(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
150℃の雰囲気下において測定した荷重−伸び曲線における破断点の伸度が150〜900%であり、破断点の強度が0.03〜0.8cN/dtexであり、扁平度が1.5〜10であり、かつ、繊度が1.5〜100dtexであることを特徴とするアクリロニトリル系繊維。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された方法は、パイル加工工程とは別に、先細加工を施す工程や設備が必要となり、コスト面においてあまり望ましくない。また、リアルファーに比べると十分な先細化ができているとは言えず、ソフトな風合いなど、満足しうる品質が得られていないため、実用化には至っていない。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、特別な工程や設備を必要とせず、通常のパイル加工工程の範囲内において先細加工ができ、かつ、リアルファーと遜色なく、実用上満足しうるソフトな風合いを得ることのできるアクリロニトリル系繊維、該繊維を含有するパイル布帛、および該パイル布帛を含有する繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段により達成される。
(1) 150℃の雰囲気下において測定した荷重−伸び曲線における破断点の伸度が150〜900%であり、破断点の強度が0.03〜0.8cN/dtexであり、扁平度が1.5〜10であり、かつ、繊度が1.5〜100dtexであることを特徴とするアクリロニトリル系繊維。
(2) 可塑化成分を0.1〜20重量%含有していることを特徴とする(1)に記載のアクリロニトリル系繊維。
(3) 可塑化成分が、下記化1で示す単量体を30〜90重量%含有する重合体であることを特徴とする(1)または(2)に記載のアクリロニトリル系繊維。
【化2】
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載のアクリロニトリル系繊維を立毛部に含有するパイル布帛。
(5) 立毛部のアクリロニトリル系繊維の少なくとも一部が、ポリッシング工程により先細形状にされていることを特徴とする(4)に記載のパイル布帛。
(6) 立毛部のアクリロニトリル系繊維の少なくとも一部が、根元部の幅に対する先端部の幅の割合が50%以下であることを特徴とする(4)または(5)に記載のパイル布帛。
(7) (4)〜(6)のいずれかに記載のパイル布帛を含有する繊維製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、特定の伸度および強度を有するアクリロニトリル系繊維を用いることで、該繊維を含有するパイル布帛を加工する際に、ポリッシャー工程により立毛部の繊維をリアルファーに近い先細形状とすることが容易となり、リアルファーのようにソフト性に優れたものとなる。そのため、従来にはない、リアルファーにより近い触感を有するパイル布帛を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明のアクリロニトリル系繊維は、後述する方法で測定した150℃の雰囲気下における伸度が150〜900%であることが肝要である。伸度の下限としては、好ましくは200%以上、より好ましくは250%以上である。また、上限としては、好ましくは800%以下、より好ましくは600%以下である。伸度が、上記範囲外となった場合、パイル加工時にアクリロニトリル系繊維が十分に引き伸ばされる前に切れてしまうため、立毛部を先細形状とすることが難しくなり、リアルファーに近い触感も得られにくくなる。
【0010】
また、本発明のアクリロニトリル系繊維は、後述する方法で測定した150℃の雰囲気下における強度が0.03〜0.8cN/dtexであることも重要となる。強度の下限としては、好ましくは0.05cN/dtex以上であり、より好ましくは0.08cN/dtex以上である。また、上限としては、好ましくは0.5cN/dtex以下であり、より好ましくは0.3cN/dtex以下である。強度が上記範囲内であれば、ポリッシャー工程のように強い力を加えることのできない工程においても、アクリロニトリル系繊維を伸ばしやすくなるとともに、すぐに切れるようなこともないため、適度に引き伸ばすことができ、先細形状を有する繊維へと加工しやすくなる。
【0011】
次に、本発明のアクリロニトリル系繊維の繊度としては、下限が1.5dtex以上であり、5dtex以上であることが好ましく、10dtex以上であることがより好ましい。繊度が1.5dtex未満の場合、該繊維を用いて作製したパイルの立毛感等が不十分となることがある。また、上限としては100dtex以下であり、70dtex以下であることが好ましく、60dtex以下であることがより好ましい。繊度が100dtexを超える場合には、パイル加工が難しくなり、所望のパイル布帛が得られにくくなる。
【0012】
また、本発明のアクリロニトリル系繊維は、後述する方法で求めた扁平度が1.5〜10であり、好ましくは3〜8である。扁平度が1.5未満の場合には、丸断面に近づき、パイル布帛とした際に毛先が収束しやすくなり、品位を低下させることがある。扁平度が10を超えるとパイル加工時などに繊維の先端が割れやすくなり、得られるパイル布帛の品位を低下させることがある。
【0013】
また、本発明のアクリロニトリル系繊維は、アクリロニトリル系重合体を主成分とする繊維である。ここで、アクリロニトリル系重合体は、従来公知のアクリル繊維あるいはアクリル系繊維の製造に用いられるものであればよいが、構成成分としてアクリロニトリルを50重量%以上含有するものであり、好ましくは80重量%、より好ましくは85重量%以上含有することが望ましい。一方で上限としては、好ましくは95重量%以下であり、より好ましくは93重量%以下である。50重量%に満たない場合には、高温下での繊維物性が低下しすぎて、パイル加工時のポリッシャー工程に耐えられなくなる。95重量%を超える場合には、後述する繊維製造工程の熱処理において収縮させにくくなるため、上述した範囲の破断点伸度を得ることが難しくなる。
【0014】
かかるアクリロニトリル系重合体において、アクリロニトリルと共重合しうる単量体としては、ビニル化合物であればよく、代表的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらのエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド又はこれらのN−アルキル置換体;酢酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル又はビニリデン類;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸又はこれらの塩類等を挙げることができる。なお、上記アクリロニトリル系重合体は、上述の組成を満たす限り複数種を構成成分として用いても構わない。
【0015】
上述のアクリロニトリル系重合体を合成する方法としては、特に制限はなく、周知の重合手段である懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などを利用することができる。
【0016】
また、本発明のアクリロニトリル系繊維は、可塑化成分を、上記のアクリロニトリル系重合体に対して好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.3〜5重量%含有しているものであることが望ましい。これにより、強度を低くすることが容易となり、上述した範囲の強度を満足するアクリロニトリル系繊維が得られやすくなる。
【0017】
かかる可塑化成分は、繊維内部に分散して存在していることが望ましい。かかる構造とすることで、パイル加工時に繊維をムラなく伸ばしやすくなり、先細形状とすることが容易になる。なお、可塑化成分が繊維内部に含有される限り、繊維表面にも存在してよいことは言うまでもない。
【0018】
かかる可塑化成分としては、有機系材料で構成されるものであり、アクリロニトリル系繊維に含有させることで強度を低下させることができるものであれば特に限定はないが、後述する製造方法での工程汚染などの観点から、低分子化合物よりも高分子化合物であることが好ましい。さらに、かかる高分子化合物としては、アクリロニトリル系重合体との親和性の観点から、ポリアルキレンオキシド鎖、ポリエーテルアミド鎖、ポリエーテルエステル鎖、カルボキシル基などの極性を有する側鎖・官能基を有する有機高分子化合物が挙げられる。このような有機高分子化合物はアクリロニトリル系重合体の結晶化度を低下させ、これにより破断点の強度を低くする効果が得られるものと思われる。
【0019】
かかる可塑化成分で特に有用なものとして、極性を有する側鎖・官能基を有するアクリロニトリル系樹脂を挙げることができる。かかるアクリロニトリル系樹脂としては、アクリロニトリルを好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜50重量%、さらに好ましくは15〜30重量%結合含有することが望ましい。アクリロニトリルの含有量が10〜70重量%の範囲であれば、上述したアクリロニトリル系重合体に対して適度な親和性を有するものとすることができる。一方、該範囲の下限未満である場合には、アクリロニトリル系重合体に対する親和性が低すぎる状態となり、紡糸工程で糸切れが多発して操業性が悪化し、該範囲の上限を超える場合には得られるアクリロニトリル系繊維の伸度が十分に得られないことがある。
【0020】
かかるアクリロニトリル系樹脂は、例えば、アクリロニトリルと極性を有する側鎖・官能基を有するビニル単量体を共重合させる方法(以下方法〔1〕という)や、アクリロニトリルと反応性官能基を有するビニル単量体を共重合させた後、極性を有する側鎖・官能基を含有する反応性化合物をグラフト反応させる方法(以下方法〔2〕という)によって得ることができる。
【0021】
上記の方法〔1〕においては、得られるアクリロニトリル系樹脂とアクリロニトリル系重合体の親和性をより高める点から、極性を有する側鎖を有するビニル単量体として上述の化2で示される単量体を用いることが好ましい。該単量体の結合含有量としては、得られる共重合体の重量に対して、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは70〜85重量%であることが望ましい。なお、この化2でいう低級アルキル基とは、大概炭素数5以下、さらに実用的には3以下のものを指す。またアクリロニトリルとの共重合に際しては、上記のビニル単量体に加えて他のビニル化合物を共重合しても構わない。
【0022】
極性を有する側鎖を有するビニル単量体の好適な例としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートとポリエチレングリコールモノメチルエーテルの反応生成物などが挙げられ、化2で示される単量体の好適な例としては、メトキシポリエチレングリコール(30モル)メタアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(30モル)アクリレート、ポリエチレングリコール−2,4,6−トリス−1−フェニルエチルフェニルエーテルメタアクリレート(数平均分子量約1600)などが挙げられる。
【0023】
また、上記の方法〔2〕において、反応性官能基を有するビニル単量体の好適な例としては、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、グリシジルメタアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられ、好適な例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。
【0024】
上述してきたアクリロニトリル系樹脂を合成する方法としては、周知の重合手段を採用することができ、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などによって合成することが可能である。また、場合によっては、上述のごとく、可塑化成分を導入するためにグラフト反応を利用することもできる。
【0025】
次に、本発明のアクリロニトリル系繊維の製造方法としては、例えば、上述したアクリロニトリル系重合体を溶媒に溶解させた溶液に、必要に応じて上述した可塑化成分を混合して紡糸原液とし、かかる紡糸原液を紡出し、凝固、延伸、水洗、熱処理、捲縮付与、カットの各工程を経て、繊維を得る方法が挙げられる。この際、熱処理時の収縮率を調整することによって、破断時の伸度・強度を制御することができる。かかる熱処理時の収縮率としては、好ましくは40〜60%、より好ましくは45〜55%である。
【0026】
ここで、アクリロニトリル系重合体を溶解させる溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機系溶媒や硝酸、塩化亜鉛水溶液、チオシアン酸ナトリウム水溶液などの無機系溶媒を挙げることができる。
【0027】
次に本発明のパイル布帛について説明する。本発明のパイル布帛は、上述した本発明のアクリロニトリル系繊維を立毛部に有するものであって、立毛部が該繊維のみからなるものであってもよいが、通常は、木綿、羊毛、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維等の他の繊維と混用する場合が多い。この場合、立毛部における本発明のアクリロニトリル系繊維の含有割合としては、該繊維を用いた効果を得る観点から、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜60重量%である。また、本発明のアクリロニトリル系繊維の特徴を十分に活かし、リアルファーに近づけるという観点から、該繊維をガードヘアとして用いることが好ましい。なお、立毛部とは、基布を除く部分のことを言い、通常のパイル布帛であれば、ガードヘアとダウンヘアを構成する繊維を合わせた部分となる。
【0028】
かかる本発明のパイル布帛の製造方法としては、本発明のアクリロニトリル系繊維を少なくとも立毛部に用いる限り、特に限定されるものではなく、通常の方法が採用できる。例えば、ダブルラッセル編み機を用い、パイル布帛の原反を編み、次いでセンターカットを行った後、毛割り、ポリッシング、シャーリングを行う製造方法が挙げられる。
【0029】
また、本発明のアクリロニトリル系繊維は、上述したように引き伸ばしやすい特徴を有するものである。このため、パイル布帛への加工におけるポリッシング工程においても引き伸ばすことが可能である。そして、ポリッシング工程では、立毛部の先端部を中心に引き伸ばされるため、先細形状とすることができ、得られるパイル布帛はリアルファーにより近い触感を有するものとなる。
【0030】
ここで、上記の先細形状としては、後述する方法により求めたアクリロニトリル系繊維の根元部の幅に対する先端部の幅の割合が、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下であることが望ましい。このような先細形状となっていれば、得られるパイル布帛は先端部によるソフト性と根元部による立毛性を併せ持つものとなり、よりリアルファーに近いものとなる。
【0031】
また、上述のような先細形状とするためのポリッシング工程の温度条件としては、好ましくは180〜210℃、より好ましくは190〜205℃の条件が挙げられる。
【0032】
上述した本発明のパイル布帛は、じゅうたん、カーペット、敷物などの繊維製品に用いることができ、特に、コート、ブーツ、帽子、ファーマフラー、ファーティペットなどの衣料品に好適に使用することができる。
【実施例】
【0033】
以下、代表的な実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例に記載の%は、特にことわりのない限り重量パーセントである。
【0034】
[破断点の伸度および強度]
JIS L 1013に準拠して、150℃の雰囲気下で荷重−伸び曲線を測定した。得られた荷重−伸び曲線から破断点の伸度および強度を求めた。
【0035】
[扁平度]
試料から任意に採取した50本の繊維について、断面を光学顕微鏡で観察し、長径と短径を測定して長径/短径を算出し、50本の平均値を扁平度とした。なお、長径とは繊維断面における最大の径の長さを指し、短径とは長径と直交する最大の径の長さである。
【0036】
[繊度]
JIS L 1013に準拠して、温度20℃、湿度65%の条件下で繊度を測定した。
【0037】
[パイル布帛の製造]
実施例または比較例の繊維をガードヘア用繊維とし、市販のアクリル繊維(日本エクスラン工業株式会社製、K691、繊度3.3dtex)をダウンヘア用繊維として使用し、それぞれを染色し、柔軟剤および静電防止剤を付与した。次いで、実施例または比較例の繊維と市販のアクリル繊維を20:80の混用比率として、オープナーで開繊および混綿を行った後、カードマシンを用いてスライバーを作製した。得られたスライバーと地糸となるポリエステル繊維を用いて、ハイパイル編み機にて目付け1000g/m
2のパイル編地に編成し、編地裏を糊付けするバッキング処理を施した。続いてプレポリッシング処理とプレシャーリング処理を施し、パイルを形成するとともにガードヘアのパイル長を揃えた後、200℃設定のポリッシング処理で立毛部の先端部を中心に引き伸ばして先細加工し、シャーリング処理で最終的なパイル長に揃え、パイル布帛を作製した。
【0038】
[立毛部の繊維の根元部の幅に対する先端部の幅の割合]
作製したパイル布帛の任意の50箇所において、ガードヘアを構成する繊維を基布の直近の根元部分で切断する方法で、1箇所につき1本採取する。採取した各繊維について光学顕微鏡で繊維側面を観察し、先端部の幅と根元部の幅を測定して先端部の幅/根元部の幅の割合と求め、50本の平均値を算出した。
【0039】
[パイル布帛のソフト性]
手触りによる官能試験を行い、リアルファー(フォックス)を基準として、次の3段階で評価した。
◎:同程度以上の柔らかさである
○:同程度の柔らかさである
×:硬い
【0040】
[パイル布帛の立毛性]
立毛性を観察し、リアルファー(フォックス)を基準として、次の3段階で評価した。
◎:同程度以上の立毛性である
○:同程度の立毛性である
×:立毛性が劣っている
【0041】
[パイル布帛の毛先の割れ]
任意に選択したガードヘア繊維50本について先端部の割れを観察し、次の3段階で評価した。
◎:先端部に割れのある繊維の数が20%以下
○:先端部に割れのある繊維の数が20%を超え、30%以下
×:先端部に割れのある繊維の数が30%を超えている
【0042】
[実施例1]
アクリロニトリル88重量%、酢酸ビニル12重量%を懸濁重合することによりアクリロニトリル系共重合体を作製した。また、アクリロニトリル35重量%、メトキシポリエチレングリコール(9モル)メタクリレート65重量%を懸濁重合し、アクリロニトリル系樹脂(可塑剤A)を作製した。
【0043】
前記アクリロニトリル系共重合体をチオシアン酸ナトリウム水溶液に溶解させた後、その共重合体に対し、可塑剤Aを0.6重量%添加混合する方法で紡糸原液を作製した。該紡糸原液を扁平形状の孔を有するノズルから紡出し、凝固、水洗、延伸を施した。次に、スチームを用いた熱処理にて、該熱処理前後の収縮率が50%となるように収縮させ、乾燥させて、実施例1のアクリロニトリル系繊維を作製した。
【0044】
[実施例2]
実施例1において、熱処理の温度を変えて収縮率を40%にしたこと以外は同様にして、実施例2のアクリロニトリル系繊維を作製した。
【0045】
[実施例3]
実施例1において、熱処理の温度を変えて収縮率を60%にしたこと以外は同様にして、実施例3のアクリロニトリル系繊維を作製した。
【0046】
[実施例4]
実施例1において、添加混合する可塑剤Aの量を20重量%に変更すること以外は同様にして、実施例4のアクリロニトリル系繊維を作製した。
【0047】
[実施例5]
実施例1において、添加混合する可塑剤Aの量を0.2重量%に変更すること以外は同様にして、実施例5のアクリロニトリル系繊維を作製した。
【0048】
[実施例6]
実施例1において、可塑剤Aを添加混合しないこと以外は同様して、実施例6のアクリロニトリル系繊維を作製した。
【0049】
[実施例7]
アクリロニトリル27.5重量%、メトキシポリエチレングリコール(30モル)メタクリレート72.5重量%を懸濁重合し、アクリロニトリル系樹脂(可塑剤B)を作製した。実施例1において、添加混合する可塑剤の種類を、可塑剤Aから可塑剤Bに変更すること以外は同様にして、実施例7のアクリロニトリル系繊維を作製した。
【0050】
[実施例8〜11]
実施例1において、ノズルを変更すること以外は同様にして、実施例8〜11のアクリロニトリルル系繊維を作製した。
【0051】
[比較例1]
実施例1において、熱処理の温度を変えて収縮率を35%にすること以外は同様にして、比較例1のアクリロニトリル系繊維を作製した。該繊維を用いたパイル布帛は、先細形状が十分に得られずにソフト性が不十分なものとなった。
【0052】
[比較例2]
実施例1において、熱処理の温度を変えて収縮率を65%にすること以外は同様にして、比較例2のアクリロニトリル系繊維を作製した。該繊維を用いてパイル布帛の製造を試みたが、繊維の強度が低いため、ポリッシャー工程において繊維が切れ、得られたパイル布帛は外観に劣るものとなった。
【0053】
[比較例3]
実施例1において、添加混合する可塑剤Aを22重量%に変更して紡糸原液を作製した。該紡糸原液を紡出したところ、十分に凝固せず、アクリロニトリル系繊維が得られなかった。
【0054】
[比較例4および5]
実施例1において、ノズル変更すること以外は同様にして比較例4および5のアクリロニトリル系繊維を作製した。比較例4では扁平度が大きすぎるため、毛先の割れが多く、外観に劣るパイル布帛となった。比較例5では繊度が小さすぎるため、立毛性に劣るパイル布帛となった。
【0055】
[比較例6]
実施例1において、ノズルを変更して、120dtexのアクリロニトリリル系繊維の作製を試みたが、紡出した紡糸原液の凝固を充分にできず、アクリロニトリル系繊維が得られなかった。
【0056】
上述の実施例および比較例で得られた繊維について評価した結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【課題】合成繊維を用いたパイル布帛においては、リアルファーの風合いに近づけるために、繊維の先端部を先細にする試みが行われている。しかし、従来技術においては、パイル加工工程とは別に、先細加工を施す工程や設備が必要であるうえ、十分な先細化ができているとは言えず、満足しうる品質が得られていない。本発明の目的は、特別な工程や設備を必要とせず、通常のパイル加工工程の範囲内において先細加工ができ、かつ、リアルファーと遜色なく、実用上満足しうるソフトな風合いを得られる先細繊維を提供することにある。
【解決手段】150℃の雰囲気下において測定した荷重−伸び曲線における破断点の伸度が150〜900%であり、破断点の強度が0.03〜0.8cN/dtexであり、扁平度が1.5〜10であり、かつ、繊度が1.5〜100dtexであることを特徴とするアクリロニトリル系繊維。