(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レバーが、表面の近接を検出し、前記装置が前記表面から取り去られたことを検出したときに、前記中断部を解放して、前記第2動作部分を生じさせるように構成された近接検出器を形成する
請求項1に記載の針挿入および退避機構。
前記レバーは、当該レバーが前記投薬装置の前記基部の下方に前記所定角度で延伸するときに、前記ボタンの動きを妨げるアームを有し、前記レバーが前記表面により前記所定角度から変位させられたときに、前記アームが動かされて前記ボタンを解放する
請求項1に記載の針挿入および退避機構。
前記基部の下に粘着層をさらに備えて、前記投薬装置を前記表面に粘着させ、前記粘着に抗って前記投薬装置を前記表面から取り去ることで、前記基部に引張力が働き、この引張力が前記中断部を解放させて、前記第2動作部分を生じさせる
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の針挿入および退避機構。
前記装置により投与される医薬の薬物濃度を検出し、前記医薬を投与することの完了を検出したときに、前記中断部を解放して、前記第2動作部分を生じさせるように構成された薬物濃度検出器をさらに備えた
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の針挿入および退避機構。
【背景技術】
【0002】
先曲がりのシリンジを有する投薬装置は、注射されるべき物質を収容する装置であり、皮膚にぴたりと接して配置される。針は、皮膚に対して装置の基部から垂直に繰り出され、皮膚を貫通して、医薬を注射する。
【0003】
米国特許第6500150号は、「皮膚接触面を形成する基部部材と、医薬のリザーバとして機能するシリンジと、シリンジから医薬を排出するための手段と、を備える投薬装置であって、シリンジが、シリンジの長手方向軸が皮膚の表面に対して実質的に平行であるように、基部部材と接続され、投与用の針が、シリンジと連通した状態にあり、針が、針の先端を皮膚接触面に対して実質的に垂直に向ける、角度の付された曲げ部を有し、使用に際し、針の先端が、被験者の皮膚を貫通するように適合された投薬装置」を開示する。
【0004】
米国特許第6824529号は、「皮膚接触面を形成する基部部材と、医薬のリザーバとして機能するシリンジと、シリンジから医薬を排出するための手段と、を備える投薬装置であって、シリンジが、シリンジの長手方向軸が皮膚の表面に対して実質的に平行であるように、基部部材と接続され、投与用の針が、シリンジと連通した状態にあり、針が、針の先端を皮膚接触面に対して実質的に垂直に向ける、角度の付された曲げ部を有し、使用に際し、針の先端が、被験者の皮膚を貫通するように適合された投薬装置」を開示する。
【0005】
米国特許第6843782号は、「皮膚接触面を形成する基部部材と、医薬のリザーバとして機能するシリンジと、シリンジから医薬を排出するための手段と、を備える投薬装置であって、シリンジが、シリンジの長手方向軸が皮膚の表面に対して実質的に平行であるように、基部部材と接続され、投与用の針が、シリンジと連通した状態にあり、針が、針の先端を皮膚接触面に対して実質的に垂直に向ける、角度の付された曲げ部を有し、使用に際し、針の先端が、被験者の皮膚を貫通するように適合された投薬装置」を開示する。
【0006】
米国特許第5858001号は、「粘着性コーティングを有する皮膚接触面を形成する基部部材により被験者の皮膚に貼り付けられるように適合された液状医薬投与装置であって、円柱状カートリッジが、医薬のリザーバとして機能し、使用時にカートリッジの長手方向軸が皮膚接触面に対して実質的に平行に配置されるように、基部部材に接続されたハウジングに組み込まれる。使用時にカートリッジの内部と連通する投与用の針が、ハウジングが基部部分に対して下向きに閉じた場合に、被験者の皮膚を貫通する。この動作は、カートリッジのなかでピストンを移動させて医薬コンパートメントを圧縮するガスを生じさせるクエン酸/炭酸水素ナトリウムガス発生器を起動させもする。この圧縮により、ストッパが投与用の針と連通した状態にある導管により貫通され、医薬がコンパートメントから針を介して被験者の皮下組織に排出されるのを可能とする」を開示する。
【0007】
米国特許公開第20140163526号は、「自動注射装置に標準タイプのシリンジおよび/または皮下針を装着することが可能である。必要に応じ、シリンジは、医薬で充填されおよび/または殺菌済みの針カバーで覆われてもよい。シリンジは、針カバーが所定位置にある状態で、無菌状態で注射装置に装填されてもよく、注射装置は、例えば、ファスナ(例えば、粘着性のある基部)を備えることができる。幾つかの実施形態では、ファスナは、使用者が注射装置を被験者の皮膚上で長い時間に亘って安定して保持するのを支援する。例えば、注射装置は、30秒から180秒までの範囲に及ぶ期間に亘り、0.5および3.0mlの間の範囲に及ぶ体積を注射するのに使用される」ことを開示する。
【0008】
米国特許公開第20150088071号は、起動機構および安全ラッチを開示する。起動機構は、長手方向軸を有する針を展開して、ハウジングから突出させるように動作する。安全ラッチは、ハウジングに移動可能に搭載され、針が通過するのを可能とする針開口部が形成される。安全ラッチは、針が針開口部を通過するように整列される第1位置と、針のその長手方向軸に平行な方向の動作が安全ラッチのうち針開口部から離れた部分により妨げられるように、安全ラッチがハウジングに対して動かされる第2位置と、を有する。
【0009】
国際公開特許出願第2015048791号は、使用に際して調合装置を準備する方法を開示する。この装置は、封止された要素と、活性を有する外表面と、を備える。外表面は、表面カバーで保護される。装置を準備することは、表面カバーを外すことで、活性を有する外表面を起動させることと、封止された要素の封を解除することで、封止された要素の内側の部分を装置の外部に露出させることと、表面カバーおよび封止された要素に取り付けられたカプラを用いて、起動と封の解除とを同期させることと、を含み得る。
【0010】
国際特許公開第2013/115843号は、物質の自動可変流量投与のための装置を開示する。幾つかの形態において、投与装置は、プログラム可能である。幾つかの形態において、投与装置は、使い捨てである。必要に応じ、投与流量は、装置の構成要素の温度に依存する。必要に応じ、装置の起動と物質の投与との間に時間遅れがあってもよい。
【0011】
他の背景技術には、米国特許第6189292号、米国特許公開第20130253434号、米国特許公開第2009/093792号、米国特許第7967795号がある。
【0012】
皮膚接触面は、装置を医薬の自己投与が容易となるように企図される。表面が皮膚にあてがわれ、ボタンが押されるかまたはレバーが外されると、針が解放されて、皮膚下に挿入される。針の挿入は、患者一人でなされるのに充分なほど真っ直ぐである。しかし、実際は、針を皮膚下に挿入するのは、多くの患者にとって困難なことであり、その捕捉の解除には、復元力、通常は使用後に針を退避させるように意図されたばねに対して針を解放させるので、幾らかの努力を必要とするのが一般的である。本形態は、心理的に負担がかかるのがしばしばである操作における使い易さを改善する、という問題に関連する。
【発明の概要】
【0013】
本発明の形態は、装置の注射針のための挿入および退避機構に関し、機構は、単一の張力源を介して動作して、挿入および退避双方の動きについて動力を付与する。結果として、ボタンを押すことまたは捕捉を解除することは、いかなる反対方向の張力に対してもなされるものではなく、よって、技術のない使用者であってもより容易に操作することができる。
【0014】
幾つかの形態では、挿入および退避機構は、注射装置が皮膚と整列させられた後、ボタンを押すことで張力により自動的に回転する、ホイール、ラチェットまたは他の回転部品等の、軸方向に張力がかけられる回転部品である。1回押すことで、ホイールまたはラチェットを張力により回転させるかまたはホイールを張力により解放させ、針を繰り出して皮膚を貫通させることができ、2回目の動作で、同じ張力の継続下で同じ回転が続くことにより、針を退避させる。2回目の動作は、自動的であってもよく、使用者の皮膚から装置を取り去るかまたは投薬を完了することと関連付けることが可能である。
【0015】
ホイールまたはラチェットは、時計仕掛けの機構により、典型的には、コイルばね等の張力がかけられた要素に基づき操作されてもよい。ラチェット等の緊張機構が設けられ、使用に備えて当該機構に張力がかけられるようにすることが可能である。
【0016】
一形態では、3回目以降の解放は、機構のいかなる反作用をも生じさせず、医薬が放出された後、針が装置から繰り出されないようにする。
【0017】
つまり、幾つかの形態において、挿入および退避は、線形運動であっても回転運動であってもよい張力源からの中断される連続運動の2つの並進部分である。張力源は、板ばねでもコイルばねでもよく、ホイールを回転させるかプランジャを押圧し、そうでなければ、繰出および退避のために針を操作することが可能である。
【0018】
一形態では、ボタンは、装置のハウジングとは別の要素であるため、ハウジングは、ボタンを誤って押すことから保護し、よって、装置の安全性を増進する。
【0019】
本発明の幾つかの形態に係る一側面によれば、投薬装置の針挿入および退避機構が提供され、この機構は、
動作源と、
動作源の制御部と、
動作源の動作を所定位置で停止させて、この動作を、第1動作部分と、第1動作部分と連続した第2動作部分と、に分ける中断部と、
連続動作の動作源を針に接続する動作変換機構であって、第1動作部分の間に針を繰り出し、第2動作部分の間に針を退避させるように構成された動作変換機構と、を備える。
【0020】
一形態では、動作の連続が、角度方向の連続であり、連続動作の動作源が、張力がかけられた回転子を備える。
【0021】
一形態では、張力がかけられた回転子が、ホイールを備える。
【0022】
一形態では、張力がかけられた回転子が、コイルばねを備え、このコイルばねは、ホイールをその軸を中心として巻き戻すように接続される。
【0023】
一形態では、使用者により操作される制御部が、連続動作の動作源を第1動作部分に解放するように構成される。
【0024】
一形態では、使用者により操作される制御部が、中断部を解放して、第2動作部分を生じさせるようにさらに構成される。
【0025】
一形態では、皮膚の近接を検出し、装置が皮膚から取り去られたことを検出したときに、中断部を解放して、第2動作部分を生じさせるように構成された近接検出器が備わる。
【0026】
一形態では、皮膚が存在する場合を除き、針の繰出を防止するラッチ機構を備え、ラッチ機構は、アームを有するレバーを備え、レバーは、使用者により操作される制御部を操作不能とするため、投薬装置の基部の下方に所定角度で延在し、アームを挿入して使用者により操作される制御部の動きを妨げ、レバーは、使用者の皮膚の存在により所定角度から変位可能であることで、アームを動かし、使用者により操作される制御部を解放する。
【0027】
一形態では、基部の下に粘着層を備え、投薬装置を使用者の皮膚に粘着させ、粘着に抗って投薬装置を皮膚から取り去ることで、基部に引張力が働き、この引張力が中断部を解放させて、第2動作部分を生じさせる。
【0028】
一形態では、装置により投与される医薬の薬物濃度を検出し、医薬を投与することの完了を検出したときに、中断部を解放して、第2動作部分を生じさせるように構成された薬物濃度検出器を備える。
【0029】
一形態では、薬物濃度検出器は、針に投入される医薬を押すプランジャの位置を検出する位置検出器を備える。
【0030】
一形態では、連続が、直線方向である。
【0031】
一形態では、第1および第2動作部分が、単一の張力源の連続した解放によるものである。
【0032】
一形態では、単一の張力源が、コイルばねを備える。
【0033】
一形態では、動作源に外部から張力をかけることを可能とする緊張機構を備える。
【0034】
一形態では、動作源が、コイルばねであり、緊張機構が、巻取機構である。
【0035】
一形態では、針が退避させられた後の針の繰出を抑制するラッチ機構を備える。
【0036】
一形態では、動作源が、使用前に準備するための外部巻取機構に接続される。
【0037】
本発明の他の側面によると、
第1動作部分と第2動作部分とを含む連続的な動作を有し、第1動作部分を実行する際に解放される、張力がかけられた動作源を解放することと、
第1動作部分を針の繰出動作に変換することと、
張力がかけられた動作源を解放して、第1動作部分とは連続した方向の第2動作部分を実行することと、
第2動作部分を針の退避動作に変換することと、
を含む方法が提供される。
【0038】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的または科学的用語は、本発明が属する分野における当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるのと近似するか、等価な方法および材料が、本発明の実施形態の運用および試験に使用されてもよいが、例示の方法および/または材料が以下に説明される。矛盾がある場合は、定義を含め、明細書の記載による。さらに、材料、方法および例示は、説明のためだけのものであり、必然的な限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の幾つかの実施形態が、添付の図面を参照して例示としてのみここに説明される。ここで、図面を詳細に参照するが、示される事項は、例示としてのものであり、本発明の実施形態の実例による説明のためであることが強調される。この意味において、図面とともになされる説明は、当業者に対し、本発明の実施形態がどのようにして実施可能であるかを明らかにする。
【0040】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る注射装置の一般的な操作を示す、簡略化したフローチャートである。
【
図2A】
図2Aは、本発明の一実施形態に係る注射装置示す、簡略化した図である。
【
図2B】
図2Bは、下方からみた
図2Aの注射装置を、針が取り外された状態で示す、簡略化した図である。
【
図3】
図3は、針の繰出および退避に変換される動作を提供する、本発明の一実施形態に係るコイルばねを示す、簡略化した図である。
【
図4A】
図4Aは、カムを操作する、本発明の一実施形態に係る線形プランジャを示す、簡略化した図である。
【
図4B】
図4Bは、カムを操作する、本発明の一実施形態に係る線形プランジャを示す、簡略化した図である。
【
図4C】
図4Cは、カムを操作する、本発明の一実施形態に係る線形プランジャを示す、簡略化した図である。
【
図5】
図5は、カムを操作する線形プランジャの代替実施形態を示す、簡略化した図である。
【
図6】
図6は、カムを操作する線形プランジャの第2代替実施形態を示す、簡略化した図である。
【
図7】
図7は、カムを側方から操作する、本発明の一実施形態に係る回転歯を示す、簡略化した図である。
【
図8】
図8は、張力をかけられたホイールにより操作される、
図2の実施形態に適するカムを示す、簡略化した図である。
【
図9】
図9は、安全ラッチ、ボタンおよびカバーがロックされる、本発明の一実施形態に係る装置の使用前の状態を示す、簡略化した図である。
【
図10】
図10は、安全ラッチが取り外され、ボタンが解放され、カバーがロックされた状態の
図9の装置を示す、簡略化した図である。
【
図11】
図11は、ボタンが押されて、荷重がかけられたホイール機構が解放された状態の
図9の装置を示す、簡略化した図である。
【
図12】
図12は、注射のために針が挿入された後の
図9の装置を示す、簡略化した図である。
【
図13】
図13は、退避のために安全ラッチが開かれ、ホイールが解放された状態の
図9の装置を示す、簡略化した図である。
【
図15】
図15は、注射プロセスの終了を検出するのに近接センサを使用する、本発明の一実施形態を示す、簡略化した図である。
【
図16】
図16は、投薬が完了したときを判定するのに薬物濃度検出器を使用する、本発明の一実施形態を示す、簡略化した図である。
【
図17】
図17は、シリンジプランジャの位置を検出して、装置からの投薬が完了したときを判定するのに位置検出器を使用する、本発明の一実施形態を示す、簡略化した図である。
【
図18】
図18は、本発明の一実施形態に係る針の挿入および退避のフローチャートを示す、簡略化した図である。
【
図19】
図19は、使用前に初めは緩んだ状態のばねを巻く、本発明の一実施形態に係る外部巻取機構を示す、簡略化した図である。
【
図20】
図20は、皮膚を検出するのに粘着層による皮膚への粘着が使用され、注射装置が皮膚から取り去られたときに、針退避機構を操作する、本発明の一実施形態を示す。
【
図21】
図21は、コイルばねによる動作源を巻く、本発明の一実施形態に係る外部巻取機構を示す。
【
図22】
図22は、外部巻取機構がどのようにしてコイルばねに接続されるかを示す破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、その幾つかの形態において、注射機構に関し、より詳細には、他を排するものではなく、シリンジまたは他の投薬装置の注射針を繰り出す機構に関する。
【0042】
投薬装置の針挿入および退避機構は、動作源と、動作源の、使用者により操作される制御部と、動作源の動作を所定位置で停止させて、この動作を、互いに対して連続的な2つの部分に分ける中断部と、を備える。動作変換機構が、連続動作の動作源を針に接続し、第1動作部分の間に針を繰り出し、第2動作部分の間に針を退避させる。針は、このようにして、互いに対向して動作する2つの張力源というよりも、単一の張力の発生源の連続的な動作により、繰り出されおよび退避させられる。
【0043】
一形態では、使用者による起動機構が、装置のハウジングからは分離した要素であるボタンにより構成される。一形態では、ハウジングが、ボタンが偶発的に押されるのを防ぎ、それにより、2段式の起動システムを提供し、装置に安全性を付与する。ボタンを掛け止めるためにラッチが設けられてもよく、このラッチは、投薬装置を皮膚の近くに置くことにより解放される。
【0044】
使用時において、投薬装置は、特に注射される物質が当該装置を安定して保持するのが容易な時間よりも長い所定時間をかけて調合されることを要する、ゆっくりとした注射動作の際に、皮膚に粘着させることが可能である。そのような場合は、注射が完了した後、粘着させた装置を取り去ることで、装置の基部を介する力が働き、これが検知されて、第2動作部分を操作し、針を引き抜くことができる。
【0045】
ここに、投薬装置は、一般的に考慮される。医薬シリンジおよび/医薬リザーバは、シリンジから、当該シリンジのバレルの軸に対して斜めに突出する針を備えることが可能である。必要に応じ、シリンジは、針キャップのマウントを有するハブおよび/または針取付具および/またはルアー取付具を備えてもよく、例えば、ハブが、シリンジのバレルの軸に対して傾斜する。必要に応じ、シリンジまたはリザーバは、針を介して注射するための医薬で予め満たされるように構成される。必要に応じ、ハブは、シリンジのバレルの軸に対して傾斜した、一体型の針および/または針マウントおよび/または滅菌済みの針キャップのマウントを備える。
【0046】
幾つかの形態では、使用者は、使用前に、滅菌済みの針キャップを、予め充填された滅菌済みのシリンジから取り外す。必要に応じ、針キャップを取り外すことが、装置を起動させおよび/または粘着性のカバーを剥がしおよび/または針シールドラッチの開放位置から遮蔽位置への展開を生じさせる。幾つかの形態では、装置の基部を被験者の皮膚に置くことが、針シールドラッチを準備位置に動かす。必要に応じ、装置は、予め充填されたシリンジの軸が装置の基部および/または被験者の皮膚に対して実質的に平行な状態で、医薬を被験者に排出する。必要に応じ、カートリッジに取り付けられた針が、被験者の皮膚に挿入されおよび/またはカートリッジから被験者への直接的な流体経路として機能することが可能である。必要に応じ、装置を被験者の皮膚から取り去ることが、針シールドラッチを再配置しおよび/または装置の動作を停止させる。それらの実施形態は、針の繰出および退避に特に関連する。
【0047】
幾つかの形態では、投薬装置は、予め充填されたシリンジおよび/またはリザーバを備えてもよく、シリンジおよび/またはリザーバは、例えば、本明細書の様々な実施形態で述べられるように、リザーバのバレルの軸に対して傾斜した針および/またはハブを有する。例えば、投薬装置は、本明細書の様々な実施形態で述べられるように、針シールドおよび/または安全ラッチおよび/または針退避機構を備えてもよい。例えば、投薬装置は、例えば、本明細書の様々な実施形態で述べられるように、針キャップおよび/またはカバーリムーバを備えてもよい。例えば、投薬装置は、二重運動ピボットを備えて、例えば、本明細書の様々な実施形態で述べられるように、被験者に針を挿入することも可能である。
【0048】
針は、使用者にとって簡単な方法で挿入されおよび抜去される必要がある。挿入は、直線的なものであり、抜去もまた、同様であり、挿入および抜去の双方を達成する一つの方法は、互いに抗して作用する2つのばねまたは同様の張力源を設けること、つまり、針の引抜を容易にすることが意図されたばねの張力に抗してボタンを押すことで、針を挿入することである。
【0049】
いずれの場合も、押す操作が、引抜が意図されたばねの張力に抗して針を繰り出すことを要するので、患者は、針を挿入する際に強く押すことが求められる。これは、心理的に困難な場合があり、装置が柔らかい組織に対して使用されるならば、問題ともなり得る。使用者が不用意に装置を押すことで、組織を不用意に押し退け、意図されたのとは異なるように針を挿入させる場合があるからである。
【0050】
よって、本実施形態では、単一の張力源を使用して、針の挿入および退避の双方が操作される。一実施形態では、回転部材を使用して、単一の張力源がその回転軸を中心として担持され、360°の回転の2つの部分の行程で針を挿入しおよび退避させる。回転部材は、針が退避させられる初期位置と、針を装置から繰り出させる第1回転位置と、針が引き抜かれる第2回転位置と、を有する。軸方向の張力が、ボタンを押すなどの解放動作が使用者によりなされるたびに、回転部材を一つの位置から次へと引っ張る。
【0051】
本実施形態では、力は、局所的である。基部は、挿入の間にカバーを引き、退避の間に押すので、使用者が関与する唯一の力は、ボタンを押す力であり、これは、この設計においては正確に較正することが可能である。
【0052】
カバーを上げおよび下げる力は、コイルばねにも依存する場合があり、これも、やはり、この設計を用いて正確に較正することができる。このように、針を挿入する力および速度は、制御可能である。
【0053】
本実施形態では、状態(A:用意、B:注射、C:ロック状態での終了)は、明確に定められてもよく、よって、いかなる中間位置または状態の必要性も、排除される。
【0054】
本発明の少なくとも一つの実施形態について詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、構造の詳細および要素の配置および/または以下の説明で述べられおよび/または図面に示される方法および/または具体例に必ずしも限定されるものではないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態であってもよく、様々な方法で実施しまたは実行することが可能である。
【0055】
図面を参照すると、
図1は、医薬を投与しおよび/または針を遮蔽する、本発明の一実施形態に係る方法を示すフローチャートである。必要に応じ、使い捨ての投薬装置、例えば、オートインジェクタまたはパッチインジェクタ、ボーラスインジェクタおよび/または身体装着インジェクタ等の注射装置に、医薬が予め充填される。例えば、装置は、カートリッジを備える。必要に応じ、カートリッジは、シリンジのバレルの軸に対して斜めに取り付けられたハブおよび/または滅菌済みの針を有する、滅菌済みのシリンジを備える。必要に応じ、シリンジは、医薬で充填される。必要に応じ、装置は、針シールドラッチおよび/または状態インジケータを備えてもよい。必要に応じ、装置は、例えば、被験者に取り付けるための粘着剤等の取付機構を備えてもよい。
【0056】
幾つかの形態では、カートリッジは、組立前および/または小売業者および/または医療提供者および/または使用者への出荷前に投薬装置に装填される(10)。これに代えるかまたはこれに加え、カートリッジは、使用者、例えば、医療提供者(例えば、看護師および/または薬剤師および/または医師および/または家庭保健師)および/または注射の被験者(例えば、医薬を受ける患者)および/または介護士により、投薬装置に装填されてもよい(10)。
【0057】
幾つかの実施形態では、組立済みの注射装置(カートリッジが装填された状態にある(10))が使用者に供給されてもよい(12)。必要に応じ、使用者に供給される際に(12)、カートリッジおよび/またはハブおよび/または針は、滅菌済みであってもよく、滅菌済みの針キャップで覆われていてもよい。必要に応じ、オートインジェクタは、針シールドラッチを有してもよい。例えば、針キャップが所定位置にある間に、針シールドラッチは、開放位置にあってもよく、針キャップへの接触を許容する。例えば、針シールドラッチが開放位置にあるときに、キャップおよび/またはキャップリムーバがオートインジェクタから突き出るための空間が設けられてもよい。例えば、開放位置において、針シールドラッチが退避する。幾つかの実施形態では、針シールドラッチは、ある位置および/または状態から他へ回動および/またはスライドする。これに代えるかまたはこれに加え、カートリッジおよび/または注射装置は、使用者に対し、別々に提供されてもよく(12)、使用者により組み立てられてもよい。
【0058】
幾つかの実施形態では、注射装置の使用前に、針キャップが取り外される(14)。例えば、針キャップは、注射装置のハウジングの開口部を通じてカートリッジから引き離されてもよい。必要に応じ、針キャップを取り去ることが(14)、投薬装置を起動させてもよく(16)、針シールドを遮蔽位置へ移動させてもよい。例えば、キャップおよび/または取外工具が、スイッチ、バッテリ絶縁具および/または粘着保護具に接続されてもよい。キャップを取り外すことが、必要に応じてスイッチを起動させおよび/またはバッテリ絶縁具を除去させおよび/または粘着保護具を除去させる。一度起動させられると(16)、投薬装置は、被験者に配置される準備が整ったことを、必要に応じて表示する(18)。必要に応じ、針シールドは、遮蔽位置にあれば、針キャップの取替を妨げてもよい。必要に応じ、針シールドは、遮蔽位置にあるときに、針の露出を妨げてもよい。例えば、遮蔽位置において、針シールドは、針の先端が注射装置から繰り出されるのを妨げる。これに代えるかまたはこれに加え、シールドが遮蔽位置にあるときに、針繰出機構がロックされおよび/または作動しないようにされることで、注射装置からの針の繰出が妨げられてもよく、遮蔽位置において、繰り出された針の先端を針シールドが遮蔽することも可能である。
【0059】
幾つかの実施形態では、注射装置は、被験者の皮膚上に置かれる(20)。例えば、投薬装置が、起動後(16)、被験者の皮膚上に置かれてもよい(20)。必要に応じ、皮膚に配置することが、針シールドを準備位置に移動させる(22)。例えば、シールドは、被験者の皮膚により、準備位置へ押し込まれてもよい。準備位置へのシールドの移動(22)が、注射装置からの針の繰出および/または被験者の皮膚を介する針の挿入を生じさせる。例えば、シールドは、内向きに潰れて、針を露出させおよび/または針が被験者に入り込むのを可能にし、シールドの移動(22)が、挿入機構を起動させてもよい。これに代えるかまたはこれに加え、準備位置へのシールドの移動(22)は、針が注射装置を出るための経路を開放させてもよい。例えば、準備位置へのシールドの移動(22)は、シールドの孔を針と整列させ、針が、例えば、針キャップの孔を介して、装置から繰り出されるのを可能とすることができる。これに代えるかまたはこれに加え、追加の工程、例えば、ボタンを押すことおよび/または注射装置の一部を被験者の皮膚に向けて押すことが、針の挿入を生じさせてもよい。
【0060】
針の挿入後、医薬が、被験者に投与される(24)。例えば、針は、中空であり、医薬は、針を介して被験者に投与される(24)。必要に応じ、注射が完了すると、装置は、注射が完了したことおよび/または装置が取り去られてもよいことを表示する(26)。必要に応じ、不具合(例えば、流体経路の詰まり)が生じた場合は、インジケータは、不具合が生じたことおよび/または注射装置を取り去るべきであることを表示することが可能である。幾つかの実施形態では、注射の完了および/または一定の不具合により、針を退避させる。これに代えるかまたはこれに加え、針は、投薬後(24)も繰り出されたままで残されてもよい。
【0061】
幾つかの実施形態では、投薬後(24)および/またはエラーおよび/またはそのようにすることが表示された場合に、使用者は、注射装置を被験者の皮膚から取り去る(28)。幾つかの実施形態では、注射装置が取り去られたときに(28)、針シールドが、移動させられてもよい(30)。針保護具の移動(30)は、針を保護しおよび/または装置の運転を停止させることが可能である。これに代えるかまたはこれに加え、針の退避が、針を保護することもできる。これに代えるかまたはこれに加え、装置は、投薬の完了後(24)および/または一定の不具合の際、直ちに運転を停止させおよび/または作動しないようにされてもよい。これに代えるかまたはこれに加え、装置は、投薬の完了後(24)および/または一定の不具合の際、一定の時間後に、運転を停止させおよび/または作動しないようにされてもよい。
【0062】
図2を参照すると、投薬装置40を簡略化して示している。投薬装置は、長手方向上面42および長手方向下面44を備え、長手方向下面44が、皮膚に面して配置されるように意図されている。リザーバ46は、注射されるべき医薬を収容し、プランジャ48は、医薬を注射用の針に移動させる。プランジャは、小型電気モータ50およびバッテリ52を備えるプランジャ操作機構と、動作変換装置54と、により操作される。針挿入機構56は、投薬装置40の前端58に配置されて、針60を患者の皮膚に挿入し、その後、針を引き抜く。
【0063】
針60を操作するのに、動作源が設けられる。動作源は、一実施形態では、張力がかけられたホイール62である。他の実施形態では、プランジャは、ばねで押されてもよい。張力がかけられたホイールは、ホイールの動作を中断させる2つのラグ64および66を備える。
【0064】
使用者により操作される動作源の制御部は、ボタン68を備える。ボタンが一度押されると、第1ラグ64が解放され、ホイールが半回転するのを許容する。この半回転の動作が、針60に対する挿入動作に変換され、針を挿入させる。一実施形態では、ボタン68は、装置のハウジングから分離した要素であり、よって、ハウジングは、ボタンを不用意に押されることから保護する。ボタンに達するため、ハウジングのカバー部を下げることができ、これが、二段式の起動システムを提供し、装置に安全性を付与する。
【0065】
その後、第2ラグ66が、中断部として作用し、ホイールの動作を、針の挿入動作が完了したその時の位置で停止させる。このように、第2ラグは、ホイールの動作を、互いに連続した2つの動作部分、つまり、第1動作部と第2動作部とに分割する。
【0066】
より均衡のとれた動作を提供するため、本図にみることはできないが、第2ホイールが、ボタンの反対側にけられてもよい。
【0067】
ホイールは、2回目に開放されると、完全な回転の第2部分で、第2ラグから第1ラグへ回転し、その動きが、針の退避に変換される。
【0068】
代わりとなる実施形態では、針を退避させることはできないが、むしろ、装置が皮膚から取り去られるときに、基部が延伸して、針を遮蔽する。
【0069】
これに代えるかまたはこれに加え、針の退避の直線的な動きは、例えば、針を反対方向に動かす、複数のアクチュエータ、つまり、ばねによるものであってもよい。幾つかの実施形態では、注射後に起動ボタンが元の位置に復帰しおよび/またはロックされる。
【0070】
これに代えるかまたはこれに加え、針の退避は、スイッチにより起動されてもよい。例えば、針退避スイッチが設けられてもよくおよび/または針の挿入後に起動ボタンが針退避スイッチとして再度使用される。
【0071】
動作変換機構は、以下により詳細に説明され、ホイールまたは他の何らかの連続動作の動作源を、針に接続させる(60)。動作変換機構は、第1動作部分の間に針を刺入させ、第2動作部分の間に針を退避させることができる。
【0072】
動作源がホイールである場合は、動作の連続は、角度方向である。
【0073】
以下に説明されるように、ラグを有するホイールに代えるかまたはこれに加え、適した形状のカムが使用されてもよい。
【0074】
図2Bは、ホイールが装置40のカバーにピン70を介してどのように接続されるかを、簡略化して示している。ラグ62および64は、付加的なものであり、幾つかの実施形態では、省略することが可能である。しかし、カバーが使用前に下がるのを防ぐことを担う要素は、必要である。そのような要素は、ボタンと構造(基部/カバー)またはホイールのラグ62、64またはピン70との間の接触部であってもよい。第2要素または接触部は、ホイールが下方のまたは繰出後の位置に保持されているときに、動きを抑制することを担う。この特徴も、やはり、安全ラッチラグとホイールピンとの間の接触部により提供することが可能である。第3要素/接触部は、移動の終わりに動きを阻害することを担い、よって、一度退避させられた針が、再び繰り出されることができないようにする。そのような特徴は、ホイールラグまたはホイールピンと構造との間の接触部により提供されてもよい。
【0075】
図3は、動作源が動作変換ユニット82に直接接続されたコイルばね80である実施形態を、簡略化して示している。動作変換ユニットは、ばね80の回転方向の巻戻を、針84の下降および上昇部分運動に変換する、一連のレバーを備える。つまり、ばねの巻きが解けるのに従い、その動きが2つの部分に分離され、一方は、第1方向に進み、他方は、反対の第2方向に進む。
【0076】
ここで、
図4Aを参照する。
図4Aでは、動作源は、コイルばね92により張力がかけられたプランジャ90である。プランジャ90は、コイルばね92により直線的に押され、ホイール96の周りを回転するビーム94に枢着されている。ビーム94が、カム98に枢着され、カム98が、枢支点100で枢着されているので、初めの移動は、下向きであり、それに続く移動は、上向きである。プランジャがコイルばねにより押されているので、動きが2つの部分に分けられ、矢印102で示すように、一方は、第1方向に進み、他方は、反対の第2方向に進む。
【0077】
図4Bは、動作変換機構の代替実施形態を示している。動作源は、ここでもコイルばね92により張力がかけられたプランジャ90である。プランジャは、コイルばね92により直線的に押され、カム98を回転させるビーム94に対し、軸93で枢着されている。取付上の制約により、ホイールは、矢印102で示すように、初めは一方向に、その後、逆方向に、回転させられる。
【0078】
図4Cは、動作変換機構の他の代替実施形態を示している。動作源は、やはり、コイルばね92により張力がかけられたプランジャ90である。プランジャは、本実施形態では、コイルばね92により回転させられ、形作られたスリット104を有する。ピン106がスリットのなかを移動し、紙面から出る方向に延在することで、ホイールを、画像に対して90°の平面において、初めに一方向に、その後、他方向に回転させる。
【0079】
図5は、コイルばね110がプランジャ112を操作し、傾斜ビーム116に亘って枢動カム114をスライドさせる、
図4の変形例を示している。カム114は、枢支点118で枢着される。プランジャが移動すると、その動きが2つの部分に分けられ、矢印120で示すように、一方は、第1方向へ進み、他方は、反対の第2方向へ進む。
【0080】
図6は、
図5の実施形態の変形例を簡略化して示している。
図6において、コイルばね130自体が枢支点132で枢着され、プランジャ134を操作して、傾斜ビーム138に抗してカム136を押す。カム136は、枢支点140で枢着される。プランジャが押されると、その動きが2つに分けられ、矢印142で示すように、一方は、第1方向へ進み、他方は、反対の第2方向へ進む。
【0081】
図7は、本実施形態の更なる変形例を示している。
図7において、カム150が枢支点152で枢着され、予め張力がかけられた歯車154が、対応する歯158を有する凹状の嵌入部156において、カムの内部にある。歯車154が回転すると、その動きが2つに分けられ、矢印160で示すように、一方は、第1方向へ進み、他方は、反対の第2方向へ進む。
【0082】
図8は、
図2のホイールの実施形態のための動作変換機構を簡略化して示している。カム170は、枢支点172で枢着される。ホイール174は、回転子により張力がかけられ、カム170の内部でスロット178のなかを移動するピボット176を有する。カムは、矢印180で示すように、上下に移動する。ホイールは、張力がかけられた、コイルばねであるのが典型的な回転子により操作され、コイルばねは、巻き戻されて、ホイールをその軸を中心として回転させる。
【0083】
図9は、本実施形態に係る装置を簡略化して示している。この装置は、カバー190と、使用者が操作可能なボタンと、張力がかけられたホイールと、安全ラッチと、を備える。装置は、使用前に医薬で充填され、ボタンおよびカバーがロックされることで、ボタンを押すことができず、カバーを押し下げることもできない。具体的には、安全ラッチ196が、アーム197がボタン延長部198の下方に位置することにより、ボタンが押されるのを妨げることが可能である。
【0084】
図10は、使用直前の状態の
図9の装置を簡略化して示している。
図9におけると同様の部分には、同一の符号を付し、本図の理解に必要な場合を除き、再度説明しない。装置は、注射部位の皮膚にあてがわれ、これが、装置の基部に対して安全ラッチ196を押し上げることで、ボタンが解放されるのを可能にする。ここで、アーム197が前方に回転し、もはや、ボタン延長部198の下方に位置していないので、ボタンを押すことが可能である。依然としてカバー190がロックされているものの、ボタンを押して、針を解放させることが可能である。
【0085】
よって、安全ラッチは、注射装置が平らな面にぴたりと接して同一平面に配置されない限り、ボタンを押すことができないようにする。安全ラッチ機構は、本実施形態に限定されるものではなく、患者の皮膚に対して同一平面に配置されるあらゆる種類の注射装置に適する。より一般的には、安全ラッチは、皮膚の存在下にある場合を除いて針の繰出を防ぐためのラッチ機構であり、アーム197を有するレバー、つまり、安全ラッチ196を備え、このレバーは、使用者により操作される制御部、つまり、ボタン192の動作を妨げるアームを挿入するように、投薬装置の基部の下方に所定角度で延伸し、ボタンを操作不能の状態にする。レバーは、皮膚の存在により基部に対して同一平面に押されると、
図9に示す所定角度から変位させられ、アームを前方に動かして、ボタンを解放させる。
【0086】
図11は、ボタン192が押され、針を挿入させた状態にある
図9の装置を簡略化して示している。
図9におけると同様の部分には、同一の符号を付し、本図の理解に必要な場合を除き、再度説明しない。ボタン192が押され、ホイール194が解放されて張力のもとで回転し、針を挿入する。
【0087】
図12は、針が注射のために挿入された後の
図9の装置を簡略化して示している。
図9におけると同様の部分には、同一の符号を付し、本図の理解に必要な場合を除き、再度説明しない。ホイール194が半回転だけ回転し、注射が行われるように、針198が装置から繰り出される。
【0088】
図13は、安全ラッチを開けて、退避に備えてホイールを解放させた状態にある
図9の装置を簡略化して示している。
図9におけると同様の部分には、同一の符号を付し、本図の理解に必要な場合を除き、再度説明しない。
図13では、使用後、装置が皮膚から引き離されるため、安全ラッチ196が下方に延伸し、張力がかけられたホイール194をその第2の半回転に備えて解放させる。この半回転により、針が引き抜かれる。半回転の終わりに、ホイールは、それ以上の回転ができないように停止させられる。
【0089】
図14は、使用後にロックされた
図9の装置を簡略化して示している。
図9におけると同様の部分には、同一の符号を付し、本図の理解に必要な場合を除き、再度説明しない。
図14では、カバーが、持ち上げられ、使用後の針が露出されないように、装置を再度ロックする。
【0090】
上記実施形態では、安全ラッチが、機械的な近接センサとして機能した。
図15を参照すると、皮膚の近接を検出し、使用者の皮膚から装置が取り去られたことを検出したときに、ホイールまたはホイール上の中断部を解放させて(202)第2動作部分を生じさせるのに、近接検出器200が使用されてもよい。このように、針の退避は、使用者からの装置の取去をもって自動的に起こる。先の説明では、近接センサは、機械的なものであったが、光学的または赤外線による近接センサを使用し、ホイールの解放を電子的に起動させてもよい。
【0091】
図16を参照すると、薬物濃度検出器204が装置により投与されている医薬の薬物濃度を検出し、医薬の投与が完了したことを検出したときに、ホイールを解放させて第2動作部分を生じさせる、別の代替実施形態を示している。つまり、リザーバまたはシリンジが空であることを判定すると、針を自動的に退避させるのである。
【0092】
図17を参照すると、一実施形態では、薬物濃度検出器は、単に位置検出器206であり、投与される医薬を針に押し込むシリンジプランジャ48(
図1)の位置を検出する。プランジャがその行程の終わりにあると判定されたときに、注射プロセスが完了したと推測され、ホイールが解放されてその動作の第2部分を実行し、針を退避させる。
【0093】
図18は、本実施形態に係る針挿入および退避機構の操作を示す簡略化したフローチャートである。針挿入および退避機構を操作する方法は、張力がかけられた動作源を解放させ(250)、第1動作部分を実行する(252)ことを含む。第1動作部分は、針の繰出動作に変換される(254)。機構がラッチされ、注射の間に針が繰出位置に留まることを可能とし(256)、その後、張力がかけられた動作源を2回目に解放させ、第1動作部分に続く第2動作部分を実行する(258)。第2動作部分は、針の退避に変換される。
【0094】
既に述べたように、ホイールと、ホイールを回転させる際に巻き戻されるコイルばねと、が使用される場合は、第1および第2動作部分は、角度方向に連続する。プランジャが線形的な動作で押される場合は、第1および第2動作部分は、直線方向に連続する。第1および第2動作部分は、単一の張力源の、連続した解放によるものであってもよい。
【0095】
図19は、動作変換機構のためにばねを巻くのにラチェット機構が設けられる、本発明の別の実施形態を示している。
図19は、初めは緩んだ状態で提供されるばね272を巻きまたはこれに張力をかけるラチェット機構270を示す。先と同様に、ばね272を巻き戻すことが、動作変換機構274を操作し、これが、針276を動かして、矢印278で示すように繰り出しおよび続いて退避させる。ばねが緩んだ状態で装着され、注射装置の組立後、ばねを巻くのに外部巻付システムが用いられる、という考えである。つまり、本実施形態では、針の繰出/退避に動力を与えるばね272の外部巻取機構が含まれる。そのような機構を用いる理由の一つは、既に巻き上げられたばねを用いて注射システムを組み立ておよび/または保管することが、敏感および/または高価な要素に対する摩耗および/または故障および/または損傷の様々な作用を伴うことである。
【0096】
このように、本実施形態では、ばねが緩んでいる間に注射装置を組み立て、その後、使用に近付いたとき、典型的には、梱包の直前または患者に提供する直前に、ばねを巻き上げることを可能とする。
【0097】
使用に際し、ばねは、予め巻かれてもよいし、全ての準備が整った後でラチェット270により巻き上げられてもよい。ラチェットは、より一般的な巻取機構の具体例であり、ばねに張力がかけられるが、解放されないことを可能とする。
【0098】
図20は、粘着層282を有する注射装置280がその粘着層を用いて針の退避を操作する、本発明の別の実施形態を簡略化して示している。粘着層282は、先の実施形態のラッチ296に代わる皮膚センサとして機能する。粘着層は、いずれにしても、注射プロセスの間、注射装置を所定位置に維持するのに使用され、それは、長い時間に及ぶ場合もあり得る。注射が終わると、注射装置は、皮膚から取り去られるが、粘着剤は、注射装置の基部を、後退する皮膚および矢印284の方向に引っ張る効果を有する。皮膚を引っ張ることが、注射装置の基部を押し下げ、退避機構を操作する。よって、皮膚の検出は、注射プロセスに亘って皮膚に粘着される注射装置の基部により提供される。基部が皮膚から取り去られると、その動きがハウジングを引っ張り、針の退避を生じさせる。より具体的には、基部の下の粘着層282が、注射の間、投薬装置を使用者の皮膚に粘着させる。粘着させた投薬装置を皮膚から粘着剤に抗して取り去ることが、基部に対し、引張力を生じさせる。この引張力が適切な機構を操作して、中断部を解放させることにより、針を退避させる第2動作部分を生じさせる。
【0099】
図21を参照すると、ばねが巻き戻された状態で装置が提供され、使用に備えて後にばねが巻かれるのを可能とする実施形態を簡略化して示している。エネルギが蓄えられた状態の注射装置の組立および搬送は、偶発的な放出をもたらす可能性がある。例えば、そのような放出により、注射装置を使用不能としおよび/または貴重な医薬を棄損する場合が
ある。エネルギが蓄えられた装置を扱うことは、備えが解除された装置を扱うよりも費用が嵩む場合がある。上に述べた実施形態による注射では、駆動システムは、備えが完全に整った装置、例えば、圧縮された状態のばねを備える装置に挿入されていてもよい。
【0100】
図21の実施形態では、注射装置の装填に続いてばねを巻くための巻取機構が採用される。そのようなばねは、組立後、係合可能な鍵穴300を介して装置の外部から便利に巻くことが可能である。鍵穴は、巻かれるべきばねに取り付けられる回転リング301と、このリングを矢印304の方向に回すことで、ばねを巻くように、対応する形状のキーと係合する咬合部302と、を有する。
【0101】
図22は、リング301がコイルばね305に対してどのように接続されるかを示す破断図である。ラチェット306が、ばねが正しい方向に確実に巻かれるようにする。
【0102】
ばねが既に巻かれた状態で装置を組み立てるのではなく、ばねが緩んだ状態で装着され、注射装置の組立後にばねを巻くのに外部巻取システムが用いられる。つまり、本実施形態では、針の挿入/退避に動力を与えるばねに対し、外部巻取機構が設けられる。そのような機構を用いる一つの理由は、既に巻き上げられたばねで注射システムを組み立ておよび/または保管することが、敏感および/または高価な要素に故障および/または損傷をもたらすことのある、様々な傷みの作用を生じることである。
【0103】
よって、本実施形態では、ばねが弛んでいる間での注射装置の組立が許容され、その後、使用時に近付いたとき、典型的には、梱包の直前または患者への提供の直前に、注射装置を巻き上げることが可能となる。装置が皮膚上に置かれると、皮膚センサが2つのことに使用される。一つの目的は、ボタンのロックを解除することである。皮膚センサが、ボタンのロックを解除し、これまでに述べたように針の繰出を許容する。本明細書で述べられる実施形態の一つでは、皮膚センサは、皮膚により押し下げられ、このセンサが角度Xよりも小さい角度Zに達したときにボタンがロックを解除されるように、閾値角度Xがあってもよい。閾値を過ぎると、皮膚センサが、コイルばねのホイールの軌道のロックを解除させることで、ホイールは、半回転の後に停止することが可能である。その中間位置で、針が繰り出され、機構が繰出位置でロックして、注射を実行する。その後、装置が引き離されると、角度が増大して閾値を過ぎり、退避操作のため、機構が2度目に解放される。
【0104】
幾つかの実施形態では、休止角度とは異なる閾値がない場合に、皮膚が曲線状であるかまたは柔らかい人は、センサが角度Z(X>Z>Y)にある状態で、装置を皮膚上に置くことができるため、X<Yであることが設計上求められることがある。その後、ボタンを押すと、ばねが完全な360°の回転を行って、注射する前に針を退避させる。
【0105】
従来装置によると、駆動機構は、針を退避させるときに、その初期状態に復帰する。これに対し、本実施形態では、針を退避させる間、駆動が同一方向にさらに継続し、初期位置からの回転の反対側の終端で休止することになる。
【0106】
本願から満了する特許の存続期間の間に、多くの関連する投薬装置および注射機構が開発されることが予想され、よって、対応する用語の範囲は、そのような新たな技術を先験的に包含することが意図されたものである。
【0107】
「comprises」、「comprising」、「includes」「including」、「having」との用語およびそれらの活用語は、「限られることではなく、含む」ことを意味する。
【0108】
「consisting of」との用語は、「含みかつそれに限られる」ことを意味する。
【0109】
「consisting essentially of」は、化合物、方法または構造が、追加の原料、ステップおよび/または部品を、その追加の原料、ステップおよび/または部品がクレームに記載の化合物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変更しない場合にのみ、有する場合があることを意味する。
【0110】
本明細書で用いられるように、単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に要求するのでなければ、複数形の場合をも含む。
【0111】
明確さのために異なる実施形態の文脈で記載された本発明の特定の特徴は、単一の実施形態に集約して提供することも可能である。反対に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で記載された本発明の多様な特徴は、分けて提供したり、任意の適切なサブコンビネーションとして提供したり、本発明のいかなる他の記載された実施形態において適切に提供することが可能である。多様な実施形態の文脈で記載された特定の特徴は、実施形態がそれらの要素がなければ動作不能でない限り、それらの実施形態に必須の特徴として考慮されるべきものではない。
【0112】
本発明について、その特定の実施形態とともに説明したが、多くの代替例、変更例および変形例が当業者に明らかであることは、明白である。よって、添付の請求の範囲の精神および広い範囲に収まる、そのような代替例、変更例および変形例の全てが取り込まれることを意図する。
【0113】
本明細書で言及した全ての公開、特許および特許出願は、各個々の公開、特許または特許出願が本明細書に参照により取り込まれることが明確かつ個別に表示されていたとするのと同じ範囲で、それらの全体が参照により本明細書取り込まれる。さらに、本願におけるいかなる参照の引用および表示も、そのような参照が本発明の先行技術として入手可能であることを自認するものと解釈されるべきではない。節の見出しが用いられる限り、それらが必要な限定として解釈されるべきではない。