(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態の説明において使用される「接続」、又は、信号が「与えられる」、「入力される」等の文言は、直接的な接続や信号の伝播だけではなく、素子(容量素子、トランジスタ、論理ゲート、回路等など)を介した間接的な接続や信号の伝播をも含む。
【0021】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係るバイアス発生回路の構成を示す回路図である。本実施形態に係るバイアス発生回路は、クロック信号を生成するクロック発生回路1、2つの入力電圧を比較する比較器2、制御信号に応じてクロック信号を通過又は停止させるクロックゲーティング回路としてのANDゲート3、および、入力クロックに応じて出力電圧を増加又は減少させる電圧発生回路4を有する。
【0022】
具体的には、比較器2は、非反転入力端子に基準電圧Vrefが入力されると共に、反転入力端子に電圧発生回路4から出力される電圧Voutが与えられる。すなわち、比較器2は、基準電圧Vrefと電圧発生回路4の出力電圧Voutとを比較する。ANDゲート3は、一方の入力端子にクロック発生回路1から出力されたクロック信号が与えられ、他方の入力端子に比較器2の出力信号が与えられている。そしてANDゲート3の出力は、電圧発生回路4のクロック入力端子15にクロック信号CLKinとして与えられる。すなわち、ANDゲート3は、比較器2の出力を制御信号として受け、この制御信号に応じて、クロック発生回路1から出力されたクロック信号を電圧発生回路4に与えるか否かを制御する。電圧発生回路4の出力電圧Voutは、バイアス電圧Vbiasとして出力される。
【0023】
電圧発生回路4は、直列に接続された複数の抵抗R1〜Rn+1からなる抵抗列11と、導通/非導通が切替可能である複数のスイッチSW1〜SWnからなるスイッチ群12と、クロック信号CLKinを受け、複数のスイッチSW1〜SWnのうち導通させるスイッチを選択するためのスイッチ選択部としてのシフトレジスタ13とを有する。スイッチ群12の各スイッチSW1〜SWnは、一端が抵抗列11における抵抗端VR1〜VRnにそれぞれ接続され、他端が出力端子14に接続されている。シフトレジスタ13は、複数のフリップフロップFF1〜FFn+1によって構成されている。
【0024】
なお、本明細書では、抵抗列において、Vで始まる符号は、抵抗端すなわち抵抗列を構成する各抵抗の両端子を表し、また、当該抵抗端における電圧値を表すものとする。
【0025】
抵抗列11は、高電位側電源VDDと低電位側電源VSSとの間に接続されており、両端に所定の電圧が印加される。抵抗列11において、両端の抵抗R1,Rn+1の抵抗値と、両端以外の抵抗R2〜Rnの抵抗値の総和とを適切に設定することにより、電圧発生回路4の出力電圧範囲を容易に可変できる。また、両端以外の抵抗の個数を変えることにより、出力電圧の分解能も容易に設定することが可能である。シフトレジスタ13を構成するフリップフロップFF1〜FFn+1は、リセット信号端子16から入力される、初期状態を決めるためのリセット信号Resetが、リセット端子に与えられる(RETでLowに、SETでHighに設定されるとする)。また、各フリップフロップFF1〜FFnの出力信号は、対応するスイッチSW1〜SWnのON,OFFを制御する。スイッチ群12において導通したスイッチが接続されている抵抗列11の抵抗端の電圧が、出力電圧Voutとして、出力端子14から出力される。
【0026】
なお、本実施形態では、電圧発生回路4は、与えられたクロック信号CLKinのクロック数に応じて、出力電圧Voutを徐々に増加させるように構成されている。
【0027】
次に、
図1に示すバイアス発生回路の動作について説明する。まず、リセット信号Resetが入力されると、シフトレジスタ13において、フリップフロップFF1の出力がHigh、その他のフリップフロップFF2〜Fn+1の出力はLowにセットされるので、スイッチ群12においてスイッチSW1が導通し、最も低い電圧VR1が出力電圧Voutとして出力される。ここで、この初期値VR1は、ターゲットとなる基準電圧Vrefよりも十分低い電圧(VR1<Vref)に設定されている。このため、比較器2の出力はHighとなり、ANDゲート3はクロック発生回路1から出力されたクロック信号をスルーさせる。このクロック信号に応じて電圧発生回路4のシフトレジスタ13においてHigh出力が順次シフトしていき、それに応じて出力電圧VoutがVR1⇒VR2⇒VR3…の順で出力され、徐々に上昇して行く。
【0028】
そして、電圧発生回路4の出力電圧Voutが基準電圧Vrefよりも大きくなると、比較器2の出力がLowに反転し、ANDゲート3がクロック信号の出力を停止させるため、電圧発生回路4の出力電圧Voutの上昇が止まる。すなわち、電圧発生回路4の出力電圧Voutは、基準電圧Vrefの近傍で、かつ、基準電圧Vrefよりも高い電圧に設定される。
【0029】
図2に実際のシミュレーション結果を示す。電圧発生回路4の初期値電圧は0V、ターゲットとなる基準電圧Vrefは400mVとしている。
図2から分かるように、クロック信号CLKinのクロック数に応じて電圧発生回路4の出力電圧Vout(=バイアス電圧Vbias)は0Vから徐々に上昇し、基準電圧400mVを越えた時点で比較器出力がLowに反転し、ANDゲート3からのクロック信号出力が停止して、電圧発生回路4の出力電圧の上昇が止まっている。このとき設定された電圧発生回路4の出力電圧Voutは402.6mVであり、基準電圧400mVの近傍かつ高い電圧に設定されている(シミュレーションにおける1LSBは、約5mVである)。
【0030】
以上述べたように本実施形態によると、バイアス電圧を決定するにあたって所定のフローを実行するためのデジタル制御回路が不要であり、非常に簡易な構成にクロック信号を与えるだけで所望のバイアス電圧が自動的に生成される。また、電源−グランド間に接続された抵抗列11の抵抗値は常に一定であり、定電流回路として動作するため、電源電圧変動やそれに起因する電圧誤差は発生しない。
【0031】
さらに、電圧発生回路4におけるスイッチSW1〜SWnは、抵抗列11の抵抗端の電圧を出力端子14に取り出すために用いられるため、定常電流が流れない。このため、スイッチトランジスタによるフリッカーノイズの影響を抑えることが可能となる(MOSトランジスタにおけるフリッカーノイズは、電流がシリコンと酸化膜との界面を流れる際、キャリアが格子欠陥にランダムに捕獲されたり開放されたりすることで発生する電流の時間的なゆらぎに起因するため、電流が流れない場合、フリッカーノイズの影響はゼロとなる)。
【0032】
なお、本実施形態において、電圧発生回路4は、入力クロックに応じて出力電圧が上昇するように構成されているが、この構成に限定されるものではなく、入力クロックに応じて出力電圧が下降するように構成しても同様の効果を得ることができる。この場合例えば、
図1において、抵抗列11の抵抗端の電圧を高い順に出力できるように、スイッチ群12とシフトレジスタ13との接続関係を変更する。これにより、電圧発生回路4は、与えられたクロック信号CLKinのクロック数に応じて、出力電圧Voutを徐々に減少させる。そして比較器2について、基準電圧Vrefを反転入力端子に与え、電圧発生回路4の出力電圧Voutを非反転入力端子に与えるようにすればよい。このような構成において、電圧発生回路4の初期値VRnを基準電圧Vrefより十分高い電圧に設定しておけば(VRn>Vref)、電圧発生回路4の出力電圧Voutは基準電圧Vrefの近傍で、かつ、基準電圧Vrefよりも低い電圧に設定される。
【0033】
なお、本実施形態では、シフトレジスタによってスイッチ選択部を構成するものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、カウンタによってスイッチ選択部を構成するようにしてもよい。
【0034】
(第1変形例)
図3は第1実施形態の第1変形例に係るバイアス発生回路の構成を示す回路図である。
図3の構成では、電圧発生回路の構成が
図1と異なっている。
図1に示した電圧発生回路4では、抵抗列11における抵抗端の電圧を取り出すために、スイッチとほぼ同数のフリップフロップが必要となり、細かい分解能が必要な場合、回路面積の増大に繋がる。そこで、第1変形例では、電圧発生回路4Aは、フリップフロップの個数を削減することが可能な構成としている。
【0035】
図3において、電圧発生回路4Aでは、抵抗列21の抵抗21aが、X軸方向(図面横方向)に順次向きを変えながらジクザグに配置されている。複数のスイッチSW11〜SWn8は、一端が抵抗列21における抵抗端VR11〜VRn8にそれぞれ接続され、他端が出力端子14に接続されている。そして、スイッチ選択部を構成するシフトレジスタは、X軸方向用とY軸方向用(図面縦方向)に分かれて配置されている。第1選択部としてのX軸方向用の第1シフトレジスタ22は、フリップフロップFF1〜FF8によって構成されており、フリップフロップFF8の出力がフリップフロップFF1の入力に接続され、全体でリング構成となっている。一方、第2選択部としてのY軸方向用の第2シフトレジスタ23は、フリップフロップFF10〜FFn0によって構成されている。第1シフトレジスタ22はクロック信号CLKinを受けて動作し、複数の第1スイッチ選択信号を出力する。第2シフトレジスタ23は、第1シフトレジスタ22の出力信号の1つ(
図3ではフリップフロップFF1の出力)を受けて動作し、複数の第2スイッチ選択信号を出力する。
【0036】
さらに、複数の論理回路の一例である論理積回路24が、複数のスイッチSW11〜SWn8に対応してそれぞれ設けられている。論理積回路24は、第1シフトレジスタ22から出力された第1スイッチ選択信号のいずれか1つと、第2シフトレジスタ23から出力された第2スイッチ選択信号のいずれか1つとを入力とし、当該スイッチの導通/非導通を制御する信号を出力する。
【0037】
ここでは、複数の第1スイッチ選択信号は、いずれか1つが所定の第1論理値としてのHighになり、同様に、複数の第2スイッチ選択信号は、いずれか1つが所定の第2論理値としてのHighになるものとする。第1シフトレジスタ22は、クロック信号CLKinの立ち上がりにおいて、Highを持つ第1スイッチ選択信号をシフトさせる。第2シフトレジスタ23は、第1シフトレジスタ22の出力信号の立ち上がりにおいて、Highになる第2スイッチ選択信号をシフトさせる。そして、与えられる第1および第2スイッチ選択信号がともにHighである論理積回路24が、信号としてHighを出力することによって、対応するスイッチを導通状態にする。与えられる第1および第2スイッチ選択信号のうち少なくともいずれか一方がHighでない論理積回路24は、信号としてLowを出力することによって、対応するスイッチを非導通状態にする。
【0038】
次に、
図3に示す電圧発生回路4Aの動作について説明する。まず、リセット信号Resetが入力されると、第1シフトレジスタ22におけるフリップフロップFF1と第2シフトレジスタ23におけるフリップフロップFF10の出力がHighに、それ以外のフリップフロップFF2〜FF8,F20〜Fn0の出力は全てLowにセットされる。したがって、フリップフロップFF1,FF10によって制御されるスイッチSW11が導通し、端子電圧VR11が出力電圧Voutとして出力される。次に、クロック信号CLKinが入力されると、第1シフトレジスタ22においてHigh出力がFF1⇒FF2⇒FF3…の順序でシフトし、それに応じて端子電圧VR11⇒VR12⇒VR13…が順次出力され、出力電圧Voutが上昇して行く。そして、フリップフロップFF8の出力がHighになって端子電圧VR18が出力されると、次のクロックでフリップフロップFF1の出力がHighになるため、その立ち上がりで第2シフトレジスタ23のHigh出力がフリップフロップFF10からフリップフロップFF20にシフトする。これにより、フリップフロップFF1,FF20によって制御されるスイッチSW21がONとなり、端子電圧VR21が出力電圧Voutとして出力される。その後、クロックに応じてVR21⇒VR22⇒VR23…が順次出力され、端子電圧VR28に達すると次のクロックでフリップフロップFF30の出力がHighとなり、続いてVR31⇒VR32⇒VR33の順で出力されて行く。
【0039】
このように、
図1の電圧発生回路4と同様に、抵抗列21における抵抗端の電圧が低い側から高い側に向かって順次出力される。しかも本変形例では、シフトレジスタをX軸方向用とY軸方向用とに分けて配置しているので、フリップフロップの数を大幅に削減可能である。例えば、
図3の電圧発生回路4Aを第1の実施形態のように構成した場合、必要とされるフリップフロップの数は8xn個であるが、本変形例では(8+n)個となる。したがって、本変形例によると、電圧発生回路4Aの回路規模を大幅に削減しながら、第1の実施形態と同様の効果を容易に得ることができる。
【0040】
なお、複数の第1スイッチ選択信号は、いずれか1つが、所定の第1論理値としてLowになるものとしてもよい。また、複数の第2スイッチ選択信号は、いずれか1つが、所定の第2論理値としてLowになるものとしてもよい。そして、第1および第2スイッチ選択信号の論理に応じた論理回路を、複数のスイッチに対応してそれぞれ設ければよい。例えば、複数の第1スイッチ選択信号および複数の第2スイッチ選択信号が、両方とも、いずれか1つがLowになる場合は、論理積回路24の代わりに、論理和回路を設ければよい。すなわち、与えられる第1および第2スイッチ選択信号がともにLowである論理和回路が、信号としてLowを出力することによって、対応するスイッチを導通状態にする。
【0041】
また、第1シフトレジスタ22は、クロック信号CLKinの立ち下がりにおいて、所定の論理値を持つ第1スイッチ選択信号をシフトさせてもよいし、第2シフトレジスタ23は、第1シフトレジスタ22の出力信号の立ち下がりにおいて、所定の論理値を持つ第2スイッチ選択信号をシフトさせてもよい。
【0042】
(第2変形例)
図4は第1実施形態の第2変形例に係るバイアス発生回路の構成を示す回路図である。
図4の構成では、電圧発生回路の構成が
図1および
図3と異なっている。
図3に示した電圧発生回路4Aでは、抵抗列21から電圧を取り出すために、電圧を取り出す抵抗端と同数のスイッチおよび論理ゲートが必要となるが、第2変形例では、電圧発生回路4Bは、スイッチおよび論理ゲートの個数を大幅に削減することが可能な構成としている。
【0043】
図4において、電圧発生回路4Bは、複数の抵抗R1〜R8が直列に接続された第1抵抗列31、導通/非導通が切替可能な複数のスイッチSW1〜SW8からなる第1スイッチ群32、第1スイッチ群32に属するスイッチを選択して導通させる第1スイッチ選択部としての第1シフトレジスタ33、複数の抵抗Rc1〜Rc5が直列に接続された第2抵抗列34、導通/非導通が切替可能な複数のスイッチSWH1〜SWH6からなる第2スイッチ群35、導通/非導通が切替可能な複数のスイッチSWL1〜SWL6からなる第3スイッチ群36、および、第2スイッチ群35に属するスイッチを選択して導通させるとともに、第3スイッチ群36に属するスイッチを選択して導通させる第2スイッチ選択部としての第2シフトレジスタ37を備えている。
【0044】
第1スイッチ群32の各スイッチSW1〜SW8は、一端が第1抵抗列31における抵抗端にそれぞれ接続され、他端が出力端子14に接続されている。第2スイッチ群35の各スイッチSWH1〜SWH6は、一端が第2抵抗列34における抵抗端にそれぞれ接続され、他端が第1抵抗列31の一端に接続されている。第3スイッチ群36の各スイッチSWL1〜SWL6は、一端が第2抵抗列34における抵抗端にそれぞれ接続され、他端が第1抵抗列31の他端に接続されている。
【0045】
第1シフトレジスタ33は、フリップフロップFF1〜FF8を備え、フリップフロップFF8の出力がフリップフロップFF1の入力に接続されるリング構成となっており、クロック信号CLKinを受け、このクロック信号CLKinのクロック数に応じて、第1スイッチ群32に属するスイッチSW1〜SW8のいずれか1つを選択して導通させる。すなわち、第1シフトレジスタ33は、第1抵抗列31における抵抗端の電圧を低い方からVR1⇒VR2⇒…⇒VR8⇒VR1…の順番に出力するよう、スイッチSW1〜SW8を制御する。一方、第2シフトレジスタ37は、フリップフロップFF10〜FF40を備え、第1シフトレジスタ33の出力信号のいずれか1つ(
図4ではフリップフロップFF1の出力)を受け、この出力信号に応じて、第2スイッチ群35に属するスイッチSWH1〜SWH6のいずれか1つと、第3スイッチ群36に属するスイッチSWL1〜SWL6のいずれか1つとを選択して導通させる。すなわち、第2シフトレジスタ37は、第1抵抗列31の両端を、第2抵抗列34における抵抗端に、(Vc1,Vc3)⇒(Vc2,Vc4)⇒(Vc3,Vc5)⇒…の順番に接続するよう、スイッチSWL1〜SWL6及びスイッチSWH1〜SWH6を制御する。なお、第1抵抗列31および第2抵抗列34における抵抗の個数は、
図4に示したものに限定されるものではない。
【0046】
次に、
図4に示す電圧発生回路4Bの動作について説明する。ここで、第1及び第2抵抗列31,34を構成する抵抗R1〜R8及びRc1〜Rc5の抵抗値は、以下のように設定されているものとする。
【0047】
R1=R2=R3=R4=R5=R6=R7=R8=Ra
Rc1=Rc2=Rc3=Rc4=Rc5=4Ra
すなわち、第1抵抗列31の抵抗値の総和は8Raである。まず、リセット信号Resetが入力されると、フリップフロップFF10の出力がHighとなるため、スイッチSWL1,SWH3がONとなり、第1抵抗列31の両端は、第2抵抗列34における抵抗端Vc1と抵抗端Vc3とにそれぞれ接続される。ここで、抵抗端Vc1,Vc3間の抵抗値は8Ra(=Rc1+Rc2)であり、第1抵抗列31の総抵抗値8Raと同じであるから、その合成抵抗値は8Ra/2=4Raとなる。この合成抵抗値は抵抗Rc3〜Rc5と同じ抵抗値であるので、この結果、抵抗端Vc1,Vc6間の電圧が、抵抗値が同じ4Raである4個の抵抗により4等分される。この4等分された電圧範囲のうち最も低い電圧範囲Vc1〜Vc3において、第1抵抗列31によって8等分された電圧VR1〜VR8が、電圧発生回路4Bから、クロック信号CLKinのクロック数に従って、順次低い方から出力される。
【0048】
そして、電圧VR8が出力されると、次のクロックでスイッチSW1がHighになると共に、第2シフトレジスタ37においてHigh出力がフリップフロップFF10からフリップフロップFF20にシフトする。これにより、スイッチSWL2,SWH4がONとなり、第1抵抗列31の両端は、第2抵抗列34における抵抗端Vc2と抵抗端Vc4とにそれぞれ接続される。上述したのと同様に、抵抗端Vc2,Vc4間の抵抗値は8Ra(=Rc2+Rc3)であり、第1抵抗列31との合成抵抗値は4Raとなるため、この結果、抵抗端Vc1,Vc6間の電圧が、抵抗値が同じ4Raである4個の抵抗により4等分される。この4等分された電圧範囲のうち2番目に低い電圧範囲Vc2〜Vc4において、第1抵抗列31によって8等分された電圧VR1〜VR8が、電圧発生回路4Bから、クロック信号CLKinのクロック数に従って順次低い方から出力される。
【0049】
このように、
図4の電圧発生回路4Bは、
図1や
図3の電圧発生回路4,4Aと同様に、与えられたクロック信号のクロック数に応じて、出力電圧を徐々に増加させることができる。しかも本変形例では、フリップフロップだけではなく、スイッチおよび論理ゲートの個数も大幅に削減可能である。
【0050】
また、抵抗端Vc1,Vc6間のインピーダンスは常に一定であるため(
図4の場合は16Ra)、定常的な電源電圧変動は生じず、それに起因する電圧誤差も発生しない。また、第2抵抗列34の両端に適切な抵抗Rd,Rsを配置することにより、出力電圧範囲を自由に設定することが可能であり、出力範囲の最適化による高分解能化も容易に行うことができる。さらに、本変形例では、動作時に電流が流れるスイッチは2個だけ(第1抵抗列31の両端を第2抵抗列34に接続するスイッチ)なので、スイッチトランジスタによるフリッカーノイズの影響を最小限に抑えることができる。
【0051】
また、本変形例において、抵抗値の設定を例えば、
R1=R2=R3=R4=R5=R6=R7=R8 > Ra
Rc1=Rc2=Rc3=Rc4=Rc5=4Ra
というようにしてもよい。この場合、第1抵抗列31の抵抗値の総和が第2抵抗列34の抵抗2個分より大きくなるため、その合成抵抗は第2抵抗列34の各抵抗の抵抗値4Raより大きくなる。これにより、第1抵抗列31と第2抵抗列34との接続関係が切り替わり、第1抵抗列31から出力される電圧範囲が遷移する際に、遷移前後の電圧範囲がオーバーラップを持つようになる。したがって、抵抗ばらつきによる誤差の増大を抑圧することが可能となる。
【0052】
この点について、
図5および
図6を用いて説明する。
図5は
図4に示す電圧発生回路4Bにおける抵抗値設定の例を概念的に示す図、
図6は電圧発生回路4Bの出力電圧の変化を示すグラフである。
図5(a)では、第1抵抗列31の総抵抗値は2R、第2抵抗列34における各抵抗の抵抗値はRとしている。この場合には、第1抵抗列31の両端が第2抵抗列34における抵抗2個の両端に接続されたとき、その合成抵抗値はRとなる。このため、第1抵抗列31に対応する電圧範囲Va1〜Va5は、電圧範囲全体を均等に分割(
図5では5分割)したものになる。このとき、
図6(a)に示すように、電圧発生回路4Bの出力電圧はクロック数に応じて単調に増加する。
【0053】
一方、
図5(b)では、第1抵抗列31の総抵抗値を2Rよりも大きく設定している。この場合には、第1抵抗列31の両端が第2抵抗列34における抵抗2個の両端に接続されたとき、その合成抵抗値はRよりも大きくなり、この結果、第1抵抗列31に対応する電圧範囲Vb1〜Vb5は、
図5(a)の電圧範囲Va〜Va5よりも少し広がり、隣り合う電圧範囲が互いにオーバーラップする。このとき、
図6(b)に示すように、電圧発生回路4Bの出力電圧は、全体としてはクロック数に応じて徐々に増加するものの、微視的に見た場合には、出力電圧が減少する部分が表れる。
【0054】
電圧発生回路の出力電圧は、クロック数に応じて、所定の変化量で単調に増加する、または、単調に減少する、というのが理想的である。ところが、実際には、抵抗値のばらつきに起因して、その変化量が所定の値から上下することがある。このような誤差は、第1抵抗列31と第2抵抗列34との接続関係が切り替わる際に大きくなる。そして、第1抵抗列31の抵抗値の総和が第2抵抗列34の抵抗2個分より小さい場合、第1抵抗列31に対応する隣り合う電圧範囲に隙間ができ、出力電圧を細かく設定することができなくなるため、出力電圧の設定精度が低下する可能性がある。これに対して、
図5(b)のように隣り合う電圧範囲を互いにオーバーラップさせるようにあらかじめ抵抗値を設定することによって、抵抗値がばらついた場合でも、隣り合う電圧範囲に隙間ができるのを防ぎ、出力電圧の設定精度の低下を未然に抑制することが可能になる。
【0055】
なお、本開示では、電圧発生回路は、クロック数に応じて出力電圧を徐々に増加または減少させるものであるが、例えば
図6(b)に示すように、クロック数と出力電圧との関係において、出力電圧の増減方向が、徐々に増加する、または、徐々に減少する方向と、逆になる部分を有していても、かまわないものとする。すなわち、電圧発生回路は、クロック数に応じて出力電圧を徐々に増加させるものであり、かつ、クロック数と出力電圧との関係において、クロック数の増加とともに出力電圧が減少する部分を有するものであってもよい。あるいは、電圧発生回路は、クロック数に応じて出力電圧を徐々に減少させるものであり、かつ、クロック数と出力電圧との関係において、クロック数の増加とともに出力電圧が増加する部分を有するものであってもよい。
【0056】
(第3変形例)
図7は第1実施形態の第3変形例に係るバイアス発生回路の構成を示す回路図である。
図7の構成でも、
図4の構成と同様に、電圧発生回路4Cは、スイッチおよび論理ゲートの個数を大幅に削減可能な構成としている。
【0057】
図7において、電圧発生回路4Cは、
図4の電圧発生回路4Bと同様に、複数の抵抗R1〜R8が直列に接続された第1抵抗列31、導通/非導通が切替可能な複数のスイッチSW1〜SW8からなる第1スイッチ群32、および、第1スイッチ群32に属するスイッチを選択して導通させる第1スイッチ選択部としての第1シフトレジスタ33を備えている。さらに、複数の抵抗Rc1〜Rc4が直列に接続された第2抵抗列41、複数の抵抗Rc5〜Rc8が直列に接続された第3抵抗列42、導通/非導通が切替可能な複数のスイッチSW11〜SW15からなる第2スイッチ群43、導通/非導通が切替可能な複数のスイッチSW16〜SW20からなる第3スイッチ群44、および、第2スイッチ群43に属するスイッチを選択して導通させるとともに、第3スイッチ群44に属するスイッチを選択して導通させる第2シフトレジスタ45を備えている。第2抵抗列41は、一端が第1抵抗列31の一端と接続されており、第3抵抗列42は、一端が第1抵抗列31の他端と接続されている。
【0058】
第1スイッチ群32の各スイッチSW1〜SW8は、一端が第1抵抗列31における抵抗端にそれぞれ接続され、他端が出力端子14に接続されている。第2スイッチ群43の各スイッチSW11〜SW15は、一端が第2抵抗列41における抵抗端にそれぞれ接続され、他端が低電位供給端子としての端子VLに接続されている。第3スイッチ群44の各スイッチSW16〜SW20は、一端が第3抵抗列42における抵抗端にそれぞれ接続され、他端が高電位供給端子としての端子VHに接続されている。
【0059】
第1シフトレジスタ33は、フリップフロップFF1〜FF8を備え、フリップフロップFF8の出力がフリップフロップFF1の入力に接続されるリング構成となっており、クロック信号CLKinを受け、このクロック信号CLKinのクロック数に応じて、第1スイッチ群32に属するスイッチSW1〜SW8のいずれか1つを選択して導通させる。すなわち、第1シフトレジスタ33は、第1抵抗列31における抵抗端の電圧を低い方からVR1⇒VR2⇒…⇒VR8⇒VR1…の順番に出力するよう、スイッチSW1〜SW8を制御する。一方、第2シフトレジスタ45は、フリップフロップFF10〜FF50を備え、第1シフトレジスタ33の出力信号のいずれか1つ(
図7ではフリップフロップFF1の出力)を受け、この出力信号に応じて、第2スイッチ群43に属するスイッチSW11〜SW15のいずれか1つと、第3スイッチ群44に属するスイッチSW16〜SW20のいずれか1つとを選択して導通させる。すなわち、第2シフトレジスタ45は、第2抵抗列41における抵抗端Vc1〜Vc5と端子VLとの接続、および、第3抵抗列42における抵抗端Vc6〜Vc10と端子VHとの接続が、(Vc1,Vc6)⇒(Vc2、Vc7)⇒(Vc3、Vc8)⇒…の順番に行われるよう、スイッチSW11〜SW20を制御する。なお、第1抵抗列31、第2抵抗列41および第3抵抗列42における抵抗の個数は、
図7に示したものに限定されるものではない。
【0060】
次に、
図7に示す電圧発生回路4Cの動作について説明する。ここで、第1抵抗列31を構成する抵抗R1〜R8、並びに、第2抵抗列41および第3抵抗列42を構成する抵抗Rc1〜Rc8の抵抗値は、以下のように設定されているものとする。
【0061】
R1=R2=R3=R4=R5=R6=R7=R8=Ra
Rc1=Rc2=Rc3=Rc4=Rc5=Rc6=Rc7=Rc8=8Ra
すなわち、第1抵抗列31の抵抗値の総和は8Raであり、第2抵抗列41および第3抵抗列42の各抵抗の抵抗値に等しい。まず、リセット信号Resetが入力されると、フリップフロップFF10の出力がHighとなるため、スイッチSW11,SW16がONとなり、第2抵抗列41における抵抗端Vc1が端子VLに接続され、第3抵抗列42における抵抗端Vc6が端子VHに接続される。したがって、端子VL,VH間が、第1抵抗列31及び抵抗Rc5〜Rc8によって5等分される。この5等分された電圧範囲のうち最も低い電圧範囲Vc1〜Vc10において、第1抵抗列31によって8等分された電圧VR1〜VR8が、電圧発生回路4Cから、クロック信号CLKinのクロック数に従って、順次低い方から出力される。
【0062】
そして、電圧VR8が出力されると、次のクロックでスイッチSW1がONになるとともに、第2シフトレジスタ45においてHigh出力がフリップフロップFF10からフリップフロップFF20にシフトする。これにより、スイッチSW12,SW17がONとなり、第2抵抗列41における抵抗端Vc2が端子VLに接続され、第3抵抗列42における抵抗端Vc7が端子VHに接続される。したがって、端子VL,VH間が、今度は抵抗Rc1、第1抵抗列31及び抵抗Rc6〜Rc8によって5等分される。この5等分された電圧範囲のうち2番目に低い電圧範囲Vc1〜Vc10において、第1抵抗列31によって8等分された電圧VR1〜VR8が、電圧発生回路4Cから、クロック信号CLKinのクロック数に従って、順次低い方から出力される。
【0063】
このように、
図7の電圧発生回路4Cは、
図1や
図3の電圧発生回路4,4Aと同様に、与えられたクロック信号のクロック数に応じて、出力電圧を徐々に増加させることができる。しかも本変形例では、フリップフロップだけではなく、スイッチおよび論理ゲートの個数も大幅に削減可能である。
【0064】
また、端子VL,VH間のインピーダンスは常に一定であるため(
図7の場合は40Ra)、定常的な電源電圧変動は生じず、それに起因する電圧誤差も発生しない。また、高電位側電源Vddと端子VHとの間、および、低電位側電源Vssと端子VLとの間に、適切な抵抗Rd,Rsを配置することにより、出力電圧範囲を自由に設定することが可能であり、出力範囲の最適化による高分解能化も容易に行うことができる。さらに、本変形例では、動作時に電流が流れるスイッチは2個だけ(第2抵抗列41と端子VLを接続するスイッチ、および、第3抵抗列42と端子VHを接続するスイッチ)なので、スイッチトランジスタによるフリッカーノイズの影響を最小限に抑えることができる。
【0065】
また、本変形例において、抵抗列の設定を例えば、
R1=R2=R3=R4=R5=R6=R7=R8 > Ra
Rc1=Rc2=Rc3=Rc4=Rc5=Rc6=Rc7=Rc8=8Ra
というようにしてもよい。この場合、第1抵抗列31の抵抗値の総和が、第2抵抗列41および第3抵抗列42の各抵抗の抵抗値8Raより大きくなる。これにより、第1抵抗列31と第2抵抗列41および第3抵抗列42との接続関係が切り替わり、第1抵抗列31から出力される電圧範囲が遷移する際に、遷移前後の電圧範囲がオーバーラップを持つようになる。したがって、第2変形例で説明したとおり、抵抗ばらつきによる誤差の増大を抑圧することが可能となる。
【0066】
なお、変形例1〜3に示した電圧発生回路4A,4B,4Cは、クロック数に応じて出力電圧が上昇するように構成されているが、
図1の電圧発生回路4と同様に、クロック数に応じて出力電圧が下降するように構成することも容易に可能である。
【0067】
また、変形例1〜3では、シフトレジスタによってスイッチ選択部を構成するものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、カウンタによってスイッチ選択部を構成するようにしてもよい。
【0068】
<第2実施形態>
図8は第2実施形態に係るバイアス発生回路の構成を示す回路図である。
図8では、
図1と共通の構成要素には
図1と同一の符号を付している。本実施形態における基本的な構成と動作は、第1実施形態で説明した内容とほぼ同様である。ここでは、第1実施形態との相違点について主に説明する。
【0069】
図8に示す電圧発生回路5は、デジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換器(D/Aコンバータ)17と、クロック信号CLKinのクロック数をカウントするカウンタ18とを備えている。カウンタ18の出力データがD/Aコンバータ17に入力され、D/Aコンバータ17の出力が、出力電圧Voutとして出力される。
【0070】
このような構成により、電圧発生回路5は、入力クロックに応じて、D/Aコンバータ17の1階調ずつ出力電圧Voutを増加または減少させることができる。また、第1実施形態と比べて、より小さな面積で電圧発生回路5を実現することが可能となる。なお、D/Aコンバータ17としてはどのような形式のものでも使用可能であるが、R−2R型等、なるべく低ノイズのD/Aコンバータを使用することが望ましい。
【0071】
また
図8の構成では、比較器2の出力側に、言い換えると、クロックゲーティング回路の制御信号入力側に、フリップフロップ8を配置し、クロック信号に同期して比較器2の出力結果を取り込む構成としている。これは、電圧発生回路5にD/Aコンバータ17を用いた場合に特に問題となるグリッチ(出力の切り替わり時に発生するスパイク状のノイズ)による誤差を低減するためである。例えば、クロックの立ち下がりエッジで電圧発生回路5の出力を変化させ、その半周期後の立ち上がりエッジで比較器2の出力結果をフリップフロップ8に取り込むようにする。これにより、電圧発生回路5の出力電圧Voutが変化する際に発生するグリッチに起因する誤動作を抑制することができる(グリッチによるノイズは、出力電圧Voutの切り替わり時から半周期後にはほぼ収束する)。また、
図8の構成では、電圧発生回路5の出力電圧Voutが比較器2の入力端子に送られる経路に、低域通過フィルタ9が設けられている。この低域通過フィルタ9によって、グリッチ自体の低減も図っている。
【0072】
このように本実施形態によると、第1実施形態と同様に、バイアス電圧を決定するにあたって所定のフローを実行するためのデジタル制御回路が不要であり、非常に簡易な構成にクロック信号を与えるだけで所望のバイアス電圧が自動的に生成される。また、電圧発生回路5をD/Aコンバータ17およびカウンタ18を備えた構成によって実現しているので、第1実施形態と比べて回路規模を大幅に削減することが可能になる。さらに、電圧発生回路5の出力電圧Voutにおけるグリッチに起因する誤動作を大幅に抑制することができる。
【0073】
なお、本実施形態で示したフリップフロップ8や低域通過フィルタ9を、第1実施形態で示した
図1等の構成に追加してもよい。これにより、本実施形態と同様に、電圧発生回路4等の出力電圧Voutにおけるグリッチに起因する誤動作を大幅に抑制することができる。
【0074】
<第3実施形態>
図9は第3実施形態に係るバイアス発生回路の構成を示す回路図である。本実施形態に係るバイアス発生回路は、クロック信号を生成するクロック発生回路1、制御信号に応じてクロック信号を通過又は停止させるクロックゲーティング回路としてのANDゲート3、入力クロックに応じて出力電圧を増加又は減少させる電圧発生回路4、基準電流Irefを生成する第1トランジスタM1、基準電流Irefがドレインに入力される第2トランジスタM2、および、ドレインからバイアス電流Ibiasを出力する第3トランジスタM3を有する。
【0075】
具体的には、ANDゲート3は、一方の入力端子にクロック発生回路1から出力されたクロック信号が与えられ、他方の入力端子に第2トランジスタM2のドレイン電圧が与えられている。そしてANDゲート3の出力は、電圧発生回路4のクロック入力端子15にクロック信号CLKinとして与えられる。すなわち、ANDゲート3は、第2トランジスタM2のドレイン電圧を制御信号として受け、この制御信号に応じて、クロック発生回路1から出力されたクロック信号を電圧発生回路4に与えるか否かを制御する。電圧発生回路4の出力電圧Voutは、第2トランジスタM2及び第3トランジスタM3のゲートに与えられている。
【0076】
電圧発生回路4の構成は、
図1に示したものと同様であり、ここでは、その詳細な説明は省略する。なお、第1実施形態の各変形例1〜3に示した電圧発生回路4A,4B,4Cを
図9の構成に適用してもかまわない。
【0077】
次に、
図9に示すバイアス発生回路の動作について説明する。電圧発生回路4の初期値VR1は、この電圧をゲートに受ける第2トランジスタM2が流すことができるドレイン電流IM2が、基準電流Irefよりも十分小さくなるように設定される。まず、リセット信号Resetが入力されると、フリップフロップFF1の出力がHigh、その他のフリップフロップFF2〜FFn+1の出力はLowにセットされるので、スイッチ群12においてスイッチSW1が導通し、電圧VR1が出力電圧Voutとして出力される。このとき、上述したようにIref>IM2であるため、基準電流Irefの入力ノードPの電圧はHighとなり、この電圧がANDゲート3の一方の入力に与えられているので、ANDゲート3はクロック発生回路1から出力されたクロック信号をスルーさせる。このクロック信号に応じて電圧発生回路4の出力電圧Voutが順次上昇し、第2トランジスタM2が流すことができるドレイン電流IM2が基準電流Irefよりも大きくなると、ノードPの電圧がLowに反転する。そして、ANDゲート3がクロック信号の出力を停止させるため、電圧発生回路4の出力電圧Voutの上昇が止まる。これにより、第2トランジスタM2のドレイン電流IM2が、基準電流Irefの近傍で、かつ、基準電流Irefよりも大きい電流に設定される。
【0078】
ここで、第2トランジスタM2と第3トランジスタM3のトランジスタサイズの比を、
W(M1)/L(M1): W(M2)/L(M2)=1:α
とすると、バイアス電流Ibiasとして、第3トランジスタM3のドレインからαIM2の電流が出力される。
【0079】
図10に実際のシミュレーション結果を示す。電圧発生回路4の初期値電圧は0V、ターゲットとなる基準電流Irefは100μA、αは1としている。
図10から分かるように、クロック信号CLKinのクロック数に応じて第3トランジスタM3から出力されるバイアス電流Ibiasが徐々に上昇し、基準電流100μAを越えた時点で、第2トランジスタM2のドレイン電圧がLowに反転し、ANDゲート3からクロック信号出力が停止して、バイアス電流Ibiasの上昇が止まっている。このとき設定されたバイアス電流は104.4μAであり、基準電流100μAの近傍かつ高い電流に設定されている。
【0080】
以上述べたように本実施形態によると、バイアス電流を決定するにあたって所定のフローを実行するためのデジタル制御回路が不要であり、非常に簡易な構成にクロック信号を与えるだけで所望のバイアス電流が自動的に生成される。また、第1の実施形態における
図1の構成と同様に、電源−グランド間に接続された抵抗列11の抵抗値は常に一定であるため、電源電圧変動やそれに起因する電圧誤差を生ずることがない。また、電圧発生回路4におけるスイッチには定常電流が流れないため、スイッチトランジスタによるフリッカーノイズの影響を抑えることが可能となる。
【0081】
<第4の実施形態>
図11は第4の実施形態に係るバイアス発生回路の構成を示す回路図である。
図11では、
図8および
図9と共通の構成要素には
図8および
図9と同一の符号を付している。本実施形態における基本的な構成と動作は、第3実施形態で説明した内容とほぼ同様である。ここでは、第3実施形態との相違点について主に説明する。
【0082】
図11に示す電圧発生回路5は、
図8に示す電圧発生回路5と同様の構成であり、デジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル−アナログ変換器(D/Aコンバータ)17と、クロック信号CLKinのクロック数をカウントするカウンタ18とを備えている。カウンタ18の出力データがD/Aコンバータ17に入力され、D/Aコンバータ17の出力が、出力電圧Voutとして出力される。このような構成により、入力クロックに応じてD/Aコンバータ17の1階調ずつ出力電圧Voutが上昇又は下降する電圧発生回路5を、容易に、かつ、小面積で構成することができる。
【0083】
また
図11の構成では、
図8の構成と同様に、クロックゲーティング回路の制御信号入力側に、フリップフロップ8を配置している。これにより、出力電圧Voutにおけるグリッチに起因する誤動作を抑制している。また、電圧発生回路5の出力電圧Voutが第2トランジスタM2のゲートに送られる経路に、低域通過フィルタ9が設けられている。この低域通過フィルタ9によって、グリッチ自体の低減も図っている。
【0084】
さらに
図11の構成では、基準電流Irefを生成しているPMOSの第1トランジスタM1のドレイン側に、PMOSのカスコードトランジスタM4が配置されている。また、NMOSの第2トランジスタM2のドレイン側に、NMOSのカスコードトランジスタM5が配置されている。これにより、基準電流Irefが入力されるノードPのインピーダンスがより高くなるため、ノードPの電圧がHighからLow(又はLowからHigh)に切り替わる時の立ち下がり(又は立ち上がり)が急峻となり、高精度なバイアス電流の設定が可能となる。なお、
図11の構成では、NMOSのカスコードトランジスタM4とPMOSのカスコードトランジスタM5の両方が配置されているが、いずれか一方だけでも良い。
【0085】
さらに、
図11の構成では、ノードPとANDゲート3の入力端子との間に増幅回路10が設けられている。この増幅回路10によって、ノードPの電圧変化が増幅され、その変化が更に急峻となるため、より高精度なバイアス電流の設定が可能となっている。ここで、増幅回路10は2段のインバータINV1,INV2で構成されているが、これに限られるものではなく、例えば、一方の入力端子に所定の電圧が与えられた比較器を用いても良い。
【0086】
このように本実施形態によると、第3実施形態と同様に、バイアス電流を決定するにあたって所定のフローを実行するためのデジタル制御回路が不要であり、非常に簡易な構成にクロック信号を与えるだけで所望のバイアス電流が自動的に生成される。また、電圧発生回路5をD/Aコンバータ17およびカウンタ18を備えた構成によって実現しているので、第3実施形態と比べて回路規模を大幅に削減することが可能になる。さらに、電圧発生回路5の出力電圧Voutにおけるグリッチに起因する誤動作を大幅に抑制することができる。
【0087】
なお、本実施形態で示したフリップフロップ8や低域通過フィルタ9を、第3実施形態で示した
図9の構成に追加してもよい。これにより、本実施形態と同様に、電圧発生回路4の出力電圧Voutにおけるグリッチに起因する誤動作を大幅に抑制することができる。また、本実施形態で示したカスコードトランジスタM4,M5や増幅回路10を、第3実施形態で示した
図9の構成に追加してもよい。これにより、本実施形態と同様に、クロックゲーティング回路に入力される制御信号の変化をより急峻にすることができるので、より高精度なバイアス電流の設定が可能となる。
【0088】
なお、上述の各実施形態では、クロックゲーティング回路をANDゲート3によって構成するものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、ORゲート、または、スイッチ付きインバータ回路によって構成することも可能である。
【0089】
なお、上述の各実施形態に示したバイアス発生回路は、例えば、通信機器や、レーダ機器に適用することができる。例えば、通信機器やレーダ機器において、機器の起動時に、または、定期的に、各実施形態に係るバイアス発生回路によって、バイアス電圧またはバイアス電流が設定されるように構成してもよい。