(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一方の面に帯状のめっき領域が長手方向に沿って延びるようにめっき領域以外の非めっき領域をマスキングした帯板状の条材をめっき浴内に連続的に送給してめっき領域に電気めっきを施す部分めっき方法において、めっき領域の長手方向に延びる周縁部とアノードとの間の電流密度を低減させる帯板状の遮蔽板を、めっき浴内のめっき領域の長手方向に延びる周縁部に対向するようにめっき領域とアノードとの間に配置するとともに、条材とアノードの間隔の変動を抑制する間隔変動抑制部材を、条材の少なくとも一方の面の非めっき領域に対向するように配置し、めっき領域が複数の帯状のめっき領域からなるとともに非めっき領域が複数の帯状の非めっき領域からなり、これらの複数の帯状のめっき領域と非めっき領域が幅方向に交互に配置され、遮蔽板が複数の帯板状の遮蔽板からなり、これらの複数の帯板状の遮蔽板を、複数の帯状のめっき領域の各々の長手方向に延びる周縁部に対向するように、条材とアノードとの間に配置し、複数の帯状のめっき領域の少なくとも一つの帯状のめっき領域が他の帯状のめっき領域よりも幅が狭い幅狭めっき領域であり、帯板状の幅狭めっき領域用遮蔽板を、めっき浴内の幅狭めっき領域の全長の一部にわたって、めっき浴内の幅狭めっき領域の長手方向に延びる幅方向中央部に対向するように、条材とアノードとの間に配置して、条材のめっき領域のめっき時間の一部において、条材とアノードとの間の電流密度を低減することを特徴とする、部分めっき方法。
前記間隔変動抑制部材が、前記遮蔽板に形成された螺子穴に螺合する螺子からなり、この螺子の螺子頭を前記帯板材の非めっき領域に対向するように配置することを特徴とする、請求項1または2に記載の部分めっき方法。
少なくとも一方の面に帯状のめっき領域が長手方向に沿って延びるようにめっき領域以外の非めっき領域をマスキングした帯板状の条材をめっき槽内に連続的に送給してめっき領域に電気めっきを施す部分めっき装置において、帯板状の遮蔽板が、めっき槽内のめっき領域の長手方向に延びる周縁部に対向するように条材の搬送路とアノードとの間に配置されているとともに、条材の搬送路とアノードの間隔の変動を抑制する間隔変動抑制部材が、条材の少なくとも一方の面の非めっき領域に対向するように配置され、めっき領域が複数の帯状のめっき領域からなるとともに非めっき領域が複数の帯状の非めっき領域からなり、これらの複数の帯状のめっき領域と非めっき領域が幅方向に交互に配置され、遮蔽板が複数の帯板状の遮蔽板からなり、これらの複数の帯板状の遮蔽板が、複数の帯状のめっき領域の各々の長手方向に延びる周縁部に対向するように、条材の搬送路とアノードとの間に配置され、複数の帯状のめっき領域の少なくとも一つの帯状のめっき領域が他の帯状のめっき領域よりも幅が狭い幅狭めっき領域であり、帯板状の幅狭めっき領域用遮蔽板が、めっき槽内の幅狭めっき領域の全長の一部にわたって、めっき槽内の幅狭めっき領域長手方向に延びる幅方向中央部に対向するように、条材の搬送路とアノードとの間に配置されていることを特徴とする、部分めっき装置。
前記間隔変動抑制部材が、前記遮蔽板に形成された螺子穴に螺合する螺子からなり、この螺子の螺子頭が前記帯板材の非めっき領域に対向するように配置されていることを特徴とする、請求項6乃至8のいずれかに記載の部分めっき装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、帯状のめっき領域と非めっき領域が長手方向に沿って延びるように非めっき領域をマスキングした帯板状の条材をめっき浴内に連続的に送給して、条材に帯状に電気めっきを施す場合には、特許文献1の遮蔽板を使用しても、帯状のめっき領域の長手方向に延びる周縁部に電流が集中し易くなるのを抑えるのが困難であり、各々の帯状のめっき領域の幅方向のめっきの膜厚分布を均一にするのが困難である。また、めっき浴内で搬送される帯板状の条材が長手方向(搬送方向)に対して横揺れすると、条材のめっき領域とアノードとの間隔が所定の間隔以上に変動して、条材の主に長手方向のめっきの膜厚分布を均一にするのが困難になり、めっきの膜質のばらつきが生じ易い。
【0006】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、帯状のめっき領域と非めっき領域が長手方向に沿って延びるように非めっき領域をマスキングした帯板状の条材に帯状に電気めっきを施す場合に、帯状のめっき領域の長手方向および幅方向のめっきの膜厚分布を略均一にするとともにめっきの膜質のばらつきを抑制することができる、部分めっき方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、少なくとも一方の面に帯状のめっき領域が長手方向に沿って延びるようにめっき領域以外の非めっき領域をマスキングした帯板状の条材をめっき浴内に連続的に送給してめっき領域に電気めっきを施す部分めっき方法において、めっき領域の長手方向に延びる周縁部とアノードとの間の電流密度を低減させる帯板状の遮蔽板を、めっき浴内のめっき領域の長手方向に延びる周縁部に対向するようにめっき領域とアノードとの間に配置するとともに、条材とアノードの間隔の変動を抑制する間隔変動抑制部材を、条材の少なくとも一方の面の非めっき領域に対向するように配置することにより、帯状のめっき領域の長手方向および幅方向のめっきの膜厚分布を略均一にするとともにめっきの膜質のばらつきを抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明による部分めっき方法は、少なくとも一方の面に帯状のめっき領域が長手方向に沿って延びるようにめっき領域以外の非めっき領域をマスキングした帯板状の条材をめっき浴内に連続的に送給してめっき領域に電気めっきを施す部分めっき方法において、めっき領域の長手方向に延びる周縁部とアノードとの間の電流密度を低減させる帯板状の遮蔽板を、めっき浴内のめっき領域の長手方向に延びる周縁部に対向するようにめっき領域とアノードとの間に配置するとともに、条材とアノードの間隔の変動を抑制する間隔変動抑制部材を、条材の少なくとも一方の面の非めっき領域に対向するように配置することを特徴とする。
【0009】
この部分めっき方法において、間隔変動抑制部材は、条材とアノードの間隔の許容変動量を調整する調整機構を有するのが好ましい。また、間隔変動抑制部材は、遮蔽板に形成された螺子穴に螺合する螺子からなり、この螺子の螺子頭を帯板材の非めっき領域に対向するように配置するのが好ましい。また、遮蔽板は、めっき浴内のめっき領域の略全長にわたって延びているのが好ましい。
【0010】
上記の部分めっき方法において、めっき領域が複数の帯状のめっき領域からなるとともに非めっき領域が複数の帯状の非めっき領域からなり、これらの複数の帯状のめっき領域と非めっき領域が幅方向に交互に配置され、遮蔽板が複数の帯板状の遮蔽板からなり、これらの複数の帯板状の遮蔽板を、複数の帯状のめっき領域の各々の長手方向に延びる周縁部に対向するように、条材とアノードとの間に配置するのが好ましい。
【0011】
この場合、複数の帯状のめっき領域の少なくとも一つの帯状のめっき領域が他の帯状のめっき領域よりも幅が狭い幅狭めっき領域であり、帯板状の幅狭めっき領域用遮蔽板を、めっき浴内の幅狭めっき領域の全長の一部にわたって、めっき浴内の幅狭めっき領域の長手方向に延びる幅方向中央部に対向するように、条材と前記アノードとの間に配置して、条材のめっき領域のめっき時間の一部において、条材とアノードとの間の電流密度を低減するのが好ましい。
【0012】
また、本発明による部分めっき装置は、少なくとも一方の面に帯状のめっき領域が長手方向に沿って延びるようにめっき領域以外の非めっき領域をマスキングした帯板状の条材をめっき槽内に連続的に送給してめっき領域に電気めっきを施す部分めっき装置において、帯板状の遮蔽板が、めっき槽内のめっき領域の長手方向に延びる周縁部に対向するように条材の搬送路とアノードとの間に配置されているとともに、条材の搬送路とアノードの間隔の変動を抑制する間隔変動抑制部材が、条材の少なくとも一方の面の非めっき領域に対向するように配置されていることを特徴とする。
【0013】
この部分めっき装置において、間隔変動抑制部材は、条材の搬送路とアノードの間隔の許容変動量を調整する調整機構を有するのが好ましい。また、間隔変動抑制部材は、遮蔽板に形成された螺子穴に螺合する螺子からなり、この螺子の螺子頭が帯板材の非めっき領域に対向するように配置されているのが好ましい。また、遮蔽板は、めっき槽内のめっき領域の略全長にわたって延びているのが好ましい。
【0014】
上記の部分めっき装置において、めっき領域が複数の帯状のめっき領域からなるとともに非めっき領域が複数の帯状の非めっき領域からなり、これらの複数の帯状のめっき領域と非めっき領域が幅方向に交互に配置され、遮蔽板が複数の帯板状の遮蔽板からなり、これらの複数の帯板状の遮蔽板が、複数の帯状のめっき領域の各々の長手方向に延びる周縁部に対向するように、条材の搬送路とアノードとの間に配置されているのが好ましい。
【0015】
この場合、複数の帯状のめっき領域の少なくとも一つの帯状のめっき領域が他の帯状のめっき領域よりも幅が狭い幅狭めっき領域であり、帯板状の幅狭めっき領域用遮蔽板が、めっき槽内の幅狭めっき領域の全長の一部にわたって、めっき槽内の幅狭めっき領域長手方向に延びる幅方向中央部に対向するように、条材の搬送路とアノードとの間に配置されているのが好ましい。
【0016】
また、本発明によるめっき材の製造方法は、上記の部分めっき方法によって帯状に電気めっきを施した条材を切断して、複数のめっき材を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、帯状のめっき領域と非めっき領域が長手方向に沿って延びるように非めっき領域をマスキングした帯板状の条材に帯状に電気めっきを施す場合に、帯状のめっき領域の長手方向および幅方向のめっきの膜厚分布を略均一にするとともにめっきの膜質のばらつきを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による部分めっき方法の実施の形態では、少なくとも一方の面に帯状のめっき領域が長手方向に沿って延びるようにめっき領域以外の非めっき領域をマスキングした帯板状の条材を(めっき槽内にめっき液を含む)めっき浴内に連続的に送給し、めっき浴内の(カソードとしての)条材とアノードとの間に電流を流して条材のめっき領域に電気めっきを施す部分めっき方法において、めっき領域の長手方向に延びる周縁部とアノードとの間の電流密度を低減させる帯板状の遮蔽板を、めっき浴内のめっき領域の(好ましくは略全長にわたって)長手方向に延びる周縁部に対向するようにめっき領域とアノードとの間に配置するとともに、条材とアノードの間隔の変動を抑制する間隔変動抑制部材を、条材の少なくとも一方の面の非めっき領域に対向するように配置する。
【0020】
この部分めっき方法において、間隔変動抑制部材は、条材とアノードの間隔の許容変動量を調整する調整機構を有するのが好ましい。また、間隔変動抑制部材は、遮蔽板に形成された螺子穴に螺合する螺子からなり、この螺子の螺子頭を帯板材の非めっき領域に対向するように配置するのが好ましい。
【0021】
上記の部分めっき方法において、めっき領域が複数の帯状のめっき領域からなるとともに非めっき領域が複数の帯状の非めっき領域からなる場合には、これらの複数の帯状のめっき領域と非めっき領域が幅方向に交互に配置され、遮蔽板が複数の帯板状の遮蔽板からなり、これらの複数の帯板状の遮蔽板を、複数の帯状のめっき領域の各々の長手方向に延びる周縁部に対向するように、条材とアノードとの間に配置するのが好ましい。
【0022】
この場合、複数の帯状のめっき領域の少なくとも一つの帯状のめっき領域が他の帯状のめっき領域よりも幅が狭い幅狭めっき領域である場合には、帯板状の幅狭めっき領域用遮蔽板を、めっき浴内の幅狭めっき領域の全長の一部にわたって、めっき浴内の幅狭めっき領域の長手方向に延びる幅方向中央部に対向するように、条材と前記アノードとの間に配置して、条材のめっき領域のめっき時間の一部において、条材とアノードとの間の電流密度を低減するのが好ましい。
【0023】
また、本発明による部分めっき装置の実施の形態では、少なくとも一方の面に帯状のめっき領域が長手方向に沿って延びるようにめっき領域以外の非めっき領域をマスキングした帯板状の条材をめっき槽内に連続的に送給してめっき領域に電気めっきを施す部分めっき装置において、帯板状の遮蔽板が、めっき槽内のめっき領域の(好ましくは略全長にわたって)長手方向に延びる周縁部に対向するように条材の搬送路とアノードとの間に配置されているとともに、条材の搬送路とアノードの間隔の変動を抑制する間隔変動抑制部材が、条材の少なくとも一方の面の非めっき領域に対向するように配置されている。
【0024】
この部分めっき装置において、間隔変動抑制部材は、条材の搬送路とアノードの間隔の許容変動量を調整する調整機構を有するが好ましい。また、間隔変動抑制部材は、遮蔽板に形成された螺子穴に螺合する螺子からなり、この螺子の螺子頭が帯板材の非めっき領域に対向するように配置されているのが好ましい。
【0025】
上記の部分めっき装置において、めっき領域が複数の帯状のめっき領域からなるとともに非めっき領域が複数の帯状の非めっき領域からなる場合には、これらの複数の帯状のめっき領域と非めっき領域が幅方向に交互に配置され、遮蔽板が複数の帯板状の遮蔽板からなり、これらの複数の帯板状の遮蔽板が、複数の帯状のめっき領域の各々の長手方向に延びる周縁部に対向するように、条材の搬送路とアノードとの間に配置されているのが好ましい。
【0026】
この場合、複数の帯状のめっき領域の少なくとも一つの帯状のめっき領域が他の帯状のめっき領域よりも幅が狭い幅狭めっき領域である場合には、帯板状の幅狭めっき領域用遮蔽板が、めっき槽内の幅狭めっき領域の全長の一部にわたって、めっき槽内の幅狭めっき領域長手方向に延びる幅方向中央部に対向するように、条材の搬送路とアノードとの間に配置されているのが好ましい。
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明による部分めっき方法およびその装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
図1Aおよび
図1Bに示すように、本実施の形態の部分めっき装置10は、(銀めっき液などの)めっき液12が供給されるめっきセル14と、このめっきセル14を内部に収容してめっきセル14からオーバーフローしためっき液12を貯留するオーバーフロー槽16とからなるめっき槽18を備えている。
【0029】
めっき槽18のめっきセル14の幅方向両側の側壁の上部には、めっきセル14内の所定量以上のめっき液12を矢印Aのようにオーバーフローさせてオーバーフロー槽16内に貯留させるための開口部14bが形成されている。
【0030】
めっき槽18のオーバーフロー槽16の底部の溜まっためっき液12は、ポンプ20により矢印Bのように流れてリザーブ槽22に貯留され、ポンプ20により矢印Cのように、めっき槽18のめっきセル14内に供給されて循環するようになっている。
【0031】
めっき槽18のめっきセル14の長手方向両端の側壁の幅方向中央部の上部には、それぞれ(銅条材などの導電性の金属)条材24の導入口および導出口としての一対のスリット14aが側壁を貫通して形成されているとともに、オーバーフロー槽16の長手方向両端の側壁の幅方向中央部の上部には、それぞれ条材24の導入口および導出口としての一対のスリット16aが(それぞれスリット14aに対向して)側壁を貫通して形成されており、これらのスリット14aおよび16aは、帯板状の条材24の幅方向が鉛直方向になるように鉛直方向に延びている。また、めっき槽18のめっきセル14とオーバーフロー槽16の間には、オーバーフロー槽16内の条材24の両端部(条材24のオーバーフロー槽16の導入口からめっきセル14の導入口までの部分とめっきセル14の導出口からオーバーフロー槽16の導出口までの部分)において条材24の下端を支持して条材24の上下方向の位置決めをするための(条材14の搬送方向に回転可能な)一対の支持ロール19がオーバーフロー槽16の底面に取り付けられている。
【0032】
めっき槽18のめっきセル14内には、めっきセル14内に送給された条材24の両面の各々に対向するように一対のアノード26が設けられている。また、めっき槽18のオーバーフロー槽16の外側には、その長手方向両端の側壁の一対のスリット16aの各々に対向して給電板(または給電ロール)28が設けられている。アノード26は、めっき槽18の外部に設けられた整流器(外部直流電源)30のプラス(+)側に接続され、給電板(または給電ロール)28は、整流器30のマイナス(−)側に接続されて、給電板28に当接しながら(または給電ロール28間に挟持されながら)矢印D方向にめっき槽16内に送給される(カソードとしての)条材24とアノード26との間で電流を流すことができるようになっている。
【0033】
めっき槽16内に送給される条材24の両面の各々には、複数(図示した実施の形態では2本)のマスキングテープ32が互いに離間して平行に条材24に沿って延びるように貼り付けられて帯状の非めっき領域が形成され、条材24の表面のマスキングテープ32が貼り付けられていないストライプ状の部分(複数の帯状のめっき領域)にめっき皮膜34が形成されるようになっている。
【0034】
めっき槽18のめっきセル14内には、導入口側と導出口側の各々において、条材24の一方の面に対向するように、めっきセル14の底面から鉛直方向上方に延びた一対の支柱36が設けられているとともに、条材24の他方の面に対向するように、めっきセル14の底面から鉛直方向上方に延びた一対の支柱36が設けられている。条材24の両面の各々に対向するように設けられた一対の支柱36には、めっきセル14内の条材24の略全長にわたって、条材24の複数の帯状のめっき領域の各々の長手方向に延びる周縁部に対向するように配置された複数(図示した実施の形態では3つ)の(帯状めっき領域周縁部用)遮蔽板38が固定されており、これらの遮蔽板38により、条材24の複数の帯状(ストライプ状)のめっき領域の長手方向周縁部(の遮蔽幅a、b、c、dの部分)とアノード26との間の電流密度を低減させて、条材24の帯状のめっき領域の長手方向周縁部のめっき皮膜34がその中央部より厚くなるのを防止(条材24のめっき領域の幅方向のめっきの膜厚のばらつきを抑制)するようになっている。なお、条材24の複数の帯状のめっき領域の各々の長手方向に延びる周縁部の幅(遮蔽幅)は、めっき領域の幅などから適宜定めることができる。
【0035】
また、複数(図示した実施の形態では3つ)の(帯状めっき領域周縁部用)遮蔽板38のうち、条材24の両面の非めっき領域(マスキングテープ32が貼り付けられた領域)の各々に対向する複数(図示した実施の形態では2つ)の遮蔽板38の各々の一方の面から他方の面に貫通するように複数(図示した実施の形態では2つ)の螺子穴が形成され、これらの螺子穴には、螺子頭が条材24上のマスキングテープ32に対向するように、調整機構付きの間隔変動抑制部材39としての螺子が螺合している。この間隔変動抑制部材39としての螺子は、螺子頭が条材24上のマスキングテープ32から(ねじ込み深さにより容易に調節可能な)僅かな距離(好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下)だけ離間するように配置されている。このように間隔変動抑制部材39を設けることにより、めっきセル14内の条材24が長手方向(搬送方向)に対して横揺れしても、間隔変動抑制部材39としての螺子の螺子頭が条材24上のマスキングテープ32に当接して、条材24のめっき領域とアノード26との間隔が所定の間隔以上に変動するのを防止し、主に長手方向のめっきの膜厚のばらつきを抑制することができる。なお、間隔変動抑制部材39は、条材24上のマスキングテープ32から離間して配置されているので、めっきセル14内の条材24の搬送に支障がなく、また、条材24上のマスキングテープ32に対向するように配置されているので、条材24が横揺れしても、条材24上のマスキングテープ32に当接して、条材24にキズが付くのを防止することができるとともに、めっきセル14内の条材24の搬送にも支障がない。また、間隔変動抑制部材39は、条材24とアノード26との間隔の変動を抑制することができれば、遮蔽板38に形成された突起や、遮蔽板38に取り付けられたロールなどでもよい。
【0036】
また、条材24の複数の帯状のめっき領域のうち、他の帯状のめっき領域より幅の狭い帯状のめっき領域の長手方向に延びる中央部に対向してめっきセル14内の条材24の全長の一部の長さにわたって延びるように配置された少なくとも一つ(図示した実施の形態では1つ)の(幅狭めっき領域用)遮蔽板40が、隣接する(帯状めっき領域周縁部用)遮蔽板38に固定されており、この遮蔽板40により、めっきセル14内で搬送される条材24の幅の狭い帯状のめっき領域がアノード26と対向する時間を短くして、条材24のめっき領域のめっき時間の一部において、めっき槽内のめっき領域とカソードとの間の電流密度を低減することにより、幅の狭い帯状のめっき領域のめっき皮膜34が他の帯状のめっき領域のめっき皮膜34より厚くなるのを防止するようになっている。なお、遮蔽板40の長さは、幅の狭い帯状のめっき領域の幅と他の帯状のめっき領域の幅との関係から適宜定めることができる。
【0037】
また、
図2に示すように、支柱36と遮蔽板38との間に、遮蔽板38と条材24との間隔を調整する間隔調整板42を設けて、条材24の複数の帯状のめっき領域の各々の長手方向に延びる周縁部とアノード26との間の電流密度の低減を調整できるようにしてもよい。
【0038】
このようにして複数の帯状(ストライプ状)のめっきを施した条材24を長手方向に沿って延びる切断線(
図3において点線44で示す)で切断すれば、1回のめっきで複数のめっき条材を得ることができる。また、このようにしてストライプ状のめっきを施した条材24を切断前または切断後にプレスして、コネクタやスイッチなどの接点や端子部品などを製造することができる。なお、コネクタやスイッチなどの接点や端子部品などを製造する場合には、条材24の幅が30〜500mm程度であるのが好ましく、条材24の表面の帯状のめっき領域の幅が数mm〜100mm程度であるのが好ましい。
【0039】
また、本実施の形態の部分めっき装置10によるめっき材の生産性を高めるために、めっき槽18を直列に複数配置して、条材24をめっき槽18に送給する速度を上げてもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明による部分めっき方法およびその装置の実施例について詳細に説明する。
【0041】
[実施例1]
条材(被めっき材)24としてタフピッチ銅(C1100R−1/2H)からなる板幅130mm、板厚0.64mmの長尺の条材をコイル状に巻回したコイル材を用意し、リール・ツー・リール(フープ)めっき装置を使用して、
図3に示すように、条材24の各々の面の幅方向端部から0〜10mmまでの部分と76〜96mmまでの部分がストライプ状のめっき領域(斜線で示す領域)になるように、幅方向端部から10〜76mmまでの部分と96〜130mmまでの部分にマスキングテープ32を貼り付けて、前処理として、水洗し、アルカリ脱脂し、水洗し、酸洗した。
【0042】
次に、めっき液12としてスルファミン酸Niめっき液を使用し、電流密度6.5A/dm
2で最低膜厚が1μmになるまで電気めっきを行って、上記の前処理後の条材上にNi下地めっき皮膜を形成した。
【0043】
次に、めっき液12として(3g/Lのシアン化銀カリウムと90g/Lのシアン化カリウムからなる)Agストライクめっき液を使用し、電流密度2A/dm
2で10秒間電気めっきを行って、Ni下地めっき皮膜上にAgストライクめっき皮膜を形成した。
【0044】
次に、めっき液12として(160g/Lのシアン化銀カリウムと100g/Lのシアン化カリウムと100mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる)Agめっき液を使用し、Agストライクめっきを行った条材を(遮蔽板38によるめっき領域の周縁部の
図1Cにおいてa、dで示す遮蔽幅を2mm、
図1Cにおいてb、cで示す遮蔽幅を3mmとし、遮蔽板38の長さを800mm、遮蔽板40の長さを300mmとし、間隔変動抑制部材39としての螺子の螺子頭と条材上のマスキングテープ32との間隔を2mmに調整した)
図1A〜
図1Dに示す部分めっき装置に送給して、電流密度5A/dm
2で最低膜厚が5μmになるまで電気めっきを行って、Agストライクめっき皮膜上にAgめっき皮膜を形成した。なお、Agめっきの外観は両面とも光沢があった。
【0045】
このようにしてAgめっきを行った条材のAgめっき皮膜の厚さを蛍光X線膜厚計により測定したところ、条材の幅方向端部から79.5mmの位置では、条材の搬送方向先端部(条材の搬送方向先端から5mの部分)のAgめっき皮膜の厚さは5.16μm、搬送方向後端部(搬送方向後端から5mの部分)の厚さは5.09μmであり、(Agめっき皮膜の搬送方向の最大厚さ(先端部の厚さ)−最小厚さ(後端部の厚さ))/最小厚さ(後端部の厚さ)×100は1.38%であった。
【0046】
また、Agめっき皮膜の幅方向に0.5mm間隔で測定した最大厚さは6.86μm、最小厚さは5.32μmであり、(最大厚さ−最小厚さ)/(最小厚さ)×100は28.9%であった。
【0047】
[実施例2]
間隔変動抑制部材39としての螺子の螺子頭と条材上のマスキングテープ32との間隔を1mmに調整した以外は、実施例1と同様の方法により、条材にAgめっきを行って、Agめっき皮膜の厚さを測定したところ、条材の幅方向端部から79.5mmの位置では、条材の搬送方向先端部(条材の搬送方向先端から5mの部分)のAgめっき皮膜の厚さは5.47μm、搬送方向後端部(搬送方向後端から5mの部分)の厚さは5.42μmであり、(Agめっき皮膜の搬送方向の最大厚さ(先端部の厚さ)−最小厚さ(後端部の厚さ))/最小厚さ(後端部の厚さ)×100は0.92%であった。
【0048】
また、Agめっき皮膜の幅方向に0.5mm間隔で測定した最大厚さは6.65μm、最小厚さは5.40μmであり、(最大厚さ−最小厚さ)/(最小厚さ)×100は23.1%であった。
【0049】
[実施例3]
Agめっき皮膜の最低膜厚が5.4μmになるまで電気めっきを行った以外は、実施例2と同様の方法により、条材のAgめっきを行って、Agめっき皮膜の厚さを測定したところ、条材の幅方向端部から79.5mmの位置では、条材の搬送方向先端部(条材の搬送方向先端から5mの部分)のAgめっき皮膜の厚さは5.46μm、搬送方向後端部(搬送方向後端から5mの部分)の厚さは5.45μmであり、(Agめっき皮膜の搬送方向の最大厚さ(先端部の厚さ)−最小厚さ(後端部の厚さ))/最小厚さ(後端部の厚さ)×100は0.18%であった。
【0050】
[比較例1]
(条材上のマスキングテープ32と遮蔽板との間隔が6mmの)部分めっき装置に間隔変動抑制部材39を設けなかった以外は、実施例3と同様の方法により、条材のAgめっきを行って、Agめっき皮膜の厚さを測定したところ、条材の幅方向端部から79.5mmの位置では、条材の搬送方向先端部(条材の搬送方向先端から5mの部分)のAgめっき皮膜の厚さは5.24μm、搬送方向後端部(搬送方向後端から5mの部分)の厚さは4.88μmであり、(Agめっき皮膜の搬送方向の最大厚さ(先端部の厚さ)−最小厚さ(後端部の厚さ))/最小厚さ(後端部の厚さ)×100は7.38%であった。
【0051】
また、Agめっき皮膜の幅方向に0.5mm間隔で測定した最大厚さは6.96μm、最小厚さは4.68μmであり、(最大厚さ−最小厚さ)×100/(最小厚さ)は48.7%であった。
【0052】
[比較例2]
(条材上のマスキングテープ32と遮蔽板との間隔が6mmの)部分めっき装置に遮蔽板38および40と間隔変動抑制部材39を設けなかった以外は、実施例1と同様の方法により、条材のAgめっきを行って、Agめっき皮膜の厚さを測定したところ、Agめっき皮膜の幅方向に0.5mm間隔で測定した最大厚さは6.94μm、最小厚さは4.21μmであり、(最大厚さ−最小厚さ)/(最小厚さ)×100は64.8%であった。
【0053】
[実施例4]
条材(被めっき材)としてタフピッチ銅(C1100R−1/2H)からなる板幅100mm、板厚0.64mmの長尺の条材をコイル状に巻回したコイル材を用意し、リール・ツー・リール(フープ)めっき装置を使用して、条材の各々の面の幅方向端部から0〜25mmまでの部分がストライプ状のめっき領域になるように、幅方向端部から25〜100mmまでの部分にマスキングテープを貼り付けて、前処理として、水洗し、アルカリ脱脂し、水洗し、酸洗した。
【0054】
次に、めっき液12として、240g/Lの硫酸銅五水和物と20g/Lの75%希硫酸からなるCuめっき液を使用し、電流密度6.5A/dm
2で最低膜厚が0.4μmになるまで電気めっきを行って、上記の前処理後の条材上にCu下地めっき皮膜を形成した。
【0055】
次に、めっき液として(3g/Lのシアン化銀カリウムと90g/Lのシアン化カリウムからなる)Agストライクめっき液を使用し、電流密度2A/dm
2で10秒間電気めっきを行って、Cu下地めっき皮膜上にAgストライクめっき皮膜を形成した。
【0056】
次に、めっき液として(160g/Lのシアン化銀カリウムと100g/Lのシアン化カリウムと100mg/Lのセレノシアン酸カリウムからなる)Agめっき液を使用し、Agストライクめっきを行った条材を(遮蔽板によるめっき領域の周縁部の遮蔽幅を2mmとし、遮蔽板の長さを775mmとし、間隔変動抑制部材としての螺子の螺子頭と条材上のマスキングテープとの間隔を2mmに調整した)部分めっき装置に送給して、電流密度5A/dm
2で最低膜厚が4μmになるまで電気めっきを行って、Agストライクめっき皮膜上にAgめっき皮膜を形成したところ、Agめっきの外観は両面とも光沢があった。
【0057】
[比較例3]
間隔変動抑制部材を設けなかった以外は、実施例4と同様の方法により、条材のAgめっきを行ったところ、Agめっきの外観は、一方の面では光沢、他方の面では無光沢であり、膜質にばらつきがあった。