特許第6646388号(P6646388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6646388パンタグラフジャッキ及びこれを用いたリフタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646388
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】パンタグラフジャッキ及びこれを用いたリフタ
(51)【国際特許分類】
   B66F 3/12 20060101AFI20200203BHJP
   B66F 5/00 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   B66F3/12 C
   B66F5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-178135(P2015-178135)
(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2017-52619(P2017-52619A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 健司
(72)【発明者】
【氏名】北原 一也
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−033900(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3193700(JP,U)
【文献】 特表2007−518581(JP,A)
【文献】 実開平03−056800(JP,U)
【文献】 実開昭63−113096(JP,U)
【文献】 実開平07−038080(JP,U)
【文献】 実開昭60−133897(JP,U)
【文献】 特開平11−079689(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0109996(US,A1)
【文献】 特開平11−100194(JP,A)
【文献】 実開昭60−145192(JP,U)
【文献】 実開昭60−151895(JP,U)
【文献】 実開平06−006384(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 3/12
B66F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台を介して連結された一対のリンクアームから成る下部リンク機構と、受け座を介して連結された一対のリンクアームから成る上部リンク機構とを、保持用連結部及び作動用連結部の夫々を介してパンタグラフ状に連結し、前記保持用連結部に一端部を回動自在に且つ軸心方向には移動しないよう保持させたスクリューロッドを前記作動用連結部に螺合し、前記スクリューロッドの保持用連結部より外側へ突き出た部位に装備した回転操作部を介し前記スクリューロッドを回転操作して前記保持用連結部と前記作動用連結部との間隔を拡縮し得るよう構成したパンタグラフジャッキにおいて、軸心方向に伸縮自在で且つ全長に亘り一体的に回転する駆動シャフトと、該駆動シャフトの一端部を前記回転操作部に接続する第一の自在継手と、前記駆動シャフトの他端部を該駆動シャフトを回転操作し得るよう駆動手段の出力軸に接続する第二の自在継手とを備え、前記駆動シャフトが伸縮し且つ回転軸の折れ曲がりを許容されつつ俯仰して前記回転操作部の斜めの動きに追従するよう構成されたことを特徴とするパンタグラフジャッキ。
【請求項2】
非円形断面の内棒と、該内棒に対し少なくとも長手方向の一部を軸心方向に摺動自在に外嵌して軸回りの回転を阻止する外筒とにより駆動シャフトを構成したことを特徴とする請求項1に記載のパンタグラフジャッキ。
【請求項3】
第一の自在継手をガタを持たせたピンジョイントにより構成すると共に、第二の自在継手をカルダンジョイントにより構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のパンタグラフジャッキ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のパンタグラフジャッキを駆動手段ごと台車上に搭載して移動し得るように構成したことを特徴とするリフタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のタイヤ交換時等に用いるパンタグラフジャッキ及びこれを用いたリフタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車のタイヤ交換時等には、図5に示す如きパンタグラフジャッキ1が用いられることが多いが、この種のパンタグラフジャッキ1においては、基台2を介してピン3aにより連結された一対のリンクアーム3,3から成る下部リンク機構4と、受け座5を介してピン6aにより連結された一対のリンクアーム6,6から成る上部リンク機構7とが、保持用連結部8及び作動用連結部9の夫々を介してピン8a及び9aによりパンタグラフ状に連結されており、前記保持用連結部8と作動用連結部9との間隔がスクリューロッド10の回動操作により拡縮し得るよう構成されている。
【0003】
即ち、前記スクリューロッド10の一端部(図5における右側端部)が保持用連結部8に対し回動自在に且つ軸心方向には移動しないよう保持され且つ該保持用連結部8より外側へ突き出た位置に回転操作部12を設けられており、前記スクリューロッド10の他端部(図5における左側端部)側から一端部側へ向け所要範囲に亘って形成されたネジ部11が作動用連結部9に螺合されている。
【0004】
而して、斯かるパンタグラフジャッキ1では、図6に示す如く、回転操作部12にインパクトレンチ13等(パンタグラフジャッキハンドルやラチェットハンドルであっても良い)を連結して保持用連結部8と作動用連結部9との間隔が狭まる方向にスクリューロッド10を回動操作すると、下部リンク機構4及び上部リンク機構7の各リンクアーム3,3及び6,6が起立作動して基台2に対し受け座5がジャッキアップされ、また、保持用連結部8と作動用連結部9との間隔が拡がる方向にスクリューロッド10を回動操作すると、下部リンク機構4及び上部リンク機構7の各リンクアーム3,3及び6,6が倒伏作動して基台2に対し受け座5がジャッキダウンされることになる。
【0005】
尚、この種のパンタグラフジャッキに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1や特許文献2等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−79689号公報
【特許文献2】実開平6−67489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の如き従来のパンタグラフジャッキ1にあっては、その昇降動作に伴い回転操作部12が水平方向に変位して斜めに移動することになるため、特にインパクトレンチ13を用いて急速にジャッキアップする場合に、該インパクトレンチ13が接続箇所から外れ易いという不具合があり、インパクトレンチ13を用いて急速にジャッキダウンする場合には、インパクトレンチ13が図6中に矢印Aで示すように移動して該インパクトレンチ13と周辺構造物(タイヤ交換時の場合はホイールハウジング等)との間に手を挟んでしまう虞れがあった。
【0008】
また、パンタグラフジャッキ1を台車上に搭載して可動式のリフタを構成しようとした場合に、回転操作部12が昇降動作中に斜めに移動してしまうことでインパクトレンチ13等の駆動手段を前記台車上に固定設置することができず、これが要因となって取り扱い易いリフタの実現が阻まれているという側面もあった。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、インパクトレンチ等の駆動手段を固定したまま昇降動作を行い得るパンタグラフジャッキを提供し、該パンタグラフジャッキを用いた取り扱い易いリフタを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基台を介して連結された一対のリンクアームから成る下部リンク機構と、受け座を介して連結された一対のリンクアームから成る上部リンク機構とを、保持用連結部及び作動用連結部の夫々を介してパンタグラフ状に連結し、前記保持用連結部に一端部を回動自在に且つ軸心方向には移動しないよう保持させたスクリューロッドを前記作動用連結部に螺合し、前記スクリューロッドの保持用連結部より外側へ突き出た部位に装備した回転操作部を介し前記スクリューロッドを回転操作して前記保持用連結部と前記作動用連結部との間隔を拡縮し得るよう構成したパンタグラフジャッキにおいて、軸心方向に伸縮自在で且つ全長に亘り一体的に回転する駆動シャフトと、該駆動シャフトの一端部を前記回転操作部に接続する第一の自在継手と、前記駆動シャフトの他端部を該駆動シャフトを回転操作し得るよう駆動手段の出力軸に接続する第二の自在継手とを備え、前記駆動シャフトが伸縮し且つ回転軸の折れ曲がりを許容されつつ俯仰して前記回転操作部の斜めの動きに追従するよう構成されたことを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、駆動手段により駆動シャフトを回転操作して保持用連結部と作動用連結部との間隔が狭まる方向にスクリューロッドを回動操作すると、下部リンク機構及び上部リンク機構の各リンクアームが起立作動して基台に対し受け座がジャッキアップされ、また、保持用連結部と作動用連結部との間隔が拡がる方向にスクリューロッドを回動操作すると、下部リンク機構及び上部リンク機構の各リンクアームが倒伏作動して基台に対し受け座がジャッキダウンされることになる。
【0012】
この際、昇降動作に伴い回転操作部が水平方向に変位して斜めに移動することになるが、駆動シャフトが伸縮し且つ第一の自在継手及び第二の自在継手により回転軸の折れ曲がりを許容されつつ俯仰して回転操作部の斜めの動きに追従するので、駆動手段を所定の位置に固定したまま操作することが可能となり、ジャッキアップ時に駆動手段が接続箇所から外れ易くなる不具合や、ジャッキダウン時に駆動手段と周辺構造物との間に手を挟む虞れが解消されることになる。
【0013】
また、本発明のパンタグラフジャッキをより具体的に実施するにあたっては、非円形断面の内棒と、該内棒に対し少なくとも長手方向の一部を軸心方向に摺動自在に外嵌して軸回りの回転を阻止する外筒とにより駆動シャフトを構成することが可能であり、更には、第一の自在継手をガタを持たせたピンジョイントにより構成すると共に、第二の自在継手をカルダンジョイントにより構成することも可能である。
【0014】
また、このように駆動手段を固定したまま昇降動作を行い得るパンタグラフジャッキを駆動手段ごと台車上に搭載して移動し得るようにリフタを構成すれば、作業場所に台車を移動して簡便にジャッキアップやジャッキダウンの作業を行うことが可能な取り扱い易い可動式のリフタを実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明のパンタグラフジャッキ及びこれを用いたリフタによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)本発明の請求項1−3に記載の発明によれば、駆動手段を所定の位置に固定したまま操作することができるので、ジャッキアップ時に駆動手段が接続箇所から外れ易くなる不具合や、ジャッキダウン時に駆動手段と周辺構造物との間に手を挟む虞れを解消することができ、パンタグラフジャッキにおける操作性と保安性の大幅な向上を図ることができる。
【0017】
(II)本発明の請求項4に記載の発明によれば、作業場所に台車を移動して簡便にジャッキアップやジャッキダウンの作業を行うことが可能な取り扱い易い可動式のリフタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す側面図である。
図2図1の要部の詳細を示す拡大図である。
図3図2の駆動シャフトの詳細を示す斜視図である。
図4図1のパンタグラフジャッキを用いたリフタの一例を示す側面図である。
図5】従来例を示す側面図である。
図6図5のパンタグラフジャッキの昇降動作に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図5及び図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0021】
図1に示す如く、本形態例のパンタグラフジャッキ20においては、先に説明した図5及び図6の従来例の場合と同様に、基台2を介してピン3aにより連結された一対のリンクアーム3,3から成る下部リンク機構4と、受け座5を介してピン6aにより連結された一対のリンクアーム6,6から成る上部リンク機構7とを、保持用連結部8及び作動用連結部9の夫々を介してピン8a及び9aによりパンタグラフ状に連結し、前記保持用連結部8に一端部を回動自在に且つ軸心方向には移動しないよう保持させたスクリューロッド10を前記作動用連結部9に螺合し、前記スクリューロッド10の保持用連結部8より外側へ突き出た部位に装備した回転操作部12を介し前記スクリューロッド10を回転操作して前記保持用連結部8と作動用連結部9との間隔を拡縮し得るよう構成しているが、軸心方向に伸縮自在で且つ全長に亘り一体的に回転する駆動シャフト14と、該駆動シャフト14の一端部を前記回転操作部12に接続する第一の自在継手と、前記駆動シャフト14の他端部を該駆動シャフト14を回転操作し得るようインパクトレンチ13(駆動手段)の出力軸に接続する第二の自在継手とを備えたところを特徴としている。
【0022】
図2及び図3に示す如く、前記駆動シャフト14は、非円形断面の内棒15と、該内棒15に対し少なくとも長手方向の一部を軸心方向に摺動自在に外嵌して軸回りの回転を阻止する外筒16とにより構成することが可能であり、ここに図示している例では、六角形断面のロングナットを内棒15とし、該内棒15の六角形断面に対応した摺動穴を有するボス部16aを入口に備えた丸パイプを外筒16としている。
【0023】
また、ここに図示している例の場合は、駆動シャフト14の一端部を前記回転操作部12に接続する第一の自在継手を、前記内棒15のコの字型の末端における内側を末広がり状に形成することでガタを持たせたピンジョイント17により構成しており、駆動シャフト14の他端部を該駆動シャフト14を回転操作し得るようインパクトレンチ13の出力軸に接続する第二の自在継手を、二本の回転軸の末端(ヨーク)をコの字型にし且つ互い違いに合わせて両者を十字軸(クロススパイダー)で連結したカルダンジョイント18により構成している。
【0024】
而して、このようにすれば、インパクトレンチ13により駆動シャフト14を回転操作して保持用連結部8と作動用連結部9との間隔が狭まる方向にスクリューロッド10を回動操作すると、下部リンク機構4及び上部リンク機構7の各リンクアーム3,3及び6,6が起立作動して基台2に対し受け座5がジャッキアップされ、また、保持用連結部8と作動用連結部9との間隔が拡がる方向にスクリューロッド10を回動操作すると、下部リンク機構4及び上部リンク機構7の各リンクアーム3,3及び6,6が倒伏作動して基台2に対し受け座5がジャッキダウンされることになる。
【0025】
この際、昇降動作に伴い回転操作部12が水平方向に変位して斜めに移動することになるが、駆動シャフト14が伸縮し且つピンジョイント17及びカルダンジョイント18により回転軸の折れ曲がりを許容されつつ俯仰して回転操作部12の斜めの動きに追従するので、インパクトレンチ13を所定の位置に固定したまま操作することが可能となり、ジャッキアップ時にインパクトレンチ13が接続箇所から外れ易くなる不具合や、ジャッキダウン時にインパクトレンチ13と周辺構造物との間に手を挟む虞れが解消されることになる。
【0026】
また、図4に示す如く、このようにインパクトレンチ13を固定したまま昇降動作を行い得るパンタグラフジャッキ20をインパクトレンチ13ごと台車19上に搭載して移動し得るようにリフタ21を構成すれば、作業場所に台車19を移動して簡便にジャッキアップやジャッキダウンの作業を行うことが可能な取り扱い易い可動式のリフタ21を実現することが可能となる。
【0027】
従って、上記形態例によれば、インパクトレンチ13を所定の位置に固定したまま操作することができるので、ジャッキアップ時にインパクトレンチ13が接続箇所から外れ易くなる不具合や、ジャッキダウン時にインパクトレンチ13と周辺構造物との間に手を挟む虞れを解消することができ、パンタグラフジャッキ20における操作性と保安性の大幅な向上を図ることができ、また、作業場所に台車19を移動して簡便にジャッキアップやジャッキダウンの作業を行うことが可能な取り扱い易い可動式のリフタ21を実現することができる。
【0028】
尚、本発明のパンタグラフジャッキ及びこれを用いたリフタは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、駆動シャフトはスプラインを採用したものであっても良いこと、駆動手段にはインパクトレンチ以外にパンタグラフジャッキハンドルやラチェットハンドル等を用いても良いこと、第一の自在継手及び第二の自在継手の具体的な構造は図示例に限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
2 基台
3 リンクアーム
4 下部リンク機構
5 受け座
6 リンクアーム
7 上部リンク機構
8 保持用連結部
9 作動用連結部
10 スクリューロッド
12 回転操作部
13 インパクトレンチ(駆動手段)
14 駆動シャフト
15 内棒
16 外筒
17 ピンジョイント(第一の自在継手)
18 カルダンジョイント(第二の自在継手)
19 台車
20 パンタグラフジャッキ
21 リフタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6