【実施例】
【0018】
検討1 アマランサス種子を用いた固定化酵素の調製と評価
表1−1の配合にて、固定化酵素を調製した。調製方法は「○固定化酵素の調製法」に従った。比較例1−1(コントロール)については、「○固定化酵素の調製法(コントロール)」に従った。
得られた酵素を用いて酵素反応を行った。方法は「○固定化酵素の評価法」に従った。結果を表1−2に示した。
【0019】
表1−1
・酵素剤には微生物由来のリパーゼ製剤(粉体)を使用した。
・アマランサス種子には、日本産食用アマランサス(雑穀米本舗)を使用した。本品は、目開き2mmのふるいを通過する種子であった。
・固定化担体Aには、珪藻土を使用した。本品は、固定化酵素の担体として広く使用されているものであった。
【0020】
○固定化酵素の調製法
1 酵素剤と水を混合した。
2 1へヒマワリ油を添加後、攪拌し、酵素液とした。乳化状態は、O/W型であった。
3 2へ種子を添加して、混合した。
4 恒温槽で40℃、48時間乾燥した。
【0021】
○固定化酵素の調製法(コントロール)
1 酵素剤と水を混合した。
2 1へヒマワリ油を添加後、攪拌し、酵素液とした。乳化状態は、O/W型であった。
3 レボルパン(回転式コーティング機)を用い、固定化担体Aに2の酵素液を吹き付けた。
4 恒温槽で40℃、48時間乾燥した。
【0022】
「○固定化酵素の評価法」
1 以下の工程により、基質油脂を調製した。
2 20ml容ワトソン製自立コンテナへ基質油脂10gおよび固定化酵素を添加した(実施例1−1は192.5mg、比較例1−1は50mg)。(固定化酵素は、実施例1−1と比較例1−1で酵素量が同じとなるように添加量を調整した。)
3 60℃・200rpm回転振とうさせて反応した。
4 24時間後及び/又は48時間後にサンプリングし、GC(ガスクロマトグラフ)にてTG(トリグリセリド)組成を分析した。
(本評価法はエステル交換反応による評価法であり、基質油脂の主要成分(C50)に対し、目的物(C48)の量が多いほど反応が進んだと判断できた。よって、24時間後及び/又は48時間後のC48/C50の値が、従来品である固定化担体Aを用いた場合の75%以上であれば、合格と判断した。)
「基質油脂の調製」
1 IV56パームオレインに白土2%を添加して脱色した。
2 水分量が180〜220ppmであることを確認した。
【0023】
結果
表1−2
・FAAは遊離脂肪酸を、DGはジグリセリドを示す。
・C46は、トリグリセリド1分子中の脂肪酸に由来する炭素の合計が46個であることを示す。C48等も同様である。
【0024】
考察
・固定化担体Aは、酵素の固定化担体として従来から用いられていたものであるが、近年、資源が枯渇し、その代替品となるものが求められていた。本検討では、アマランサス種子を用いた場合に、固定化担体Aを用いた場合の8割程度の反応率を示し、代替品として使用可能で有ることが確認された。
【0025】
検討2 各種種子を用いた固定化酵素の調製と評価
表2−1の配合にて、固定化酵素を調製した。調製方法は「○固定化酵素の調製法」に従った。比較例2−1(コントロール)については、「○固定化酵素の調製法(コントロール)」に従った。
得られた酵素を用いて酵素反応を行った。方法は「○固定化酵素の評価法」に従った。ここで固定化酵素の量は、実施例2−1、2−2、2−3、2−4、比較例2−2、2−3は192.5mg、比較例2−1は50mgとした。これにより、系中の酵素量は同等となった。
結果を表2−2に示した。
【0026】
表2−1
・酵素剤には微生物由来のリパーゼ製剤を使用した。
・アマランサス種子には、日本産食用アマランサス(雑穀米本舗)を使用した。本品は、目開き2mmのふるいを通過する種子であった。
・キノアには、自社で栽培し収穫した種子を使用した。本品は、目開き2mmのふるいを通過する種子であった。
・けしには、S&B社製 お菓子・パン用ポピーシードを使用した。本品は、目開き1mmのふるいを通過する種子であった。
・トマト種子には、市販トマトより採取した種子を洗浄・乾燥させて使用した。本品は、目開き4.75mmのふるいを通過する種子であった。
・小豆には、「北海道十勝産小豆(虎屋産業)」を使用した。本品は、目開き5.6mmのふるいを通過しない種子であった。
・大豆には、「サヤムスメ(雪印種苗)」を使用した。本品は、目開き5.6mmのふるいを通過しない種子であった。
・固定化担体Aには、珪藻土を使用した。本品は、固定化酵素の担体として広く使用されているものであった。
【0027】
結果
表2−2
【0028】
考察
・目開き5.6mmのふるいを通過する種子を担体として使用した場合には、固定化担体Aを用いた場合と同等ないしそれ以上の「C48/C50」値となっており、合格と判断された。特に、トマト種子を用いた場合は、「C48/C50」値が固定化担体Aを用いた場合よりもかなり上回っており、エステル交換反応が効率よく行われていることが示された。
・固定化担体Aは多孔質であり、それが固定化酵素の担体としての機能に必要と考えられていた。一方、種子は一見多孔質とも思えず、固定化酵素の担体としては考慮された形跡は見いだせなかった。しかし実際は、特定の大きさの種子が、固定化酵素の担体としての適性を有することが、本発明により示された。種子は植物体であり、人が食経験を有するものも多いため、食品用素材への適用も安心して行う事ができる等のメリットも存在する。