(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1気体が前記トウと合流する合流位置と前記搬送方向の最下流側の前記開繊室の出口との間の中央よりも下流側に、前記吐出口が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトウ開繊装置。
前記吐出口が設けられた位置において、前記トウの前記搬送方向の上流側に向かう線と、前記粒状物の流通方向の上流側に向かう線との間の角度が鋭角である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトウ開繊装置。
前記吐出口は、前記開繊室を搬送される前記トウの上面の前記搬送方向と直交する方向に偏在する少なくとも1つの偏在領域に向けて前記粒状物を吐出する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のトウ開繊装置。
前記開繊室よりも前記搬送方向の下流側の位置に設けられ、前記搬送路を通過した前記トウを一時的に滞留させる滞留室が内部に形成された滞留部を更に備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載のトウ開繊装置。
トウ開繊装置の筒状の本体部の内部に形成され、且つ、少なくとも1つの開繊室を含むトウの搬送路に、前記トウの搬送方向の最下流側の前記開繊室の出口よりも上流側に設けられた気体導入部から第1気体を導入することにより、前記搬送路に長繊維のトウを搬送すると共に前記開繊室において前記トウを前記第1気体で開繊し、
前記気体導入部よりも前記トウの搬送方向の下流側で、且つ、前記搬送方向の最下流側の前記開繊室の出口よりも前記搬送方向の上流側の位置に設けられた前記トウ開繊装置の吐出口より、粒状物供給部から供給される粒状物を前記トウに向けて吐出させる、繊維シートの製造方法。
前記粒状物が流通する少なくとも1つの流通路が設けられ、且つ、前記粒状物の流通方向における前記流通路の出口が前記吐出口である前記本体部と、加圧された第2気体と共に前記粒状物を供給する前記粒状物供給部とを用い、前記開繊室内を搬送される前記トウに向けて、前記吐出口から前記第2気体と共に前記粒状物を噴出させる、請求項11に記載の繊維シートの製造方法。
前記第1気体が前記トウと合流する合流位置と前記搬送方向の最下流側の前記開繊室の出口との間の中央よりも下流側に設けられた前記吐出口から、前記粒状物を吐出させる、請求項11〜13のいずれか1項に記載の繊維シートの製造方法。
前記吐出口が設けられた位置において、前記搬送方向の上流側に向かう線と、前記粒状物の流通方向の上流側に向かう線との間の角度が鋭角に設定された前記本体部を用いて、前記吐出口から前記粒状物を吐出させる、請求項11〜14のいずれか1項に記載の繊維シートの製造方法。
前記開繊室を搬送される前記トウの上面の前記搬送方向と直交する方向に偏在する少なくとも1つの偏在領域に向けて、前記吐出口から前記粒状物を吐出させる、請求項11〜15のいずれか1項に記載の繊維シートの製造方法。
前記開繊室を形成する内周面の周方向の一部から前記開繊室内に向けて突出して前記トウを成型するための少なくとも1つの成型部を有する前記本体部を用い、前記トウの前記成型部により成型された領域、又は、前記トウの前記成型部により成型された領域以外の領域のいずれか一方を前記偏在領域に設定して、前記吐出口から前記粒状物を吐出させる、請求項16に記載の繊維シートの製造方法。
前記搬送方向の上流側から下流側に向かって、前記開繊室の流路断面積が増加する領域を有する前記本体部を用いる、請求項11〜17のいずれか1項に記載の繊維シートの製造方法。
前記開繊室よりも前記搬送方向の下流側の位置に設けられ、内部に滞留室が形成された滞留部の前記滞留室に、前記搬送路を通過した前記トウを一時的に滞留させる、請求項11〜18のいずれか1項に記載の繊維シートの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粒状物を含む繊維シートを製造する場合、例えば、繊維シートの所望の位置の内部に粒状物を分散させ、粒状物の特性を繊維シートで局所的に発現できれば、繊維シートの全体で粒状物の特性を発現させる場合に比べて、繊維シートを高機能化できると共に、繊維シートの設計自由度を向上できるので望ましい。
【0006】
そこで本発明は、粒状物を含み且つ長繊維のトウを用いて構成される繊維シートの所望の位置の内部に粒状物を分散させ、粒状物の特性を繊維シートで局所的に発現可能にすると共に、繊維シートの設計自由度を向上可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るトウ開繊装置は、長繊維のトウが第1気体で開繊される少なくとも1つの開繊室を含む前記トウの搬送路が内部に形成された筒状の本体部と、前記トウの搬送方向の最下流側の前記開繊室の出口よりも前記搬送方向の上流側の位置に設けられ、前記第1気体を前記搬送路に導入する気体導入部と、前記トウに添加するための粒状物を供給する粒状物供給部と、前記気体導入部よりも前記搬送方向の下流側で、且つ、前記搬送方向の最下流側の前記開繊室の出口よりも前記搬送方向の上流側の位置に設けられ、前記粒状物供給部から供給される前記粒状物を前記トウに向けて吐出する吐出口と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、トウの搬送方向の最下流側の開繊室の出口よりもトウの搬送方向の上流側の位置で、吐出口から粒状物がトウに向けて吐出されるので、気体導入部から搬送路に導入されて第1気体で開繊されるトウの繊維間隙を通じて、トウの内部の十分な深さの領域まで粒状物を入り込ませて良好に分散させることができる。また、気体導入部よりもトウの搬送方向の下流側の位置で、吐出口から粒状物がトウに向けて吐出されるので、粒状物の過度な拡散を抑制して、トウの所望の位置に粒状物を配置させ易くすることができ、粒状物の特性をトウで局所的に発現させることができる。よって、このように粒状物を含ませたトウを用いて繊維シートを製造することにより、繊維シートの所望の位置の内部に粒状物を分散させ、粒状物の特性を繊維シートで局所的に発現させることができると共に、繊維シートの設計自由度を向上できる。
【0009】
前記本体部には、前記粒状物が流通する少なくとも1つの流通路が設けられ、前記粒状物供給部は、加圧された第2気体と共に前記粒状物を供給し、前記吐出口は、前記粒状物の流通方向における前記流通路の出口であり、前記開繊室内を搬送される前記トウに向けて、前記第2気体と共に前記粒状物を噴出してもよい。
【0010】
このように、開繊室内を搬送されるトウに向けて、吐出口から加圧された第2気体と共に粒状物を噴出することで、開繊中のトウの内部に粒状物を勢いよく添加し、粒状物を入り込ませることができる。よって、トウに粒状物を添加する位置において、トウの内部に粒状物を良好に配置することができる。
【0011】
前記吐出口は、前記トウの上部に向けて前記粒状物を吐出してもよい。これにより、トウの上面から所定の深さまでの領域に、粒状物を分散させることができる。
【0012】
前記第1気体が前記トウと合流する合流位置と前記搬送方向の最下流側の前記開繊室の出口との間の中央よりも下流側に、前記吐出口が設けられていてもよい。これにより、開繊室において、開繊がある程度進行しているトウに粒状物を添加でき、開繊されるトウの繊維間隙を通じて、トウ所望の位置に粒状物を良好に配置することができる。
【0013】
前記吐出口が設けられた位置において、前記トウの前記搬送方向の上流側に向かう線と、前記粒状物の流通方向の上流側に向かう線との間の角度が鋭角でもよい。これにより、トウの搬送方向の下流側に向かって、粒状物の流通方向をトウの搬送方向に近づけることができ、搬送されるトウに粒状物を効率よく添加できる。
【0014】
前記吐出口は、前記開繊室を搬送される前記トウの上面の前記搬送方向と直交する方向に偏在する少なくとも1つの偏在領域に向けて前記粒状物を吐出してもよい。これにより、トウの少なくとも1つの偏在領域に粒状物が添加されるので、トウの予め設定された偏在領域で、トウの内部に良好に粒状物を配置し、トウで局所的に粒状物の特性を発現させることができる。
【0015】
前記本体部は、前記開繊室を形成する内周面の周方向の一部から前記開繊室内に向けて突出して前記トウを成型するための少なくとも1つの成型部を有し、前記偏在領域は、前記トウの前記成型部により成型された領域、又は、前記トウの前記成型部により成型された領域以外の領域のいずれか一方でもよい。
【0016】
これにより、トウの成型部により成型された領域、又は、トウの成型部により成型されていない領域のいずれか一方に対応する位置で、トウの内部に粒状物を配置し、粒状物の特性を発現させることができる。
【0017】
前記本体部は、前記搬送方向の上流側から下流側に向かって、前記開繊室の流路断面積が増加する領域を有してもよい。これにより、前記搬送方向の上流側から下流側に向かって流路断面積が増加する開繊室の領域で、トウを効率よく開繊できる。よって、気体導入部よりもトウの搬送方向の下流側で、且つ、開繊室の出口よりも搬送方向の上流側の位置において、トウに粒状物を添加し、開繊されるトウの繊維間隙を通じて、トウの内部に粒状物を良好に分散させることができる。
【0018】
前記開繊室よりも前記搬送方向の下流側の位置に設けられ、前記搬送路を通過した前記トウを一時的に滞留させる滞留室が内部に形成された滞留部を更に備えてもよい。これにより、粒状物を含む開繊されたトウを、滞留部で一時的に滞留させ、トウの形状を整えることができる。
【0019】
本発明の一態様に係る繊維シート製造装置は、第1シートを搬送ラインに供給する第1シート供給部と、上記いずれかのトウ開繊装置と、前記トウ開繊装置により開繊されたトウを前記搬送ラインにおける前記第1シートとの間で挟むように、第2シートを前記搬送ラインに供給する第2シート供給部と、を備える。
【0020】
これにより、上記いずれかのトウ開繊装置で開繊されて粒状物が添加されたトウを第1シート及び第2シートで挟むことにより、繊維シートを製造できる。
【0021】
本発明の一態様に係る繊維シートの製造方法は、トウ開繊装置の筒状の本体部の内部に形成され、且つ、少なくとも1つの開繊室を含むトウの搬送路に、前記トウの搬送方向の最下流側の前記開繊室の出口よりも上流側に設けられた気体導入部から第1気体を導入することにより、前記搬送路に長繊維のトウを搬送すると共に前記開繊室において前記トウを前記第1気体で開繊し、前記気体導入部よりも前記トウの搬送方向の下流側で、且つ、前記搬送方向の最下流側の前記開繊室の出口よりも前記搬送方向の上流側の位置に設けられた前記トウ開繊装置の吐出口より、粒状物供給部から供給される粒状物を前記トウに向けて吐出させる。
【0022】
上記製造方法によれば、トウの搬送方向の最下流側の開繊室の出口よりもトウの搬送方向の上流側の位置で、吐出口から粒状物をトウに向けて吐出するので、気体導入部から搬送路に導入されて第1気体で開繊するトウの繊維間隙を通じて、トウの内部の十分な深さの領域まで粒状物を入り込ませて良好に分散させることができる。また、気体導入部よりもトウの搬送方向の下流側の位置で、吐出口から粒状物をトウに向けて吐出するので、粒状物の過度な拡散を抑制して、トウの所望の位置に粒状物を配置させ易くすることができ、粒状物の特性をトウで局所的に発現させることができる。よって、このように粒状物を含ませたトウを用いて繊維シートを製造することにより、繊維シートの所望の位置の内部に粒状物を分散させ、粒状物の特性を繊維シートで局所的に発現させることができると共に、繊維シートの設計自由度を向上できる。
【0023】
前記粒状物が流通する少なくとも1つの流通路が設けられ、且つ、前記粒状物の流通方向における前記流通路の出口が前記吐出口である前記本体部と、加圧された第2気体と共に前記粒状物を供給する前記粒状物供給部とを用い、前記開繊室内を搬送される前記トウに向けて、前記吐出口から前記第2気体と共に前記粒状物を噴出させてもよい。
【0024】
このように、開繊室内を搬送されるトウに向けて、吐出口から加圧された第2気体と共に粒状物を噴出させることで、開繊中のトウの内部に粒状物を勢いよく添加し、粒状物を入り込ませることができる。よって、トウに粒状物を添加する位置において、トウの内部に粒状物を良好に配置することができる。
【0025】
前記トウの上部に向けて、前記吐出口から前記粒状物を吐出させてもよい。これにより、トウの上面から所定の深さまでの領域に、粒状物を分散させることができる。
【0026】
前記第1気体が前記トウと合流する合流位置と前記搬送方向の最下流側の前記開繊室の出口との間の中央よりも下流側の位置に設けられた前記吐出口から、前記粒状物を吐出させてもよい。これにより、開繊室において、開繊がある程度進行しているトウに粒状物を添加でき、開繊されるトウの繊維間隙を通じて、トウの所望の位置に粒状物を良好に配置することができる。
【0027】
前記吐出口が設けられた位置において、前記搬送方向の上流側に向かう線と、前記粒状物の流通方向の上流側に向かう線との間の角度が鋭角に設定された前記本体部を用いて、前記吐出口から前記粒状物を吐出させてもよい。これにより、トウの搬送方向の下流側に向かって、粒状物の流通方向をトウの搬送方向に近づけることができ、搬送されるトウに粒状物を効率よく添加できる。
【0028】
前記開繊室を搬送される前記トウの上面の前記搬送方向と直交する方向に偏在する少なくとも1つの偏在領域に向けて、前記吐出口から前記粒状物を吐出させてもよい。
【0029】
これにより、トウの少なくとも1つの偏在領域に粒状物を添加できるので、トウの予め設定された偏在領域で、トウの内部に良好に粒状物を配置し、トウで局所的に粒状物の特性を発現させることができる。
【0030】
前記開繊室を形成する内周面の周方向の一部から前記開繊室内に向けて突出して前記トウを成型するための少なくとも1つの成型部を有する前記本体部を用い、前記トウの前記成型部により成型された領域、又は、前記トウの前記成型部により成型された領域以外の領域のいずれか一方を前記偏在領域に設定して、前記吐出口から前記粒状物を吐出させてもよい。
【0031】
これにより、トウの成型部により成型された領域、又は、トウの成型部により成型されていない領域のいずれか一方に対応する位置で、トウの内部に粒状物を配置し、粒状物の特性を発現させることができる。
【0032】
前記搬送方向の上流側から下流側に向かって、前記開繊室の流路断面積が増加する領域を有する前記本体部を用いてもよい。
【0033】
これにより、前記搬送方向の上流側から下流側に向かって流路断面積が増加する開繊室の領域で、トウを効率よく開繊できる。よって、気体導入部よりもトウの搬送方向の下流側で、且つ、開繊室の出口よりも搬送方向の上流側の位置において、トウに粒状物を添加し、開繊されるトウの繊維間隙を通じて、トウの内部に粒状物を良好に分散させることができる。
【0034】
前記開繊室よりも前記搬送方向の下流側の位置に設けられ、内部に滞留室が形成された滞留部の前記滞留室に、前記搬送路を通過した前記トウを一時的に滞留させてもよい。
【0035】
これにより、粒状物を含む開繊されたトウを、滞留部で一時的に滞留させ、トウの形状を整えることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、粒状物を含み且つ長繊維のトウを用いて構成される繊維シートの所望の位置の内部に粒状物を分散させ、粒状物の特性を繊維シートで局所的に発現可能にすると共に、繊維シートの設計自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の各実施形態について、各図を参照して説明する。
【0039】
(第1実施形態)
[繊維シート製造装置]
図1は、第1実施形態に係る繊維シート製造装置1の全体図である。繊維シート製造装置1は、トウ開繊部2とシート積層部3とを備える。トウ開繊部2の近傍には、梱包箱50が載置される。梱包箱50には、捲縮された長繊維のトウからなるベール状のトウバンド60が折り畳まれて梱包されている。トウバンド60の繊維は、ここでは長繊維のセルロースアセテート繊維である。しかしながら、トウバンド60の繊維は、セルロースアセテート繊維以外の繊維であってもよい。一例として、繊維シート製造装置1では、トウバンド60の幅方向が水平に保たれながら、トウバンド60が搬送方向P1に搬送される。
【0040】
トウ開繊部2は、トウバンド60に外力を付与し、トウバンド60の捲縮の一部を解除することで、トウバンド60が嵩高くなるように調整する。トウ開繊部2は、搬送方向P1の上流側から下流側に向かって、第1開繊装置4、ガイド5、第2開繊装置6、第1開繊ロール7、第2開繊ロール8、トウ開繊装置9、及び、搬送部10を有する。
【0041】
第1開繊装置4は、梱包箱50から上方に繰り出されたトウバンド60に空気等の気体を吹き付け、トウバンド60を搬送方向P1と直交する一方向(ここではトウバンド60の幅方向)に開繊する。ガイド5は、第1開繊装置4を通過したトウバンド60を第2開繊装置6に案内する。第1開繊装置4とガイド5とは、一例として、トウ開繊部2の筐体から上方に延設された不図示のアーム(ブーム)にそれぞれ支持される。第2開繊装置6は、一例として、第1開繊装置4と同様の構成を有し、トウバンド60を更に前記一方向に開繊する。第1開繊装置4と第2開繊装置6とは、バンディングジェット装置とも称する。
【0042】
第1開繊ロール7は、一対のロール11、12を有する。第2開繊ロール8は、一対のロール13、14を有する。第2開繊ロール8は、第1開繊ロール7の周速度よりも早い周速度で回転駆動される。第2開繊装置6を通過したトウバンド60は、一対のロール11、12の間に挿通され、且つ、一対のロール13、14の間に挿通される。トウバンド60は、第1開繊ロール7と第2開繊ロール8とにより、搬送方向P1に張力を付与されて開繊される。一対のロール11、12の一方のロールと、一対のロール13、14の一方のロールとの少なくともいずれかには、トウバンド60を幅方向に開繊するための溝部を周方向に螺旋状に形成してもよい。トウ開繊装置9は、第2開繊ロール8に搬送されるトウバンド60を開繊する。搬送部10は、トウ開繊装置9を通過したトウバンド60を引き取って、搬送方向P1の下流側へ搬送する。搬送部10は、互いに平行に軸支された一対の搬送ロール(引取ロール)15、16を有する。搬送部10において、トウバンド60は、一対の搬送ロール15、16の間に挿通される。トウバンド60は、一対の搬送ロール15、16に引き取られて、搬送方向P1の下流側に搬送される。
【0043】
シート積層部3は、開繊されたトウバンド60に対して、第1シート61及び第2シート62を積層する。シート積層部3は、第1シート(ボトムシート)供給部17、シート搬送部18、第2シート(トップシート)供給部19、接着剤添着部20、シート成型部21、及び、貼着部22を有する。第1シート供給部17は、軸支されたシートロール17aから帯状の第1シート61を繰り出して搬送ラインL上に供給する。シート搬送部18は、第1シート61を搬送ラインLに搬送する。第1シート61の上には、開繊されたトウバンド60が供給される。第2シート供給部19は、軸支されたシートロール19aから帯状の第2シート62を繰り出し、第1シート61と第2シート62との間でトウバンド60を挟んで積層するように、第2シート62を搬送ラインL上に供給する。接着剤添着部20は、第2シート供給部19よりも搬送方向P1の下流側で、第2シート62に接着剤(例えばホットメルト型接着剤)を添着する。貼着部22は、第1シート61と第2シート62とを押圧して、第1シート61と第2シート62とをトウバンド60を挟んで積層された状態で貼着する。繊維シート製造装置1では、貼着部22で貼着された第1シート61、トウバンド60、及び、第2シート62を切断することにより、所定の形状の繊維シート63が製造される。
【0044】
[トウ開繊装置]
図2は、
図1のトウ開繊装置9の搬送方向P1と直交する方向から見た部分的な鉛直断面図である。トウ開繊装置9は、ノズル部25、本体部26、一対の粒状物供給部27、及び、滞留部28を備える。
【0045】
ノズル部25は、第1気体G1と共にトウバンド60を搬送方向P1の下流側に搬送する。ノズル部25は、混合部29とノズル本体部30とを有する。混合部29は、搬送方向P1に延びる管状部であり、トウバンド60と第1気体G1とを混合する。混合部29の上流側の側部には、気体導入口29aが設けられている。気体導入口29aは、本体部26の搬送方向P1の最下流側の開繊室(ここでは第2開繊室43c)の出口43dよりも搬送方向P1の上流側の位置に設けられている。気体導入口29aは、ノズル部25の内部空間40に第1気体G1を導入する気体導入部であり、不図示のコンプレッサに接続されている。第1気体G1は、一例として空気であり、トウバンド60を搬送方向P1に搬送し且つ開繊するために用いられる。第1気体G1は、前記コンプレッサにより加圧されて気体導入口29aに導入され、ノズル部25の内部を通過した後、本体部26の搬送路43に導入される。混合部29の上流端部29bには、トウバンド導入口29cが設けられている。トウバンド導入口29cには、外部からノズル部25の内部空間40にトウバンド60が導入される。混合部29の下流端部29dは、本体部26に接続されている。
【0046】
ノズル本体部30は、混合部29の内部で、混合部29の搬送方向P1の上流側に設けられている。搬送方向P1の下流側におけるノズル本体部30の先端には、テーパー部30aが形成されている。テーパー部30aは、搬送方向P1の上流側から下流側に向かって、先細りの形状を有する。テーパー部30aの外周面と対向する混合部29の内周面は、テーパー部30aの外周面と離隔しながら、搬送方向P1の上流側から下流側に向かって縮径されている。これにより、テーパー部30aの外周面と混合部29の内周面との間には、気体導入口29aから導入される第1気体G1を内部空間40にジェット状に噴出させる環状断面の流路41が設けられている。ノズル本体部30の内部には、トウバンド導入口29cから混合部29の長手方向に延びるトウバンド導入路42が設けられている。トウバンド導入路42の搬送方向P1の出口は、気体導入口29aよりも搬送方向P1の下流側の位置に設けられている。トウバンド導入路42を通過したトウバンド60は、流路41を通過したジェット状の第1気体G1と混合されて内部空間40に搬送される。なお、トウバンド導入路42の前記出口と気体導入口29aとは、鉛直方向から見て重なる位置に設けられていてもよいし、トウバンド導入路42の前記出口が、気体導入口29aよりも搬送方向P1の上流側の位置に設けられていてもよい。
【0047】
本体部26は、トウバンド60を開繊する。本体部26は筒状であり、内部にトウバンド60の搬送路43を有する。搬送路43は、搬送方向P1に延びている。本体部26の出口26bの位置における搬送路43の流路断面積は、本体部26の入口26aの位置における搬送路43の流路断面積よりも大きい(
図3参照)。搬送路43は、流路43a、第1開繊室43b、及び、第2開繊室43cを含んでいる。トウバンド60は、搬送路43を搬送されながら、第1気体G1により開繊される。なお、ノズル部25と本体部26とは、一体的に構成してもよい。
【0048】
本体部26は、第1部材31と第2部材32とを有する。第1部材31と第2部材32とは、ネジ等の不図示の締結部材を用いて、互いに組み合わされている。第1部材31と第2部材32との一方には、少なくとも1つの流通路が設けられている。ここでは、第2部材32において、一対の第1流通路44がトウバンド60の幅方向に並設されている。第1流通路44は、粒状物供給部27から供給される粒状物65を流通させて、搬送路43を搬送されるトウバンド60に粒状物65を添加するために用いられる。第1流通路44は、本体部26の内周面26cと外周面26dとを鉛直方向に連通させて設けられている。第1流通路44では、上方から下方に向かう方向を流通方向P2として粒状物65が流通する。第1流通路44の出口44bが設けられた本体部26の位置M0において、搬送方向P1の上流側に向かう線A1と、第1流通路44における粒状物65の流通方向P2の上流側に向かう線A2との間の角度θは、鋭角に設定されている。角度θの値は、10°以上90°未満の範囲の値が望ましく、20°以上70°以下の範囲の値がより望ましく、30°以上60°以下の範囲の値が一層望ましい。ここでは、角度θは略45°に設定されている。このように第1流通路44は、流通方向P2の上流側から下流側に向かって、搬送方向P1に対して下り勾配に傾斜して延びている。
【0049】
第1流通路44の入口44aは、本体部26の外周面26d側における第2部材32の上面に設けられている。第2部材32の上面には、鉛直方向を筒軸方向とする一対の筒状の接続部32aが設けられ、各入口44aの開口周縁が、各接続部32aにより囲まれている。第1流通路44の出口44bは、第2部材32の本体部26の内周面26c側に設けられている。トウ開繊装置9は、粒状物供給部27から供給される粒状物65をトウバンド60に向けて吐出する吐出口として、出口44bを有している。
【0050】
出口44bは、気体導入口29aよりも搬送方向P1の下流側で、且つ、搬送方向P1の最下流側の開繊室の出口(ここでは第2開繊室43cの出口43d)よりも搬送方向P1の上流側の位置に設けられている。出口44bは、トウ開繊装置9において、気体導入口29aから導入される第1気体G1とトウバンド導入路42から導入されるトウバンド60との合流位置(トウバンド導入路42の搬送方向P1の出口)Nよりも下流側で、且つ、出口43dよりも上流側の位置に設けられることが望ましい。更に、出口44bは、合流位置Nと出口43dとの間の中央M1よりも下流側で、且つ、出口43dよりも搬送方向P1の上流側の位置に設けられることがより望ましい。更に、出口44bは、中央M1と出口43dとの間の中央M2よりも搬送方向P1の下流側で、且つ、出口43dよりも搬送方向P1の上流側の位置に設けられることが一層望ましい。ここでは、中央M2と出口43dとの間において、出口44bの開口周縁のうち、搬送方向P1の下流側の部分が、第1開繊室43bの下流側開繊室43b2の入口43eと鉛直方向に重なる位置に、出口44bが設けられている。
【0051】
粒状物供給部27は、第1開繊室43b内を搬送されるトウバンド60に粒状物65を添加する。粒状物供給部27は、供給管部33とホッパ34とを有する。供給管部33は、鉛直方向に延びている。供給管部33の上流端部33aは、ホッパ34と接続されている。供給管部33の下流端部33bは、接続部32aと接続されている。供給管部33の内部には、粒状物65が流通する第2流通路45が設けられている。第2流通路45は、供給管部33の長手方向に延びている。
【0052】
供給管部33の途中には、ノズル部37が設けられている。ノズル部37は、混合部38とノズル本体部39とを有する。混合部38の側部には、気体導入口38aが設けられている。気体導入口38aは、第2流通路45内に第2気体G2を導入するための気体導入部であり、ここでは前記コンプレッサに接続されている。混合部38は、粒状物65と第2気体G2とを混合する。第2気体G2は、一例として空気である。
【0053】
ノズル本体部39は、混合部38の内部に設けられている。第2流通路45の流通方向P2の下流側におけるノズル本体部39の先端には、テーパー部39aが形成されている。テーパー部39aは、流通方向P2の上流側から下流側に向かって、先細りの形状を有する。テーパー部39aの外周面と対向する混合部38の内周面は、テーパー部39aの外周面と離隔しながら、流通方向P2の上流側から下流側に向かって縮径されている。これにより、テーパー部39aの外周面と混合部38の内周面との間には、気体導入口38aから導入される第2気体G2を第2流通路45にジェット状に噴出させる環状断面の流路47が設けられている。ノズル本体部39の内部には、流通方向P2に延び且つ粒状物65を流通させるための流通路48が設けられている。
【0054】
第2気体G2は、前記コンプレッサにより加圧されて気体導入口33cに導入され、供給管部33の第2流通路45を流通した後、接続部32aの第1流通路44を流通し、第1開繊室43b内に向けて、ホッパ34から供給孔34aを介して供給される粒状物65と共に噴出される。なお、第2気体G2は、加圧された気体に限定されず、大気圧又は負圧に設定された気体でもよい。
【0055】
ホッパ34は、粒状物65を貯留する。ホッパ34の下方には、第2流通路45側に粒状物65を供給する供給孔34aが設けられている。粒状物65は、一例としてSAPである。しかしながら粒状物65は、SAPに限定されず、消臭材、抗菌材、及び、吸着材のいずれかでもよい。脱臭材及び抗菌材には、例えば所定の樹脂材料を利用できる。また吸着材には、例えば所定の樹脂材料の他、活性炭を利用できる。
【0056】
滞留部28は、搬送路43を通過したトウバンド60を一時的に滞留させることにより、トウバンド60の過度の膨張を抑制すると共に、トウバンド60の嵩又は密度を調整する。滞留部28は、複数の長尺部材35を有する。各長尺部材35は、本体部26の端面26gに接続される。各長尺部材35は、搬送路43の周方向に互いに離隔しながら、本体部26から搬送方向P1の下流側に向けて延びている。各長尺部材35は、一定の弾性を有する金属製の棒状部材で構成される。滞留部28には、複数の長尺部材35で囲まれた滞留室46が形成されている。
【0057】
複数の長尺部材35は、搬送方向P1の上流側から下流側に向かって互いに接近している。これにより、滞留室46の搬送方向P1と直交する断面(流路断面)が、搬送方向P1の上流側から下流側に向かって漸減されている。滞留室46において、トウバンド60が各長尺部材35から受ける押圧力は、トウバンド60が滞留室46を搬送方向P1の下流側に搬送されるにつれて大きくなる。これによりトウバンド60は、滞留室46に滞留しながら複数の長尺部材35により搬送方向P1に圧縮され、繊維間隙が狭められて密度が増加する。本体部26から排出された第1気体G1及び第2気体G2は、長尺部材35同士の隙間から外部に抜けて拡散する。なお、長尺部材35は棒状部材に限定されず、例えば、板状部材でもよい。長尺部材35を板状部材で構成する場合は、板状部材の板面をトウバンド60に面接触させる。
【0058】
図3は、
図2の本体部26の斜め上方から見た組図である。第1部材31と第2部材32とは、共通の構成を有する。第1部材31と第2部材32とは、鉛直方向を厚み方向とし、搬送方向P1を長手方向とし、且つ、搬送方向P1と水平面内で直交する方向を幅方向とする略直方体状に形成されている。第1部材31と第2部材32とが互いに対向する面の中央には、搬送方向P1に延びる溝部31b、32bが形成されている。第1部材31の溝部31bを挟む両側の部分は、第2部材32の溝部32bを挟む両側の部分と面接触する。これにより、溝部31b、32bが組み合わされて第1部材31と第2部材32との各内表面が連続し、本体部26の内周面26cが形成される。この本体部26の内周面26cによって、流路43a、第1開繊室43b、及び、第2開繊室43cがそれぞれ形成されている。第2部材32において、各接続部32aは、本体部26の幅方向における溝部32bの両端に出口44bが位置するように設けられている。一例として、各接続部32aは、第2部材32の上面に溶接により接続されている。なお、各接続部32aは、本体部26の幅方向における溝部32bの両端よりも本体部26の中央側に位置するように設けられてもよい。
【0059】
本体部26の入口26aには、ノズル部25の下流端部29dが接続されている。これにより、流路43aが、混合部29の内部空間40と接続されている。本体部26は、上流側部26eと下流側部(アダプタ部とも称する。)26fとを有する。上流側部26eの内部には、流路43aと第1開繊室43bとが形成されている。流路43aは、上流側部26eの搬送方向P1の上流側に位置し、第1開繊室43bは、上流側部26eの搬送方向P1の下流側に位置している。第1開繊室43bは、上流側開繊室43b1と下流側開繊室43b2とを有する。上流側開繊室43b1の幅W1は、搬送方向P1の上流側から下流側に向けて漸増している。下流側開繊室43b2の幅W2は、搬送方向P1の上流側から下流側に向けて、上流側開繊室43b1の幅W1よりも急な割合で漸増している。これにより、第1開繊室43bの流路断面積は、搬送方向P1の上流側から下流側に向けて漸増している。このように本体部26は、入口26aから出口26bに向かう方向において、搬送路43の流路断面積が増加する領域を有する。第1開繊室43b内をトウバンド60が搬送される際には、第1気体G1により、トウバンド60が第1開繊室43bの形状に対応して膨張し、トウバンド60の各繊維が効率よく開繊される。
【0060】
下流側部26fの内部には、第2開繊室43cが形成されている。第2開繊室43cは、第1開繊室43bと連続している。第2開繊室43cの幅W3は、下流側開繊室43b2の出口における幅W2よりも拡幅されている。これにより、第2開繊室43cの流路断面積は、下流側開繊室43b2の出口における流路断面積よりも拡大されている。第2開繊室43cの幅W3は、搬送方向P1に一定である。第2開繊室43c内をトウバンド60が搬送される際には、トウバンド60は更に開繊されて膨張する。
【0061】
第1開繊室43bと第2開繊室43cとの各流路断面は、一例として、その幅方向の寸法が、鉛直方向の寸法よりも大きい形状を有する。これにより、第1開繊室43bと第2開繊室43cとの各流路断面は、その幅方向を長手方向とする扁平な形状を有する。なお、本実施形態では、本体部26を通過したトウバンド60の断面形状は限定されないので、第1開繊室43bと第2開繊室43cとの各流路断面は、略円形状又は略方形状を有してもよい。或いは、第1開繊室43bと第2開繊室43cとの各流路断面は、幅方向を長軸方向とし、鉛直方向を短軸方向とする略楕円形状を有してもよい。
【0062】
上流側部26eと下流側部26fとの境界部分には、搬送方向P1と直交する環状の端面26gが形成されている。端面26gは、第2開繊室43cの周方向に延びている。端面26gには、出口26bの開口周縁に沿って、複数の孔26hが設けられている。各孔26hには、各長尺部材35が接続される(
図2参照)。これにより、滞留室46の流路断面形状は、各長尺部材35が端面26gに接続される接続位置における搬送路43の流路断面形状と相似している。従って、第1開繊室43bと第2開繊室43cとにより開繊されながら成型されたトウバンド60の形状が、滞留室46においても保持される。
【0063】
図4は、
図1のトウ開繊装置9の鉛直方向から見下ろした水平断面図である。
図4では、各出口44bの開口周縁の位置を破線で示している。各出口44bは、トウバンド60の上面の幅方向に偏在する少なくとも1つの偏在領域(ここではトウバンド60の幅方向両端の一対の偏在領域)に向けて、粒状物65を第2気体G2と共に吐出するように配置されている。一例として、各出口44bの開口周縁のうち、本体部26の幅方向外側に向かう部分は、本体部26の幅方向における第1開繊室43bの端部と接している。トウバンド60の偏在領域は、トウバンド60の幅方向において、トウバンド60の中央部60bを挟む両側に位置する一対の端部60aに設定されている。
【0064】
繊維シート製造装置1の稼働時には、トウ開繊装置9において、ノズル部25から搬送方向P1にトウバンド60を搬送し、本体部26の搬送路43を通過させる。このとき第1開繊室43b内で、粒状物供給部27から供給される粒状物65を、出口44bを通じて、トウバンド60の偏在領域に対して添加する。
【0065】
ここで、第1開繊室43b内のトウバンド60は、気体導入口29aよりも搬送方向P1の上流側の位置のトウバンド60に比べて開繊が進行している。また、粒状物65は、加圧された第2気体G2と共に、出口44bから第1開繊室43b内に勢いよく噴出される。このように、第2開繊室43cの出口43dよりも搬送方向P1の上流側の位置で、粒状物65をトウバンド60の上面に添加することにより、粒状物65がトウバンド60の繊維間隙に入り込み、粒状物65がトウバンド60の十分な深さの領域まで分散される。また、気体導入口29aよりも搬送方向P1の下流側で粒状物65をトウバンド60に添加することにより、粒状物65の過度な拡散を抑制しながら、粒状物65がトウバンド60の偏在領域に配置され易くなる。繊維シート製造装置1では、トウバンド60に粒状物65を添加する際のトウバンド60の嵩、密度、搬送速度、粒状物65の供給量、及び、第2気体G2の気圧等の設定を調節することにより、トウバンド60の上面から、トウバンド60厚み方向における所定の深さまでの範囲の領域に、粒状物65を配置できる。
【0066】
搬送路43を通過したトウバンド60を、搬送方向P1の上流側から連続的に滞留室46に一時的に滞留させ、搬送方向P1に圧縮する。これにより、粒状物65を含む開繊されたトウバンド60の形状を滞留室46で整える。滞留室46では、トウバンド60が搬送方向P1に圧縮されて繊維間隙が狭くなるので、絡まった複数の繊維に粒状物65が担持される。従って、トウバンド60に振動や衝撃等の外力が多少加わっても、粒状物65が、繊維間隙から脱落しにくくなると共に、トウバンド60の内部で位置ずれを起こしにくくなる。よって、トウバンド60の偏在領域に対応する位置で、トウバンド60の内部に粒状物65が配置された状態が維持される。しかも、結着材等を用いることなく、粒状物65がトウバンド60の繊維間隙から脱落しにくくなる。
【0067】
滞留室46を通過させたトウバンド60を、滞留部28と搬送部10との間の搬送経路に搬送しながら、トウバンド60の圧縮状態を部分的に解除する。これにより、トウバンド60を、第2開繊室43cから搬出された直後の形状に、ある程度復元させる。その後、トウバンド60を、搬送部10の一対の搬送ロール15、16間に挿通させる。
【0068】
図5は、
図1のトウ開繊装置9を通過したトウバンド60の搬送方向P1から見た鉛直断面図である。トウバンド60は、幅方向を長軸方向とし、厚み方向を短軸方向とする略楕円状の断面形状を有する。トウバンド60の各偏在領域に対応する位置には、粒状物65が含まれている。ここではトウバンド60の各端部60aにおいて、その上面から下面に達しない一定の深さ(一例として、各端部60aの厚み方向中央よりも深く、且つ、下面に達しない深さ)までの領域に粒状物65が分散して含まれている。
【0069】
このような粒状物65を含むトウバンド60を用いて製造した繊維シート63では、各端部60aと対応する位置において局所的に粒状物65の特性を発現させることができ、繊維シートの全体で粒状物の特性を発現させる場合に比べて、繊維シート63を高機能化できる。例えば、トウバンド60全体において良好なクッション性を有すると共に、各端部60aと対応する位置において、高い耐横漏れ性及び耐リウェット性(繊維シート63に吸収された水が、繊維シート63の表面に再度染み出る特性。リウェットバックとも称する。)を有する繊維シート63が得られる。
【0070】
繊維シート製造装置1では、トウバンド60に対する粒状物65の添加位置をトウバンド60の幅方向に偏在させることで、例えば、トウバンド60の中央部60bのみ、又は、トウバンド60の各端部60aのみ等において、粒状物65の特性をトウバンド60で局所的に発現させることができる。よって、このようなトウバンド60を用いて製造した繊維シート63において、粒状物65の特性を発現させる位置を容易に設定でき、繊維シート63の設計自由度を向上できる。また、トウバンド60に局所的に粒状物65を含ませることで、トウバンド60に対する粒状物65の添加量を節約できる。なお、トウバンド60の各端部60aの厚み方向の全体に粒状物65を分散させて含ませてもよい。
【0071】
以上説明したように、第2開繊室43cの出口43dよりも搬送方向P1の上流側の位置で、出口44bから粒状物65がトウバンド60に向けて吐出されるので、気体導入口29aから搬送路43に導入されて第1気体G1で開繊されるトウバンド60の繊維間隙を通じて、トウバンド60の内部の十分な深さの領域まで粒状物65を入り込ませて良好に分散させることができる。また、気体導入口29aよりも搬送方向P1の下流側の位置で、出口44bから粒状物65がトウバンド60に向けて吐出されるので、粒状物65の過度な拡散を抑制して、トウバンド60の所望の位置に粒状物65を分散させ易くすることができ、粒状物65の特性をトウバンド60で局所的に発現させることができる。よって、このように粒状物65を含ませたトウバンド60を用いて繊維シート63を製造することにより、繊維シート63の所望の位置の内部に粒状物65を分散させ、粒状物65の特性を繊維シート63で局所的に発現させることができると共に、繊維シート63の設計自由度を向上できる。
【0072】
また、出口44bから、第1開繊室43b内を搬送されるトウバンド60に向けて、加圧された第2気体G2と共に粒状物65が噴出されるので、開繊中のトウバンド60の内部に粒状物65を勢いよく添加して入り込ませ、トウバンド60の内部に粒状物65を良好に配置できる。
【0073】
また、本体部26の外周面26dと内周面26cとを連通させることで、第1流通路44を容易に設けることができる。また、本体部26では、中央M1よりも搬送方向P1の下流側で、且つ、第2開繊室43cの出口43dよりも搬送方向P1の上流側の位置に出口44bが設けられているので、第1開繊室43bにおいて、開繊がある程度進行しているトウバンド60に粒状物65を添加でき、開繊されるトウバンド60の繊維間隙を通じて、トウバンド60の所望の位置に粒状物65を良好に配置することができる。
【0074】
また、位置M0において、角度θが鋭角に設定されているので、搬送方向P1の下流側に向かって流通方向P2を搬送方向P1に近づけることができ、搬送されるトウバンド60に粒状物65を効率よく添加できる。
【0075】
また、本体部26は、搬送方向P1の上流側から下流側に向かって、第1開繊室43bの流路断面積が増加する領域を有するので、このように流路断面積が増加する第1開繊室43bの領域で、トウバンド60を効率よく開繊できる。よって、当該領域で開繊されるトウバンド60の繊維間隙を通じて、トウバンド60の内部に良好に粒状物65を分散させることができる。以下、本発明の別の実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0076】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係るトウ開繊装置の本体部126を出口126b側から見た正面図である。
図7は、
図6のトウ開繊装置を通過したトウバンド160の搬送方向P1から見た鉛直断面図である。本体部126は、内周面126cの周方向の一部から第1開繊室43b内に向けて突出してトウバンド160を成型する少なくとも1つの成型部を有する。
図6に示すように、一例として、本体部126の内周面126cのうち、第1開繊室43bを形成する部分に、複数(ここでは一対)の中付板136、137が設けられている。中付板136は、第1部材131に設けられ、中付板137は、第2部材132に設けられている。中付板136、137は、第1開繊室43bに露出する成型部136a、137aを有する。成型部136a、137aは、トウバンド160を成型するために用いられ、内周面126cの周方向の一部から、第1開繊室43bに向けて突出している。ここでは成型部136a、137aは、第1開繊室43bの流路断面において、本体部126の幅方向の中央で、本体部126の厚み方向に突出するように設けられている。成型部136a、137aは長尺状であり、搬送方向P1に延びている。第1開繊室43bの流路断面は、成型部136a、137aが設けられた位置と対応する部分が内方に窪んだ異型断面形状を有している。
【0077】
中付板136、137の端面136b、137bと、本体部126の端面126gとには、出口126bの開口周縁の一部に沿って、長尺部材35を本体部126に接続するための複数の孔136c、137c、126hが設けられている。第2部材132における本体部126の内周面126c側には、第1流通路144の出口144bが、中付板137を挟む第2部材132の幅方向の両側に設けられている。
【0078】
繊維シート製造装置1の稼働時には、トウバンド160が、第1開繊室43b内に搬送されながら、第1気体G1で開繊されると共に成型部136a、137aに当接する。これにより、トウバンド160は、その表面に一方向(ここでは搬送方向P1)に延びる窪みが形成されながら、開繊且つ成型される。
図7に示すように、トウバンド160は、幅方向の中央部160bの厚みが、幅方向両側の端部160aの厚みよりも薄いダンベル型の異型断面形状を有している。
【0079】
トウバンド160の偏在領域は、トウバンド160が成型部136a、137aにより成型された領域、又は成型されていない領域のいずれか一方に設定することができる。ここでは一例として、トウバンド160の偏在領域を、トウバンド160の成型部136a、137aにより成型されていない領域(各端部160aの上面領域)に設定している。第1開繊室43b内では、出口144bから粒状物65が加圧された第2気体G2と共に噴出し、開繊中のトウバンド160の各端部160aの上面に粒状物65が添加される。これにより、各端部160aの上面から一定の深さまでの範囲の領域に、粒状物65が分散して含まれている。
【0080】
このような構成を有するトウバンド160を用いて繊維シートを製造した場合には、例えば、中央部160bに対応する位置において、液透過性が高められると共に軽量化が図られ、且つ、端部160aに対応する位置において、嵩高さ、液拡散性、耐横漏れ性、及び、耐リウェット性等の特性が高められた繊維シートが得られる。なお、中央部160bの上面には、吸水性を高めるための吸水シート等を重ねて配設することもできる。
【0081】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係るトウ開繊装置の本体部226を出口226b側から見た正面図である。
図9は、
図8のトウ開繊装置を通過したトウバンド260の搬送方向P1から見た鉛直断面図である。
図8に示すように、本体部226の内周面226cのうち、第1開繊室43bを形成する部分には、複数(ここでは4枚)の中付板236、237が設けられている。具体的に、第1部材231の幅方向の両側には、2枚の中付板236が取り付けられている。また、第2部材232の幅方向の両側には、2枚の中付板237が取り付けられている。各中付板236、237の成型部236a、237aは、第1開繊室43bに向かって、本体部226の厚み方向に突出している。これにより、第1開繊室43bの流路断面は、十字型の異型断面形状を有している。
【0082】
中付板236、237の端面236b、237bと、本体部226の端面226gとには、出口226bの開口周縁の一部に沿って、長尺部材35を本体部226に接続するための複数の孔236c、237c、226hが設けられている。第2部材232における本体部226の内周面226c側には、単一の第1流通路244の出口244bが、一対の中付板237の間に設けられている。
【0083】
図9に示すように、トウ開繊装置を通過したトウバンド260は、十字型の異型断面形状を有している。第1開繊室43b内では、出口244bから粒状物65が加圧された第2気体G2と共に噴出し、開繊中のトウバンド260の中央部260bの上面に粒状物65が添加される。これにより、中央部260bの上面から一定の深さまでの範囲の領域に、粒状物65が分散して含まれている。このような構成を有するトウバンド260を用いて繊維シートを製造した場合には、例えば、中央部260bに対応する位置において、吸水性、液拡散性、及び、クッション性等の特性が特に高められた繊維シートが得られる。
【0084】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態に係るトウ開繊装置の本体部326を出口326b側から見た正面図である。
図11は、
図10のトウ開繊装置を通過したトウバンド360の搬送方向P1から見た鉛直断面図である。
図10に示すように、本体部326の内周面326cのうち、第1開繊室43bを形成する部分には、複数(ここでは3枚)の中付板337が設けられている。具体的に、第2部材332には、内周面326cの周方向に間隔をおいて、各中付板337が設けられている。各中付板337の複数の成型部337aは、第1開繊室43bに向かって鉛直方向に突出している。第1部材331には、成型部は設けられていない。これにより、第1開繊室43bの流路断面は、トウバンド360の幅方向に延びる上下の周縁形状が互いに異なる異形断面形状を有している。
【0085】
各中付板337の端面337bと、本体部326の端面326gとには、出口26bの開口周縁の一部に沿って、長尺部材35を本体部326に接続するための複数の孔337c、326hが設けられている。第2部材332における本体部326の内周面326c側には、一対の第1流通路344の出口344bが、隣接する中付板337の間に設けられている。
【0086】
図11に示すように、トウ開繊装置を通過したトウバンド360は、一方の面(ここでは下面)が平坦で、他方の面(ここでは上面)に凸部360aと凹部360bとが幅方向に交互に並んだ異型断面形状を有している。第1開繊室43b内では、出口344bから粒状物65が加圧された第2気体G2と共に噴出し、開繊中のトウバンド360の各凸部360aの上面に粒状物65が添加される。これにより、各凸部360aの内部に、粒状物65が分散して含まれている。
【0087】
このような構成を有するトウバンド360は、各凸部360aの全体において粒状物65の特性が発現される。トウバンド360を用いて繊維シートを製造した場合には、例えば、凸部360aに対応する位置において、吸水性が高められると共に、凹部360bに対応する位置において、繊維シートと使用者の肌との接触を抑制でき、吸水後の繊維シートの触感を向上できる。また、吸水性が高められた各凸部360aがトウバンド360の幅方向に並んでいるので、吸水後の繊維シートから、トウバンド360の幅方向に水分を漏れ出にくくすることができる。なお、第4実施形態では、第1部材331にも中付板337と同様の中付板を内周面326cの周方向に間隔をおいて複数設け、幅方向に延びる上下の周縁形状が同じ断面形状のトウバンドを製造してもよい。
【0088】
(その他)
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。上記各実施形態は、互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよい。
【0089】
各実施形態では、例えば前記コンプレッサを所定時間をおいて間欠的に作動させることにより、粒状物65をトウバンド60、160、260、360に対して間欠的に添加してもよい。この場合、トウバンド60、160、260、360の上面の搬送方向P1に偏在する領域における内部に、粒状物65を含ませて配置できる。