(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646300
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】汚水浄化用の気泡発生装置及び汚水浄化方法
(51)【国際特許分類】
B01F 3/04 20060101AFI20200203BHJP
B01F 5/04 20060101ALI20200203BHJP
B01F 5/06 20060101ALI20200203BHJP
C02F 1/34 20060101ALI20200203BHJP
B01F 5/00 20060101ALI20200203BHJP
C02F 3/20 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
B01F3/04 Z
B01F5/04
B01F5/06
C02F1/34
B01F5/00 D
C02F3/20 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-24815(P2017-24815)
(22)【出願日】2017年2月14日
(65)【公開番号】特開2018-130653(P2018-130653A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】502217539
【氏名又は名称】株式会社アイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和宏
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−018330(JP,A)
【文献】
特開2011−121002(JP,A)
【文献】
特開2013−034953(JP,A)
【文献】
特開2003−251384(JP,A)
【文献】
特開2002−263678(JP,A)
【文献】
米国特許第04780217(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00− 5/26
C02F 1/20− 1/26
C02F 1/30− 1/38
C02F 1/70− 1/78
C02F 3/00− 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に垂直方向に配置される外筒と、
前記外筒の下部中央に配設されて空気供給源から供給された空気を前記外筒の前記垂直方向の上方に噴射する噴射口と、
前記噴射口から噴射する前記空気の気泡により発生する水流と気泡流との混在した流体を微細な前記気泡とする微細気泡発生手段と、
前記噴射口から噴射する前記空気に伴って前記外筒の長手方向に発生する水流の流路を絞る絞り部を備えたスロート部と、
を有する汚水浄化用の気泡発生装置であって、
前記微細気泡発生装置は、円筒状の本体と、円筒状の前記本体から中心に向かって突き出た複数の突起部とから構成される円柱体を軸方向に複数個配置し、複数の前記突起部の先端が向かい合う中央部にキャビテーション発生用の開口を形成するよう複数の前記突起部が所定の長さに設定され、
前記スロート部は、円錐状のテーパ面として形成された下端入口開口と上端出口開口とを有し、前記下端入口開口と前記上端出口開口との間に内径が絞られた断面円形の前記絞り部を有し、ノズルの前記噴射口が、前記スロート部の前記下端入口開口から、前記下端入口開口と前記絞り部の境界までの間に位置するように配置されるとともに、前記外筒内の閉じた領域内において前記絞り部の中心軸線と同軸上で垂直上向きに開口して配置され、さらに前記スロート部の前記絞り部の開口面積を前記ノズルの前記噴射口の開口面積より大きく構成し、前記閉じた領域内において前記噴射口から前記垂直方向の上方へ噴射される前記気泡が浮力により前記スロート部の前記絞り部に向かって上昇し流れ込むことで、前記ノズルの外側の水が前記スロート部の前記絞り部に引き込まれて水流が加速され、前記微細気泡発生装置の前記開口の中心へ至る、ことを特徴とする、汚水浄化用の気泡発生装置。
【請求項2】
前記噴射口の前記開口面積をFn、前記スロート部の前記開口面積をFtとして、Fn/Ftの値を0.1〜0.4の範囲内に設定したことを特徴とする請求項1に記載の汚水浄化用の気泡発生装置。
【請求項3】
前記開口は最小直径もしくは最小通過幅を2mmとしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の汚水浄化用の気泡発生装置。
【請求項4】
前記微細気泡発生手段は、互いに隣接する前記円柱体においては、軸方向に見た前記突起部が互いに重ならないように配置されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の汚水浄化用の気泡発生装置。
【請求項5】
空気供給源から供給された空気を噴射口から汚水中において垂直方向の上方に噴射し、噴射された前記空気により発生する水流と気泡流との混在した流体を前記汚水中に配置された微細気泡発生装置に導入し、前記流体を前記微細気泡発生装置により微細気泡とすることで、前記汚水中に存在する好気性菌により汚れ成分を浄化させる汚水浄化方法であって、
前記噴射口と前記微細気泡発生装置との間の閉ざされた領域にスロート部を配置し、
前記微細気泡発生装置は、円筒状の本体と、円筒状の前記本体から中心に向かって突き出た複数の突起部とから構成され、複数の前記突起部の先端が向かい合う中央部にキャビテーション発生用の開口を形成するよう設定し、
前記スロート部を、円錐状のテーパ面として形成された下端入口開口と上端出口開口とを有し、前記下端入口開口と前記上端出口開口との間に内径が絞られた断面円形の絞り部を有する構成とし、ノズルの前記噴射口が、前記スロート部の前記下端入口開口から、前記下端入口開口と前記絞り部の境界までの間に位置するように配置するとともに、前記外筒内の閉じた領域内において前記絞り部の中心軸線と同軸上で垂直上向きに開口して配置し、さらに前記スロート部の前記絞り部の開口面積を前記ノズルの前記噴射口の開口面積より大きくし、前記閉じた領域内において前記噴射口から前記垂直方向の上方へ噴射される前記気泡が浮力により前記スロート部の前記絞り部に向かって上昇し流れ込むことで、前記ノズルの外側の水が前記スロート部の前記絞り部に引き込まれて水流が加速されるように構成し、前記噴射口から噴射する前記垂直方向の上方の前記気泡により前記水流と前記気泡流との混在した前記流体を、前記閉ざされた領域内で前記微細気泡発生装置の前記開口の中心部に供給し、前記微細気泡発生装置において前記キャビテーション発生を促進することを特徴とする、汚水浄化方法。
【請求項6】
前記噴射口より噴射される前記気泡流によって、前記微細気泡発生装置を通過する前記液体の局所的な速度が毎秒5m以上としたことを特徴とする請求項5に記載の汚水浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉱物油や植物油などで汚れた水や汚泥水の排水時の浄化などにおいて、好気性菌を利用した浄化を行なう装置等に使用する汚水浄化用の気泡発生装置
及び汚水浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水を使用する工場等において鉱物油や植物油などで汚れた水の浄化には、その汚れた水に好気性菌等を作用させ、この好気性菌等を繁殖させることで汚れた成分を消化させることにより処理する方法が一般的に使用されている。このような汚水の浄化装置においては、好気性菌等を繁殖させるために、汚水に微細な気泡を混合して酸素呼吸を促し、好気性菌等の生存環境を整えることが必要とされる。
【0003】
このような汚水中への微細な気泡の混合や発生を行う従来の装置は、浄化しようとする汚水等の中に配置され、円柱等のパイプの中で下端部に設けた空気排出口から空気を排出して気泡の上昇流を生じさせる。そして当該気泡流によって生じる上方への水流を螺旋状の羽などで渦巻き状の水流とし、上昇水流中で気泡を混入し、また同時にパイプ内部に配置された多数の突起を有する気泡微細化手段で気泡を微細化し、汚水への浄化を促進するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3677516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の気泡混合装置等においては、長年に亘り、渦巻き水流を形成することで水流の撹拌が促進されると共に、気泡の汚水への混合が促進され、汚水への気泡の発生と混合が効率よく行われると考えられていた。汚水等の浄化においては、水流中で空気(気泡)を突起物に衝突させ、これにより気泡を微細化する方法が一般的であるが、汚水を更に効果的に浄化するためには、汚水等の中においてキャビテーション等を発生させ、これを水圧の変化で気泡崩壊させることで、汚水等の浄化がより効果的で効率的に行なえることを発見した。汚水等の中でキャビテーション等を発生させるためには、渦巻き水流を利用したり、円筒の中を流れる水流を分散したりするのではなく、水流を早め、かつ水流中に圧力変化を起こす必要がある。このような観点でみると、従来の気泡混合装置等における渦巻き水流では、かえって水流が遅くなり汚水等における気泡の発生を阻害しているものである。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、汚水に対する気泡噴射を低運転コストで効率よく行なえる気泡発生装置
及び汚水浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するための本発明の気泡発生装置は、水中に垂直方向に配置される外筒と、前記外筒の下部中央に配設されて空気供給源から供給された空気を前記外筒の前記垂直方向の上方に噴射する噴射口と、前記噴射口から噴射する前記空気
の気泡により発生する水流と気泡流との混在した流体を微細な前記気泡とする微細気泡発生手段と、前記噴射口から噴射する前記空気に伴って前記外筒の長手方向に発生する水流の流路を絞る絞り部を備えたスロート部と、を有する汚水浄化用の気泡発生装置であって、前記微細気泡発生装置は、円筒状の本体と、円筒状の前記本体から中心に向かって突き出た複数の突起部とから構成される
円柱体を軸方向に複数個配置し、複数の前記突起部の先端が向かい合う中央部にキャビテーション発生用の開口を形成するよう複数の前記突起部が所定の長さに設定され、前記スロート部は、円錐状のテーパ面として形成された下端入口開口と上端出口開口とを有し、前記下端入口開口と前記上端出口開口との間に内径が絞られた断面円形の前記絞り部を有し、ノズルの前記噴射口が、前記スロート部の前記下端入口開口から、前記下端入口開口と前記絞り部の境界までの間に位置するように配置されるとともに、前記外筒内の閉じた領域内において前記絞り部の中心軸線と同軸上で垂直上向きに開口して配置され、さらに前記スロート部の前記絞り部の開口面積を前記ノズルの前記噴射口の開口面積より大きく構成し、前記閉じた領域内において前記噴射口から前記垂直方向の上方へ噴射される前記気泡が浮力により前記スロート部の前記絞り部に向かって上昇し流れ込むことで、前記ノズルの外側の水が前記スロート部の前記絞り部に引き込まれて水流が加速され、前記微細気泡発生装置の前記開口の中心
へ至ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気泡流の噴射口と微細気泡発生手段との間にスロート部を配設しているので、噴射口から噴射された気泡流が浮力と慣性力でスロート部に流れ込む勢いによって噴射口の周囲の水がスロート部に引き込まれ、当該水流と気泡流がスロート部内で混合流となってその流路が絞られることで、水流と気泡流の混合上昇流が加速する。そして加速した気泡群が上方の微細気泡発生手段に高速で衝突し、この衝突で気泡群が細かく破裂すると共に、この細かな破裂気泡が加速による圧力低下に伴ってさらに破裂して細かい微細気泡となる。この結果強力なキャビテーションが効率的に発生し、キャビテーションの水蒸気泡の発生と消滅に伴う機械的衝撃力によって細菌や微生物の細胞膜が破砕してこれらを死滅・殺菌することで、汚水などを効率よく浄化することができる。またスロート部の入口に向かって水流が加速するので噴射口の出口圧力が低下し、これにより噴射口に空気を供給するブロワの消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の実施形態の気泡発生装置の側断面図である。
【
図1B】本発明の実施形態の気泡発生装置のスロート部の断面図である。
【
図3】同装置の他の一部が破断された平面図である。
【
図4】同装置の更に他の一部が破断された平面図である。
【
図5】同装置の更に他の一部が破断された平面図である。
【
図8】同装置の円柱体の突起部の拡大側面図である。
【
図12】本発明の実施形態における汚水などの水流と円柱体との関係を示す概略説明図である。
【
図13】本発明の実施形態における汚水などの水流と円柱体との関係を示す説明図である。
【
図14】ブロワのインバータ制御周波数とノズル配管内圧力の相関図である。
【
図16】スロート部の有無による濁度の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態の気泡発生装置について説明する。
図1Aは本発明の実施形態の気泡発生装置の側断面図で、
図1Bは当該気泡発生装置のスロート部の断面図である。また
図2から
図5は同装置の一部が破断された平面図である。
【0011】
気泡発生装置1は、送風ブロア等の公知の空気供給源(図示せず)に接続されるノズル2の噴射口2aが下端部に設けられ、当該噴射口2aより
噴射される空気を微細化する微細気泡発生手段3が噴射口2aより上方に配置されている。この気泡発生装置1は、汚水等の液体を保持・浄化する浄化槽4内に固定具5等で固定されており、汚水等の液体中で使用される。微細気泡発生手段3は、円筒状の外筒6の内部に円柱体7が外筒6の軸方向に複数個重ねて配置されている。
【0012】
ノズル2と微細気泡発生手段3との間に、
図1A、
図1Bのようにスロート部30が配設されている。このスロート部30は樹脂等で形成された円筒状部材を外筒6の内周面にネジ等で固定することで配設している。スロート部30は円錐状のテーパ面として形成された下端入口開口30aと上端出口開口
30cとを有し、当該入口開口30aと出口開口
30cとの間
に内径が絞られた断面円形の絞り部30b
を設けた構成としている。そして、前記ノズル2の噴射口2aが入口開口30aと絞り部30bの境界付近で絞り部30bの中心軸線と同軸状で垂直上向きに開口して配置されている。
【0013】
円柱体7は、円筒状の本体8と、本体8から中心に向かって突き出た複数の突起部9とから構成されている。
図1Aにおいては、円柱体7が噴射口2aより
噴射される空気が上昇する位置(噴射口2aより上方)に複数個配置される構成に加え、さらに
図2に示す形状の円柱体10を積み重ねて配置している。
【0014】
また、微細気泡発生手段3は円柱体7、10を所定の間隔で配置するためのスペーサ11をさらに備えている。スペーサ11は、突起部9のない本体8のみで構成されている。このスペーサ11は円柱体10を積み重ねて配置する際の間隔の維持や、円柱体10が多いと詰まりなどを起こす場合の詰まり防止、あるいは円柱体10を積み重ねる数を少なくして、所定の全体の高さを維持する際に使用する。
【0015】
円筒状の外筒6と、その内部に配置され、スペーサ11を適宜挟んで外筒6の軸方向に複数個積み重ねられた円柱体7、10とは、上下の2箇所(X,Y)において、各4本のリベット12によって相互に固定されている。そして、微細気泡発生手段3を通過する汚水(液体)の速度が毎秒5m以上となるよう、噴射口2aより
噴射される空気の圧力が調整される構成とすることが望ましい。また、互いに隣接する円柱体7は、円柱体7、10の軸方向に見た状態で、突起部9が互いに重ならないように、回転方向に22.5度ずらせて配置される。
【0016】
次に
図6から
図11により、円柱体7の詳細な構造を説明する。円柱体7は、円筒状の本体8と、本体8から中心に向かって突き出た複数の突起部9とから構成されている。この突起部9はその各先端が向かい合う中央部Cにおいて、先端9aが鋭角に成形され、複数の突起部9の先端9aによって、この中央部Cにキャビテーション発生用の開口13を形成するように、それぞれの突起部9が所定の長さに設定されている。
【0017】
また、この開口13は、突起部9の先端9aが向かい合う中央部Cにおいて先端が鋭角に形成されているので、開口13は、円柱体7の軸方向上方に向かってその径が小さくなる略円錐形(本実施形態では正確には多角円錐状となる、特に
図7参照)を構成する。また、突起部9にはその外周に、半径方向の切欠き14a、軸方向切欠き14bおよび突起15が形成されている。
【0018】
さらに円柱体7の本体8には、本体8相互の位置を使用時に固定する位置決め穴16と固定用の突起17とが軸方向に対抗する二つの面に形成されている。本体8の内壁には、気泡発生をさらに促進する切欠き14bを備えた内壁突起18が形成されている。
【0019】
次に、本実施形態における微細気泡発生手段3における気泡の発生作用を説明する。
図1Bのようにノズル2の噴射口2aから水中に気泡が上向き噴射されると、当該気泡がその浮力でスロート部30の絞り部30bに向かって上昇する。そしてこの気泡流が絞り部30bに流れ込む作用で、ノズル2の外側の水がスロート部30の絞り部30bに引き込まれていく。したがって、気泡流が上昇水流の勢い(流速)を加速し、水流と気泡流が混在した流体が上昇しながら上方の微細気泡発生手段3に流れ込む。
【0020】
図12および
図13は、気泡を含んだ汚水などの水流(図では上方へ向かう)と円柱体7との関係を示すもので、
図12、13の上方に向かう水流は、円柱体7によって形成される円筒状の水路を上方へと流れるが、円筒状の水路内では、中央部Cの開口13に集まろうとする。
【0021】
そして中央に集まる流体は、多角円錐状の開口13に呼び込まれ、通過流速が、この開口13を通過する際に早くなる。そして流速が早くなれば、その部分における圧力が低下する(ベルヌーイの定理による)。このように圧力の低下した流体中の空気の一部は、圧力の低下に伴い破裂してさらに細かい微細気泡となる。すなわちキャビテーションが発生する。
【0022】
この場合、開口13は、その直径が小さいほど通過する液体の流速が増加し、より効果的にキャビテーションが起こって気泡の発生が促進されるが、一方では汚水等には、ごみや泥が混入しているため、直径もしくは通過幅が小さいと詰まりが生じる。このため、この開口13は最小で2mm程度必要である。また、通過する流体の局所の速度は毎秒5m以上が必要である。
【0023】
この後、開口13を通過した水流は、一気に開放されて、気泡崩壊、すなわち多数の気泡Bが発生し、微細化される。また、中央部Cから周辺に逃げた流体は、突起部9と衝突する。
図13は、突起部9とこれを通過する流体との関係を示す。
【0024】
突起部9の外周の半径方向の切欠き14aや軸方向切欠き14bによって渦キャビテーションTが発生し、また突起15によって小さな乱流が起こり、渦キャビテーションTおよびクラウドKが発生する。このように、半径方向の切欠き14aや軸方向切欠き14bを設けることで、
図12に示すように微細な気泡Bの発生が促進される。
【0025】
図14はノズル2に加圧空気を供給するブロワのインバータ制御周波数と、当該ブロワとノズル2とを接続する配管内の圧力との相関図である。ノズル2の噴射口2aは水深1.75m(水圧17.2kPa)に配置し、ブロワの周波数を40Hzから60Hzまで10Hz刻みで5段階で変化させた。図中の●印がスロート部30を装着しない場合の配管内圧力、□印がスロート部30を装着した場合の配管内圧力である。
【0026】
図より明らかなように、ブロワ周波数が増大するにつれて配管内圧力も増大するが、スロート部30を装着することで、スロート部30非装着の場合に比べて配管内圧力が低下する。例えばブロワ周波数50Hzでは水圧(17.2kPa)よりも低い配管内圧力となる。これは前述したように絞り部30bに水が引き込まれていくことで水流が加速した結果、ノズル2の噴射口2aの出口圧が低下したためであり、本装置の見かけの圧力損失がゼロまたはそれ以下となっていることを表す。よって、当該圧力低下によりブロワの消費電力を低減することができる。
【0027】
なお、スロート部30の装着と非装着の圧力差は、噴射口2aの開口面積Fnとスロート部30の絞り部30bの開口面積Ftの比率Fn/Ftによって変わる。スロート部30の装着により圧力低下を稼ぐには、比率Fn/Ftを0.1〜0.4の範囲(望ましくは0.3前後)に調整するとよい。比率Fn/Ft=0.3程度で、最も大きい圧力低下を実現することができ、ブロワの消費電力を最小限にして運転コストを低減することができる。
【0028】
図15Aと
図15Bは、微細気泡発生手段3によって発生した気泡の径と個数を、スロート部30の有無で比較したグラフ図である。この図から明らかなように、スロート部30を装着することで確実に気泡発生数が増大することが分かる。特に気泡径7μmのものは3倍以上もの気泡発生数を実現することができることが分かる。
【0029】
気泡発生数が増大すると、浄化槽4内の濁度も増大する。
図16はスロート部30の有無で濁度を比較した図であり、本発明のスロート部30を装着することで濁度が2倍以上に増大することが分かる。このように大量の気泡発生と強力なキャビテーションによる水蒸気泡の発生・消滅で機械的衝撃力を発生させ、これによって細菌や微生物の細胞膜を破砕して、死滅、殺菌する。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えばスロート部30の形状は必ずしも絞り部30bが図示するよう比較的短いものである必要はなく、その長さは必要に応じて種々変更可能である。またノズル2の噴射口2aはスロート部30の下端入口開口30aの付近に配置すればよく、必ずしも図示するように入口開口30aと絞り部30bの境界付近に配置する必要はない。また噴射口2aの開口面積Fnとスロート部30の絞り部30bの開口面積Ftの比率Fn/Ftは、必ずしも0.3程度である必要はなく、0.1〜0.4の範囲で適宜変更可能である。また、スロート部30は樹脂等の円筒状部材を外筒6内に固定して構成する他、当該円筒状部材を使用せずに外筒6自体に絞り加工を施したり、外筒6自体を絞り部を有する形状に鋳造したり、外筒6を太い管と細い管とをテーパ面や滑らかな異径継手でつなぎ合わせて製造したりする等の方法で形成することも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 気泡発生装置
2 ノズル
2a 噴射
3 微細気泡発生手段
4 浄化槽
5 固定具
6 外筒
7、10 円柱体
8 本体
9、19 突起部
10 円柱体
11 スペーサ
12 リベット
13、20 開口
14a 半径方向の切欠き
14b 軸方向切欠き
15 突起
16 位置決め穴
17 固定用の突起
18 内壁突起
21 エッジ
30 スロート部
30a 入口開口
30b 絞り部
30c 出口開口
C 中央部
K クラウド
T 渦キャビテーション