特許第6646180号(P6646180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646180
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20200203BHJP
   G03B 17/14 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   G02B7/02 Z
   G02B7/02 H
   G03B17/14
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-197220(P2019-197220)
(22)【出願日】2019年10月30日
(62)【分割の表示】特願2016-527683(P2016-527683)の分割
【原出願日】2015年4月27日
(65)【公開番号】特開2020-16907(P2020-16907A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2019年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-118453(P2014-118453)
(32)【優先日】2014年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】八木 啓文
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−27762(JP,A)
【文献】 実開平7−16907(JP,U)
【文献】 特開2005−241842(JP,A)
【文献】 特開2003−21782(JP,A)
【文献】 特開2009−244773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディに着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒において、
基端側が前記カメラボディに装着されると共に先端側の内周面にネジ部(以下、「固定筒側ネジ部」とする)が形成されてなる固定筒部と、
複数のレンズを保持する筒状の部材であって、外周面にネジ部(以下、「可動筒側ネジ部」とする)が形成されると共に該可動筒側ネジ部が前記固定筒側ネジ部に螺合された状態で前記固定筒部の内側に移動可能な状態で配置されてなる可動筒部と、
前記可動筒側ネジ部に螺合された状態で前記固定筒部の先端側に当接されることにより
該固定筒部と前記可動筒部との相対回転を抑制するように構成されたナット部材と、
を備え、
前記複数のレンズは、第1レンズと第2レンズを含み、
前記可動筒部は、前記第1レンズを保持する第1側可動筒部と、該第1側可動筒部に着脱可能に取り付けられ、前記第2レンズを保持する第2側可動筒部と、該第1レンズと該第2レンズとの間に配置される固定絞り板と、を有し、
前記固定絞り板は、前記第2側可動筒部を前記第1側可動筒部から取り外すことによって、前記第1側可動筒部から取り外し可能に構成される、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記第2側可動筒部は、前記第1側可動筒部に取り付けられた状態において、該第1側可動筒部と当接する部分に接着剤が塗布される、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記固定絞り板の開口と異なる大きさの開口を持つ取り替え用固定絞り板、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記可動筒部における前記レンズを保持する部分(以下、「レンズ保持部」とする)に
貫通孔が形成され、
該貫通孔を介して該レンズの外周面と該レンズ保持部との間に接着剤を充填できるよう
に構成された、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記固定筒部の外周面に形成された凹凸部である固定筒側ローレット、及び/又は、前
記可動筒部の外周面に形成された凹凸部である可動筒側ローレット、を備え、
前記ナット部材は、前記固定筒側ローレット及び/又は前記可動筒側ローレットと異なる形状及び/又は異なる色で形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記可動筒部が保持するレンズの光軸方向に該可動筒部を付勢するように前記固定筒部と該可動筒部との間に配置された弾性部材、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記弾性部材はコイルスプリング部材であることを特徴とする請求項6に記載のレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラボディに着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場内での検査ラインや製造するロボットの位置検知、あるいはセキュリティ、その他様々な用途のために建物の屋内や屋外にカメラを設置することが行われているが、そのようなカメラの中にはレンズ鏡筒を着脱できるように構成されたものがあり、該レンズ鏡筒については種々の構造のものが提案されている(例えば、非特許文献1、特許文献
1及び2参照)。
【0003】
図5は、カメラボディに着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒の従来構造の一例を示す側面図であり、図中の符号Bはカメラボディを示し、符号100は、該カメラボディBに着脱自在に装着されるレンズ鏡筒を示す。このレンズ鏡筒100は、複数の筒状部101A,101Bから構成されていて、該筒状部101A,101Bを相対回転させることによりフォーカスを調整するように構成されている。そして、符号102は、各筒状部101A,101Bの回転位置がずれないように固定するための緩み止めビスを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】興和株式会社、高精細1型6メガピクセルオーバーカメラ対応レンズ、LM16SC外観図、[平成26年5月29日(木)検索]、インターネット<URL:http://www.kowa.co.jp/opto/products/pdf/lm16sc.pdf>
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−84016号公報
【特許文献2】特許第5372385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような緩み止めビス102は小径のために締めにくいという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の問題を解消することのできるレンズ鏡筒を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、図1乃至図3(a) 、及び図6に例示するものであって、カメラボディ(B)に着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒(1,2,3)において、
基端側(10a,20a,30a)が前記カメラボディ(B)に装着されると共に先端側(10b,20b,30b)の内周面(10c,20c,30c)にネジ部(以下、「固定筒側ネジ部」とする)(10d,20d,30d)が形成されてなる固定筒部(10,20,30)と、
レンズ(A,A)を保持する筒状の部材であって、外周面(11a,21a,31a)にネジ部(以下、「可動筒側ネジ部」とする)(11b,21b,31b)が形成されると共に該可動筒側ネジ部(11b,21b,31b)が前記固定筒側ネジ部(10d,20d,30d)に螺合された状態で前記固定筒部(10,20,30)の内側に移動可能な状態で配置されてなる可動筒部(11,21,31)と、
前記可動筒側ネジ部(11b,21b,31b)に螺合された状態で前記固定筒部(10,20,30)の先端側(10b,20b,30b)に当接されることにより該固定筒部(10,20,30)と前記可動筒部(11,21,31)との相対回転を抑制するように構成されたナット部材(12,22,32)と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の観点は、第1の観点に係る発明において、図2(a) (b) 、図3(a) 及び図6に詳示するように、前記可動筒部(21,31)が、前記可動筒側ネジ部(21b,31b)を有する基端側可動筒部(210,310)と、該基端側可動筒部(210,310)に着脱可能に取り付けられる先端側可動筒部(211,311)と、該基端側可動筒部(210,310)と該先端側可動筒部(211,311)との間に挟持された状態で配置される固定絞り板(212,314)と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、第2の観点の発明において、図3(b) 乃至(d) に例示するように、前記固定絞り板(212)の開口(不図示)と異なる大きさの開口(212Aa,212Ba,212Ca)を持つ取り替え用固定絞り板(212A,212B,212C)、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、第1の観点の発明において、前記可動筒部における前記レンズ(A,A)を保持する部分(以下、「レンズ保持部」とする)(図1の符号11、図3(a) の符号211,213参照)に貫通孔(図1の符号11c、図3(a) の符号211c,213c参照)が形成され、
該貫通孔(11c,211c,213c)を介して該レンズ(A,A)の外周面と該レンズ保持部(11,211,213)との間に接着剤(不図示)を充填できるように構成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の観点は、第1の観点の発明において、図1及び図2(a) (b) に例示するように、前記固定筒部(図2(a) (b) の符号20参照)の外周面に形成された凹凸部である固定筒側ローレット(同図の符号20e参照)、及び/又は、前記可動筒部(図1の符号11参照)の外周面に形成された凹凸部である可動筒側ローレット(同図の符号11d参照)、を備え、
前記ナット部材(12,22)は、前記固定筒側ローレット(20e)及び/又は前記可動筒側ローレット(11d)と異なる形状及び/又は異なる色で形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第6、7の観点は、図6に例示するものであって、第1の観点の発明において、前記可動筒部(31)が保持するレンズ(A,A)の光軸方向(C)に該可動筒部(31)を付勢するように前記固定筒部(30)と該可動筒部(31)との間に配置された弾性部材としてスプリング部材(図6の符号33参照)、を備えたことを特徴とする。
【0014】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の観点によれば、建物の屋内や屋外に長年固定されて様々な振動を受けるカメラボディに装着される場合でも、前記ナット部材によって前記固定筒部と前記可動筒部との相対回転を抑制でき、前記振動等に伴うフォーカスやズームのズレ等を防止することができる。また、前記ナット部材は、図5に例示した緩み止めビスに比べて大径であるため、締めやすく緩みにくいという効果を奏する。
【0016】
ところで、レンズ鏡筒に使用する絞りが可変絞りの場合は、設置場所状況(工場での振動、工場での製造用アームなどの可動物体にカメラを設置した場合における該アームから受ける振動)、地震、その他の要因に伴う振動によって絞り羽根どうしが擦れ、粉塵が発生して画像のノイズの原因になったりするおそれも考えられる。しかしながら、第2及び第3の観点の発明によれば、可変絞りではなく固定絞り板を使用しているため、そのような問題も解消できる。
【0017】
本発明の第4の観点によれば、レンズ鏡筒をカメラボディに長期間に亘って取り付けておく場合でも、各レンズの適正位置からの位置ズレを防止することができる。
【0018】
本発明の第5の観点によれば、前記固定筒側ローレットと前記可動筒側ローレットと前記ナット部材とを視覚と触覚とで明確に区別できる。
【0019】
本発明の第6、7の観点によれば、前記固定筒側ネジ部と前記可動筒側ネジ部との間に多少のガタ(スラスト方向のガタ)があったとしても前記固定筒部と前記可動筒部との前記光軸方向への相対移動は前記ナット部材で締め付けるまでの間は前記スプリング部材によって制限されることとなり、該相対移動に伴うフォーカス等のズレを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係るレンズ鏡筒の構成の一例を示す分解斜視図である。
図2図2(a) (b) は、本発明に係るレンズ鏡筒の構成の他の例を示す端面図である。
図3図3(a) は、図2(a) (b) に示すレンズ鏡筒の分解端面図であり、同図(b)〜(c) は、取り替え用固定絞り板の形状の例を示す正面図である。
図4図4(a) 〜(c) は、絞り板の従来構造の一例を示す正面図である。
図5図5は、レンズ鏡筒の従来構造の一例を示す側面図である。
図6図6は、本発明に係るレンズ鏡筒の構成の他の例を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1乃至図4、及び図6に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
本発明に係るレンズ鏡筒は、カメラボディに着脱可能となるように構成されたものである。このレンズ鏡筒は、図1図2(a) (b) 、図3(a) 及び図6に符号1,2,3で例示するものであって、
・ 基端側(光軸方向Cに沿った一端側の意)10a,20a,30aが前記カメラボディBに装着されると共に先端側(光軸方向Cに沿った他端側の意)10b,20b,30bの内周面10c,20c,30cにピッチネジ部(以下、「固定筒側ネジ部」とする)10d,20d,30dが形成されてなる固定筒部10,20,30と、
・ レンズA,Aを保持する筒状の部材であって、外周面11a,21a,31aにピッチネジ部(以下、「可動筒側ネジ部」とする)11b,21b,31bが形成されると共に該可動筒側ネジ部11b,21b,31bが前記固定筒側ネジ部10d,20d,30dに螺合された状態で前記固定筒部10,20,30の内側に前記光軸方向Cに移動可能な状態で配置されてなる可動筒部11,21,31と、
・ 前記可動筒側ネジ部11b,21b,31bに螺合された状態で前記固定筒部10,20,30の先端側10b,20b,30bに当接されることにより該固定筒部10,20,30と前記可動筒部11,21,31との相対回転を抑制するように構成されたナット部材(リングナット)12,22,32と、
を備えている。なお、前記ナット部材12,22,32は、経年変化を受けにくい硬質の材料(好ましくは金属)で形成されていると良い。
【0023】
本発明によれば、建物の屋内や屋外に長年固定されて様々な振動を受けるカメラボディBに装着される場合でも、前記ナット部材12,22,32によって前記固定筒部10,20,30と前記可動筒部11,21,31との相対回転を抑制でき、前記振動等に伴うフォーカスやズームのズレ等を防止することができる。また、前記ナット部材12,22,32は、図5に例示した緩み止めビス102に比べて大径であるため、締めやすく緩みにくいという効果を奏する。
【0024】
ところで、建物の屋内や屋外に固定するカメラの場合、地震や他の要因に伴う振動によってレンズ鏡筒内部の部品同士が擦れ、粉塵が発生して画像のノイズの原因になったりす
るおそれも考えられる。しかしながら、本発明に係るレンズ鏡筒1,2,3の場合、前記ナット部材12,22,32は前記固定筒部10,20,30の先端側10b,20b,30bの全体に接触していることからその接触面積は比較的大きくなるため、地震等の振動を受けても粉塵は発生しにくくなり、そのような問題も解消できる。
【0025】
この場合、前記可動筒部は、図2(a) (b) 、図3(a) 及び図6に符号21,31で詳示するように、前記可動筒側ネジ部21b,31bを有する基端側可動筒部210,310と、該基端側可動筒部210,310に着脱可能に取り付けられる先端側可動筒部211,311と、該基端側可動筒部210,310と該先端側可動筒部211,311との間に挟持された状態で配置される固定絞り板212,314と、を有するようにしても良い。例えば、前記先端側可動筒部211,311の内周面又は外周面にピッチネジ部(不図示)を形成すると共に、前記基端側可動筒部210,310の外周面又は内周面にピッチネジ部(不図示)を形成しておいて、該先端側可動筒部211,311を該基端側可動筒部210,310に着脱できるように構成しておくと良い。また、レンズA,Aは2つのレンズ群に分けておいて、一方のレンズ群Aは前記基端側可動筒部210,310(図に示す例では、該基端側可動筒部210,310の内部に着脱自在に支持されている筒状の部材213,313)に保持させ、他方のレンズ群Aは先端側可動筒部211,311に保持させるようにすると良い。したがって、前記固定絞り板212,314は、これら2つのレンズ群A,Aの間に配置されることとなる。このように構成することにより(すなわち、レンズを2つのレンズ群A,Aに分けると共に、これら2つのレンズ群A,Aの間に前記固定絞り板212,314を配置することにより)、フォーカス調整時の収差変動(つまり、フォーカス調整の影響でレンズ系の収差の変動(悪化))を抑えることができる。なお、該固定絞り板212,314は、開口(絞り開口)を有する円板状のものにすると良い。
【0026】
図4(a) 〜(c) に例示するような可変絞り312の場合、地震や他の要因に伴う振動によって絞り羽根どうしが擦れ、粉塵が発生して画像のノイズの原因になったりするおそれも考えられる。しかしながら、上述のような固定絞り板212を使用した場合にはそのような粉塵の発生やノイズの発生を抑制できるという効果を奏する。
【0027】
そして、前記固定絞り板212,314は、前記先端側可動筒部211,311を前記基端側可動筒部210,310から取り外すことにより交換可能に構成しておくと良い。
【0028】
さらに、図3(b) 〜(d) に例示するように、前記固定絞り板212の開口(不図示)と異なる大きさの開口212Aa,212Ba,212Caを持つ取り替え用固定絞り板212Aa,212Ba,212Caを1枚又は複数枚備えておいて、適宜取り替えられるように構成しておくと良い。例えば、カメラボディBを設置する場所が屋外等の明るい場所である場合には、同図(b) に例示するような一番小さな開口212Aaを持つ取り替え用固定絞り板212Aaをレンズ鏡筒2に取り付けると良く、屋内の廊下などの暗い場所である場合には、同図(c) や(d) に例示するような大きな開口212Ba,212Caを持つ取り替え用固定絞り板212Ba,212Caをレンズ鏡筒2に取り付けると良い。なお、これらの固定絞り板212,212A,212B,212Cの板厚は、遮光性と機械的強度を確保するという観点からは厚い方が好ましく、光学的には薄い方が好ましいが、全てを満足させるという観点からは0.05〜0.1mmの範囲が好ましい。
【0029】
ところで、前記可動筒部における前記レンズA1,A2を保持する部分(以下、「レンズ保持部」とする)(図1の符号11、図3(a) の符号211,213参照)に貫通孔11c,211c,213cを形成しておいて、該貫通孔11c,211c,213cを介して該レンズA,Aの外周面と該レンズ保持部11,211,213との間に接着剤(不図示)を充填できるように構成しておくと良い。そのように構成した場合には、該レンズA,Aの外周面と該レンズ保持部11,211,213との間に接着剤を流し込むことができ、レンズ鏡筒2をカメラボディBに長期間に亘って取り付けておく場合でも、各レンズA,Aの適正位置からの位置ズレを防止することができる。
【0030】
次に、本発明に係るレンズ鏡筒2の設置方法について説明する。
【0031】
該レンズ鏡筒2の設置に際しては、前記固定筒部20の基端側20aを前記カメラボディBに装着して固定する。この際、該基端側20aと該カメラボディBとの間には接着剤を塗布しておいて振動に伴う前記固定筒部20の緩みを防止するようにすると良い。
【0032】
該固定筒部20を前記カメラボディBに取り付けた後は、カメラ(つまり、前記カメラボディB及び前記レンズ鏡筒2)を設置する場所を実際に見て、最適な大きさの開口の固定絞り板212,212A,212B又は212Cを選択し、該選択した固定絞り板212,212A,212B又は212Cを前記基端側可動筒部210と前記先端側可動筒部211との間に入れ込む。この際、該基端側可動筒部210と該先端側可動筒部211とが当接する部分(例えば、不図示のピッチネジ部)に接着剤を塗布しておいて、それらの可動筒部210,211が振動などで緩まないようにしておくと良い。そして、該基端側可動筒部210には前記ナット部材22を取り付けると共に、該基端側可動筒部210を前記固定筒部20に取り付けると良い。なお、緩み防止を目的とした接着剤の塗布は、前記カメラボディBや前記レンズ鏡筒2を設置する前の段階で行うことができることから、該接着剤を塗布し易いように該カメラボディBや該レンズ鏡筒2の姿勢を自由に動かすことができ、接着剤の塗布作業を効率良く行うことができる。また、上述した実施例では、
・ 前記固定筒部20の前記カメラボディBへの取り付け
・ 前記固定絞り板の前記可動筒部21への取り付け
・ 該可動筒部21の前記固定筒部20への取り付け
の順で各工程を実施しているが、各工程の実施順序を変えても良い。
【0033】
その後、前記レンズ鏡筒2を取り付けたカメラボディBを所定の場所に設置し、前記可動筒部21を回転させてフォーカス調整を行い、該調整が完了した時点で前記ナット部材22によって固定する。このフォーカス調整は、カメラボディBを現場に設置した状態で行わなければならず、フォーカスの固定(つまり、可動筒部21と固定筒部20との相対回転の抑制)を接着剤により行おうとした場合には、カメラボディBの設置状態や設置姿勢によっては接着剤を塗布することが困難なこともあり得る。例えば、該カメラボディBを天井や軒先に吊すような場合には該カメラボディBを該天井や軒先に吊した状態で接着剤を塗布する必要があるが、作業者は無理な姿勢で接着剤の塗布作業を行わなければならず、接着剤が意図しない箇所に流れ込んだり垂れたりしてしまうおそれもある。また、該接着剤が十分に硬化する前に振動(例えば、風による揺れや、近くの道路を走行する自動車からの振動)でフォーカスがずれてしまうおそれもある。しかし、本発明によれば、フォーカスの固定は前記ナット部材22によって行うようになっているので、そのような問題を解消できる。
【0034】
ところで、
図2(a) (b) に例示するように、前記固定筒部20の外周面に形成された凹凸部である固定筒側ローレット20e、
及び/又は、
図1に例示するように、前記可動筒部11の外周面に形成された凹凸部である可動筒側ローレット11d
を備えるようにし、しかも、前記ナット部材12,22は、前記固定筒側ローレット20e及び/又は前記可動筒側ローレット11dと異なる形状及び/又は異なる色で形成すると良い。そのようにした場合には、前記固定筒側ローレット20eと前記可動筒側ローレット11dと前記ナット部材12,22とを視覚と触覚とで明確に区別でき、誤操作等を防止することができる。特に、異なる色で形成した場合には、製品マニュアルでの解説もわかりやすく表示できるという効果を奏する。
【0035】
ところで、図6に例示するように、前記固定筒部30と前記可動筒部31との間に弾性部材33を配置しておいて、該可動筒部31を光軸方向(つまり、前記レンズ鏡筒3の光軸方向であって、前記可動筒部31が保持するレンズA,Aの光軸方向)Cに付勢するようにすると良い。そのようにした場合には、前記固定筒側ネジ部30dと前記可動筒側ネジ部31bとの間に多少のガタ(スラスト方向のガタ)があったとしても前記固定筒部30と前記可動筒部31との前記光軸方向Cへの相対移動は前記ナット部材32で締め付けるまでの間は前記スプリング部材33によって制限されることとなり、該相対移動に伴うフォーカス等のズレを防止することができる。ここで、前記弾性部材33としては、前記可動筒部31を前記固定筒部30から離れる方向(図6では右方向であって、前記ナット部材32の締め付けにより移動される方向)に付勢するコイルスプリング部材(具体的には、圧縮コイルスプリング)が好ましいが、コイルスプリング部材以外のスプリング部材はもちろんのこと、他の弾性部材を使っても同様の構成が実現できる。
【符号の説明】
【0036】
1 レンズ鏡筒
2 レンズ鏡筒
3 レンズ鏡筒
10 固定筒部
10a 固定筒部の基端側
10b 固定筒部の先端側
10c 固定筒部の内周面
10d 固定筒側ネジ部
11 可動筒部、レンズ保持部
11a 可動筒部の外周面
11b 可動筒側ネジ部
11c 貫通孔
11d 可動筒側ローレット
12 ナット部材
20 固定筒部
20a 固定筒部の基端側
20b 固定筒部の先端側
20c 固定筒部の内周面
20d 固定筒側ネジ部
20e 固定筒側ローレット
21 可動筒部
21a 可動筒部の外周面
21b 可動筒側ネジ部
22 ナット部材
30 固定筒部
30a 固定筒部の基端側
30b 固定筒部の先端側
30c 固定筒部の内周面
30d 固定筒側ネジ部
30e 固定筒側ローレット
31 可動筒部
31a 可動筒部の外周面
31b 可動筒側ネジ部
32 ナット部材
33 スプリング部材
210 基端側可動筒部
211 先端側可動筒部(レンズ保持部)
211c 貫通孔
212 固定絞り板
212A,212B,212C 取り替え用固定絞り板
212Aa,212Ba,212Ca 開口
213 レンズ保持部
213c 貫通孔
310 基端側可動筒部
311 先端側可動筒部(レンズ保持部)
314 固定絞り板
,A レンズ
B カメラボディ
図1
図2
図3
図4
図5
図6