスアップを実施し、20mLの各処方を調製した。
【0159】
各処方を濾過滅菌処理した後に、プラスチック製シリンジに0.2mLずつ充填することによって、各処方が充填されたプラスチック製シリンジ(処方製剤)を製造し、対照比較に関する安定性試験に供した。
【0160】
【表6】
【0161】
(5)添加剤評価に関する安定性試験に供した液状医薬製剤の調製:
下記表7に従って処方43〜処方59を調製した。
【0162】
各処方の具体的調製法は次の通りである。まず表中の「添加剤」欄に記載の各添加剤溶液/添加剤を注射用水と共に混合し、その混合液に1mLのテリパラチド酢酸塩溶液(テリパラチドとして2820μg/mL)を添加し、約19mLの薬液aを調製した。さらに、その薬液aに対して、表中の「pH調整剤」欄に記載のpH調整剤を添加することで、表中の「pH」欄に記載のpHに調整し、20mLの各処方を調製した。
【0163】
各処方を濾過滅菌処理した後に、ガラスバイアルに0.4mLずつ充填することによって、各処方が充填された処方製剤を製造し、添加剤評価に関する安定性試験に供した。
【0164】
各処方の組成は表中の「最終含有量」欄に記載の通りである。なお、表中の「pH調整剤」欄に「なし」と記載されている場合には、pH調整剤によるpH調整は行わず、メスアップのみ行って「pH」欄に記載のpHに調整した。
【0165】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【0166】
さらに、下記表8に従って処方60及び処方61を調製した。
各処方の具体的調製法は次の通りである。表中の「添加物」欄記載のテリパラチド量を秤量した後に、表中の「溶媒」欄記載の溶媒により溶解をし、表中の「メスアップ」欄記載の容量にメスアップすることで各処方を調製した。
【0167】
その後、各処方を濾過滅菌処理した後に、ガラスバイアルに0.4mLずつ充填することによって、各処方が充填された処方製剤を製造し、添加剤評価に関する安定性試験に供した。
【0168】
【表8】
【0169】
(6)対照液状医薬製剤の調製:
下記表9に従って処方62を調製した。
【0170】
具体的な処方各調製法については次の通りである。まず表中の「添加剤」欄に記載の各添加剤を注射用水と共に混合し、全量3000gの溶液aを調製した。2480gの溶液aに対してテリパラチド酢酸塩(テリパラチドとして352.5mg)を溶解し、溶液aを用いて全量を2500gとし、処方62を調製した。
【0171】
処方62を濾過滅菌した後に、プラスチック製シリンジに0.2mLずつ充填し、処方62を充填したシリンジを処方62製剤として利用した。
【0172】
【表9】
【0173】
実施例2(脱アミド体及びアスパラギン酸残基異性化体の生成抑制試験):
(1)試験方法:
前述の「脱アミド体及びアスパラギン酸残基異性化体の生成抑制試験に供した液状医薬製剤」において調製された処方1〜29製剤を用いて脱アミド体及びアスパラギン酸残基異性化体の生成抑制試験を実施した。
【0174】
具体的には、各処方製剤を25℃/60%RHの安定性試験器に保存した後、経時的にサンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィーにより安定性を測定し、生成した不純物の解析を行った。
【0175】
(2)試験結果:
試験結果を以下の表10〜14に記す。表中の数値は処方に含まれるテリパラチド及びその類縁物質の総量を100とした場合の割合(%)を示す。
【0176】
表中の「脱アミド体(N16→iso−D16)」とは、テリパラチドのN末端から16番目に存在するアスパラギン残基が脱アミドされて生成された脱アミド体であって、その結果、同残基がイソアスパラギン酸残基に変化した脱アミド体を意味する。
【0177】
表中の「脱アミド体(N16→D16)」とは、テリパラチドのN末端から16番目に存在するアスパラギン残基が脱アミドされて生成された脱アミド体であって、その結果、同残基がアスパラギン酸残基に変化した脱アミド体を意味する。
【0178】
表中の「Asp異性化体(D30→iso−D30)」とは、テリパラチドのN末端から30番目に存在するアスパラギン酸残基がイソアスパラギン酸残基に変化してなるアスパラギン酸残基異性化体を意味する。
【0179】
また、以下の記載中「脱アミド体(N10)−Asp異性化体(D30→iso−D30)」とは、テリパラチドのN末端から10番目に存在するアスパラギン残基が脱アミドされて生成された脱アミド体であって、その結果、同残基がアスパラギン酸残基又はイソアスパラギン酸残基に変化してなる脱アミド体であり、かつ、テリパラチドのN末端から30番目に存在するアスパラギン酸残基がイソアスパラギン酸残基に変化してなるアスパラギン酸残基異性化体を意味する。
【0180】
表中の「脱アミド体」とは、脱アミド体(N10)−Asp異性化体(D30→iso−D30)、脱アミド体(N16→iso−D16)、及び、脱アミド体(N16→D16)の総称を意味する(すなわち、脱アミド体の表中数値は前記3化合物の総量を意味する)。表中の「Asp異性化体」とは、脱アミド体(N10)−Asp異性化体(D30→iso−D30)及びAsp異性化体(D30→iso−D30)の総称を意味する(すなわち、Asp異性化体の表中数値は前記2化合物の総量を意味する)。
【0181】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【0182】
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【0183】
【表12-1】
【表12-2】
【表12-3】
【0184】
【表13-1】
【表13-2】
【表13-3】
【0185】
【表14-1】
【表14-2】
【表14-3】
【表14-4】
【0186】
実施例3(メチオニンの効果試験):
(1)試験方法:
前述の「メチオニンの効果試験に供した液状医薬製剤」において調製された処方30〜32製剤を用いて、メチオニンの効果試験を実施した。
【0187】
具体的には、各処方製剤を5℃の安定性試験器に保存した後、6箇月目にサンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィーにより安定性を測定した。
【0188】
(2)試験結果:
試験結果を以下の表15及び16に記す。
表中の「類縁物質量」は、処方に含まれるテリパラチド及びその類縁物質の総量を100とした場合の割合(%)を示す。ただし、表中の「対開始時含量」とは、保存前のテリパラチド量を100とした場合の6箇月目に残存していたテリパラチド量の割合(%)を示す。
【0189】
表中の「8酸化体」とは、テリパラチドのN末端から8番目のメチオニン残基がスルホキシド化されたテリパラチド酸化体を、表中の「18酸化体」とは、テリパラチドのN末端から18番目のメチオニン残基がスルホキシド化されたテリパラチド酸化体を、それぞれ、意味する。
【0190】
【表15】
【0191】
【表16】
【0192】
実施例4(充填容器に関する安定性試験):
(1)試験方法:
前述の「充填容器に関する安定性試験に供した液状医薬製剤」において調製された処方33〜40アンプル製剤、及び、前述の「充填容器に関する安定性試験に供した液状医薬製剤」において調製された処方33〜40シリンジ製剤を用いて、安定性試験を実施した。
【0193】
具体的には、各処方製剤を25℃/60%RHの安定性試験器に保存した後、3箇月目にサンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィーにより安定性を測定した。
【0194】
(2)試験結果:
試験結果を以下の表17及び表18に記す。
表中の「対開始時含量」とは、保存前のテリパラチド量を100とした場合の3箇月目に残存していたテリパラチド量の割合(%)を示す。表中の「類縁物質総量」とは、3箇月目に存在している(テリパラチド量及び類縁物質総量)を100とした場合の3箇月目に存在している類縁物質総量の割合(%)を示す。
【0195】
【表17】
【0196】
【表18】
【0197】
実施例5(対照比較に関する安定性試験):
(1)試験方法:
前述の「対照比較に関する安定性試験に供した液状医薬製剤」において調製された処方41〜42製剤、及び、前述の「充填容器に関する安定性試験に供した液状医薬製剤」において調製された処方38シリンジ製剤を用いて、安定性試験を実施した。
【0198】
具体的には、各処方を25℃/60%RHの安定性試験器に保存した後、1,3箇月目にサンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィーにより安定性を測定した。
【0199】
(2)試験結果:
試験結果を以下の表19に記す。
表中の「対開始時含量(3ヵ月保存後)」とは、保存前のテリパラチド量を100とした場合の3箇月目に残存していたテリパラチド量の割合(%)を示す。表中の「類縁物質総量(3ヵ月保存後)」とは、3箇月目に存在している(テリパラチド量及び類縁物質総量)を100とした場合の3箇月目に存在している類縁物質総量の割合(%)を示す。
【0200】
【表19】
【0201】
実施例6(特定類縁体抑制に関する安定性試験):
(1)試験方法:
前述の「充填容器に関する安定性試験に供した液状医薬製剤の調製」において調製された処方33、38製剤、及び、前述の「対照液状医薬製剤の調製」において調製された処方62製剤を用いて特定類縁体抑制に関する安定性試験を実施した。
【0202】
具体的には、各処方製剤を5℃の安定性試験器に保存した後、経時的にサンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィーにより安定性を測定した。高速液体クロマトグラフィーの条件は以下の通りである。
【0203】
(1)検出器:紫外吸光光度計(測定波長:214nm)
(2)カラム:内径4.6mm、長さ150mmのステンレス管に3.5μmの液体ク
ロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填(Agilent Tech
nologies社製のZorbax 300SB−C18、又は同等品)
(3)カラム温度:40℃付近の一定温度
(4)移動相
移動相A:無水硫酸ナトリウム28.4gを水900mLに溶かし、リン酸を加えてpH2.3に調整した後、水を加えて1000mLとする。この液900mLにアセトニトリル100mLを加える。
移動相B:無水硫酸ナトリウム28.4gを水900mLに溶かし、リン酸を加えてpH2.3に調整した後、水を加えて1000mLとする。この液500mLにアセトニトリル500mLを加える。
(5)移動相の送液
移動相A及び移動相Bの混合比を下記表20のように変えて濃度勾配制御する。
【表20】
(6)流量:毎分1.0mL
(7)検出時間:試料溶液注入後45分間。ただし溶媒ピークの後ろからとする。
【0204】
(2)試験結果:
各処方の相対保持時間0.72の類縁物質の量を下記表21に示す。
表中の「開始時含量」とは、保存前の(テリパラチド量及び類縁物質総量)を100とした場合に存在していた相対保持時間0.72の類縁物質量の割合(%)を示す。表中の「3箇月含量」とは、3箇月目に存在している(テリパラチド量及び類縁物質総量)を100とした場合の3箇月目に存在している相対保持時間0.72の類縁物質量の割合(%)を示す。
【0205】
【表21】
【0206】
相対保持時間0.72の類縁物質の構造は不明である。ただし、前記の高速液体クロマトグラフィーの条件(1)〜(7)は、特許文献5の[0087]〜[0089]に記載の条件と実質的に同一であることから、特許文献5記載の類縁物質9’〜11’(相対保持時間0.69〜0.74;特許文献5の表3参照)のいずれか又はその混合物である可能性が高いと発明者は考察している。
【0207】
【化5】
【化6】
【化7】
【0208】
なお、特許文献5記載の類縁物質9’とは、テリパラチドの23位トリプトファンに対応する残基が上記(a)残基であり、その他の構造は元のテリパラチドと同一であるテリパラチド類縁体(ヒトPTH(1−34)−Trp23[二酸化])を意味する。類縁物質10’とは、テリパラチドの23位トリプトファンに対応する残基が上記(c)−1または上記(c)−2で示される残基であり、その他の構造は元のテリパラチドと同一であるテリパラチド類縁体(ヒトPTH(1−34)−Trp23[一酸化])を意味する。類縁物質11’とは、テリパラチドの23位トリプトファンに対応する残基が上記(b)残基であり、その他の構造は元のテリパラチドと同一であるテリパラチド類縁体(ヒトPTH(1−34)−Trp23[二酸化−ギ酸脱離])を意味する。
【0209】
実施例7(添加剤評価に関する安定性試験):
(1)試験方法:
前述の「添加剤評価に関する安定性試験に供した液状医薬製剤の調製」において調製された処方43〜61を用いて添加剤評価に関する安定性試験を実施した。
【0210】
具体的には、各処方製剤を25℃/60%RHの安定性試験器に保存した後、1箇月目および3箇月目にサンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィーにより安定性を測定した。
【0211】
(2)試験結果:
試験結果を以下の表22に示す。
表中において「−」は、測定されなかった事実を意味する。
【0212】
表中の「開始時含量」とは、保存前の(テリパラチド量及び類縁物質総量)を100とした場合に存在していた類縁物質総量の割合(%)を示す。表中の「1箇月含量」とは、1箇月目に存在している(テリパラチド量及び類縁物質総量)を100とした場合の1箇月目に存在している類縁物質総量の割合(%)を示す。表中の「3箇月含量」とは、3箇月目に存在している(テリパラチド量及び類縁物質総量)を100とした場合の3箇月目に存在している類縁物質総量の割合(%)を示す。
【0213】
【表22】
【0214】
実施例8(光安定性試験):
(1)試験方法:
前述の「充填容器に関する安定性試験に供した液状医薬製剤」において調製された処方38シリンジ製剤又は紙箱等で包装された同製剤を、市販の光安定性試験装置に供し、D65ランプを光源として(照度:2500lx)、5℃±3℃の条件の下、120万lx・hr以上かつ200w・h/m
2を満たす期間として20日間、又は、60万lx・hr以上を満たす期間として10日間にわたり、曝光した。曝光後、サンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィーにより製剤中の類縁体総量ならびに8酸化体および18酸化体を測定した。ここで、紙箱等で包装された同製剤とは、シリンジ製剤をデバイスに組み込み、そのデバイスをさらにブリスター包装し、個装箱に内包させたものである。
【0215】
(2)試験結果:
測定結果を以下の表に示す。測定時期欄における各数値は、保存前の(テリパラチド量及び類縁物質総量)を100とした場合の該当酸化体量の割合(%)を示す。
【表23】