(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646375
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】転がり軸受の保持器
(51)【国際特許分類】
F16C 35/077 20060101AFI20200203BHJP
F16C 19/06 20060101ALN20200203BHJP
【FI】
F16C35/077
!F16C19/06
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-151526(P2015-151526)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-35329(P2016-35329A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2018年5月30日
(31)【優先権主張番号】201410374504.X
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ミン セン ル
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ チン シク ラウ
(72)【発明者】
【氏名】シ ピン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チ ケウン ロウ
【審査官】
横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0025655(US,A1)
【文献】
米国特許第05044789(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジングの端部に設けられる軸受取付部と、前記取付部に受け入れられる転がり軸受と、前記取付部の内周面と前記転がり軸受の外側リングの面との間に保持される保持リングとを備え、前記転がり軸受が前記保持リングによって前記モータハウジングに固締されている、転がり軸受の固締装置であって、
前記保持リングは、前記転がり軸受の半径方向に弾性を有し、
前記取付部は、前記モータハウジングの軸方向に垂直な端面を有し、前記保持リングは、前記半径方向に平行に延在する第1の当接部及び第2の当接部と、前記第1の当接部と前記第2の当接部とを互いに連結する内側環状部と、前記第2の当接部の端縁に連結される外側環状部とを備え、
前記取付部の前記端面は前記第2の当接部に接続され、前記第2の当接部の移動を防ぐよう構成されていることを特徴とする固締装置。
【請求項2】
前記第1の当接部は、前記転がり軸受の前記外側リングの端面に当接し、前記内側環状部は、前記転がり軸受の前記外側リングの外周面の少なくとも一部に当接し、前記外側環状部は傾斜しており、その半径方向の大きさは、前記第2の当接部から前記第1の当接部に向かって徐々に大きくなることを特徴とする、請求項1に記載の固締装置。
【請求項3】
前記内側環状部は傾斜しており、その半径方向の大きさは、前記第1の当接部から前記第2の当接部に向かって徐々に大きくなることを特徴とする、請求項1に記載の固締装置。
【請求項4】
前記内側環状部は、前記第1の当接部に接触する軸方向端部に隣接する前記転がり軸受の前記外側リングの前記外周面の一部に当接することを特徴とする、請求項2又は3に記載の固締装置。
【請求項5】
前記内側環状部は、前記転がり軸受の前記外側リングの前記外周面全体に当接することを特徴とする、請求項2に記載の固締装置。
【請求項6】
更に、前記取付部の前記端面と前記転がり軸受の前記外側リングの端面との間に位置する座金を備え、前記保持リングの前記第2の当接部及び前記転がり軸受けの前記外側リングの端面は前記座金に当接することを特徴とする、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の固締装置。
【請求項7】
前記内側環状部の軸方向の長さは、前記外側環状部の軸方向の長さよりも長いことを特徴とする、請求項2乃至6のいずれか一項に記載の固締装置。
【請求項8】
前記保持リングは、ステンレス鋼又は炭素鋼からなることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の固締装置。
【請求項9】
更に、前記転がり軸受の軸方向両端に設けられる軸受位置決めリングを備え、前記転がり軸受の内側リング及び前記各軸受位置決めリングは、モータ軸に固定され、前記軸は、前記軸受取付部、前記転がり軸受、及び前記各軸受位置決めリングを貫通することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の固締装置。
【請求項10】
前記保持リングは、前記転がり軸受の半径方向に沿って平行に延在する第1の当接部及び第2の当接部と、前記第1の当接部と前記第2の当接部とを互いに連結する内側環状部と、前記第2の当接部の端縁に連結される外側環状部とを備え、前記外側環状部は前記軸受取付部に当接し、前記外側環状部と前記軸受取付部との間、及び前記内側環状部と前記転がり軸受との間の少なくとも1つに、楔形の隙間が形成されて、前記保持リングが半径方向に弾性変形可能になっていることを特徴とする、請求項1に記載の固締装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータに関し、特に、玉軸受、ころ軸受、ニードル軸受などの転がり軸受の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マッサージベッドは、理学療法診療所、病院、美容院、温泉保養所において用いられる。人々の健康意識がますます高まってくるにつれて、ますます多くのマッサージベッドが必要とされる。
【0003】
通常のマッサージベッドは、複数の内蔵マッサージ器を備え、各マッサージ器内に、モータが取り付けられている。モータの軸は偏心輪に連結される。モータの電源を入れると、軸は偏心輪を回転させる。回転する偏心輪は、マッサージベッドの面に接触して、振動を発生させ、身体の対応する部位をマッサージする。
【0004】
上記のモータは、転がり軸受を用いて、軸を支持する。
図1を参照すると、転がり軸受100をモータハウジング300の端部の軸受ハブすなわち軸受取付部310に組み込むと、取付部310の内径と転がり軸受100の外径との間に半径方向の隙間が形成される。この隙間には接着剤が充填されて、軸受を軸受取付部に剛固定する。しかしながら、時がたつにつれ、振動や熱によって、接着剤がひび割れるなどして軸受が外れることによって、モータの故障を招いてしまう。代替法として、より大きな隙間を設けて、これにラバースリーブ又はラバーブッシュを充填することが考えられる。しかしながら、この方法は確実なものではない。実験により、モータが200時間作動した後、マッサージベッドの作動時に生じる半径方向に偏心した繰返しの負荷によって、ラバーブッシュがゆるんで故障することによって、モータの故障を招くことが分かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、固締効果が確実で用途が広い、転がり軸受の保持器が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、その一態様において、転がり軸受の固締装置を提供するものである。この固締装置は、モータハウジングの端部に設けられる軸受取付部と、前記取付部に受け入れられる転がり軸受と、前記取付部の内周面と前記転がり軸受の外側リングの面との間に保持される弾性保持リングとを備える。前記転がり軸受は、前記保持リングによって、前記モータハウジングに固締される。前記保持リングは、半径方向に弾性を有する。
【0007】
前記保持リングは、前記転がり軸受の軸方向に沿って平行に延在する第1の当接部及び第2の当接部と、前記第1の当接部と前記第2の当接部とを互いに連結する内側環状部と、前記第2の当接部の端縁に連結される外側環状部とを備え、前記第1の当接部は、前記転がり軸受の前記外側リングの端面に当接し、前記内側環状部は、前記転がり軸受の前記外側リングの外周面の少なくとも一部に当接し、前記外側環状部は傾斜しており、その半径方向の大きさは、前記第2の当接部から前記第1の当接部に向かって徐々に大きくなることが好ましい。
【0008】
前記内側環状部は傾斜しており、その半径方向の大きさは、前記第1の当接部から前記第2の当接部に向かって徐々に大きくなることが好ましい。
【0009】
前記内側環状部は、前記転がり軸受の前記外側リングの前記外周面全体に当接することが好ましい。
【0010】
前記固締装置は、更に、前記取付部の内側の端面と前記転がり軸受の前記外側リングの端面との間に係合される座金を備え、前記保持リングの前記第2の当接部は前記座金に当接することが好ましい。
【0011】
前記内側環状部の軸方向の長さは、前記外側環状部の軸方向の長さよりも長いことが好ましい。
【0012】
前記保持リングの材料は、ステンレス鋼又は炭素鋼であることが好ましい。
【0013】
前記固締装置は、更に、前記転がり軸受の軸方向両端に設けられる軸受位置決めリングを備え、前記転がり軸受の内側リング及び前記各軸受位置決めリングは、モータ軸に固定され、前記軸は、前記軸受取付部、前記転がり軸受、及び前記各軸受位置決めリングを貫通することが好ましい。
【0014】
前記保持リングは、前記転がり軸受の軸方向に沿って平行に延在する第1の当接部及び第2の当接部と、前記第1の当接部と前記第2の当接部とを互いに連結する内側環状部と、前記第2の当接部の端縁に連結される外側環状部とを備えることが好ましい。前記外側環状部は前記軸受取付部に当接する。前記外側環状部と前記軸受取付部との間、前記内側環状部と前記外側環状部との間、及び前記内側環状部と前記転がり軸受との間の少なくとも1つに、楔形の隙間が形成されて、前記保持リングが半径方向に変形可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来の転がり軸受の固締装置の断面図である。
【
図2】一実施形態による転がり軸受の固締装置の部分断面図である。
【
図4】転がり軸受固締装置の保持リングの斜視図である。
【
図5】別の側から見た、
図4の保持リングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、添付図面の図を参照して、単なる例示として本発明の好ましい実施形態を説明する。図において、複数の図に現れる同一の構造体、要素又は部品は、一般に、それらが現れる全ての図において同じ符号で表記される。図内に示される構成部品及び構造部の寸法は、一般に、便宜のため及び提示の明確さのために選択されたものであり、必ずしも縮尺通りではない。
【0017】
図2及び
図3を参照すると、本発明の好ましい実施形態による転がり軸受の固締装置は、モータハウジング1の端部に設けられる軸受取付部11と、取付部11に設けられる転がり軸受3と、モータの軸方向に対して垂直な取付部11の内端面(「端面」という語は、モータの軸方向に対して垂直な面を指す)と転がり軸受3の端面との間に設けられる座金5と、モータの軸方向に対して平行な取付部11の内周面(「周面」という語は、モータの軸方向に対して平行な面を指す)と転がり軸受3の外側リングの半径方向外周面との間に設けられる保持リング7と、転がり軸受3の軸方向両端に設けられる軸受位置決めリング9とを備える。
【0018】
転がり軸受3は、モータの軸に固定される内側リングと、外側リングと、内側リングと外側リングとの間に設けられる玉又はころと、を備えることが好ましい。
図4及び
図5を参照すると、保持リング7は、第1の当接部71及び第2の当接部73と、第1及び第2の当接部71,73を互いに連結する内側環状部75と、第2の当接部73の端縁に連結される外側環状部77とを備える。第1の当接部71は、転がり軸受3の半径方向に延在し、転がり軸受3の外側リングの端面に当接する。第2の当接部は、玉軸受3の半径方向に延在し、座金5に当接する。内側環状部75は傾斜しており、その半径方向の大きさは、第1の当接部71から第2の当接部73に向かう方向に徐々に大きくなる。外側環状部77は傾斜しており、その半径方向の大きさは、第2の当接部73から第1の当接部71に向かう方向に徐々に大きくなる。転がり軸受3は、取付部11の内周面に当接する外側環状部77、及び転がり軸受3の外側リングの面に当接する内側環状部75によって、固締される。すなわち、転がり軸受3は、保持リング7によって固締される。保持リング7は、半径方向に弾性を有する。
【0019】
内側環状部75の軸方向の長さは、外側環状部77の軸方向の長さよりも長いことが好ましい。
【0020】
転がり軸受3が保持リング7によって確実に固締されるため、保持リング7はステンレス鋼又は炭素鋼から形成することができる。
【0021】
各軸受位置決めリング9は軸10に固定されて、転がり軸受3を位置決めし、軸方向に動かないように転がり軸受3を支持する。
【0022】
保持リング7が、軸受取付部11の内周面と転がり軸受3の外側リングの外周面との間に組み付けられた後、保持リング7の外側環状部77は、取付部11の内周面によって押し込まれる。これに応じて、外側環状部77によって力が生じて、内側環状部75が転がり軸受3の外側リングの面に押し当たることによって、転がり軸受3を確実に保持するようになっている。転がり軸受3が、半径方向荷重、特に、マッサージベッドの作動時の半径方向の偏心交互荷重を受ける場合、保持リング7が転がり軸受3をしっかりと把持し続けることによって、モータの寿命が大きく延びる。内側環状部75は、保持リング7の第1の当接部71に接触する軸方向端部に隣接する領域のみにおいて、転がり軸受3の外側リングの外面に当接することが好ましい。
【0023】
上記実施形態では、座金5は、転がり軸受3の外側リングの端面に押し当たる状態であるように構成されて、転がり軸受3が保持リング7から外れやすくなるのを防ぐ。別の実施形態として、
図3に示すような座金5に当たる取付部11の端面を延長して、転がり軸受3の外側リングの端面に直接当たるようにすることができる。このような場合、座金5を省くことができる。
【0024】
上記実施形態では、保持リング7の半径方向の弾性によって、ある程度の軸のブレが許容される。別の実施形態として、内側環状部75が軸方向に延びて、転がり軸受3の外側リングの周面全体に当接することができる。更に別の実施形態では、内側環状部75の断面がV字形になるように内側環状部75を屈曲させ、内側環状部75の中間部は転がり軸受の外側リングの外周面に当接し、外側環状部77は傾斜したままである。したがって、外側環状部と軸受取付部との間、内側環状部と外側環状部との間、又は内側環状部と転がり軸受との間に、楔形の隙間が形成されて、保持リングが半径方向に変形可能になっている。
【0025】
要するに、上記のような転がり軸受固締装置では、モータハウジングの端部の軸受取付部の内周面と転がり軸受の外側リングの面との間に、弾性保持リングが設けられる。転がり軸受が保持リングによって確実に固締されることによって、モータの寿命が延びる。更に、この転がり軸受固締装置は用途が広く、マッサージベッドやマッサージチェアのモータだけでなく、半径方向の振動荷重が高いその他のモータにも有用である。
【0026】
本出願の説明及び請求項において、動詞「備える(comprise)」、「含む(include)」、「含む(contain)」及び「有する(have)」、並びにその変形形態は、説明する要素又は特徴の存在を規定するために包括的な意味で使用され、追加の要素又は特徴の存在を排除するものではない。
【0027】
明確にするために別個の実施形態に関連して説明されている本発明の特定の特徴は、1つの実施形態において組み合わせて提供してもよいものと理解される。逆に、簡潔にするために1つの実施形態に関連して説明されている本発明の種々の特徴を、個別に又はそれらを適当に組み合わせて提供してもよい。
【0028】
上記の実施形態は単なる例示であり、請求項に定義する本発明の範囲から逸脱することなく、他の様々な修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0029】
1 モータハウジング
3 転がり軸受
5 座金
7 保持リング
9 軸受位置決めリング
10 軸
11 軸受取付部
71 第1の当接部
73 第2の当接部
75 内側環状部
77 外側環状部
100 転がり軸受
300 モータハウジング
310 軸受取付部