特許第6646427号(P6646427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田鉄工株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6646427-電池ケース 図000002
  • 特許6646427-電池ケース 図000003
  • 特許6646427-電池ケース 図000004
  • 特許6646427-電池ケース 図000005
  • 特許6646427-電池ケース 図000006
  • 特許6646427-電池ケース 図000007
  • 特許6646427-電池ケース 図000008
  • 特許6646427-電池ケース 図000009
  • 特許6646427-電池ケース 図000010
  • 特許6646427-電池ケース 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646427
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】電池ケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20200203BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   H01M2/02 L
   H01M2/10 E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-243814(P2015-243814)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-111893(P2017-111893A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】吉村 康宏
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】曽根 靖博
(72)【発明者】
【氏名】竹中 稔
(72)【発明者】
【氏名】山中 篤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
(72)【発明者】
【氏名】冨平 昌吾
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−018797(JP,A)
【文献】 特開平10−006785(JP,A)
【文献】 特開2013−201112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルの積層体が収納される樹脂製の収納部と、
前記収納部を形成する側壁に対して一体に配設され、長さ方向に配列された繊維に樹脂を含浸させることにより形成された繊維テープと、を有し、
前記側壁は、前記電池セルの積層方向に沿った方向に立設された第1側壁と、前記第1側壁と連続するとともに前記電池セルの積層方向と交差する方向に立設され、前記電池セルの積層体を積層方向の両端から挟持して加圧状態で保持する第2側壁及び第3側壁と、を含み、
前記繊維テープは、前記第2側壁から前記第1側壁を介して前記第3側壁に跨って配設されることを特徴とする電池ケース。
【請求項2】
前記収納部は、前記繊維テープを金型に配置した状態で樹脂を注入するインサート成形により前記繊維テープと一体に成形されることを特徴とする請求項1に記載の電池ケース。
【請求項3】
前記繊維テープに含浸された樹脂と、前記収納部を形成する樹脂は同一種類であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電池ケース。
【請求項4】
前記収納部は、少なくとも一方向が開口され、
前記繊維テープは、前記側壁の開口端に沿って配設されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電池ケース。
【請求項5】
前記収納部として第1収納部と前記第1収納部に隣接する第2収納部を有し、
前記第1収納部と前記第2収納部における前記電池セルの積層方向は同一方向であって、
前記第1収納部と前記第2収納部の間に、前記第1収納部の前記第1側壁と前記第2収納部の前記第1側壁が一体に立設されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電池ケース。
【請求項6】
前記第1収納部の前記第2側壁から前記第2収納部の前記第2側壁、及び又は前記第1収納部の前記第3側壁から前記第2収納部の前記第3側壁に跨って前記繊維テープを配設することを特徴とする請求項5に記載の電池ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルの積層体が収納される電池ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、エンジンを駆動源とするガソリン車以外にもバッテリから供給される電力に基づいて駆動されるモータを駆動源とする電気自動車や、モータとエンジンを駆動源とするハイブリッド車両等が存在する。このようなモータを駆動源する電気自動車やハイブリッド車両の電源としては、設置スペースが制限される上に高電圧及び高エネルギー容量が要求されることから、複数の電池セルを積層した状態で電池ケースに収納した電池モジュールが用いられている。
【0003】
また、上記電池セルは加圧した状態で用いることによって電池性能が向上することが知られている。そこで、特開2010−244894号公報には、積層した複数の電池セルを結束バンドで外部から締め付けることによって、個々の電池セルを加圧した状態で積層する技術について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−244894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、電池セルを積層した上で、積層した電池セルに対して結束バンドを新たに組み付ける必要があるので、製造工程が複雑となる問題があった。また、部品数が増加することによってコスト上昇を招く。
【0006】
一方で、上記結束バンドを用いずに積層した電池セルを圧縮した状態で電池ケースに収納することによって電池ケースからの荷重により加圧する構成も可能であるが、電池ケースが荷重に耐えられずに変形し、加圧値が低下する問題があった。また、電池ケースの破損を招く虞もある。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、電池モジュールの製造工程が複雑になることなく、電池セルを継続して加圧状態とすることを可能にした電池ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る電池ケースは、電池セルの積層体が収納される樹脂製の収納部と、前記収納部を形成する側壁に対して一体に配設され、長さ方向に配列された繊維に樹脂を含浸させることにより形成された繊維テープと、を有し、前記側壁は、前記電池セルの積層方向に沿った方向に立設された第1側壁と、前記第1側壁と連続するとともに前記電池セルの積層方向とする交差方向に立設され、前記電池セルの積層体を積層方向の両端から挟持して加圧状態で保持する第2側壁及び第3側壁と、を含み、前記繊維テープは、前記第2側壁から前記第1側壁を介して前記第3側壁に跨って配設されることを特徴とする。
【0009】
上記構成を有する電池ケースによれば、収納部に対して繊維テープを配設することによって、電池セルの積層方向の荷重に対する収納部の強度を飛躍的に向上させることが可能となる。その結果、収納部に積層して収納された電池セルを継続して加圧状態とすることが可能となり、電池セルの電池性能を向上させることができる。また、電池セルの膨張を抑制する効果もある。更に、従来と比較して結束バンド等の電池セルを加圧する為の部品を別途組み付ける必要が無いので、電池モジュールの製造工程が複雑となることを防止できる。また、部品数も削減できコスト削減の効果も期待できる。
【0010】
また、本発明の他の側面に係る電池ケースでは、前記収納部が、前記繊維テープを金型に配置した状態で樹脂を注入するインサート成形により前記繊維テープと一体に成形されることを特徴とする。
【0011】
上記構成を有する電池ケースによれば、インサート成形を用いることによって繊維テープと収納部を確実に融着させ、繊維テープによる電池ケースの強度向上の効果を十分に発揮させることが可能となる。
【0012】
また、本発明の他の側面に係る電池ケースでは、前記繊維テープに含浸された樹脂と、前記収納部を形成する樹脂は同一種類であることを特徴とする。
【0013】
上記構成を有する電池ケースによれば、繊維テープに含浸された樹脂と収納部を形成する樹脂とを同一種類とすることによって、繊維テープと収納部を確実に融着させ、繊維テープによる電池ケースの強度向上の効果を十分に発揮させることが可能となる。
【0014】
また、本発明の他の側面に係る電池ケースでは、前記収納部は、少なくとも一方向が開口され、前記繊維テープは、前記側壁の開口端に沿って配設されることを特徴とする。
【0015】
上記構成を有する電池ケースによれば、側壁の開口端に沿って繊維テープを配設することによって、収容部内に電池セルを収納した際に最も変形のし易い箇所を繊維テープによって補強できるので、収容部の変形を確実に抑えることが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の側面に係る電池ケースでは、前記収納部として第1収納部と前記第1収納部に隣接する第2収納部を有し、前記第1収納部と前記第2収納部における前記電池セルの積層方向は同一方向であって、前記第1収納部と前記第2収納部の間に、前記第1収納部の前記第1側壁と前記第2収納部の前記第1側壁が一体に立設されることを特徴とする。
【0017】
上記構成を有する電池ケースによれば、電池モジュールの高エネルギー容量化を実現する為に、電池セルを収容する為の収容部を複数設けた場合であっても、繊維テープの使用量を抑えつつ電池セルの積層方向の荷重に対する各収納部の強度を飛躍的に向上させることが可能となる。また、繊維テープが配設される第1側壁を各収納部で共通化することによって電池モジュールの小型化も実現できる。
【0018】
また、本発明の他の側面に係る電池ケースでは、前記第1収納部の前記第2側壁から前記第2収納部の前記第2側壁、及び又は前記第1収納部の前記第3側壁から前記第2収納部の前記第3側壁に跨って前記繊維テープを配設することを特徴とする請求項5に記載の電池ケース。
【0019】
上記構成を有する電池ケースによれば、複数の収容部の側壁に跨って配設される繊維テープを追加することによって、各収納部の強度を更に向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電池ケースによれば、収納部に対して繊維テープを配設することによって、電池セルの積層方向の荷重に対する収納部の強度を飛躍的に向上させることが可能となる。その結果、収納部に積層して収納された電池セルを継続して加圧状態とすることが可能となり、電池セルの電池性能を向上させることができる。また、電池セルの膨張を抑制する効果もある。更に、従来と比較して結束バンド等の電池セルを加圧する為の部品を別途組み付ける必要が無いので、電池モジュールの製造工程が複雑となることを防止できる。また、部品数も削減できコスト削減の効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る電池ケースについて電池セルが挿入された状態の全体構成を示した斜視図である。
図2】第1実施形態に係る電池ケースについて電池セルが未挿入の状態の全体構成を示した斜視図である。
図3】第1実施形態に係る電池ケースについて電池セルが未挿入の状態の全体構成を示した上面図である。
図4図3の線X−Xで電池ケースを切断した矢視断面図である。
図5】第1実施形態に係る電池ケースについて、特にUDテープの配置態様を示した模式図である。
図6】第1収納部及び第2収納部に対する電池セルの挿入工程を示した説明図である。
図7】UDテープによる第1収納部及び第2収納部の強度向上の仕組みを説明した説明図である。
図8】UDテープを配置した本実施例に係る電池ケースと、UDテープを配置しない比較例の電池ケースとに対して、電池セルの積層方向に荷重をかけた場合における荷重値と側壁の変位量との関係を示した図である。
図9】第2実施形態に係る電池ケースについて、特にUDテープの配置態様を示した模式図である。
図10】第3実施形態に係る電池ケースについて、特にUDテープの配置態様を示した模式図である。
【0022】
以下、本発明に係る電池ケースを具現化した第1乃至第3実施形態について図面を参照して具体的に説明する。ここで、本発明に係る電池ケースは、複数個の電池セルを積層して収納する為の収納ケースである。電池ケースは、例えば電気自動車やハイブリッド車両の車体下方のスペースに配置され、電池セルや電圧回路とともに電気自動車やハイブリッド車両の電源となる電池モジュールの一部を構成する。但し、電池ケースは電気自動車やハイブリッド車両の電池モジュールとしての利用に限られることなく、電源を必要とする各種電子機器や駆動装置の電池モジュールとしても利用可能である。
【0023】
[第1実施形態]
先ず、第1実施形態に係る電池ケース1の全体構成について図1乃至図4に基づき説明する。図1は、第1実施形態に係る電池ケース1について電池セル2が挿入された状態の全体構成を示した斜視図である。図2は、第1実施形態に係る電池ケース1について電池セル2が未挿入の状態の全体構成を示した斜視図である。図3は、第1実施形態に係る電池ケース1について電池セル2が未挿入の状態の全体構成を示した上面図である。図4図3の線X−Xで電池ケース1を切断した矢視断面図である。尚、電池ケース1には、電池セル2を内部に収納した後に上部を覆う蓋が取り付けられるが、電池ケース1の内部を図示する為に蓋については省略する。
【0024】
図1乃至図4に示すように、電池ケース1は、複数の電池セル2がそれぞれ収納される第1収納部3及び第2収納部4と、不図示の電圧回路が収納される回路収納部5と、電池ケース1を補強する為の繊維テープであるUD(Uni-Directional)テープ6、7とを有する。
【0025】
ここで、第1収納部3、第2収納部4及び回路収納部5は、ナイロン6(PA6)により一体成形された樹脂製の成形体である。また、第1収納部3及び第2収納部4は、複数個(例えば図1に示す例では13個)の電池セル2が同一方向に積層して収納される収納部であり、第1収納部3と第2収納部4は、図1に示すように電池セル2の積層方向Yが平行となるように並列に配置される。尚、以下に説明する第1実施形態の電池ケース1では、電池セル2を収納する収納部として第1収納部3及び第2収納部4の2個の収納部を設けているが、収納部の数は収納する電池セル2の数に応じて1個又は3個以上とすることも可能である。
【0026】
次に、第1収納部3、第2収納部4の構成についてより詳細に説明する。尚、第1収納部3と第2収納部4は基本的に左右対称で同一の構成を有する。
【0027】
図2乃至図4に示すように、第1収納部3は、電池ケース1の底を形成する底面板10と、底面板10に対して立設された第1側壁11、第2側壁12、第3側壁13及び第4側壁14とによって囲まれた空間からなり、底面板10と対向する面は開口されている。そして、開口された箇所から電池セル2が第1収納部3に収納され、その後に蓋によって開口は閉鎖される。また、収納された電池セル2の電極は蓋に設けられた端子及び配線を介して回路収納部5に収納された電圧回路へと接続される。
【0028】
同じく第2収納部4は、電池ケース1の底を形成する底面板15と、底面板15に対して立設された第1側壁11、第2側壁16、第3側壁17及び第4側壁18とによって囲まれた空間からなり、底面板15と対向する面は開口されている。尚、第1実施形態に係る電池ケース1では、第1収納部3の第1側壁11と第2収納部4の第1側壁11とは一体(共通の側壁)とするが、それぞれ別体に設けても良い。
【0029】
ここで、第1側壁11は、並列して配置された第1収納部3と第2収納部4の境界を形成するリブであって電池セル2の積層方向に沿った方向に立設される。また、第2側壁12、16及び第3側壁13、17は、第1側壁11の端部と連続するとともに電池セル2の積層方向と交差する方向に立設され、電池セル2の積層体を積層方向の両端から挟持する。また、第4側壁14、18は、電池ケース1の外壁を形成するとともに電池セル2の積層方向に沿った方向に立設される。また、第1側壁11と第4側壁14、18は対向して配置され、第2側壁12、16と第3側壁13、17は対向して配置される。
【0030】
また、UDテープ6、7は、一方向性の連続繊維を含む強化繊維テープである。具体的には、長さ方向に配列された繊維に樹脂を含浸させることにより形成される。第1実施形態では特に繊維に含浸される樹脂を、第1収納部3及び第2収納部4を形成する樹脂と同一種類であるナイロン6とする。また、UDテープ6、7は、第1収納部3及び第2収納部4を形成する側壁に対して一体に配設される。具体的には、UDテープ6が第1収納部3の第2側壁12から第1側壁11を介して第3側壁13に跨ってコの字状に配設される。また、UDテープ7が、第2収納部4の第2側壁16から第1側壁11を介して第3側壁17に跨って同じくコの字状に配設される。
【0031】
尚、第1収納部3の第1側壁11と第2収納部4の第1側壁11とは一体に立設されるので、第1側壁11では第1収納部3に対して配設されたUDテープ6と、第2収納部4に対して配設されたUDテープ7とが重複して配置される。また、UDテープ6、7は、図4に示すように側壁の開口端19に沿ってそれぞれ配設される。また、UDテープ6、7の幅Dは電池ケース1の形状に応じて適宜設定可能であるが、基本的に幅Dが大きい程、UDテープ6、7による電池ケース1の強度の向上が期待できる。例えば、側壁の高さの1/2以上とするのが望ましい。
【0032】
また、UDテープ6、7の長さは、第1側壁11の長さよりも長くする必要がある。具体的には、図5に示すようにUDテープ6、7の長さは、第1側壁11の長さL1に加えて、第2側壁12、16に沿って配置する長さL2と第3側壁13、17に沿って配置する長さL3とを加えた長さとなる。尚、長さL2はUDテープ6、7と第2側壁12、16とを十分に融着させるのに必要な長さとし、例えば第2側壁12、16の長さの1/4以上とする。また、同じく長さL3はUDテープ6、7と第3側壁13、17とを十分に融着させるのに必要な長さとし、例えば第3側壁13、17の長さの1/4以上とする。尚、L2及びL3は基本的に長い程、UDテープ6、7による電池ケース1の強度の向上が期待できるが、必要とする長さ以上に長くしたとしても大きな強度の向上は期待できないので、L2は第2側壁12、16の長さの1/4程度、L3は第3側壁13、17の長さの1/4程度とするのが望ましい。
【0033】
また、第1収納部3及び第2収納部4は、UDテープ6、7を金型に配置した状態で樹脂を注入するインサート成形によりUDテープ6、7と一体に成形される。また、UDテープ6とUDテープ7とは、第1側壁11に沿って配置される区間、即ちUDテープ6とUDテープ7とが隣接して配置される区間について成形前に予め融着させておいても良いし、成形時にUDテープ6とUDテープ7との間に樹脂を流動させることによって、UDテープ6とUDテープ7とを互いに融着させる構成としても良い。また、UDテープ6、7において繊維に含浸させる樹脂と、第1収納部3及び第2収納部4を形成する樹脂とを同一種類とすることによって、インサート成形において第1収納部3及び第2収納部4とUDテープ6、7とを十分に融着させることが可能となる。更に、インサート成形を行う際には、UDテープ6、7の表面温度を樹脂の種類に応じた温度(例えばPA6では120℃)に上昇させた状態でインサート成形を行うことが望ましい。それによって、第1収納部3及び第2収納部4とUDテープ6、7との融着をより確実に行うことが可能となる。
【0034】
また、上記構成を有する第1収納部3及び第2収納部4に対して電池セル2を挿入する際には、図6に示すように電池セル2を積層し、且つ積層方向Yに圧縮した状態で第1収納部3及び第2収納部4に対して挿入する。その結果、第1収納部3に積層して収納された電池セル2を第2側壁12及び第3側壁13によって継続して加圧状態とし、第2収納部4に積層して収納された電池セル2を第2側壁16及び第3側壁17によって継続して加圧状態とすることが可能となり、電池セル2の電池性能を向上させることができる。また、電池セル2の膨張を抑制する効果もある。ここで、上述したように電池セル2を圧縮した状態で第1収納部3及び第2収納部4に収納する構成とすると、電池ケース1が荷重に耐えられずに変形し、加圧値が低下する問題があるが、第1実施形態に係る電池ケース1では、UDテープ6を第1収納部3及び第2収納部4と一体に配置することによって、電池セル2の積層方向Yの荷重に対する第1収納部3及び第2収納部4の強度を飛躍的に向上させ、この問題を解消することが可能となる。
【0035】
具体的には、図7に示すように第2側壁12及び第3側壁13に対して、電池セル2の積層方向Yに荷重がかかると、第2側壁12及び第3側壁13と一体成型されたUDテープ6の引張荷重に転化することが可能となる。同じく、第2側壁16及び第3側壁17に対して、電池セル2の積層方向Yに荷重がかかると、第2側壁16及び第3側壁17と一体成型されたUDテープ7の引張荷重に転化することが可能となる。そして、UDテープ6、7は前記したように長さ方向に繊維が配列されたテープであるので、長さ方向に対して強い引張強度を有する。従って、電池セル2の積層方向Yの荷重に対する第1収納部3及び第2収納部4の強度を向上させることが可能となる。更に、UDテープ6、7は、前記したように側壁の開口端19に沿って配設されるので、第1収納部3及び第2収納部4に電池セル2を収納した際に最も変形のし易い開口端19をUDテープ6、7によって補強することが可能となる。
【0036】
ここで、図8はUDテープ6、7を配置した本実施例に係る電池ケース1と、UDテープ6、7を配置しない比較例の電池ケースとに対して、電池セル2の積層方向Yに荷重をかけた場合における荷重値と第2側壁12及び第3側壁13の変位量の合計値との関係を示した図である。図8に示すように、UDテープ6、7を配置した本実施例に係る電池ケース1は、UDテープ6、7を配置しない比較例に係る電池ケースと比較して、同じ荷重をかけた場合であっても第2側壁12及び第3側壁13の変位量が少なくなる。即ち、UDテープ6を第1収納部3及び第2収納部4と一体に配置することによって、電池セル2の積層方向Yの荷重に対する第1収納部3及び第2収納部4の強度が向上していることが分かる。
【0037】
以上説明したように第1実施形態に係る電池ケース1は、電池セル2の積層体が収納される樹脂製の第1収納部3及び第2収納部4と、第1収納部3を形成する第1側壁11、第2側壁12及び第3側壁13に対して一体に配設されたUDテープ6と、第2収納部4を形成する第1側壁11、第2側壁16及び第3側壁17に対して一体に配設されたUDテープ7とを有し、UDテープ6、7は、特に第2側壁12、16から第1側壁11を介して第3側壁13、17に跨って配設される。それによって、電池セル2の積層方向Yの荷重に対する第1収納部3及び第2収納部4の強度を飛躍的に向上させることが可能となる。その結果、電池セル2を圧縮して第1収納部3及び第2収納部4に収納した場合に、収納された電池セル2を継続して加圧状態とすることが可能となり、電池セル2の電池性能を向上させることができる。また、電池セル2の膨張を抑制する効果もある。更に、従来と比較して結束バンド等の電池セル2を加圧する為の部品を別途組み付ける必要が無いので、電池モジュールの製造工程が複雑となることを防止できる。また、部品数も削減できコスト削減の効果も期待できる。
また、第1実施形態に係る電池ケース1は、第1収納部3及び第2収納部4が、UDテープ6、7を金型に配置した状態で樹脂を注入するインサート成形によりUDテープ6、7と一体に成形されるので、UDテープ6、7と第1収納部3及び第2収納部4を確実に融着させ、UDテープ6、7による電池ケース1の強度向上の効果を十分に発揮させることが可能となる。
また、UDテープ6、7に含浸された樹脂と、第1収納部3及び第2収納部4を形成する樹脂とを同一種類とすることによって、UDテープ6、7と第1収納部3及び第2収納部4を確実に融着させ、UDテープ6、7による電池ケース1の強度向上の効果を十分に発揮させることが可能となる。
また、第1収納部3及び第2収納部4は、少なくとも一方向が開口され、UDテープ6、7は、側壁の開口端19に沿って配設されるので、第1収納部3及び第2収納部4内に電池セル2を収納した際に最も変形のし易い箇所をUDテープ6、7によって補強でき、第1収納部3及び第2収納部4の変形を確実に抑えることが可能となる。
電池セル2の収納部として第1収納部3と第1収納部3に隣接する第2収納部4を有し、第1収納部3と第2収納部4における電池セル2の積層方向Yは同一方向であって、第1収納部3と第2収納部4の間に、第1収納部3の第1側壁11と第2収納部4の第1側壁11が一体に立設されるので、電池モジュールの高エネルギー容量化を実現する為に、電池セル2を収容する為の収容部を複数設けた場合であっても、UDテープ6、7の使用量を抑えつつ電池セル2の積層方向Yの荷重に対する各収納部の強度を飛躍的に向上させることが可能となる。また、UDテープ6、7が配設される第1側壁11を各収納部で共通化することによって電池モジュールの小型化も実現できる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電池ケース21について図9に基づき説明する。図9は、第2実施形態に係る電池ケース21について、特にUDテープの配置態様を示した模式図である。尚、以下の説明において上記図1乃至図8の第1実施形態に係る電池ケース1の構成と同一符号は、前記第1実施形態に係る電池ケース1等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0039】
この第2実施形態に係る電池ケース21の概略構成は、第1実施形態に係る電池ケース1とほぼ同じ構成である。但し、第2実施形態に係る電池ケース21では、第2側壁12から第1側壁11を介して第3側壁13に跨って配設されるUDテープ6と、第2側壁16から第1側壁11を介して第3側壁17に跨って配設されるUDテープ7とに加えて、第1収納部3の第2側壁12から第2収納部4の第2側壁16に跨る位置と、第1収納部3の第3側壁13から第2収納部4の第3側壁17に跨る位置についてもUDテープを追加配設する点で異なっている。
【0040】
図9に示すように、第2実施形態に係る電池ケース21では、第1収納部3の第2側壁12から第2収納部4の第2側壁16に跨る位置にUDテープ22が配設される。同じく第1収納部3の第3側壁13から第2収納部4の第3側壁17に跨る位置についてもUDテープ23が配設される。前述したように第2側壁12、16及び第3側壁13、17に対して、電池セル2の積層方向Yに荷重がかかると、UDテープ6、7の引張荷重に転化することが可能となるが(図7参照)、第2実施形態に係る電池ケース21ではUDテープ22及びUDテープ23を追加配設することによって、UDテープ6、7の引張荷重に対する強度をさらに向上することが可能となる。尚、UDテープ22とUDテープ23はいずれか一方のみを配設することも可能であるが、電池ケース21の強度をより向上させるという目的から両方に配設することが望ましい。
【0041】
また、UDテープ22、23は、第1収納部3及び第2収納部4を形成する側壁に対してUDテープ6、7とともに一体に配設されるように構成しても良いし、UDテープ22、23を成形後の第1収納部3及び第2収納部4に対して外部から張り付ける構成としても良い。尚、一体に配設する場合には、例えば第1収納部3及び第2収納部4は、UDテープ6、7、22、23を金型に配置した状態で樹脂を注入するインサート成形によりUDテープ6、7、22、23と一体に成形する。また、UDテープ6、7とUDテープ22、23とは、隣接して配置される区間について成形前に予め融着させておいても良いし、成形時にUDテープ6、7とUDテープ22、23との間に樹脂を流動させることによって、UDテープ6、7とUDテープ22、23とを互いに融着させる構成としても良い。
【0042】
以上説明したように第2実施形態に係る電池ケース21は、第1収納部3の第2側壁12から第2収納部4の第2側壁16に跨ってUDテープ22を追加して配設し、第1収納部3の第3側壁13から第2収納部4の第3側壁17に跨ってUDテープ23を追加して配設するので、第1収納部3と第2収納部4の側壁に跨って配設されるUDテープ22、23によって各収納部の強度を更に向上させることが可能となる。
【0043】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る電池ケース31について図10に基づき説明する。図10は、第3実施形態に係る電池ケース31について、特にUDテープの配置態様を示した模式図である。尚、以下の説明において上記図1乃至図8の第1実施形態に係る電池ケース1の構成と同一符号は、前記第1実施形態に係る電池ケース1等の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0044】
この第3実施形態に係る電池ケース31の概略構成は、第1実施形態に係る電池ケース1とほぼ同じ構成である。但し、第3実施形態に係る電池ケース21では、電池セル2が収納される収納部として第1収納部3のみを有する点で異なっている。
【0045】
図10に示すように、第3実施形態に係る電池ケース31では、第2側壁12から第1側壁11を介して第3側壁13に跨ってUDテープ32が配置される。尚、第2側壁12から第4側壁14を介して第3側壁13に跨ってUDテープ32を配置しても良い。その場合でも同様に電池ケース21の強度を向上させるという効果が得られる。
【0046】
更に、第2側壁12から第1側壁11を介して第3側壁13に跨る位置と、第2側壁12から第4側壁14を介して第3側壁13に跨る位置のそれぞれにUDテープ32を配置しても良い。その場合には、電池ケース21の強度を向上させるという点でより顕著な効果を得ることが可能となる。
【0047】
また、第1収納部3は、第1実施形態と同様にUDテープ32を金型に配置した状態で樹脂を注入するインサート成形によりUDテープ32と一体に成形される。
【0048】
以上説明したように第3実施形態に係る電池ケース31は、収納部が単数の第1収納部3のみからなる場合であっても、第1収納部3の側壁に跨って配設されるUDテープ32によって、第1収納部3の強度を向上させることが可能となる。
【0049】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、第1乃至第3実施形態では、第1収納部3及び第2収納部4を形成する樹脂として特にナイロン6(PA6)を用いているが、ナイロン6以外の樹脂としても良い。
【0050】
また、第1乃至第3実施形態では、第1収納部3及び第2収納部4を形成する樹脂と、UDテープ6、7、2、23、32の繊維に含浸される樹脂とを同一種類としているが、UDテープ6、7、2、23、32と第1収納部3及び第2収納部4との融着効果が十分に得られるのであれば、異なる種類の樹脂としても良い。
【0051】
また、第1及び第2実施形態では、電池セル2の積層方向Yに沿ってUDテープ6、7を配設する側壁を、第1収納部3と第2収納部4の間に立設される第1側壁11としているが、第1側壁11の代わりに電池ケース1の外壁となる第4側壁14、18に配設しても良い。但し、UDテープ6、7を第1収納部3と第2収納部4の間に立設する第1側壁11(即ち中央リブ)に対して配設した方が、電池ケースの強度向上の効果はより大きくなる。
【符号の説明】
【0052】
1 電池ケース
2 電池セル
3 第1収納部
4 第2収納部
6、7 UDテープ
10、15 底面板
11 第1側壁
12、16 第2側壁
13、17 第3側壁
14、18 第4側壁
19 開口端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10