特許第6646345号(P6646345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646345
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】紙葉類取扱装置及び異物検知方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/14 20190101AFI20200203BHJP
   G07D 11/16 20190101ALI20200203BHJP
【FI】
   G07D11/14 101G
   G07D11/16 101Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-557499(P2018-557499)
(86)(22)【出願日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】JP2016088540
(87)【国際公開番号】WO2018116469
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2018年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 誠
(72)【発明者】
【氏名】原井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 諒
(72)【発明者】
【氏名】柳田 洋志
(72)【発明者】
【氏名】細山 浩一
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−023842(JP,U)
【文献】 特開昭55−115891(JP,A)
【文献】 特開昭63−165254(JP,A)
【文献】 特開2000−211773(JP,A)
【文献】 実開昭57−106481(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00−13/00,
B65H 9/00− 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類が挿入される挿入口と、
記紙葉類を搬送する搬送機構と、
前記挿入口へ挿入された前記紙葉類が接する弾性変形部を有し、前記弾性変形部の弾性力によって前記紙葉類の搬送方向を矯正する矯正部材と、を備え、
前記矯正部材は、前記紙葉類の紙面に沿う前記挿入口の幅方向の両に配置され、
前記弾性変形部の少なくとも一部は、前記挿入口の開口面上で、前記紙葉類の厚み方向に対して、前記幅方向における前記挿入口の中央側へ向かって傾斜して延びている、紙葉類取扱装置。
【請求項2】
紙葉類が挿入される挿入口と、
記紙葉類を搬送する搬送機構と、
前記挿入口へ挿入された前記紙葉類が接する弾性変形部を有し、前記弾性変形部の弾性力によって前記紙葉類の搬送方向を矯正する矯正部材と、を備え、
前記矯正部材は、弾性力が異なる複数種類の前記弾性変形部を有し、前記紙葉類の紙面に沿う前記挿入口の幅方向の両に配置され、
前記複数種類の前記弾性変形部は、前記挿入口の前記幅方向に沿って設けられ、前記幅方向における前記挿入口の中央側から両端側へ向かって弾性力が大きくなるように配置されている、紙葉類取扱装置。
【請求項3】
紙葉類が挿入される挿入口と、
記紙葉類を搬送する搬送機構と、
前記挿入口へ挿入された前記紙葉類が接する弾性変形部を有し、前記弾性変形部の弾性力によって前記紙葉類の搬送方向を矯正する矯正部材と、
前記紙葉類の紙面に沿う前記挿入口の幅方向において前記矯正部材の前記弾性変形部が変動した範囲を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記紙葉類以外の異物が前記挿入口へ挿入されたことを判定する制御部と、を備え、
前記矯正部材は、前記挿入口の前記幅方向の両、前記挿入口の前記幅方向に沿って配置されている、紙葉類取扱装置。
【請求項4】
前記矯正部材の前記弾性変形部は、ブラシ又はフィルムである、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項5】
挿入口から挿入された紙葉類を搬送機構によって搬送するときに、前記紙葉類が接する弾性変形部の弾性力によって前記紙葉類の搬送方向を矯正する矯正部材が、前記挿入口へ挿入された前記紙葉類によって変動し、
記紙葉類の紙面に沿う前記挿入口の幅方向において前記弾性変形部が変動した範囲を検知部により検知し、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記紙葉類以外の異物が前記挿入口へ挿入されたことを制御部により判定する、
異物検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類取扱装置及び異物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、現金自動預払機(以下、ATM[Automated Teller Machine]と称する。)は、紙葉類としての紙幣を取り扱う紙幣取扱装置を備えている。紙幣取扱装置としては、紙幣が水平方向に沿って挿入される挿入口を有する入出金部を備えるものが知られている。入出金部の挿入口から挿入された紙幣は、搬送機構によって入出金部の内部へ送られて取り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−259086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、挿入口へ挿入される紙幣の紙面に沿う、挿入口の幅方向の大きさは、サイズが異なる複数種類の紙幣の挿入に対応するために、入出金部で取り扱う最大サイズの紙幣を挿入可能な大きさに設定されている。このため、挿入口へ比較的小さな紙幣を挿入する際、紙幣が挿入口の幅方向における片側へずれて挿入される場合や、挿入口の幅方向における片側へ向かって紙幣の挿入方向が傾いて挿入される場合がある。また、挿入口へ紙幣を挿入するときに、例えば、重ねた複数枚の紙幣の向きが揃っていない場合、挿入方向に対して傾いた向きで挿入された紙幣が含まれる。このように適正に挿入されない紙幣は、搬送機構によって送られる搬送方向が斜行するおそれがあり、紙幣の紙詰まり(以下、ジャムと称する。)を招き、紙幣のジャムに伴って紙幣取扱装置の動作信頼性が低下する問題がある。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、挿入口から挿入された紙葉類を適正に搬送することができる紙葉類取扱装置及び異物検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する紙葉類取扱装置の一態様は、紙葉類が挿入される挿入口と、前記紙葉類を搬送する搬送機構と、前記挿入口へ挿入された前記紙葉類が接する弾性変形部を有し、前記弾性変形部の弾性力によって前記紙葉類の進入方向を矯正する矯正部材と、を備える。前記矯正部材は、前記紙葉類の紙面に沿う前記挿入口の幅方向の両に配置され前記弾性変形部の少なくとも一部は、前記挿入口の開口面上で、前記紙葉類の厚み方向に対して、前記幅方向における前記挿入口の中央側へ向かって傾斜して延びている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する紙葉類取扱装置の一態様によれば、挿入口から挿入された紙葉類を適正に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例の紙幣取扱装置を示す模式図である。
図2図2は、実施例の紙幣取扱装置の入出金部を示す斜視図である。
図3図3は、実施例の紙幣取扱装置の入出金部を示す正面図である。
図4図4は、実施例の紙幣取扱装置の入出金部が有する入出金機構を示す平面図である。
図5図5は、実施例の紙幣取扱装置の入出金部が有する入出金機構を示す側断面図である。
図6図6は、実施例における矯正部材が紙幣の搬送方向を矯正する作用を説明するための平面図である。
図7図7は、変形例1の矯正部材が有する弾性変形部を説明するための正面図である。
図8図8は、変形例2の矯正部材を説明するための正面図である。
図9図9は、変形例2の矯正部材を説明するための平面図である。
図10図10は、変形例3の矯正部材を説明するための正面図である。
図11図11は、変形例4の矯正部材を模式的に示す正面図である。
図12図12は、変形例5の紙幣取扱装置を示す正面図である。
図13図13は、変形例5の紙幣取扱装置における異物検知処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する紙葉類取扱装置及び異物検知方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する紙葉類取扱装置及び異物検知方法が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
(紙幣取扱装置の構成)
図1は、実施例の紙幣取扱装置を示す模式図である。図1に示すように、実施例の紙幣取扱装置1は、紙幣3が入金及び出金される入出金部5と、紙幣3を鑑別するための鑑別部6と、紙幣3を一時的に収容するための複数の保留部7と、出金用の紙幣が補充されて収容される出金用収容部8と、紙幣3を格納するための格納部9と、を備える。また、紙幣取扱装置1は、入出金部5、鑑別部6、複数の保留部7、出金用収容部8及び格納部9を相互に連結して紙幣3を搬送する搬送路10aを有する搬送機構10と、搬送機構10を制御する制御部11と、を備える。
【0011】
なお、紙幣取扱装置1は、保留部7の個数が複数に限定されるものではなく、少なくとも1つの保留部7及び格納部9を備えて構成されればよい。また、制御部11は、入出金部5、鑑別部6、保留部7、出金用収容部8、格納部9及び搬送機構10をそれぞれ制御する。説明の便宜上、図1以降において、紙幣取扱装置1の姿勢の一例として、入出金部5側を正面(前面)としたときに、図1に示す紙幣取扱装置1の前後方向(奥行方向)をX方向とし、紙幣取扱装置1の左右方向(幅方向)をY方向とし、紙幣取扱装置1の上下方向(高さ方向)をZ方向とする。なお、紙幣取扱装置1において、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向にそれぞれ限定するものではない。
【0012】
入出金部5によって紙幣取扱装置1の内部へ送られた紙幣3は、例えば、紙幣3を鑑別する鑑別部6を介して保留部7へ送られる。なお、紙幣取扱装置1における入出金部5は、入金部と出金部とを兼ねるが、入金部と出金部がそれぞれ独立して設けられてもよい。実施例では、入金部と出金部とを含めて入出金部5と称する。
【0013】
紙幣3としては、例えばポリマー等の樹脂材料によって形成された紙幣も含む。また、本発明に係る紙幣取扱装置1について、例えば、本実施例では、紙葉類の一例として、紙幣3を用いて説明するが、紙幣3に限定されるものではない。紙葉類としては、例えば、紙幣3以外に小切手、金券、有価証券、バウチャー券、その他の金銭的価値を有する媒体も含まれる。
【0014】
(入出金部の構成)
図2は、実施例の紙幣取扱装置1の入出金部5を示す斜視図である。図3は、実施例の紙幣取扱装置1の入出金部5を示す正面図である。図4は、実施例の紙幣取扱装置1の入出金部5が有する入出金機構を示す平面図である。図5は、実施例の紙幣取扱装置1の入出金部5が有する入出金機構を示す側断面図であり、図4におけるA−A断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、入出金部5は、紙幣3が挿入される挿入口(入金口)15と、紙幣3を排出する排出口(出金口)16と、挿入口15へ挿入された紙幣3を搬送すると共に排出口16へ紙幣3を搬送する搬送機構としての入出金機構17と、挿入口15から挿入された紙幣3の搬送方向を矯正する矯正部材18と、を備える。
【0016】
図2及び図3に示すように、挿入口15は、挿入口15へ挿入される紙幣3の紙面に沿う、挿入口15の幅方向(Y方向)が長手方向となり、挿入口15へ挿入される紙幣3の厚み方向である挿入口15の上下方向(Z方向)が短手方向となる矩形状に形成されている。排出口16は、挿入口15の下方に配置されており、挿入口15と同様に矩形状に形成されている。本実施例では、矩形状の紙幣3が、紙幣3の短辺方向が挿入口15の幅方向と平行になる向きで、紙幣3の長辺方向の一端側から、紙幣3の長辺方向に沿って挿入口15へ挿入される。なお、本実施例では、紙幣3の短手方向から挿入口15へ挿入させているが、紙幣3の長手方向から挿入口15へ挿入する構造でもよい。
【0017】
挿入口15及び排出口16は、図2に示すように、入出金部5が有する正面パネル14の上下方向(Z方向)に間隔をあけて配置されている。正面パネル14には、挿入口15から挿入される紙幣3が載置される入金用トレイ21が、挿入口15の下端からX方向に沿って突出して設けられている。同様に、正面パネル14には、排出口16から排出された紙幣3が載置される出金用トレイ22が、排出口16の下端からX方向に沿って突出して設けられている。入金用トレイ21には、紙幣3が載置される載置面21aが、挿入口15の幅方向(Y方向)にわたって設けられている。同様に、出金用トレイ22には、紙幣3が載置される載置面22aが、排出口16の幅方向にわたって設けられている。
【0018】
入出金部5が有する入出金機構17は、図5に示すように、挿入口15から紙幣3を搬送する入金用の搬送路17Aと、排出口16へ紙幣3を搬送する出金用の搬送路17Bと、を有する。入金用の搬送路17Aは、入金用トレイ21の載置面21aから連続して設けられている。出金用の搬送路17Bは、排出口16の出金用トレイ22の載置面22aへ連続して設けられている。
【0019】
入出金機構17は、制御部11と接続されており、図4及び図5に示すように、紙幣3を送る搬送ベルト24と、搬送ベルト24を駆動する第1プーリ25A及び第2プーリ25Bと、重ねられた紙幣3を1枚ずつ分離して送る繰り出しローラ26と、を有する。また、入出金機構17は、搬送ベルト24によって送られる紙幣3を案内するガイド板27と、紙幣3を搬送ベルト24側へ押圧してガイド板27との間で紙幣3を挟み込む圧板28と、を有する。
【0020】
搬送ベルト24は、搬送ベルト24の自重によってたわんだ状態で第1プーリ25Aと第2プーリ25Bとに掛け渡されており、回転する搬送ベルト24のたわみ部分24aが紙幣3に接触することで、たわみ部分24aによって紙幣3を送る。このため、回転される搬送ベルト24は、紙幣3に伝わる搬送力の大きさが制限され、紙幣3に過剰な搬送力が加わることが避けられる。これにより、入出金機構17は、挿入口15から挿入された紙幣3の束の最上位(Z方向における上端)の1枚のみを、繰り出しローラ26側へ適正に取り込むことが可能に構成されている。
【0021】
ガイド板27は、入金用の搬送路17Aの上方に、搬送ベルト24のたわみ部分24aに沿って配置されている。圧板28は、昇降機構(図示せず)によってZ方向に対して昇降可能に設けられている。また、入金用の搬送路17Aには、図4に示すように、挿入口15から挿入された紙幣3の進入を検知する位置センサ29が、入金用の搬送路17Aに沿って搬送される紙幣3の紙面に対向する位置に配置されている。
【0022】
(矯正部材の構成)
図2及び図3に示すように、矯正部材18は、例えば、ブラシ状の弾性変形部19を有しており、いわゆる、毛ブラシによって形成されている。弾性変形部19は、所望の弾性力を有していればよく、樹脂製の毛が用いられてもよい。また、弾性変形部19は、後述する変形例5のように、毛ブラシの代わりに、弾性力を有するフィルム(シート)又は樹脂製のレバーによって形成されてもよい。弾性変形部19は、例えば、弾性力を有するスポンジ状に形成されてもよく、形態を限定するものではない。
【0023】
矯正部材18は、挿入口15の幅方向(Y方向)における両側にそれぞれ配置されている。ブラシ状の弾性変形部19の各毛先が延びる方向は、例えば、一方向に揃えられている。本実施例における弾性変形部19の各毛先は、挿入口15の上下方向(Z方向)に沿って延び、かつ、図2及び図5に示すように、挿入口15の開口面(YZ平面)に対して、挿入口15から挿入された紙幣3を搬送する入金用の搬送路17A側へ向かって傾斜して延びている。言い換えると、弾性変形部19の各毛先は、挿入口15へ挿入される紙幣3の挿入方向(X方向)及び挿入口15へ挿入される紙幣3の厚み方向(Z方向)に平行なXZ平面上で、紙幣3の厚み方向に対して入金用の搬送路17A側へ向かって傾斜して延びている。
【0024】
これにより、挿入口15へ挿入された紙幣3が矯正部材18の弾性変形部19に当たった際に、弾性変形部19によって紙幣3の挿入動作が妨げられることが抑えられる。つまり、紙幣3が挿入口15へ挿入されたときに、矯正部材18の弾性変形部19によって、挿入口15へ挿入される紙幣3の挿入動作への抵抗、すなわち紙幣3を押し戻す力が生じることが抑えられ、挿入口15から紙幣3が円滑に挿入される。
【0025】
(矯正部材による紙幣の矯正作用)
図6は、実施例における矯正部材18が紙幣3の搬送方向を矯正する作用を説明するための平面図である。図6に示すように、挿入口15から挿入された紙幣3が、挿入口15の幅方向(Y方向)の片側へずれて挿入された場合、挿入口15の幅方向における一方側に位置する矯正部材18の弾性変形部19の変動量(たわみ量)が、他方側に位置する矯正部材18の弾性変形部19の変動量よりも大きくなる。このとき、弾性変形部19の変動量に応じた反力(付勢力)が紙幣3へ作用し、弾性変形部19によって紙幣3が弾かれて押し戻されることで、紙幣3の位置や向き(姿勢)が変化する。このため、挿入口15の幅方向の両側の各矯正部材18の弾性変形部19から紙幣3がそれぞれ受ける反力の差により、挿入口15の幅方向において、紙幣3が受ける反力が小さい矯正部材18側に向かって紙幣3が矢印方向へ移動されることで、入金用の搬送路17Aにおける紙幣3の位置や向きが矯正され、紙幣3が搬送方向に沿って適正に送られる。
【0026】
また、挿入口15へ挿入された紙幣3の挿入方向が、入金用の搬送路17Aの搬送方向に対して傾斜して挿入された場合においても、挿入口15の幅方向の両側に配置された矯正部材18の弾性変形部19に紙幣3が接したときに受ける反力により、入金用の搬送路17Aにおける紙幣3の向きが矯正され、紙幣3が適正な搬送方向に沿って送られる。
【0027】
また同様に、例えば、重ねた複数枚の紙幣3の向きが揃えられていない状態で挿入口15から挿入された場合であっても、上述した矯正部材18による矯正作用により、重ねられた複数枚の紙幣3の向きが搬送方向に沿うように揃えられて、複数枚の紙幣3を適正な搬送方向に沿って搬送することが可能になる。
【0028】
なお、上述の矯正作用が得られる場合は、挿入口15の幅方向(Y方向)の両側に配置された各矯正部材18にそれぞれ紙幣3が接する場合に限らない。挿入口15の幅方向の両側の各矯正部材18のいずれか一方側のみに紙幣3が接した場合においても、紙幣3が接した一方側の矯正部材18の弾性変形部19から紙幣3が受ける反力によって、紙幣3が接していない他方側の矯正部材18側へ紙幣3が移動される。これにより、入金用の搬送路17Aにおける紙幣3の位置や向きが矯正され、紙幣3が搬送方向に沿って送られる。
【0029】
上述したように実施例の紙幣取扱装置1は、弾性変形部19の弾性力によって挿入口15から挿入された紙幣3の搬送方向を矯正する矯正部材18を備えており、矯正部材18が、挿入口15の幅方向(Y方向)の両側に配置されている。これにより、矯正部材18の弾性変形部19によって、挿入口15へ挿入された紙幣3の位置や向きを矯正することが可能となり、紙幣3を搬送方向に沿って適正に搬送することができる。その結果、紙幣3のジャムの発生を抑えることが可能となり、紙幣3のジャムに伴って紙幣取扱装置1の動作信頼性が低下することを抑えることができる。
【0030】
また、実施例の紙幣取扱装置1が有する矯正部材18の弾性変形部19は、挿入口15の開口面に対して、挿入口15から挿入された紙幣3の入金用の搬送路17A側へ向かって傾斜して延びている。これにより、挿入口15へ挿入された紙幣3が矯正部材18の弾性変形部19に当たったとき、矯正部材18の弾性変形部19によって、挿入口15へ挿入される紙幣3の挿入動作に対する抵抗が生じることを抑えることができるので、挿入口15へ紙幣3を円滑に挿入することができる。
【0031】
以下、変形例1〜5について図面を参照して説明する。なお、便宜上、変形例1〜5において、実施例と同一の構成部材には、実施例と同一の符号を付して説明を省略する。
【変形例1】
【0032】
図7は、変形例1の矯正部材が有する弾性変形部を説明するための正面図である。変形例1は、挿入口15の幅方向の両側に配置された各矯正部材が有する弾性変形部において、毛先が延びる向きが、実施例と異なる。
【0033】
図7に示すように、変形例1の矯正部材31が有する弾性変形部32は、挿入口15の開口面(YZ平面)上で、挿入口15へ挿入される紙幣3の厚み方向(Z方向)に対して、幅方向(Y方向)における挿入口15の中央側へ向かって傾斜して延びている毛先32aを含んでいる。各矯正部材31の弾性変形部32は、例えば、挿入口15の幅方向における両端に位置する複数の毛先32aの向きが、挿入口15の中央側へ向かって傾斜して延びており、挿入口15の幅方向の中央側に位置する毛先32bの向きが、紙幣3の厚み方向に延びている。したがって、弾性変形部32は、向きが互いに異なる複数の毛先32a、32bを有する。
【0034】
また、変形例1の弾性変形部32は、挿入口15の幅方向(Y方向)の両端側に位置する一部の毛先32aが傾斜されたが、全ての毛先が傾斜されてもよい。また、紙幣3に作用する反力を調整する必要に応じて、毛先が傾斜する向きを、挿入口15の幅方向に沿って変化させてもよい。この場合、弾性変形部32は、例えば、挿入口15の幅方向において、両端側の毛先の傾斜角を大きくし、挿入口15の両端側から中央側へ向かって位置が変化するのに伴って、毛先の傾斜角が小さくなるように変化させることにより、挿入口15の両端側の毛先の弾性力が、挿入口15の中央側の毛先の弾性力よりも大きくされてもよい。このように弾性力を変化させることで、挿入口15へ挿入された紙幣3の、挿入口15の幅方向の片側への位置ずれや、入金用の搬送路17Aの搬送方向に対する挿入方向の傾きが大きくなるに従って、紙幣3に作用する反力も大きくなるので、紙幣3の向きが更に適正に矯正される。
【0035】
また、変形例1においても、弾性変形部32の各毛先32a、32bは、上述した傾斜に加えて、実施例1と同様に、挿入口15へ挿入される紙幣3の挿入方向(X方向)及び挿入口15へ挿入される紙幣3の厚み方向(Z方向)に平行なXZ平面上で、紙幣3の厚み方向に対して入金用の搬送路17A側へ向かって傾斜して延ばされてもよい。
【0036】
なお、上述した変形例1では、弾性変形部32の毛先32aが紙幣3の厚み方向に対して傾斜されたが、紙幣3に作用する反力を調整する必要に応じて、弾性変形部32の毛先32aが、挿入口15の幅方向(Y方向)の両端面から、幅方向に沿って延ばされてもよい。この場合、矯正部材31は、挿入口15の幅方向の両端面に配置されてもよい。また、弾性変形部32の各毛先32a、32bは、弾性力を調整するために、毛先32a、32bが延びる方向において円弧状に湾曲されてもよい。
【0037】
変形例1の矯正部材31は、弾性変形部32の毛先32aを傾斜させることで、傾斜させた毛先32aが紙幣3に作用する反力を大きくし、挿入口15の幅方向(Y方向)に対して紙幣3を移動させる矯正作用を高めることができる。
【変形例2】
【0038】
図8は、変形例2の矯正部材を説明するための正面図である。図9は、変形例2の矯正部材を説明するための平面図である。変形例2は、矯正部材の弾性変形部が回転可能に設けられた点が実施例と異なる。
【0039】
図8及び図9に示すように、変形例2の矯正部材36(36A、36B)は、挿入口15から挿入された紙幣3を搬送する入金用の搬送路17A上に配置されており、挿入口15の幅方向(Y方向)の両側と対向する位置に配置されている。また、矯正部材36は、入金用の搬送路17Aにおける搬送ベルト24の手前に配置されており、搬送ベルト24と圧板28との間に紙幣3が挟み込まれる前に、矯正部材36の弾性変形部37によって紙幣3の向きが矯正される。
【0040】
矯正部材36は、弾性変形部37を回転可能に支持する回転軸38を有しており、弾性変形部37が回転軸38を中心として放射状に設けられている。回転軸38は、挿入口15の上下方向(Z方向)に沿って設けられており、入金用の搬送路17Aの支持部(図示せず)に回転自在に支持されている。弾性変形部37は、ブラシ状の毛先を有する。矯正部材36は、弾性変形部37の毛先が、回転軸38を中心とした回転軸38まわりに湾曲された羽根車状に形成されている。なお、弾性変形部37の毛先は、湾曲させず、直線状に形成されてもよい。
【0041】
挿入口15の幅方向の一方側(図9中の左側)に配置された矯正部材36(36A)は、挿入口15から挿入された紙幣3が弾性変形部37に接することで、回転軸38を介して、弾性変形部37の毛先が図9における反時計回りに回転する。同様に、挿入口15の幅方向の他方側(図9中の右側)に配置された矯正部材36(36B)は、挿入口15から挿入された紙幣3が弾性変形部37に接することで、回転軸38を介して、弾性変形部37の毛先が図9における時計回りに回転する。このように弾性変形部37が回転しながら、矯正部材36は、弾性変形部37の反力が紙幣3に作用することで、紙幣3の位置や向きを矯正する。
【0042】
上述のように変形例2の矯正部材36は、挿入口15から挿入された紙幣3の入金用の搬送路17A上において挿入口15の幅方向(Y方向)の両側と対向する位置に配置されている。これにより、変形例2においても、実施例と同様に、挿入口15から挿入された紙幣は、矯正部材36の弾性変形部37に接したときに受ける反力により、紙幣3の位置や向きが矯正されるので、紙幣3を搬送方向に沿って適正に搬送することができる。
【0043】
なお、変形例2では、弾性変形部37を回転可能に支持する矯正部材36が入金用の搬送路17A上に配置されたが、図8中に破線で示すように、矯正部材36が挿入口15の幅方向における両側に配置されてもよく、変形例2と同様の効果を得ることができる。また、矯正部材36は、挿入口15の幅方向における両側の位置と、これら両側にそれぞれ対向する入金用の搬送路17A上の位置との両方に設けられてもよく、紙幣3を搬送方向に沿って適正に搬送する効果を更に高めることができる。
【変形例3】
【0044】
図10は、変形例3の矯正部材を説明するための正面図である。変形例3は、矯正部材の配置、矯正部材の弾性変形部が回転可能な向きが、変形例2と異なる。
【0045】
図10に示すように、変形例3の矯正部材41は、挿入口15の幅方向(Y方向)の両側と対向する位置に配置されている。矯正部材41は、弾性変形部42を回転可能に支持する回転軸43を有しており、弾性変形部42が回転軸43を中心として放射状に設けられている。回転軸43は、挿入口15へ挿入される紙幣3の挿入方向(X方向)に沿って設けられており、挿入口15近傍の支持部(図示せず)に回転自在に支持されている。矯正部材41の弾性変形部42は、挿入口15へ挿入された紙幣3が接したときに紙幣3に反力が作用することで、紙幣3の位置や向きを矯正する。なお、弾性変形部42の回転軸43の向きは、X方向や、上述の変形例2のようにZ方向に沿う向きに限定するものではなく、X方向やZ方向に対して傾斜されてもよい。また、弾性変形部42の回転方向は、本実施例では、上から下へ回転させているが、下から上へ回転させてもよい。
【0046】
変形例3の矯正部材41においても、変形例2と同様に、挿入口15から挿入された紙幣3は、矯正部材41の弾性変形部42に接したときに受ける反力により、紙幣3の位置や向きが矯正されるので、紙幣3を搬送方向に沿って適正に搬送することができる。
【変形例4】
【0047】
図11は、変形例4の矯正部材を模式的に示す正面図である。変形例4の矯正部材は、弾性力が異なる複数種類の弾性変形部を有する点が、実施例と異なる。
【0048】
図11に示すように、変形例4の矯正部材46は、挿入口15の幅方向(Y方向)の両側にそれぞれ配置されており、弾性力が異なる複数種類の弾性変形部47A、47B、47Cを有する。矯正部材46における各弾性変形部47A、47B、47Cは、挿入口15の幅方向に沿って設けられており、幅方向における中央側に位置する弾性変形部47Aから、両端側に位置する弾性変形部47Cへ向かって弾性力が大きくなるように配置されている。
【0049】
複数種類の弾性変形部47A、47B、47Cは、例えば、毛先の太さ(直径)が異なっており、弾性力が異なる複数種類の毛先を有する。なお、変形例4では、一例として毛先の直径が異なるブラシが用いられたが、弾性係数が異なる材料によって形成されたブラシが用いられてもよい。
【0050】
上述したように変形例4は、弾性変形部47A、47B、47Cの弾性力が、挿入口15の幅方向の両端へ向かって大きくなるように変化させることで、挿入口15へ挿入された紙幣3の位置ずれや、搬送方向に対する紙幣3の挿入方向の傾きが大きくなるのに伴って、弾性変形部47A、47B、47Cから紙幣3が受ける反力が大きくなる。このように紙幣3の位置ずれや挿入方向の傾きの大きさに応じて、紙幣3に作用する反力を変化させることで、紙幣3の位置や向きが更に適正に矯正されるので、紙幣3を搬送方向に沿って更に適正に搬送することができる。
【変形例5】
【0051】
図12は、変形例5の紙幣取扱装置を示す正面図である。図13は、変形例5の紙幣取扱装置における異物検知処理を説明するためのフローチャートである。変形例5は、挿入口へ挿入された異物を検知する点で実施例と異なる。
【0052】
図12に示すように、変形例5における矯正部材51は、挿入口15の幅方向(Y方向)に亘って設けられた4つの弾性変形部52A、52B、52C、52Dを有しており、各弾性変形部52A、52B、52C、52Dが挿入口15の幅方向において連続している。矯正部材51の弾性変形部52A、52B、52C、52Dは、フィルム(シート)によって形成されており、紙幣3に接する先端側から、挿入口15の上方(Z方向)へ向かって切り込みが設けられた短冊状に形成されている。
【0053】
また、変形例5の紙幣取扱装置は、図12に示すように、矯正部材51の各弾性変形部52A、52B、52C、52Dの変動(紙幣3との接触)を検知する検知部12を備えている。検知部12は、矯正部材51の各弾性変形部52A、52B、52C、52Dとそれぞれ接続されると共に、制御部11と接続されている。検知部12は、挿入口15の幅方向において各弾性変形部52A、52B、52C、52Dが変動した範囲を検知する。検知部12としては、例えば、変位センサ、振動センサ等が用いられる。制御部11は、検知部12からの検知信号に基づいて、紙幣3以外の異物が挿入口15へ挿入されたことを判定する。異物とは、例えば、コインや、マネークリップ等の小物を指している。
【0054】
なお、矯正部材51の各弾性変形部52A、52B、52C、52Dは、挿入口15の幅方向(Y方向)において連続して配置されたが、幅方向において、例えば、検知部12が検知する異物の大きさに比べて小さい所定の間隔をあけて配置されてもよい。また、変形例5においても、複数の弾性変形部52A、52B、52C、52Dとして、フィルムの代わりに毛ブラシが用いられてもよい。
【0055】
(異物検知方法)
変形例5における異物検知方法では、挿入口15から挿入された紙幣3を搬送機構としての入出金機構17によって搬送するときに、紙幣3が接する弾性変形部52A、52B、52C、52Dの弾性力によって紙幣3の搬送方向を矯正する矯正部材51が、挿入口15へ挿入された紙幣3によって変動する。そして、異物検知方法は、挿入口15へ挿入された紙幣3の紙面に沿う、挿入口15の幅方向(Y方向)において弾性変形部52A、52B、52C、52Dが変動した範囲を検知部12により検知し、検知部12の検知結果に基づいて、紙幣3以外の異物が挿入口15へ挿入されたことを制御部11により判定する。
【0056】
具体的には、例えば、図13に示すように、挿入口15へ紙幣3(または異物)を挿入する(ステップS1)。挿入口15へ紙幣3が挿入されることで、矯正部材51の各弾性変形部52A、52B、52C、52Dのいずれかが変動し、検知部12が各弾性変形部52A、52B、52C、52Dの変動を検知する。このとき、制御部11は、挿入口15の幅方向(Y方向)において連続する各弾性変形部52A、52B、52C、52Dにおいて連続する3つ以上の弾性変形部52(52A、52B、52C、52D)が変動したか否かを判定する(ステップS2)。
【0057】
ステップS2において、4つの弾性変形部52A、52B、52C、52Dにおいて連続する3つ以上の弾性変形部52(52A、52B、52C、52D)が変動した場合、制御部11は、挿入口15へ紙幣3が挿入されたと判定し、入出金機構17によって、挿入口15から紙幣3を入金用の搬送路17Aに沿って搬送することにより、紙幣3の正常な取扱動作を開始する(ステップS3)。一方、ステップS2において、4つの弾性変形部52A、52B、52C、52Dにおいて連続する2つ、または1つの弾性変形部52のみが変動した場合、制御部11は、挿入口15へ紙幣3よりも小さい、紙幣3以外のコイン等の異物が挿入されたと判定し、挿入口15への異物の挿入を検知する(ステップS4)。
【0058】
制御部11は、異物の挿入を検知したとき、例えば、入出金機構17の駆動を停止するように制御を行うことで、挿入口15からの異物の進入を避ける。また、制御部11は、異物の挿入を検知した場合、例えば、警告音や、入出金部5の表示パネル等に警告を表示することで利用者へ異物の挿入を報知してもよい。
【0059】
上述のように変形例5は、検知部12によって矯正部材51の各弾性変形部52A、52B、52C、52Dが連続的に変動する範囲を検知し、検知部12の検知結果に基づいて制御部11が異物の挿入を検知することができる。これにより、挿入口15からの異物の進入によって入出金機構17が破損することを抑えることができる。
【0060】
また、制御部11は、紙幣3以外の異物のみが挿入されたことを検知するだけでなく、3つ以上の弾性変形部52A、52B、52C、52Dが変動したときに弾性変形部52A、52B、52C、52Dの各変動量が挿入口15の幅方向において部分的に大きいことを検知した場合に、紙幣3と一緒に異物が挿入されたと判定してもよい。また、変形例5においても、例えば、変形例2のように、入金用の搬送路17A上に矯正部材36を配置することで、矯正部材36によって紙幣3の位置や向きを適正に矯正し、紙幣3のジャムを抑制することができる。
【0061】
なお、本実施例及び各変形例の紙幣取扱装置は、例えば、サイズが異なる紙幣3の種類が比較的多い国等での設置環境に適用された場合に、紙幣3のジャムを効果的に抑えることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 紙幣取扱装置
3 紙幣(紙葉類)
5 入出金部
11 制御部
12 検知部
15 挿入口
17 入出金機構(搬送機構)
17A 入金用の搬送路
18 矯正部材
19 弾性変形部
38 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13